(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187448
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20221212BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20221212BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20221212BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B23Q3/155 F
B23Q17/09 C
B23Q11/08 Z
B23Q17/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111487
(22)【出願日】2021-07-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2021094981
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】島ノ江 洋司
【テーマコード(参考)】
3C002
3C011
3C029
【Fターム(参考)】
3C002HH01
3C002HH06
3C002KK04
3C002LL01
3C011DD03
3C029DD04
3C029DD08
3C029DD20
3C029EE13
3C029EE20
(57)【要約】
【課題】工具を撮影する機材を保護するシャッターと工具交換装置との干渉を防止する。
【解決手段】工具を取り付けて移動可能な取付部と、取付部の工具交換を行う工具交換部と、取付部に取り付けられた工具を撮像する撮像部と、撮像部の受光面を開放する開状態と受光面を閉じる閉状態とを移動可能な第1シャッターと、第1シャッターの開状態を検知する第1センサーと、を有し、第1シャッターは、第1シャッターの開状態において工具交換部の可動範囲内の位置に設置され、第1センサーが開状態を検知していない場合、工具交換部が移動し取付部に工具を取り付ける。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を取り付けて移動可能な取付部と、
前記取付部の工具交換を行う工具交換部と、
前記取付部に取り付けられた前記工具を撮像する撮像部と、
前記撮像部の受光面を開放する開状態と前記受光面を閉じる閉状態とを移動可能なシャッターと、
前記シャッターの前記開状態を検知するセンサーと、を有し、
前記シャッターは、前記シャッターの前記開状態において前記工具交換部の可動範囲内の位置に設置され、
前記センサーが前記開状態を検知しない場合、前記工具交換部が移動し前記取付部に前記工具を取り付ける、工作機械。
【請求項2】
前記センサーは、リミットスイッチであって、前記閉状態の前記シャッターが前記受光面を覆う蓋部分の裏側が前記シャッターの前記開状態において当接する位置に、設置されている、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
工具を取り付けて移動可能な取付部と、
前記取付部の工具交換を行う工具交換部と、
前記工具の撮像における照明を行う照明部と、
前記照明部の発光面を開放する開状態と前記発光面を閉じる閉状態とを移動可能なシャッターと、
前記シャッターの前記開状態を検知するセンサーと、を有し、
前記シャッターは、前記シャッターの前記開状態において前記工具交換部の可動範囲内の位置に設置され、
前記センサーが前記開状態を検知しない場合、前記工具交換部が移動し前記取付部に前記工具を取り付ける、工作機械。
【請求項4】
前記センサーは、リミットスイッチであって、前記閉状態の前記シャッターが前記発光面を覆う蓋部分の裏側が前記シャッターの前記開状態において当接する位置に、設置されている、請求項3に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を撮影する機材を保護するシャッターを備える工作機械における工具交換の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、ワークを所望の形状に切削加工する装置や、金属粉末などを積層してワークを作る装置がある。切削加工する工作機械には、回転するワークに切削用の工具を当てることでワークを加工するターニングセンタと、回転する工具をワークに当てることでワークを加工するマシニングセンタ、これらの機能を複合的に備える複合加工機などがある。
【0003】
