(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187486
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】バイポーラ電極対の選択
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20221212BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20221212BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/287 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022091427
(22)【出願日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】17/341,315
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リオール・グリーンバウム
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ヤーニットスキー
(72)【発明者】
【氏名】エラド・ナカル
(72)【発明者】
【氏名】ダン・シュテインベルグ
(72)【発明者】
【氏名】ガイ・ウェクセルマン
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG05
4C127HH13
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】医療システムを提供すること。
【解決手段】一実施形態では、医療システムは、生体対象の心臓の室内に挿入されるように構成されたカテーテルであって、室の組織内で伝播する電気活性化信号から電気活性を捕捉するように構成された複数の電極を含むカテーテルと、ディスプレイと、処理回路であって、電気活性化信号の伝播方向との複数の電極のそれぞれの電極対の整列に応じて、それぞれの電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することと、電気解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を行うように構成された処理回路と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極対選択のための医療システムであって、
カテーテルであって、生体対象の心臓の室内に挿入されるように構成されており、かつ前記室の組織内で伝播する電気活性化信号から電気活性を捕捉するように構成された複数の電極を含む、カテーテルと、
ディスプレイと、
処理回路であって、
前記電気活性化信号の伝播方向との前記複数の電極のそれぞれの電極対の整列に応じて、前記それぞれの電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することと、
前記電気解剖学的マップを前記ディスプレイにレンダリングすることと、を行うように構成された、処理回路と、を備える、システム。
【請求項2】
前記処理回路が、
前記複数の電極のそれぞれの電極からユニポーラ信号を受信することと、
前記それぞれの電極対について、前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間のそれぞれの時間差を計算することであって、前記それぞれの時間差が、前記電気活性化信号の前記伝播方向との前記それぞれの電極対のそれぞれの整列を示す、計算することと、
前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間の前記それぞれの時間差に応じて、前記それぞれの電極対から、前記電気解剖学的マップ内に捕捉される前記バイポーラ信号を自動的に選択することと、を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記それぞれの電極対の第1の電極対が、前記第1の電極対の前記ユニポーラ信号間の第1の時間差を有し、
前記それぞれの電極対の第2の電極対が、前記第2の電極対の前記ユニポーラ信号間の第2の時間差を有し、
前記処理回路が、前記第1の時間差が前記第2の時間差よりも大きいことに応じて、ある期間にわたって、前記第2の電極対からではなく、前記第1の電極対から、前記電気解剖学的マップ内に捕捉される前記バイポーラ信号を自動的に選択するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、
前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されており、
前記第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、
前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されており、
前記第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記処理回路が、
前記ユニポーラ信号のそれぞれの局所活性化時間を計算することと、
前記それぞれの電極対について、前記それぞれの局所活性化時間に応じて、前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間の前記それぞれの時間差を計算することと、を行うように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理回路が、前記ユニポーラ信号のそれぞれの最大負勾配に応じて、前記ユニポーラ信号の前記それぞれの局所活性化時間を計算するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記選択されたバイポーラ信号のうちの1つを提供する前記それぞれの電極対の第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されており、
前記選択されたバイポーラ信号のうちの1つを提供する前記それぞれの電極対の第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記カテーテルが、前記フレキシブルスプラインを備えるグリッド形状の遠位端アセンブリを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
電極対選択のための医療方法であって、
生体対象の心臓の室の組織内で伝播する電気活性化信号の伝播方向との、前記室中へと挿入されたカテーテルの複数の電極のそれぞれの電極対の整列に応じて、前記それぞれの電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することと、
前記電気解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を含む、方法。
【請求項11】
前記複数の電極のそれぞれの電極からユニポーラ信号を受信することと、
