IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッドの特許一覧

特開2022-187470印刷可能な混合充填剤エポキシ複合物
<>
  • 特開-印刷可能な混合充填剤エポキシ複合物 図1
  • 特開-印刷可能な混合充填剤エポキシ複合物 図2
  • 特開-印刷可能な混合充填剤エポキシ複合物 図3
  • 特開-印刷可能な混合充填剤エポキシ複合物 図4
  • 特開-印刷可能な混合充填剤エポキシ複合物 図5
  • 特開-印刷可能な混合充填剤エポキシ複合物 図6
  • 特開-印刷可能な混合充填剤エポキシ複合物 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187470
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】印刷可能な混合充填剤エポキシ複合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20221212BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221212BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221212BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20221212BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20221212BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20221212BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221212BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20221212BHJP
   C08J 3/215 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08K3/04
C08G59/20
C08G59/68
B29C64/106
B33Y10/00
B33Y70/00
C08J3/215 CFC
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079483
(22)【出願日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】17/340,770
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ラーフル・パンディ
(72)【発明者】
【氏名】チュンホア・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・イフタイム
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー・カルブ
【テーマコード(参考)】
4F070
4F213
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4F070AA46
4F070AB10
4F070AC04
4F070AC39
4F070AE01
4F070AE28
4F070FA02
4F070FB07
4F070FC07
4F213AA39
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL23
4J002CD001
4J002CD002
4J002CD051
4J002DA016
4J002DA018
4J002DE148
4J002DJ038
4J002EU117
4J002FA018
4J002FB088
4J002FB268
4J002FD016
4J002FD018
4J002FD157
4J002GH01
4J002GN00
4J036AA01
4J036AA05
4J036AD08
4J036AJ00
4J036CB03
4J036CC05
4J036DA09
4J036DC31
4J036DC40
4J036FA02
4J036JA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた機械特性を有する三次元印刷用材料を提供する。
