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特開2022-187494高純度1,6-ヘキサンジオールの製造方法及び装置
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  • 特開-高純度1,6-ヘキサンジオールの製造方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187494
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】高純度1,6-ヘキサンジオールの製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/149 20060101AFI20221212BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20221212BHJP
   C07C 29/80 20060101ALI20221212BHJP
   B01D 3/00 20060101ALI20221212BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221212BHJP
【FI】
C07C29/149
C07C31/20 Z
C07C29/80
B01D3/00 A
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092134
(22)【出願日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】202110628298.0
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522226465
【氏名又は名称】浙江博聚新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周明何
(72)【発明者】
【氏名】徐必紅
(72)【発明者】
【氏名】徐傑煬
(72)【発明者】
【氏名】周俊
(72)【発明者】
【氏名】周兆昌
【テーマコード(参考)】
4D076
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4D076AA16
4D076AA22
4D076BB08
4D076BB23
4H006AA02
4H006AC41
4H006AD11
4H006BA05
4H006BA07
4H006BA30
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC52
4H006BD70
4H006BD84
4H006BE20
4H006FE11
4H006FG29
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
【課題】高純度の1,6-ヘキサンジオールの製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明は、高純度の1,6-ヘキサンジオールの製造方法及び装置を提供する。本発明において、アジピン酸とC6混合アルコールを混合してエステル化反応を行い、アジピン酸ジエステルを含む生成物供給液を得て、水素化還元反応と蒸留により高純度の1,6-ヘキサンジオールを得る。C6混合アルコールは、反応原料として使用され、水キャリング剤としても機能し、エステル化反応により生成された水は共沸により取り出され、反応の円滑な進行を促進し、エステル化反応は、触媒なしで実施され得る。前記方法は、エステル化反応に触媒を使用する必要がなく、エステル化反応が完了した後、複雑な後処理手順を必要とせず、その後の水素化還元を直接行えばよく、調製工程は簡単で、C6混合アルコールはリサイクル可能で、廃水の発生量は少なく、環境保護は良好で、製品は高純度で高収率である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度1,6-ヘキサンジオールの製造方法であって、
触媒を使用しない状態で、アジピン酸とC6混合アルコールを混合してエステル化反応を行い、エステル化生成物がアジピン酸ジエステルであるエステル化生成物供給液を得るステップ(1)と、
