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特開2022-187504放熱構造体、バッテリーおよび電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187504
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】放熱構造体、バッテリーおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20221213BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221213BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221213BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20221213BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20221213BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20221213BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20221213BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/653
H01M10/6554
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095514
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】中田 和哉
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
5H031
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB06
5E322AB11
5E322DA03
5E322DA04
5E322EA10
5E322EA11
5E322FA01
5E322FA04
5E322FA09
5F136BA03
5F136BB18
5F136BC04
5F136BC05
5F136BC06
5F136DA42
5F136DA50
5F136FA14
5F136FA15
5F136FA16
5F136FA23
5F136FA24
5F136FA25
5F136FA51
5F136FA53
5F136FA55
5F136FA63
5F136FA64
5F136FA75
5F136FA82
5F136GA01
5H031AA09
5H031EE01
5H031EE02
5H031EE04
5H031KK08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高熱伝導性、高形態復元性及び高電気絶縁性を図る放熱構造体、バッテリー並びに電子機器を提供する。
【解決手段】熱源から冷却側の部材に熱を伝導させて熱源からの放熱を可能とする放熱構造体1であって、筒状若しくは柱状の弾性部材21及び熱源から冷却側の部材に熱を伝導可能であり、弾性部材21の外側面を覆う熱伝導シート20からなる長尺状の放熱部材10と、熱源と冷却側の部材との間の電気絶縁性を高めることができ、熱伝導シート20の外側面に密着して放熱部材10を被覆する被覆部材30と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源から冷却側の部材に熱を伝導させて前記熱源からの放熱を可能とする放熱構造体であって、
筒状若しくは柱状の弾性部材と、
前記熱源から前記冷却側の部材に熱を伝導可能なシートであって、前記弾性部材の外側面を覆う熱伝導シートと、
からなる長尺状の放熱部材と、
前記熱源と前記冷却側の部材との間の電気絶縁性を高めることができ、前記熱伝導シートの外側面に密着して前記放熱部材を被覆する被覆部材と、
を備えることを特徴とする放熱構造体。
【請求項2】
前記被覆部材は、前記放熱部材の長手方向の両端面をさらに被覆することを特徴とする請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項3】
前記被覆部材は、前記熱源および前記冷却側の部材の内の少なくとも1つに粘着可能な部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の放熱構造体。
【請求項4】
前記被覆部材は、ゴム材料と、当該ゴム材料よりも熱伝導性の高いフィラーとを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱構造体。
