(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187438
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】透明多層分散体組成物及び透明多層分散体組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20221212BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221212BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095483
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】ブリアド ヘルレンチメグ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC102
4C083AC112
4C083AC172
4C083AD042
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD282
4C083AD351
4C083AD352
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD05
4C083DD31
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE07
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】組成物が透明かつ油滴の形状が目視できる審美性に優れた透明多層分散体組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】水と増粘剤とを含みかつ界面活性剤を含有しない水性外層を調製する、水性外層調製工程と、油性成分を含みかつ界面活性剤を含有しない油性内層を調製する、油性内層調製工程と、水性外層と油性内層とが、混合手段により、第一対流と、前記第一対流と交差する方向の第二対流と、で撹拌され、油性内層が水性外層中に粒状に分散され、粒状の平均粒子半径が、0.1mm以上となるように撹拌される撹拌工程を含むことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と増粘剤とを含みかつ界面活性剤を含有しない水性外層を調製する、水性外層調製工程と、
油性成分を含みかつ界面活性剤を含有しない油性内層を調製する、油性内層調製工程と、
前記水性外層と前記油性内層とが、混合手段により、第一対流と、前記第一対流と交差する方向の第二対流と、で撹拌され、前記油性内層が前記水性外層中に粒状に分散され、前記粒状の平均粒子半径が、0.1mm以上となるように撹拌される撹拌工程を含むことを特徴とする、透明多層分散体組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第一対流は、水平方向であり、前記第二対流は、垂直方向であることを特徴とする、請求項1記載の透明多層分散体組成物の製造方法。
【請求項3】
前記水性外層と前記油性内層とが容器の閉じられた空間に収容される、容器収容工程をさらに有し、
前記混合手段は、前記容器が、重力方向と交差する方向の往復運動となるように動かされることを特徴とする、請求項1又は2に記載の透明多層分散体組成物の製造方法。
【請求項4】
前記往復運動は、円弧状の軌跡となるように行われることを特徴とする、請求項3に記載の透明多層分散体組成物の製造方法。
【請求項5】
容器収容工程後の容器の残部空間が、容器の内部空間の体積の10%以上~60%以下であることを特徴とする請求項3又は4記載の透明多層分散体組成物の製造方法。
【請求項6】
容器の幅と高さの比が、1:1~1:3であることを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載の透明多層分散体組成物の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも1層の水性外層の25℃での粘度が100~6000mPa・sであり、前記油性内層の25℃での粘度が10~5000mPa・sであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の透明多層分散体組成物の製造方法。
【請求項8】
前記水性外層の比重と前記油性内層の比重との比(油性内層の比重/水性外層の比重)は、0.95以上~1.05以下であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の透明多層分散体組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明多層分散体組成物及び透明多層分散体組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の化粧品等の組成物の中には、油性成分と水性成分とを乳化させ、油性成分を微細化させた組成物が存在する。これらの乳化組成物は、均一な混合状態とするため、界面活性剤を利用し油滴を微細化し、乳化状態を安定させることが行われている。
【0003】
特許文献1には、油滴(乳化粒子)の粒径が1μm以下の水中油型乳化組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された油滴(乳化粒子)の粒径が1μm以下の水中油型乳化組成物のように、油滴の粒径を小さくすると、半透明又は透明な組成物となる。しかし、このように、油滴の粒径を小さくして透明な組成物を得ようとすると、油滴が目視できない大きさになる。
また、油滴の粒径が100μm~1μmの範囲であると組成物が乳濁して透明性が失われる。
本発明の課題は、組成物が透明かつ油滴の形状が目視できる審美性に優れた透明多層分散体組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、上記課題に対して鋭意検討した結果、水性外層中における油性内層の油滴の平均粒子半径が0.1mm以上となる撹拌を行うことにより、組成物が透明かつ油滴の形状が目視できる審美性に優れた透明多層分散体組成物であるという知見に至り、本発明を完成した。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の製造方法は、水と増粘剤とを含みかつ界面活性剤を含有しない水性外層を調製する、水性外層調製工程と、油性成分を含みかつ界面活性剤を含有しない油性内層を調製する、油性内層調製工程と、水性外層と油性内層とが、混合手段により、第一対流と、第一対流と交差する方向の第二対流と、で撹拌され、油性内層が水性外層中に粒状に分散され、粒状の平均粒子半径が、0.1mm以上となるように撹拌される撹拌工程を含むことを特徴とするものである。
