(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187474
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】一体化複合構造体を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
B29C 69/00 20060101AFI20221212BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20221212BHJP
【FI】
B29C69/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022085535
(22)【出願日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】63/197,615
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エー.ハウ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ カクーリ
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート ベイトマン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AH31
4F213WA02
4F213WA05
4F213WA25
4F213WA43
4F213WA53
4F213WA56
4F213WA83
4F213WB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複合構造体を作製するための方法を提供する。
【解決手段】付加製造により、固相コンポーネントを形成し(500)、モールドキャビティ内に前記固相コンポーネント及び補強材を配置し(520)、複合構造体を形成するために、前記モールドキャビティにおいて、前記固相コンポーネント、前記補強材、及び液相コンポーネントを一体化する(530)ことによって、複合構造体を作製する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造体を作製するための方法であって、
付加製造により、ポリマーマトリクス材料を含む固相コンポーネントを形成することと、
モールドキャビティ内に前記固相コンポーネント及び補強材を配置することと、
前記ポリマーマトリクス材料に対して結合適合性を有する材料を含む液相コンポーネントを前記モールドキャビティに投入し、前記液相コンポーネントを前記補強材に含浸させるとともに前記固相コンポーネントと結合させることにより、前記複合構造体を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記モールドキャビティに前記液相コンポーネントを投入するに際して、射出成形又は樹脂注入を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固相コンポーネントは、約60℃から約160℃の所定温度で前記液相コンポーネントと結合する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記固相コンポーネントは、熱可塑性材料を含み、前記液相コンポーネントは、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、又はこれらの混合物を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記液相コンポーネントは、ASTM D2196で規定された約10cps~約1000cpsの粘度を有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。。
【請求項6】
前記補強材は、ガラス繊維補強材及び炭素繊維補強材のうちの一方又は両方を含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記固相コンポーネントの付加製造における成形時、空隙、応力集中、及び温度特性不一致を緩和するために、ラスプ角度及びビード厚みを調節する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記固相コンポーネントは、テクスチャ表面を有する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記複合構造体は、外板又はスティフナである、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
複合構造体を作製するための方法であって、
付加製造により、固相コンポーネントを形成することと、
モールドキャビティ内に前記固相コンポーネント及び補強材を配置することと、
調節された温度、及び調節された圧力下の前記モールドキャビティにおいて、前記固相コンポーネント、前記補強材、及び、前記固相コンポーネントと結合適合性を有する液相コンポーネントを一体化して、前記複合構造体を形成することと、を含む方法。
【請求項11】
前記モールドキャビティにおいて、前記固相コンポーネント、補強材、及び前記液相コンポーネントを一体化するに際して、樹脂注入を行う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記固相コンポーネントは、約60℃から約160℃の所定温度で前記液相コンポーネントと結合する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記固相コンポーネントは、熱可塑性材料を含み、前記液相コンポーネントは、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、又はこれらの混合物を含む、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記補強材は、ガラス繊維補強材及び炭素繊維補強材のうちの一方又は両方を含む、請求項10~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前縁を有する航空機用翼フラップであって、前記前縁は、請求項1に記載の方法によって形成された前記複合構造体を含む、航空機用翼フラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固相コンポーネント、補強材、液相材料、及びモールドを使用して、一体化複合構造体(consolidated composite structure)を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