【請求項5】
前記熱伝導シートは、前記弾性部材の外側面を長手方向に向かってスパイラル状に巻回していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の放熱構造体。
【請求項6】
前記弾性部材と前記熱伝導シートは、一体にてスパイラル状に一方向に進行する形態を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の放熱構造体。
【請求項7】
前記弾性部材は、弾性ゴムに、当該弾性ゴムより熱伝導性の高いフィラーを分散させて構成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の放熱構造体。
【請求項8】
冷却側の部材を有する筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、
請求項1から7のいずれか1項に記載の放熱構造体が、前記バッテリーセルと前記冷却側の部材との間に介在することを特徴とするバッテリー。
【請求項9】
熱源としての電子部品と、
前記電子部品からの熱を伝えるヒートシンクと、
を備える電子機器であって、
請求項1から7のいずれか1項に記載の放熱構造体が、前記電子部品と前記ヒートシンクとの間に介在することを特徴とする電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造体、バッテリーおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機、船舶あるいは家庭用若しくは業務用電子機器の制御システムは、より高精度かつ複雑化してきており、それに伴って、回路基板上の小型電子部品の集積密度が増加の一途を辿っている。この結果、回路基板周辺の発熱による電子部品の故障や短寿命化を解決することが強く望まれている。
【0003】
回路基板からの速やかな放熱を実現するには、従来から、回路基板自体を放熱性に優れた材料で構成し、ヒートシンクを取り付け、あるいは冷却ファンを駆動するといった手段を単一で若しくは複数組み合わせて行われている。これらの内、回路基板自体を放熱性に優れた材料、例えばダイヤモンド、窒化アルミニウム(AlN)、立方晶窒化ホウ素(cBN)等から構成する方法は、回路基板のコストを極めて高くしてしまう。また、冷却ファンの配置は、ファンという回転機器の故障、故障防止のためのメンテナンスの必要性や設置スペースの確保が難しいという問題を生じる。これに対して、放熱フィンは、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)を用いた柱状あるいは平板状の突出部位を数多く形成することによって表面積を大きくして放熱性をより高めることのできる簡易な部材であるため、放熱部品として汎用的に用いられている(特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しようとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、電気自動車の普及が進行してきている。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置等の課題がある。特に、リチウム系の自動車用バッテリーの充放電機能を高めるための技術開発が必要とされている。上記自動車バッテリーは、摂氏60度以上の高温下では充放電の機能を十分に発揮できないことが良く知られている。このため、先に説明した回路基板と同様、バッテリーにおいても、放熱性を高めることが重要視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-243999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した熱源からの熱伝導性の良い特性に加え、高い形態復元性、熱源と熱を逃がす先にある冷却側の部材との間の高い電気絶縁性も要求されている。
【0007】
上記課題に鑑みて、本願に先立ち、本発明者は、熱源と冷却側の部材との間に配置され、熱源から冷却側の部材に熱を伝導可能な1または2以上の熱伝導シートと、熱伝導シートに備えられ、放熱構造体の弾性変形を可能とする1または2以上の弾性部材と、弾性部材を備えた熱伝導シートを収納する空間を備え、熱源と冷却側の部材との間の電気絶縁性を高めることができ、かつ熱源から熱伝導シートを経て冷却側の部材へと熱伝導可能なパッケージと、を備える放熱構造体を開発した(本発明の時点において未公開)。当該放熱構造体によれば、電気絶縁性の高いパッケージを備えることにより、熱伝導シートが電気伝導性を有する材料で構成されている場合であっても、熱源と冷却側の部材との間の絶縁性をより高めることができる。