(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187485
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】自動解剖学的特徴識別及びマップセグメント化
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20221212BHJP
A61B 5/343 20210101ALI20221212BHJP
A61B 5/349 20210101ALI20221212BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20221212BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/367 100
A61B5/343
A61B5/349
A61B5/287 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022091415
(22)【出願日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】17/341,267
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ヤーニットスキー
(72)【発明者】
【氏名】ゴーレン・コーン
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127HH11
4C127HH13
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】医療システムを提供すること。
【解決手段】一実施形態では、医療システムは、生体の心臓に挿入されるように構成されたカテーテルであって、心臓内のそれぞれの位置で心臓の電気活動を捕捉するように構成されている電極を含む、カテーテルと、ディスプレイと、処理回路であって、カテーテルから位置信号を受信し、位置信号に応答して、電極のそれぞれの位置を計算することと、計算された位置のそれぞれに応答して解剖学的マップを生成することと、心臓の解剖学的特徴及び解剖学的特徴の位置を、電極のそれぞれの位置及び電極のそれぞれによって捕捉された電気活動に応答して見つけることと、解剖学的特徴の見つかった位置に応答して解剖学的マップを自動的にセグメント化することと、解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を行うように構成された、処理回路と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動解剖学的特徴識別及びマップセグメンテーションのための医療システムであって、
生体の心臓に挿入されるように構成されたカテーテルであって、前記心臓内のそれぞれの位置で前記心臓の電気活動を捕捉するように構成されている電極を含む、カテーテルと、
ディスプレイと、
処理回路であって、
前記カテーテルから位置信号を受信し、前記位置信号に応答して、前記電極の前記それぞれの位置を計算することと、
前記計算された位置のそれぞれに応答して解剖学的マップを生成することと、
前記心臓の解剖学的特徴及び前記解剖学的特徴の位置を、前記電極の前記それぞれの位置及び前記電極のそれぞれによって捕捉された前記電気活動に応答して見つけることと、
前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して前記解剖学的マップを自動的にセグメント化することと、
前記解剖学的マップを前記ディスプレイにレンダリングすることと、を行うように構成された、処理回路と、を備える、医療システム。
【請求項2】
前記処理回路が、前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して、前記解剖学的特徴の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記解剖学的特徴が心臓弁であり、前記解剖学的マップが、心房のマップを含み、前記処理回路が、前記心臓弁の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記処理回路が、
前記電極によって捕捉された前記電気活動のそれぞれの局所興奮時間を計算することと、
前記心臓の前記解剖学的特徴及び前記解剖学的特徴の前記位置を、前記電極の前記それぞれの位置及び前記電極のそれぞれによって捕捉された前記電気活動の前記計算された局所興奮時間に応答して見つけることと、を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記処理回路が、前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して、前記解剖学的特徴の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心房電気活動を示し、前記それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心室電気活動を示し、
前記処理回路が、前記それぞれの局所興奮時間が心室電気活動を示すことに応答して、前記心臓の前記解剖学的特徴を見つけるように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記解剖学的特徴が、心臓弁であり、前記解剖学的マップが、心房のマップを含み、前記処理回路は、前記心臓弁の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記カテーテルが、シャフトと、前記シャフトの遠位端に接続されたそれぞれの近位端を有する複数の可撓性アームと、を含み、
前記電極が、前記可撓性アームの各々に沿ってそれぞれの位置に配設されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
自動解剖学的特徴識別及びマップセグメンテーションのための医療方法であって、
生体の心臓に挿入されたカテーテルから位置信号を受信することであって、前記カテーテルが、前記心臓内のそれぞれの位置で前記心臓の電気活動を捕捉するための電極を含む、受信することと、
前記位置信号に応答して、前記電極の前記それぞれの位置を計算することと、
前記計算された位置のそれぞれに応答して解剖学的マップを生成することと、
前記心臓の解剖学的特徴及び前記解剖学的特徴の位置を、前記電極の前記それぞれの位置及び前記電極のそれぞれによって捕捉された前記電気活動に応答して見つけることと、
前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して前記解剖学的マップを自動的にセグメント化することと、
前記解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を含む、医療方法。
【請求項10】