設計構造体のための複雑なアセンブリの作製は、複数の材料、及び多くの処理ステップを要する。例えば、航空機の翼フラップ用の前縁カバーは、現在、補強プラスチック外板、金属リブ、フェノールシム(phenolic shims)、及び金属ファスナを使用して設計されている。一例において、補強プラスチック外板は、予備含侵されたガラス繊維補強材を使用して作製されるが、このガラス繊維補強材は、空力的な機首形状に求められる輪郭を有する金属ツール内に手作業で配置される。この部品は、その後、オートクレーブにおいて高温及び高圧で硬化される。金属リブは、シート成形技術を用いて成形されたり、ミル加工(mill machining)によって任意の形状に加工されたりする。これに代えて、リブは、機首外板と同様に、予備含侵された補強材を使用して製造することも可能である。その後、リブは、組立治具に載置される。リブに対して外板が取り付けられて、公差嵌合(tolerance fit)の検査が行われる。ほとんどの場合、リブと外板との間には隙間ができてしまうため、このような隙間は、フェノール膜などのシム材料で埋める必要がある。これらの隙間に対処した後、穿孔、皿穴形成、バリ取り、検査が行われ、金属ファスナの挿入及び取り付けが行われる。
【0003】
これらの処理の欠点としては、労働集約度、製造時間、異なる材料の数、及び組立ステーションにおける航空機用部品(shipsets)間の不一致などがあり、これらの欠点により、目標時間を守れなかったり、繰り返し可能な高速生産の達成が妨げられたりする。
【0004】
設計構造体の複雑なアセンブリを製造するための他の既存の解決策においては、組立ステーションにおいて溶接される個々の熱可塑性コンポーネントを作製することが求められる。この場合、補強熱可塑性シートを使用して、外板及びリブが作製される。これらのシートはモールドに載置され、所望の輪郭になるように打ち抜き加工、プレス加工、又は積層されて、高温及び高圧下で一体化形状に形成される。補強された熱可塑性リブは、組立治具にセットされる。リブに対して外板が取り付けられて、公差嵌合の検査が行われる。抵抗加熱素子を使用してリブ及び外板を局所的に溶接することにより、結合ジョイントが作製される。この処理の欠点としては、労働時間、製造時間、煩雑な抵抗加熱処理、及び組立ステーションにおける航空機用部品間の不一致などがあり、これらの欠点により、目標時間を守れなかったり、繰り返し可能な高速生産の達成が妨げられたりする。
【0005】
現在までのところ、付加製造技術は、航空機構造体に使用するには適していない。付加製造の使用に関する制限には、(i)狭い3D印刷チャンバ内での規模が限られた構造部品の作製、(ii)部品を作製するためのリードタイムの遅さ、及び(iii)結果として得られる製品の構造特性の悪さなどがある。
【発明の概要】
【0006】
1つ以上の例によれば、複合構造体を作製するための方法が提供される。この方法は、付加製造により、ポリマーマトリクス材料を含む固相コンポーネントを形成することと、モールドキャビティ内に前記固相コンポーネント及び補強材を配置することと、前記ポリマーマトリクス材料に対して結合適合性を有する材料を含む液相コンポーネントを前記モールドキャビティに投入し、前記液相コンポーネントを前記補強材に含浸させるとともに前記固相コンポーネントと結合させることにより、前記複合構造体を形成することと、を含む。
【0007】
本明細書においては、複合構造体を作製するための方法が開示される。この方法は、付加製造により、固相コンポーネントを形成することと、モールドキャビティ内に前記固相コンポーネント及び補強材を配置することと、調節された温度、及び調節された圧力下の前記モールドキャビティにおいて、前記固相コンポーネント、前記補強材、及び、前記固相コンポーネントと結合適合性を有する液相コンポーネントを一体化して、前記複合構造体を形成することと、を含む。
【0008】
また、前縁を有する航空機用翼フラップが開示される。前記前縁は、本開示の方法によって形成された前記複合構造体を含む。
【0009】
上述した特徴、機能、及び利点は、様々な例において個々に実現可能であり、また、他の例においては組み合わせることも可能である。この詳細については、以下の記載及び図面を参照することによって明らかになるであろう。
【0010】
本開示の実施例の様々な利点は、以下の明細書及び添付の請求の範囲を読み、以下の図面を参照することによって当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】3Dプリンタによって作製された固体スティフナなどの固相コンポーネントを示す図である。
【
図1B】モールドキャビティ内に投入された、補強材などのプリフォーム構造体に固体スティフナを接触させる様子を示す図である。
【
図1C】部品を一体化するために、モールドキャビティ内に液体樹脂などの液相コンポーネントを流し込み、当該液相コンポーネントにより、補強材の空隙を充填し、当該補強材と固相コンポーネントとを結合する様子を示す図である。
【
図2A】液相コンポーネントとの機械的結合を可能にする設計を例示する固相コンポーネントの表面細部を示す図である。
【
図2B】注入硬化サイクルにおいて液相コンポーネントにより形成される、固相コンポーネントと補強材との間の相間部分を示す図である。
【
図5】空力的外板、補強要素、及び部品の輪郭を調節するための機構を含む前縁装置を示す図である。
【
図6】ブルノーズ部、複合パネル、及びアルミニウムスティフナを有する構造体を示す図である。
【
図7】中央屈曲領域を有するとともに、一端にブルノーズ及びスティフナを有し、他端に翼幅スティフナを有する共接合樹脂注入複合パネルを示す図である。
【
図9】コア補強要素を有する複合パネルを示す図である。
【
図10A-10D】注入ステップ及び硬化ステップにおける温度-時間グラフを示す図である。
【
図11】ナイロン12の示差走査熱量測定(DSC)グラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に示す相対的なサイズは任意であり、好ましい寸法やサイズを意図しているわけではない。
【0013】
したがって、本明細書で説明する本開示の実施例は、本開示の原理を適用する単なる例にすぎない。本明細書で詳しく説明する実施例は、本開示に必須とみなされる特徴が記載された請求の範囲を限定するものではない。