しかし、これをさらに改良して、形態復元性および電気絶縁性を高めるとともに、熱伝導性をさらに高めることが望まれている。これは、バッテリーセルのみならず、回路基板、電子部品あるいは電子機器本体のような他の熱源にも通じる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するべく、高熱伝導性、高形態復元性および高電気絶縁性を図ることのできる放熱構造体、バッテリーおよび電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る放熱構造体は、熱源から冷却側の部材に熱を伝導させて前記熱源からの放熱を可能とする放熱構造体であって、筒状若しくは柱状の弾性部材と、前記熱源から前記冷却側の部材に熱を伝導可能なシートであって、前記弾性部材の外側面を覆う熱伝導シートと、からなる長尺状の放熱部材と、前記熱源と前記冷却側の部材との間の電気絶縁性を高めることができ、前記熱伝導シートの外側面に密着して前記放熱部材を被覆する被覆部材と、を備える。
(2)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記被覆部材は、前記放熱部材の長手方向の両端面をさらに被覆しても良い。
(3)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記被覆部材は、前記熱源および前記冷却側の部材の内の少なくとも1つに粘着可能な部材であっても良い。
(4)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記被覆部材は、ゴム材料と、当該ゴム材料よりも熱伝導性の高いフィラーとを含んでも良い。
(5)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記熱伝導シートは、前記弾性部材の外側面を長手方向に向かってスパイラル状に巻回していても良い。
(6)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記弾性部材と前記熱伝導シートは、一体にてスパイラル状に一方向に進行する形態を有しても良い。
(7)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、前記弾性部材は、弾性ゴムに、当該弾性ゴムより熱伝導性の高いフィラーを分散させて構成されても良い。
(8)一実施形態に係るバッテリーは、冷却側の部材を有する筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセルを備えたバッテリーであって、上述のいずれかの放熱構造体が、前記バッテリーセルと前記冷却側の部材との間に介在する。
(9)一実施形態に係る電子機器は、熱源としての電子部品と、前記電子部品からの熱を伝えるヒートシンクと、を備える電子機器であって、上述のいずれかの放熱構造体が、前記電子部品と前記ヒートシンクとの間に介在する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高熱伝導性、高形態復元性および高電気絶縁性を図ることのできる放熱構造体、バッテリーおよび電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係る放熱構造体の斜視図を示す。
図2図2は、本発明の実施形態に係る放熱構造体の一部透過平面図、当該透過平面図のA-A線断面図、および当該A-A線断面図(B)の拡大図をそれぞれ示す。
図3図3は、本発明の実施形態に係る放熱構造体の製造方法の一部を説明するための図を示す。
図4図4は、本発明の実施形態に係る放熱構造体の変形例に関する製造方法の一部を説明するための図を示す。
図5図5は、本発明の実施形態に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図および放熱構造体の変化を示す。
図6図6は、本発明の実施形態に係る電子機器を組み立てる状況の縦断面図および放熱構造体の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
1.放熱構造体およびその製造方法
図1は、本発明の実施形態に係る放熱構造体の斜視図を示す。図2は、本発明の実施形態に係る放熱構造体の一部透過平面図、当該透過平面図のA-A線断面図、および当該A-A線断面図(B)の拡大図をそれぞれ示す。
【0014】
(1)放熱構造体の概略構成
