(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187461
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】電極構造体、及びグリップセンサ
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
B62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205286
(22)【出願日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2021095421
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山田 匠
(72)【発明者】
【氏名】澤田 剛輝
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DB13
(57)【要約】
【課題】ステアリングホイールのリムに取り付けられた状態において、導電性ワイヤが導電布に対して機械的な負荷を掛けるのを抑制しやすくすること。
【解決手段】電極構造体110は、基材111と、基材111の第1面111aに配置される導電布112と、基材111の第1面111aと反対側の第2面111bに導電布112と電気的に絶縁された状態で配置される導電性ワイヤ114と、を備える。基材111は、ステアリングホイールのリムに取り付けられた状態において、リムに設けられた溝に嵌め込まれる第1領域A1と、リムの溝以外の部分に配置される第2領域A2と、を有している。第1領域A1における導電性ワイヤ114の配線密度は、第2領域A2における導電性ワイヤ114の配線密度よりも低い。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の第1面に配置される導電布と、
前記基材の前記第1面と反対側の第2面に前記導電布と電気的に絶縁された状態で配置される導電性ワイヤと、を備え、
前記基材は、ステアリングホイールのリムに取り付けられた状態において、前記リムに設けられた溝に嵌め込まれる第1領域と、前記リムの前記溝以外の部分に配置される第2領域と、を有しており、
前記第1領域における前記導電性ワイヤの配線密度は、前記第2領域における前記導電性ワイヤの配線密度よりも低い、
電極構造体。
【請求項2】
前記第1領域は、前記基材が前記リムに取り付けられた状態において、前記リムの外周に位置する第3領域と、前記リムの内周に位置する第4領域と、を更に有しており、
前記第3領域における前記導電性ワイヤの配線密度は、前記第4領域における前記導電性ワイヤの配線密度よりも低い、
請求項1に記載の電極構造体。
【請求項3】
前記第3領域は、前記基材が前記リムに取り付けられた状態において、前記リムの前方側の頂部と、前記リムの後方側の頂部と、を含む、
請求項2に記載の電極構造体。
【請求項4】
前記基材が前記リムに取り付けられた状態において、前記溝を挟んだ両側に位置する前記導電布は、前記第3領域にてつながっており、前記第4領域ではつながっていない、
請求項2又は3に記載の電極構造体。
【請求項5】
前記導電性ワイヤは、前記第4領域を通過し、かつ、前記第3領域を通過しないようにして前記第2領域において折り返されている、
請求項2~4のいずれか1項に記載の電極構造体。
【請求項6】
前記第4領域に配置される前記導電性ワイヤ、及び、前記第2領域に配置される前記導電性ワイヤは、前記基材の厚さ方向から見た場合において、波状に配置され、
前記基材の幅方向において、前記第4領域に配置される前記導電性ワイヤの振幅は、前記第2領域に配置される前記導電性ワイヤの振幅よりも小さい、
請求項2~5のいずれか1項に記載の電極構造体。
【請求項7】
前記第4領域に配置される前記導電性ワイヤ、及び、前記第3領域に配置される前記導電性ワイヤは、前記基材の厚さ方向から見た場合において、波状に配置され、
前記基材の幅方向において、前記第4領域に配置される前記導電性ワイヤの振幅は、前記第3領域に配置される前記導電性ワイヤの振幅よりも小さい、
請求項2~4のいずれか1項に記載の電極構造体。
【請求項8】
前記導電性ワイヤは、接地され、
前記第1領域に存在する前記導電性ワイヤの数は、1つである、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電極構造体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の前記電極構造体と、
前記導電布に基づいて形成される静電容量の変化を検知する制御回路部と、を備える、
グリップセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電容量式のグリップセンサに用いられる電極構造体、及びグリップセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、静電容量式検知システムを備えた車両ステアリングホイールが開示されている。静電容量式検知システムは、ステアリングホイールにおける運転者の手の存否の検知のために用いられる。静電容量式検知システムは、ステアリングホイールの周縁部分に少なくとも部分的に取り付けられている導電性ワイヤと、導電性ワイヤと部分的に重なるように配置された導電層と、を有する静電容量式検知装置を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている静電容量式検知装置(電極構造体)をステアリングホイールのリムに取り付ける場合、静電容量式検知装置がずれるのを防止するために、リムに溝を設け、溝に静電容量式検知装置の一部を嵌め込む場合がある。この場合、溝に押し込まれた導電性ワイヤにより導電層(導電布)に機械的な負荷が掛かることを抑制しやすくすることが望まれる場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、ステアリングホイールのリムに取り付けられた状態において、導電性ワイヤが導電布に対して機械的な負荷を掛けるのを抑制しやすい電極構造体及びグリップセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電極構造体は、基材と、前記基材の第1面に配置される導電布と、前記基材の前記第1面と反対側の第2面に前記導電布と電気的に絶縁された状態で配置される導電性ワイヤと、を備える。前記基材は、ステアリングホイールのリムに取り付けられた状態において、前記リムに設けられた溝に嵌め込まれる第1領域と、前記リムの前記溝以外の部分に配置される第2領域と、を有している。前記第1領域における前記導電性ワイヤの配線密度は、前記第2領域における前記導電性ワイヤの配線密度よりも低い。