前記自動的にセグメント化することが、前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して、前記解剖学的特徴の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップをセグメント化することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記解剖学的特徴が、心臓弁であり、前記解剖学的マップが、心房のマップを含み、
前記自動的にセグメント化することが、前記心臓弁の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップをセグメント化することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電極によって捕捉された前記電気活動のそれぞれの局所興奮時間を計算することを更に含み、前記見つけることが、前記心臓の前記解剖学的特徴及び前記解剖学的特徴の前記位置を、前記電極の前記それぞれの位置及び前記電極のそれぞれによって捕捉された前記電気活動の前記計算された局所興奮時間に応答して見つけることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記自動的にセグメント化することが、前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して、前記解剖学的特徴の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップをセグメント化することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心房電気活動を示し、前記それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心室電気活動を示し、
前記見つけることが、前記それぞれの局所興奮時間が心室電気活動を示すことに応答して、前記心臓の前記解剖学的特徴を見つけることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記解剖学的特徴が、心臓弁であり、前記解剖学的マップが、心房のマップを含み、
前記自動的にセグメント化することが、前記心臓弁の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップをセグメント化することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カテーテルが、シャフトと、前記シャフトの遠位端に接続されたそれぞれの近位端を有する複数の可撓性アームと、を含み、
前記電極が、前記可撓性アームの各々に沿ってそれぞれの位置に配設されている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
プログラム命令が格納される非一時的なコンピュータ可読媒体を含むソフトウェア製品であって、前記命令が、中央処理装置(CPU)によって読み取られると、前記CPUに、
生体の心臓に挿入されたカテーテルから位置信号を受信することであって、前記カテーテルが、前記心臓内のそれぞれの位置で前記心臓の電気活動を捕捉するための電極を含む、受信することと、
前記位置信号に応答して、前記電極の前記それぞれの位置を計算することと、
前記計算された位置のそれぞれに応答して解剖学的マップを生成することと、
前記心臓の解剖学的特徴及び前記解剖学的特徴の位置を、前記電極の前記それぞれの位置及び前記電極のそれぞれによって捕捉された前記電気活動に応答して見つけることと、
前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して前記解剖学的マップを自動的にセグメント化することと、
前記解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を行わせる、ソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療システムに関し、排他的にではないがとりわけ、カテーテルベースのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
広範囲にわたる医療処置は、カテーテルなどのプローブを患者の身体内に配置することを伴う。このようなプローブを追跡するために、位置感知システムが開発されてきた。磁気的位置感知は、当該技術分野において既知の方法のうちの1つである。磁気的位置感知において、磁界発生器は通常、患者の外部の既知の位置に配置される。プローブの遠位端内の磁界センサは、これらの磁界に応答して電気信号を生成し、これらの信号は、プローブの遠位端の座標位置を判定するために処理される。これらの方法及びシステムは、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第1996/005768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455号、同第2003/0120150号及び同第2004/0068178号に記載されており、これらの開示は参照により全体が本明細書に組み込まれている。位置はまた、インピーダンス又は電流ベースのシステムを使用して追跡されてもよい。
【0003】
これらのタイプのプローブ又はカテーテルが極めて有用であると証明されている医療処置の1つは、心不整脈の治療におけるものである。心不整脈及び特に心房細動は、特に老年人口では、一般的かつ危険な病状として持続している。
【0004】
心不整脈の診断及び治療には、心臓組織、特に心内膜及び心容積の電気的特性をマッピングすること、並びにエネルギーの印加によって心臓組織を選択的にアブレーションすることが含まれる。そのようなアブレーションにより、不要な電気信号が心臓のある部分から別の部分へと伝播するのを停止させるか又は修正することができる。アブレーションプロセスは、非導電性の損傷部を形成することによって不要な電気経路を破壊するものである。様々なエネルギー送達の様式が、損傷部を形成する目的でこれまでに開示されており、心臓組織壁に沿って伝導ブロックを作るためのマイクロ波、レーザ、及びより一般的には無線周波エネルギーの使用が挙げられる。マッピングの後にアブレーションを行う2工程の処置において、通常、1つ又は2つ以上の電気センサを含むカテーテルを心臓の内部に前進させ、複数のポイントでデータを得ることによって、心臓内の各ポイントにおける電気活動が感知及び測定される。次いで、これらのデータを利用して、このアブレーションを行うべき心内膜の標的領域を選択する。
【0005】