この実施形態に係る放熱構造体1は、熱源から冷却側の部材に熱を伝導させて熱源からの放熱を可能とする。放熱構造体1は、筒状若しくは柱状の弾性部材21と、熱源から冷却側の部材に熱を伝導可能なシートであって、弾性部材21の外側面を覆う熱伝導シート20と、からなる長尺状の放熱部材10と、熱源と冷却側の部材との間の電気絶縁性を高めることができ、熱伝導シート20の外側面に密着して放熱部材10を被覆する被覆部材30と、を備える。この実施形態では、弾性部材21は、その長手方向に貫通する1つの貫通路22を備えた筒状の部材である。また、熱伝導シート20は、弾性部材21の外側面を長手方向に向かってスパイラル状に巻回している。なお、弾性部材21は、2以上の貫通路22を備え、貫通路22に代えて一端側を閉じた凹部若しくは両端側を閉じた空間を備え、あるいは貫通路22を全く有さない柱状の部材でも良い。次に、放熱構造体1の各構成要素について説明する。
【0015】
(2)被覆部材
被覆部材30は、好ましくは、熱伝導シート20の外側面に密着して被覆し、かつ放熱部材10の長手方向の両端面を被覆する。被覆部材30は、より好ましくは、熱伝導シート20の外側面および放熱部材10の長手方向の両端面にそれぞれ密着するように被覆する。よって、放熱構造体1は、空気層に起因する熱伝導性の低下を抑制し、高電気絶縁性および高熱伝導性を保持することができる。また、熱伝導シート20がグラファイトのように粒若しくは繊維を生じやすい材料で成る場合には、被覆部材30は、当該粒や当該繊維を外部に漏らさない役割をも有する。被覆部材30は、好ましくは、フィルム状の部材であって、放熱部材10を包み込むように被覆することにより形成される。なお、被覆部材30は、熱伝導シート20の外側面および放熱部材10の長手方向の両端面を被覆可能であれば、その形成方法は特に制約されず、例えば、放熱部材10を内部に挿入可能な筒形状に予め成形された部材であっても良い。また、被覆部材30は、その内部に放熱部材10を完全に密閉状態で保持するのではなく、例えば、空気の入出を可能とする小さな穴や隙間を有していても良い。また、被覆部材30は、放熱部材10の長手方向の両端面を被覆しなくても良いし、放熱部材10の長手方向の一方の端面のみを被覆しなくても良い。
【0016】
被覆部材30は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴム、天然ゴム、紙などの如何なる材料から構成されていても良い。被覆部材30の好適な材料は、合成ゴムまたは天然ゴムであって、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。
【0017】
被覆部材30のより好適な材料は、粘着性を有するゴムである。被覆部材30と熱源との間、あるいは被覆部材30と冷却側の部材との間の熱伝導の抵抗を下げることができるからである。粘着性を有するゴムには、例えば、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、アクリルゴム等)、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体、スチレン系ブロック共重合体(スチレン・イソプレン・エチレン・プロピレン共重合体等)、およびこれらの水添物のいずれかまたは混合物を用いることができる。当該ゴムの中には、粘着付与樹脂(ロジン、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール樹脂、石油系炭化水素樹脂等)、軟化剤(ポリブテン、流動パラフィン、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等)、酸化防止剤(アミン系、フェノール系、リン系の酸化防止剤等)、充填材(炭酸カルシウム、シリカ、クレー、タルク、酸化チタン、酸化マグネシウム等)を添加することができる。粘着性を有するゴムにシリコーンゴムを用いる場合、例えば、シロキサン結合を主骨格としアルケニル基を有する付加型のオルガノポリシロキサンを構成成分として含むシリコーンゴムを含有するものを用いることができる。このアルケニル基の具体例として、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。更に、付加反応性を有さない有機基を有していても良い。このような有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基等などのアリール基等を挙げることができる。上記のシリコーンゴムに含まれるオルガノポリシロキサンの重合度は特に制限されないが、通常、100~20000、更には500~10000であることが好ましい。
【0018】
このように、被覆部材30は、好ましくは、熱源および冷却側の部材の内の少なくとも1つに粘着可能な部材である。この結果、被覆部材30は、熱源および冷却側の部材の内の少なくとも熱源と密着しやすくなり、熱源、被覆部材30、被覆部材30からその内部にある放熱部材10の熱伝導シート20を経由して、被覆部材30、冷却側の部材へと、スムーズに熱を伝導可能となる。シリコーンゴムに代表される絶縁性の高いゴム材料から被覆部材30を構成することによって、熱伝導シート20が電気伝導性を有する材料で構成されている場合であっても、熱源と冷却側の部材との間の絶縁性をより高めることができる。