【0007】
本開示の一態様に係るグリップセンサは、前記電極構造体と、前記導電布に基づいて形成される静電容量の変化を検知する制御回路部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の電極構造体及びグリップセンサでは、ステアリングホイールに取り付けられた状態において、導電性ワイヤが導電布に対して機械的な負荷を掛けるのを抑制しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、実施の形態におけるグリップセンサが配置された車両の車室の一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、ステアリングホイールのリムの一例を示す正面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態における電極構造体のリムへの巻き付け方の一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、実施の形態におけるグリップセンサの一例を示す背面図である。
【
図3B】
図3Bは、実施の形態における電極構造体の一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図1AのIV-IV線における電極構造体が取り付けられたリムの一例を示す断面図である。
【
図5A】
図5Aは、実施の形態における電極構造体の要部を示す概要図である。
【
図6】
図6は、比較例の電極構造体を示す背面図である。
【
図7A】
図7Aは、比較例の電極構造体の要部を示す概要図である。
【
図8】
図8は、実施の形態の変形例における電極構造体の要部を示す概要図である。
【
図9】
図9は、実施の形態における第4領域における導電性ワイヤと第2領域における導電性ワイヤの関係を示す概要図である。
【
図10】
図10は、実施の形態の変形例における第4領域における導電性ワイヤと第3領域における導電性ワイヤの関係を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一態様に係る電極構造体は、基材と、前記基材の第1面に配置される導電布と、前記基材の前記第1面と反対側の第2面に前記導電布と電気的に絶縁された状態で配置される導電性ワイヤと、を備える。前記基材は、ステアリングホイールのリムに取り付けられた状態において、前記リムに設けられた溝に嵌め込まれる第1領域と、前記リムの前記溝以外の部分に配置される第2領域と、を有している。前記第1領域における前記導電性ワイヤの配線密度は、前記第2領域における前記導電性ワイヤの配線密度よりも低い。
【0011】
これによれば、電極構造体がステアリングホイールのリムに取り付けられた状態において、溝の内側に存在する導電性ワイヤの数を低減することができる。したがって、溝において導電性ワイヤが表層部との間で導電布を圧迫しにくいことから、導電性ワイヤが導電布に対して機械的な負荷を掛けるのを抑制しやすい。
【0012】
本開示の他の態様に係る電極構造体では、前記第1領域は、前記基材が前記リムに取り付けられた状態において、前記リムの外周に位置する第3領域と、前記リムの内周に位置する第4領域と、を更に有している。前記第3領域における前記導電性ワイヤの配線密度は、前記第4領域における前記導電性ワイヤの配線密度よりも低い。
【0013】
これによれば、導電布が比較的集中して配置されやすい領域において、溝の内側に存在する導電性ワイヤの数を更に低減することができる。したがって、導電性ワイヤが導電布に対して機械的な負荷を掛けるのを更に抑制しやすくなる。
【0014】
本開示の他の態様に係る電極構造体では、前記第3領域は、前記基材が前記リムに取り付けられた状態において、前記リムの前方側の頂部と、前記リムの後方側の頂部と、を含む。
【0015】
これによれば、リムを把持する車両の運転者の手のひらの大部分と対向し、導電布が比較的集中して配置されやすい領域において、溝の内側に存在する導電性ワイヤの数を更に低減することができる。したがって、導電性ワイヤが導電布に対して機械的な負荷を掛けるのを更に抑制しやすくなる。
【0016】
本開示の他の態様に係る電極構造体では、前記基材が前記リムに取り付けられた状態において、前記溝を挟んだ両側に位置する前記導電布は、前記第3領域にてつながっており
、前記第4領域ではつながっていない。
【0017】
これによれば、基材の第4領域に相当する部位をステアリングホイールのリムの溝に嵌め込んだ状態において、導電性ワイヤが機械的な負荷を掛ける対象である導電布が存在しない。このため、仮に溝の内側に導電性ワイヤが存在していたとしても、導電性ワイヤにより導電布が圧迫されにくい。
【0018】
本開示の他の態様に係る電極構造体では、前記導電性ワイヤは、前記第4領域を通過し、かつ、前記第3領域を通過しないようにして前記第2領域において折り返されている。
【0019】
これによれば、溝において基材の第3領域に相当する部位が嵌め込まれた部位では、溝に導電性ワイヤが存在しないため、導電性ワイヤによる導電布に対する機械的な負荷が発生しない。
【0020】
本開示の他の態様に係る電極構造体では、前記導電性ワイヤは、接地される。前記第1領域に存在する前記導電性ワイヤの数は、1つである。
【0021】
これによれば、導電性ワイヤが導電布に対して機械的な負荷を掛けるのをより抑制しやすい。
【0022】
本開示の一態様に係るグリップセンサは、前記電極構造体と、前記導電布に基づいて形成される静電容量の変化を検知する制御回路部と、を備える。
【0023】
これによれば、電極構造体がステアリングホイールのリムに取り付けられた状態において、溝の内側に存在する導電性ワイヤの数を低減しやすい。したがって、溝において導電性ワイヤが表層部との間で導電布を圧迫しにくいことから、導電性ワイヤが導電布に対して機械的な負荷を掛けるのを抑制しやすい。
【0024】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0026】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。また、以下の実施の形態において、略T字等の表現を用いている。例えば、略T字状は、完全にT字状であることを意味するだけでなく、実質的にT字状である、すなわち、例えば数%程度の誤差を含むことも意味する。また、略T字状は、本開示による効果を奏し得る範囲においてT字状という意味である。他の「略」を用いた表現についても同様である。