電極カテーテルは、長年にわたり医療現場で一般的に使用されている。電極カテーテルは、心臓内の電気活動を刺激及びマッピングし、異常な電気活動が見られる部位をアブレーションするために使用される。使用時には、電極カテーテルは、主要な静脈又は動脈、例えば、大腿動脈に挿入された後、対象の心腔内へと導かれる。典型的なアブレーション処置は、その遠位端に1つ又は2つ以上の電極を有するカテーテルを心腔内に挿入することを伴う。参照電極は、一般的には患者の皮膚にテープで貼り付けられるか、あるいは心臓内又は心臓付近に配置されている第2のカテーテルによって提供され得る。RF(radio frequency、高周波)電流をアブレーションカテーテルの先端電極に印加し、参照電極に向かって先端電極の周囲の媒質、すなわち、血液及び組織に電流が流れる。電流の分布は、組織より高い導電性を有する血液と比較した場合、組織と接触する電極表面の量に依存する。組織の加熱は、組織の電気抵抗に起因して生じる。組織が十分に加熱されると、心臓組織において細胞破壊が引き起こされ、結果として、心臓組織内に非導電性である損傷部が形成される。
【0006】
したがって、アブレーションカテーテル又は他のカテーテルを身体内、特に心内膜組織近くに配置させる場合、カテーテルの遠位先端部をその組織と直接接触させることが望ましい。この接触は、例えば、遠位先端部と体組織との間の接触を測定することによって、確かめることができる。米国特許出願公開第2007/0100332号、同第2009/0093806号、及び同第2009/0138007号には、カテーテル内に埋め込まれた力センサを使用して、カテーテルの遠位先端部と体腔内の組織との間の接触圧力を感知する方法が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、生体の心臓に挿入されるように構成されたカテーテルであって、心臓内のそれぞれの位置で心臓の電気活動を捕捉するように構成されている電極を含む、カテーテルと、ディスプレイと、処理回路であって、カテーテルから位置信号を受信し、位置信号に応答して、電極のそれぞれの位置を計算することと、計算された位置のそれぞれに応答して解剖学的マップを生成することと、心臓の解剖学的特徴及び解剖学的特徴の位置を、電極のそれぞれの位置及び電極のそれぞれによって捕捉された電気活動に応答して見つけることと、解剖学的特徴の見つかった位置に応答して解剖学的マップを自動的にセグメント化することと、解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を行うように構成された、処理回路と、を備える医療システムが提供される。
【0008】
更に、本開示の一実施形態によれば、処理回路が、解剖学的特徴の見つかった位置に応答して、解剖学的特徴の代わりに解剖学的マップに穴を残して、解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている。
【0009】
また更に、本開示の一実施形態によれば、解剖学的特徴が、心臓弁であり、解剖学的マップが、心房のマップを含み、処理回路は、心臓弁の代わりに解剖学的マップに穴を残して、解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている。
【0010】
加えて、本開示の一実施形態によれば、処理回路が、電極によって捕捉された電気活動のそれぞれの局所興奮時間を計算することと、心臓の解剖学的特徴及び解剖学的特徴の位置を、電極のそれぞれの位置及び電極のそれぞれによって捕捉された電気活動の計算された局所興奮時間に応答して見つけることと、を行うように構成されている。
【0011】
更に、本開示の一実施形態によれば、処理回路が、解剖学的特徴の見つかった位置に応答して、解剖学的特徴の代わりに解剖学的マップに穴を残して、解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている。
【0012】
更に、本開示の一実施形態によれば、それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心房電気活動を示し、それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心室電気活動を示し、処理回路が、それぞれの局所興奮時間が心室電気活動を示すことに応答して、心臓の解剖学的特徴を見つけるように構成されている。
【0013】
また更に、本開示の一実施形態によれば、解剖学的特徴が、心臓弁であり、解剖学的マップが、心房のマップを含み、処理回路は、心臓弁の代わりに解剖学的マップに穴を残して、解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている。
【0014】
加えて、本開示の一実施形態によれば、カテーテルが、シャフトと、シャフトの遠位端に接続されたそれぞれの近位端を有する複数の可撓性アームと、を含み、電極が、可撓性アームの各々に沿ってそれぞれの位置に配設されている。
【0015】
本開示の別の実施形態によれば、生体の心臓に挿入されたカテーテルから位置信号を受信することであって、カテーテルが、心臓内のそれぞれの位置で心臓の電気活動を捕捉するための電極を含む、受信することと、位置信号に応答して、電極のそれぞれの位置を計算することと、計算された位置のそれぞれに応答して解剖学的マップを生成することと、心臓の解剖学的特徴及び解剖学的特徴の位置を、電極のそれぞれの位置及び電極のそれぞれによって捕捉された電気活動に応答して見つけることと、解剖学的特徴の見つかった位置に応答して解剖学的マップを自動的にセグメント化することと、解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を含む、方法も提供される。
【0016】
更に、本開示の一実施形態によれば、自動的にセグメント化することが、解剖学的特徴の見つかった位置に応答して、解剖学的特徴の代わりに解剖学的マップに穴を残して、解剖学的マップをセグメント化することを含む。
【0017】
更に、本開示の一実施形態によれば、解剖学的特徴が、心臓弁であり、解剖学的マップが、心房のマップを含み、自動的にセグメント化することが、心臓弁の代わりに解剖学的マップに穴を残して、解剖学的マップをセグメント化することを含む。
【0018】
また更に、本開示の実施形態によれば、方法は、電極によって捕捉された電気活動のそれぞれの局所興奮時間を計算することを更に含み、見つけることが、心臓の解剖学的特徴及び解剖学的特徴の位置を、電極のそれぞれの位置及び電極のそれぞれによって捕捉された電気活動の計算された局所興奮時間に応答して見つけることを含む。
【0019】
加えて、本開示の一実施形態によれば、自動的にセグメント化することが、解剖学的特徴の見つかった位置に応答して、解剖学的特徴の代わりに解剖学的マップに穴を残して、解剖学的マップをセグメント化することを含む。
【0020】
更に、本開示の一実施形態によれば、それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心房電気活動を示し、それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心室電気活動を示し、見つけることが、それぞれの局所興奮時間が心室電気活動を示すことに応答して、心臓の解剖学的特徴を見つけることを含む。
