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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187513
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3232 20160101AFI20221213BHJP
   F16J 15/3236 20160101ALI20221213BHJP
【FI】
F16J15/3232 101
F16J15/3236
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095525
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】須川 一太
【テーマコード(参考)】
3J006
【Fターム(参考)】
3J006AB02
3J006AE15
3J006AE41
3J006CA01
(57)【要約】
【課題】シール部材の反転を抑制してシール性能を向上させる。
【解決手段】シール部材としての第1セカンダリカップシール4bは、環状で矩形断面の基部11と、基部11の上面から第1セカンダリカップシール4b径方向の外側に向かって傾いて突出形成されたアウタリップ12と、基部11の上面から第1セカンダリカップシール4b径方向の内側に向かって傾いて突出形成されたインナリップ13と、を有している。基部11の内周面11aには、複数の円形の第1凹部14が形成されている。インナリップ13の内周面13aには、複数の第2凹部15が形成されている。第1セカンダリカップシール4bは、プライマリピストンとの接触面積を低減することができ、プライマリピストンの動きに引きずられて反転することを抑制することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンとシリンダとの間をシールする環状のシール部材において、
上記シリンダに取り付けられる環状の基部と、上記基部の外周縁から突出して上記シリンダに接触するアウタリップと、上記基部の内周縁から突出して上記ピストンに接触するインナリップと、を有し、
上記基部の内周面には、複数の第1凹部が形成されていることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
上記インナリップの根元側の内周面には、複数の第2凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
上記第1凹部及び上記第2凹部には、グリスが保持されていることを特徴とする請求項2に記載のシール部材。
【請求項4】
自身の軸方向に沿って細長い断面形状となるように、シール部材軸方向に沿った寸法がシール部材径方向に沿った寸法よりも大きくなるよう形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、シリンダに形成された溝に収容されたシール部材により、シリンダと当該シリンダに往復動可能に収容されたピストンとの間をシールする構造が開示されている。
【0003】
この特許文献1においては、シール部材の反転を防止するために、ピストンに接触する内側のリップの先端に突出部を設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-210906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、突出部によるシール部材の姿勢保持は確実ではなく、内側のリップの剛性不足により内側リップが変形すると、シール部材が反転(180度回転)する虞がある。
【0006】
つまり、シール部材の反転(180度回転)を防止するためには、更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシール部材は、ピストンとシリンダとの間をシールする環状のシール部材であって、上記シリンダに取り付けられる環状の基部と、上記基部の外周縁から突出して上記シリンダに接触するアウタリップと、上記基部の内周縁から突出して上記ピストンに接触するインナリップと、を有し、上記基部の内周面には、複数の第1凹部が形成されていることを特徴としている。
【0008】
シール部材は、上記インナリップの根元側の内周面に複数の第2凹部が形成されていてもよい。
【0009】
シール部材は、上記第1凹部及び上記第2凹部にグリスが保持されていてもよい。
【0010】
またシール部材は、自身の軸方向に沿って細長い断面形状となるように、シール部材軸方向に沿った寸法がシール部材径方向に沿った寸法よりも大きくなるよう形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシール部材は、複数の第1凹部を形成したことによりピストンとの接触面積を低減することができ、ピストンの動きに引きずられて反転することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るシール部材が適用されたマスタシリンダの要部の概略構成を示す説明図。
図2】本発明の第1実施例におけるシール部材の斜視図。
図3】本発明の第1実施例におけるシール部材を模式的に示した説明図。
図4】比較例のシール部材を模式的に示した説明図。
図5】比較例のシール部材の挙動を時系列に並べて示した説明図。
図6】本発明のその他の例におけるシール部材の断面図。
