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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187473
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】キャンドモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/128 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
H02K5/128
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084404
(22)【出願日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】10 2021 114 571.6
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ベレンデス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン エクスレン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーランド シュトック
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605BB05
5H605CC10
5H605DD37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造公差に対する比較的高い適合性及び製造コストの低減と併せて、封止効果の改良を特色とするキャンドモータを提供する。
【解決手段】固定子空間16は、軸方向で固定子5に隣接する主領域18と、シール14からシールキャリア12に沿って延び、シール14から離れた位置で主領域18に連通する環状領域19とを備える。このために、キャン11は、モータハウジング2から、又はこの軸方向端部においてモータハウジング2を軸方向で閉じるカバー4から軸方向で離れた位置で終端する。さらに、シール14に環状本体20と周方向封止リップ21とが設けられ、封止リップ21は、本体20から径方向外側に、及び軸方向で環状領域19に向けて突出する周方向封止リップ21とを有する場合、キャンドモータ1の公差適合性を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジング(2)と、
前記モータハウジング(2)に固定して配置された固定子(5)と、
前記固定子(5)に対して回転軸(10)の周りで回転可能であるように前記モータハウジング(2)に取り付けられた回転子(9)と、
径方向で前記固定子(5)と前記回転子(9)との間に、前記固定子(5)に固定して配置されたキャン(11)と、
前記キャン(11)の径方向内側に、軸方向固定子端部(13)の領域で前記モータハウジング(2)に固定して配置された少なくとも1つの環状シールキャリア(12)と、
クーラント(17)が流れることができる固定子空間(16)から、前記回転子(9)が配置されている回転子空間(15)を封止するための、前記シールキャリア(12)に径方向及び軸方向で支持された少なくとも1つの環状シール(14)と
を備えるキャンドモータ(1)において、
前記固定子空間(16)が、前記固定子(5)に軸方向で隣接する主領域(18)と、前記シール(14)から前記シールキャリア(12)に沿って延び、前記シール(14)から離れた位置で前記主領域(18)に連通する環状領域(19)とを有し、
前記シール(14)が、環状本体(20)と、前記本体(20)から径方向外側に、及び軸方向で前記環状領域(19)に向けて突出する周方向封止リップ(21)とを有する
ことを特徴とするキャンドモータ(1)。
【請求項2】
前記シール(14)が、前記環状領域(19)に面する前側(22)に周方向支持部(23)を有し、前記周方向支持部(23)が、径方向で前記シールキャリア(12)に支持される
ことを特徴とする請求項1に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項3】
前記封止リップ(21)が、前記支持部(23)を越えて軸方向に突出する
ことを特徴とする請求項2に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項4】
前記シール(14)が、前記前側(22)に周方向凹部(24)を有し、前記周方向凹部(24)が、径方向で前記支持部(23)と前記封止リップ(21)との間に配置される
ことを特徴とする請求項2に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項5】
前記シールキャリア(12)が周方向環状溝(25)を有し、前記環状溝(25)が、径方向では溝底(26)によって、軸方向では2つの互いに対向する溝壁(27、28)によって画定され、
