(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187510
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】尿道留置具
(51)【国際特許分類】
A61F 2/82 20130101AFI20221213BHJP
【FI】
A61F2/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095522
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】512324878
【氏名又は名称】株式会社岡田快適生活研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100121773
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 正
(72)【発明者】
【氏名】岡田 司郎
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA48
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB05
4C267BB07
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267CC26
(57)【要約】
【課題】チップに対して連結紐を着脱可能にしっかりと連結するこのできる尿道留置具を提供する。
【解決手段】尿道留置具1は、尿道内に留置される細棒形状の尿道留置チップ10と、尿道留置チップ10に連結される連結紐5とを備え、連結紐5は、途中に径大部6が形成された1本の糸であり、尿道留置チップ10は、連結紐5が貫通する連結穴23,33であって、径大部6を通さないように径大部6よりも小さな穴入口23a,33aを有する第一連結穴23及び第二連結穴33を有し、連結紐5の両端がそれぞれ第一連結穴23と第二連結穴33とに穴入口23a,33aから通されて、それぞれの穴出口23b,33bから引っ張り出されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道内に留置される細棒形状の尿道留置チップと、前記尿道留置チップに連結される連結紐とを備える尿道留置具において、
前記連結紐は、途中に径大部が形成された1本の糸であり、
前記尿道留置チップは、前記連結紐が貫通する連結穴であって、前記径大部を通さないように前記径大部よりも小さな穴入口を有する第一連結穴及び第二連結穴を有し、
前記連結紐の両端がそれぞれ前記第一連結穴と前記第二連結穴とに前記穴入口から通されて、それぞれの穴出口から引っ張り出されていることを特徴とする尿道留置具。
【請求項2】
前記尿道留置チップは、その表面に開口する入口開口凹部を有し、前記第一連結穴の前記穴入口と前記第二第二連結穴の前記穴入口とが近接して前記入口開口凹部内に設置されており、前記径大部が前記入口開口凹部内に収納可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の尿道留置具。
【請求項3】
前記尿道留置チップは、前記第一連結穴の前記穴入口と前記第二連結穴の前記穴入口との間に設置された前記尿道留置チップを貫通する柱状穴を備えており、前記入口開口凹部と反対側から前記柱状穴にピンを通すことで、前記径大部を前記入口開口凹部内から外に押出可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載の尿道留置具。
【請求項4】
前記第一連結穴及び前記第二連結穴は、それぞれ複数回折り曲げられており、それぞれ合計で220°以上折り曲げられていることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の尿道留置具。
【請求項5】
前記第一連結穴は、150°以上折り返す第一折返し部を備え、
前記第二連結穴は、150°以上折り返す第二折返し部を備えることを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の尿道留置具。
【請求項6】
前記尿道留置チップは、前記第一折返し部を表面に開口させるための第一折返し開口凹部と、前記第二折返し部を表面に開口させるための第二折返し開口凹部と、を備えることを特徴とする請求項5記載の尿道留置具。
【請求項7】