触媒の作用下で、水素を前記エステル化生成物供給液に導入して水素化還元反応を行い、1,6-ヘキサンジオール粗生成物を得るステップ(2)と、
前記1,6-ヘキサンジオール粗生成物を蒸留して、高純度の1,6-ヘキサンジオールとC6混合アルコールを得て、前記C6混合アルコールをステップ(1)に戻し、エステル化反応を継続するステップ(3)と、を含み、
ここで、前記C6混合アルコールの組成には、メチルシクロペンタノール、シクロペンチルメタノール及びn-ヘキサノールが含まれ、
前記エステル化反応では、エステル化反応により生成したアルコール-水共沸混合物を分離し、分離したアルコール-水共沸混合物を層状にし、層状化により得られたアルコールをエステル化反応に戻すことを特徴とする高純度1,6-ヘキサンジオールの製造方法。
【請求項2】
前記C6混合アルコールでは、メチルシクロペンタノールの質量パーセントは20~30%であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アジピン酸とC6混合アルコールの重量比は1:(2~4.5)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記エステル化反応の温度は150~220℃であり、反応液の酸価が10mgKOH/g以下になったら、エステル化反応を停止することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記エステル化反応中、反応液の酸価が5mgKOH/g以下になると、エステル化反応を停止することを特徴とする請求項1又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記水素化還元反応の圧力は1~20MPa、温度は150~280℃であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記触媒は担持銅触媒であることを特徴とする請求項1又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記蒸留は2塔連続蒸留であり、第1塔蒸留の圧力は10~25mmHg、温度は100~150℃、第2塔蒸留の圧力は8~20mmHg、温度は150~200℃であり、第1塔蒸留の生成物はC6混合アルコール、第2塔蒸留の生成物は高純度の1,6-ヘキサンジオールであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記高純度の1,6ヘキサンジオールの純度は99.7%以上であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
高純度1,6-ヘキサンジオールの製造装置であって、エステル化反応器(1)を含み、前記エステル化反応器(1)は、入口、アルコール-水共沸混合物出口、及びエステル化生成物供給液出口を備え、
入口が前記エステル化反応器(1)のアルコール-水共沸混合物出口と連通しているアルコール-水分離器(2)には、アルコール出口と水出口が設置され、前記アルコール出口は、前記エステル化反応器の入口と連通し、
入口が前記エステル化反応器(1)のエステル化生成物供給液出口と連通している水素化反応器(3)はまた、水素入口及び1,6-ヘキサンジオール粗生成物出口を備え、
入口が前記水素化反応器(3)の1,6-ヘキサンジオール粗生成物の出口と連通している第1の蒸留塔(4)には、塔頂出口及び塔底出口も設置され、前記塔頂出口は、エステル化反応器(1)の入口と連通して、
入口が前記第1の蒸留塔(4)の塔底出口と連通している第2の蒸留塔(5)の塔頂には、高純度の1,6-ヘキサンジオール出口が設置され、塔底には、高沸点成分出口が設置されることを特徴とする高純度1,6-ヘキサンジオールの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサンジオール製造の技術分野、高純度1,6-ヘキサンジオールの製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1,6-ヘキサンジオールは、室温で白色の固体であり、環境に優しく、化学的安定性が高く、重要な化学原料であり、医薬品の合成や、高度なコーティング、高度なインク、高度な樹脂、合成繊維ゴム、界面活性剤などの調製に使用できる。