【0021】
更に、本開示の一実施形態によれば、解剖学的特徴が、心臓弁であり、解剖学的マップが、心房のマップを含み、自動的にセグメント化することが、心臓弁の代わりに解剖学的マップに穴を残して、解剖学的マップをセグメント化することを含む。
【0022】
また更に、本開示の一実施形態によれば、カテーテルが、シャフトと、シャフトの遠位端に接続されたそれぞれの近位端を有する複数の可撓性アームと、を含み、電極が、可撓性アームの各々に沿ってそれぞれの位置に配設されている。
【0023】
本開示の更に別の実施形態によれば、プログラム命令が格納される非一時的なコンピュータ可読媒体を含むソフトウェア製品であって、命令が、中央処理装置(CPU)によって読み取られると、CPUに、生体の心臓に挿入されたカテーテルから位置信号を受信することであって、カテーテルが、心臓内のそれぞれの位置で心臓の電気活動を捕捉するための電極を含む、受信することと、位置信号に応答して、電極のそれぞれの位置を計算することと、計算された位置のそれぞれに応答して解剖学的マップを生成することと、心臓の解剖学的特徴及び解剖学的特徴の位置を、電極のそれぞれの位置及び電極のそれぞれによって捕捉された電気活動に応答して見つけることと、解剖学的特徴の見つかった位置に応答して解剖学的マップを自動的にセグメント化することと、解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を行わせる、ソフトウェア製品、も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、図面と併せて、以下の詳細な説明から理解されよう。
【
図1】本発明の例示的な実施形態に従って構築され動作する医療処置システムの概略図である。
【
図2】
図1のシステムで使用するためのカテーテルの概略図である。
【
図3】解剖学的マップ及び
図2のカテーテルの概略図である。
【
図4】
図3に示される位置における
図2のカテーテルの電極及び身体表面電極を介して捕捉された電気活動信号の概略図である。
【
図5】電気活動信号及びその関連する局所興奮時間の概略図である。
【
図6】
図1のシステムで使用するための計算された電極位置の概略図である。
【
図7】
図6の電極位置のいくつかに基づく第1の解剖学的マップの概略図である。
【
図8】
図6の電極位置のいくつかに基づく第2の解剖学的マップの概略図である。
【
図9】
図1のシステムの操作方法における工程を含むフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
概論
前述のように、マッピングの後にアブレーションを行う2工程の処置では、通常、1つ又は2つ以上の電極を備えるカテーテルを心臓の中に前進させ、多数の点でデータを取得することによって、心臓内の各点における電気的活動を感知し、測定している。次いで、これらのデータを利用して、アブレーションが実施される標的領域が選択される。
【0026】
心室又は心房のいずれかの解剖学的構造を作成するときに、マッピングカテーテルは、マッピング中に弁を通過し、再構成に望ましくない追加をもたらすことが多い。医師は、手動で弁の位置を識別し、解剖学的構造を編集して、マッピングされた解剖学的再構成から弁を除去することができる。そのようなプロセスを可能にするための1つの解決策は、医師が捕捉された心内信号を調べて、信号が心室又は心房内にあることを示すかどうかを見ることによって、カテーテルが弁に入ったかどうかを判定することである。次いで、医師は、カテーテルが弁内に位置付けられ、それに応じて解剖学的構造がクロッピングされるかどうかを知る。このプロセスは、電気解剖学的マッピングが弁以外の心房又は心室にわたるように、マップのLAT着色又は他の電気解剖学的マッピングプロセスの正確さに不可欠である。手動介入は、オペレータにとって面倒であり、不正確であり得る。例えば、Pentaray(商標)(Biosense Webster Inc.(Irvine,CA)から市販されている)などの多電極カテーテルを使用すると、多電極カテーテルの電極のいくつかは弁内にあり、他の電極はそうではない場合があり、それにより、医師が弁又は別の解剖学的特徴を正確に識別することが困難となる。
【0027】
本発明の実施形態は、弁などの解剖学的特徴を自動的に見つけ、その解剖学的特徴を解剖学的マップから除外する(又はクロッピングする)ことを含む解剖学的マップを自動的にセグメント化することによって、上記の問題を解決する。セグメント化することは、通常、解剖学的特徴が全く存在しないと仮定する代わりに、解剖学的特徴の場所においてマップに穴を残しながら、マップから解剖学的特徴を除外する(又はクロッピングする)ことを含む。例えば、弁は、心房のマップから除外され(又はクロッピングされ)、除外された弁の代わりに心房のマップに穴を残す。
【0028】
例えば、Pentarayカテーテル(複数の可撓性アーム又はスプラインを含む)でマッピングするときに、カテーテルは、周りを移動し、マッピング中のある時点で、Pentarayのアームのいくつかが心房内にあってもよく、いくつかは、心室に向かって弁内にあってもよい(又はその逆)。心房内のアームの電極が心房活動を示す信号(例えば、心内電位図(IEGM))を捕捉し、弁内のアームの電極が心室活動を示す信号(例えば、IEGM)を捕捉する。捕捉された信号は、心室活動を識別するために分析される。これは、信号のタイミング(例えば、信号の局所興奮時間)を身体表面(BS)リード作動タイミングと比較することによって、又は任意の他の好適な技術によって行われてもよい。加えて、各カテーテル電極の現在の位置は、位置追跡技術を使用して計算されてもよい。例えば、磁気追跡、カテーテル電極と身体表面電極との間のインピーダンス、又は磁気追跡及びインピーダンス追跡の組み合わせに基づく位置追跡を使用する。したがって、心室活動を呈する電極は、心室内(例えば、弁内)にあるものとして識別されてもよく、それらの計算された位置(心室活動を呈している間)がマップを自動的に、かつ正確にセグメント化する(例えば、マップから弁をクロッピングする)ために使用されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、心室活動を呈する電極は、3D空間内の点群を提供する。次いで、これらの位置を使用して、3Dに境界構造を見つけてもよく、次いで、境界構造は解剖学的構造からセグメント化、例えば除外(又はクロッピング)される。
【0030】
上記は、心臓の異なる部分間の電気活動を区別することに基づいて、任意の好適な解剖学的特徴を見つけるために使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、弁は、心室のマップから除去されてもよい。
【0031】
解剖学的マップをセグメント化することは、(例えば、異なる色の表面、及び/又は異なるレベルの透明度、及び/又は点線を使用して解剖学的特徴を示すことによって)解剖学的特徴を解剖学的マップ上で別個の特徴として示すこと、又は解剖学的特徴を解剖学的マップから除外(例えば、クロッピング)することを含んでもよい。