前記第一折返し部は、前記第一連結穴の穴出口と反対側に拡がる第一折返し横洞穴を備え、
前記第二折返し部は、前記第二連結穴の穴出口と反対側に拡がる第二折返し横洞穴を備えることを特徴とする請求項5又は6記載の尿道留置具。
【請求項8】
前記径大部は、糸の結び目であることを特徴とする請求項1乃至7何れか1項記載の尿道留置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿道に留置する尿道留置具に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺の肥大等により、尿道が閉じたり狭くなったりして排尿障害が生じてしまった場合には、尿道を広げるための尿道ステントを尿道内に設置する治療が行われている。
【0003】
このような尿道ステントは、例えば、下記特許文献1~3に開示されている。しかし、これらに開示された尿道ステントは、構造が複雑であり、尿道内への留置処置を医療業務従事者が行うことが前提となっており、使用者が自分で留置するのは困難である。
【0004】
これに対して、簡素な構造であって、使用者が自分で尿道内に設置したり、尿道内から取り出したりするのを容易に行うことのできるように、連結紐をステントやチップに連結した尿道留置具が提供されており、下記特許文献4~6に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-52835号公報
【特許文献2】特表2008-543499号公報
【特許文献3】特許第4025648号公報
【特許文献4】特開2019-63474号公報
【特許文献5】特開2019-63475号公報
【特許文献6】特開2020-736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、尿道留置具をオートクレーブ滅菌したり、連結紐を交換したりする場合には、連結紐をステントやチップから取り外す必要があるが、上記特許文献4~6に開示されている尿道留置具では、樹脂製のステントやチップと一体に連結紐を埋め込んで連結しているため、いったん連結紐をステントやチップに取り付けると、基本的に外すことができない。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、チップに対して連結紐を着脱可能にしっかりと連結することのできる尿道留置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る尿道留置具は、尿道内に留置される細棒形状の尿道留置チップと、前記尿道留置チップに連結される連結紐とを備える尿道留置具において、前記連結紐は、途中に径大部が形成された1本の糸であり、前記尿道留置チップは、前記連結紐が貫通する連結穴であって、前記径大部を通さないように前記径大部よりも小さな穴入口を有する第一連結穴及び第二連結穴を有し、前記連結紐の両端がそれぞれ前記第一連結穴と前記第二連結穴とに前記穴入口から通されて、それぞれの穴出口から引っ張り出されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る尿道留置具によれば、尿道内に留置される尿道留置チップに対して連結紐を着脱可能にしっかり連結することができ、必要に応じて、連結紐を尿道留置チップから取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る尿道留置具の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る前立腺チップの斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係る糸連結部の構造を示す拡大斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係る前立腺チップと連結紐との連結作業を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の第一実施形態に係る尿道留置具の留置状態を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第二実施形態に係る尿道留置具の斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第二実施形態に係る前立腺チップの斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第二実施形態に係る糸連結部の構造を示す拡大斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第二実施形態に係る前立腺チップと連結紐との連結作業を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第一実施形態について説明する。本実施形態では、尿道留置具として、