【0027】
また、以下の実施の形態では、電極構造体の長手方向をY軸方向とし、電極構造体に平行な面においてY軸方向と垂直な方向をX軸方向とする。また、Y軸方向における、電極構造体の一端側(
図2の左端側)をマイナス側とし、他端側(
図2の右端側)をプラス側とする。同様に、X軸方向における、電極構造体の一端側(
図2の下端側)をマイナス側とし、他端側(
図2の上端側)をプラス側とする。さらに、電極構造体の面に対して垂直な方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向における一方(
図2の紙面奥側)をマイナス側とし、Z軸方向における他方(
図2の紙面手前側)をプラス側とする。
【0028】
(実施の形態)
<構成:グリップセンサ100>
図1Aは、実施の形態におけるグリップセンサ100が配置された車両1の車室の一例を示す図である。
図1Bは、ステアリングホイール3のリム31の一例を示す正面図である。
【0029】
図1Aに示すように、車両1は、ステアリングホイール3、スピーカ、及び、液晶ディスプレイ等の表示装置を備えている。スピーカ及び表示装置は、例えば注意喚起装置として構成されている。
【0030】
ステアリングホイール3は、車両1の操舵輪に対して操舵角を与える。ステアリングホイール3は、リム31と、リム31の内周面に一体的に形成された略T字状のスポーク32と、スポーク32の中央部分に配置されたホーンスイッチ(図示せず)を覆うホーンスイッチカバー(図示せず)とを有している。
【0031】
また、リム31は、
図1Bに示すように、複数(
図1Bでは、4つ)の溝31bを有している。複数の溝31bは、それぞれ対応する箇所においてリム31の径寸法を小さくすることにより形成されている。複数の溝31bは、平面視で(リム31を正面から見て)リム31の周方向に沿って間隔を空けてリム31に設けられている。
【0032】
グリップセンサ100は、手によるステアリングホイール3の把持を検出する静電容量式のセンサであって、車両1のステアリングホイール3に備えられている。具体的には、グリップセンサ100は、ステアリングホイール3のリム31に取り付けられる電極構造体110と、電極構造体110からの信号に基づいて把持を検出する制御回路部140と、電極構造体110を制御回路部140に電気的に接続するハーネス130とを備えている。制御回路部140は、例えばスポーク32に埋設されている。このようなグリップセンサ100は、ステアリングホイール3のリム31の把持を検出する。
【0033】
[電極構造体110]
電極構造体110は、少なくとも1つの電極を有する。この電極では、車両1の運転者(ユーザ)がステアリングホイール3のリム31を把持しているか否かに応じて静電容量が変化する。具体的には、電極構造体110は、ユーザの手と電極構造体110(後述する導電布112)との間の静電容量の変化を検知することによって、ユーザの手がステアリングホイール3に触れているか否かを検出する。ユーザの手がステアリングホイール3から離れている状態では、電極構造体110は、リム31の芯金31a(
図4参照)と導電布112との間の静電容量を検知する。また、ユーザの手がステアリングホイール3に近付く又は接触すると、ユーザの手と導電布112との間に静電容量が形成されるため、静電容量が変化する。検知された静電容量が規定値以上となれば、ユーザの手がステアリングホイール3に触れている、又は、把持していると判断することができる。
【0034】
図2は、実施の形態におけるグリップセンサ100の電極構造体110のリム31への巻き付け方の一例を示す図である。
【0035】
図1A及び
図2に示すように、ステアリングシートとしての電極構造体110は、全体的に弾性、柔軟性及び延性を有するシート状の構造体であって、長尺に形成されている。電極構造体110は、ステアリングホイール3のリム31に取り付けられる。このとき、電極構造体110によって輪が形成されるように、電極構造体110がリム31に巻き付けられる。そして、電極構造体110の両端Ea及びEbは互いに略対向するように配置される。
【0036】
ここで、電極構造体110は、リム31に巻き付けられるときには、引き伸ばされながら巻き付けられる。したがって、上述のように、電極構造体110は、弾性、柔軟性及び延性を有し、例えば、全体として約十%以上引き伸ばされる。
【0037】
また、電極構造体110をリム31に巻き付ける際には、電極構造体110を複数の溝31bの各々に押し込むことにより、電極構造体110の一部が複数の溝31bの各々に嵌め込まれる。これにより、電極構造体110が平面視でリム31の周方向にずれるのを防止している。
【0038】
図3Aは、実施の形態におけるグリップセンサ100の一例を示す背面図である。
図3Bは、実施の形態における電極構造体110の一例を示す断面図である。
図4は、
図1AのIV-IV線における電極構造体110が取り付けられたリム31の一例を示す断面図である。
【0039】
図3A、
図3B、及び
図4に示すように、電極構造体110は、基材111と、導電布112と、粘着層113と、導電性ワイヤ114と、表層部115と、接続端子121と、電線122とを備えている。
【0040】
[基材111]
基材111は、弾性、柔軟性及び延性を有する材質によって長尺のシート状に形成される不織布である。例えば、基材111は、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂によって構成される。基材111は、リム31の形状、及び、大きさに応じて形成される。
【0041】
また、基材111は、第1面111aと第2面111bとを有する。第1面111aには粘着層113を介して導電布112が配置され、第2面111bには導電性ワイヤ114が配置される。つまり、基材111は、導電布112と導電性ワイヤ114とに挟まれている。第1面111aは基材111の一面の一例であり、第2面111bは基材111の一面と反対側の面の一例である。基材111は、電極構造体110がリム31に巻き付けられた際に、引っ張られた状態で導電性ワイヤ114を挟んでリム31に固定される。基材111がリム31に固定された状態において、第2面111bは、ステアリングホイール3のリム31側に向けて配置される。
【0042】
基材111の幅方向の両端縁には、それぞれ複数(
図3Aでは、3つ)の略半円状の切り欠き111cが設けられている。基材111において、幅方向に沿って2つの切り欠き111cに挟まれた箇所は、リム31の溝31bに嵌め込まれる。当該箇所は、後述する第1領域A1(