主軸あるいは刃物台などの工具保持部に工具は固定される。工作機械は、あらかじめ用意された加工プログラムにしたがって、工具を交換しつつ、工具保持部を動かしながらワークを加工する。ワークとの摩擦により工具の刃先は徐々に摩耗する。作業者は、適宜、工具長を確認しながら工具寿命を判断する必要がある(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-143216号公報
【特許文献2】特開2017-21472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工具の使用前または使用後に、適宜、工具の形状は検査される。工具の検査に際しては、カメラにより工具を撮像し、撮像画像に基づいて工具形状を判定する方法が考えられる。加工作業中は、いいかえれば、カメラを使わないときには、カメラ等の撮像機材をシャッターにより保護する。そのため、シャッターは、カメラの使用開始時に開放され、使用終了時に閉鎖されるように制御される。
【0006】
但し、シャッターの稼働範囲が、工具交換装置の稼働範囲と重なる構成になっている場合には、工具交換時において、工具交換装置とシャッターとが干渉しないようにしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本開示は、請求項に記載する技術を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、工具を撮影する機材を保護するシャッターと工具交換装置との干渉を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】工具認識領域における工具、カメラおよび照明装置の位置関係を示す模式図である。
【
図4】工具認識領域における各機構の側断面図である。
【
図5】第1シャッターの覆い面の裏側を示す図である。
【
図6】工作機械および画像処理装置のハードウェア構成図である。
【
図7】工具交換のための処理過程を示すフローチャートである。
【
図8】参考例における工具認識領域における各機構の側断面図である。
【
図9】工作機械の実装例における工具認識領域の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、工作機械100の外観図である。
本実施形態における工作機械100は、加工領域200内に配置されるワークを加工する複合加工機である。ワークは保持部104に固定され、主軸に取り付けられる工具102により切削される。保持部104は駆動機構により回転駆動される。この例では、主軸が「撮像領域内で工具を保持可能な工具保持部」に相当する。ターニングセンタの場合には、刃物台が「撮像領域内で工具を保持可能な工具保持部」に相当する。
【0011】
工具102が工具認識領域210内に挿入されたとき、上方の照明装置108は工具102を照明し、下方のカメラ106は工具102を撮像する。カメラ106は、「取付部に取り付けられた工具102を撮像する撮像部」に相当する。照明装置108は、「工具102の撮像における照明を行う照明部」に相当する。このときの撮像画像に基づいて工具登録および工具検査が実行される。工具認識領域210の構成については次の
図2に関連して更に詳述する。
【0012】
工作機械100は、外部を遮断するカバー202を備える。カバー202は、ドア204を備える。作業者は、ドア204を開口して、ワークの取り付けおよびワークの取り出しを行う。操作盤206は、作業者から、工作機械100に対する各種操作を受け付ける。
【0013】
操作盤206は、画像処理装置110と接続される。作業者は、画像処理装置110により工作機械100の作業状況を遠隔監視できる。本実施形態においては、工作機械100本体と画像処理装置110は有線ケーブルを介して接続される。画像処理装置110は、工作機械100の内部、たとえば、操作盤206の内部装置として形成されてもよい。
【0014】
操作盤206は工作機械100の一部として形成されてもよいし、工作機械100から着脱可能かつ運搬可能に構成されてもよい。
【0015】
工具格納部130は、複数の工具102を格納する。工具格納部130に格納される複数の工具102から工具交換部(後述)により工具102を取得し、これを主軸に装着する。なお、
図1に示すように、水平方向にY軸とZ軸、垂直方向にX軸を設定するものとする。Z軸方向は、主軸およびワークの軸方向に対応する。
【0016】
図2は、工具認識領域210における工具102、カメラ106および照明装置108の位置関係を示す模式図である。
工具102は、ワークの加工に利用される刃部112と、主軸116のホルダ118に固定されるシャンク部114を含む。主軸116は、工具102を保持しつつ、回転および移動可能に構成される。また、主軸116は、保持している工具を回転させることもできる。