本発明の製造方法によれば、油性内層が0.1mm以上の平均粒子半径となるように撹拌されることから、組成物が透明かつ油滴の形状が目視できる審美性に優れた透明多層分散体組成物の製造方法とすることができる。
【0008】
さらに、本発明の製造方法の一実施態様としては、第一対流は、水平方向であり、第二対流は、垂直方向であることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、第一対流を水平方向とし、第二対流を、垂直方向とすることで、効率よく水性外層中全体に油性内層を粒状に分散させることができる効果がある。
【0009】
さらに、本発明の製造方法の一実施態様としては、水性組成物と油性組成物とが容器の閉じられた空間に収容される、容器収容工程をさらに有し、混合手段は、容器が、重力方向と交差する方向の往復運動となるように動かされることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、容器が重力方向と交差する方向の往復運動で動かされることにより、往復運動の方向である第一対流と、水性外層と油性内層が容器の内壁に衝突し、重力方向(垂直方向)に沈み込むような方向の第二対流とを効率的に発生させることができる効果がある。
【0010】
さらに、本発明の製造方法の一実施態様としては、往復運動は、円弧状の軌跡となるように行われることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、直線方向の軌跡となるように往復運動が行われるよりも、円弧状の軌跡となるように往復運動が行われる方が、第一対流と第二対流とを生じさせやすい効果がある。
【0011】
さらに、本発明の製造方法の一実施態様としては、容器収容工程後の容器の残部空間が、容器の内部空間の体積の10%以上~60%以下であることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、残部空間が存在することにより、容器が振とうされた際に、効率よく第一の対流と第二の対流を生じさせることができ、効率のよい透明多層分散体組成物の製造方法とすることができる効果がある。
【0012】
さらに、本発明の製造方法の一実施態様としては、容器の幅と高さの比が、1:1~1:3であることを特徴とする。
容器の幅と高さの比率であることにより、容器が振とうされた際に、効率よく第一の対流と第二の対流を生じさせることができ、効率のよい透明多層分散体組成物の製造方法とすることができる効果がある。
【0013】
さらに、本発明の製造方法の一実施態様としては、少なくとも1層の水性外層の25℃での粘度が100~6000mPa・sであり、油性内層の25℃での粘度が10~5000mPa・sであることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、水性外層の粘度と油性内層の粘度であることにより、粒状となった油性内層の状態を維持させやすくすることができる効果がある。
【0014】
さらに、本発明の製造方法の一実施態様としては、水性外層の比重と油性内層の比重との比(油性内層の比重/水性外層の比重)は、0.95以上~1.05以下であることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、粒状となった油性内層が水性外層の全体に長い時間漂うように存在させやすくなる効果がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の透明多層分散体組成物の製造方法により、組成物が透明かつ油滴の形状が目視できる審美性に優れた透明多層分散体組成物を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の透明多層分散体組成物の一実施形態を示した図である。
【
図2】従来の油性粒状物と水性液状物との混合物を示した図である。
【
図3】本発明の透明多層分散体組成物の製造方法(振とうによる混合方法)を示した図である。
【
図4】本発明の透明多層分散体組成物の製造方法(振とうによる混合方法)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の透明多層分散体組成物及び透明多層分散体組成物の製造方法について詳細に説明する。
本発明の製造方法で製造される透明多層分散体組成物は、水中油型の組成物であり、油性内層と水性外層と増粘剤を含有し、油滴となった油性内層が水性外層内で安定して維持された状態である。また、本発明の透明多層分散体組成物は、固形粉体、固形油分、油性ゲル化剤、界面活性剤を含有していない。
なお、本発明の透明多層分散体組成物の油性内層は、油性内層に水滴を分散させた分散体組成物の場合も含む。言い換えると、水中油中水型と呼ばれる組成物も含む。
【0018】
また、本発明の透明多層分散体組成物及び製造方法で製造される透明多層分散体組成物の各使用成分について詳細に説明する。本明細書内において特に断りの無い限り、各成分の質量%は本発明の透明多層分散体組成物全体の質量に対するものである。さらに、透明多層分散体組成物中の水性外層には、増粘剤が溶解した状態を意味する。
【0019】
<透明多層分散体組成物>
本発明の透明多層分散体組成物は、性質が異なる2以上の層からなることを特徴とする透明多層分散体組成物である。ここで、性質が異なるとは、お互いにそれ単体では簡単に交じり合わない性質をもつことをいい、例えば、水と油、水と粉体、油と粉体等の間の関係性を表す。また多層分散体とは、性質の異なる2以上の分散体がお互いに層中に独立して存在する状態を表す。ここで、本発明の性質の異なる2以上の分散体がお互いに層中に独立して存在する状態には通常のエマルジョンは含まないが、エマルジョン状の組成物が他層中に併存していてもよい。例えば、水性の分散媒に、油中水型のエマルジョン状の分散質が独立して浮遊して存在するものなどが挙げられる。
【0020】
