(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187493
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】白髪識別装置、白髪識別方法及び白髪識別プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/90 20170101AFI20221212BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221212BHJP
【FI】
G06T7/90 A
G06T7/00 660Z
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091979
(22)【出願日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2021095132
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】水谷 瑠美子
(72)【発明者】
【氏名】松土 貴一
(72)【発明者】
【氏名】木瀬 和芳
(72)【発明者】
【氏名】藤田 透
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096DA02
5L096FA14
5L096FA15
5L096FA64
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】毛髪が白髪か否かを精度良く識別することができる白髪識別装置、白髪識別方法及び白髪識別プログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】白髪を識別する白髪識別装置であって、識別対象者の毛髪に関する特徴量を取得する特徴量取得部と、前記特徴量取得部により取得された複数の前記特徴量に基づいて毛髪が白髪であるか否かを判定する判定部とを備え、前記特徴量として、毛髪の色の情報及び毛髪の太さの情報の少なくとも2つを設定した。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白髪を識別する白髪識別装置であって、
識別対象者の毛髪に関する複数の特徴量に基づいて毛髪が白髪であるか否かを判定する判定部を備え、
前記特徴量として、毛髪の色の情報及び毛髪の太さの情報の少なくとも2つを設定した
ことを特徴とする白髪識別装置。
【請求項2】
前記特徴量を取得する特徴量取得部を備えた
請求項1に記載の白髪識別装置。
【請求項3】
前記特徴量取得部は、
識別対象者の頭皮から少なくとも一本の毛髪の少なくとも一部が含まれるように撮影された画像である撮影画像の情報を取得する撮影画像取得部と、
前記撮影画像取得部によって取得した撮影画像から予め定めた複数の特徴量の夫々を抽出する特徴量抽出部とを有する
請求項2に記載の白髪識別装置。
【請求項4】
前記判定部は、複数の前記特徴量に基づいて毛髪が白髪であるか否かを判定することについて予め学習を行った学習済モデルに基づいて、毛髪が白髪であるか否かの判定を行う
請求項1に記載の白髪識別装置。
【請求項5】
前記判定部は、複数の前記特徴量に基づいて毛髪が白髪であるか否かを判定することについて予め学習を行った学習済モデルに基づいて、前記撮影画像取得部によって取得した撮影画像に写っている毛髪が白髪であるか否かの判定を行う
請求項3に記載の白髪識別装置。
【請求項6】
前記学習済モデルは、教師ありで予め学習を行ったものを用いる
請求項4に記載の白髪識別装置。
【請求項7】
前記判定部は、判定を行う毛髪を、その太さが20μm以上のものに限定した
請求項1乃至6の何れかに記載の白髪識別装置。
【請求項8】
前記特徴量は、毛髪の輝度の情報を含む
請求項1乃至6の何れかに記載の白髪識別装置。
【請求項9】
前記撮影画像には毛髪が生えている頭皮の少なくとも一部が含まれ、
前記特徴量として、前記撮影画像から抽出可能な頭皮の色の情報も設定した
請求項3乃至6の何れかに記載の白髪識別装置。
【請求項10】
前記特徴量取得部は、識別対象者の年齢の情報を取得する関連情報取得部を有し、
前記特徴量として、前記識別対象者の年齢の情報も設定した
請求項2乃至6の何れかに記載の白髪識別装置。
【請求項11】
白髪を識別する白髪識別方法であって、
識別対象者の毛髪に関する複数の特徴量に基づいて毛髪が白髪であるか否かを判定する判定処理を行う工程を有し、
前記特徴量として、毛髪の色の情報及び毛髪の太さの情報の少なくとも2つを設定した
ことを特徴とする白髪識別方法。
【請求項12】
前記特徴量を取得する特徴量取得工程を有する
請求項11に記載の白髪識別方法。
【請求項13】
前記特徴量取得工程は、
識別対象者の頭皮から少なくとも一本の毛髪の少なくとも一部が含まれるように撮影された画像である撮影画像の情報を取得する撮影画像取得処理を行う工程と、