【0014】
ここでは、ポリマーマトリクスを使用して複合構造体を作製する方法を開示しており、当該方法においては、親マトリクス(parent matrix)が2つの不連続相(discrete phases)、すなわち固体及び液体としてモールドに投入される。これら2つの相は、処理段階中にモールド内で混ざり合い、この結果として、同一のポリマーマトリクス材料、同様なポリマーマトリクス材料、又は相溶可能なポリマーマトリクス材料の混合体(co-infused structure)が形成される。モールドは、固相を収容するためのキャビティを含むとともに、液体を流すためのランナー(runners)や流路(channels)を含む。キャビティはまた、複合材料の形成を可能にするために、炭素繊維やガラス繊維などの補強材を収容するよう設計されている。
【0015】
「付加製造」なる用語は、典型的には一連の層を順次形成することによって、所望の部位に材料を配置して、物品を作製する製造技術に関する。いくつかの例において、付加製造は、薄い層を順次形成することにより3Dオブジェクトを造形する。各層は、溶融材料又は部分溶融材料を使用して、前の層に結合される。付加製造においては、通常、コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアが使用され、輪郭、形状、厚み、及び表面のテクスチャに基づいて、意図した設計が行われる。最終的に、製品の設計は、そのコンポーネントを作製するために選択された材料、プロセス、及び工程に依存して決まる。3D印刷は、付加製造の一例である。
【0016】
「3D印刷」は、付加製造の一例であり、この方法においては、材料層を順次積層することによって3Dオブジェクトを作製する。いくつかの例においては、3Dオブジェクトの1つの層を形成するために、コンピュータ制御下で、1つ以上のノズルを介して樹脂が押し出される。そして、所望の3Dオブジェクトが完成するまで追加の層が敷設される。
【0017】
コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアは、付加製造(例えば、3D印刷)のための設計を行う際に使用可能である。CADは、付加製造(AM)プロセスを制御するコンピュータによって使用されるデジタルファイルを作成する。CADを使用することにより、付加製造によって製造される製品の生産性、再現性、及び品質を向上させることができる。
【0018】
本明細書において、「複合材料」なる用語は、例えば、ポリマー樹脂マトリクスと、それに埋め込まれた補強ファイバなどの、2つ以上の構成材料で形成される材料を指す。
【0019】
本開示に関連する「結合適合性(bond-compatible)」は、(i)液相コンポーネント(300)が固相コンポーネント(100)と結合するのに十分な表面エネルギーを有する、分子間力に起因する化学結合、(ii)固相コンポーネント(100)が所定の温度で軟化して液相コンポーネント(300)に付着する化学結合、又は、(iii)固相コンポーネント(100)が部分的に粘性相に遷移して、液相コンポーネント(300)との液間相互作用(liquid-to-liquid interaction)が可能となる化学結合、を意味する。
【0020】
「モールド」なる用語は、本開示のプロセスにおいて、複合構造体(400)を形成するために、固相コンポーネント(100)及び補強材(200)が液相コンポーネント(300)に接触する中空の容器を指す。モールドは、液相コンポーネント(300)が固化して固相コンポーネント(100)及び補強材(200)と一体化するときに、複合構造体(400)を成形するのに有用である。
【0021】
「モールドキャビティ」なる表現は、充填されていないモールドにおける空間を指す。モールドキャビティは、作製される複合構造体(400)によって、特定のサイズ及び形状を有する。
【0022】
「射出成形」は、圧力下で液相コンポーネント(300)をモールドキャビティに射出注入することを指す。
【0023】
「樹脂注入」は、多孔質材料の空隙、及び/又はモールドが、液相コンポーネント(300)などの液体樹脂で充填される処理を指す。いくつかの例においては、真空圧が樹脂の注入に役立つ。
【0024】
「外板」なる用語は、航空機の外面を指す。
【0025】
「スティフナ」なる用語は、構造的な支持要素を指す。
【0026】
本明細書において、組成物の成分の濃度に関して使用される「約」なる用語は、典型的には、記載値の±5%、より典型的には記載値の±4%、より典型的には記載値の±3%、より典型的には記載値の±2%、さらに典型的には記載値の±1%、さらに典型的には記載値の±0.5%を指す。
【0027】
値の前に「約」が用いられ、当該値が近似値として表されている場合、その特定の値は、他の例ということもできる。全ての範囲は包括的であり、これらの範囲の組み合わせが可能である。また、範囲が記載されている場合、端点を含む当該範囲内の全ての値は、全ての組み合わせが可能である。
【0028】
固相コンポーネント(100)は、インサート、インターフェース、構造材、又はジョイントを形成するために、付加製造及び/又は機械加工方法を使用して製造される。これらの方法により、親ポリマーマトリクスから特定のアーキテクチャ及び表面テクスチャを容易に製造することができる。
【0029】
固相コンポーネント(100)は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はこれらの混合物を含む。適切な熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ、ポリエステル、アクリルフェノールビニルエステルポリアミド、シリコーン、ビスマレイミド、シアン酸エステルポリウレタン、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。適切な熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート、ビニル、ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンイミン(PEI)(SABIC社製ULTEM(登録商標)など)、ポリフェニレン・スルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0030】