【0032】
システムの説明
ここで
図1を参照すると、
図1は、本発明の一実施形態に従って構築され動作する医療処置システム20の概略図である。
図1のシステム20で使用するためのカテーテル40の概略図である
図2も参照する。
【0033】
医療処置システム20は、
図1の挿入
図25に示され、
図2により詳細に示されているカテーテル40の位置を判定するために使用される。カテーテル40は、シャフト22と、シャフト22の遠位端に接続されたそれぞれの近位端を有する可撓性アーム54(簡略化のために一部のみに参照符号が付されている)を含む。カテーテル40は、生体の身体部分(例えば、心臓26)に挿入されるように構成されている。
【0034】
カテーテル40は、可撓性アーム54の近位端に対して既定の空間関係でシャフト22上に配設された位置センサ53を含む。位置センサ53は、磁気センサ50及び/又は少なくとも1つのシャフト電極52を含み得る。磁気センサ50は、回転(roll)を含む位置及び向きの位置データを提供するために、例えば、限定するものではないが、二軸又は三軸のコイル配列などの少なくとも1つのコイルを含んでもよい。カテーテル40は、可撓性アーム54の各々に沿ってそれぞれの位置に配設され、心臓26内のそれぞれの位置で心臓26の電気活動を捕捉するように構成されている複数の電極55(簡略化のために
図2では一部のみに参照符号が付されている)を含む。典型的には、カテーテル40は、電極55を使用して生体の心臓26内の電気活動をマッピングするために、又は生体の身体部分内で任意の他の好適な機能を行うために使用されてもよい。
【0035】
医療処置システム20は、カテーテル40のシャフト22の位置及び向きを、磁気センサ50及び/又はシャフト22に取り付けられた、磁気センサ50の両側のシャフト電極52(近位電極52a及び遠位電極52b)によって供給される信号に基づいて判定することができる。近位電極52a、遠位電極52b、磁気センサ50及び少なくともいくつかの電極55は、シャフト22を通って延びるワイヤにより、カテーテルコネクタ35を介してコンソール24内の様々なドライバ回路に接続されている。いくつかの実施形態では、可撓性アーム54のそれぞれの少なくとも2つの電極55、シャフト電極52、及び磁気センサ50は、カテーテルコネクタ35を介してコンソール24内のドライバ回路に接続されている。いくつかの実施形態では、遠位電極52b及び/又は近位電極52aは省略されてもよい。
【0036】
図2に示されている図は、純粋に概念を明確化する目的のために選択されている。シャフト電極52及び電極55の他の構成も可能である。位置センサ53には更なる機能が含まれてもよい。明確にするために、灌注ポートなど、本発明の開示された実施形態に関連しない要素は省略されている。
【0037】
医師30は、カテーテル40の近位端の近傍のマニピュレータ32を使用してシャフト22を操作すること及び/又はシース23からの偏向によって、カテーテル40を患者28の身体部分(例えば、心臓26)内の標的位置に誘導する。カテーテル40は、可撓性アーム54が集まった状態で、シース23を通して挿入され、カテーテル40がシース23から後退した後にのみ、可撓性アーム54が広がり、それらの意図された機能的形状を回復することができる。可撓性アーム54をまとめて収容することにより、シース23は、標的位置へ向かう間の血管外傷を最小限に抑える役割も果たす。
【0038】
コンソール24は、処理回路41、典型的には汎用コンピュータと、ケーブル39を通って患者28の胸部及び背部又は任意の他の好適な皮膚表面に延びるワイヤによって取り付けられた身体表面電極49において信号を生成する、及び/又は身体表面電極49から信号を受信する好適なフロントエンド及びインタフェース回路44と、を含む。
【0039】
コンソール24は、磁気感知サブシステムを更に含む。患者28は、少なくとも1つの磁場放射体42を含むパッドによって生成された磁場内に置かれ、磁場放射体42は、コンソール24内に配設されたユニット43によって駆動される。磁場放射体42は、身体の部分(例えば、心臓26)が位置する領域に交番磁界を送信するように構成されている。磁場放射体42によって生成された磁場は、磁気センサ50において方向信号を生成する。磁気センサ50は、送信された交番磁界の少なくとも一部を検出し、対応する電気入力として方向信号を処理回路41に供給するように構成されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、処理回路41は、シャフト電極52、磁気センサ50及び電極55から受信した位置信号を使用して、心腔内などの器官内のカテーテル40の位置を推定する。いくつかの実施形態では、処理回路41は、電極52及び電極55から受信した位置信号を以前に取得した磁気的位置較正位置信号と相関させて、心腔内のカテーテル40の位置を推定する。シャフト電極52及び電極55の位置座標は、他の入力の中でも特に、電極52、55と身体表面電極49との間で測定されるインピーダンス又は電流分布の割合に基づいて、処理回路41によって判定され得る。コンソール24は、心臓26内のカテーテル40の遠位端を示すディスプレイ27を駆動する。
【0041】
電流分布測定値及び/又は外部磁場を使用する位置検知の方法は、様々な医療用途で、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,California)により製造されるCarto(登録商標)システムに実装されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、同第6,332,089号、同第7,756,576号、同第7,869,865号、及び同第7,848,787号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳述されている。
【0042】
Carto(登録商標)3システムは、有効電流位置(Active Current Location、ACL)のインピーダンスベースの位置追跡方法を適用する。いくつかの実施形態では、処理回路41は、ACL法を使用して、電気インピーダンスの表示と磁場放射体42の磁気座標フレーム内の位置との間のマッピング(例えば、現在位置マトリックス(current-position matrix、CPM))を作成するように構成されている。処理回路41は、CPM内でルックアップを実行することにより、シャフト電極52及び電極55の位置を推定する。
【0043】
処理回路41は、本明細書に記載される機能を実行するために、典型的にはソフトウェアでプログラムされる。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる、あるいは、代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。
【0044】
図1は、簡潔性及び明瞭性のために、本開示の技術に関する要素のみを示す。システム20は、典型的には、開示される技術には直接関連しないために