前記撮影画像から毛髪の色の情報及び毛髪の太さの情報の少なくとも2つを特徴量として抽出する特徴量抽出処理を行う工程とを含む
請求項12に記載の白髪識別方法。
【請求項14】
コンピュータに、
識別対象者の毛髪に関する複数の特徴量に基づいて毛髪が白髪であるか否かを判定する判定処理を実行させ、
前記特徴量として、毛髪の色の情報及び毛髪の太さの情報の少なくとも2つを設定した
ことを特徴とする白髪識別プログラム。
【請求項15】
前記特徴量を取得する特徴量取得処理を実行する
請求項14に記載の白髪識別プログラム。
【請求項16】
前記特徴量取得処理は、
少なくとも一本の毛髪の少なくとも一部が含まれるように撮影された画像である撮影画像の情報を取得する撮影画像取得処理と、
前記撮影画像取得部によって取得した撮影画像から毛髪の色の情報及び毛髪の太さの情報の少なくとも2つを特徴量として抽出する特徴量抽出処理とを含む
請求項15に記載の白髪識別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪が白髪か否かを識別する白髪識別装置、白髪識別方法及び白髪識別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
白髪は見た目の印象に大きな影響を与えることから、白髪を黒髪に戻すことを促したり、白髪を染めたりする商品が数多く提供されているが、見た目の印象による評価は、評価者の能力や環境要因によるバラつきの他、例えば白髪対策に関する商品を使用したことによる思い込み等の影響も否定できないため、毛髪中の白髪を客観的且つ高精度に評価・識別する方法が望まれる。
【0003】
これに対し、頭皮の赤み又は赤みに関する指標に応じて、評価対象者の白髪の多さ等を評価する特許文献1に記載の評価方法が従来公知である。
【0004】
上記文献によれば、頭皮の色味に関する情報から評価された白髪の多さ、毛髪太さのバラつきの大きさ、細毛率等に基づいて、毛髪の状態に適した毛髪処理剤を選定できるものであるが、これは頭皮の色味に基づいて毛髪の状態を評価する評価方法であって、実際の毛髪中の白髪を識別したわけではないため、対象者の白髪の状態を正確に把握できない場合があるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、毛髪が白髪か否かを精度良く識別することができる白髪識別装置、白髪識別方法及び白髪識別プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願発明は第1に、白髪を識別する白髪識別装置であって、識別対象者の毛髪に関する複数の特徴量に基づいて毛髪が白髪であるか否かを判定する判定部を備え、前記特徴量として、毛髪の色の情報及び毛髪の太さの情報の少なくとも2つを設定したことを特徴としている。
【0008】
第2に、前記特徴量を取得する特徴量取得部を備えたことを特徴としている。
【0009】
第3に、前記特徴量取得部は、識別対象者の頭皮から少なくとも一本の毛髪の少なくとも一部が含まれるように撮影された画像である撮影画像の情報を取得する撮影画像取得部と、前記撮影画像取得部によって取得した撮影画像から予め定めた複数の特徴量の夫々を抽出する特徴量抽出部とから構成されたことを特徴としている。
【0010】
第4に、前記判定部は、複数の前記特徴量に基づいて毛髪が白髪であるか否かを判定することについて予め学習を行った学習済モデルに基づいて、毛髪が白髪であるか否かの判定を行うことを特徴としている。
【0011】
第5に、前記判定部は、複数の前記特徴量に基づいて毛髪が白髪であるか否かを判定することについて予め学習を行った学習済モデルに基づいて、前記撮影画像取得部によって取得した撮影画像に写っている毛髪が白髪であるか否かの判定を行うことを特徴としている。
【0012】
第6に、前記学習済モデルは、教師ありで予め学習を行ったものを用いることを特徴としている。
【0013】
第7に、前記判定部は、判定を行う毛髪を、その太さが20μm以上のものに限定したことを特徴としている。
【0014】
第8に、前記特徴量は、毛髪の輝度の情報を含むことを特徴としている。
【0015】
第9に、前記撮影画像には毛髪が生えている頭皮の少なくとも一部が含まれ、前記特徴量として、前記撮影画像から抽出可能な頭皮の色の情報も設定したことを特徴としている。
【0016】
第10に、前記特徴量取得部は、識別対象者の年齢の情報を取得する関連情報取得部を備え、前記特徴量として、前記識別対象者の年齢の情報も設定したことを特徴としている。
【0017】
第11に、白髪を識別する白髪識別方法であって、識別対象者の毛髪に関する複数の特徴量に基づいて毛髪が白髪であるか否かを判定する判定処理を行う工程を有し、前記特徴量として、毛髪の色の情報及び毛髪の太さの情報の少なくとも2つを設定したことを特徴としている。
【0018】
第12に、前記特徴量を取得する特徴量取得工程を有することを特徴としている。
【0019】