【0017】
カメラ106は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、CCD(Charge-Coupled Device)などのイメージセンサ(撮像素子)を備える。カメラ106は、主軸116に取り付けられた工具102を下(X軸方向)から撮像する。カメラ106は画像処理装置110と接続され、撮像画像は画像処理装置110に送信される。カメラ106は工具認識領域210に固定される。主軸116がZ軸を軸心として工具102を回転させることにより、複数方向から工具102を撮像できる。また、主軸116が工具102を水平方向(YZ方向)に動かすことにより、工具102の複数箇所を撮像できる。
【0018】
カメラ106に対向するように、上部には照明装置108が固定される。照明装置108は工具102を上から照明する。照明装置108による透過照明により、カメラ106は、工具102の輪郭位置を把握しやすい、コントラストの高い撮像画像を取得できる。
【0019】
ユーザは、工具102を新規登録するときには(以下、「工具登録」とよぶ)、操作盤206において工具登録モードに設定し、主軸116に新規の工具102を取り付ける。次に、任意の工具IDを入力する。主軸116は工具102を移動・回転させ、固定されたカメラ106は工具102をさまざまな位置および方向から自動的に撮像する。カメラ106により得られた多数の撮像画像から、工具形状が認識され、工具IDと工具形状が対応づけて登録される。このような制御方法により、工具102ごとに、工具形状を自動的に工具IDに対応づけて登録できる。工具形状は、二次元データあるいは三次元データとして形成される。
【0020】
また、加工作業前あるいは加工作業後の工具102について検査を実行するときにも、主軸116は工具102を工具認識領域210に進入させる。新規登録時と同様、主軸116は工具102を移動・回転させ、カメラ106は工具102をさまざまな位置および方向から自動的に撮像する。カメラ106により得られた多数の撮像画像から、工具形状が認識される。以下、このような加工中に適宜実行される検査を「工具検査」とよぶ。作業者は、工具登録時の工具形状データと工具検査時の工具形状データを比較することにより、工具102の摩耗度、欠損の有無を判定する。
【0021】
主軸116から見て、工具認識領域210の奥(Y軸負方向側)に工具格納部130が存在する(
図1参照)。工具交換に際しては、主軸116は工具認識領域210内に深く進入し、工具格納部130において工具交換を受ける。このときには、カメラ106および照明装置108は内部シャッター(後述)により保護される。一方、工具登録および工具検査のときには、主軸116は工具認識領域210に比較的浅く進入する。工具交換のときには内部シャッターとホルダ118、主軸116との干渉が生じないように制御する。内部シャッターについては
図4に関連して後述する。上側壁部340、下側壁部342、開口状態の外部カバー300aおよび閉鎖状態の外部カバー300bについては、
図3の説明と併せて後述する。
【0022】
図3は、工具認識領域210の周辺斜視図である。
加工領域200の一部に、より具体的には、ワークを固定する保持部104の上方に工具認識領域210(空間)が形成される。上述したように、工具認識領域210は、カメラ106および照明装置108を含む。加工領域200は、工具認識領域210を介して工具格納部130とつながる。
【0023】
外部カバー300は、工具認識領域210を閉鎖する可動式の仕切板である。ワークの加工時においては、工具認識領域210は外部カバー300により閉鎖される。加工中の加工領域200においては、ワークと工具102との摩擦熱を除去するための冷却液であるクーラントが噴射される。また、加工領域200内ではワークの切り屑も飛散する。このため、外部カバー300により工具認識領域210を閉鎖することで、クーラント等が工具認識領域210内に入り込むのを防止する。
図2に示したように、外部カバー300は、工具認識領域210を囲む上側壁部340と下側壁部342の内側に設けられている。外部カバー300を上側壁部340と下側壁部342の外側に設けてもよい。外部カバー300は、X軸方向(上下方向)に移動可能である。
図2の例では、外部カバー300aが下側に位置する状態で、上側壁部340と下側壁部342の間の口が開いている。工具102が工具認識領域210へ入っていないときに外部カバー300bが上方に移動すると、上側壁部340と下側壁部342の間の口が閉じられる。このように、外部カバー300を上下に移動させれば、外部カバー300に付着したクーラントの落下(飛散)を防ぐことができる。