モールドに固相コンポーネント(100)及び補強材(200)が配置される。樹脂注入樹脂トランスファー成形などの液体成形技術を使用して、液相コンポーネント(300)がモールド(
図1Cを参照)に投入される。液体は、親マトリクスと同一の材料、同様の材料、又は相溶可能な材料からなる。液相コンポーネント(300)は、固体インサート(例えば、固相コンポーネント(100)及び補強材(200))の内部及び周囲のキャビティを充填する。固相コンポーネント(100)及び液相コンポーネント(300)は、注入処理において、機械的及び/又は化学的な相互作用により組み合わさって結合し、複合構造体(400)を形成する。
【0031】
補強材(200)は、ガラス繊維、炭素繊維、又は、これら両方を含む。いくつかの例において、ガラス繊維又は炭素繊維は、シートやファブリックの形態であり、一方向(uni-directional)繊維、ノンクリンプ(non-crimp)繊維、織り(woven)繊維、及び編組(braid)繊維であってよい。
【0032】
液相コンポーネント(300)は、固相コンポーネント(100)と同一であるか、同様であるか、又は相溶可能であるように選択される。液相コンポーネント(300)は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、又はこれらの混合物を含む。適切な熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ、ポリエステル、アクリル、フェノール、ビニルエステル、ビスマレイミド、ベンゾオキサジン、シアン酸エステル、及びポリウレタンなどが挙げられる。親マトリクスを構成するオリゴマー及びその誘導体の形態の適切な熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート、ビニル、ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンイミン(PEI)(SABIC社製ULTEM(登録商標)など)、ポリフェニレン・スルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。いくつかの液相コンポーネントは、ASTM D2196に従って規定された約10cps~約1000cpsの粘度を有する。
【0033】
いくつかの例においては、複合構造体が構造要件を確実に満たすために、空隙及び応力集中を最小限に抑える必要がある。複合構造体を形成する際、ラスプ角度(rasp angle)及びビード厚み(bead thickness)は、空隙、応力集中、及び熱特性不一致を緩和するために調節可能な変数である。いくつかの例において、空隙又は孔の体積比率は、5体積%未満とする。他の例において、空隙又は孔の体積比率は、複合体の体積に対して、2体積%未満、約0.5~約5体積%、約0.5~約3体積%、又は約0.5~約2体積%であることが好ましい。いくつかの例において、間隙、亀裂、又は切り欠きなどの応力集中箇所は、長さが0.25インチ未満である。また、いくつかの例において、応力集中箇所は、長さが0.05インチ未満である。
【0034】
一体化プロセスのいくつかの例において、固相コンポーネント(100)と液相コンポーネント(300)との接合は、剥離強度(peel strength)、ラップ剪断強度(lap-shear strength)、分離強度(pull-off strength)、及び層間破壊靱性(interlaminar fracture toughness)のうちの1つ又は複数に関して、ポリマー混合補強材の面外特性(out-of-plane properties)と同等か、或いはそれよりも高い。これらの面外特性の各々についての試験方法は、航空機の構造によって異なる。例えば、樹脂が注入された外板に接合されるスティフナには、優れた分離強度、及びモード1層間破壊靭性(Mode 1 Interlaminar Fracture Toughness)が必要とされる。モード1層間破壊靱性の測定にはASTM D5528-13が使用され、剥離強度の測定にはASTMが使用される。ラップ剪断強度の測定にはASTM D3528が使用される。いくつかの例において、積層体のモード1層間特性の範囲は、40~2000J/m2である。炭素繊維積層体において靭性の低いエポキシは、上記範囲の下限に位置する。PEKKなどの炭素繊維積層体において靭性の高い熱可塑性プラスチックは、上記範囲の上限に位置する。
【0035】
固相コンポーネントの表面細部の表面エネルギー又は張力を調節することは、一体化プロセス及び部品の接合強度に有益であろう。固相の表面張力は、液体樹脂が固相を濡らすように調節することができる。
【0036】
固体(熱可塑性物質)と液体(熱硬化性物質)とが結合するとき、場合によっては、熱可塑性物質が熱硬化性物質に相溶することがある。これは、相互侵入ポリマーネットワーク(interpenetrating polymer network (IPN))の形成につながる可能性がある。例えば、ポリエーテルスルホン(PES)の3D印刷部品は、エポキシ液体樹脂と結合すると、接合界面においてIPNを形成しうる。このような構成において、ポリマーは、互いに共有結合しているわけではないが、少なくともある程度は交絡(interlaced)している。このような構成は、良好な機械的特性を有することが知られている。
【0037】
複合構造体(400)は、本明細書で説明するプロセスによって作製される任意の構造体を含む。いくつかの例において、複合構造体は、航空機構造体に使用される。これらの構造体は、翼、胴体、及び尾部の構造体で使用される複合パネル及び複合部品を含む。いくつかの複合構造体(400)は、クルーガ―フラップや可変チャンバフラップを備える前縁装置を含む航空機のフラップ、翼、尾部、及び胴体領域に取り付け可能なパネル、フェアリング、カバー、インターフェース、シム、エッジ、ウェッジ、及びフィッティングである。
【0038】
ジョイント及びユニークな3Dアーキテクチャを有する複雑な構造コンポーネントを作製するために、また、別々に適用される場合の各技術の弱点を緩和するために、付加製造及び液体成形の利点を組み合わせる技術は、本開示の方法の有利な特徴の1つである。付加製造(3D印刷)プロセスにより、界面やフィラー位置において、制御されたユニークな設計を行うことが可能になる。液体成形により、ガラス繊維ファブリックや炭素繊維ファブリックなどの補強材と、ポリマーマトリクスとを組み合わせて、3Dプリンタよりも大きい規模で複雑な外板及びスティフナを形成することができる。
【0039】