【0019】
被覆部材30は、上述のようなゴム材料と、当該ゴム材料よりも熱伝導性の高いフィラーとを含んでも良い。この結果、被覆部材30は、ゴム材料のみから構成されるよりも高い熱伝導性を有するため、熱源から冷却側の部材への熱伝導性をより高くできる。フィラーとしては、Al、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンドに代表される粒子状、繊維状、板状または針状のフィラーを選択できる。フィラーは、絶縁性の高いものがより好まれる。
【0020】
(3)熱伝導シート
熱伝導シート20は、その構成材料を問わないが、好ましくは炭素を含むシートであり、さらに好ましくは90質量%以上を炭素から構成されるシートである。例えば、熱伝導シート20に、樹脂を焼成して成るグラファイト製のフィルムを用いることもできる。ただし、熱伝導シート20は、炭素と樹脂とを含むシートであっても良い。その場合、樹脂は、合成繊維でも良く、その場合には、樹脂として好適にはアラミド繊維を用いることができる。本願でいう「炭素」は、グラファイト、グラファイトより結晶性の低いカーボンブラック、ダイヤモンド、ダイヤモンドに近い構造を持つダイヤモンドライクカーボン等の炭素(元素記号:C)から成る如何なる構造のものも含むように広義に解釈される。熱伝導シート20は、この実施形態では、樹脂に、グラファイト繊維やカーボン粒子を配合分散した材料を硬化させた薄いシートとすることができる。熱伝導シート20は、メッシュ状に編んだカーボンファイバーであっても良く、さらには混紡してあっても混編みしてあっても良い。なお、グラファイト繊維、カーボン粒子あるいはカーボンファイバーといった各種フィラーも、すべて、炭素フィラーの概念に含まれる。
【0021】
熱伝導シート20を炭素と樹脂とを備えるシートとする場合には、当該樹脂が熱伝導シート20の全質量に対して50質量%を超えていても、あるいは50質量%以下であっても良い。すなわち、熱伝導シート20は、熱伝導に大きな支障が無い限り、樹脂を主材とするか否かを問わない。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を好適に使用できる。熱可塑性樹脂としては、熱源からの熱を伝導する際に溶融しない程度の高融点を備える樹脂が好ましく、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)等を好適に挙げることができる。樹脂は、熱伝導シート20の成形前の状態において、炭素フィラーの隙間に、例えば粒子状あるいは繊維状に分散している。熱伝導シート20は、炭素フィラー、樹脂の他、熱伝導をより高めるためのフィラーとして、Al、AlNあるいはダイヤモンドを分散していても良い。また、樹脂に代えて、樹脂よりも柔軟なエラストマーを用いても良い。熱伝導シート20は、また、上述のような炭素に代えて若しくは炭素と共に、金属および/またはセラミックスを含むシートとすることができる。金属としては、アルミニウム、銅、それらの内の少なくとも1つを含む合金などの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。また、セラミックスとしては、Al、AlN、cBN、hBNなどの熱伝導性の比較的高いものを選択できる。
【0022】
熱伝導シート20は、導電性に優れるか否かは問わない。熱伝導シート20の熱伝導率は、好ましくは10W/mK以上である。この実施形態では、熱伝導シート20は、好ましくは、グラファイト製のフィルムであり、熱伝導性と導電性に優れる材料から成る。熱伝導シート20は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.02~3mmが好ましく、0.03~0.5mmがより好ましい。ただし、熱伝導シート20の熱伝導率は、その厚さが増加するほど厚さ方向で低下するが、熱伝送量は厚い方が多くなるため、シートの強度、可撓性および熱伝導性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
【0023】
(4)弾性部材
弾性部材21の重要な機能は変形容易性と、回復力である。回復力は、弾性変形性による。変形容易性は、熱源の形状に追従するために必要な特性であり、特にリチウムイオンバッテリーなどの半固形物、液体的性状も持つ内容物などを変形しやすい容器に収納したバッテリーセルの場合には、設計寸法的にも不定形または寸法精度があげられない場合が多い。このため、弾性部材21の変形容易性や追従力を保持するための回復力の保持は重要である。
【0024】