前記それぞれの電極対について、前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間のそれぞれの時間差を計算することであって、前記それぞれの時間差が、前記電気活性化信号の前記伝播方向との前記それぞれの電極対のそれぞれの整列を示し、前記自動的に選択することが、前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間の前記それぞれの時間差に応じて、前記それぞれの電極対から前記電気解剖学的マップ内に捕捉される前記バイポーラ信号を自動的に選択することを含む、計算することと、を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記それぞれの電極対の第1の電極対が、前記第1の電極対の前記ユニポーラ信号間の第1の時間差を有し、
前記それぞれの電極対の第2の電極対が、前記第2の電極対の前記ユニポーラ信号間の第2の時間差を有し、
前記自動的に選択することが、前記第1の時間差が前記第2の時間差よりも大きいことに応じて、ある期間にわたって、前記第2の電極対からではなく、前記第1の電極対から、前記電気解剖学的マップ内に捕捉される前記バイポーラ信号を自動的に選択することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、
前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設され、
前記第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、
前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されており、
前記第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されている、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ユニポーラ信号のそれぞれの局所活性化時間を計算することを更に含み、前記それぞれの電極対について、前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間の前記それぞれの時間差を計算することが、前記それぞれの局所活性化時間に応じて実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ユニポーラ信号の前記それぞれの局所活性化時間を計算することが、前記ユニポーラ信号のそれぞれの最大負勾配に応じて実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記選択されたバイポーラ信号のうちの1つを提供する前記それぞれの電極対の第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されており、
前記選択されたバイポーラ信号のうちの1つを提供する前記それぞれの電極対の第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記カテーテルが、前記フレキシブルスプラインを備えるグリッド形状の遠位端アセンブリを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
プログラム命令が格納されている非一時的なコンピュータ可読媒体を備える、ソフトウェア製品であって、前記命令が、中央処理装置(CPU)によって読み取られると、前記CPUに、
生体対象の心臓の室の組織内で伝播する電気活性化信号の伝播方向との、前記室中へと挿入されたカテーテルの複数の電極のそれぞれの電極対の整列に応じて、前記それぞれの電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することと、
前記電気解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を行わせる、ソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療システムに関するものであり、具体的には、限定するものではないが、電気解剖学的マッピングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
広範囲にわたる医療処置は、カテーテルなどのプローブを患者の身体内に配置することを伴う。このようなプローブを追跡するために、位置感知システムが開発されてきた。磁気的位置感知は、当該技術分野において既知の方法のうちの1つである。磁気的位置感知において、磁界発生器は通常、患者の外部の既知の位置に配置される。プローブの遠位端内の磁界センサは、これらの磁界に応じて電気信号を生成し、これらの信号は、プローブの遠位端の座標位置を判定するために処理される。これらの方法及びシステムは、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第1996/005768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455号、同第2003/0120150号及び同第2004/0068178号に記述されており、これらの開示は参照により全体が本明細書に組み込まれている。位置はまた、インピーダンス又は電流ベースのシステムを使用して追跡され得る。
【0003】
これらのタイプのプローブ又はカテーテルが極めて有用であると証明されている医療処置の1つは、心不整脈の治療におけるものである。心不整脈及び特に心房細動は、特に老年人口では、一般的かつ危険な病状として持続している。
【0004】
心不整脈の診断及び治療には、心臓組織、特に心内膜及び心臓容積の電気的特性をマッピングすること、並びにエネルギーの印加によって心組織を選択的にアブレーションすることが含まれる。そのようなアブレーションにより、不要な電気信号が心臓のある部分から別の部分へと伝播するのを停止させるか又は修正することができる。アブレーションプロセスは、非導電性の損傷部を形成することによって不要な電気経路を破壊するものである。様々なエネルギー送達の様式が、損傷部を形成する目的でこれまでに開示されており、心組織壁に沿って伝導ブロックを作るためのマイクロ波、レーザ、及びより一般的には無線周波エネルギーの使用が挙げられる。マッピングの後にアブレーションを行う2工程の処置において、通常、1つ又は2つ以上の電気センサを含むカテーテルを心臓の内部に前進させ、複数のポイントでデータを取得することによって、心臓内の各ポイントにおける電気活動が感知及び測定される。次いで、これらのデータを利用して、このアブレーションを実施される心内膜の標的領域を選択する。
【0005】