いくつかの例において、本開示の方法の技術的特徴は、以下のうちの1つ以上を含む。
(i)固相成分及び液相成分が組み合わされて、構造的なジョイント又はインターフェースが作製される。
(ii)固相コンポーネント(100)は、親ポリマーマトリクスの形態である。
(iii)固相コンポーネント(100)は、3D印刷及び/又は機械加工されて所望の形状及び表面に仕上げられる。
(iv)固相コンポーネント(100)は、モールドのキャビティ内に容易に配置される。
(v)固相コンポーネント(100)は、所望の構造特性、熱特性、又は電気特性を実現するために、フィラーや補強材(200)などの他の構成要素と組み合わされる。
(vi)液相コンポーネント(300)は、固相コンポーネント(100)の親ポリマーマトリクスと同一の材料、同様の材料、又は相溶可能な材料で形成される。
(vii)液相コンポーネント(300)は、モールドキャビティを充填するのに十分な粘度を有する。
(viii)液相コンポーネント(300)は、固相コンポーネント(100)と容易に相互作用を起こして結合する。
(ix)液相コンポーネント(300)は、モールドキャビティに流れ込んでこれを充填し、当該モールドキャビティ内に配置された補強材(200)と結合する。
【0040】
処理特性は、以下のうちの1つ以上を含む。
(i)固相コンポーネント(100)及び液相コンポーネント(300)が所定温度で相溶可能となり、結合することができる。
(ii)固相コンポーネント(100)及び液相コンポーネント(300)が相互作用する温度は、固相コンポーネント(100)が元の状態を維持できる温度である。
(iii)モールドの温度は、液相コンポーネント(300)が流れて所望のキャビティを満たすのに十分な温度である。
(iv)製造プロセスで使用される温度及び時間サイクルは、液相コンポーネント(300)が固体に遷移して、一体型部品を形成することが可能なものである。
(v)複合構造体(400)が、モールドから取り出される。
【0041】
本明細書で説明する特徴は、多目的ポリマー材料に特有の特徴、及び、液体ポリマーと固体ポリマーとをモールド内で結合させることが可能な方法に特有の特徴を含む。多目的ポリマー材料は、3D印刷、射出成形、又は樹脂注入されて別々の固体部品になり、モールド内で結合される。このとき、液相コンポーネント(300)が上述した特徴を組み合わせる。
【0042】
様々な樹脂注入技術が使用に適している。使用可能な技術には、制御大気圧樹脂注入(Controlled Atmospheric Pressure Resin Infusion (CAPRI))、樹脂トランスファー成形、樹脂フィルム注入(Resin Film Infusion,)、真空アシスト樹脂トランスファー成形(Vacuum Assisted Resin Transfer Molding)、真空アシスト樹脂バッグ注入(Vacuum Assisted Resin Transfer Molding)、及びバルク樹脂注入(Bulk Resin Infusion)が含まれる。いくつかの例においては、プリフォームを確実に充填するとともに固相コンポーネントを完全に濡らすために、注入温度、硬化温度、及び温度勾配を使用して樹脂の粘度が調節される。いくつかの例において、硬化温度は、固相コンポーネントの溶融温度を超えないようにする必要がある。
【0043】
一体化処理におけるコンポーネント同士の結合は、分子間力に起因する化学結合に基づいていてもよく、この化学結合においては、液相コンポーネント(300)が固相コンポーネント(100)と結合するのに十分な表面エネルギーを有する。これに代えて、固相コンポーネント(100)が、所定温度で軟化して液相コンポーネント(300)に付着する化学結合が形成されてもよい。また、固相コンポーネント(100)が部分的に粘性相に遷移して、液相コンポーネント(300)との液間相互作用が可能となる化学結合が形成されてもよい。結合を生じさせるために使用する温度は、注入樹脂に対して設定される注入及び硬化のサイクルによって決定される。典型的には、エポキシ樹脂の場合、樹脂注入は、60℃から160℃の範囲で行われ、硬化は160℃から200℃で行われる。
【0044】
樹脂注入プロセスの注入段階においては、まず、樹脂が固相コンポーネントを濡らす。注入段階は、補強材の完全な充填、及びAM細部の濡れを確実にするために、樹脂の粘度に依存する。いくつかの例において、エポキシ樹脂の場合、この注入温度は、約60℃から約160℃の範囲で選択される。この結果、液相と固相との間の分子間引力又は分子間相互作用は、注入温度と硬化温度との間で発生する。樹脂の硬化度(DoC)が約90%を超えると、効果的な接合が行われるようになる。
【0045】
本開示の製造方法の利点は、以下を含む。
(i)3D印刷を使用して、ヌードル(noodles)、コア、チャネルなどのユニークなアーキテクチャが製造され、このアーキテクチャと大型部位とが組み合わせられる。これらの大型部位は、迅速なサイクル時間で製造される。
(ii)設計構造体の複雑なアセンブリを製造するのに必要な材料の数が最小限に抑えられる。
(iii)アセンブリ補助具、ファスナ、シム、及び/又は接着剤の使用量が削減される。
(iv)3Dアーキテクチャの部位間で材料特性が同等である。
【0046】
複雑なアセンブリの製造の1つの処理フローにおいては、モールド内で固体コンポーネントと液体コンポーネントが組み合わされる。この処理フローを
図1A~1Cに示す。固相コンポーネント(100)(例えば、補強要素)が補強材(200)(例えば、複合材補強外板)と組み合わされる。ステップ1(
図1A)において、所定の幅、高さ、及び長さを有するT字型ブレード形状の固相コンポーネント(100)が、親ポリマー材料で3D印刷される。ステップ2(
図1B)において、固相コンポーネント(100)の形状及びサイズに対して割り当てられたモールドのキャビティ内に、固相コンポーネント(100)が投入される。補強材(200)の要素(例えば、ガラス繊維や炭素繊維の補強材)が、モールドのキャビティ内に投入される。いくつかの例において、モールドは、互いに嵌合する2ピース型のマッチモールドダイの一部である。このモールドの嵌合により、固相コンポーネント(100)と補強材(200)とが1つに合わせられる。ステップ3(
図1C)において、液相コンポーネント(300)(例えば、樹脂)が、閉じられたモールドに投入され、補強材(200)に含浸されて、固相コンポーネント(100)の表面と相互作用する。液体樹脂は、所定温度、又はある温度範囲内で固相コンポーネント(100)と結合する。その後、液体は、一体化プロセスにおいて固体に遷移する。固相コンポーネント(100)と補強材(200)との一体化は、温度及び圧力サイクルを調節しながら実行される。これらのステップの後、結果として得られた複合構造体(400)がモールドから取り外される。