図5に示すように、尿道内の前立腺部分に設置される前立腺チップを有する場合を例に挙げて説明する。
【0012】
尿道留置具1は、前立腺チップ10と、前立腺チップ10に連結された連結紐5とを備える。ここで、
図2(A)は、後述する第一面側から見た前立腺チップ10の斜視図、
図2(B)は、後述する第二面側から見た前立腺チップ10の斜視図を示す。また、
図3(A)は、第一面側から見た糸連結部15の構造を示す斜視図、
図3(B)は、第二面側から見た糸連結部15の構造を示す斜視図である。
【0013】
また、
図4(A)は、第一面側から見た連結紐5の両端を第一連結穴23及び第二連結穴33に通している状態を示す斜視図であり、
図4(B)は、第一面側から見た連結紐5を連結した状態の糸連結部15の部分を拡大して示す平面図である。
【0014】
連結紐5は、尿道内に留置された前立腺チップ10を尿道の外に取り出したり尿道内の留置位置を調整したりする際に、前立腺チップ10を外尿道口方向へ引っ張るために使用される。連結紐5は、1本の糸であり、その途中の真ん中部分には、止め結び(一重結び)の結び目6が形成されている。連結紐5の両端は、それぞれ後述するように引張紐7として機能する。
【0015】
前立腺チップ10は、細長い平板形状であり、長手方向の先端部、中央部、根元部の三箇所に幅広い偏平突起部11が形成されている。尿道内への留置時に外尿道口側に位置することになる根元部に設置された偏平突起部11の部分に連結紐5を穴に通して着脱可能に連結するための糸連結部15が設置されている。
【0016】
糸連結部15は、第一連結穴23を有する第一糸連結穴部21と、第二連結穴33を有する第二糸連結穴部31と、押出用穴40とを備えている。すなわち、糸連結部15は、二系統の連結穴23,33を備えており、1本の糸である連結紐5の両端をそれぞれの連結穴23,33に貫通させることで、2本の糸(引張紐7)で前立腺チップ10を引っ張ることができる(
図1、
図4等参照)。
【0017】
第一連結穴23は、前立腺チップ10の一方の平面(チップ面)である第一面側に穴入口23aが形成され、チップ面に平行にチップ幅方向に進んだ後、反対側の第二面側に向けて厚み方向に進み、その後、第一折返し部24においてチップ面に平行にチップ幅方向に進みながら略180°折り返され、第一面側に戻りながら、さらに第一折曲げ部26において前立腺チップ10の根元側に向けて略90°折曲げられ、チップ面に略平行にチップ長手方向に進んで前立腺チップ10の根元側の側面に形成された穴出口23bに到達する。
【0018】
このように、第一連結穴23は、厚み方向において略180°折り返す第一折返し部24と、厚み方向からチップ長手方向に略90°折り曲がる第一折曲げ部26とを備えているので、第一連結穴23を貫通する連結紐5は、第一折返し部24や第一折曲げ部26において、第一連結穴23の内壁面に多くの場所で接触する。
【0019】
したがって、連結紐5は、第一連結穴23の内壁面との摩擦等により、第一連結穴23から抜けることなく、第一糸連結穴部21としっかりと連結される。また、第一連結穴23を貫通して連結された連結紐5を、穴出口23b側から押す等しながら穴入口23a側から引っ張れば、連結紐5を第一連結穴23から引っ張り出して外すこともでき、連結紐5は、着脱可能に前立腺チップ10に連結されている。
【0020】
第一連結穴23の穴入口23aは、連結紐5の結び目6を通さないように、結び目6よりも小さいサイズである(
図4等参照)。したがって、第一連結穴23の穴出口23bから突出した連結紐5の端を引っ張っても、結び目6が穴入口23aから第一連結穴23の内部に入ることはなく、したがって、連結紐5全体が連結穴23,33の一方の穴出口23b,33bから引っ張り出されることもない。
【0021】
第一連結穴23の第一折返し部24は、折返し横洞穴25を備えており、第一折返し部24は、折返し横洞穴25においてチップ長手方向の先端側、すなわち、穴出口23bと反対側に穴が拡がっている。
【0022】