図1及び対応する説明から意図的に省略されている、追加のモジュール及び要素を含む。
【0045】
上述のカテーテル40は、アーム54ごとに6つの電極55を有する8つの可撓性アーム54を含む。カテーテル40の代わりに、単なる例として、例えば、様々な数の可撓性アーム及び/又はアームごとに複数の電極を備えたカテーテルなどの任意の適切なカテーテル、あるいは、例えばバルーンプローブ又はラッソカテーテルなどの様々なプローブ形状を使用することができる。
【0046】
医療処置システム20はまた、例えば、カテーテル40又はこれとは異なるカテーテルなどの任意の適切なカテーテル、及び任意の適切なアブレーション方法を使用して、心臓組織のアブレーションを実行し得る。コンソール24は、心臓26の心筋のアブレーションを行うために、コンソール24に接続されたカテーテルの1つ以上の電極と、身体表面電極49のうちの1つ又は2つ以上と、によって印加されるRF電力を生成するように構成されたRF信号発生器34を含んでもよい。コンソール24は、アブレーションを実施するカテーテルの遠位端への灌注チャネルに灌注流体を送り込むポンプ(図示せず)を含んでもよい。アブレーションを実施するカテーテルは、アブレーション中に心筋の温度を測定し、測定された温度に従ってアブレーション電力及び/又は灌注流体のポンピングの灌注速度を調節するために使用される温度センサ(図示せず)を更に含んでもよい。
【0047】
ここで、解剖学的マップ36及び
図2のカテーテル40の表現38の概略図である
図3を参照する。
図3は、カテーテル40の可撓性アーム54(A、B、D~Hと参照符号が付されている)のほとんどが心臓26の心房内にあるが、可撓性アーム54のうちの1つ(アームCと参照符号が付されている)が心室に向かって弁内にあることを示している。簡単にするために、
図3の例は、可撓性アーム54のうちの1つのみ(アームC)が弁内にあり、アームCのすべてのもの(電極)が弁内にあることを示している。他のシナリオにおいて、可撓性アーム54のうちの1つの一部、又は可撓性アーム54の2つ以上(あるいはその一部)は、解剖学的マップ36から除外するために選択される弁又は他の解剖学的特徴内にあってもよい。
図3に示す解剖学的マップ36は、心房のうちの1つのものである。いくつかの実施形態において、解剖学的マップ36は、心室のうちの1つ又は任意の他の好適な身体部分のものであり得る。
【0048】
ここで、
図3に示される位置における
図2のカテーテル40の電極55及び身体表面電極49(
図1)を介して捕捉された電気活動信号60、62の関心窓64(例えば、1心拍サイクル)の概略図である
図4を参照する。
図4は、身体表面電極49によって捕捉された心電図(ECG)60及びカテーテル40の電極55によって捕捉された心内電位図(IEGM)62を示す。IEGM62は、
図4において、カテーテル40の可撓性アーム54(すなわち、アームA~H)に従って、かつ可撓性アーム54の各々の電極55の順序に従って規則的である。IEGM62のグループは、
図3に示すように、可撓性アーム54の対応する参照符号に従ってA~Hで参照符号が付されている。
【0049】
図3は、身体表面電極49によって捕捉された心電
図60が心房活動(ブロック66)及び心室活動(ブロック68)の両方を呈していることを示す。アームA及びBの電極55は、アームA及びBの電極55が心臓26の組織と接触していないか、又は組織との不十分な接触であることを示し得る、極めて少ない電気活動を示している。アームD~Hの電極55は、心房活動を呈している(ブロック70)が、アームCの電極55は心室活動を呈している(ブロック72)。
【0050】
IEGM62に見られる心房活動と心室活動との間の差は、関心窓64内のそれぞれのIEGM62のそれぞれの局所興奮時間のそれぞれの時間値によって示され得る。一般に、心室活動は、心房活動よりも関心窓64において後である。
【0051】
ここで、電気活動信号74及びその関連する局所興奮時間76の概略図である
図5を参照する。電気活動信号74は、
図4のIEGM62のうちの1つの例である。電気活動信号74の局所興奮時間76は、任意の好適な方法、例えば、電気活動信号74の最大負勾配を(例えば、信号を区別することに基づいて)計算し、局所興奮時間76が計算された最大負勾配の時間と等しくなるように設定することによって計算されてもよい。マルチチャネル心電図(ECG)信号から参照注釈時間を判定するための方法は、Rubinsteinらの米国特許第9,259,165号に記載されている。心臓内ECG信号の正確な時間注釈は、Rubinsteinの米国特許出願公開第2013/0123652号に記載されている。
【0052】
ここで、
図1のシステム20で使用するための計算された電極位置の概略図である
図6を参照する。
図6は、経時的にカテーテル40の電極55について計算された心臓26の心房の1つにおける電極位置78及び心臓26の弁における電極位置80を示す。位置78、80は、例えば、磁気ベースの追跡、電流又はインピーダンス測定値の分布、又はそれらの任意の好適な組み合わせを使用して、任意の好適な位置追跡方法を使用して計算され得る。したがって、心臓26の周り又は心臓26の腔内でカテーテル40を移動させることは、経時的に計算された位置78、80の3Dクラウドを生成し、3Dクラウドは、次いで、以下でより詳細に説明されるように、心臓26の解剖学的マップを生成するために使用され得る。
【0053】
ここで、
図6の電極位置のいくつかに基づく第1の解剖学的マップ82の概略図である
図7を参照する。解剖学的マップ82は、任意の好適な解剖学的マップ生成方法、例えば、限定されないが、高速解剖学的マッピング(Fast Anatomical Mapping、FAM)を使用して生成され得る。FAMは、Cohenらの米国特許第10,918,310号に記載されている。FAMでは、データポイントの3次元(3D)クラウドの周りに滑らかなシェルが生成される。解剖学的マップ82は、弁の電極位置80を無視しながら、心房の計算された電極位置78(
図6)の周りに滑らかなシェルを生成することよって生成され得る。このような方法で、解剖学的マップ82は、心房を説明する閉じたシェルを提供し、弁を無視し、弁への入口が心房内にあるシェル表面を配置する。解剖学的マップ82は、多くのシナリオにおいて有用であり得るが、例えば、LATマップなどの電気解剖学的マップが解剖学的マップ82のシェル表面に基づいて生成される他のシナリオでは、弁の開口部を無視することが不正確である。このような場合、LATマップは、心房の開口部を横切る電気活動波の弁への伝播であって、不正確な伝播を示すことになる。
【0054】
ここで、
図6の電極位置78,80のいくつかに基づく第2の解剖学的マップ84の概略図である
図8を参照する。解剖学的マップ84は、弁の電極位置80を考慮しながら心房の電極位置78の周りに滑らかなシェル86を生成することに基づいて生成され、その結果、心房からの弁の開口部に対応する開口部88が滑らかなシェル86内に残される。このような場合、LATマップは、心房の表面にわたる電気活動波の伝播であって、弁への開口部を横切らない伝播を示すことになる。