前記シール(14)が、前記環状溝(25)に挿入されて、径方向では前記溝底(26)に支持され、軸方向では少なくとも1つの溝壁(27)に支持される
ことを特徴とする請求項1に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項6】
前記シール(14)が、前記環状領域(19)とは反対に面する後側(29)に封止面(30)を有し、前記封止面(30)が、前記本体(20)に形成され、前記環状領域(19)に面する前記溝壁(27)に平面状に及び軸方向で支持される
ことを特徴とする請求項5に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項7】
前記シール(14)が、前記後側(29)に対して近位方向で前記本体(20)に形成された後方突起(31)と、前記後側(29)に対して遠位方向で前記本体(20)に形成された前方突起(32)とによって前記溝底(26)に径方向で支持され、
前記シール(14)が、前記後方突起(31)と前記前方突起(32)との間の前記溝底(26)に面する内側(33)で、前記溝底(26)に向けて凹状に湾曲している
ことを特徴とする請求項5に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項8】
前記環状溝(25)内で、軸方向で、前記シール(14)と、前記環状領域(19)とは反対に面する前記溝壁(28)との間に隙間(35)が形成される
ことを特徴とする請求項5に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項9】
前記シール(14)が、前記シール(14)の径方向外側(36)で、周方向(38)に分散されるように前記本体(20)に形成された複数の傾き防止デバイス(37)を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項10】
前記封止リップ(21)が、前記キャン(11)に径方向で支持されるか、又は
前記封止リップ(21)が、前記キャン(11)を形成する若しくは前記キャン(11)の径方向内側に取り付けられたライナ(44)に径方向で支持されるか、又は
前記封止リップ(21)が、支持リング(39)に径方向で支持され、前記支持リング(39)が、それぞれの前記軸方向固定子端部(13)で前記固定子(5)に固定され、前記支持リング(39)に前記キャン(11)若しくは前記ライナ(44)が径方向で支持され、前記ライナ(44)が、前記キャン(11)を形成するか、若しくは前記キャン(11)の径方向内側に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のキャンドモータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部によるキャンドモータに関する。
【背景技術】
【0002】
キャンドモータは、回転子と固定子とがキャンによって分離されている電気モータである。キャンは、モータの固定子と回転子との間の空隙に位置し、概して固定子に固定して配置される。このキャンによって、固定部及び環境に対して、回転部を封止することができる。キャンドモータは、特にモータハウジング内で液体クーラントを用いて固定子を冷却するときに使用される。
【0003】
上記タイプのキャンドモータは、例えば(特許文献1)から知られている。上記タイプのそのようなキャンドモータは、モータハウジングと、モータハウジングに固定して配置された固定子と、固定子に対して回転軸の周りで回転可能であるようにモータハウジングに取り付けられた回転子と、径方向で固定子と回転子との間に配置されたキャンとを備える。さらに、そのようなキャンドモータは、キャンの径方向内側に、軸方向固定子端部の領域で、モータハウジングに固定して配置された少なくとも1つの環状シールキャリアと、クーラントが流れることができる固定子空間から、回転子が配置されている回転子空間を封止するための、シールキャリアに径方向及び軸方向で支持された少なくとも1つの環状シールとを備える。
【0004】
前述の(特許文献1)から知られているキャンドモータでは、それぞれのシールは、それぞれのシールキャリアに径方向内側及び軸方向両側で支持され、径方向外側では、シールは、キャンに向かって凸状に湾曲し、それによってキャンに直接当接する外側輪郭を有する。
【0005】
そのようなシールによる回転子空間と固定子空間との間の封止は、固定子内面、固定子背面、ハウジング、カバー、及びシールキャリアの公差チェーンにおいて比較的狭い公差域を必要とし、さらに、シールパートナの複雑な機械加工などの追加手段が必要となり得ることがわかっている。
【0006】
同様のキャンドモータは、(特許文献2)から知られている。そこでは、シールは、環状溝に嵌合する保持部を有する。この環状溝は保持リングに形成され、この保持リングはキャンに挿入され、ベアリングプレートに保持される。
【0007】
他のキャンドモータは、(特許文献3)及び(特許文献4)から知られている。これらのキャンドモータの場合、キャンの端部が複雑なシールに挿入され、その結果、シールは、径方向両側及び軸方向でキャンドモータに直接当接する。