電極カテーテルは、長年にわたり医療現場で一般的に使用されている。電極カテーテルは、心臓内の電気活動を刺激及びマッピングし、異常な電気活動が見られる部位をアブレーションするために使用される。使用時には、電極カテーテルは、主要な静脈又は動脈、例えば、大腿動脈に挿入された後、対象の心臓の室内へと導かれる。典型的なアブレーション処置は、その遠位端に1つ又は2つ以上の電極を有するカテーテルを心室内に挿入することを伴う。参照電極は、一般的には患者の皮膚にテープで貼り付けられるか、あるいは心臓内又は心臓付近に配置されている第2のカテーテルによって提供され得る。RF(radio frequency、高周波)電流をアブレーションカテーテルの先端電極に印加し、参照電極に向かって先端電極の周囲の媒質、すなわち、血液及び組織に電流が流れる。電流の分布は、組織より高い導電性を有する血液と比較した場合、組織と接触する電極表面の量に依存する。組織の加熱は、組織の電気抵抗に起因して生じる。組織が十分に加熱されると、心組織において細胞破壊が引き起こされ、結果として、非電導性である心組織内に損傷部が形成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態によれば、生体対象の心臓の室内に挿入されるように構成されたカテーテルであって、室の組織内で伝播する電気活性化信号から電気活性を捕捉するように構成された複数の電極を含むカテーテルと、ディスプレイと、処理回路であって、電気活性化信号の伝播方向との複数の電極のそれぞれの電極対の整列に応じて、それぞれの電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することと、電気解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を行うように構成された処理回路と、を含む、医療システムが提供される。
【0007】
更に、本開示の一実施形態によれば、処理回路は、複数の電極のそれぞれの電極からユニポーラ信号を受信することと、それぞれの電極対について、それぞれの電極対のユニポーラ信号間のそれぞれの時間差を計算することであって、それぞれの時間差は、電気活性化信号の伝播方向とのそれぞれの電極対のそれぞれの整列を示す、計算することと、それぞれの電極対のユニポーラ信号間のそれぞれの時間差に応じて、それぞれの電極対から電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することを含む、計算することと、を行うように構成されている。
【0008】
更に、本開示の実施形態によれば、それぞれの電極対の第1の電極対は、第1の電極対のユニポーラ信号間の第1の時間差を有し、それぞれの電極対の第2の電極対は、第2の電極対のユニポーラ信号間の第2の時間差を有し、処理回路は、第1の時間差が第2の時間差よりも大きいことに応じて、ある期間にわたって、第2の電極対からではなく、第1の電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択するように構成されている。
【0009】
加えて、本開示の実施形態によれば、カテーテルは複数のフレキシブルスプラインを含み、複数の電極のそれぞれのグループはフレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、第1の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されており、第2の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている。
【0010】
更に、本開示の実施形態によれば、カテーテルは複数のフレキシブルスプラインを含み、複数の電極のそれぞれのグループはフレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、第1の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されており、第2の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されている。
【0011】
更に、本開示の実施形態によれば、処理回路は、ユニポーラ信号のそれぞれの局所活性化時間を計算し、それぞれの電極対について、それぞれの局所活性化時間に応じてそれぞれの電極対のユニポーラ信号間のそれぞれの時間差を計算するように構成されている。
【0012】
更にまた、本開示の実施形態によれば、処理回路は、ユニポーラ信号のそれぞれの最大負勾配に応じてユニポーラ信号のそれぞれの局所活性化時間を計算するように構成されている。
【0013】
加えて、本開示の実施形態によれば、カテーテルは複数のフレキシブルスプラインを含み、複数の電極のそれぞれのグループはフレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、選択されたバイポーラ信号のうちの1つを提供するそれぞれの電極対の第1の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されており、選択されたバイポーラ信号のうちの1つの提供するそれぞれの電極対の第2の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている。
【0014】
更に、本開示の実施形態によれば、カテーテルは、フレキシブルスプラインを含むグリッド形状の遠位端アセンブリを含む。
【0015】
また、本開示の別の実施形態によれば、生体対象の心臓の室の組織内で伝播する電気活性化信号の伝播方向との、室中へと挿入されたカテーテルの複数の電極のそれぞれの電極対の整列に応じて、それぞれの電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することと、電気解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を含む医療方法が提供される。
【0016】
更に、本開示の一実施形態によれば、本方法は、複数の電極のそれぞれの電極からユニポーラ信号を受信することと、それぞれの電極対について、それぞれの電極対のユニポーラ信号間のそれぞれの時間差を計算することであって、それぞれの時間差は、電気活性化信号の伝播方向とのそれぞれの電極対のそれぞれの整列を示し、自動的に選択することは、それぞれの電極対のユニポーラ信号間のそれぞれの時間差に応じて、それぞれの電極対から電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することを含む、計算することと、を含む。
【0017】
更に、本開示の実施形態によれば、それぞれの電極対の第1の電極対は、第1の電極対のユニポーラ信号間の第1の時間差を有し、それぞれの電極対の第2の電極対は、第2の電極対のユニポーラ信号間の第2の時間差を有し、自動的に選択することは、第1の時間差が第2の時間差よりも大きいことに応じて、ある期間にわたって、第2の電極対からではなく、第1の電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することを含む。
【0018】
加えて、本開示の実施形態によれば、カテーテルは複数のフレキシブルスプラインを含み、複数の電極のそれぞれのグループはフレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、第1の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されており、第2の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている。
【0019】