弾性部材21は、この実施形態では貫通路22を備える筒状クッション部材である。弾性部材21は、熱伝導シート20に接触する熱源が平坦でない場合でも、熱伝導シート20と熱源との接触を良好にする。さらに、貫通路22は、弾性部材21の変形を容易にし、加えて放熱構造体1の軽量化に寄与し、また、熱伝導シート20と熱源との接触を高める機能を有する。弾性部材21は、熱伝導シート20に加わる荷重によって熱伝導シート20が破損等しないようにする保護部材としての機能も有する。この実施形態では、弾性部材21は、熱伝導シート20に比べて低熱伝導性の部材である。なお、この実施形態では、貫通路22は、断面円形状に形成されているが、貫通路22の断面形状は円に限定されず、例えば、多角形、楕円形、半円形、頂点が丸みを帯びた略多角形等であっても良い。
【0025】
弾性部材21は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。弾性部材21は、熱伝導シート20を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、弾性部材21は、より好ましくは、ウレタン系エラストマー中にシリコーンを含浸したもの、あるいはシリコーンゴムにより構成される。弾性部材21は、その熱伝導性を少しでも高めるために、ゴム中にAl、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを分散して構成されていても良い。弾性部材21は、その内部に気泡を含むものの他、気泡を含まないものでも良い。また、「弾性部材」は、柔軟性に富み、熱源の表面に密着可能に弾性変形可能な部材を意味し、かかる意味では「クッション部材」と読み替えることもできる。さらに、弾性部材21の変形例としては、上記ゴム材料ではなく、金属を用いて構成することもできる。例えば、弾性部材21は、バネ鋼で構成することも可能である。さらに、弾性部材21として、コイルバネを配置することも可能である。また、スパイラル状に巻いた金属をバネ鋼にして弾性部材として熱伝導シート20の環状裏面に配置しても良い。また、弾性部材21は、樹脂やゴム等から形成されたスポンジあるいはソリッド(スポンジのような多孔質ではない構造のもの)で構成することも可能である。
【0026】
次に、本発明の実施形態に係る放熱構造体1の製造方法について説明する。
【0027】
図3は、本発明の実施形態に係る放熱構造体の製造方法の一部を説明するための図を示す。
【0028】
まず、放熱部材10を製造する。筒状の弾性部材21を用意した後、帯状の熱伝導シート20を弾性部材21の外側面にスパイラル状に巻く。このとき、弾性部材21が完全には硬化していない未硬化状態で、熱伝導シート20を弾性部材21の外側面に巻き、その後、加温により弾性部材21を完全に硬化させることができる。最後に、帯状の熱伝導シート20の弾性部材21の両端からはみ出した部分があればカットする。
【0029】
熱伝導シート20は、弾性部材21を完全に硬化させた状態で、その外側面に巻いてもよい。この場合、弾性部材21の外側面が粘着性を有していなければ、接着剤等を使用して熱伝導シート20を弾性部材21に固定しても良い。
【0030】
次に、上述のように製造された放熱部材10をフィルム状の被覆部材30で包み込むように被覆する。例えば、被覆部材30は、放熱部材10の長手方向にて接続するように熱伝導シート20の外側面を巻回され、放熱部材10からはみ出た当該長手方向両端側の部分が放熱部材10の長手方向の両端面を被覆するように封止される(図1を参照)。このとき、熱伝導シート20の外側面および放熱部材10の長手方向の両端面と被覆部材30とがそれぞれ密着するように被覆することが好ましい。このようにして、放熱構造体1が製造される。なお、被覆部材30と放熱部材10との密着させた被覆方法については、例えば、熱圧着、接着剤を用いた接着等を例示でき、その手法に制約はない。
【0031】
図4は、本発明の実施形態に係る放熱構造体の変形例に関する製造方法の一部を説明するための図を示す。
【0032】
前述の放熱構造体1は、筒状の弾性部材21の外側面に帯状の熱伝導シート20をスパイラル状に巻いた放熱部材10を備えている。しかし、ここでは、熱伝導シート20とほぼ同一の帯状の弾性部材21aを用意する。このような弾性部材21aを、スパイラル状の弾性部材とも称する。まず、略同等の幅を持つ熱伝導シート20および弾性部材21の二層からなる積層体50を製造する。次に、積層体50をスパイラル状に巻く。こうして、積層体50をスパイラル状に巻回した細長い形状の放熱部材10aが完成する。積層体50は、弾性部材21aが完全には硬化していない未硬化状態で、熱伝導シート20を弾性部材21aに積層し、その後、加温により弾性部材21aを完全に硬化させて形成されても良い。
【0033】