折返し横洞穴25が無い構成では、第一連結穴23を貫通する連結紐5の穴出口23bから突出している先端側が第一連結穴23の内部へ押し戻されると、第一連結穴23に全体に沿って連結紐5が押し戻され、穴入口23aにおいて押し戻された連結紐5が前立腺チップ10の外側に突出してしまうおそれがある。
【0023】
これに対して、折返し横洞穴25が形成されていると、穴出口23bから突出する連結紐5が押し戻される場合であっても、押された連結紐5は、折返し横洞穴25において先端側に膨らむことで、押し戻す力を吸収することができ、穴入口23a付近に位置する連結紐5まで押し戻されるのを防ぐことができる。
【0024】
第一糸連結穴部21は、穴入口23aの周囲に第一入口開口凹部27が形成されており、第一連結穴23の穴入口23aからチップ面に平行にチップ幅方向に進む入口付近の部分は、第一入口開口凹部27内に位置し、第一入口開口凹部27を介して第一面側に開口している。
【0025】
また、第一糸連結穴部21は、第一折返し部24において、第二面側に第一折返し開口凹部28が形成されており、第一連結穴23の第一折返し部24は、第一折返し開口凹部28により第二面側に開口している。
【0026】
第一折返し開口凹部28が無い構成では、第一面側の穴入口23aから挿入された連結紐5の一方の端部先端を第一折返し部24において略180°折り返してさらに奥の第一折曲げ部26へと挿入する作業は、外から観察したり触ったりできない場所での難易度の高い作業となる。
【0027】
これに対して、第一折返し開口凹部28が形成されていることで、穴入口23aから挿入した連結紐5の先端を、第一折返し開口凹部28から第二面側にいったん取り出し、そこから反転させて第一折返し開口凹部28内を目視しながら第一折曲げ部26に向けて挿入することができ、複数回折れ曲がる第一連結穴23内に連結紐5を貫通させる作業を、容易に行うことが可能となる。
【0028】
続いて、第二連結穴33は、チップ長手方向に平行且つチップ面に垂直であって、第一連結穴23と第二連結穴33との真ん中に位置する中心面に対して、第一連結穴23と面対称に形成されている。
【0029】
すなわち、第二連結穴33は、第一連結穴23と同様の形状であり、穴入口33a、第二折返し部34、折返し横洞穴35、第二折曲げ部36が形成されている。また、第二糸連結穴部31は、第一糸連結穴部21と同様に、第二入口開口凹部37と第二折返し開口凹部38とを備えている。
【0030】
押出用穴40は、第一連結穴23の穴入口23aと第二連結穴33の穴入口33aとの間の中心において、前立腺チップ10を厚み方向に貫通した円柱穴である。押出用穴40の第一面側には、第一穴入口23a及び第二穴入口33aが位置しており、押出用穴40、第一入口開口凹部27及び第二入口開口凹部37が一体となって凹部を形成している。
【0031】
穴入口23a,33a付近に位置する連結紐5は、この一体となった凹部内に位置し、穴入口23a,33aの外側に位置する結び目6は第一面側の押出用穴40内に位置して収納されており、前立腺チップ10の外側には露出していない(
図4等参照)。このように、突起部である連結紐5の結び目6が凹部(押出用穴40)内に位置することで、結び目6が尿道の壁面に接触することによる痛み等を使用者が感じることを防ぐことができる。
【0032】
また、結び目6が押出用穴40内に収納され、穴出口23b,33b側から連結紐5を押し戻しても、穴入口23a,33a付近の連結紐5が押し戻されない本実施形態では、連結紐5を連結穴23,33から容易に外すことはできない。
【0033】
これに対して、押出用穴40を備える本実施形態によれば、押出用穴40の第二面側から細いピンを第一面側に突出するまで挿入することで、連結紐5の結び目6をピンにより押出用穴40の外に押し出すことができ、連結紐5を連結穴23,33から取り外す作業を容易に行うことができる。
【0034】
ここで、本実施形態に係る尿道留置具1のサイズについて説明する。もちろん、このサイズはあくまでも一例であり、適宜変更可能である。前立腺チップ10のチップ長手方向の全長は30mm程度、チップ幅は偏平突起部11において7~9mm程度、くびれた部分の幅で2~4mm程度、チップ厚みは2~3mm程度である。
【0035】
連結紐5の直径は0.25mm程度であり、結び目6の部分の最大径は1mm程度である。連結穴23,33に関して、基本的に直径が0.5mm程度であり、穴入口23a等の狭い部分の直径は0.3mm程度である。また、押出用穴40の直径は1mm程度である。
【0036】