更に、本開示の実施形態によれば、カテーテルは複数のフレキシブルスプラインを含み、複数の電極のそれぞれのグループはフレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、第1の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されており、第2の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されている。
【0020】
更に、本開示の実施形態によれば、本方法は、ユニポーラ信号のそれぞれの局所活性化時間を計算することを含み、それぞれの電極対について、それぞれの電極対のユニポーラ信号間のそれぞれの時間差を計算することは、それぞれの局所活性化時間に応じて実施される。
【0021】
更にまた、本開示の実施形態によれば、ユニポーラ信号のそれぞれの局所活性化時間を計算することは、ユニポーラ信号のそれぞれの最大負勾配に応じて実施される。
【0022】
加えて、本開示の実施形態によれば、カテーテルは複数のフレキシブルスプラインを含み、複数の電極のそれぞれのグループはフレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、選択されたバイポーラ信号のうちの1つを提供するそれぞれの電極対の第1の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されており、選択されたバイポーラ信号のうちの1つの提供するそれぞれの電極対の第2の電極対の電極は、フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている。
【0023】
更に、本開示の実施形態によれば、カテーテルは、フレキシブルスプラインを含むグリッド形状の遠位端アセンブリを含む。
【0024】
また、本開示の更に別の実施形態によれば、プログラム命令が格納されている非一時的なコンピュータ可読媒体を含むソフトウェア製品が提供され、その命令は、中央処理装置(central processing unit、CPU)によって読み取られると、CPUに、生体対象の心臓の室の組織内で伝播する電気活性化信号の伝播方向との、室中へと挿入されたカテーテルの複数の電極のそれぞれの電極対の整列に応じて、それぞれの電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することと、電気解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から理解されよう。
【
図1】本発明の例示的な実施形態に従って構築され動作する医療処置システムの概略図である。
【
図2A】
図1のシステムで使用するためのカテーテル及びカテーテルに対して様々な方向に伝播する電気活性化信号の概略図である。
【
図2B】
図1のシステムで使用するためのカテーテル及びカテーテルに対して様々な方向に伝播する電気活性化信号の概略図である。
【
図2C】
図1のシステムで使用するためのカテーテル及びカテーテルに対して様々な方向に伝播する電気活性化信号の概略図である。
【
図3A】異なる電極対のユニポーラ信号の局所活性化時間の時間差を示す、異なる電極対のユニポーラ信号の概略図である。
【
図3B】異なる電極対のユニポーラ信号の局所活性化時間の時間差を示す、異なる電極対のユニポーラ信号の概略図である。
【
図4】
図1のシステムの操作方法における工程を含むフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
概論
前述のように、マッピングの後にアブレーションを行う2工程の手技において、心臓内の各点における電気的活動は通常、複数の電極を備えるカテーテルを心臓の中へと前進させ、多数の点でデータを取得することによって、感知及び測定される。次いで、これらのデータが利用されて電気解剖学的マップが生成され、その電気解剖学的マップは次いで、アブレーションが実施される標的領域を選択するために分析される。
【0027】
電気解剖学的マップにバイポーラ信号測定値を取得するとき、電気活性化波の伝播方向と最良に整列される電極対からバイポーラ信号を選択することが重要である。例えば、いくつかの電極対は、他の電極対よりも、波の伝播方向と良好に整列され得る。場合によっては、電極対は、波の伝播方向に垂直であり得る。正しい電極対を選択することは、時間を要することになるとともに、手動で実施される場合にエラーを生じやすくもなる。時間が重要であり、エラーが医療上の問題、又は更には致死につながり得る心臓手技では、電気解剖学的マップにバイポーラ信号測定値を取得するための電極対を正確かつ迅速に選択することが重要である。
【0028】
本発明の実施形態は、電気活性化信号の伝播方向との電極対のそれぞれの電極対のそれぞれの整列に応じてカテーテルの電極対の選択群から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することによって、マッピングなどの医療手技の間の上記の問題を解決するものである。
【0029】
いくつかの実施形態では、電極対と電気活性化信号の伝播方向との整列は、電極対のうちの個々の電極からのユニポーラ信号を使用して分析され得る。電極対のユニポーラ信号の(例えば、ユニポーラ信号の局所活性化時間(local activation time、LAT)間の時間差は、電極対と電気活性化信号の伝播方向との整列を示す。隣接する電極を検査する場合、より大きな時間差は一般に、伝播方向とより整列していることを示す。例えば、複数のスプラインを含むグリッド形状のカテーテルでは、第1の電極対は、カテーテルの同じスプライン(例えば、スプラインA)上に2つの隣接する電極(例えば、A1及びA2)を含み得、第2の電極対は、カテーテルの異なるスプライン上(例えば、それぞれスプラインA及びスプラインB上)に電極(例えば、A1及びB1)を含み得る。電極A1及びA2のユニポーラ信号のLAT間の時間差が計算され、Δt1に等しい。電極A1及びB1のユニポーラ信号のLAT間の時間差が計算され、Δt2に等しい。波の波面が対の第2の電極に到達するのにより長い時間がかかるため、より大きな時間差は、電気活性波の伝播方向とのより良好な整列を示す。したがって、Δt1がΔt2よりも大きい場合、電極対A1-A2が選択され、電極対A1-A2のバイポーラ信号が電気解剖学的マップ内に取得される。Δt2がΔt1よりも大きい場合、電極対A1-B1が選択され、電極対A1-B1のバイポーラ信号が電気解剖学的マップ内に取得される。
【0030】
電極は、伝播方向とより良好に整列される電極対を見つけるために、任意の好適な隣接電極と対にされ得る。例えば、カテーテルが6つのスプライン(スプラインA~Fと呼ばれる)を有し、6個又は7個以上の電極がスプラインごとにある場合、電極C5は、どの電極対が伝播方向とのより良好な整列を提供するかを決定するために、C4、C6、B4、B5、B6、D4、D5、及びD6などのうちのいずれかと対にされ得る。
【0031】