【0003】
従来の方法では、原料としてアジピン酸とメタノールを使用し、触媒の作用でエステル化反応を行い、アジピン酸ジエステルを生成し、次に水素化還元により1,6-ヘキサンジオールが得られた。この方法では、エステル化反応に触媒を使用する必要があり、触媒は一般に無機酸、有機酸、酸性イオン性液体、固体酸性樹脂などである。例えば:非特許文献1では、強酸性陽イオン樹脂を触媒としてアジピン酸とメタノールに対してエステル化反応を行い、エステル化反応終了後、加圧蒸留により過剰のメタノールを除去し、触媒を分離する必要があり、次に、粗生成物を中和、水洗、及び減圧蒸留などのプロセスにかけて、アジピン酸ジメチルの最終生成物を得ることができ、最後に、水素化還元により1,6-ヘキサンジオールを調製して得られた。特許文献1では、硫酸を触媒として使用してアジピン酸とメタノールを触媒し、エステル化反応を行い、エステル化反応が完了した後、陰イオン交換、蒸留、分留などの後処理ステップを経てアジピン酸ジメチルを得ることができ、その後に水素化還元により1,6-ヘキサンジオールが得られた。特許文献2では、前記触媒は2.5%塩化チオニル、1.2%4-ジメチルアミノピリジン、1.5%四塩化スズ、及び100%活性炭で構成されている。アジピン酸とメタノールを触媒してエステル化反応を行い、次にアジピン酸ジメチル粗生成物を蒸留塔精製塔に送って、適格なアジピン酸ジメチルを蒸留した。特許文献3では、固体酸触媒、アジピン酸、及びメタノールを混合して、常圧下で予備エステル化を行い、予備エステル化反応生成物の上澄み液を、連続エステル化塔に送って触媒の作用下でメタノール蒸気との連続エステル化反応を行い、アジピン酸の質量に基づいて、添加される固体触媒の量は1~10%、使用する固体酸触媒は強酸型イオン交換樹脂であり、反応物を蒸留により精製した後、水素化反応を行い、粗アルコールを得て、得られた粗アルコールを蒸留により精製して、純度99.0%の1,6-ヘキサンジオールを得た。
【0004】
上記の手段はすべて、エステル化が完了した後に後処理で触媒を分離する必要があり、そうしないと、その後の水素化還元において触媒に影響を及ぼし、触媒の被毒を容易に引き起こし、それにより製品の品質に影響を与え、触媒を分離した後、溶媒メタノール回収、アジピン酸ジエステルの蒸留及び精製などの面倒なプロセスも実行する必要があり、生成物の収率が低く、メタノールの回収により生産リスクが高まり、大量の廃水が生成され、エネルギー消費量も増加した。また、従来の方法では、1,6-ヘキサンジオールの調製中に過剰な水素化や脱水などの副反応により、大量のC6混合アルコール副生成物が生成され、混合アルコール中のメチルシクロペンタノール、シクロペンチルメタノールなどは、一般的な蒸留手順では分離が難しく、市場での使用価値は低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「王龍飛.アジピン酸から1,6-ヘキサンジオールを調製するプロセスに関する研究[D].鄭州大学、2013年」
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国公開特許第1302284号公報
【特許文献2】中国公告特許第106699567号公報
【特許文献3】中国公告特許第101265158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これを考慮して、本発明は、高純度の1,6-ヘキサンジオールの製造方法を提供する。本発明は、従来のメタノール原料の代わりに原料としてC6混合アルコールを使用して、1,6-ヘキサンジオールを調製し、C6混合アルコールは、水よりも沸点が高く、水に不溶で、水と共沸混合物を形成でき、適切な反応活性があるため、エステル化反応時に触媒を添加する必要とせず、エステル化が完了した後、水素化還元を直接行うことができ、手順が簡単で、コストが低く、生成される廃水の量が少ない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記発明の目的を達成するために、本発明は以下の技術解決手段を提供する。
【0009】