第13に、前記特徴量取得工程は、識別対象者の頭皮から少なくとも一本の毛髪の少なくとも一部が含まれるように撮影された画像である撮影画像の情報を取得する撮影画像取得処理を行う工程と、前記撮影画像から毛髪の色の情報及び毛髪の太さの情報の少なくとも2つを特徴量として抽出する特徴量抽出処理を行う工程とを含む
【0020】
第14に、コンピュータに、識別対象者の毛髪に関する複数の特徴量に基づいて毛髪が白髪であるか否かを判定する判定処理を実行させ、前記特徴量として、毛髪の色の情報及び毛髪の太さの情報の少なくとも2つを設定したことを特徴としている。
【0021】
第15に、前記特徴量を取得する特徴量取得処理を実行することを特徴としている。
【0022】
第16に、前記特徴量取得処理は、少なくとも一本の毛髪の少なくとも一部が含まれるように撮影された画像である撮影画像の情報を取得する撮影画像取得処理と、前記撮影画像取得部によって取得した撮影画像から毛髪の色の情報及び毛髪の太さの情報の少なくとも2つを特徴量として抽出する特徴量抽出処理とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
前記白髪識別装置は、評価対象者から取得した評価部位画像から少なくとも一本の毛髪を識別するとともに、適切な特徴量を抽出することにより、評価部位画像に写っている各毛髪を白髪か否かを精度良く識別することができるため、評価対象者の白髪の状態をより高い精度でより客観的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る白髪識別装置の構成の一例を表したブロック図である。
【
図2】本発明に係る白髪識別装置における情報処理の流れの一例を表したフローチャートである。
【
図3】(A)は、評価部位画像の例を示した図であり、(B)は、評価部位画像の毛髪識別を実行した例を示した図である。
【
図4】全毛髪のRGB(Red)データと評価者による判定結果を示したグラフである。
【
図5】全毛髪のRGB(Green)データと評価者による判定結果を示したグラフである。
【
図6】全毛髪のRGB(Blue)データと評価者による判定結果を示したグラフである。
【
図7】全毛髪の太さデータと評価者による判定結果を示したグラフである。
【
図9】機械学習に使用したパラメータと精度評価を示した表図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、白髪識別装置の例について説明する。
図1は、本発明に係る白髪識別装置の構成の一例を表したブロック図である。
図1に示すように、本発明の白髪識別装置10は、撮影画像取得部11と、毛髪識別部12と、特徴量抽出部13と、関連情報取得部14とを含む特徴量取得部(特徴量取得手段)と、判定部15と、出力部16と、記憶部17とを備えている。
【0026】
なお、白髪識別装置10は、専用マシンとして設計した情報処理装置であっても良いが、一般的なコンピュータやサーバ装置によって実現可能なものとする。すなわち、白髪識別装置10は、一般的なコンピュータやサーバ装置が通常備えているであろうCPU(中央演算処理装置)と、GPU(画像処理装置)と、メモリと、ハードディスクドライブ、SSD等のストレージと、通信ネットワークと接続するための通信装置とを備えており、これらがバスを介して接続されているものとする。白髪識別装置10の各部における処理は、これらの各部における処理を実行するためのプログラムをメモリから読み込んで制御部(制御回路)として機能するCPUやGPUにおいて実行することで実現する。言い換えると、当該プログラムの実行により、プロセッサ(処理回路)が、各装置の各処理を実行できるように構成される。
【0027】
また、ここでは単独の装置として説明を行うが、これに限定されるものではなく、通信ネットワークを介して接続可能なサーバ装置に備えさせてもよく、サーバ装置において学習済みモデルに基づく推論を実行する構成としても良い。この他にも、特に言及しない箇所においても通信ネットワークを介してたの機器と接続する構成を採用することが可能である。
【0028】
撮影画像取得部11は、評価対象者の頭皮を撮影した撮影画像(以下、評価部位画像)を取得する機能を有する(
図2参照)。該撮影画像取得部11は、デジタルカメラ等を用いて評価対象者の頭皮を撮影することにより評価部位画像を取得するものであるが、評価対象者の頭皮を撮影可能なものであれば、手段は問わない。
【0029】
具体的な画像取得方法について説明すると、評価対象者の頭皮のうち評価対象となる範囲(図示する例では1平方センチメートル)の毛髪を短くカットし、デジタルカメラで評価対象を接写撮影する。これにより、頭皮及び毛髪が撮影された評価部位画像(撮影画像)を取得する。毛髪カット後の毛髪の長さは、特徴量抽出部において特徴量を抽出可能であれば特に限定されず、好ましくは0.5~20mm程度、より好ましくは1~10mm程度、さらに好ましくは1~5mm程度、特に好ましくは1~3mm程度であり、1mm程度とするのが最も好ましい。
【0030】