図1に示すように、本発明の透明多層分散体組成物は、性質が異なる2以上の層からなる多層分散体であって、前記性質が異なる2以上の層のうち、少なくとも1層は水溶性を示す組成物からなる水性外層であり、少なくとも1層は油溶性を示す組成物からなる油性内層であり、前記油溶性を示す組成物からなる油性内層の全部または一部が粒子状に存在することを特徴とする透明多層分散体組成物である。本発明の組成物は、例えば、1種の油溶性組成物が、1種又は2種以上の水溶性組成物からなる1又は2以上の層内を独立して粒子状に浮遊して存在しているものや、2種以上の油溶性組成物が、1種又は2種以上の水溶性組成物からなる1又は2以上の層内を独立して粒子状に浮遊しているものが挙げられる。本発明の透明多層分散体組成物は、以下に詳述する特徴を有する水性外層と油性内層とを組み合わせることにより、界面活性剤を含まなくても、
図2に示される従来の油性粒状物を水性液状物へ混合したもののように油性粒状物が水性層から分離せずに安定して独立に浮遊することができる。
【0021】
また、本発明の透明多層分散体組成物は、外観が透明である。外観が透明であるとは、例えば、カラーメーターを用いて測定した透明多層分散体組成物の明度L値が50以上である。好ましくは透明多層分散体組成物のL値が70以上であり、より好ましくは透明多層分散体組成物のL値が90以上である。明度測定は、任意のカラーメーターを用いて測定することができる。例えば、日本電色工業社製のColorMeterZE6000はその一例である。
【0022】
本発明の透明多層分散体組成物は、独立して存在する複数の層からなる透明多層分散体組成物であり、該複数の層は、100~6000mPa・sの粘度をもつ水性外層と、10~5000mPa・sの粘度をもつ油性内層からなることを特徴とする透明多層分散体組成物である。好ましくは、本発明の透明多層分散体組成物は、1500~3500mPa・sの粘度をもつ水性外層と、100~1500のmPa・s粘度をもつ油性内層からなる。油性内層及び水性外層が上記の範囲の粘度を有することにより、美しい外観であることが可能である。特に美しい外観の観点から、水性外層の粘度は1500~3500mPa・sであり、油性内層の粘度は100~1500mPa・sであることが好ましい。本発明において美しい外観とは、外層及び内層が透明であり、油性内層を構成する粒子が大きく、水性外層中に油性内層が独立して浮遊する個性的な外観をいう。
上記の水性外層の粘度と油性内層の粘度であることにより、粒状となった油性内層の状態を維持させやすくすることができる効果がある。
【0023】
なお、本明細書において、「粘度」とは、25℃における粘度であって、粘度計(Brookfield製 DV-1 viscometer)により測定した値とする。
【0024】
本発明の透明多層分散体組成物は、平均粒子半径が0.1mm以上となる粒子からなる油性内層が水性外層中に浮遊してなることが好ましい。本発明において、油性層の粒子半径は、マイクロスコープにより測定される2次元画面計測上の幾何学的な粒子半径である。
本明細書において平均粒子半径とは、粒子の大きさヒストグラムグラフ上、もっとも高い度数を視覚的に認識できる大きさの半径、いわゆる最頻半径である。ここでヒストグラムとは、縦軸に度数、横軸に階級をとった統計グラフの一種で、データの分布状況を視覚的に認識するために主に統計学や数学、画像処理等で用いられるグラフ図のことである。平均粒子径が0.1mm以上であると、油滴の形状が目視でき、美しい外観の観点から好ましい。
【0025】
本発明の透明多層分散体組成物は、外層と内層の質量比率が99.9:0.01~50:50であることが好ましい。外層に対する内層比が50以下である場合、透明多層分散体組成物における粒子の分散安定性が良好であり、独立して球状の層を形成することができる。また、外層に対する内層比が0.01以上である場合、トリートメント効果、ダメージケア効果、うるおいや艶付与効果等のオイル製剤の効果を良好に発揮できるため好ましい。
【0026】
本発明の透明多層分散体組成物は、外層の明度を示すL値が50以上である。好ましくは外層のL値が70以上であり、より好ましくは外層のL値が90以上である。明度測定は、任意のカラーメーターを用いて測定することができる。例えば、日本電色工業社製のColorMeterZE6000は、その一例である。明度L値が50以上である場合に、組成物の外観の透明性があり、外観上の品質に優れた透明多層分散体組成物を提供することができる。
【0027】
本発明の透明多層分散体組成物は、0.5質量%水溶液の明度L値が35以上であるポリマーを含有する外層を有する組成物である。さらに、該ポリマーは、(C)水溶性でありエタノール難溶性の増粘性ポリマーであることが好ましい。
【0028】
本発明の透明多層分散体組成物において、水性外層、油性内層の比重がそれぞれ0.900~1.200の範囲、または水性外層、油性内層の密度がそれぞれ0.900~1.200の範囲であることが好ましい。
【0029】
また、水性外層の比重と油性内層の比重との比(油性内層の比重/水性外層の比重)は、0.95以上~1.05以下であることが好ましい。
粒状となった油性内層が水性外層の全体に長い時間漂うように存在させやすくなる効果がある。
水性外層の比重と油性内層の比重との比(油性内層の比重/水性外層の比重)の下限は、より好ましくは0.97以上であり、最も好ましくは0.98以上である。また、上限値は、より好ましくは、1.03以下であり、最も好ましくは1.02以下であることが好ましい。
【0030】
また、本発明の透明多層分散体組成物において、外層は、(A)水及び1種以上の(C)水溶性でありエタノール難溶性の増粘性ポリマーを含有する。本発明の外層は、(B)エタノールを含有していてもよい。本発明の透明多層分散体組成物が(B)成分を含む場合には、エタノールとしては、エタノール又は政府所定外の変性エタノールを用いることができ、これらエタノールは発酵法、合成法のいずれの製法により得られるものでも構わない。
【0031】
本発明の(B)成分を含む場合には、エタノールの含有量は50.0質量%以下、好ましくは35.0質量%以下である。また、(B)成分の含有量の下限値は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、更に好ましくは5質量%以上である。(B)成分の含有量が50.0質量%以下である場合、(C)増粘性ポリマーが十分に膨潤するため、粘度や比重、密度調整を兼ねて、組成物の感触や安定性、透明性等の品質を維持することができるため望ましい。ここでエタノールの含有量は、本発明の透明多層分散体組成物全体の質量に対するものである。
【0032】