高純度1,6-ヘキサンジオールの製造方法であって、
触媒を使用しない状態で、アジピン酸とC6混合アルコールを混合してエステル化反応を行い、エステル化生成物がアジピン酸ジエステルであるエステル化生成物供給液を得るステップ(1)と、
触媒の作用下で、水素を前記エステル化生成物供給液に導入して水素化還元反応を行い、1,6-ヘキサンジオール粗生成物を得るステップ(2)と、
前記1,6-ヘキサンジオール粗生成物を蒸留して、高純度の1,6-ヘキサンジオールとC6混合アルコールを得て、前記C6混合アルコールをステップ(1)に戻し、エステル化反応を継続するステップ(3)と、を含み、
ここで、前記C6混合アルコールの組成には、メチルシクロペンタノール、シクロペンチルメタノール及びn-ヘキサノールが含まれ、
前記エステル化反応では、エステル化反応により生成したアルコール-水共沸混合物を分離し、分離したアルコール-水共沸混合物を層状にし、層状化により得られたアルコールをエステル化反応に戻す。
【0010】
好ましくは、前記C6混合アルコールでは、メチルシクロペンタノールの質量パーセントは20~30%である。
【0011】
好ましくは、前記アジピン酸とC6混合アルコールの重量比は1:(2~4.5)である。
【0012】
好ましくは、前記エステル化反応の温度は150~220℃であり、反応液の酸価が10mgKOH/g以下になったら、エステル化反応を停止する。
【0013】
好ましくは、前記エステル化反応中、反応液の酸価が5mgKOH/g以下になると、エステル化反応を停止する。
【0014】
好ましくは、前記水素化還元反応の圧力は1~20MPa、温度は150~280℃である。
【0015】
好ましくは、前記触媒は担持銅触媒である。
【0016】
好ましくは、前記蒸留は2塔連続蒸留であり、第1塔蒸留の圧力は10~25mmHg、温度は100~150℃、第2塔蒸留の圧力は8~20mmHg、温度は150~200℃であり、第1塔蒸留の生成物はC6混合アルコール、第2塔蒸留の生成物は高純度の1,6-ヘキサンジオールである。
【0017】
好ましくは、前記高純度の1,6ヘキサンジオールの純度は99%以上である。
【0018】
本発明はまた、高純度1,6-ヘキサンジオールの製造装置を提供し、エステル化反応器1を含み、前記エステル化反応器1は、入口、アルコール-水共沸混合物出口、及びエステル化生成物供給液出口を備え、
入口が前記エステル化反応器1のアルコール-水共沸混合物出口と連通しているアルコール-水分離器2には、アルコール出口と水出口が設置され、前記アルコール出口は、前記エステル化反応器の入口と連通し、
入口が前記エステル化反応器1のエステル化生成物供給液出口と連通している水素化反応器3はまた、水素入口及び1,6-ヘキサンジオール粗生成物出口を備え、
入口が前記水素化反応器3の1,6-ヘキサンジオール粗生成物の出口と連通している第1の蒸留塔4には、塔頂出口及び塔底出口も設置され、前記塔頂出口は、エステル化反応器1の入口と連通し、
入口が前記第1の蒸留塔4の塔底出口と連通している第2の蒸留塔5の塔頂には、高純度の1,6-ヘキサンジオール出口が設置され、塔底には、高沸点成分出口が設置される。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、高純度1,6-ヘキサンジオールの製造方法を提供し、触媒を使用しない状態で、アジピン酸とC6混合アルコールを混合してエステル化反応を行い、アジピン酸ジヘキシルを含む生成物供給液を得て、その後、水素化還元反応と蒸留により高純度の1,6-ヘキサンジオールを得る。エステル化反応では、C6混合アルコールは、反応原料として使用されるほか、水キャリング剤(water-carrying agent)としても機能し、エステル化反応により生成された水は共沸により反応器からキャリングされ、反応の円滑な進行を促進し、触媒なしでエステル化反応を実現させる。また、原料C6混合アルコール中のシクロペンチルメタノールは、立体障害のためエステル形成が困難であり、エステル化する過程で共沸により水をキャリングし、シクロペンチルメタノールを分離することができ、シクロペンチルメタノールは、医薬品中間体として、また香料、可塑剤などとして使用できるため、副産物であるC6一価アルコールの市場アプリケーションの付加価値を高めることができる。本発明により提供される方法は、エステル化反応に触媒を使用する必要がなく、反応が完了した後、複雑な後処理手順を必要とせず、中間生成物であるアジピン酸ジエステルは、蒸留によって精製する必要はなく、直接その後の水素化還元を行わればよく、調製工程が簡単で、コストが低い。また、本発明で使用するC6混合アルコールは、従来の方法で1,6-ヘキサンジオールを製造する過程で生成される副産物であり、C6混合アルコールの資源利用を実現し、さらに1,6-ヘキサンジオールの製造コストを低減する 。