毛髪識別部12は、評価部位画像を解析することにより、評価部位画像内に映っている毛髪を一本ずつ識別し、評価部位画像内で識別された各毛髪に識別番号を付与することができるように構成されている(
図3(B)参照)。識別された各毛髪は、評価部位画像内での位置情報も合わせて取得する構成としても良い。
【0031】
特徴量抽出部13は、評価部位画像を解析することにより、評価部位画像内で識別された各毛髪について、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ、頭皮のRGBに関するデータを取得することができるように構成されている。該特徴量抽出部13により取得された各データは、白髪か否かの判定を行うためのパラメータ値(予測パラメータ、特徴量、説明変数)として用いることができる。
【0032】
ここで抽出された特徴量は、毛髪のRGB(Red,Green,Blue)は、毛髪一本ずつについてのRGB値(各0~255)であり、毛髪の輝度は、毛髪のRGBをグレースケールにした場合の値(0~255)であり、毛髪の太さは、毛髪一本の直径であり、頭皮のRGB(Red,Green,Blue)は、評価部位画像を撮影した撮影範囲内の頭皮のRGB値(0~255)である。
【0033】
上述の特徴量取得部(撮影画像取得部11、毛髪識別部12、特徴量抽出部13)は、毛髪に関する前記特徴量を取得できるものであれば上記手段に限られず、別途の方法で取得された特徴量を入力する入力部を設けた構成としても良い。
【0034】
関連情報取得部14は、評価対象者に関する情報を問診又は自ら入力してもらうことによって、評価対象者の年齢情報の他、頭皮のケア状況等のデータを取得することができるように構成されている。該関連情報取得部14により取得された各データは、白髪の判定に用いるパラメータ値として用いることができる。
【0035】
ここで取得した評価対象者の年齢情報は、評価部位画像の撮影時の評価対象者の年齢であって、20代、30代、40代、50代、60代の何れかに分類してパラメータ値として使用した。
【0036】
判定部15は、毛髪識別部12で識別された毛髪情報が入力されるとともに、特徴量抽出部13により抽出された毛髪のRGB,毛髪の輝度、毛髪の太さ、頭皮のRGB及び評価対象者の年代(年齢)のデータを予測パラメータ(特徴量、説明変数)として設定することにより、予め学習を行った学習モデル(教師あり学習のモデル)に基づいて、評価部位画像に写っている各毛髪が白髪か否か(白髪又は黒髪の何れであるか)を分類(判定)する白髪判定処理が実行可能に構成されている。
【0037】
このとき、判定部15は、予測パラメータとして少なくとも毛髪のRGB(及び毛髪の輝度)と、毛髪の太さを設定することにより、評価者によって白髪以外の髪(黒髪)の色や濃淡等に個人差があった場合であっても、高精度に白髪を判定(分類)することができる。また、白髪判定を行う毛髪の太さを、ある程度(20μm、40μm)太い毛髪に限定することにより、白髪判定の精度をより高くすることができる。詳しくは後述する。
【0038】
ちなみに、本発明の白髪識別装置10では、分類型の教師あり学習のモデル(機械学習アルゴリズム)として、Logistic回帰、決定木、ランダムフォレスト、K近傍法、SVM(サポートベクターマシン)、XGBoost(勾配ブースティング)の何れかを用いたが、毛髪を白髪か否か(白髪又は黒髪)に分類可能なモデルであればこれらに限られない。
【0039】
出力部16は、判定部15によって白髪判定した判定結果を表示するモニタや、紙等に印刷可能なプリンタ等であって、白髪判定の結果、具体的には、評価部位画像内の毛髪の総本数と、画像内の白髪の(白髪と判定された)本数と、白髪以外の本数と、白髪の太さ情報と、画像内における白髪の分布等の情報を出力することができるように構成されている。
【0040】
記憶部17は、ハードディスクドライブ、SSD等のストレージであって、白髪識別装置10における各部の処理に必要な情報を記憶し、また、各部の処理で生じた各種の情報を記憶する機能を有する。
【0041】
次に、
図2に基づいて、白髪識別装置における情報処理の流れ(工程)について説明する。
図2は、本発明に係る白髪識別装置における情報処理の流れの一例を表したフローチャートである。まず、
図2に示すように、識別対象者の毛髪の特徴量を取得する特徴量取得処理(撮影画像取得処理S101→毛髪識別処理S102→特徴量抽出処理S103)が実行され、その後、特徴量に基づいて白髪を判定する判定処理(S104)が実行され、その後、判定結果を出力する出力処理(S105)が実行される。
【0042】
以下、具体的に説明すると、白髪識別装置10は、前記撮影画像取得部11により、白髪判定をする対象となる評価対象者の頭皮を撮影することにより評価部位画像を取得する撮影画像取得処理を実行することによって開始される(ステップS101)。
【0043】
次に、白髪識別装置10は、ステップS101により取得した評価部位画像を前記毛髪識別部12によって解析することによって、評価部位画像内に映っている毛髪一本ずつ識別し、評価部位画像内の各毛髪にそれぞれを識別するための識別番号を付与する毛髪識別処理を実行する(ステップS102)。