【解決手段】物質の組成物10は、少なくとも10重量%のエポキシ官能化二次元形状粒子14と、0.1~5重量%の範囲のカーボンナノチューブと、エポキシ樹脂と、硬化剤と、を含む。物質の組成物を製造する方法は、エポキシ樹脂と、カーボンナノチューブと、溶媒とを混合して、材料を生成することと、材料を乾燥させることと、材料を硬化剤と混合して、物質の組成物を生成することと、を含む。物質の組成物を印刷する方法は、エポキシ官能化グラフェンと、カーボンナノチューブと、エポキシ系樹脂と、硬化剤とを組み合わせることによって、物質の組成物を生成することと、物質の組成物を所望のパターンに押出印刷することと、パターンを硬化させることと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも10重量%のエポキシ官能化二次元形状粒子と、0.1~5重量%の範囲のカーボンナノチューブと、エポキシ樹脂と、硬化剤と、を含む、物質の組成物。
【請求項2】
前記二次元形状粒子が、官能化グラフェン、粘土、及びアルミナ小板のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが、むき出しである、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが、官能化されている、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブが、少なくとも1つのカルボキシル基又は少なくとも1つのエポキシ基のいずれかのうちの1つで官能化されている、請求項4に記載の物質の組成物。
【請求項6】
前記物質の組成物が、ゼロ剪断で少なくとも1000パスカル秒の粘度を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項7】
前記物質の組成物が、100/秒の剪断速度で少なくとも10パスカル秒の粘度を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブを含む、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項9】
前記エポキシ官能化二次元形状粒子が、エポキシ反応フルオログラフェン粒子を含む、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項10】
前記硬化剤が、イオン液体を含む、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項11】
前記硬化剤が、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドを含む、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項12】
前記物質の組成物が、カーボンナノチューブを含まない物質の組成物に比べて改善された靭性を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項13】
前記物質の組成物が、少なくとも50パーセントの改善された靭性を有する、請求項12に記載の物質の組成物。
【請求項14】
前記物質の組成物が、カーボンナノチューブを含まない物質の組成物に比べて改善された引張強度を有する、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項15】
前記物質の組成物が、少なくとも10%の改善された引張強度を有する、請求項14に記載の物質の組成物。
【請求項16】
物質の組成物を製造する方法であって、
エポキシ樹脂と、カーボンナノチューブと、溶媒とを混合して、材料を生成することと、
前記材料を乾燥させることと、
前記材料を硬化剤と混合して、前記物質の組成物を生成することと、を含む、方法。
【請求項17】
前記エポキシ官能化グラフェンを、カーボンナノチューブと混合することが、前記エポキシ官能化グラフェンを、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カルボキシル化ナノチューブ、又はエポキシ官能化カーボンナノチューブのうちの1つと混合することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
物質の組成物を印刷する方法であって、
エポキシ官能化グラフェンと、カーボンナノチューブと、エポキシ系樹脂と、硬化剤とを組み合わせることによって、前記物質の組成物を生成することと、
前記物質の組成物を所望のパターンに押出印刷することと、
前記パターンを硬化させることと、を含む、方法。
【請求項19】
前記硬化剤が、熱硬化剤である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元印刷可能な複合物、より具体的には、高充填量の官能化粒子を含む3D印刷可能な複合物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化などの新しい三次元(three-dimensional、3D)粒子充填エポキシポリマー複合物は、確立された熱可塑性ポリマー複合物よりも利点を有する。それらは、改善された機械的特性、例えば、強度及び弾性率を有する。これらの複合物は、硬化後に高い架橋密度を有する堅牢な構造を形成し、例外的な機械的特性をもたらす。航空宇宙、エネルギー、及び自動車用途で使用されるポリマー複合物は、優れた機械的特性を有する必要がある。