図3の例では、外部カバー300が上側に位置する状態で、上側壁部340と下側壁部342の間の口が開いている。工具102が工具認識領域210へ入っていないときに外部カバー300が下方に移動すると、上側壁部340と下側壁部342の間の口が閉じられる。外部カバー300をY軸方向(横方向)に移動可能とし、外部カバー300をY軸方向(横方向)に移動させることによって、開口状態と閉鎖状態を変化させてもよい。また、外部カバー300をX軸方向(上下方向)およびY軸方向(横方向)に移動可能とし、外部カバー300をX軸方向(上下方向)とY軸方向(横方向)に同時に移動させることによって、開口状態と閉鎖状態を変化させてもよい。
【0024】
測定コマンド等により工具検査を指示されたとき、工作機械100はワークの加工を中止する。このとき、工作機械100は、クーラントの噴射も中止させる。次に、主軸は、工具認識領域210の手前の所定位置(以下、「待機位置」とよぶ)に工具102を移動させ、待機位置にて工具102を高速回転させる。工具102を高速回転させることにより、工具102に付着しているクーラントおよび切り屑(以下、まとめて「付着物」とよぶ)を振り落とす。以下、待機位置において付着物を除去するために工具102を高速回転させることを「清掃回転」とよぶ。
【0025】
清掃回転後に外部カバー300が開口し、工具を工具認識領域210に進入させる。工具認識領域210に挿入された工具102をカメラ106で撮像することにより、工具検査が実行される。
【0026】
上述したように、加工領域200は工具認識領域210を経由して工具格納部130につながっている。したがって、工具交換を行うときには、主軸を工具認識領域210の奥深くに差し込む。工具検査だけでなく、工具交換のときにも工具は工具認識領域210を通過するので、通過前にも同様にして清掃回転を実行してもよい。
【0027】
図4は、工具認識領域210における各機構の側断面図である。
工具102は、カメラ106と照明装置108の中間に挿入される。カメラ106の側部には下方から工具102を照らすための副照明装置308も設置される。カメラ106の横にはカメラ106の受光面を覆うための第1シャッター304が設置される。第1シャッター304は、カメラ106の受光面を開放する開状態と受光面を閉じる閉状態とを移動可能である。照明装置108の横には照明装置108の発光面を覆うための第2シャッター306が設置される。第2シャッター306は、照明装置108の発光面を開放する開状態と発光面を閉じる閉状態とを移動可能である。以下、第1シャッター304および第2シャッター306をまとめていうときには「内部シャッター」とよぶ。
【0028】
第1シャッター304は、Z軸を回転軸として回転可能に取り付けられ、回転駆動される。第1シャッター304に連結する第1シリンダ305は、たとえば内蔵しているソレノイドの動作によって伸縮する。第1シリンダ305が伸びた状態で第1シャッター304がカメラ106の受光面を閉鎖し、第1シリンダ305が縮んだ状態で第1シャッター304がカメラ106の受光面を開放する。
【0029】
第2シャッター306は、Z軸を回転軸として回転可能に取り付けられ、回転駆動される。第2シャッター306に連結する第2シリンダ307は、たとえば内蔵しているソレノイドの動作によって伸縮する。第2シリンダ307が伸びた状態で第2シャッター306が照明装置108の発光面を閉鎖し、第1シリンダ305が縮んだ状態で第2シャッター306が照明装置108の発光面を開放する。
【0030】
工具検査を開始するときには、第1シャッター304および第2シャッター306の双方が開放される。工具検査を終了するときには、第1シャッター304および第2シャッター306は閉鎖される。工具登録の開始時および終了時についても同様である。
【0031】
工具検査は、工具102を照明装置108により上から照射した状態で、カメラ106により工具102を撮像する。このため、第1シャッター304および第2シャッター306の双方に対して開放指示信号が送信される。
【0032】
また、工具交換のときには、主軸116は工具検査時に比べて工具認識領域210に深く進入する。このとき、内部シャッターが開放されていると、内部シャッターが主軸116と干渉する可能性がある。つまり、第1シャッター304は、第1シャッター304の開状態において工具交換部126の可動範囲内の位置に設置されている。また、第2シャッター306は、第2シャッター306の開状態において工具交換部126の可動範囲内の位置に設置されている。工具交換のときにはカメラ106も照明装置108も使わないため、内部シャッターを閉鎖しておく。工具検査の終了後に、第1シャッター304および第2シャッター306に対して閉鎖指示信号が送信される。