本発明の(C)成分である増粘性ポリマーとは、水溶液にて増粘性を示す高分子である。植物系、動物系、微生物系の天然高分子、天然高分子誘導体、合成高分子、その他に無機増粘剤であってもよい。特に限定するものではないが、例えば、アルギン酸、カラギーナン、寒天、ファーセラン、グアーガム、クインスシード、コンニャクマンナン、タマリンドガム、タラガム、デンプン、デキストリン、ローカストビーンガム、アラビアガム、ガッティガム、カラヤガム、トラガカントガム、アラビノガラクタン、ペクチン、マルメロ、小麦タンパク質、大豆タンパク質等の植物系;アルブミン、カゼイン、ゼラチン、キトサン、ヒアルロン酸等の動物系;カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、シクロデキストリン、デキストリン、プルラン、ヒアルロン酸等の微生物系;微結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系;デンプンリン酸エステル、デンプングリコール酸ナトリウム等のデンプン系;カチオン化グアーガム、カルボキシメチル・ヒドロキシプロピル化グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム等のグアーガム系;アクリル基、メタクリル基、ビニル基、エーテル、無水マレイン酸、ポリピペリジン、ポリアルキレンポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミド、ポリカチオン等の基本主鎖をもつ合成高分子、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、高重合ポリエチレングリコール、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリアクリレート-1、ポリアクリレートクロスポリマー-11、酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/アクリル酸カルボキシエチルアンモニウム)クロスポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル・メタクリル酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル共重合体エマルション、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリルアミド/アクリル酸アンモニウム)コポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス-20)コポリマー、(VP/ヘキサデセン)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、(VP/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール)コポリマー等、(アクリル酸/ビニルピロリドン)コポリマー、(メチルビニルエーテル/マレイン酸)クロスポリマー;その他に、ヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ベントナイト、サポナイト等の無機増粘剤等を挙げることができる。美しい外観、安定性、良好な感触等の観点から、好ましくは、特に水に可溶で、エタノールに難溶のポリマーを使用することができ、より好ましくは水に可溶でエタノールに難溶である上、ノニオン性の高分子を使用することができる。なお、水に可溶であるとは、0.5質量%水溶液(25℃)とした場合に、すべて溶解して、固形物が残存しないという性質である。また、エタノールに難溶であるとは、0.5質量%エタノール溶液(25℃)とした場合に、固形物が残存するという性質である。
【0033】
本発明の(C)成分である増粘性ポリマーは、単一のものを使用してもよく、あるいは2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。(C)増粘性ポリマーの含有量は、本発明の透明多層分散体組成物全体の質量に対して、0.01~30質量%、好ましくは0.05~10.0質量%の範囲である。含有量が0.05質量%以上であれば、油性内層を粒子状に維持し、分散安定性に優れるという効果があり、含有量が30質量%以下であれば外層粘度が著しく上昇せずに透明多層分散体組成物の流動性を維持することができるため好ましい。
【0034】
本発明の(C)成分は必要に応じて塩類や酸類等で中和をして用いてもよく、単一で、あるいは2種以上を組合せて使用してもよい。
【0035】
また本発明の透明多層分散体組成物は、水性外層に上記(A)乃至(C)成分を含み、油性内層(D)に室温で液状の油剤を含む。また本発明において、(D)成分は、以下に詳述する(D1)として室温で液状のシリコーン油、および(D2)として(D1)以外の室温で液状の油剤を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書において、「室温」とは25℃のことである。
【0036】
本発明の(D)成分である液状の油は、室温で液状の油剤である。(D1)成分として、室温で液状のシリコーン油で、25℃での粘度が10mPa・s以上である油剤を含有してもよい。シリコーン油は特に限定するものではないが、揮発性ジメチコン、高重合ジメチコン、シリコンブレンド、各種変性シリコーン、シリコーン樹脂等の各種シリコーンを挙げることができ、例えば、ジメチコン、シクロメチコン、シクロペンタシロキサン、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ポリシリコーン-13、ジメチコノール、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、アモジメチコン、(ジビニルジメチコン/ジメチコン)コポリマー、シクロヘキサシロキサン、カプリリルメチコン、セチ ルジメチコン、ビス(ヒドロキシエトキシプロピル)ジメチコン、(ジフェニルメチルシロキシフェニルメチコン/フェニルシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジメチコンクロスポリマー等があげられる。それらの中で特に良好な感触を得られることから、ジメチコンを好ましく使用することができる。
【0037】