図7】本発明の第2実施例におけるシール部材を模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るシール部材が適用されたマスタシリンダ1の要部の概略構成を模式的に示した説明図である。換言すると、図1は、本発明の第1実施例のシール部材としての第1セカンダリカップシール4bが適用されたマスタシリンダ1の要部の断面を模式的に示した説明図である。
【0015】
マスタシリンダ1は、例えば液圧を利用して制動力を発生させる液圧式ブレーキに用いられる。マスタシリンダ1は、有底筒状のシリンダボディ2と、シリンダボディ2の内周面2aに直列に挿入される円柱形状のピストン3(3a、3b)と、ピストン3とシリンダボディ2の内周面2aとの間をシールする環状のカップシール4(4a、4b、4c、4d)と、を有している。プライマリピストン3aは、ブレーキペダルの踏み込み時に図示外のプッシュロッド等からの力を受けて図1の左方向に押し出される。
【0016】
プライマリピストン3aとセカンダリピストン3bとの間には、第1液圧室5が形成されている。シリンダボディ2の内側底面2bとセカンダリピストン3bの間には第2液圧室6が形成されている。これらの第1、第2液圧室5、6はスプリング収容部を兼ねている。第1液圧室5には、圧縮コイルスプリングである第1リターンスプリング7が収容されている。第2液圧室6には、第2リターンスプリング8が収容されている。プライマリピストン3aは、第1リターンスプリング7によって図1の右方向に付勢されている。セカンダリピストン3bは、第2リターンスプリング8によって図1の右方向に付勢されている。
【0017】
マスタシリンダ1は、例えば2系統のブレーキ系統を操作する場合、第1液圧室5が図示外の出力ポートを介して一方のブレーキ系統のホイールシリンダに接続され、第2液圧室6が図示外の出力ポートを介して他方のブレーキ系統のホイールシリンダに接続される。
【0018】
シリンダボディ2の内周面2aには、図示せぬ第1補給孔及び第2補給孔がそれぞれ開口形成されている。これらの第1、第2補給孔は、図示外のリザーバタンクに連通可能となっている。マスタシリンダ1は、図1の状態から各ピストン3a、3bが後退したブレーキの非制動状態、すなわち各ピストン3a、3bが後退限位置にある状態で、第1補給孔が第1液圧室5に連通し、第2補給孔が第2液圧室6にそれぞれ連通するように設定されている。
【0019】
マスタシリンダ1は、ブレーキペダルの踏み込み操作により、第1、第2リターンスプリング7、8の付勢力に対抗してプライマリピストン3aが図1の左方向に押し出されると、第1液圧室5が密閉空間となって内部圧力が上昇する。マスタシリンダ1は、第1液圧室5の内部圧力が上昇すると、一方のブレーキ系統に制動力を発生させる。
【0020】
マスタシリンダ1は、ブレーキペダルの踏み込み操作により、第2リターンスプリング8の付勢力に対抗してセカンダリピストン3bが図1の左方向に押し出されると、第2液圧室6が密閉空間となって内部圧力が上昇する。マスタシリンダ1は、第2液圧室6の内部圧力が上昇すると、他方のブレーキ系統に制動力を発生させる。
【0021】
マスタシリンダ1は、ブレーキペダルの踏み込みが解除されると、制動状態から非制動状態へと復帰するべく、プライマリピストン3a及びセカンダリピストン3bが第1、第2リターンスプリング7、8のばね力により図1の右方向に移動する。
【0022】
シリンダボディ2は、内周面2aにカップシール4が収容される溝部9が複数形成されている。溝部9は、シリンダボディ2の内周面2a周方向に沿って連続する無端の溝であって、例えばシリンダボディ2軸方向(シリンダ軸方向)に沿った長さがカップシール4の長さ(カップシール4のカップシール4軸方向長さ)よりも長くなるよう形成されている。
【0023】
溝部9は、シリンダボディ2径方向(シリンダ径方向)に沿った互いに対向する一対の側壁面9aと、これら側壁面9aに挟まれてシリンダボディ2軸方向に沿った底壁面9bと、を有している。
【0024】
シリンダボディ2の内周面2aとプライマリピストン3aの外周面との間は、第1プライマリカップシール4aとシール部材としての第1セカンダリカップシール4bとによってシールされている。シリンダボディ2の内周面2aとセカンダリピストン3bの外周面との間は、第2プライマリカップシール4cと第2セカンダリカップシール4dとによってシールされている。
【0025】
第1プライマリカップシール4aが収容される溝部9と第1セカンダリカップシール4bが収容される溝部9との間には、上述した第1補給孔が形成されている。第2プライマリカップシール4cが収容される溝部9と第2セカンダリカップシール4dが収容される溝部9との間には、上述した第2補給孔が形成されている。
【0026】
第1液圧室5と第2液圧室6は、これらカップシール4a~4dのシール機能により隔離形成され、両者の独立性が確保されている。これらカップシール4a~4dは、断面U字形状を呈し、例えばEPDM等のソリッドゴムからなっている。
【0027】
カップシール4a~4dは、シリンダボディ2の溝部9に取り付けられて内周側がピストン3の外周面に対して摺動するいわゆる内径摺動タイプである。
【0028】
第1プライマリカップシール4a及び第1セカンダリカップシール4bは、U字の開口が第1液圧室5側を向いた状態で溝部9に取り付けられている。第2プライマリカップシール4cは、U字の開口が第2液圧室6側を向いた状態で溝部9に取り付けられている。第2セカンダリカップシール4dは、U字の開口がシリンダボディ2のシリンダ開口側を向いた状態で溝部9に取り付けられている。
【0029】