カテーテルからの電極対の数は、カテーテルが心臓の室内の同じ位置にある間にも電気解剖学的マップにバイポーラ信号が提供されるように選択され得ることに留意されたい。例えば、電極対A1-A2及び電極対A2-A3などは、電気解剖学的マップのためのバイポーラ信号を提供するように選択され得る。典型的には、カテーテルがX個の電極を含む場合、最大で約X個の電極対が、バイポーラ信号を提供するために選択され得る。マップにバイポーラ信号を提供するために選択されるX個の電極対の正確な構成は、電極対の種々の利用可能な組み合わせのユニポーラ信号のLAT間の時間差に依存する。例えば、グリッド形状のカテーテルにおいて、各電極は場合によっては、グリッド形状の遠位端アセンブリ内の電極の位置及びグリッドの構成に応じて、3個~8個の隣接する電極との間で対にされ得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、グリッド構成を有する遠位端アセンブリを含むが、他の実施形態では、遠位端アセンブリは、任意の好適な数のスプラインを備えた任意の好適な形状又は構成、例えば、ラッソーカテーテル、バスケットカテーテル、又は、Biosense Webster Inc.Irvine,CAから市販されているPentaray(商標)カテーテルなど、一方の端部ではシャフトに接続され、他方の端部では縛り付けられない、複数のフレキシブルスプラインを備えたカテーテルであり得る。カテーテル構成に応じて、2個又は3個以上の電極(例えば、異なるスプラインから)が所与の時間に同じ組織に接触し得る。この場合、2個(又はそれ以上)の電極の各々が、伝播方向とより良好に整列される電極対を見つけるために、任意の好適な隣接電極(複数可)と対にされ得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、カテーテルが心臓のチャンバ内で動かされる場合、第1の電極対は、最初に室内の特定の組織位置に対して選択されて、この第1の電極対がその組織位置で電気活性化波の伝播方向と最良に整列されていることに基づいて、電気解剖学的マップにバイポーラ信号が提供され得る。その後、カテーテルが新しい位置に移動されると、カテーテルの同じ部分(例えば、異なる配向を有する)又はカテーテルの別の部分が、ここで同じ組織位置(又はその位置の所与の閾値内)に位置し得る。新しいカテーテル位置における電極対のユニポーラ信号のタイミングが分析され、その新しい位置にある電極対のうちの1つが第1の電極対よりも電気活性化波の伝播方向とより良好に整列しているかどうかが判定され得る。新しい位置にある第2の電極対が、第1の電極対よりも、電気活性化波の伝播方向と良好に整列される場合、第1の電極対からの電気解剖学的マップ内に捕捉されたデータが、第2の電極対からのデータによって置き換えられ得る。
【0034】
システムの説明
ここで、本発明の一実施形態に従って構築され動作する医療処置システム20の概略図である
図1を参照する。また
図2Aを参照するが、これは、
図1のシステム20で使用するためのカテーテル40の概略図である。
【0035】
医療処置システム20は、
図1の挿入
図25に示され、
図2Aにより詳細に示されているカテーテル40の位置を判定するために使用される。カテーテル40は、シャフト22、グリッド形状の遠位端アセンブリ36を含み、遠位端アセンブリは、複数のフレキシブルスプライン54と、複数の電極55(簡略化のためにいくつかのみ標識付けされている)と、を備える。フレキシブルスプライン54は、それらの近位端でシャフト22に接続され、それらの遠位端で互いにループする。複数の電極55のそれぞれのグループは、フレキシブルスプライン54のそれぞれの上に配設されている。遠位端アセンブリ36は、単に例として記載されている。いくつかの実施形態では、遠位端アセンブリは、任意の好適な数のスプラインを備えた任意の好適な形状又は構成、例えば、ラッソーカテーテル、バスケットカテーテル、又は、Biosense Webster Inc.、Irvine,CAから市販されているPentaray(商標)カテーテルなど、一方の端部ではシャフトに接続され、他方の端部では縛り付けられない、複数のフレキシブルスプラインを備えたカテーテルであり得る。
【0036】
カテーテル40は、生体対象(例えば、患者28)の心臓26の室内に挿入されるように構成されている。電極55は、室の組織を伝播する電気活性化信号から電気活性を捕捉するように構成されている。典型的には、カテーテル40は、電極55を使用して生体対象の心臓26内の電気活性をマッピングするために使用され得る。
【0037】
カテーテル40は、フレキシブルスプライン54の近位端に対して既定の空間関係でシャフト22上に配設された位置センサ53を含む。位置センサ53は、磁気センサ50及び/又は少なくとも1つのシャフト電極52を含み得る。磁気センサ50は、回転を含む位置及び配向の位置データを提供するための、例えば二軸コイル配列又は三軸コイル配列などの少なくとも1つのコイルを含み得るが、これらに限定されない。
【0038】
医療処置システム20は、カテーテル40のシャフト22の位置及び配向を、磁気センサ50及び/又はシャフト22に取り付けられた磁気センサ50の両側のシャフト電極52(近位電極52a及び遠位電極52b)によって供給される信号に基づいて判定し得る。近位電極52a、遠位電極52b、磁気センサ50及び少なくともいくつかの電極55は、シャフト22を通って延びるワイヤにより、カテーテルコネクタ35を介してコンソール24内の様々なドライバ回路に接続されている。いくつかの実施形態では、フレキシブルスプライン54の各々の電極55のうちの少なくともいくつか、シャフト電極52、及び磁気センサ50は、カテーテルコネクタ35を介してコンソール24内のドライバ回路に接続される。いくつかの実施形態では、遠位電極52b及び/又は近位電極52aは、省略され得る。
【0039】
図2Aに示されている図は、純粋に概念を明確化する目的のために選択されたものである。シャフト電極52及び電極55の他の構成も可能である。追加の機能が、位置センサ53に含まれ得る。明確にするために、灌漑ポートなど、本発明の開示された実施形態に関連しない要素は省略されている。
【0040】
医師30は、カテーテル40の近位端の近傍のマニピュレータ32を使用してシャフト22を操作すること及び/又はシース23からの偏向によって、カテーテル40を患者28の身体部分(例えば、心臓26)内の標的位置に誘導する。カテーテル40は、フレキシブルスプライン54が互いに寄せ集められた状態で、シース23を通して挿入され、またカテーテル40がシース23から後退された後にのみ、フレキシブルスプライン54は展開し、それらの意図された機能的形状を回復することができる。フレキシブルスプライン54をまとめて収容することにより、シース23は、標的位置へ向かう間の血管外傷を最小限に抑える役割も果たす。
【0041】
コンソール24は、処理回路41、典型的には汎用コンピュータと、ケーブル39を通って患者28の胸部及び背部又は任意の他の好適な皮膚表面に延びるワイヤによって取り付けられた身体表面電極49において信号を生成する、及び/又は身体表面電極49から信号を受信する好適なフロントエンド及びインタフェース回路44と、を備える。
【0042】