【0047】
図2Aは、液体樹脂との機械的結合を可能にする設計を例示する固相コンポーネント(100)の表面細部を示す。表面テクスチャは、当該表面テクスチャにより形成された空隙に樹脂が充填され、これによって、固相コンポーネント(100)と補強材(200)とが機械的に結合するようになっている。付加製造(例えば、3D印刷)を利用することにより、表面をマイクロリップル(micro-ripples)などの所望のテクスチャに仕上げることができる。
図2Bは、注入硬化サイクルにおいて液相コンポーネントにより形成される、固相コンポーネントと補強材との間の相間部分を示す図である。
【0048】
図3は、複合構造体(400)の形成を示す概略
図500であり、この形成は、(i)ブロック510において、付加製造により固相コンポーネント(100)を形成するステップと、(ii)ブロック520において、モールドキャビティ内に固相コンポーネント(100)及び補強材(200)を配置するステップと、(iii)ブロック530において、補強材(200)に含浸されるとともに固相コンポーネント(100)と結合する液相コンポーネント(300)を、モールドキャビティに投入することにより、複合構造体(400)を形成するステップと、(iv)ブロック540において、モールドキャビティから複合構造体(400)を取り外すステップと、を含む。
【0049】
図4は、複合構造体(400)の形成を示す概略
図600であり、この形成は、(i)ブロック610において、付加製造により、少なくとも1つのテクスチャ表面を有する固相コンポーネント(100)を形成するステップと、(ii)ブロック620において、固相コンポーネント(100)のテクスチャ表面が補強材(200)に接触するように、モールドキャビティ内に固相コンポーネント(100)及び補強材(200)を配置するステップと、(iii)ブロック630において、複合構造体(400)を形成するために、モールドキャビティ内で、固相コンポーネント(100)、補強材(200)、及び、当該固相コンポーネント(100)に対する液相コンポーネント(300)を一体化し、その際、表面テクスチャによりコンポーネント同士を嵌合させることが可能なステップと、(iv)ブロック640において、モールドキャビティから複合構造体(400)を取り外すステップと、を含む。表面テクスチャは、63マイクロインチ(1.6マイクロメートル)Raなどの表面粗さによって定量化することが可能であり、ISO4288に従ってプロフィロメータを使用して測定することが可能である。
【0050】
実現される表面粗さは、材料特性、層厚、部品の配向、ノズルサイズ、流量、構築パターン、並びに、STLファイルの準備及び変換により影響される。いくつかの実施形態において、後処理(すなわち、研磨)を含みうる付加製造(AM)部品の表面粗さの範囲は、光沢面の場合、0.4~1.6マイクロメートル平均粗さ(Ra)(16~63マイクロインチRa)の範囲であり、マット表面の場合、3.2~12.5マイクロメートルRa(125~500マイクロインチRa)の範囲である。
【0051】
図5には、航空機の翼の構造に使用される前縁装置の一例が示されている。この装置は、複合パネル(700及び800)の位置を互いに調節して部品の輪郭を制御することが可能な機構(900)によって接続された複合パネル(700及び800)を利用する。いくつかの例において、これらの複合パネルには、1つ以上のアルミニウム製スティフナが利用される。前縁装置は、クルーガ―フラップや可変チャンバフラップを含む。
【0052】
図6には、複合パネル(1500)、ブルノーズ(bull nose)(1000)、スティフナ(1300)、ファスナ(1400)、シール(1100)、及びラグ(lug)(1200)が取り付けられた例示的な前縁デバイスが示されている。複合パネル(1500)、スティフナ(1300)、ブルノーズ(1000)、ラグ(1200)、シール(1100)、及び機構は一緒に固定される。典型的には、ブルノーズ(1000)は、アルミニウムからなる。ラグ(1200)及び機構は、典型的には、アルミニウム又はチタンで構成される。複合パネル(1500)は、複合ガラス繊維及びアルミニウムストリンガを含む。この装置は、典型的にはフラットに製造されてから、機構によって必要な輪郭に捩じられる。
【0053】
図7及び
図8には、3D印刷された特異部及び細部を有する例示的な共接合樹脂注入複合構造体の2つのビューが示されている。本開示の方法は、複合材硬化プロセスにおいて複数の部品を一体化することによって、前縁デバイスなどの複雑な構造体の部品の組み立てコストを削減することができる。図示例においては、スティフナ(1700)、樹脂注入複合構造体(1600)、及びブルノーズ(1800)は、樹脂注入技術により一体化される。本開示の方法はまた、別個の部品としてのファスナの必要性を低減することができる。
【0054】
図9には、コア補強要素(2000)を有する複合パネル(1900)が示されている。複雑な航空機部品は、一緒に組み立てられる複数の材料及び製品形態で構成される。本方法においては、金属フィッティング、ラグ、及びスティフナを、3D印刷複合マトリクス材料で置き換えることができる。樹脂注入熱硬化性物質又は熱可塑性液体樹脂を使用して、ポリマー系材料を共接合することにより、部品を一体化することができる。表面テクスチャ、材料の相(液体及び/又は固体)及び相互作用の制御を最適化することにより、接合性を向上させることができる。
【0055】
図10Aには、エポキシ樹脂である液相コンポーネント(300)を注入し、複合構造体(400)を硬化させる間の温度-時間グラフの例が示されている。この例において、プリフォームの温度が100℃である場合、樹脂の粘度は、0.1Pa・s未満である。この粘度は、割り当てられた期間内に補強材(200)への注入を成功させるのに十分な粘度である。また、樹脂の粘度は、3D印刷された細部を濡らす(又は、コーティングする)のに十分なものである。
【0056】
図10Bに示すように、注入段階から硬化段階への移行時、樹脂の硬化度が高まる。この場合の硬化温度は、180℃に設定される。複合構造体(400)が、ナイロン12インサートの溶融温度である168℃に到達すると、樹脂の硬化度は、0.8になる。この温度での粘度は、100Pa・sを超えるため、ナイロン12インサートは、180℃の硬化温度に近づく際に、剛性と形状を維持して、硬化されるエポキシ樹脂との一体化を成功させる。しかし、エポキシ樹脂とナイロン熱可塑性AMインサートとの間には、強力な化学結合を可能にする液体間相互作用の能力がなおも残っている。