【0044】
次に、白髪識別装置10は、ステップS101・S102により取得した評価部位画像内の各毛髪を前記特徴量抽出部13によって解析することによって、評価部位画像内の毛髪毎に、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ、頭皮のRGBに関するデータを取得し、前記関連情報取得部14によって入力される評価対象者に関する年齢情報等のデータを取得することによって、白髪判定するための予測パラメータ(特徴量、説明変数)を取得する特徴量抽出処理を実行する(ステップS103)。
【0045】
次に、白髪識別装置10の前記判定部15は、ステップ103によって抽出された毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ、頭皮のRGB、年齢情報等に関するデータの中から必要なデータを予測パラメータとして設定し、予め学習を行った機械学習(教師あり学習)のモデルに基づいて、評価部位画像内の各毛髪が白髪か否か(白髪又は黒髪)を分類する白髪判定を行う判定処理を実行する(ステップS104)。
【0046】
次に、白髪識別装置10の出力部16は、ステップS104によって出力された白髪判定の結果に基づく白髪情報を出力して(ステップS105)、処理を終了する。
【0047】
上述の構成によれば、前記白髪識別装置10は、評価部位画像に写っている毛髪を一本ずつ識別するとともに各毛髪について予測パラメータとなる情報を抽出し、毛髪が白髪か否かを一本ずつ判定することができる。これにより、評価部位画像の範囲内に写っている毛髪の総本数、総本数のうちの白髪の本数、画像内の白髪の分布、白髪となっている毛髪の太さ等、白髪に関する様々な情報を高精度に出力することができるため、評価者の白髪の状態をより客観的に評価することができる。以下、上述の白髪識別装置10を用いた白髪判定方法について、具体的な実施例を説明する。
【実施例0048】
次に、
図3乃至9に基づいて、白髪識別装置による白髪判定の具体的な実施例について説明する。
図3(A)は、評価部位画像の例を示した図であり、
図3(B)は、評価部位画像の毛髪識別を実行した例を示した図であり、
図4乃至6は、全毛髪のRGBデータと評価者による判定結果を示したグラフであり、
図7は、全毛髪の太さデータと評価者による判定結果を示したグラフであり、
図8は、全毛髪の太さと輝度を示した散布図である。
【0049】
上述の白髪識別装置10を用いた白髪判定(白髪識別)処理を、計65例の評価部位に対して行った。
【0050】
<評価部位画像の取得>
評価対象者の頭皮の一部に、1平方センチメートルの範囲で毛髪を1mm程度にカットすることにより評価対象を形成し、この評価対象をデジタルカメラ(撮影画像取得部11)で接写撮影することによって、評価部位画像を取得した。本実施例では、65名の評価対象者の頭皮から65枚の評価部位画像を取得した。
【0051】
<パラメータの取得>
まず、前記毛髪識別部12を用いて評価部位画像を解析することにより、評価部位画像内に写っている毛髪を識別し、識別された毛髪に一本ずつ識別番号を付与する(
図2(B)参照)。本実施例では、65枚の評価部位画像から計14245本の毛髪を識別した。
【0052】
次に、前記特徴量抽出部13を用いて評価部位画像を解析することにより、前記毛髪識別部12で識別された評価部位画像内の14245本の各毛髪について、毛髪のRGB(
図3乃至5参照)、毛髪の太さ(
図6参照)、毛髪の輝度(
図7参照)、頭皮のRGBの各パラメータを取得した。
【0053】
また、前記関連情報取得部14を介して、評価部位画像を取得した評価対象者に関するデータを入力することにより、評価対象者の年齢情報を取得した。これにより、毛髪撮影時の評価対象者の年齢情報から年代(20~60代)を分類した。
【0054】
<評価者による判定>
次に、教師あり学習と、機械学習による判定の精度検証を行うために、予め評価者によって、取得した計65例の評価部位画像に写っている各毛髪が白髪か黒髪かの判定を行って正解となるデータ(ラベルデータ)を作成した。評価者による判定の結果、評価対象の全65例の中で識別された毛髪総計14245本中、黒髪が13728本(96.4%)、白髪517本(3.6%)の結果が得られた。
【0055】
このとき、評価者による判定は評価者2名によって行い、評価者2名による判定結果が一致した場合のみ評価者による判定結果として記録した。評価者2名による判定結果が一致しなかった場合には再度評価者2名による判定を行い、判定結果が一致するまでこれを繰返した。なお、評価者には、判定基準が一定になるように、白髪・黒髪のサンプル画像を使用して、白髪・黒髪の判別訓練をした後、実際の判定作業を行った。
【0056】
上記で取得された情報に基づいて、