コンソール24は、磁気感知サブシステムを更に備える。患者28は、少なくとも1つの磁界放射器42を含むパッドによって生成された磁界内に置かれ、この磁界放射器42は、コンソール24に配設されたユニット43によって駆動される。磁界放射器42は、身体部(例えば心臓26)が配置されている領域に交番磁界を送信するように構成されている。磁界放射器42によって生成された磁界は、磁気センサ50において方向信号を生成する。磁気センサ50は、送信された交番磁界の少なくとも一部を検出し、対応する電気入力として方向信号を処理回路41に供給するように構成されている。
【0043】
いくつかの実施形態では、処理回路41は、シャフト電極52、磁気センサ50及び電極55から受信した位置信号を使用して、心室内などの器官内のカテーテル40の位置を推定する。いくつかの実施形態では、処理回路41は、電極52及び電極55から受信した位置信号を以前に取得した磁気位置較正位置信号と相関させて、心室内のカテーテル40の位置を推定する。シャフト電極52及び電極55の位置座標は、他の入力の中でも特に、電極52、電極55と身体表面電極49との間で測定されるインピーダンス又は電流分布の割合に基づいて、処理回路41によって判定され得る。コンソール24は、心臓26内のカテーテル40の遠位端を示し、また任意選択により電気解剖学的マップ88を示すディスプレイ27を駆動する。
【0044】
電流分布測定値及び/又は外部磁場を使用する位置検知の方法は、様々な医療用途で、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,California)により製造されるCarto(登録商標)システムに実装されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、同第6,332,089号、同第7,756,576号、同第7,869,865号、及び同第7,848,787号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳述されている。
【0045】
Carto(登録商標)3システムは、有効電流位置(Active Current Location、ACL)のインピーダンスベースの位置追跡方法を適用する。いくつかの実施形態では、処理回路41は、ACL法を使用して、電気インピーダンスの表示と磁界放射器42の磁気座標フレーム内の位置との間のマッピング(例えば、現在位置マトリックス(current-position matrix、CPM))を作成するように構成されている。処理回路41は、CPM内でルックアップを実施することにより、シャフト電極52及び電極55の位置を推定する。
【0046】
処理回路41は、本明細書に記載される機能を実行するために、典型的にはソフトウェアでプログラムされる。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる、あるいは、代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。
【0047】
図1は、簡潔性及び明瞭性のために、本開示の技術に関する要素のみを示す。システム20は、典型的には、開示される技術には直接関連しないために
図1及び対応する説明から意図的に省略されている、追加のモジュール及び要素を備える。
【0048】
医療処置システム20はまた、例えば、カテーテル40又はこれとは異なるカテーテルなどの任意の好適なカテーテル及び任意の好適なアブレーション方法を使用して、心臓組織のアブレーションを実施し得る。コンソール24は、心臓26の心筋のアブレーションを行うために、コンソール24に接続されたカテーテルの1つ又は複数の電極と、身体表面電極49のうちの1つ又は2つ以上と、によって印加されるRF電力を生成するように構成されたRF信号発生器34を含み得る。コンソール24は、アブレーションを実施しているカテーテルの遠位端へと灌注チャネルを通じて灌注流体を圧送するポンプ(図示せず)を含み得る。アブレーションを実施するカテーテルは、アブレーション中に心筋の温度を測定し、測定された温度に従ってアブレーション電力及び/又は灌注流体のポンピングの灌注速度を調節するために使用される温度センサ(図示せず)を更に含み得る。
【0049】
ここで
図2A~
図2Cを参照するが、これらは、
図1のシステム20で使用するためのカテーテル40及びカテーテル40に対してそれぞれの方向58に伝播する電気活性化信号の概略図である。
図2A~
図2Cの例では、電極55-A1と対になった種々の電極対が考慮される。電極55-A1は、電極55-A2(同じスプライン、すなわち、スプラインA上にある)、又は電極55-B1(異なるスプライン上、すなわち、スプラインB上にある)、又は電極55-B2(グリッド形状の遠位端アセンブリ36上の電極55-A1に対して対角線上にスプラインB上にある)と対にされ得る。
【0050】
図2Aから、電極55-A1と電極55-A2とを備える電極対は、電極55-A1と電極55-B1とを含む電極対、又は電極55-A1と電極55-B2とを含む電極対よりも、伝播方向58-1に良好に整列していることが分かる。
【0051】
図2Bから、電極55-A1と電極55-B2とを備える電極対は、電極55-A1と電極55-A2とを含む電極対、又は電極55-A1と電極55-B1とを含む電極対よりも、伝播方向58-2に良好に整列していることが分かる。
【0052】
図2Cから、電極55-A1と電極55-B1とを備える電極対は、電極55-A1と電極55-A2とを含む電極対、又は電極55-A1と電極55-B2とを含む電極対よりも、伝播方向58-3に良好に整列していることが分かる。
【0053】
ここで
図3A~
図3Bを参照するが、これらは、異なる電極対のユニポーラ信号60の局所活性化時間の時間差を示す、異なる電極対のユニポーラ信号60の概略図である。
図3A~
図3Bに示されるユニポーラ信号60は、電気活性化信号が
図2Cに示されるように伝播方向58-3に伝播するという仮定に基づいたものである。
図3Aは、電極対55-A1及び55-A2のユニポーラ信号60を示す。
図3Bは、電極対55-A1及び55-B1のユニポーラ信号60を示す。
【0054】
図3Aでは、実線62は、電極55-A1によって捕捉されたユニポーラ信号60-1のLATを示し、点線64は、電極55-A2によって捕捉されたユニポーラ信号60-2のLATを示す。信号60-2のLATは、信号60-1のLATに先行している。ユニポーラ信号60-1のLATとユニポーラ信号60-2のLATとの間の時間差Δt1は、実線62と点線64との間の差として示されている。
【0055】
図3Bでは、実線62は、電極55-A1によって捕捉されたユニポーラ信号60-1のLATを示し、点線66は、電極55-B1によって捕捉されたユニポーラ信号60-3のLATを示す。信号60-1のLATは、信号60-3のLATに先行している。ユニポーラ信号60-1のLATとユニポーラ信号60-3のLATとの間の時間差Δt2は、実線62と点線66との間の差として示されている。
【0056】
Δt2は、Δt1よりも大きく、したがって電極55-A1と電極55-B1とを含む電極対は、電極55-A1と電極55-A2とを含む電極対よりも、伝播方向58-3(
図3Cに示される)と良好に整列していることが分かる。したがって、電極55-A1と電極55-B1とを含む電極対が、電気解剖学的マップにバイポーラ信号を取得するために選択される。