図5A参照)に相当する。また、基材111において、切り欠き111cが設けられていない箇所は、リム31に巻き付けられる。当該箇所は、後述する第2領域A2(
図5A参照)に相当する。
【0043】
実施の形態では、基材111の幅方向に沿った2つの切り欠き111cに挟まれた箇所(第1領域A1)が3つ存在する。したがって、これらの3つの箇所が、それぞれリム31の4つの溝31bのうちの3つの溝31bに嵌め込まれることになる。なお、残りの1つの溝31bには、電極構造体110の両端Ea及びEbが嵌め込まれる。
【0044】
なお、基材111は、複数の部分に分離されていてもよい。この場合には、複数の部分のそれぞれに導電布112が形成される。
【0045】
[導電布112]
導電布112は、基材111の第1面111aに貼り付けられた粘着層113を介して配置される。つまり、導電布112は、表層部115の裏面、かつ、基材111の第1面111aに配置され、表層部115と基材111とに挟まれている。導電布112は、表層部115の裏面と粘着層113で接着され、かつ、基材111の第1面111aと粘着層113で接着されて、基材111に固定される。基材111の第1面111aは、表層部115側に向けて配置される面である。
【0046】
なお、導電布112は、基材111の第1面111aに、1つだけ配置されていてもよく、複数が配置されていてもよい。
図3Aに示すように、実施の形態では、電極構造体110が2つの導電布112と2つの導電性ワイヤ114とを有する場合を図示している。
【0047】
[粘着層113]
粘着層113は、基材111の第1面111aに貼られ、導電布112を基材111の第1面111a側に固定する。粘着層113は、例えば接着剤、両面テープ等で構成される。粘着層113は、基材レス両面テープであってもよい。この場合、粘着層113は、粘着剤のみで構成される。
【0048】
また、表層部115の裏面にも、粘着層113が形成され、この粘着層113は、導電布112に表層部115を固定する。この粘着層113も、例えば接着剤、両面テープ等で構成されるが、基材レス両面テープであってもよく、粘着剤のみで構成されてもよい。
【0049】
[導電性ワイヤ114]
導電性ワイヤ114は、例えば基材111に縫製された銅線等の金属線(導電線)で構成される。導電性ワイヤ114は、電線114a等を介して制御回路部140に電気的に接続され、かつ接地される接地電極である。具体的には、導電性ワイヤ114は、導電布112と電気的に絶縁された状態で、電線122と異なる電線114aと電気的に接続され、電線114aを介して制御回路部140と電気的に接続される。
【0050】
実施の形態では、導電性ワイヤ114は、例えば、樹脂被覆された金属線であって、ヒータエレメントとして用いられる。つまり、導電性ワイヤ114の表面は、電気的に絶縁されている。制御回路部140によって導電性ワイヤ114に電流が流れると、導電性ワイヤ114が発熱する。この発熱によって、導電性ワイヤ114は、電極構造体110を温めることができ、電極構造体110を温めることによりステアリングホイール3のリム31を温めることができる。これにより、車両1の運転者は、車内が寒くても、そのリム31を快適に把持できる。
【0051】
導電性ワイヤ114は、基材111の第1面111aとは反対側の第2面111bに配置されている。具体的には、導電性ワイヤ114は、ジグザグ形状のパターンが形成されるように、基材111の第1面111aと反対側の第2面111bに形成されるように縫い付けられている。なお、実際には、2つの導電性ワイヤ114は、いずれも折れ曲がっている部分は湾曲している。
【0052】
既に述べたように、実施の形態では、導線性ワイヤ114は2つである。そして、一方(
図3Aにおける左側)の導電性ワイヤ114の両端は、2対の接続端子121のうちの一方(
図3Aにおける左側)の対の接続端子121に電気的及び機械的に接続されている。また、他方(
図3Aにおける右側)の導電性ワイヤ114の両端は、他方(
図3Aにおける右側)の対の接続端子121に電気的及び機械的に接続されている。
【0053】
電極構造体110がリム31に巻き付けられた状態において、導電性ワイヤ114は、リム31の表面に配置され、リム31の表面と接着剤(図示せず)で接着される。つまり
、導電性ワイヤ114は、リム31と基材111とに挟まれる。
【0054】
以下、導電性ワイヤ114の配線構造について
図5A及び
図5Bを用いて詳細に説明する。
図5Aは、実施の形態における電極構造体110の要部を示す概要図である。
図5Bは、
図5AのVB-VB線における電極構造体110の要部の断面図である。
図5Bでは、粘着層113及び表層部115の図示を省略している。
【0055】
図5Aに示すように、基材111は、大別して第1領域A1と、第2領域A2と、を有している。第1領域A1は、電極構造体110がステアリングホイール3のリム31に取り付けられた状態において、リム31に設けられた溝31bに嵌め込まれる領域である。実施の形態では、基材111において幅方向に沿った2つの切り欠き111cに挟まれた箇所が第1領域A1に相当する。第2領域A2は、電極構造体110がステアリングホイール3のリム31に取り付けられた状態において、リム31の溝31b以外の部分に配置される領域である。
【0056】
そして、基材111においては、導電性ワイヤ114は、第1領域A1と第2領域A2とで配線密度が互いに異なるように配置されている。具体的には、第1領域A1における導電性ワイヤ114の配線密度が、第2領域A2における導電性ワイヤ114の配線密度よりも低くなるように、導電性ワイヤ114が基材111に配置されている。
【0057】
ここで、配線密度は、基材111を厚さ方向(Z軸方向)から見た場合において、基材111の単位面積当たりに占める導電性ワイヤ114の面積で表される。言い換えれば、配線密度は、基材111を厚さ方向から見た場合において基材111の単位面積当たりの領域に存在する導電性ワイヤ114の数で表される。つまり、配線密度が高ければ高い程、上記領域に存在する導電性ワイヤ114の数が多くなり、配線密度が低ければ低い程、上記領域に存在する導電性ワイヤ114の数が少なくなる。
【0058】
なお、ここでいう導電性ワイヤ114の数は、基材111の単位面積当たりの領域において、基材111の幅方向(X軸方向)に沿った仮想線と交差する導電性ワイヤ114の数である。したがって、ここでいう導電性ワイヤ114の数は、導電性ワイヤ114の本数とは限らない。
【0059】
図5Aに示す例では、第1領域A1を挟んだ左右両側の第2領域A2の各々に存在する導電性ワイヤ114の数が6つであるのに対して、第1領域A1に存在する導電性ワイヤ114の数が2つである。つまり、第1領域A1における導電性ワイヤ114の配線密度が、第2領域A2における導電性ワイヤ114の配線密度よりも低くなっている。