【0008】
(特許文献5)は、シールを備えたさらなるキャンドモータを開示しているが、ここでは、クーラントが回転子空間を流れない。それぞれのシールは、それぞれのシールキャリアに径方向でのみ支持され、X字形の断面形状を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3 611 828 A1号明細書
【特許文献2】国際公開第2013/092902 A1号パンフレット
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2019 112 830 A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10 2019 117 373 A1号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第3 979 822 A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、特に、製造公差に対する比較的高い適合性及び製造コストの低減と併せて、封止効果の改良を特色とする、上記タイプのキャンドモータ用の改良された実施形態又は少なくとも別の実施形態を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、この課題は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題を成す。
【0012】
本発明は、固定子空間がシールキャリアまで延び、さらにシールキャリアに沿ってシールまで延び、その結果、固定子空間の圧力(クーラントがそこを流れるときにはクーラントの圧力に相当する)がシールに作用するように、それぞれの軸方向固定子端部の領域に固定子、モータハウジング、キャン、及びシールキャリアを配置するという全般的な概念に基づく。このために、固定子空間は、軸方向で固定子に隣接する主領域と、シールからシールキャリアに沿って延び、シールから離れた位置で主領域に連通する環状領域とを備える。このために、キャンは、モータハウジングから、又はこの軸方向端部においてモータハウジングを軸方向で閉じるカバーから軸方向で離れた位置で終端する。さらに、本発明によれば、シールに環状本体と周方向封止リップとが設けられ、封止リップは、本体から径方向外側に、及び軸方向で環状領域に向けて突出する。したがって、封止リップは、環状領域に面するシールの前側に位置し、そのため、キャンドモータの動作中に固定子空間の圧力又はクーラント及びクーラント圧力にさらされる。本発明に従って提案された本体から突出する封止リップの向きによって、封止リップは、固定子空間又はクーラントの圧力の増加と共に径方向外側により強く押され、それに応じて、より高い予圧でそれぞれのシールパートナに当接できることが保証される。したがって、固定子空間又はクーラントの圧力の増加と共に、シールの封止効果が高まる。それにより、封止効果の大幅な向上を実現することができる。さらに、本体から突出する封止リップは、シールの断面形状において細長く、さらに可撓性があり、したがって比較的大きな製造公差を補償することが可能である。比較的大きな公差に対するこの適合性により、製造労力が減少し、したがって製造コストが削減される。
【0013】
「軸」及び「径」という表示は、軸方向及び径方向を示す。本文脈では、軸方向、径方向、及び周方向は、回転軸によって規定される。軸方向は、回転軸に平行である。径方向は、軸方向に垂直であり、特に回転軸に垂直である。周方向は、回転軸の周りに延びる。
【0014】
有利な実施形態によれば、シールは、環状領域に面する前側で、シールキャリアに径方向で支持される周方向支持部を有することができる。この支持部によって、シールキャリアに対するシールの画定されたシール前側領域が作成され、この支持部もシールの前側で固定子空間又はクーラントの圧力にさらされ、したがって圧力の増加と共にシールキャリアに対する支持部の接触圧が増加する。
【0015】
封止リップが支持部を越えて軸方向に突出する発展形態が有利である。これは、封止リップが、少なくとも軸方向で支持部よりも大きい寸法を有し、それに応じて支持部よりも大きい可撓性及び可動性を有することを保証する。したがって、主に弾性的に変形可能な封止リップによって、公差の補償が達成される。
【0016】
別の有利な実施形態は、シールが前側で周方向凹部を有し、凹部が径方向で支持部と封止リップとの間に配置されることを提案する。この凹部は、封止リップ及び支持部に対する固定子空間又はクーラントの圧力が、径方向に作用する成分を強めることを保証する。このようにして、それぞれのシールパートナに対する封止リップの径方向の接触圧と、シールキャリアに対する支持部の径方向の接触圧とが強められる。さらに、凹部によって封止リップの軸方向寸法が増加され、これは公差適合性を向上させる。
【0017】