【0057】
図10Cには、ナイロン12AMインサートを有する炭素プリフォームにエポキシ樹脂を注入する例が示されており、当該例において、注入済プリフォーム及びAMインサートが、ナイロン12インサートの溶融温度である168℃に到達したとき、樹脂粘度は100,000Pa・s未満である。
図10Dには、同じ温度-時間グラフについて、注入済プリフォーム及びAMインサートが168℃に到達したときに硬化度が0.94である例が示されている。この場合、エポキシ樹脂のAMインサートとの強力な結合形成は、機械的結合に依存するが、これは、エポキシ樹脂が液体から固体に遷移したときに熱可塑性AMインサートが完全に固体であるためである。
【0058】
いくつかの実施形態において、効果的な結合は、硬化度0.85度未満で達成することができる。プリプレグに見られるような高粘性樹脂系を扱った経験に基づけば、処理中のAMインサートの形状変化を防止するためには、10Pa・s程度の粘性が十分であろう。
【0059】
粘度及び硬化度の関数としての3D印刷材料の物理的状態は、効果的な結合のために重要である。3D印刷材料の物理的状態は、示差走査熱量測定(DSC)グラフ又は熱機械分析(TMA)グラフに基づいて評価することができる。
図11に示すように、ナイロン12の場合、160℃から180℃の間で物理的状態が固体から液体に変化、すなわち遷移する。この例においては、硬化度が0.90を超える場合、ナイロン12の温度が160℃を下回ると、結合は、テクスチャ加工された表面に基づく機械的結合に依存すると考えられている。硬化度が0.90未満の場合、ナイロン温度が160℃に到達すると、分子間力が結合の主要因になると考えられている。硬化度が0.90未満の場合、ナイロン温度が180℃を超えると、3D印刷されたナイロン12の形状又は輪郭に変化が生じ、その結果、部品の有効なデザイン、形状、又は輪郭が変化する可能性がある。
【0060】
温度が変化すると、材料の膨張又は収縮が生じる。典型的には、材料は、加熱されると膨張し、冷却されると収縮する。熱膨張係数などの3D印刷材料の特性を調節することで、効果的な接合や熱による亀裂の防止が可能になる。材料の選択は、適切な固相コンポーネント(100)を製造するための1つの要因である。
【0061】
いくつかの実施形態において、液体熱硬化性樹脂又は液体熱可塑性樹脂を炭素繊維補強材と組み合わせる場合の積層体としての複合材システムは、5~35メガポンド/平方インチ(msi)の範囲の弾性係数、50~300キロポンド/平方インチ(ksi)の非ノッチ強度(un-notched strength)、及び0.5~10(in-lb/in2)の層間破壊靭性を有することになる。熱可塑性物質(フィラー有り又は無し)の固体付加製造部品又はインサートは、0.1~2msiの範囲の弾性係数、及び0.4~25ksiの非ノッチ強度を有することになる。
【0062】
さらに、本開示は、以下の付記に詳述する事項及び例を含む。
【0063】
付記1.複合構造体を作製するための方法であって、
付加製造により、ポリマーマトリクス材料を含む固相コンポーネントを形成することと、
モールドキャビティ内に前記固相コンポーネント及び補強材を配置することと、
前記ポリマーマトリクス材料に対して結合適合性を有する材料を含む液相コンポーネントを前記モールドキャビティに投入し、前記液相コンポーネントを前記補強材に含浸させるとともに前記固相コンポーネントと結合させることにより、前記複合構造体を形成することと、を含む、方法。
【0064】
付記2.前記モールドキャビティに前記液相コンポーネントを投入するに際して、射出成形又は樹脂注入を行う、付記1に記載の方法。
【0065】
付記3.前記固相コンポーネントは、約60℃から約160℃の所定温度で前記液相コンポーネントと結合する、付記1又は2に記載の方法。
【0066】
付記4.前記固相コンポーネントは、熱可塑性材料を含む、付記1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
付記5.前記液相コンポーネントは、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、又はこれらの混合物を含む、付記1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
付記6.前記固相コンポーネントは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート、ビニル、ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリフェニレン・スルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)を含む、付記1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
付記7.前記補強材は、ガラス繊維及び炭素繊維のうちの一方又は両方を含む、付記1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
付記8.前記液相コンポーネントは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート、ビニル、ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリフェニレン・スルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)を含む、付記1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
付記9.前記液相コンポーネントは、ASTM D2196に従って規定された約0.01Pa・sから約1.0Pa・sの粘度を有する、付記1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
付記10.前記補強材は、ガラス繊維補強材を含む、付記1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
付記11.前記補強材は、炭素繊維補強材を含む、付記1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