【0057】
したがって、一般に、処理回路41(
図1)は、時間差Δt1が時間差Δt2よりも大きいことに応じて、ある期間にわたって、第2の電極対(第2の電極対のユニポーラ信号のLAT間の時間差Δt2を有する)からではなく、第1の電極対(第1の電極対のユニポーラ信号のLAT間の時間差Δt1を有する)から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択するように構成されている。
【0058】
したがって、場合によっては、バイポーラ信号を提供する選択された電極対は、異なるフレキシブルスプライン54上に配設された電極55を含み得るが、選択されていない電極対が同じスプライン54上にあり得る。他の場合、バイポーラ信号を提供する選択された電極対は、同じフレキシブルスプライン54上に配設された電極55を含み得るが、選択されていない電極対が異なるスプライン54上にあり得る。
【0059】
ここで
図4を参照するが、これは、
図1のシステム20の操作方法における工程を含むフローチャート70である。
【0060】
カテーテル40は、心臓26の室(
図1)に挿入される(ブロック72)。カテーテル40の電極55は、室の組織の電気活動を捕捉する(ブロック74)。
【0061】
処理回路41は、それぞれの電極対が電気活性化信号の伝播方向58と整列したことに応じて、複数の電極55のそれぞれの電極対の選択群から、電気解剖学的マップ88(
図1)内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択する(ブロック76)ように構成されている。ここでブロック76の工程のサブ工程について、ブロック78~84に関連して説明する。
【0062】
処理回路41は、複数の電極55のうちの対応する電極からユニポーラ信号60を受信する(ブロック78)ように構成されている。いくつかの実施形態では、処理回路41は、ユニポーラ信号60のそれぞれの局所活性化時間を計算する(ブロック80)ように構成されている。いくつかの実施形態では、処理回路41は、ユニポーラ信号60のそれぞれの最大負勾配に応じてユニポーラ信号60のそれぞれの局所活性化時間を計算するように構成されている。LATを計算する任意の好適な方法が用いられてよい。
【0063】
処理回路41は、それぞれの電極対について、それぞれの電極対のユニポーラ信号60間のそれぞれの時間差を計算する(ブロック802)(すなわち、各電極対のユニポーラ信号60間の時間差を計算する)ように構成されている。それぞれの時間差は、それぞれの電極対と電気活性化信号の伝播方向58とのそれぞれの整列を示す。
【0064】
いくつかの実施形態では、処理回路41は、それぞれの電極対について、それぞれの局所活性化時間に応じて、それぞれの電極対のユニポーラ信号60間のそれぞれの時間差を計算するように構成されている。言い換えれば、各電極対のユニポーラ信号60間の時間差は、その電極対のユニポーラ信号60のLAT間の差に基づいて計算される。
【0065】
処理回路41は、それぞれの電極対のユニポーラ信号60(のLAT)間のそれぞれの時間差に応じて、それぞれの電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択する(ブロック84)ように構成されている。典型的には、それぞれの電極対のユニポーラ信号60間の時間差の選択が与えられると、最大の時間差を有する電極対がバイポーラ信号を提供するために選択される。電極対の数は、カテーテル40が心臓26の室内の同じ位置にある間にも電気解剖学的マップ88にバイポーラ信号が提供されるように選択され得ることに留意されたい。例えば、電極対A1-A2及び電極対A2-A3などは、電気解剖学的マップ88のためのバイポーラ信号を提供するように選択され得る。典型的には、カテーテル40がX個の電極を含む場合、最大で約X個の電極対が、バイポーラ信号を提供するために選択され得る。マップにバイポーラ信号を提供するために選択されるX個の電極対の正確な構成は、電極対の種々の利用可能な組み合わせのユニポーラ信号のLAT間の時間差に依存する。例えば、カテーテル40において、各電極55は場合によっては、グリッド形状の遠位端アセンブリ36内の電極の位置及びグリッドの電極の構成に応じて、3個~8個の隣接する電極55との間で対にされ得る。
【0066】
図1に示されるように、処理回路41は、電気解剖学的マップ88をディスプレイ27にレンダリングする(ブロック86)ように構成されている。
【0067】
本明細書で使用される場合、任意の数値又は数値の範囲に対する「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書において説明されるその意図された目的に沿って機能することを可能にする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指し得、例えば「約90%」は、72%~108%の値の範囲を指し得る。
【0068】
本発明の様々な特徴が、明確性のために別個の実施形態の文脈において記載されているが、これらも単一の実施形態に組み合わされて提供され得る。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において記載されている本発明の様々な特徴が、別個に又は任意の好適な部分的組み合わせで提供され得る。
【0069】
上述の実施形態は、例として引用されており、本発明は、上記の明細書に具体的に図示及び記載されたものに限定されない。むしろ本発明の範囲は、上記の明細書で説明される様々な特徴の組み合わせ及びその部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。
【0070】
〔実施の態様〕
(1) 電極対選択のための医療システムであって、
カテーテルであって、生体対象の心臓の室内に挿入されるように構成されており、かつ前記室の組織内で伝播する電気活性化信号から電気活性を捕捉するように構成された複数の電極を含む、カテーテルと、
ディスプレイと、
処理回路であって、
前記電気活性化信号の伝播方向との前記複数の電極のそれぞれの電極対の整列に応じて、前記それぞれの電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することと、
前記電気解剖学的マップを前記ディスプレイにレンダリングすることと、を行うように構成された、処理回路と、を備える、システム。
(2) 前記処理回路が、
前記複数の電極のそれぞれの電極からユニポーラ信号を受信することと、
前記それぞれの電極対について、前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間のそれぞれの時間差を計算することであって、前記それぞれの時間差が、前記電気活性化信号の前記伝播方向との前記それぞれの電極対のそれぞれの整列を示す、計算することと、
前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間の前記それぞれの時間差に応じて、前記それぞれの電極対から、前記電気解剖学的マップ内に捕捉される前記バイポーラ信号を自動的に選択することと、を行うように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記それぞれの電極対の第1の電極対が、前記第1の電極対の前記ユニポーラ信号間の第1の時間差を有し、