【0003】
有意により良好な機械的特性を達成することは、複合物全体の10重量%超などの、高い充填剤粒子充填量を必要とする。しかしながら、エポキシマトリックス中の粒子凝集及び不十分な粒子分散は、より高い粒子充填量の達成を非常に困難にする。これらの問題のために、高い粒子充填量によって、劣った機械的特性がもたらされる。具体的には、高い強度を維持しながら、増加した弾性率を達成することが主要な課題となっている。そのような配合物は、3D印刷に使用され得ない。
【0004】
押出3D印刷用のこれらの複合物配合物を使用するための主要な課題は、押出後の3D印刷形状を保持するために必要な、押出時の剪断下の低粘度、並びに押出後の粘度及び弾性の急激な上昇という主要なレオロジー要件を満たすことにある。高度分散性粒子は、樹脂中に強い網目構造を形成せず、高粒子濃度でさえも3D印刷に好適な粘度を示さず、レオロジー要件を満たすことが困難になる。いくつかの手法は、粘土粒子などのレオロジー調整剤を添加して、複合物のレオロジーを調整する。これによって、低減した靭性及び強度などの、複合物の劣った機械的特性がもたらされる。
【0005】
現在の手法は、いくつかの問題のうちの少なくとも1つに起因して、押出3D印刷に好適ではない二次元グラフェン、カーボンナノチューブ(carbon nanotube、CNT)強化粒子を組み込んだエポキシ複合物の範囲を開示している。これらの問題は、低粘度を有する、典型的に2重量%未満の低いグラフェン粒子充填量を含み、3D印刷に必要な弾性とともに、剪断減粘挙動を示さない。他の複合材料は、グラフェン及びCNTの高い粒子充填量を有するが、不十分な分散は、充填剤分布において不均質性をもたらし、不十分な印刷適性をもたらす。アミン硬化剤を硬化剤として組み込む、A+Bシステムを有するエポキシ配合物について、それらは、室温で急速に硬化することによって、押出印刷のチューブ及びノズルの目詰まりがもたらされる。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に例示される態様によれば、少なくとも10重量%のエポキシ官能化二次元形状粒子と、0.1~5重量%の範囲のカーボンナノチューブと、エポキシ樹脂と、硬化剤と、を含む、物質の組成物が提供される。
【0007】
本明細書に例示される態様によれば、エポキシ樹脂と、カーボンナノチューブと、溶媒とを混合して、材料を生成することと、材料を乾燥させることと、材料を硬化剤と混合して、物質の組成物を生成することとを、を含む物質の組成物を製造する方法が提供される。
【0008】
本明細書に例示される態様によれば、エポキシ官能化グラフェンと、カーボンナノチューブと、エポキシ系樹脂と、硬化剤とを組み合わせることによって、物質の組成物を生成することと、物質の組成物を所望のパターンに押出印刷することと、パターンを硬化させることと、を含む物質の組成物を印刷する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】物質の組成物の一実施形態のグラフ表示を示す。
【0010】
図2】物質の組成物を製造するための方法の一実施形態のフローチャートを示す。
【0011】
図3】異なる物質の組成物の粘度対剪断速度のグラフを示す。
【0012】
図4】固定振動周波数での振動応力掃引のグラフを示す。
【0013】
図5】応力-ひずみ生データのグラフを示す。
【0014】
図6】靭性結果の棒グラフを示す。
【0015】
図7】引張強度データの棒グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書の実施形態は、10重量%超である高充填量の、グラフェン、粘土などの官能化2D形状粒子、及び押出印刷を通して直接3D印刷され得る少量のカーボンナノチューブを組み込むエポキシ複合物配合物を伴う。これらの配合物の硬化構造は、ベース樹脂を単独で又はエポキシ樹脂と2D粒子とで作製された配合物の構造と比較した場合、優れた機械的特性を示した。
【0017】
パロアルト研究所(Palo Alto Research Center、PARC)は、複合物の粒子充填量の増加に関する広範な研究を行ってきた。これらの手法は、従来の非官能化粒子配合物と比較した場合、優れた分散性を有する、官能化充填剤粒子を使用する問題に対処する。官能化充填剤粒子複合物は、引張強度を維持しながら、300%超高い弾性率を有する硬化構造をもたらした。
【0018】
図1は、物質の組成物10のグラフ表示を示す。図1の表現では、背景は、グラフェン、粘土、ヒュームドシリカなどの官能化2D粒子14を含むエポキシマトリックス12を表す。「官能化」粒子は、他の粒子と結合を形成し得る粒子に結合した官能基を有する粒子を含む。PARCの研究の一部では、これらの官能基は、他の粒子と結合した粒子網目構造を形成した。これらの例としては、米国特許第10,882,972号及び同第10,138,317号(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)が挙げられる。本明細書の粒子は、「エポキシ官能化」であり、これは、それらがエポキシ基を有することを意味する。