【0020】
本発明の方法は、エステル化反応終了後に水洗、触媒分離、溶媒回収、エステル化生成物精製などの工程を必要とせず、生成物収率が高く、廃水の発生量が少なく、また、本発明では、エステル化反応で共沸によって生成されたアルコール-水混合物中のアルコールを分離した後にエステル化反応に戻し、1,6-ヘキサンジオール粗生成物の蒸留中に生成されたC6混合アルコールもエステル化プロセスに戻し、C6混合アルコールのリサイクルを実現し、プロセス全体で発生する廃水をさらに削減し、環境保護が良好で、アルコールの利用率が高い。
【0021】
本発明により提供される方法では、水素化還元反応中、中間生成物であるアジピン酸ジエステル水素化原料中に少量の原料C6混合一価アルコールが存在するため、水素化還元中に新しい副生成物であるC6アルコールの生成を抑制し、それによって生成物1,6-ヘキサンジオールの選択性と生成物の収率を向上させる。
【0022】
実施例の結果により、本発明によって提供される製造方法によって得られる1,6-ヘキサンジオールの純度は、99%以上に達することができ、モル収率は、95%以上に達することができる。
【0023】
本発明はまた、高純度1,6-ヘキサンジオールの製造装置を提供し、本発明の装置は、上記の手段に記載の高純度の1,6-ヘキサンジオールの製造を実現し、高純度の1,6-ヘキサンジオールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明により提供される高純度1,6-ヘキサンジオールの製造方法のプロセスフローチャートである。
図2】本発明により提供される高純度1,6-ヘキサンジオールの製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、高純度1,6-ヘキサンジオールの製造方法を提供し、本発明によって提供される製造方法のプロセスフローチャートは、図1に示され、図1を参照して以下に詳細に説明される。
【0026】
本発明により提供される高純度1,6-ヘキサンジオールの製造方法は、
触媒を使用しない状態で、アジピン酸とC6混合アルコールを混合してエステル化反応を行い、エステル化生成物がアジピン酸ジエステルであるエステル化生成物供給液を得るステップ(1)と、
触媒の作用下で、水素を前記エステル化生成物供給液に導入して水素化還元反応を行い、1,6-ヘキサンジオール粗生成物を得るステップ(2)と、
前記1,6-ヘキサンジオール粗生成物を蒸留して、高純度の1,6-ヘキサンジオールとC6混合アルコールを得て、前記C6混合アルコールをステップ(1)に戻し、エステル化反応を継続するステップ(3)と、を含み、
ここで、前記C6混合アルコールの組成には、メチルシクロペンタノール、シクロペンチルメタノール及びn-ヘキサノールが含まれ、
前記エステル化反応では、エステル化反応により生成したアルコール-水共沸混合物を分離し、分離したアルコール-水共沸混合物を層状にし、層状化により得られたアルコールをエステル化反応に戻す。
【0027】
触媒を使用しない状態で、アジピン酸とC6混合アルコールを混合してエステル化反応を行い、エステル化生成物供給液を得る。本発明において、前記C6混合アルコールは好ましくは、従来の方法で1,6-ヘキサンジオールを調製するときに生成される副産物であり、前記C6混合アルコールの組成には、メチルシクロペンタノール、シクロペンチルメタノール及びn-ヘキサノールが含まれ、前記C6混合アルコール中のメチルシクロペンタノールの質量パーセントは、好ましくは20~30%、より好ましくは22~28%であり、前記シクロペンチルメタノールの質量パーセントは、好ましくは5~20%、前記n-ヘキサノールの含有量は好ましくは、20~40%であり、前記C6混合アルコール中のメチルシクロペンタノール、シクロペンチルメタノール及びn-ヘキサノールの総質量パーセントは約80~90%であり、残りはシクロペンタノールである。