【0060】
また、実施の形態では、基材111は、第3領域A3と、第4領域A4と、を更に有している。第3領域A3は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、リム31の外周に位置する領域である。言い換えれば、第3領域A3は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、リム31を把持する車両1の運転者の手のひらと対向する領域である。さらに言い換えれば、第3領域A3は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、引き伸ばされて張力が掛かった状態にある部位を主として含む領域である。
【0061】
第4領域A4は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、リム31の内周に位置する領域である。言い換えれば、第4領域A4は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、リム31を把持する車両1の運転者の手の指先と対向する領域である。さらに言い換えれば、第4領域A4は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、縮むことで張力が掛かっていない状態にある部位を主として含む領域であ
る。
【0062】
図5Aに示す例では、第3領域A3は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、リム31の前方側の頂部31cと、リム31の後方側の頂部31dと、を含む領域である。リム31の前方は、リム31を車両1の運転者が把持している状態において、運転者からリム31に向かう向きであり、リム31の後方は、リム31から運転者に向かう向きである。言い換えれば、リム31の前方は、車両1が前進する向きであり、リム31の後方は、車両1が後退する向きである。
【0063】
なお、第3領域A3は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、リム31の外周に位置する領域であればよく、例えばリム31の前方側の頂部31c及び後方側の頂部31dを基準として、幅方向(X軸方向)の寸法が十数%短くてもよいし、十数%長くてもよい。つまり、第3領域A3は、リム31の前方側の頂部31c及び後方側の頂部31dを含む領域であってもよいし、含まない領域であってもよい。
【0064】
そして、基材111においては、導電性ワイヤ114は、更に第3領域A3と第4領域A4とで配線密度が互いに異なるように配置されている。具体的には、第3領域A3における導電性ワイヤ114の配線密度が、第4領域A4における導電性ワイヤ114の配線密度よりも低くなるように、導電性ワイヤ114が基材111に配置されている。
【0065】
図5Aに示す例では、第3領域A3を挟んだ上下両側の第4領域A4の各々に存在する導電性ワイヤ114の数が1つであるのに対して、第3領域A3に存在する導電性ワイヤ114の数が零である。つまり、第3領域A3における導電性ワイヤ114の配線密度が、第4領域A4における導電性ワイヤ114の配線密度よりも低くなっている。
【0066】
したがって、実施の形態では、基材111の第1領域A1に相当する部位をステアリングホイール3のリム31の溝31bに嵌め込んだ状態において、溝31bに存在する導電性ワイヤ114の数は2つとなる。特に、溝31bにおいて基材111の第3領域A3に相当する部位が嵌め込まれた部位では、
図5Bに示すように、溝31bに存在する導電性ワイヤ114の数が零となる。
【0067】
上述のような導電性ワイヤ114の配線構造を実現するために、導電性ワイヤ114は、
図3A及び
図5Aのように基材111にて配置されている。すなわち、実施の形態では、導電性ワイヤ114は、その両端が一対の接続端子121に電気的及び機械的に接続されることで閉ループを構成している。そして、導電性ワイヤ114は、第4領域A4を通過し(横切り)、かつ、第3領域A3を通過しないようにして第2領域A2において折り返されている。
【0068】
[表層部115]
表層部115は、手が触れる部分であり、グリップセンサ100の外周を構成している。つまり、表層部115は、ユーザがリム31を握る際に、ユーザの手と直接接触する部分である。また、表層部115は、革、木材、又は、樹脂等からなり、実施の形態では、革である。
【0069】
[接続端子121及び電線122]
接続端子121は、リング状又は丸型の圧着端子である。接続端子121は、締結部材によって、基材111及び導電布112等に締結されて固定される。
【0070】
電線122は、一端が対応する接続端子121と一対一で電気的及び機械的に接続され、他端が制御回路部140と電気的に接続される。電線122は、導電布112を制御回
路部140に電気的に接続するためのケーブルであり、例えば絶縁被覆された銅線である。また、電線122は、導電布112と電気的に接続された状態で、例えばリベット等の締結部材(図示せず)により固定される。
【0071】
[制御回路部140]
制御回路部140は、例えばスポーク32に埋設されている。制御回路部140は、導電性ワイヤ114及び導電布112と電気的に接続され、導電布112から伝送される信号に基づいて、車両1の運転者(ユーザ9の手によるステアリングホイール3の接触を検出する。制御回路部140は、ユーザの手が表層部115へ接触することを測定する。制御回路部140は、ユーザの手がリム31に接触しているか否か、つまり、その手の接触の検出、及び、その手の接触位置等の検出をする。
【0072】
制御回路部140は、制御回路と、電源回路とを備える。
【0073】
制御回路は、導電布112によって人体とステアリングホイール3との接触を検出するセンサ回路を有する。制御回路は、それぞれの導電布112と電気的に接続され、導電布112によって人体とステアリングホイール3との接触を検出する。
【0074】
具体的には、制御回路は、電線122を介して2つの導電布112に交流の電流を流す、つまり導電布112に測定電位を印加する。制御回路は、電線122によって2つの導電布112と電気的に接続されている。リム31の表層部115に手が接触すると、接触部位に対応する導電布112の静電容量が変化するため、制御回路は、導電布112に流れる電流の電流値(測定電位)に基づいて、導電布112における静電容量の変化を測定する。言い換えれば、制御回路(制御回路部140)は、導電布112に基づいて形成される静電容量の変化を検知する。このようにして、制御回路は、導電布112から出力される静電容量の変化を示す信号から、ステアリングホイール3に手が接触したか否かを検出できる。