【0019】
実施形態の物質の組成物は、カーボンナノチューブ(CNT)を含む。更に考察されるように、CNTは、単層ナノチューブ(single-walled nanotube、SWNT)、多層ナノチューブ、官能化ナノチューブであり得、官能化ナノチューブは、例として、少なくとも1つのカルボキシル(COOH)基又はエポキシ基を有し得る。他の官能基も追加され得る。カルボキシル官能基を有するナノチューブは、カルボキシル化ナノチューブとも称され得、エポキシ基を有するものは、エポキシ官能化ナノチューブと称され得る。「カーボンナノチューブ」という用語は、例として上記のものを含む、CNTの任意の変化を含む。
【0020】
図2は、物質の組成物を製造するための方法の実施形態のフローチャートを示す。20において、エポキシ官能化粒子、エポキシ系樹脂、CNT、及び溶媒が、一緒に溶液中で混合されて、官能化粒子及びCNTを分散させる。22において、溶液が乾燥を経て、溶媒を除去し、官能化粒子及びCNTを含むエポキシ樹脂を得る。次いで、これは、24において硬化剤と混合される。押出印刷又は他の3D印刷プロセスなどの「印刷」プロセスは、次いで得られた材料を使用して、構造又はパターンを形成し、次いで硬化する。
【0021】
以下の実施例では、特定の化合物及びパーセンテージが実験に使用される。そのような特定の化合物の特定のパーセンテージへの限定は意図されておらず、また暗示されるべきでもない。例えば、使用されるエポキシ官能化粒子は、エポキシ反応フルオログラフェンからなるが、他の種類のエポキシ官能化粒子が使用され得る。同様に、エポキシ官能化粒子の下記の重量%は、15重量%であるが、0.5重量%きざみで、5重量%~20重量%の範囲のいずれかであり得、CNTの重量%は、1重量%であるが、0.1%きざみで、0.1重量%~5重量%のいずれかの範囲であり得る。
【実施例0022】
第1の実施例では、3g(15重量%)のエポキシ反応フルオログラフェン(epoxy-reacted fluorographene、ERFG)粒子を、15.8gのエポキシ系樹脂(この場合、Hexion Epoxy Systems,Inc.製のEpon 826)と、3mmの球形粉砕媒体を備えた高性能ボールミルで混合することによって、20g重量のインク試料を得た。これによって、樹脂中の十分に分散したERFG粒子がもたらされ、それを、アセトン溶媒を使用して混合器から回収し、空気中80℃で一晩放置して、アセトンを部分的に除去した。次いで、本発明者らは、0.2g(1重量%)のSWCNT(この実施例では、Nanoamor(Nanostructured and Amorphous Materials,Inc.)によって製造されたSWCNT)を、2mlのアセトン溶媒に添加し、遠心式遊星型混合器において500rpmで混合した。CNT-アセトン分散液をERFG-エポキシ混合物に添加し、遊星型混合器において粉砕媒体を使用して混合した。得られたERFG-CNT-エポキシ-アセトン混合物を、ハウス真空(約23psig)に維持されたオーブン内60℃で一晩乾燥させて、アセトンを完全に除去した。Sigma-Aldrichから入手可能であるイオン液体である、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドの形態の潜在性硬化剤(約5重量%)を、混合物に添加し、再び混合した。
【実施例0023】
同様の配合物を、CNTをCOOH官能化SWNTで置換することによって調製した。
【0024】
任意の粒子充填剤を含まずに、CNTを添加しないエポキシ官能化2D粒子を意味するERFG粒子のみを含む、比較の「ベース」配合物も調製して、それらのレオロジー及び機械的特性を測定及び比較した。
【0025】
配合物のレオロジー特性を測定して、それらの印刷適性を評価した。定常剪断粘度測定は、剪断速度の関数としての粘度の変化の推定を可能にする。全ての配合物の粘度は、図2に示されるような剪断減粘挙動、剪断速度の増加による粘度の低下を示す。しかしながら、配合物の粘度は、1重量%のCNT又は1重量%のCNT-COOHの添加後、最低剪断速度でほぼ2桁増加する。剪断速度が増加する場合、粘度は、減少し、100/秒超の剪断速度でほぼプラトー値に達し、次いで、剪断速度が減少する場合、粘度は、再び増加する。最低剪断速度で最適な高粘度を有することは、押出印刷と比べて良好な制御を提供するため、印刷可能なインクの重要な要件である。剪断速度が減少する場合、粘度の急激な増加は、配合物における弾性の回復の重要な指標である。これは、押出印刷に使用可能なインクにおける所望のレオロジー特性である。しかしながら、粘度は、プリンタノズルの目詰まりなしに、円滑な印刷を可能にするために最適化される必要があり、しかも、力が加えられた場合のみ流動するような十分に高い粘度を有する必要がある。