【0028】
本発明において、アジピン酸とC6混合アルコールの重量比は、好ましくは1:(2~4.5)、より好ましくは1:(2.5~4)であり、前記エステル化反応温度は好ましくは、150~220℃、反応液の酸価が10mgKOH/g以下になるとエステル化反応を停止し、好ましくは、反応液の酸価が5mgKOH/g以下になるとエステル化反応を停止し、前記エステル化反応は、好ましくは、エステル化反応器内で実施される。エステル化反応中、C6混合アルコール中のメチルシクロペンタノール、シクロペンチルメタノール、及びn-ヘキサノールはすべてアジピン酸とエステル化反応し、対応するアジピン酸ジエステルが生成され、本発明において、得られたエステル化生成物供給液中の生成物はアジピン酸ジヘキシルであり、前記アジピン酸ジヘキシルには、具体的には、アジピン酸ジ(メチルシクロペンチル)エステル、アジピン酸ジ(シクロペンチルメチル)エステル、アジピン酸ジヘキシルが含まれる。
【0029】
シクロペンチルメタノールを例にとると、前記エステル化反応の式を以下に示す。
【化1】
【0030】
本発明において、前記C6混合アルコールは、反応原料として使用されるほか、水キャリング剤としても機能し、そのうちメチルシクロペンタノールの水キャリング性が最適で、エステル化反応により水が生成され、生成された水とC6混合アルコールは共沸が発生し、共沸によって生成された純水混合物は、好ましくは、水分離装置によってエステル化反応器から分離され、C6混合アルコールの水溶性は低く、分離したアルコールと水の混合物は、層状化した後、アルコールと水を分離することができ、分離されたアルコールは、好ましくはエステル化反応器に戻され、反応に関与し続ける。本発明は、C6混合アルコールの水キャリング剤効果を利用し、反応プロセスを設計することにより、触媒なしでのエステル化反応を実現する。
【0031】
本発明において、エステル化生成物供給液が得られた後、触媒と水素の作用下で、水素を前記エステル化生成物供給液に導入して水素化還元反応を行い、1,6-ヘキサンジオール粗生成物を得る。本発明において、前記水素化還元反応は、好ましくは水素化反応塔で実施され、エステル化反応が完了した後、エステル化生成物供給液には未反応の過剰なアルコールが含まれ、発明者は、エステル化生成物供給液中に存在するアルコールは水素化還元反応に影響を及ぼさず、水素化還元プロセス中にアルコール副生成物が生成されるため、エステル化生成物供給液中に少量のアルコールが存在すると、副生成物アルコールの形成も抑制され、1,6-ヘキサンジオールの選択性が向上することを見出し、したがって、本発明においては、エステル化反応が完了した後、何も処理せずに得られた生成物供給液を水素化反応塔に直接添加すればよい。
【0032】
本発明において、前記触媒は好ましくは担持銅触媒であり、本発明は、前記担持銅触媒について特別な要件を有さず、水素化還元反応に触媒効果を有する当業者に知られている担持銅触媒を使用すればよく、具体的には、市販の製品を購入するかまたは当業者に周知の方法を使用して調製することができる。本発明の具体的な実施例において、前記担持銅触媒の担体は好ましくはγ-Alであり、活性成分は好ましくはCuO及びZnOであり、前記CuOの負荷量は、好ましくは5~40wt%、より好ましくは10~30wt%であり、前記ZnOの負荷量は、好ましくは5~30wt%、より好ましくは8~20wt%であり、前記担持銅触媒は、好ましくは等体積浸漬法によって調製され、具体的には、硝酸銅と硝酸亜鉛の混合溶液にγ-Alを浸漬させ、次に乾燥と焼成を順番に行って、前記担持銅触媒を得ることである。前記焼成の温度は好ましくは400~600℃である。
【0033】
本発明において、好ましくは前記触媒を、水素化反応塔に充填し、次にエステル化生成物供給液を添加し、次いで水素を導入して反応を行う。
【0034】