【0033】
本実施形態では、特に、内部シャッターと工具交換部126の干渉の可能性を考慮する。工具交換部126は、取付部(この例では、主軸)の工具交換を行う。
図4に示す位置Pは、工具交換時における工具102の位置を示す。工具交換部126は、回転することにより、工具102を把持または解放する。
図4に示す軌跡Rは、工具交換部126の端部の回転軌跡を示す。軌跡Rの内側は、工具交換部126の稼働範囲を示す。工具交換部126の稼働範囲とは、工具交換の動作において移動する工具交換部126が通過する領域である。工具交換部126の移動には、回転運動が含まれる。工具交換部126、特にその先端部は第1シャッター304および第2シャッター306のいずれかが開状態にあるとき、それらと干渉する可能性もある。したがって、第1シャッター304および第2シャッター306のいずれか一方でも開放されている場合には、工具交換部126による工具交換を行わないようにする。
【0034】
図5は、第1シャッター304の覆い面の裏側を示す図である。
図4に示すように、カメラ106の受光面を開放した状態で第1シャッター304の覆い面の裏側になる位置に第1センサー314が設置されている。第1センサー314は、第1シャッター304の開状態を検知する。第1センサー314は、たとえばリミットスイッチである。第1シリンダ305が伸びて第1シャッター304が閉状態のときには、第1センサー314には何も当たらない。第1シリンダ305が縮んで第1シャッター304が開状態になると、第1シャッター304の裏側の面が第1センサー314の先端に当接する。
図5に斜線パターンで示した領域318は、第1シャッター304の覆い面の裏側の面のうち、第1センサー314の先端が当接する部分を示している。第1センサー314は、領域318に当たった先端が押し込まれると、第1シャッター304が開状態であることを検知する。つまり、リミットスイッチがOFFであれば第1シャッター304が閉状態であることを意味し、リミットスイッチがONであれば第1シャッター304が開状態であることを意味する。このように、リミットスイッチの第1センサー314は、閉状態の第1シャッター304がカメラ106の受光面を覆う蓋部分の裏側が第1シャッター304の開状態において当接する位置に、設置されている。
【0035】
同様に、照明装置108の発光面を開放した状態で第2シャッター306の覆い面の裏側になる位置に第2センサー316が設置されている。第2センサー316は、第2シャッター306の開状態を検知する。第2センサー316は、たとえばリミットスイッチである。第2シリンダ307が伸びて第2シャッター306が閉状態のときには、第2センサー316には何も当たらない。第2シリンダ307が縮んで第2シャッター306が開状態になると、第2シャッター306の裏側の面が第2センサー316の先端に当接する。第2センサー316は、第2シャッター306の裏側の面に当接した先端が押し込まれると、第2シャッター306が開状態であることを検知する。つまり、リミットスイッチがOFFであれば第2シャッター306が閉状態であることを意味し、リミットスイッチがONであれば第2シャッター306が開状態であることを意味する。このように、リミットスイッチの第2センサー316は、閉状態の第2シャッター306が照明装置108の発光面を覆う蓋部分の裏側が第2シャッター306の開状態において当接する位置に、設置されている。
【0036】
図6は、工作機械100および画像処理装置110のハードウェア構成図である。
工作機械100は、操作制御装置120、加工制御装置122、加工装置124、工具交換部126および工具格納部130を含む。数値制御装置として機能する加工制御装置122は、加工プログラムにしたがって加工装置124に制御信号を送信する。加工装置124は、加工制御装置122からの指示にしたがって主軸116を動かしてワークを加工する。加工制御装置122は、第1センサー314を用いて第1シャッター304の開状態を検知する処理と、第2センサー316を用いて第2シャッター306の開状態を検知する処理とを行うシャッター検知部330を有する。
【0037】
操作制御装置120は、操作盤206を含み、加工制御装置122を制御する。工具格納部130は工具102を格納する。工具交換部126は、いわゆるATC(Automatic Tool Changer)に対応する。工具交換部126は、加工制御装置122からの交換指示にしたがって、工具格納部130から工具102を取り出し、主軸116にある工具102と取り出した工具102を交換する。
【0038】