放熱部材10aを完成後、上述の放熱部材10の場合と同様に、放熱部材10aをフィルム状の被覆部材30で包み込むように被覆することにより放熱構造体1が製造される。放熱部材10aは、熱伝導シート20と弾性部材21aとが一体にてスパイラル状に一方向に進行する形態を有する。すなわち、弾性部材21aは、スパイラル状に巻回された熱伝導シート20とほぼ同一幅のスパイラル状の切り込みが形成された筒状部材となる。このように製造された放熱構造体1は、弾性部材21aの切り込みにより、弾性部材21aの変形容易性をより高めることができるため、高い形態復元性を保持することができる。
【0034】
2.バッテリー
次に、本発明に係るバッテリーの好適な実施形態について説明する。
【0035】
図5は、本発明の実施形態に係るバッテリーを組み立てる状況の縦断面図および放熱構造体の変化を示す。ここで、「縦断面図」は、バッテリーの筐体内部のバッテリーセルの長さ方向にバッテリーを切断する図を意味する。
【0036】
この実施形態において、バッテリー100は、例えば、電気自動車用のバッテリーである。バッテリー100は、冷却側の部材を有する筐体内に、1または2以上の熱源としてのバッテリーセル110を備え、複数の放熱構造体1をバッテリーセル110と冷却側の部材との間に並べて介在させている。より詳細の構造は、次の通りである。バッテリー100は、一方に開口する有底型の筐体101を備える。筐体101は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル110は、筐体101の内部104に配置される。バッテリーセル110の上方には、電極が突出して設けられている。複数のバッテリーセル110は、好ましくは、筐体101内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体101の底部102には、冷却剤105の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ103が備えられている。放熱構造体1は、熱源であるバッテリーセル110と、筐体101の底部(冷却側の部材の一例)102との間に挟まれて、筐体101内に配置される。
【0037】
このような構造のバッテリー100では、バッテリーセル110は、熱を、放熱構造体1から筐体101に伝え、水冷によって効果的に除熱される。なお、冷却剤105は、「冷却媒体」あるいは「冷却部材」と読み替えても良い。冷却剤105は、冷却水に限定されず、液体窒素、エタノール等の有機溶剤も含むように解釈される。冷却剤105は、冷却に用いられる状況下にて、液体であるとは限らず、気体あるいは固体でも良い。
【0038】
バッテリーセル110を筐体101内にセットした状態では(図5を参照)、放熱構造体1は、バッテリーセル110と、水冷パイプ103を備える底部102との間において、放熱構造体1の厚さ方向に圧縮される。この結果、図5の一部Cの拡大図から一部Dの拡大図の変化からも明らかなように、複数の放熱構造体1は、縦方向(図5の上下方向)に圧縮され扁平化する。バッテリーセル110を放熱構造体1から除外すると、放熱構造体1は、元の形状に戻る。
【0039】
3.電子機器
次に、本発明に係る電子機器の好適な実施形態について説明する。
【0040】
図6は、本発明の実施形態に係る電子機器を組み立てる状況の縦断面図および放熱構造体の変化を示す。ここで、「縦断面図」は、ヒートシンクから回路基板へと垂直に切断する図を意味する。
【0041】
この実施形態において、電子機器200は、例えば、自動車に積載される一部の制御装置である。ただし、電子機器200は、かかる制御装置に限定されることなく、PC、発電用制御装置、工業用ロボットの制御装置等の各種装置を含み得る。電子機器200は、好ましくは、筐体(不図示)内にプリント回路基板(以後、単に「回路基板」という)208を備える。また、電子機器200は、好ましくは、回路基板208上に1または2以上の熱源としての電子部品210a,210b,210cを備えるとともに、電子部品210a,210b,210cと所定距離を隔ててヒートシンク202を備える。ヒートシンク202は、この実施形態では、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金に代表される熱伝導性の高い材料から構成されており、放熱を高めるための多数のフィンを備える。なお、ヒートシンク202は、フィンに代えてあるいはフィンとともにピンを備えても良い。
【0042】
回路基板208は、絶縁性に優れる材料にて形成されており、一例として、紙基材をフェノール樹脂で固めた紙フェノール基板、紙基材をエポキシ樹脂で固めた紙エポキシ基板、ガラスファイバで織った布をエポキシ樹脂で固めたガラスエポキシ基板、紙とガラス基材を混合して固めたガラスコンポジット基板の他、アルミナ等の絶縁性の高いセラミックスで形成されたセラミックス基板、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド等の絶縁性の高い樹脂で形成されている。