本発明において、前記水素化還元反応の圧力は、好ましくは1~20MPa、より好ましくは3~18MPaであり、温度は、好ましくは150~280℃、より好ましくは180~260℃であり、本発明は、好ましくは、水素化還元反応中のアジピン酸ジエステルの転化率を99%以上に制御し、水素化還元プロセス中に、アジピン酸ジエステルは水素化還元により1,6-ヘキサンジオールを生成し、アジピン酸ジ(シクロペンチルメチル)エステルを例にとると、前記水素化還元反応の反応式を以下に示す。
【化2】
【0035】
本発明において、前記1,6-ヘキサンジオール粗生成物の組成は、1,6-ヘキサンジオール、C6混合アルコール(主にメチルシクロペンタノール、シクロペンチルメタノール及びn-ヘキサノール)、及び少量のC5アルコール(主にシクロペンタノール)及び少量のアジピン酸モノエステル副産物であり、本発明において、アジピン酸ジエステルのp-ヘキサンジオールへの選択性は98%以上に達することができる。
【0036】
1,6-ヘキサンジオール粗生成物が得られた後、本発明は、前記1,6-ヘキサンジオール粗生成物を蒸留して、高純度の1,6-ヘキサンジオール及びC6混合アルコールを得る。本発明において、前記蒸留は好ましくは、2塔連続蒸留であり、第1塔蒸留の圧力は10~25mmHg、より好ましくは15~20mmHgであり、温度は好ましくは100~150℃、より好ましくは110~140℃であり、第2塔蒸留の圧力は好ましくは8~20mmHg、より好ましくは10~15mmHgであり、温度は好ましくは150~200℃、より好ましくは160~180℃であり、第1塔蒸留の生成物はC6混合アルコールであり、前記C6混合アルコールは好ましくは、エステル化反応器に戻って反応を継続し、第2塔蒸留の生成物は高純度の1,6-ヘキサンジオールであり、前記高純度の1,6-ヘキサンジオールの純度は99%以上、具体的には99.7%以上に達することができ、本発明において、前記第2塔の塔底は高沸点留分アジピン酸モノエステルであり、アジピン酸モノエステルはエステル化原料としてリサイクルできる。
【0037】
本発明はまた、高純度1,6-ヘキサンジオールの製造装置を提供し、エステル化反応器1、アルコール水分離器2、水素化反応器3、第1の蒸留塔4及び第2の蒸留塔5を含み、構造の概略図を図2に示し、以下に図2を参照して具体的に説明する。
【0038】
本発明によって提供される装置は、エステル化反応器1を含み、前記エステル化反応器1は、入口、アルコール-水共沸混合物出口、及びエステル化生成物供給液出口を備え、前記入口は、アジピン酸とC6混合アルコールを追加するために使用され、本発明において、前記アルコール-水共沸混合物出口は、好ましくは、エステル化反応器の上部に配置され、前記エステル化生成物供給液出口は、好ましくは、エステル化反応器の底部に配置される。
【0039】
本発明により提供される装置は、入口が前記エステル化反応器1のアルコール-水共沸混合物出口と連通しているアルコール-水分離器2を含み、前記アルコール-水分離器2にはアルコール出口と水出口が設置され、前記アルコール出口は、前記エステル化反応器の入口と連通し、前記アルコール-水分離器2は、エステル化反応により生成されたアルコール-水共沸混合物を分離するために使用され、分離されたアルコールは、エステル化反応器に戻されて、反応に参加し続ける。
【0040】
本発明により提供される装置は、入口が前記エステル化反応器1のエステル化生成物供給液出口と連通している水素化反応器3を含み、前記水素化反応器3はまた、水素入口及び1,6-ヘキサンジオール粗生成物出口を備えている。本発明において、前記水素化反応器は、前記エステル化生成物供給液中のアジピン酸ジエステルを水素化するために使用され、前記水素化反応器3には、担持銅触媒が充填される。
【0041】
本発明により提供される装置は入口が前記水素化反応器3の1,6-ヘキサンジオール粗生成物の出口と連通している第1の蒸留塔4を含み、前記第1の蒸留塔4には塔頂出口及び塔底出口も設置され、前記塔頂出口は、エステル化反応器1の入口と連通する。
【0042】
本発明により提供される装置は、入口が前記第1の蒸留塔4の塔底出口と連通している第2の蒸留塔5を含み、前記第2の蒸留塔5の塔頂には、高純度の1,6-ヘキサンジオール出口があり、塔底には、高沸点成分出口が設置される。
【0043】