別の実施形態によれば、シールキャリアは、周方向環状溝を有することができ、この溝は、径方向では溝底によって、軸方向では2つの互いに対向する溝壁によって画定される。この場合、一方の溝壁は、軸方向で環状領域のより近くに配置され、環状領域とは反対に面し、他方の溝壁は、軸方向で環状領域から離して配置され、環状領域に面する。シールが環状溝に挿入され、径方向では溝底に支持され、軸方向では少なくとも一方の溝壁に、すなわち一方の溝壁のみに又は両方の溝壁に支持される実施形態が特に好適である。このようにして、一方では、シールキャリアに対するシールの確実な位置決めが単純化され、他方では、シールとシールキャリアとの間での効率的な封止効果が実現される。
【0018】
別の発展形態は、シールが、環状領域とは反対に面する後側に封止面を有し、封止面が、本体に形成され、環状領域に面する溝壁に平面状に及び軸方向で支持されることを提案する。一方では、平面状の支持は、上記溝壁におけるシールとシールキャリアとの間の効率的な封止効果を保証する。他方では、シールは、固定子空間内又はクーラントの圧力によってこの溝壁に軸方向で押し付けられ、それにより、この溝壁に対する封止面の接触圧を増加させ、それに応じて封止効果を向上させる。
【0019】
別の実施形態は、後側に対して近位方向に、すなわち後側に近接して本体に形成された後方突起と、後側に対して遠位方向に、すなわち後側から離して本体に形成された前方突起とをシールに設けることを提案する。ここで、シールは、この後方突起及びこの前方突起によって、溝底に径方向で支持される。これらの突起によって、溝底におけるシールとシールキャリアとの間の、軸方向で限定された、特に直線状の接触区域が実現され、封止効果を向上させる。特に、前方突起は、もし支持部があれば支持部に形成することができる。
【0020】
シールが、後方突起と前方突起との間の溝底に面する内側で、溝底に向かって凹状に湾曲している発展形態が特に有利である。この場合、シールが後方突起及び前方突起のみによって溝底に径方向で支持されるように、好適に曲率が選択される。したがって、この曲率は、突起による溝底に対するシールの個別の所定の接触圧を支援する。
【0021】
別の有利な発展形態によれば、環状溝内で、軸方向で、シールと、環状空間とは反対に面する溝壁との間に隙間が形成されることを企図することができる。この軸方向の隙間は、シールの前側全体が固定子空間又はクーラントの圧力にさらされることを保証し、圧力に依存するシールの封止効果を向上させる。
【0022】
別の有利な実施形態は、シールが複数の傾き防止デバイスを備え、傾き防止デバイスが、シールの径方向外側で、周方向に分散されるように本体に形成されることを提案する。これらの傾き防止デバイスは、封止リップの外側でシールの寸法安定化を行って、固定子空間又はクーラントの圧力が比較的高い場合でも、シールの後側でのシールの不要な変形を防止する。そのような傾き防止デバイスは、例えば、材料の肥厚化部分によって形成することができる。
【0023】
シールは、好ましくは、シールのすべての構成要素が好適に一体的に形成された射出成形体である。したがって、少なくとも本体及び封止リップが、シールに一体的に形成される。特に、支持部及び/又は後方突起及び/又は前方突起及び/又は傾き防止デバイスを、シールに一体的に形成することもできる。
【0024】
キャンドモータの設計に応じて、封止リップは、様々なシールパートナと相互作用することができる。好適には、封止リップは、キャンに径方向で直接支持され得る。別の実施形態では、封止リップは、例えばプラスチックからなることがあるライナに径方向で直接支持され得る。このライナは、キャンを形成することができる。ライナが、キャンの径方向内側に取り付けられることも考えられる。
【0025】
封止リップが支持リングに径方向で直接支持され、支持リングが、それぞれの軸方向固定子端部で固定子に固定されることも考えられる。キャン又は上記ライナは、この支持リングに径方向で支持され得る。この支持リングは、それぞれの軸方向の固定子端部において、固定子端部に形成された環状段差に径方向及び軸方向で支持され得る。支持リングはさらに、エンドプレートに径方向で支持され得て、エンドプレートは、それぞれの軸方向固定子端部に軸方向で取り付けられる。任意選択で、保持リングを設けることがさらに可能であり、保持リングは、エンドプレートに形成された環状段差に軸方向及び径方向で支持され、保持リングには支持リングが径方向で支持される。
【0026】
本発明のさらなる重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び図面を参照した関連の図の説明から明らかになろう。
【0027】
上で述べた特徴及び以下に説明する特徴は、それぞれ指定された組合せで使用することができるだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せで又は単独でも使用することができることが自明である。個別に指定した上述及び後述する上位ユニットの構成要素、例えばデバイス、装置、又はアセンブリは、このユニットの別々の構成要素部品若しくは構成要素を形成することができ、又は図面では異なる図示であってもこのユニットの一体領域若しくは区域でもよい。