図4乃至6に、横軸を前記特徴量抽出部13によって抽出された毛髪のRGB(Red・Green・Blue)とし、縦軸を評価者によって判定された白髪・黒髪を分けてグラフ化したヒストグラムを示し、
図7に、横軸を毛髪の太さとし、縦軸を評価者によって判定された白髪・黒髪を分けてグラフ化したヒストグラムを示し、
図8に、横軸を毛髪の太さとし、縦軸を毛髪の輝度とするとともに、各プロットデータを評価者によって判定された白髪・黒髪で色分けした散布図を示した。
【0057】
<機械学習(教師あり学習したモデル)による判定>
まず、前記判定部15により教師あり学習した(学習済)モデルによる白髪判定を行うために、評価対象の全65例の中で識別された毛髪総計14245本のうち、7割を教師あり学習するためのトレーニングデータ(ラベル、目的変数)とし、残りの3割をテストデータとして分割した。このとき、トレーニングデータにおける白髪の割合と、テストデータにおける白髪の割合が、略同等となるように分割した。
【0058】
前記判定部15は、上記工程で取得された毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ、頭皮のRGB及び評価対象者の年代に関するデータを、学習済モデルによる毛髪の白髪判定に用いる予測パラメータとして設定し、前記トレーニングデータを用いて教師あり学習を実行した。このとき、本実施例では、毛髪の白髪判定(分類)に用いるアルゴリズム(学習モデル)として、Logistic回帰、決定木、ランダムフォレスト、K近傍法、SVM(サポートベクターマシン)、XGBoost(勾配ブースティング)の計6モデルを用い、それぞれで教師あり学習を行った。
【0059】
その後、前記判定部15は、前記テストデータを構成する各毛髪について、教師あり学習したモデルによる判定結果に従って各毛髪を白髪か否か(黒髪)に分類する白髪判定を上記のパラメータの組合せとアルゴリズム毎に実行した。判定結果は、後述の方法によってそれぞれ精度検証を行った。
【0060】
具体的には、前記判定部15は、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さの3つ予測パラメータを設定した白髪判定(実施例1)の他、これに頭皮のRGB、評価対象者の年代を予測パラメータとして何れか一方又は両方を含めた白髪判定(実施例2乃至4)を実行した。また、上記条件の他に、毛髪の太さ(直径)が20μm以上の毛髪のみを対象にした白髪判定(実施例5乃至8)と、毛髪の太さ(直径)が40μm以上の毛髪のみを対象にした白髪判定(実施例9乃至12)を実行し、それぞれ比較した。
【0061】
<判定結果の精度検証>
前記判定部15によって、予測パラメータの組合せ(テストデータの範囲との組合せを含め計12パターン)と学習モデル(計6種類)を変えてそれぞれ白髪判定を実行した判定結果について、評価者によって白髪と判定した判定結果を正解と仮定した場合の、白髪の正解率をそれぞれ算出した。なお、白髪の正解率は(白髪の正解数)/(テストデータ内で評価者が白髪と判別した本数)として算出した(
図9参照)。
【0062】
図9は、機械学習に使用したパラメータと精度評価を示した表図である。実施例1では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さを設定した。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で84.74%、最も精度の良いモデルで87.01%となった(
図9参照)。
【0063】
実施例2では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ及び頭皮のRGBを設定した。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で82.03%、最も精度の良いモデルで85.71%となった(
図9参照)。
【0064】
実施例3では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ及び評価対象者の年代を設定した。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で81.60%、最も精度の良いモデルで89.61%となった(
図9参照)。
【0065】
実施例4では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ、頭皮のRGB及び評価対象者の年代を設定した。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で81.71%、最も精度の良いモデルで87.66%となった(
図9参照)。
【0066】
実施例5では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度及び毛髪の太さを設定し、毛髪の太さ(直径)が20μm以上の毛髪のみを精度評価対象とした。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で92.28%、最も精度の良いモデルで95.79%となった(