以上、本実施形態に係る尿道留置具1の構成について説明したが、尿道留置具1によれば、1本の連結紐5の途中の真ん中部分に結び目6を形成すると共に、前立腺チップ10に2系統の第一連結穴23及び第二連結穴33を形成し、連結紐5の両端を結び目6よりも小さな穴入口23a,33aから連結穴23,33に貫通させて、穴出口23b,33bから引き出しており、結び目6は穴入口23a,33aに引っ掛かり、連結穴23,33内に進入することはない。
【0037】
すなわち、結び目6が形成された連結紐5と、結び目6よりも小さな穴入口23a,33aを有する連結穴23,33が2系統設置された前立腺チップ10とを備える尿道留置具1であれば、接着剤等を使用したり、チップの穴等に紐を結び付けたりすることなく、前立腺チップ10に連結紐5を着脱可能にしっかりと連結することができる。
【0038】
また、本実施形態では、1本の連結紐5の両端を連結穴23,33に貫通させており、穴出口23b,33bから引き出された連結紐5の両端は2本の引張紐7として機能する。2本の引張紐7は、1本の連結紐5から構成されており、引張紐7が前立腺チップ10から容易に外れることもない。
【0039】
また、2本の引張紐7が設置されているため、もし、1本の引張紐7が切れたりした場合であっても、残りの1本の引張紐7を使って前立腺チップ10を尿道内から引き出すことができ、安全である。この場合、1本だけになった引張紐7を穴出口23b,33b側から引っ張っても、結び目6が穴入口23a,33aに引っ掛かるため、抜けてしまうこともない。
【0040】
また、尿道留置具1は、体内に長時間留置されるため、尿道留置具1を生体適合性の規格等を満たすことが望ましいが、連結紐5と前立腺チップ10との連結に接着剤等を必要としないため、生体適合性を実現し易い。
【0041】
また、本実施形態では、連結穴23,33が、略180°折り返す折返し部24,34と、略90°折り曲げる第二折曲げ部26,36とを備え、複数回大きく折り曲がっているため、連結紐5と連結穴23,33の内壁面との接触面積が大きい。よって、連結紐5の端部が前立腺チップ10側に押し戻される場合があっても、摩擦により、連結穴23,33内で穴の延在方向に連結紐5が移動し難く、連結紐5が連結穴23,33から飛び出したり、容易に外れたりすることもない。
【0042】
また、連結紐5が連結穴23,33から飛び出すと、連結紐5が尿道内の壁面に接触して使用者が痛みを感じたり、連結紐5同士や連結紐5と前立腺チップ10の一部と絡んだりしてしまうおそれがあるが、本実施形態によれば、そのようなケースの発生を防ぐこともできる。
【0043】
また、チップの穴等に直接紐を結び付けた場合には、紐が外れてしまったり、結び目がチップ表面に露出してしまって使用者が痛みを感じたりするおそれがあるが、本実施形態であれば、そのようなケースの発生も防ぐことができる。
【0044】
以上、第一実施形態について詳細に説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、尿道留置具1を構成する部材の形状やサイズ、素材等は適宜変更可能である。前立腺チップ10は、平板状ではなく、丸棒形状等であっても良い。
【0045】
また、上記実施形態では、連結穴23,33において、略180°の折返し部24,34と略90°の折曲げ部26,36とを設置し、合計略270°連結穴23,33を曲げているが、連結紐5と連結穴23,33の内壁面との接触面積を大きくし、摩擦力を大きくすることができれば、適宜他の曲げ構造を採用することができる。
【0046】
例えば、略90°の折曲げを3回組み合わせるようにしても良いし、150°の折返しと90°の折曲げを組み合わせても良い。但し、連結紐5と連結穴23,33との接触面積をある程度確保して摩擦力を得るためには、複数回折り曲げると共に、合計で220°以上連結穴23,33を曲げる構造とすることが望ましい。また、さらに望ましくは、連結穴23,33は、150°以上折り返す折返し部を備えることが望ましい。
【0047】
また、上記実施形態では、第一糸連結穴部21と第二糸連結穴部31とを面対称の形状としたが、もちろん、対称でない形状であっても良い。
【0048】
また、上記実施形態では、尿道内に留置される細棒形状の尿道留置チップとして、前立腺の部分に設置される前立腺チップ10を例に挙げて説明したが、尿道内に設置されるチップであれば、適宜他の場所に留置されるチップにも本発明を適用することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、連結紐5の途中に、穴入口23a,33aよりも大きなサイズである結び目6を形成することで、連結紐5が穴出口23b,33b側から引っ張られて移動するのを防止しているが、穴入口23a,33aを通過できない大きさの径大部であれば、結び目6以外の構成を採用することができる。