前記それぞれの電極対の第2の電極対が、前記第2の電極対の前記ユニポーラ信号間の第2の時間差を有し、
前記処理回路が、前記第1の時間差が前記第2の時間差よりも大きいことに応じて、ある期間にわたって、前記第2の電極対からではなく、前記第1の電極対から、前記電気解剖学的マップ内に捕捉される前記バイポーラ信号を自動的に選択するように構成されている、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、
前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されており、
前記第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、
前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されており、
前記第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されている、実施態様3に記載のシステム。
【0071】
(6) 前記処理回路が、
前記ユニポーラ信号のそれぞれの局所活性化時間を計算することと、
前記それぞれの電極対について、前記それぞれの局所活性化時間に応じて、前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間の前記それぞれの時間差を計算することと、を行うように構成されている、実施態様2に記載のシステム。
(7) 前記処理回路が、前記ユニポーラ信号のそれぞれの最大負勾配に応じて、前記ユニポーラ信号の前記それぞれの局所活性化時間を計算するように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記選択されたバイポーラ信号のうちの1つを提供する前記それぞれの電極対の第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されており、
前記選択されたバイポーラ信号のうちの1つを提供する前記それぞれの電極対の第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記カテーテルが、前記フレキシブルスプラインを備えるグリッド形状の遠位端アセンブリを含む、実施態様8に記載のシステム。
(10) 電極対選択のための医療方法であって、
生体対象の心臓の室の組織内で伝播する電気活性化信号の伝播方向との、前記室中へと挿入されたカテーテルの複数の電極のそれぞれの電極対の整列に応じて、前記それぞれの電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することと、
前記電気解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を含む、方法。
【0072】
(11) 前記複数の電極のそれぞれの電極からユニポーラ信号を受信することと、
前記それぞれの電極対について、前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間のそれぞれの時間差を計算することであって、前記それぞれの時間差が、前記電気活性化信号の前記伝播方向との前記それぞれの電極対のそれぞれの整列を示し、前記自動的に選択することが、前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間の前記それぞれの時間差に応じて、前記それぞれの電極対から前記電気解剖学的マップ内に捕捉される前記バイポーラ信号を自動的に選択することを含む、計算することと、を更に含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記それぞれの電極対の第1の電極対が、前記第1の電極対の前記ユニポーラ信号間の第1の時間差を有し、
前記それぞれの電極対の第2の電極対が、前記第2の電極対の前記ユニポーラ信号間の第2の時間差を有し、
前記自動的に選択することが、前記第1の時間差が前記第2の時間差よりも大きいことに応じて、ある期間にわたって、前記第2の電極対からではなく、前記第1の電極対から、前記電気解剖学的マップ内に捕捉される前記バイポーラ信号を自動的に選択することを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、
前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設され、
前記第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、
前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されており、
前記第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されている、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記ユニポーラ信号のそれぞれの局所活性化時間を計算することを更に含み、前記それぞれの電極対について、前記それぞれの電極対の前記ユニポーラ信号間の前記それぞれの時間差を計算することが、前記それぞれの局所活性化時間に応じて実施される、実施態様11に記載の方法。
【0073】
(16) 前記ユニポーラ信号の前記それぞれの局所活性化時間を計算することが、前記ユニポーラ信号のそれぞれの最大負勾配に応じて実施される、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記カテーテルが、複数のフレキシブルスプラインを含み、前記複数の電極のそれぞれのグループが、前記フレキシブルスプラインのそれぞれの上に配設されており、
前記選択されたバイポーラ信号のうちの1つを提供する前記それぞれの電極対の第1の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの異なるものに配設されており、
前記選択されたバイポーラ信号のうちの1つを提供する前記それぞれの電極対の第2の電極対の前記電極が、前記フレキシブルスプラインのうちの同じものに配設されている、実施態様11に記載の方法。
(18) 前記カテーテルが、前記フレキシブルスプラインを備えるグリッド形状の遠位端アセンブリを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) プログラム命令が格納されている非一時的なコンピュータ可読媒体を備える、ソフトウェア製品であって、前記命令が、中央処理装置(CPU)によって読み取られると、前記CPUに、
生体対象の心臓の室の組織内で伝播する電気活性化信号の伝播方向との、前記室中へと挿入されたカテーテルの複数の電極のそれぞれの電極対の整列に応じて、前記それぞれの電極対から、電気解剖学的マップ内に捕捉されるバイポーラ信号を自動的に選択することと、
前記電気解剖学的マップをディスプレイにレンダリングすることと、を行わせる、ソフトウェア製品。
【外国語明細書】