本発明の(D)成分として、さらに(D2)成分であるその他の液状の油剤(上記(D1)シリコーン油を除く)を含有してもよい。特に限定するものではないが、エステル油、炭化水素油、天然油、高級アルコール、高級脂肪酸等の油脂類の少なくとも1種以上を含有してもよい。例えば、ネオペンタン酸イソデシル、イソノナン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、コハク酸ジエチルヘキシル、イソノナン酸イソトリデシル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリン酸イソブチル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ミリスチン酸イソセチル、ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、トリエチルヘキサノイン、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソノナン酸トリシクロデカンメチル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、ジリノール酸ジイソプロピル、トリイソステアリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトライソステアリン酸ペンタエリルリチル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、イソステアロイル乳酸Na,ヘキサイソノナン酸ジペンタエリスリチル、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、リンゴ酸ジイソステアリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3等のエステル油;軽質イソパラフィン(イソドデカン)、軽質流動イソパラフィン、α―オレフィンオリゴマー、合成スクワラン、植物性スクワラン、ポリブテン、水添ポリイソブチレン、流動パラフィン等の液状炭化水素;オレイン酸、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、分岐脂肪酸等;オレイルアルコール、ホホバアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、ベンジルアルコール、ラウリルアルコール等の液状高級アルコール;コメ胚芽油、コメヌカ油、アンズ油、ヒマシ油、ツバキ油、ローズヒップ油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油、ゴマ油、エゴマ油、サザンア油、クルミ油、アボガド油、ヤシ油、ヒマワリ油、アマニ油等の天然油を挙げることができる。それらの中で特に、液状エステル油、炭化水素を好ましく使用することができる。
【0038】
本発明の(D)成分の液状油は、(D1)成分を1種もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよく、(D1)成分を単独で、若しくは(D1)成分と(D2)成分を組合せて使用してもよい。(D)成分の液状油の含有量は、本発明の透明多層分散体組成物全体の質量に対して、0.1~50質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは1~30質量%の範囲である。含有量が50質量%以下であれば、組成物の安定性が良好であり、独立して球状の層を構成できるため好ましい。
【0039】
本発明の(D)成分の粘度は、好ましくは10mPa・s以上であり、より好ましくは50mPa・s以上で、さらにより好ましくは100mPa・s以上である。
【0040】
本発明の透明多層分散体組成物は、さらに、(E)成分として、水性レオロジー調整剤を含有してもよい。水性レオロジー調整剤としては、特に限定するものではないが、水溶液に添加することにより水溶液の粘度を向上するものである(但し、(C)成分を除く)。
具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール類、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレングリコール付加物;ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類;ブドウ糖、ショ糖、乳糖、マルトース、トレハロース、グリコシルトレハロース等の糖類;コハク酸ビスエトキシジグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10等の水溶性エステル類;ポリーテル変性シリコーン等の水溶性のシリコーン化合物;セリン、バリン、アラニン、グリシン、ロイシン、グルタミン酸、ヒスチジン、アスパラギン酸、トレオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、アルギニン、チロシン、フェニルアラニン、トリメチルグリシン等のアミノ酸類、塩類、酸類等を挙げることができる。
【0041】
本発明の(E)成分である水性レオロジー調整剤は、単一のものを使用してもよく、あるいは2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。(E)成分の含有量は、本発明の透明多層分散体組成物全体の質量に対して、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.1~10質量%の範囲である。含有量が0.01質量%以上であれば、滑り性等の使用感や粘度や比重調整が良好であり、30質量%以下であれば、べたつき等の感触上の問題が生じず、性質が異なる層と層との境界線が崩れずに品質が維持されるため好ましい。
【0042】
さらに、本発明の(F)成分として、下記成分を含有してもよい。特に限定するものではないが、例えば、香料、精油、果実水や植物抽出物、エキス類、フラボノイド、カロチノイド、キノン、ポルフィリン等一般構造をもつ天然色素やキャラメル、バタフライピーエキス等プロフェノール含有抽出物をあげることができる。
【0043】
本発明の(F)成分は単一のものを使用してもよく、あるいは2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。また本発明の(F)成分は外層中に含有されてもよく、あるいは内層中、あるいはその両方において含有されてもよい。
【0044】
本発明の組成物は、スキンケア組成物、ボディケア組成物、ヘアケア組成物のいずれに用いてもよく、リンスインと、リンスオフのどの形態でも実施できる。