【0028】
本発明の好ましい例示的実施形態を図面に示し、以下の説明でより詳細に述べる。ここで、同一の参照符号は、同一、同様、又は機能的に同一の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】軸方向固定子端部の領域でのキャンドモータの大幅に簡略化した断面図である。
図2】シールを備えるシールキャリアの領域での図1と同様の図である。
図3】シールの拡大断面図である。
図4】シールの斜視図である。
図5】様々な実施形態におけるシール領域での図1及び2と同様の図である。
図6】様々な実施形態におけるシール領域での図1及び2と同様の図である。
図7】様々な実施形態におけるシール領域での図1及び2と同様の図である。
図8】様々な実施形態におけるシール領域での図1及び2と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1によれば、キャンドモータ1はモータハウジング2を備え、モータハウジング2は、円筒形ケーシング3と、軸方向ケーシング又はモータ端部でケーシング3を閉じるための少なくとも1つのカバー4とを備える。キャンドモータ1は固定子5も備え、固定子5は、モータハウジング2に固定して配置される。固定子5は、好適には、積層コア6と、積層コア6の端面で積層コア6から突出する巻線オーバーハング8を有する巻線7とを備える。
【0031】
キャンドモータ1はさらに回転子9を備え、回転子9は、回転軸10の周りで固定子5に対して回転可能であるようにモータハウジング2に取り付けられる。ここでは、見やすくするために、対応するベアリング位置は省略されている。回転軸10は、キャンドモータ1のすべての構成要素に関する軸方向及び径方向を規定する。キャンドモータ1はさらにキャン11を備え、キャン11は、径方向で固定子5と回転子9との間に、固定子5に固定して配置される。モータハウジング2に、ここではカバー4に、環状シールキャリア12が取り付けられ、シールキャリア12は、このために、軸方向固定子端部13の領域でキャン11の径方向内側に配置される。図1には、軸方向固定子端部が1つだけ、この場合には右側の固定子端部13だけが示されている。そのようなシールキャリア12は、少なくともこの1つの固定子端部13の領域に設けられる。キャンドモータ1の設計によっては、他方の軸方向固定子端部の領域(ここでは図示せず)にも、さらなるシールキャリア12を設けることができる。そのようなシールキャリア12を1つだけ有するキャンドモータ1も考えられる。いずれの場合にも、キャンドモータ1は少なくとも1つの環状シール14を備え、環状シール14は、シールキャリア12に径方向及び軸方向で支持される。シール14は、回転子9が位置する回転子空間15を、クーラント17が流れることができる固定子空間16から分離するか又は封止する働きをする。クーラント17のための対応する入口及びそれに関連する出口は、見やすくするためにここでは省略されている。固定子5の少なくとも1つの区域、この場合には巻線オーバーハング8は固定子空間16に位置し、それにより、上記巻線オーバーハングがクーラント17に直接接触して、そこで熱を放散することが可能になる。
【0032】
モータハウジング2、固定子5、キャン11、及びシールキャリア12は、固定子空間16が主領域18及び環状領域19を有するように、互いに調整され、互いに対して配置される。主領域18は、軸方向で固定子5に隣接する。環状領域19は、シール14からシールキャリア12に沿って延び、シール14から離れた位置で主領域18に連通する。この場合、環状領域19は、軸方向でキャン11とハウジング2との間で主領域18に連通する。このために、キャン11は、モータハウジング2から、又はカバー4から軸方向で離れた位置で終端する。
【0033】
図1~8によれば、シール14は、環状本体20と周方向封止リップ21とを有し、封止リップ21は、本体20から径方向外側に、及び軸方向で環状領域19に向かって突出する。封止リップ21は、シール14の断面形状において細長い構成である。シール14は、任意選択で、環状領域19に面する前側22に、周方向支持部23を有する。この支持部23によって、シール14は、径方向内側でシールキャリア12に支持される。ここに示される実施形態では、封止リップ21は、この支持部23を越えて軸方向に突出し、その結果、封止リップ21は支持部23よりも大きい可撓性を有する。シール14は、任意選択で、前側22に周方向凹部24を有することができる。この場合、凹部24は、径方向で支持部23と封止リップ21との間に配置され、封止リップ21及び支持部23の可撓性を高める。
【0034】