【0026】
図3は、異なる配合物の粘度-剪断速度プロファイルを示す。粘度測定値は、剪断の増加を伴って最初に記録され、設定された最大剪断値に達した後、剪断速度が減少し、粘度が記録される。本明細書で使用される場合、「配合物」という用語は、異なる配合物の実施形態を指す。「試料」という用語は、各配合物の同じバージョンを指す。図2では、プロット30は、15重量%のERFG、5重量%のイオン液体(ionic liquid、IL)、増加剪断のデータを示し、プロット32は、15重量%のERFG、5重量%のイオン液体(IL)、減少剪断のデータを示す。プロット34及び36は、それぞれ、1重量%のSWNTを含む配合物の増加剪断バージョン及び減少剪断バージョンのデータを示す。プロット38及び40は、SWNTがそれぞれ、カルボキシル化されている増加剪断配合物及び減少剪断配合物のデータを示す。図2に見られるように、ベース配合物は、望ましい粘度対剪断プロファイルを実証しないが、SWNT又はSWNT-COOHを含む配合物は、所望のプロファイルを実証する。
【0027】
図4図7では、各配合物の少なくとも2つの試料を試験した。図4は、固定周波数(0.1Hz)で行われた配合物の振動応力掃引を示し、1重量%のCNT又は1重量%のCNT-COOHの添加を用いてインクの弾性の有意な増加を示す。プロット50は、弾性寄与を示し、52は、ベース配合物の粘性寄与データを示す。プロット54は、弾性寄与を示し、56は、1重量%のCNTを含む配合物の粘性寄与データを示す。プロット58は、弾性寄与を示し、60は、カルボキシル化CNTを含む配合物の粘性寄与データを示す。
【0028】
弾性寄与(G’)は、CNTを含まない配合物の振動応力の全ての値について、粘性寄与(G’’)よりも小さい。これは、これらの配合物におけるより低い弾性を示し、それは、押出印刷後に、構造の崩壊をもたらし得ることを示している。しかしながら、貯蔵弾性率(G’)は、CNT及びCNT-COOH充填剤の添加を用いて、ほぼ2桁増加し、低振動応力での損失弾性率(G’’)よりも高くなる。弾性の増加によって、押出印刷後に崩壊することなく、構造がその形状を保持することが可能になる。
【0029】
図5図7では、図5のプロット70、72、74、及び76としてのベース配合物の4つの試料、図5のプロット80及び82としてのCNTを含む配合物の2つの試料、及び図5のプロット84、86、及び88としてのカルボキシル化CNT配合物の3つの試料からの結果を示す。試料は、開放成形手順、続く熱硬化から形成された「ドッグボーン」形状の硬化構造からなっている。図5は、応力-ひずみ生データを示す。このデータは、CNT強化配合物が有意に増加した靭性を有するが、弾性率は、比較的影響を受けないままであることを示している。
【0030】
図6は、各試料の靭性値を示す。データは、CNT及びCNT-COOH複合物の両方に対して増加した靭性を示す。特に、CNT複合物は、ベース配合物の硬化試料と比較した場合、約80%の靭性の増加を有する。カルボキシル化CNT複合物は、約50%の靭性の増加を示す。
【0031】
図7は、引張強度データを示す。CNTを含むインクは、カルボキシル化されているか否かにかかわらず、ベース配合物と比較して、約10%の強度の平均増加を示す。加えて、これらのインクは、印刷中に所望の流動特性を示し、印刷構造は、硬化するまで形状を保持した。
【0032】
このようにして、製造に使用される印刷可能な複合物の所望の特性を増加させ得る。実験は、これらの複合物が、同じ成分を含むがCNTの添加を用いない配合物と比較して、より望ましい剪断、応力とひずみとのプロファイル、並びに増加した靭性及び引張強度を有することを示した。
【0033】
特許請求の範囲、要約、及び図面を含む本明細書、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全ての工程に開示される全ての特徴は、そのような特徴及び/又は工程のうちの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせられ得る。特許請求の範囲、要約、及び図面を含む本明細書に開示される各特徴は、特に明記しない限り、同じ目的、同等の目的、又は同様の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えることができる。
【0034】
上記で開示されたものの変形、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることは、理解されるであろう。様々な現在予見されていないか又は予想されていない代替案、修正、変形、又は改善は、その後、当業者によって行われ得るが、これらはまた、本実施形態によって包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7