【0045】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて、さらに通常化粧料等に用いられている他の追加成分を配合することができる。これらの追加成分としては、例えば抗菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、生理活性物質、美白剤、ビタミン類及びその誘導体類、消炎剤、抗炎症剤、育毛用薬剤、血行促進剤、刺激剤、ホルモン類、抗しわ剤、抗老化剤、ひきしめ剤、冷感剤、温感剤、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、鎮痒剤、角質剥離剤、角質溶解剤、制汗剤、清涼剤、収れん剤等、そのほかに、キレート剤、電解質、アルカリ、酸、界面活性剤、セット樹脂類、固形粉末類等を配合することができる。
【0046】
<透明多層分散体組成物の製造方法>
本発明の透明多層分散体組成物の製造方法は、水性外層と油性内層とが、第一の対流と第二の対流とで撹拌されることにより、人が粒状になった油性内層を目視でき、審美性に優れた透明多層分散体組成物を得ることができれば、特に制限されない。水性組成物は、(A)成分である水に、各種の水溶性成分を溶解することにより調製すればよく、また、油性組成物は、(D)成分である油に、各種の油溶性成分を溶解することにより調製すればよい。本発明の透明多層分散体組成物は、界面活性剤を含有しないこと及び撹拌のし過ぎによる油滴の粒径が小さくなりすぎることによる、組成物の乳濁化を抑制でき、組成物が透明かつ油滴の形状が目視できる、審美性に優れた透明多層分散体組成物の製造方法とすることができる。
【0047】
また、本発明の透明多層分散体組成物の製造方法は、(C)成分を、水性組成物又は油性組成物に添加してもよい。(C)成分を油性組成物に添加した場合には、(C)成分は、水性組成物と油性組成物を混合した後に、油性内層から水性外層へ徐々に移行する。そのため、水性組成物が低粘度の状態で油性組成物と混合されるため、良好な混合状態を形成することができる。そして、(C)成分が水性外層へ移行後は、水性外層の粘度が向上し、優れた分散安定性を有する透明多層分散体組成物を得ることができる。
【0048】
水性組成物と油性組成物との混合手段は、例えば、プロペラ撹拌機やホモミキサーなどの液体に剪断力を与えて混合する動的撹拌混合機や、スタティックミキサーなどの静的撹拌混合機などを用いることができる。また、容器を振とうすることにより混合する混合手段を用いてもよい。
【0049】
本発明の混合手段は、水性外層と油性内層とが、第一対流と、第一対流と交差する方向の第二対流とで撹拌される混合手段であれば、特に限定されない。第一対流と、第一対流と交差する方向の第二対流とで撹拌される混合手段を用いることで、粒状となった油性内層が水性外層の全体に分散させることができ、審美性に優れた記載の透明多層分散体組成物とすることができる。
【0050】
具体的には、第一対流は、水平方向の対流であり、第二対流は、垂直方向の対流である。第一対流を水平方向とし、第二対流を、垂直方向とすることで、効率よく水性外層中全体に油性内層を粒状に分散させることができる効果がある。
対流を発生させる方法としては、例えば、プロペラ撹拌機を2台用いて、第一対流発生手段として一方のプロペラ撹拌機で第一対流を発生させるとともに、第二対流発生手段として他方のプロペラ撹拌機で第二対流を発生させることで、水性外層と油性内層とを混合するようにする方法が例示できる。
なお、第一対流と第二対流により、水性外層と油性内層とが混合されればよく、プロペラ撹拌機とホモミキサーのように、別の種類の動的撹拌混合機を組み合わせてもよく、動的撹拌混合機(プロペラ撹拌機等)と静的撹拌混合機(スタティックミキサー)とを組み合わせてもよく、または、第一対流を生じさせるプロペラ等の攪拌機と第二対流を生じさせるように収容容器(釜)等を動かす等の方法も提示できる。収容容器(釜)等を動かす方法としては、収容容器を往復運動させて動かしたり、収容容器を回転させたりする方法が挙げられる。
【0051】
また、容器を振とうすることにより混合する混合手段の場合、
図3に示すように、容器が円弧状の軌跡となるように往復運動が行われ、粒状の油滴の平均粒子半径が、0.1mm以上となるように振とうされる。
【0052】
容器が重力方向と交差する方向の往復運動となるように動かされることにより、往復運動の方向である第一対流と、水性外層と油性内層が容器の内壁に衝突し重力方向(垂直方向)に沈み込むような方向である、第一対流と交差する方向の第二対流とを発生させることができることから、撹拌される混合手段となる。振とうによる混合手段は、例えば、容器が人によって振られる手段であることが例示できる。容器ごと振とうすることができることから、油性内層の粒径が、使用者の好みに合わせて製造することができる効果がある。
なお、振とうによる混合手段が、重力方向と交差する方向の直線方向の軌跡となるように往復運動が行われるよりも、円弧状の軌跡となるように往復運動が行われる方が、第一対流と第二対流とを効率的に生じさせやすい効果がある。
また、往復運動の幅は、油性内層が0.1mm以上の平均粒子半径となるように撹拌されれば、特に限定されないが、例えば、5cm~50cmの幅が適用可能であり、往復運動の幅の下限値としては、好ましくは、10cm、より好ましくは15cmが適用でき、上限値としては、好ましくは40cm、より好ましくは30cmとすることができる。
【0053】
容器は、内部空間に水性外層と油性内層とが、閉じられた状態で容器に収容できるものであり、振とうした際に内部空間から水性外層と油性内層とが漏れ出すことのない容器であれば、特に限定されない。
しかし、容器の内部空間が円柱状の空間であって、底面の幅(底面の直径)と高さの比が1:1~1:3である内部空間が好ましい。この容器の内部空間の比率であれば、容器が振とうされた際に、効率よく第一の対流と第二の対流を生じさせることができ、効率のよい透明多層分散体組成物の製造方法とすることができる効果がある。
なお、容器が振とうされる場合、容器の向きは、横方向であることが好ましい。縦方向の場合と比較して、第一の対流と第二の対流を発生させやすくなる。言い換えると、内部空間の垂直方向の幅は、内部空間の水平方向の幅よりも同じ又は小さい状態を維持したまま、水平(左右)方向かつ容器が円弧状の軌跡となるように往復運動が行われることが好ましい(
図3を参照)。なお、容器は、内部空間が円柱状の空間に限定されることはなく、角柱状の空間や切頭円錐または切頭角錐の形状であってもよい。
【0054】