【0055】
ここで
図9を参照すると、これは、
図1のシステム20の操作方法における工程を含むフローチャート100である。同様に
図1及び
図2も参照する。
【0056】
カテーテル40は、心臓26又は心腔の周りに移動され、処理回路41は、カテーテル40が心臓26又は心腔の周りを移動するときに、カテーテル40からの位置信号を受信する(ブロック102)ように構成されている。位置信号は、処理回路41によって、電極55から、及び/又は磁気センサ50から、及び/又はシャフト22を介して電極52から直接受信され得る。追加的又は代替的に、位置信号は、電極52、55から信号を受信する身体表面電極49から処理回路41によって受信され得る。位置信号を受信することに応答して、処理回路41は、任意の好適な位置追跡方法を使用して(カテーテル40が経時的に心臓26の周りを動くときに)電極55のそれぞれの位置78、80(
図6)を計算する(ブロック104)ように構成されている。
【0057】
処理回路41は、経時的に、カテーテル40の様々な位置で電極55によって捕捉された電気活動のそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算する(ブロック106)ように構成されている。LATは、任意の好適な方法を使用して、例えば、IEGM62(
図4)のそれぞれの最大負勾配を計算することによって、計算され得る。場合によっては、例えば、
図4に提供される図は、それぞれの局所興奮時間のいくつかが心房電気活動を示し、それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかは、心室電気活動を示す。
【0058】
処理回路41は、計算された位置78、80のそれぞれに応答して解剖学的マップ36(
図3)を生成する(ブロック108)ように構成されている。例えば、高速解剖学的マッピング(FAM)を使用して、解剖学的マップを生成してもよい。FAMは、Cohenらの米国特許第10,918,310号に記載されている。任意の好適な解剖学的マップ生成方法が使用されもよい。
【0059】
処理回路41は、心臓26の解剖学的特徴(例えば、心臓弁などの心臓の一部)及び見つかった解剖学的特徴の位置を、経時的にカテーテル40の様々な位置で電極50のそれぞれの位置80及び電極50のそれぞれによって捕捉された電気活動に応答して見つける(ブロック110)ように構成されている。例えば、(様々な時点で)電極55の少なくともいくつかによって捕捉された電気活動は、解剖学的特徴の電気活動、例えば、心室活動を示してもよく、この電気活動(例えば、心室電気活動)に関連するそれぞれの電極位置は、見つかった解剖学的特徴(例えば、弁)の位置を示す。いくつかの実施形態において、処理回路41は、心臓の解剖学的特徴(例えば、心臓弁などの心臓の一部)及び解剖学的特徴の位置を、経時的にカテーテル40の様々な位置で電極55のそれぞれの位置及び電極55のそれぞれによって捕捉された電気活動の計算された局所興奮時間(例えば、心房対心室電気活動を示す)に応答して見つけるように構成されている。いくつかの実施形態では、処理回路41は、心室の電気活動を示すそれぞれの局所興奮時間に応答して、心臓(例えば、心臓弁)の解剖学的特徴を見つけるように構成されている。
【0060】
処理回路41は、解剖学的特徴の見つかった位置に応答して、解剖学的マップ36を自動的にセグメント化する(ブロック112)ように構成されている。処理回路41は、(例えば、異なる色の表面、及び/又は異なるレベルの透明度、及び/又は点線を使用して解剖学的特徴を示すことによって)解剖学的特徴を解剖学的マップ36上で別個の特徴として示すこと、又は解剖学的特徴を解剖学的マップ36から除外(例えば、クロッピング)することによって、解剖学的マップ36を自動的にセグメント化するように構成されている。
【0061】
いくつかの実施形態において、処理回路41は、解剖学的特徴の見つかった位置に応答して、解剖学的特徴の位置において解剖学的マップ36に穴(例えば、
図8の開口部88)を残して、解剖学的マップ36を自動的にセグメント化するように構成されている。いくつかの実施形態において、見つかった解剖学的特徴が心臓弁であり、解剖学的マップ36が心房のマップを含む場合、処理回路41は、心臓弁の代わりに心房の解剖学的マップに穴を残して、解剖学的マップ36を自動的にセグメント化するように構成されている。処理回路41は、解剖学的マップをディスプレイ27にレンダリングする(ブロック114)ように構成されている。
【0062】
本明細書で使用される場合、任意の数値又は数値の範囲に対する「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書において説明されるその意図された目的に沿って機能することを可能にする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指し得、例えば「約90%」は、72%~108%の値の範囲を指し得る。
【0063】
本発明の様々な特徴が、明確性のために別個の実施形態の文脈において記載されているが、これらも単一の実施形態に組み合わされて提供されてもよい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において記載されている本発明の様々な特徴が、別々に又は任意の好適な部分的組み合わせで提供されてもよい。
【0064】
上述の実施形態は、例として引用されており、本発明は、上記の明細書に具体的に図示及び記載されたものに限定されない。むしろ本発明の範囲は、上記の明細書で説明される様々な特徴の組み合わせ及びその部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。
【0065】
〔実施の態様〕
(1) 自動解剖学的特徴識別及びマップセグメンテーションのための医療システムであって、
生体の心臓に挿入されるように構成されたカテーテルであって、前記心臓内のそれぞれの位置で前記心臓の電気活動を捕捉するように構成されている電極を含む、カテーテルと、
ディスプレイと、
処理回路であって、
前記カテーテルから位置信号を受信し、前記位置信号に応答して、前記電極の前記それぞれの位置を計算することと、
前記計算された位置のそれぞれに応答して解剖学的マップを生成することと、
前記心臓の解剖学的特徴及び前記解剖学的特徴の位置を、前記電極の前記それぞれの位置及び前記電極のそれぞれによって捕捉された前記電気活動に応答して見つけることと、
前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して前記解剖学的マップを自動的にセグメント化することと、
前記解剖学的マップを前記ディスプレイにレンダリングすることと、を行うように構成された、処理回路と、を備える、医療システム。