操作制御装置120は、シャッター制御部320を含む。シャッター制御部320は、外部カバー300および内部シャッター(第1シャッター304および第2シャッター306)を開閉させる。
【0039】
画像処理装置110は、主として、工具形状認識等の画像処理を行う。上述したように、画像処理装置110は操作制御装置120の一部として構成されてもよい。画像処理装置110は、一般的なラップトップPC(Personal Computer)あるいはタブレット・コンピュータであってもよい。
【0040】
なお、画像処理装置110、操作制御装置120および加工制御装置122は、プロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され演算器に処理命令を供給するソフトウェアやプログラムを画像処理装置110とは別個のオペレーティングシステム上で実現される。
【0041】
図7は、工具交換のための処理過程を示すフローチャートである。
加工制御装置122が加工プログラムにおける所定の工具交換コマンドを検出したときに、
図7に示す処理が開始される。
【0042】
シャッター検知部330は、第1センサー314から第1シャッター304に関する検知結果を取得する。シャッター検知部330が、第1センサー314によって第1シャッター304の開状態が検知されたと判定した場合には(S10のY)、加工制御装置122は、工具交換を行なわない。つまり、加工制御装置122は、工具交換部126に工具交換を指示する前に、NCプログラムの実行を中断する。
【0043】
NCプログラムの実行を中断した場合のリカバリーとして、加工制御装置122は、作業者に第1シャッター304が開放されているために工具交換できない旨の警告を知らせる。具体的には、加工制御装置122が、画像処理装置110又は操作盤206に当該警告を出力させる。作業者は、画像処理装置110又は操作盤206を操作して、シャッター制御部320に第1シャッター304の閉鎖を命令する。シャッター制御部320は、この命令に従って第1シリンダ305を動作させて第1シャッター304を閉鎖させる。あるいは、加工制御装置122が、自動的にシャッター制御部320に第1シャッター304の閉鎖を命令してもよい。作業者が手動で第1シャッター304を閉じさせてもよい。
【0044】
S12でNCプログラムの実行を中断した後、シャッター検知部330がS10の判定を繰り返し、第1センサー314によって第1シャッター304の開状態が検知されなくなるまで、つまり閉状態になるまで待機する(S10のN)。
【0045】
最初のS10の処理においてシャッター検知部330が第1センサー314によって第1シャッター304の開状態が検知されない、つまり閉状態であると判定した場合、あるいは上述のように中断のリカバリーによって第1シャッター304が閉鎖されると、S14の処理に移る。
【0046】
シャッター検知部330は、第2センサー316から第2シャッター306に関する検知結果を取得する。シャッター検知部330が、第2センサー316によって第2シャッター306の開状態が検知されたと判定した場合には(S14のY)、加工制御装置122は、工具交換を行なわない。つまり、加工制御装置122は、工具交換部126に工具交換を指示する前に、NCプログラムの実行を中断する。
【0047】
NCプログラムの実行を中断した場合のリカバリーとして、加工制御装置122は、第1シャッター304の場合と同様に、作業者に第2シャッター306が開放されているために工具交換できない旨の警告を知らせる。作業者は、第1シャッター304の場合と同様に、画像処理装置110又は操作盤206を操作して、シャッター制御部320に第2シャッター306の閉鎖を命令する。あるいは、加工制御装置122が、自動的にシャッター制御部320に第2シャッター306の閉鎖を命令してもよい。シャッター制御部320は、この命令に従って第2シリンダ307を動作させて第2シャッター306を閉鎖させる。作業者が手動で第2シャッター306を閉じさせてもよい。
【0048】
S16でNCプログラムの実行を中断した後、シャッター検知部330がS14の判定を繰り返し、第2センサー316によって第2シャッター306の開状態が検知されなくなるまで待機する(S14のN)。
【0049】
最初のS14の処理においてシャッター検知部330が第2センサー316によって第2シャッター306の開状態が検知されない、つまり閉状態であると判定した場合、あるいは上述のように中断のリカバリーによって第2シャッター306が閉鎖されると、S18の処理に移る。
【0050】
このようにして、第1シャッター304および第2シャッター306がいずれも開状態でないことを確認してから、加工制御装置122は、工具交換部126に工具交換を指示する(S18)。