本発明によって提供される装置は、C6混合アルコールを使用することによって高純度の1,6-ヘキサンジオールを調製するプロセスを実現するために使用され、これは、図2を参照して以下で詳細に説明される。C6混合アルコールとアジピン酸をエステル化反応器1に導入してエステル化反応させ、エステル化反応中、生成されたアルコール-水共沸混合物は、アルコール-水分離のためにアルコール-水分離器2に入り、分離されたアルコールはエステル化反応器1に戻され、分離された水はアルコール-水分離器から排出すればよく、エステル化反応器1のエステル化反応供給液は、水素化反応器3に入り、水素化反応を行って、1,6-ヘキサンジオール粗生成物を得て、1,6-ヘキサンジオール粗生成物は、第1の蒸留塔に入って蒸留を行い、塔頂でC6混合アルコールが得られ、得られたC6混合アルコールをエステル化反応器1に戻し、反応に関与し続け、第1の蒸留塔の塔底の生成物は第2の蒸留塔に入り連続蒸留し、第2の蒸留塔の塔頂は高純度の1,6-ヘキサンジオール生成物を取得し、塔底は高沸点成分を取得する。
【0044】
以下に本発明における実施例を参照しながら、本発明における技術的解決手段を明確で、完全に説明する。
【0045】
実施例1
1,6-ヘキサンジオールの従来の製造の副産物であるC6混合アルコールを提供し、ここで、メチルシクロペンタノールの質量パーセントは30%、シクロペンチルメタノールの質量パーセントは30%、n-ヘキサノールの質量パーセントは20%であり、図2の装置を使用して高純度の1,6-ヘキサンジオールを調製する場合、具体的な調製ステップは次のとおりである。
(1)アジピン酸とC6混合アルコールをエステル化反応器1でエステル化反応を行い、エステル化反応では、共沸によって生成されたアルコール-水混合物は、アルコール-水分離器2に入り、アルコール-水分離を行い、分離されたアルコールを、エステル化反応器1に戻し、中央制御酸価が10mgKOH/g未満になったら、反応を停止した。
(2)ステップ(1)で得られた生成物供給液を、担持銅触媒(担体はγ-Alであり、活性成分はCuO及びZnOであり、CuOの負荷量は25wt%であり、ZnOの負荷量は15wt%であり、触媒は使用前に還元され)を備えた水素化反応器3に導入し、次に、水素を塔に導入して水素化還元反応を行い、反応中のアジピン酸ジエステルの転化率を検出し、水素化還元反応におけるアジピン酸ジエステルの転化率を99%以上に制御し、生成物中のヘキサンジオールの含有量を検出することにより、水素化反応中のアジピン酸ジエステルの選択性が98%以上であることがわかる。
(3)ステップ(2)で得られた1,6-ヘキサンジオール粗生成物を2塔連続蒸留にかけ、第1の蒸留塔4の圧力は10mmHgであり、温度は120℃であり、第2の蒸留塔5の圧力は15mmHgであり、温度は好ましくは180℃であり、第1の蒸留塔4の塔頂生成物はC6混合アルコールであり、前記C6混合アルコールは、エステル化反応器1に戻って反応を継続し、第2の蒸留塔5の塔頂生成物は1,6-ヘキサンジオールである。
【0046】
ここで、アジピン酸とC6混合アルコールの使用量、エステル化反応温度、水素化還元反応圧力及び温度は具体的には表1に示す。得られた1,6-ヘキサンジオールの純度及び収率は表1に示す。
【0047】
実施例2~11
その他の条件は実施例1と同じであり、C6混合アルコールの使用量、エステル化反応温度、水素化還元反応の温度及び圧力のみを変更し、具体的な条件を表1に示し、得られた1,6-ヘキサンジオールの純度及び収率は表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1のデータから分かるように、本発明によって提供される調製方法によって得られる1,6-ヘキサンジオールの純度は、99.7%以上に達することができ、収率は、95%以上に達することができる。
【0050】
上記は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改善及び修正を行うことができ、これらの改善及び修正も本発明の保護範囲と見なされるべきであることに留意されたい。
【符号の説明】
【0051】
1 エステル化反応器
2 アルコール水分離器
3 水素化反応器
4 第1の蒸留塔
5 第2の蒸留塔
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2