(2) 前記処理回路が、前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して、前記解剖学的特徴の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記解剖学的特徴が心臓弁であり、前記解剖学的マップが、心房のマップを含み、前記処理回路が、前記心臓弁の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記処理回路が、
前記電極によって捕捉された前記電気活動のそれぞれの局所興奮時間を計算することと、
前記心臓の前記解剖学的特徴及び前記解剖学的特徴の前記位置を、前記電極の前記それぞれの位置及び前記電極のそれぞれによって捕捉された前記電気活動の前記計算された局所興奮時間に応答して見つけることと、を行うように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記処理回路が、前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して、前記解剖学的特徴の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている、実施態様4に記載のシステム。
【0066】
(6) 前記それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心房電気活動を示し、前記それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心室電気活動を示し、
前記処理回路が、前記それぞれの局所興奮時間が心室電気活動を示すことに応答して、前記心臓の前記解剖学的特徴を見つけるように構成されている、実施態様4に記載のシステム。
(7) 前記解剖学的特徴が、心臓弁であり、前記解剖学的マップが、心房のマップを含み、前記処理回路は、前記心臓弁の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップを自動的にセグメント化するように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記カテーテルが、シャフトと、前記シャフトの遠位端に接続されたそれぞれの近位端を有する複数の可撓性アームと、を含み、
前記電極が、前記可撓性アームの各々に沿ってそれぞれの位置に配設されている、実施態様1に記載のシステム。
(9) 自動解剖学的特徴識別及びマップセグメンテーションのための医療方法であって、
生体の心臓に挿入されたカテーテルから位置信号を受信することであって、前記カテーテルが、前記心臓内のそれぞれの位置で前記心臓の電気活動を捕捉するための電極を含む、受信することと、
前記位置信号に応答して、前記電極の前記それぞれの位置を計算することと、
前記計算された位置のそれぞれに応答して解剖学的マップを生成することと、
前記心臓の解剖学的特徴及び前記解剖学的特徴の位置を、前記電極の前記それぞれの位置及び前記電極のそれぞれによって捕捉された前記電気活動に応答して見つけることと、
前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して前記解剖学的マップを自動的にセグメント化することと、
前記解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を含む、医療方法。
(10) 前記自動的にセグメント化することが、前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して、前記解剖学的特徴の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップをセグメント化することを含む、実施態様9に記載の方法。
【0067】
(11) 前記解剖学的特徴が、心臓弁であり、前記解剖学的マップが、心房のマップを含み、
前記自動的にセグメント化することが、前記心臓弁の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップをセグメント化することを含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記電極によって捕捉された前記電気活動のそれぞれの局所興奮時間を計算することを更に含み、前記見つけることが、前記心臓の前記解剖学的特徴及び前記解剖学的特徴の前記位置を、前記電極の前記それぞれの位置及び前記電極のそれぞれによって捕捉された前記電気活動の前記計算された局所興奮時間に応答して見つけることを含む、実施態様9に記載の方法。
(13) 前記自動的にセグメント化することが、前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して、前記解剖学的特徴の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップをセグメント化することを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心房電気活動を示し、前記それぞれの局所興奮時間のうちのいくつかが、心室電気活動を示し、
前記見つけることが、前記それぞれの局所興奮時間が心室電気活動を示すことに応答して、前記心臓の前記解剖学的特徴を見つけることを含む、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記解剖学的特徴が、心臓弁であり、前記解剖学的マップが、心房のマップを含み、
前記自動的にセグメント化することが、前記心臓弁の代わりに前記解剖学的マップに穴を残して、前記解剖学的マップをセグメント化することを含む、実施態様14に記載の方法。
【0068】
(16) 前記カテーテルが、シャフトと、前記シャフトの遠位端に接続されたそれぞれの近位端を有する複数の可撓性アームと、を含み、
前記電極が、前記可撓性アームの各々に沿ってそれぞれの位置に配設されている、実施態様1に記載の方法。
(17) プログラム命令が格納される非一時的なコンピュータ可読媒体を含むソフトウェア製品であって、前記命令が、中央処理装置(CPU)によって読み取られると、前記CPUに、
生体の心臓に挿入されたカテーテルから位置信号を受信することであって、前記カテーテルが、前記心臓内のそれぞれの位置で前記心臓の電気活動を捕捉するための電極を含む、受信することと、
前記位置信号に応答して、前記電極の前記それぞれの位置を計算することと、
前記計算された位置のそれぞれに応答して解剖学的マップを生成することと、
前記心臓の解剖学的特徴及び前記解剖学的特徴の位置を、前記電極の前記それぞれの位置及び前記電極のそれぞれによって捕捉された前記電気活動に応答して見つけることと、
前記解剖学的特徴の前記見つかった位置に応答して前記解剖学的マップを自動的にセグメント化することと、
前記解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を行わせる、ソフトウェア製品。
【外国語明細書】