【0051】
つまり、第1センサー314が開状態を検知していない場合、工具交換部126が移動し取付部(この例では、主軸116)に工具102を取り付ける。また、工作機械100は、第2センサー316が開状態を検知していない場合、工具交換部126が移動し取付部に工具102を取り付ける。
【0052】
[変形例]
シャッター検知部330は、カメラ106に撮像を指示し、撮像画像が暗く何も写っていない場合に、第1シャッター304の閉状態を検知してもよい。また、シャッター検知部330は、撮像画像が明るければ、さらに第2シャッター306の開状態を検知してもよい。撮像画像の明度が基準値よりも高ければ照明装置108の照明が行われていることになるので、シャッター検知部330は、第2シャッター306の開状態も検知できる。
【0053】
また、工具交換後に、カメラ106の校正作業を行ってもよい、そのために、数値制御装置(例えば、加工制御装置122)は、カメラ106や照明部(例えば、照明装置108)の校正情報を記憶している形態でもよい。校正情報は、カメラ106を固定した固定部の初期の設置位置、カメラ106を固定した固定部の初期の設置位置と対応する機械座標、カメラ106のレンズの中心位置などの情報になる。画像処理装置110は、工具交換前に撮像した画像をもとに、最初のカメラ106の設置位置からのずれを算出し、ずれの量が一定値を超えた場合に、カメラ106の再固定や交換が必要な時期の報知を行う。同様に、画像処理装置110は、工具交換前に撮像した画像をもとに、最初の照明部の設置位置からのずれを算出し、ずれの量が一定値を超えた場合に、照明部の再固定などの報知を行う。
【0054】
[参考例]
図8は、参考例における工具認識領域における各機構の側断面図である。
シリンダセンサーを第1センサーおよび第2センサーとして用いてもよい。第1シャッター304を駆動する第1シリンダ305内に設けられた第1シリンダセンサー324が、実施形態で例示したリミットスイッチの代わりとして用いられる。第1シリンダセンサー324は、第1シリンダ305が伸びているときに第1シャッター304の閉状態を検知し、第1シリンダ305が縮んでいるときに第1シャッター304の開状態を検知する。同様に、第2シャッター306を駆動する第2シリンダ307内に設けられた第2シリンダセンサー326が、実施形態で例示したリミットスイッチの代わりとして用いられる。第2シリンダセンサー326は、第2シリンダ307が伸びているときに第2シャッター306の閉状態を検知し、第2シリンダ307が縮んでいるときに第2シャッター306の開状態を検知する。
【0055】
図9は、工作機械100の実装例における工具認識領域210の側面図である。
ワーク主軸105は主軸台170に回転可能に支持され、その主軸台170にカメラ106が固定されている。照明装置108を支持するアーム172は、主軸台170の上方に設けられている。工具検査の際には、工具102における撮像対象部(検査のために撮像される部分)が検査領域212に配置される。鉛直線L1に沿って見た場合(または、鉛直線L1の上方から見た場合)、照明装置108と第2シャッター306とが、カメラ106と重ならない位置関係を有する程度に傾斜角θで光軸L2が傾けられる(図中の鉛直線L1と平行な二点鎖線参照)。光軸L2を傾斜させることで、照明装置108を固定しているアーム172から離れた位置に工具102を移動させることになるため、工具径が大きい工具102を撮像することも可能となる。
【0056】
図示するように、照明装置108の第2シャッター306が開いていると、工具交換の動作において工具交換部126が第2シャッター306に当たる。一方、照明装置108の第2シャッター306が閉じていると、工具交換の動作において工具交換部126が第2シャッター306に当たらない。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0058】
100 工作機械、102 工具、104 保持部、106 カメラ、108 照明装置、110 画像処理装置、112 刃部、114 シャンク部、116 主軸、118 ホルダ、120 操作制御装置、122 加工制御装置、124 加工装置、126 工具交換部、130 工具格納部、138 表示部、200 加工領域、202 カバー、204 ドア、206 操作盤、210 工具認識領域、300 外部カバー、304 第1シャッター、305 第1シリンダ、306 第2シャッター、307 第2シリンダ、308 副照明装置、314 第1センサー、316 第2センサー、320 シャッター制御部、324 第1シリンダセンサー、326 第2シリンダセンサー、330 シャッター検知部、340 上側壁部、342 下側壁部