図9参照)。
【0067】
実施例6では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ及び頭皮のRGBを設定し、毛髪の太さ(直径)が20μm以上の毛髪のみを精度評価対象とした。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で89.82%、最も精度の良いモデルで93.68%となった(
図9参照)。
【0068】
実施例7では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ及び評価対象者の年代を設定し、毛髪の太さ(直径)が20μm以上の毛髪のみを精度評価対象とした。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で91.40%、最も精度の良いモデルで96.84%となった(
図9参照)。
【0069】
実施例8では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ、頭皮のRGB及び評価対象者の年代を設定し、毛髪の太さ(直径)が20μm以上の毛髪のみを精度評価対象とした。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で90.00%、最も精度の良いモデルで93.68%となった(
図9参照)。
【0070】
実施例9では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度及び毛髪の太さを設定し、毛髪の太さ(直径)が40μm以上の毛髪のみを精度評価対象とした。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で93.68%、最も精度の良いモデルで96.55%となった(
図9参照)。
【0071】
実施例10では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ及び頭皮のRGBを設定し、毛髪の太さ(直径)が40μm以上の毛髪のみを精度評価対象とした。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で91.95%、最も精度の良いモデルで94.83%となった(
図9参照)。
【0072】
実施例11では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ及び評価対象者の年代を設定し、毛髪の太さ(直径)が40μm以上の毛髪のみを精度評価対象とした。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で92.82%、最も精度の良いモデルで98.28%となった(
図9参照)。
【0073】
実施例12では、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度、毛髪の太さ、頭皮のRGB及び評価対象者の年代を設定し、毛髪の太さ(直径)が40μm以上の毛髪のみを精度評価対象とした。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で92.53%、最も精度の良いモデルで94.83%となった(
図9参照)。
【0074】
ちなみに、
図9で示される各実施例と比較するための比較例1として、予測パラメータとして、毛髪のRGB、毛髪の輝度のみを設定した結果も出力した。この場合の白髪の正解率は、実施した全モデルの平均で78.25%、最も精度の良いモデルで81.82%となった(
図9参照)。
【0075】
さらに、比較例2として、予測パラメータとして、頭皮のRGBデータのみを設定した結果も出力したが、この場合、白髪の判定を行うことはできず、算出不能となった(
図9参照)。
【0076】
以上によれば、前記白髪識別装置10は、予測パラメータとして少なくとも、毛髪のRGB(及び輝度)と、毛髪の太さを設定することによって、何れの学習モデルを用いた場合であっても比較例と比較して高い正解率で毛髪を白髪か否かを判定(評価)できることが示された(実施例1乃至12参照)。
【0077】
また、前記白髪識別装置10は、特に毛髪の太さの20μm以上の毛髪のみを選別して白髪の判定を行うことによって、毛髪の太さを限定しない場合と比較して、白髪の正解率が向上することが確認された(実施例5乃至8参照)。さらに、毛髪の太さの40μm以上の毛髪のみを選別して白髪の判定を行うことによって、毛髪の太さを限定しない場合や、毛髪の太さを20μm以上で限定した場合と比較して、白髪の正解率が向上することが確認された(実施例9乃至12参照)。
【0078】
上述の白髪識別装置10によれば、評価者の能力や環境要因のバラつきの他、評価対象者の白髪対策によるバイアス等の影響を受けることなく、一定の高い精度で評価対象者の白髪の状態を客観的に評価することができる。