また、容器に水性外層と油性内層とが収容され、内部空間が閉じられた状態において、内部空間の全体の体積に対して残部空間(内部空間の空洞部分)が、10%以上~60%未満であることが好ましい。10%以上~60%未満の残部空間が存在することにより、容器が振とうされた際に、効率よく第一の対流と第二の対流を生じさせることができ、効率のよい透明多層分散体組成物の製造方法とすることができる効果がある。
なお、残部空間の下限値は30%以上が好ましく、より好ましくは20%以上であり、最も好ましくは10%以上である。また、残部空間の上限値は、60%未満が好ましく、より好ましくは40%以下であり、最も好ましくは30%以下である。
なお、水性外層と油性内層は、透明多層分散体組成物の使用時に用時混合してもよい。
【0055】
本発明の透明多層分散体組成物の製造方法において、油性内層は、平均粒子半径が0.1mm以上となるように撹拌されることが好ましい。油性内層の平均粒子半径を0.1mm以上とすることにより、組成物が透明かつ油滴の形状が目視できる審美性に優れた透明多層分散体組成物の製造方法とすることができる。また、人が粒状になった油性内層を目視でき、審美性に優れた透明多層分散体組成物を得ることができる。
なお、油性内層の平均粒子半径は、混合手段の性能(撹拌混合力)を調整することにより、所望の大きさに調整することができる。
油性内層の平均粒子半径を混合手段により調整し、油性内層の油滴の平均粒子半径が0.1mm以上~8.0mm以下とした場合、水性外層中の油滴が目視しやすく審美性に優れ、保存安定性に優れる効果がある。
なお、審美性に優れるという観点から、油性内層の油滴の平均粒子半径の下限値は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは4.0mm以上である。
また、保存安定性に優れるという観点から、油性内層の油滴の平均粒子半径の上限値は、好ましくは8.0mm以下、より好ましくは4.0mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下、特に好ましくは0.1mm以下である。
【0056】
(動的撹拌混合機を用いた透明多層分散体組成物の製造方法)
プロペラ撹拌機やホモミキサーなどの液体に剪断力を与えて混合する動的撹拌混合機を用いた場合の透明多層分散体組成物の製造方法について説明する。
【0057】
まず、成分A~成分C及びその他の成分(成分E~F)を混合して、水と増粘剤とを含みかつ界面活性剤を含有しない水性外層を調製する。この工程を、水性外層調製工程とする。
D成分を混合(成分D1と成分D2)して、油性成分を含みかつ界面活性剤を含有しない油性内層を調製する。この工程を、油性内層調製工程とする。なお、成分Dを単独で用いる場合は、この工程が行われなくてもよい。
水性組成物と油性組成物とが容器に収容される、準備工程を行う。
【0058】
準備工程後、混合手段である、動的撹拌混合機を用いて攪拌が行われる。水性外層と油性内層とが、混合手段により、第一対流と、前記第一対流と交差する方向の第二対流とで撹拌され、粒状の平均粒子半径が、0.1mm以上となるように撹拌される。この工程を、撹拌工程とする。
【0059】
動的撹拌混合機である、プロペラ撹拌機を用いた場合、攪拌工程のプロペラの攪拌速度は、15~50rpmの低速であることが好ましい。プロペラの攪拌速度が100~500rpmのような高速の場合、油性内層の粒状が小さくなりすぎ(平均粒子半径が0.1mm未満)て、透明多層分散体組成物の透明性が失われ、油性内層の粒径が大きい透明多層分散体組成物を製造できなくなる。
なお、低速の回転速度及び高速の回転速度は、例示であり、水性組成物と油性組成物の物性によって変化することから、粒状の平均粒子半径が、0.1mm以上となるように撹拌されれば、特に限定されない。
【0060】
以上のように、水性外層調製工程と、油性内層調製工程と、準備工程と、撹拌工程とを有することにより、透明多層分散体組成物の製造方法とすることができる。
【0061】
(振とうによる透明多層分散体組成物の製造方法)
容器を振とうする場合の透明多層分散体組成物の製造方法について説明する。
【0062】
まず、水性外層調製工程と油性内層調製工程とを行う。
次に、水性組成物と油性組成物とが容器の閉じられた空間に収容される、容器収容工程が行われる。
【0063】
容器収容工程の後、混合手段である、容器が振とうされることにより、撹拌が行われる。水性外層と油性内層とが、混合手段により、第一対流と、前記第一対流と交差する方向の第二対流とで撹拌され、粒状の平均粒子半径が、0.1mm以上となるように撹拌される。この工程を、撹拌工程とする。
【0064】
以上のように、水性外層調製工程と、油性内層調製工程と、容器収容工程と、撹拌工程とを有することにより、透明多層分散体組成物の製造方法とすることができる。
【0065】
なお、容器収容工程において、容器の残部空間が内部空間に対して0%~5%未満となるようにし、容器ごと市場に流通させる、流通工程と、流通工程後、使用者が、容器から水性外層及び油性内層の一部を取り出して残部空間を5%以上~60%未満とする、残部確保工程を有していてもよい。これらの工程を有することにより、流通過程において、水性外層及び油性内層が混合してしまうことを抑制することができる。なお、残部確保工程の後、使用者によって、撹拌工程が行われる。
また、本発明では、水性外層及び油性内層とが一つの容器に収容されずに別々の状態で流通し、使用者が容器に用事混合することも容器収容工程に含まれる。
【実施例0066】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。なお、実施例および比較例に記載の透明多層分散体組成物について、(1)粒径、(2)透明性、(3)審美性、(4)保存安定性、(5)オイル製剤の効果等関する試験法を下記に示す。
【0067】
(1)粒径
25℃に保たれた室内で各試料を試作準備し、マイクロスコープにて油性粒子の半径測定の評価を行った。そして、ヒストグラムグラフ図を作成し、もっとも高い度数を示す半径の値にて粒子形態を評価した。
【0068】
<粒子形態 評価基準>
「大」:大きさヒストグラムのもっとも高い度数が示す平均粒子半径が4.0mm以上~8.0mm以下
「中」:大きさヒストグラムのもっとも高い度数が示す平均粒子半径が0.1mm以上4.0mm以下
「小」:大きさヒストグラムのもっとも高い度数が示す平均粒子半径が0.1mm未満
「‐」:十分な油滴とならない。
「部分的に大」:全体的に粒状とならない状態。部分的に「大」の平均粒子半径となる(撹拌装置の攪拌翼の周辺の油層が粒状になる)。
「部分的に中」:全体的に粒状とならない状態。部分的に「中」の平均粒子半径となる。