【0075】
電源回路は、電線122を介して制御回路と電気的に接続され、制御回路により制御される。また、電源回路は、電線122等を介して導電性ワイヤ114と電気的に接続される。電源回路は、制御回路により、導電布112に測定電位を印加する。
【0076】
なお、電源回路は、制御回路により、導電性ワイヤ114に直流電流が流れるように制御されてもよい。つまり、導電性ワイヤ114は、直流電流が流れることにより、ヒータとしての機能を備えていてもよい。この場合、導電性ワイヤ114には直流電流が流れるだけであるので、導電布112に流れる交流電流から見ると、接地されていることになる。
【0077】
<比較>
以下、実施の形態における電極構造体110の利点について、比較例の電極構造体200との比較を交えて説明する。
図6は、比較例の電極構造体200を示す背面図である。
図7Aは、比較例の電極構造体200の要部を示す概要図である。
図7Bは、
図7AのVIIB-VIIB線における電極構造体200の要部の断面図である。
図7Bでは、粘着層113及び表層部115の図示を省略している。
【0078】
比較例の電極構造体200は、第1領域A1における導電性ワイヤ114の配線密度が、第2領域A2における導電性ワイヤ114の配線密度と略同じである点で、実施の形態における電極構造体110と相違する。具体的には、
図6及び
図7Aに示すように、比較例の電極構造体200では、第1領域A1に存在する導電性ワイヤ114の数が6つであり、第1領域A1を挟んだ左右両側の第2領域A2の各々に存在する導電性ワイヤ114
の数が6つである。つまり、比較例の電極構造体200では、第1領域A1における導電性ワイヤ114の配線密度を低くする工夫を何ら凝らしておらず、導電性ワイヤ114は、導電布112の左右両端にて単に折り返すようにして基材111に配置されている。
【0079】
比較例の電極構造体200では、
図7Bに示すように、ステアリングホイール3のリム31に取り付けられた状態において、実施の形態における電極構造体110よりも多くの導電性ワイヤ114が溝31bの内側に嵌り込むことになる。このため、比較例の電極構造体200では、溝31bの内側にて屈曲した導電性ワイヤ114が、表層部115との間で導電布112を圧迫する可能性がある。
【0080】
一方、実施の形態における電極構造体110では、第1領域A1における導電性ワイヤ114の配線密度が、第2領域A2における導電性ワイヤ114の配線密度よりも低くなるように、導電性ワイヤ114が基材111に配置されている。このため、実施の形態における電極構造体110では、ステアリングホイール3のリム31に取り付けられた状態において、比較例の電極構造体200よりも溝31bの内側に嵌り込む導電性ワイヤ114の数が少なくなっている。このため、実施の形態における電極構造体110では、比較例の電極構造体200と比較して、溝31bにおいて導電性ワイヤ114が表層部115との間で導電布112を圧迫しにくいことから、導電布112に機械的な負荷が掛かりにくい。
【0081】
特に、実施の形態における電極構造体110では、第3領域A3における導電性ワイヤ114の配線密度が、第4領域A4における導電性ワイヤ114の配線密度よりも低くなるように、導電性ワイヤ114が基材111に配置されている。ここで、第3領域A3は、第4領域A4と比較して、導電布112が集中して配置される領域である。このため、第3領域A3における導電性ワイヤ114の配線密度を、第4領域A4における導電性ワイヤ114の配線密度よりも低くすることで、導電布112に機械的な負荷が更に掛かりにくくなる。
図5Bに示す例では、溝31bにおいて基材111の第3領域A3に相当する部位が嵌め込まれた部位では、溝31bに導電性ワイヤ114が存在しないため、導電性ワイヤ114による導電布112に対する機械的な負荷が発生しない。
【0082】
<作用効果>
以上のように、実施の形態における電極構造体110は、基材111と、基材111の第1面111aに配置される導電布112と、基材111の第1面111aと反対側の第2面111bに導電布112と電気的に絶縁された状態で配置される導電性ワイヤ114と、を備える。基材111は、ステアリングホイール3のリム31に取り付けられた状態において、リム31に設けられた溝31bに嵌め込まれる第1領域A1と、リム31の溝31b以外の部分に配置される第2領域A2と、を有している。第1領域A1における導電性ワイヤ114の配線密度は、第2領域A2における導電性ワイヤ114の配線密度よりも低い。
【0083】
これによれば、電極構造体110がステアリングホイール3のリム31に取り付けられた状態において、溝31bの内側に存在する導電性ワイヤ114の数を低減することができる。したがって、溝31bにおいて導電性ワイヤ114が表層部115との間で導電布112を圧迫しにくいことから、導電性ワイヤ114が導電布112に対して機械的な負荷を掛けるのを抑制しやすい。
【0084】
また、実施の形態における電極構造体110では、第1領域A1は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、リム31の外周に位置する第3領域A3と、リム3
1の内周に位置する第4領域A4と、を更に有している。第3領域A3における導電性ワイヤ114の配線密度は、第4領域A4における導電性ワイヤ114の配線密度よりも低い。
【0085】
これによれば、導電布112が比較的集中して配置されやすい領域において、溝31bの内側に存在する導電性ワイヤ114の数を更に低減することができる。したがって、導電性ワイヤ114が導電布112に対して機械的な負荷を掛けるのを更に抑制しやすくなる。
【0086】
また、実施の形態における電極構造体110では、第3領域A3は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、リム31の前方側の頂部31cと、リム31の後方側の頂部31dと、を含む。
【0087】
これによれば、リム31を把持する車両1の運転者の手のひらの大部分と対向し、導電布112が比較的集中して配置されやすい領域において、溝31bの内側に存在する導電性ワイヤ114の数を更に低減することができる。したがって、導電性ワイヤ114が導電布112に対して機械的な負荷を掛けるのを更に抑制しやすい。
【0088】