付記12.前記固相コンポーネントの付加製造における成形時、空隙、応力集中、及び温度特性不一致を緩和するために、ラスプ角度及びビード厚みを調節する、付記1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
付記13.前記複合構造体における空隙又は孔の体積比率は、5体積%未満である、付記1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
付記14.前記複合構造体における応力集中箇所は、長さが0.25インチ未満である、付記1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
付記15.前記固相コンポーネントは、テクスチャ表面を有する、付記1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
付記16.前記複合構造体は、外板又はスティフナである、付記1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
付記17.前記複合構造体は、前記モールドキャビティから取り出される、付記1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
付記18.複合構造体を作製するための方法であって、
付加製造により、固相コンポーネントを形成することと、
モールドキャビティ内に前記固相コンポーネント及び補強材を配置することと、
調節された温度、及び調節された圧力下の前記モールドキャビティにおいて、前記固相コンポーネント、前記補強材、及び、前記固相コンポーネントと結合適合性を有する液相コンポーネントを一体化して、前記複合構造体を形成することと、を含む方法。
【0081】
付記19.前記モールドキャビティにおいて、前記固相コンポーネント、補強材、及び前記液相コンポーネントを一体化するに際して、樹脂注入を行う、付記18に記載の方法。
【0082】
付記20.前記固相コンポーネントは、約60℃から約160℃の所定温度で前記液相コンポーネントと結合する、付記18又は19に記載の方法。
【0083】
付記21.前記固相コンポーネント及び前記液相コンポーネントは、ポリマー系材料を含む、付記18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
付記22.前記固相コンポーネントは、熱可塑性材料を含む、付記18~21のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
付記23.前記液相コンポーネントは、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂、又はこれらの混合物を含む、付記18~21のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
付記24.前記固相コンポーネントは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート、ビニル、ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリフェニレン・スルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)を含む、付記18~23のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
付記25.前記補強材は、ガラス繊維及び炭素繊維のうちの一方又は両方を含む、付記18~24のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
付記26.前記液相コンポーネントは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート、ビニル、ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリフェニレン・スルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、及び高密度ポリエチレン(HDPE)を含む、付記18~25のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
付記27.前記補強材は、ガラス繊維補強材を含む、付記18~26のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
付記28.前記補強材は、炭素繊維補強材を含む、付記18~26のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
付記29.前記固相コンポーネントの付加製造における成形時、空隙、応力集中、及び温度特性不一致を緩和するために、ラスプ角度及びビード厚みを調節する、付記18~28のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
付記30.空隙又は孔の体積比率は、5体積%未満である、付記18~29のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
付記31.応力集中箇所は、長さが0.25インチ未満である、付記18~30のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
付記32.前記固相コンポーネントは、テクスチャ表面を有する、付記18~31のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
付記33.前記複合構造体は、スティフナである、付記18~32のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
付記34.前記複合構造体は、前記モールドキャビティから取り出される、付記18~33のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
付記35.前縁を有する航空機用翼フラップであって、前記前縁は、付記1~17のいずれか1つに記載の方法によって形成された前記複合構造体を含む、航空機用翼フラップ。
【0098】
付記36.前縁を有する航空機用翼フラップであって、前記前縁は、付記18~34のいずれか1つに記載の方法によって形成された前記複合構造体を含む、航空機用翼フラップ。
【外国語明細書】