【0050】
例えば、穴入口23a,33aよりも大きな径大部としては、連結紐5の糸自体を太く加工したもの、連結紐5に球形の生体適合性樹脂部材を固定したもの等を採用することができる。また、結び目6自体も、止め結びに限らず、二重結びや八の字結び等、他の結び方の結び目6あっても良い。
【0051】
(第二実施形態)
続いて、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る尿道留置具2は、糸連結部65の構造が第一実施形態と異なる点を特徴とするため、異なる構造について詳細に説明し、第一実施形態と同様の構成については、同じ部材名を付し、説明を省略する。
【0052】
尿道留置具2は、前立腺チップ60と、連結紐5とを備える。前立腺チップ60には、偏平突起部61が形成され、根元側に設置された偏平突起部61の部分に糸連結部65が形成されている。
【0053】
糸連結部65は、第一連結穴73を有する第一糸連結穴部71と、第二連結穴83を有する第二糸連結穴81と、押出用穴90とを備えている。第一連結穴73は、穴入口73a、穴出口73b、第一折返し部74及び折曲げ横洞穴75が形成された第一折曲げ部76を備える。第二連結穴83は、穴入口83a、穴出口83b、第二折返し部84及び折曲げ横洞穴85が形成された第二折曲げ部86を備える。
【0054】
また、第一実施形態と同様に、第一糸連結穴部71は、第一面側の穴入口73aの周囲に形成された第一入口開口凹部77と、第二面側の第一折返し部74付近に形成された第一折返し開口凹部78を備え、第二糸連結穴部81は、第一面側の穴入口83aの周囲に形成された第二入口開口凹部87と、第二面側の第二折返し部84付近に形成された第二折返し開口凹部88を備える。
【0055】
上記第一実施形態では、連結穴23,33の折返し部24,34がチップ幅方向に進みながら折り返していたが、第二実施形態では、連結穴73,83の折返し部74,84が押出用穴90を中心として円弧方向に進みながら折り返していることを特徴とする。
【0056】
第一面側の入口開口凹部77,87に関して、穴入口73a、押出用穴90及び穴入口83aは、チップ長手方向に一列に列んでいる。折返し部74,84は、第一面側から見て、円弧方向時計回りに45°程度延在しており、その先に位置する折曲げ部76,86は、押出用穴90を挟んでチップ幅方向に一例に列んでいる。
【0057】
本実施形態においても上記第一実施形態と同様の作用効果を奏し、さらに、折返し部74,84が円弧状に延在している第二実施形態によれば、チップ幅方向のサイズを小さくすることができる。
【0058】
尿道内に設置される前立腺チップ60は、チップ幅が大きくなると、尿道内に挿入できなくなったり、挿入に手間がかかったりする場合もあるため、チップ幅を小さく出来るメリットは大きい。
【0059】
以上、第二実施形態について説明したが、本実施形態においても、上記第一実施形態と同様に種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 尿道留置具
5 連結紐
6 結び目
7 引張紐
10 前立腺チップ
11 偏平突起部
15 糸連結部
21 第一糸連結穴部
23 第一連結穴
23a 穴入口
23b 穴出口
24 第一折返し部
25 折返し横洞穴
26 第一折曲げ部
27 第一入口開口凹部
28 第一折返し開口凹部
31 第二糸連結穴部
33 第二連結穴
33a 穴入口
33b 穴出口
34 第二折返し部
35 折返し横洞穴
36 第二折曲げ部
37 第二入口開口凹部
38 第二折返し開口凹部
40 押出用穴
2 尿道留置具
5 連結紐
6 結び目
60 前立腺チップ
61 偏平突起部
65 糸連結部
71 第一糸連結穴部
73 第一連結穴
73a 穴入口
73b 穴出口
74 第一折返し部
76 第一折曲げ部
75 折曲げ横洞穴
77 第一入口開口凹部
78 第一折返し開口凹部
81 第二糸連結穴部
83 第二連結穴
83a 穴入口
83b 穴出口
84 第二折返し部
86 第二折曲げ部
85 折曲げ横洞穴
87 第二入口開口凹部
88 第二折返し開口凹部
90 押出用穴
A 膀胱
B 前立腺部尿道
C 球部尿道
D 振子部尿道
E 外尿道口
J 内尿道括約筋
K 外尿道括約筋
L 射精管