また、実施の形態における電極構造体110では、導電性ワイヤ114は、第4領域A4を通過し、かつ、第3領域A3を通過しないようにして第2領域A2において折り返されている。
【0089】
これによれば、溝31bにおいて基材111の第3領域A3に相当する部位が嵌め込まれた部位では、溝31bに導電性ワイヤ114が存在しないため、導電性ワイヤ114による導電布112に対する機械的な負荷が発生しない。
【0090】
また、実施の形態におけるグリップセンサ100は、電極構造体110と、導電布112に基づいて形成される静電容量の変化を検知する制御回路部140と、を備える。
【0091】
これによれば、電極構造体110がステアリングホイール3のリム31に取り付けられた状態において、溝31bの内側に存在する導電性ワイヤ114の数を低減しやすい。したがって、溝31bにおいて導電性ワイヤ114が表層部115との間で導電布112を圧迫しにくいことから、導電性ワイヤ114が導電布112に対して機械的な負荷を掛けるのを抑制しやすい。
【0092】
(実施の形態の変形例)
以下では、本変形例の電極構造体110aの基本的な構成は、実施の形態による電極構造体110の基本的な構成と同様であるため、本変形例における電極構造体110aの基本的な構成について適宜説明を省略する。本変形例の電極構造体110aは、
図8に示すように、導電布112の構成が異なる点で、実施の形態の電極構造体110と相違する。
図8は、実施の形態の変形例における電極構造体110aの要部を示す概要図である。
【0093】
具体的には、導電布112は、第1領域A1における幅方向(X軸方向)の寸法が、第2領域A2における幅方向の寸法よりも小さくなっている。そして、基材111を厚さ方向(Z軸方向)から見た場合に、導電布112は、第1領域A1における第3領域A3のみに存在し、第1領域A1における第4領域A4には存在しない。
【0094】
つまり、実施の形態の変形例における電極構造体110aでは、基材111がリム31に取り付けられた状態において、溝31bを挟んだ両側に位置する導電布112は、第3
領域A3にてつながっており、第4領域A4ではつながっていない。
【0095】
これによれば、基材111の第4領域A4に相当する部位をステアリングホイール3のリム31の溝31bに嵌め込んだ状態において、導電性ワイヤ114が機械的な負荷を掛ける対象である導電布112が存在しない。このため、仮に溝31bの内側に導電性ワイヤ114が存在していたとしても、導電性ワイヤ114により導電布112が圧迫されにくい。
【0096】
(その他の変形例)
以上、本開示に係る電極構造体110,110aについて、上記実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思い付く各種変形を実施の形態及び変形例に施したものも、本開示の範囲内に含まれてもよい。
【0097】
例えば、実施の形態及び変形例における電極構造体110,110aでは、ステアリングホイール3は、2つの導電布112と2つの導電性ワイヤ114とを有するが、1つ又は3つ以上の導電布112と、1つ又は3つ以上の導電性ワイヤ114を有していてもよい。例えば、1つの基材111に、4つの導電布112を配置して、ステアリングホイール3の把持位置検出分解能を増やす一方で、同じ基材に導電性ワイヤ114を1つだけ有するようにして、導電性ワイヤ114の構成を簡略化するようにしてもよい。また、導電布112と導電性ワイヤ114の数は必ずしも一致しなくてもよい。
【0098】
また、実施の形態及び変形例における電極構造体110,110aでは、導電性ワイヤ114は、樹脂被覆された金属線であるが、このような構成に限定されるものではない。例えば、導電性ワイヤ114は、樹脂製の線に金属メッキを施した構成であってもよい。
【0099】
また、実施の形態及び変形例における電極構造体110,110aにおいて、導電性ワイヤ114は、導電布112で検出された信号に対するノイズ信号の検出が可能なヒータエレメントとして用いられるが、他の用途に用いられてもよい。例えば、導電性ワイヤ114は、外乱ノイズ検知電極として用いられてもよい。つまり、導電性ワイヤ114は、導電布112において検出される出力信号に対する外乱ノイズを検出するための外乱ノイズ検知電極であってもよい。この場合、制御回路部140は、外乱ノイズ検知電極である導電性ワイヤ114から外乱ノイズ信号を取得する。そして、制御回路部140は、例えば、導電布112の出力信号によって示される値から、その外乱ノイズ信号によって示される値を差し引くことによって、導電布112の出力信号を補正してもよい。その結果、制御回路部140は、手によるリム31の把持をより正確に検出することができる。
【0100】
また、実施の形態及び変形例における電極構造体110,110aにおいて、導電性ワイヤ114が、ヒータエレメント又は外乱ノイズ検知電極として用いられる場合、導電性ワイヤ114が、直接、制御回路部140と接続される構成を示したが、このような構成に限定されるものではない。すなわち、ヒータエレメント又は外乱ノイズ検知電極が、電極構造体110,110aを介して、制御回路部140等の外部回路と接続される構成としてもよい。
【0101】
また、実施の形態及び変形例における電極構造体110,110aにおいて、導電性ワイヤ114は、ヒータ機能を備える構成に限定されるものではなく、直流電流を流さずに、単に接地されているだけの構成であってもよい。つまり、導電性ワイヤ114は、外乱ノイズを遮断するシールド電極として機能してもよい。この場合、導電性ワイヤ114は、その両端が一対の接続端子121に電気的及び機械的に接続されることで閉ループを構成している必要はない。つまり、1本の導電性ワイヤ114の代わりに複数本の導電性ワ
イヤ114を基材111に配置し、これらの導電性ワイヤ114が接地された構成であってもよい。
【0102】
また、実施の形態及び変形例における電極構造体110,110aでは、1つの基材111に対して導電布112及び導電性ワイヤ114を配置することで構成されているが、このような構成に限定されるものではない。例えば、導電布112が配置された第1基材と、導電性ワイヤ114が配置された第2基材と、を互いに結合することにより、電極構造体110,110aが構成されてもよい。この場合、第1基材及び第2基材が基材111に相当する。
【0103】
また、導電性ワイヤ114を接地させてシールド電極として用いる場合、閉ループを構成する必要はないため、第1領域A1に存在する導電性ワイヤ114の数を1つで構成することができる。つまり、実施の形態及び変形例における電極構造体110,110aでは、導電性ワイヤは、接地されていてもよい。そして、第1領域A1に存在する導電性ワイヤ114の数は、1つであってもよい。