図1~9によれば、シールキャリア12は、シール14を収容するために周方向環状溝25を有する。環状溝25は、径方向では溝底26によって、軸方向では2つの互いに対向する溝壁27、28によって画定される。シール14は、径方向では溝底26に支持され、軸方向では一方の溝壁27に支持されるように、環状溝25に挿入される。図1、2、及び5~8によれば、シール14は、環状領域19とは反対に面する後側29に封止面30を有し、封止面30は、本体20に形成され、径方向及び周方向38(図4に両矢印で示す)に延びる。封止面30は、環状領域19に面する溝壁27に平面状に当接し、それにより平面状の軸方向支持を提供する。シール14はさらに、任意選択で、後側29に対して近位方向で本体20に形成された後方突起31と、後側29に対して遠位方向で本体20に、この場合には支持部23に形成された前方突起32とを有することができる。これらの突起31、32によって、シール14は、径方向で溝底26に支持される。さらに、ここで、シール14は、溝底26に面する内側33に曲面34を備え、曲面34は、溝底26に向かって凹状であり、後方突起31から前方突起32まで延びる。その結果、シール14は、突起31、32のみによって溝底26に当接する。シール14は、好適には、支持部23の領域で環状溝25よりも軸方向に小さい寸法を有する。シール14は通常、環状領域19に面する溝壁27に当接するので、選択された寸法設定により、軸方向で、シール14と、環状領域19とは反対に面する溝壁28との間に隙間35が形成される。その結果、シール14の前側22全体が、環状領域19の圧力、したがって固定子空間16又はクーラント17の圧力にさらされる。
【0035】
図4によれば、シール14は、その径方向外側36に、複数の傾き防止デバイス37を備えることができ、傾き防止デバイス37は、周方向38に分散されるように、好ましくは均一に分散されるように本体20に形成される。傾き防止デバイス37は、シール14の形状をその外側36で安定させる。傾き防止デバイス37によって、シール14の傾き、すなわち周方向に断面形状を通って延びる形状の長手方向軸の周りでのシール14の回転を防止することができる。
【0036】
図1、2、及び8の例によれば、封止リップ21が径方向でキャン11に直接支持され得る。一方、図5及び7の例では、封止リップ21が径方向で支持リング39に直接支持されることが企図され、支持リング39はそれぞれの軸方向固定子端部13に固定される。例えば、キャン11は、この支持リング39に径方向で支持され得る。支持リング39を固定、保持、又は支持するために、固定子5又はその積層コア6には、それぞれの軸方向固定子端部13の領域で環状段差40を設けることができ、支持リング39は、この段差40において軸方向及び径方向で固定子5に支持される。例えば積層コア6を安定させるために、固定子5は、それぞれの軸方向固定子端部13にエンドプレート41をさらに担持することができる。支持リング39は、径方向でこのエンドプレート41にも支持され得る。図5の例では、さらに保持リング42が設けられ、保持リング42は径方向でエンドプレート41に支持され、保持リング42に支持リング39が径方向で支持されている。図5によれば、保持リング42を支持するために、保持リング42がエンドプレート41に径方向及び軸方向で支持される環状段差43をエンドプレート41に形成することができる。
【0037】
キャン11はライナ44として構成することができ、ライナ44は、例えばプラスチック、好ましくは強化プラスチック、特にガラス繊維強化プラスチックから形成することができる。この代替として、キャン11に加えてそのようなライナ44を設けることも可能であり、その際、ライナ44は、キャン11の径方向内側に配置されるか又は取り付けられる。図6及び8によれば、封止リップ21を径方向でこのライナ44に直接支持することができる。図6は、代表例として、ライナ44が2層設計である変形形態を示す。
【0038】
エンドプレート41を径方向で固定して位置決めするために、少なくとも1つの掛止ラグ45を設けることができ、掛止ラグ45は、エンドプレート41に固定して配置され、相補的な掛止ソケット46に軸方向で係合する。掛止ラグ45は、周方向リングとして設計することができる。その際、掛止ソケット46は、周方向環状溝として設計することができる。周方向38で分散されるように配置された複数の掛止ラグ45をエンドプレート41に固定して配置することも考えられ、その際、上記掛止ラグは、環状溝として設計された1つの掛止ソケット46に軸方向で係合するか、又は、周方向38で分散されるように配置された対応する数の個別の掛止ソケット46に軸方向で係合する。
【符号の説明】
【0039】
1 キャンドモータ
2 モータハウジング
5 固定子
9 回転子
10 回転軸
11 キャン
12 環状シールキャリア
13 軸方向固定子端部
14 環状シール
15 回転子空間
16 固定子空間
17 クーラント
18 主領域
19 環状領域
20 環状本体
21 周方向封止リップ
22 前側
23 周方向支持部
24 周方向凹部
25 周方向環状溝
26 溝底
27、28 溝壁
29 後側
30 封止面
31 後方突起
32 前方突起
33 内側
35 隙間
36 径方向外側
37 傾き防止デバイス
38 周方向
39 支持リング
44 ライナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8