【0043】
電子部品210a,210b,210cは、特定の部品に限定されることはなく、例えば、LSI(CPUやDRAMを含む場合あり)、CPU、DRAM、ROM、EEROM、キャパシタ、コイル等である。この実施形態では、電子部品210a,210b,210cはLSIとする。この実施形態において、電子部品210bは、他の電子部品210a,210cよりも厚く形成されている(図6を参照)。ただし、電子機器200において、電子部品210a,210b,210cは、同一の厚さであっても良いし、電子部品210bは、電子部品210aおよび/または電子部品210cより薄く形成されていても良い。また、電子機器200において、回路基板208上に備えられる電子部品210a,210b,210cの数および配置は、特に制約されない。また、電子機器200は、複数種類の電子部品210a,210b,210cを備えていても良い。
【0044】
放熱構造体1は、電子部品210a,210b,210cとヒートシンク202との間に介在する。放熱構造体1は、好ましくは、電子部品210a,210b,210cおよびヒートシンク202の少なくとも一方に接着される。このような構造の電子機器200においても、電子部品210a,210b,210cは、放熱構造体1を通じてヒートシンク202に伝熱して、効果的に除熱される。例えば、電子部品210bが他の電子部品210a,210cよりも厚く形成されている場合、電子部品210bとヒートシンク202との間に介在する放熱構造体1は、他の電子部品210a,210cとヒートシンク202との間に介在する放熱構造体1に比べて、放熱構造体1の厚さ方向にさらに圧縮される(図6を参照)。この結果、図6の一部Eの拡大図から一部Fの拡大図の変化からも明らかなように、複数の放熱構造体1は、縦方向(図6の上下方向)に圧縮され扁平化する。なお、放熱構造体1は、電子部品210a,210b,210cおよびヒートシンク202の両方に接着されていても良い。放熱構造体1と電子部品210a,210b,210cおよび/またはヒートシンク202との接着方法は特に制約されず、例えば、耐熱性を有する接着剤等により接着されていても良い。
【0045】
4.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0046】
被覆部材30は、好ましくは、熱源および冷却側の部材の両方に粘着可能に構成されているが、熱源および冷却側の部材の内の少なくとも1つに粘着可能に構成されていても良い。
【0047】
放熱部材10を構成する熱伝導シート20は、弾性部材21の外側面をスパイラル状に巻回されずに、弾性部材21の長手方向にて接続するように巻回され、あるいは長手方向に接続せずにスリットを有するように巻回されても良い。
【0048】
バッテリー100または電子機器200に備えられる複数の放熱構造体1は、糸等の連結部材を用いて連結されていても良い。このように構成されたバッテリー100または電子機器200は、複数の放熱構造体1が位置決めされるため、各バッテリーセル110若しくはヒートシンク202に放熱構造体1を確実に接触させることができる。
【0049】
熱源は、バッテリーセル110および電子部品210a,210b,210cのみならず、回路基板208や電子機器200本体等の熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。また、放熱構造体1は、バッテリー100および電子機器200以外の構造物、例えば、家電、発電装置等に配置されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る放熱構造体は、例えば、自動車用バッテリーの他、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品等の各種電子機器にも利用することができる。また、本発明に係るバッテリーは、自動車用のバッテリー以外に、家庭用の充放電可能なバッテリー、PC等の電子機器用のバッテリーにも利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・放熱構造体、10,10a・・・放熱部材、20・・・熱伝導シート、21,21a・・・弾性部材、30・・・被覆部材、100・・・バッテリー、101・・・筐体、102・・・底部(冷却側の部材の一例)、105・・・冷却剤、110・・・バッテリーセル(熱源の一例)、200・・・電子機器、202・・・ヒートシンク、210a,210b,210c・・・電子部品(熱源の一例)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6