【0104】
これによれば、導電性ワイヤ114が導電布112に対して機械的な負荷を掛けるのをより抑制しやすい。
【0105】
また、例えば
図9に示すように、第4領域A4における導電性ワイヤ114は、第2領域A2における導電性ワイヤ114よりも基材111の長手方向(Y軸方向)に対して平行に近くなるように配置されてもよい。
図9は、実施の形態における第4領域A4における導電性ワイヤと第2領域A2における導電性ワイヤの関係を示す概要図である。
【0106】
具体的には、
図9に示す電極構造体110bでは、第4領域A4における導電性ワイヤ114、及び、第2領域A2における導電性ワイヤ114は、基材111を厚さ方向(Z軸方向)から見た場合において、波状に配置されている。
【0107】
そして、
図9に示す電極構造体110bでは、基材111の幅方向(X軸方向)において、第4領域A4における導電性ワイヤ114の振幅W2は、第2領域A2における導電性ワイヤ114の振幅W1よりも小さい。
【0108】
より具体的には、(1)基材111の幅方向(X軸方向)において、第4領域A4における1つの導電性ワイヤ114の位置の最大値B1と最小値B2との間の長さ(つまり、振幅W2=B1-B2)よりも、(2)基材111の幅方向(X軸方向)において、第2領域A2における1つの導電性ワイヤ114の位置の最大値C1と最小値C2との間の長さ(つまり、振幅W1=C1-C2)の方が長くなるように配置されている。
【0109】
なお、ここでは、基材111の幅方向(X軸方向)における導電性ワイヤ114の位置は、紙面下方に向かう程小さく、紙面上方に向かう程大きくなる、と定義する。後述する
図10でも同様である。
【0110】
第4領域A4は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、縮むことで張力が掛かっていない状態にある部位を主として含む領域である。このため、第4領域A4における導電性ワイヤ114が、第2領域A2における導電性ワイヤ114よりも基材111の長手方向(Y軸方向)に対して平行に近くなるように配置されることにより、第4領域A4における導電性ワイヤ114の余剰を少なくすることができる。結果、第4領域A4における導電性ワイヤ114の余剰が基材111から浮き出にくくなり、外観性を向上させることができる。また、第4領域A4における導電性ワイヤ114の余剰が基材111から浮き出にくくなることで、ユーザの手がステアリングホイール3のリム31を把持する際の触感に影響を与えにくい。
【0111】
また、例えば
図10に示すように、第3領域A3にも導電性ワイヤ114が配置される場合、第4領域A4における導電性ワイヤ114は、第3領域A3における導電性ワイヤ114よりも基材111の長手方向(Y軸方向)に対して平行に近くなるように配置されてもよい。
図10は、実施の形態の変形例における第4領域A4における導電性ワイヤと第3領域A3における導電性ワイヤの関係を示す概要図である。
【0112】
具体的には、
図10に示す電極構造体110cでは、第4領域A4における導電性ワイヤ114、及び、第3領域A3における導電性ワイヤ114は、基材111を厚さ方向(Z軸方向)から見た場合において、波状に配置されている。
【0113】
そして、
図10に示す電極構造体110cでは、基材111の幅方向(X軸方向)において、第4領域A4における導電性ワイヤ114の振幅W2は、第3領域A3における導電性ワイヤ114の振幅W3よりも小さい。
【0114】
より具体的には、(1)基材111の幅方向(X軸方向)において、第4領域A4における1つの導電性ワイヤ114の位置の最大値B1と最小値B2との間の長さ(つまり、振幅W2=B1-B2)よりも、(2)基材111の幅方向(X軸方向)において、第3領域A3における1つの導電性ワイヤ114の位置の最大値D1と最小値D2との間の長さ(つまり、振幅W3=D1-D2)の方が長くなるように配置されている。
【0115】
第3領域A3と比べ、第4領域A4は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、縮むことで張力が掛かっていない状態にある部位を主として含む領域である。このため、第4領域A4における導電性ワイヤ114が、第3領域A3における導電性ワイヤ114よりも基材111の長手方向(Y軸方向)に対して平行に近くなるように配置されることにより、第4領域A4における導電性ワイヤ114の余剰を少なくすることができる。結果、第4領域A4における導電性ワイヤ114の余剰が基材111から浮き出にくくなり、外観性を向上させることができる。また、第4領域A4における導電性ワイヤ114の余剰が基材111から浮き出にくくなることで、ユーザの手がステアリングホイール3のリム31を把持する際の触感に影響を与えにくい。
【0116】
一方、第4領域A4と比べ、第3領域A3は、基材111がリム31に取り付けられた状態において、張力が掛かっている状態にある部位を主として含む領域であり、かつ、リム31の溝31bに嵌め込まれることでも張力が掛かる領域でもある。このため、第3領域A3における導電性ワイヤ114が、第4領域A4における導電性ワイヤ114よりも基材111の長手方向(Y軸方向)に対して傾くように配置されることにより、第3領域A3における導電性ワイヤ114の余剰を多くすることができる。結果、基材111がリム31に取り付けられた状態において、第3領域A3に配置される導電性ワイヤ114に対して機械的な負荷が掛かりにくくなる。
【0117】
なお、第4領域A4における導電性ワイヤ114は、第2領域A2における導電性ワイヤ114及び第3領域A3における導電性ワイヤ114よりも基材111の長手方向(Y軸方向)に対して平行に近くなるように配置されてもよい。
【0118】
なお、上記の実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本開示の電極構造体は、例えば車両のステアリングホイールに配置されるグリップセンサに適用可能である。また、本開示のグリップセンサは、例えば車両のステアリングホイールに配置されるグリップセンサとして適用可能である。
【符号の説明】
【0120】
110,110a,110b,110c 電極構造体
111 基材
111a 第1面
111b 第2面
112 導電布
114 導電性ワイヤ
140 制御回路部
3 ステアリングホイール
31 リム
31b 溝
31c 前方側の頂部
31d 後方側の頂部
A1 第1領域
A2 第2領域
A3 第3領域
A4 第4領域
B1,C1,D1 X軸方向の最大値
B2,C2,D2 X軸方向の最小値
W1,W2,W3 振幅