「部分的に小」:全体的に粒状とならない状態。部分的に「小」の平均粒子半径となる。
【0069】
(2)透明性(透明多層分散体組成物の透明性)
20名の被験者によって25℃に保たれた室内で各試料を目視にて評価を行なった。尚、評価基準は下記のとおりである。
【0070】
<透明多層分散体組成物の透明性 評価基準>
「透明」:被験者の10名以上が、透明性が高いと判断
「半透明」:被験者の10名以上が、透明性が低いと判断
「濁り」:被験者の10名以上が、透明性が無いと判断
【0071】
(3)審美性
透明多層分散体組成物の製造後、25℃に保たれた室内で1時間静置後において水性外層全体に油滴が漂う状態を目視で確認し、評価を行った。
「◎」:1時間以上油滴が全体に浮遊した状態である
「○」:1時間後に油滴の一部が上側又は下側に偏った状態である
「△」:1時間後に油滴の多くが上側又は下側に偏った状態である
「×」:1時間以内に油滴の全てが上側又は下側に偏った状態である
「‐」:油滴がない、全体的に油滴にならない
【0072】
(4)保存安定性
透明多層分散体組成物の攪拌後、各試料を25℃に保たれた室内で静置し、20名の被験者によって撹拌後の透明多層分散体組成物の油滴の状態と、1か月経過後の油滴の状態の評価を行った。
「◎」:1か月経過しても油滴の変化と、不均一な分離状態がほとんど見られない。
「〇」:1カ月経過してから油滴の変化と、不均一な分離状態がわずかに見られる。
「△」:1カ月経過してから油滴の変化と、不均一な分離状態が多く見られる。
「×」:1か月経過もせずに油滴の明らかな変化と、大幅な不均一な分離状態が見られる。
「-」:油滴にならず、評価の対象とならない。又は、直ちに水層と油層が分離する。
【0073】
(5)オイル製剤の効果
20名の被験者によって25℃に保たれた室内で透明多層分散体組成物を手に取り、腕に塗り広げ、油性成分がどの程度感じられるか(オイル感)の評価を行った。
「◎」 オイル感が十分に感じられる
「○」 オイル感が軽く感じられる
「×」 オイル感がごくわずかしか感じられない
【0074】
実施例1~12および比較例1~6
表1~4に示す透明多層分散体組成物を調製し、動的撹拌混合機を用いた透明多層分散体組成物の製造方法で製造した実施例および比較例に記載の透明多層分散体組成物について、(1)粒径、(2)透明性、(3)審美性、(4)保存安定性、(5)オイル製剤の効果等について評価を行いその結果を併せて表1~4に示した。
【0075】
【0076】
表1に示すように実施例1~3の場合、垂直方向の対流と水平方向の対流により撹拌が行われると油性内層を粒状にすることができる製造方法であることがわかった。また、平均粒子半径が大となるような撹拌とすることで、組成物を透明とすることができる、透明多層分散体組成物の製造方法であることがわかった。
【0077】
【0078】
表2において、実施例1と比較例3及び6とを比較すると、水性外層の粘度または油性外層の粘度を実施例1の範囲とすることで、粒径、透明性、審美性、保存安定性、オイル製剤の効果の評価のすべてが良好となる製造方法であることがわかった。
【0079】
【0080】
表3に示すように、実施例1と実施例4~8では、C成分が異なる成分であっても、粒径、審美性、オイル製剤の効果について良好な結果となった。また、実施例6~8においては、実施例1と同様に透明性と保存安定性についても、良好な結果となった。
【0081】
【0082】
表4に示すように、実施例1と実施例9~12では、D成分が異なる成分であっても、粒径について良好な結果となった。また、実施例10においては、実施例1と同様に、透明性、審美性、保存安定性、オイル製剤の効果についても良好な結果となった。
【0083】
実施例13~27および比較例7~11
表5~9に示す透明多層分散体組成物を調製し、振とうによる透明多層分散体組成物の製造方法で製造した実施例および比較例に記載の透明多層分散体組成物について、(1)粒径、(2)透明性、(3)審美性、(4)保存安定性、(5)オイル製剤の効果等について評価を行いその結果を併せて表5~9に示した。なお、容器は円柱状の内部空間を有する容器を使用し、幅は円柱状の内部空間の直径である。また、表5~9の容器の振り方の回転水平方向とは、容器が円弧状の軌跡となるように往復運動させられることであり、
図3に示す動きである。また、垂直方向とは、容器が重力方向と交差する方向の直線状の軌跡となるように往復運動させられることであり、
図4に示す動きである。
【0084】
【0085】
表5において、実施例13~14と比較例7、8をと比較すると、残部空間を5%以上~60%未満とすることで、油性内層を粒状とすることができることがわかった。また、実施例13と実施例14では、粒径を大にすることができ、透明性、審美性、保存安定性、オイル製剤の効果のすべてを良好にすることができることがわかった。
【0086】
【0087】
表6において、実施例13と比較例9を比較すると、同じ振とう方法であっても、内部空間の幅と高さが異なることにより、違いが見られ、実施例13が最も良好な結果となった。また、実施例13と実施例16を比較すると、同じ内部空間の幅と高さであっても、振とう方法が異なることにより変化が見られ、実施例13が最も良好な結果となった。
【0088】
【0089】
図7に示すように、実施例13と比較例11~14とを比較すると、水性外層の粘度または油性内層の粘度を実施例13の範囲とすることで、粒径、透明性、審美性、保存安定性、オイル製剤の効果の評価のすべてが良好となる製造方法であることがわかった。
【0090】
【0091】
表8において、実施例13と実施例16~20では、C成分が異なる成分であっても、粒径、審美性、オイル製剤の効果について良好な結果となった。また、実施例18及び19においては、実施例1と同様に透明性と保存安定性についても、良好な結果となった。
【0092】
【0093】
表9において、実施例13と実施例21~24では、D成分が異なる成分であっても、粒径について良好な結果となった。また、実施例22においては、実施例13と同様に、透明性、審美性、保存安定性、オイル製剤の効果についても良好な結果となった。
本発明の製造方法は、水性外層のような水性成分と、油性内層のような油性成分を撹拌し、水性成分中に粒状の油性成分を分散させた組成物の製造方法に利用することができる。
本発明の製造方法により製造された透明多層分散体組成物は、化粧料として、スキンケア組成物、ボディケア組成物、ヘアケア組成物など利用することもできる。
また、本発明の製造方法により製造された透明多層分散体組成物は、食品の分野に利用することもできる。