第1プライマリカップシール4a、第2プライマリカップシール4c及び第2セカンダリカップシール4dは、マスタシリンダ1の構成上、常に液中にあるため、ピストン3の移動に伴う摩擦力が作用しにくく、溝部9内で反転する虞がない。一方、第1セカンダリカップシール4bは、マスタシリンダ1の構成上、シリンダボディ2のシリンダ開口側が大気に接しているため、プライマリピストン3aの移動に伴う摩擦力が作用した際に、溝部9内で反転する虞がある。
【0030】
図2及び図3は、本発明の第1実施例におけるシール部材を示している。すなわち、図2は、第1実施例における第1セカンダリカップシール4bの斜視図である。図3は、第1実施例における第1セカンダリカップシール4bを模式的に示した説明図である。
【0031】
第1セカンダリカップシール4bは、シリンダボディ2内部を外気(大気)からシールするものである。第1セカンダリカップシール4bは、環状で矩形断面の基部11と、基部11の上面から第1セカンダリカップシール4b径方向の外側に向かって傾いて突出形成されたアウタリップ12と、基部11の上面から第1セカンダリカップシール4b径方向の内側に向かって傾いて突出形成されたインナリップ13と、を有している。
【0032】
第1セカンダリカップシール4bは、シリンダボディ2軸方向に沿って細長い断面形状となるように、シリンダボディ2軸方向に沿った寸法がシリンダボディ2径方向に沿った寸法よりも大きくなるよう形成されている。換言すると、第1セカンダリカップシール4bは、第1セカンダリカップシール4b軸方向(シール部材軸方向)に沿った寸法が第1セカンダリカップシール4b径方向(シール部材径方向)に沿った寸法よりも、大きくなるよう形成されている。第1セカンダリカップシール4b軸方向は、所期の収容状態で第1セカンダリカップシール4bがシリンダボディ2の溝部9に収容されていれば、シリンダボディ2軸方向と一致する。第1セカンダリカップシール4b径方向は、所期の収容状態で第1セカンダリカップシール4bがシリンダボディ2の溝部9に収容されていれば、シリンダボディ2径方向と一致する。
【0033】
基部11は、第1セカンダリカップシール4b軸方向に沿った厚みが比較的厚肉となるよう形成されている。基部11の内周面11aには、複数の円形の第1凹部14が形成されている。詳述すると、複数の第1凹部14は、基部11の内周面11aの全周に、第1セカンダリカップシール4b周方向に沿って並んで形成されている。なお、図4中の符号11bは、基部11の底面である。
【0034】
アウタリップ12は、基部11の外周縁から突出して第1セカンダリカップシール4b外周側がシリンダボディ2の内周面2aに形成された溝部9の底壁面9bに接触する。
【0035】
インナリップ13は、基部11の内周縁から突出してカップシール4内周側の内周面13aがプライマリピストン3aの外周面に摺動可能に接触する。インナリップ13の内周面13aには、複数の第2凹部15が形成されている。複数の第2凹部15は、例えば基部11に隣接するインナリップ13の根元側に形成されている。複数の第2凹部15は、インナリップ13の内周面13aの全周に、第1セカンダリカップシール4b周方向に沿って並んで形成されている。
【0036】
第1セカンダリカップシール4bは、溝部9に組み付ける際に、プライマリピストン3aとの摺動性を向上させる目的で、基部11の内周面11aやインナリップ13の内周面13aにグリスが塗布される。そのため、第1凹部14及び第2凹部15は、組み付け時、グリスが保持(充填)された状態となる。
【0037】
なお、第1プライマリカップシール4a、第2プライマリカップシール4c及び第2セカンダリカップシール4dは、第1セカンダリカップシール4bと略同一構成となっているが、基部11の内周面11aや、インナリップ13の内周面13aに第1凹部14、第2凹部15に相当する凹部が形成されておらず、後述する比較例のカップシール21により近い構成となっている。
【0038】
図4は、比較例のシール部材であるカップシール21を模式的に示した説明図である。なお、説明の便宜上、上述した第1実施例のカップシール4と同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。比較例のカップシール21は、上述した第1実施例の第1セカンダリカップシール4bと略同一構成となっているが、基部11の内周面11aやインナリップ13の内周面13aに、第1実施例の第1凹部14及び第2凹部15に相当する凹部が形成されていない。そのため、比較例のカップシール21は、第1実施例の第1セカンダリカップシール4bに比べて、グリスの保持性能が低くなり、ピストン3に対する摩擦抵抗が大きくなる。また、比較例のカップシール21は、第1実施例の第1セカンダリカップシール4bに比べて、ピストン3に対する接触面積が広くなり、摺動抵抗が高くなる。
【0039】
図5は、比較例のシール部材であるカップシール21の挙動を時系列に並べて示した説明図である。詳述すると、図5は、比較例のカップシール21を大気に接する状態で溝部9に配置した際に、当該カップシール21が溝部9内で反転する様子を時系列に並べて示した説明図である。図5における時系列は、時間が早いものから図5の(a)、図5の(b)、図5の(c)、図5の(d)の順である。
【0040】
図5の(a)は、ピストン3が静止している状態を示している。図5の(b)は、ピストン3が動き出してカップシール21が図5の左方向に引きずられた状態を示している。図5の(c)は、ピストン3がさらに動いてカップシール21が基部11の底面11bの内周縁を回転中心として回転し始めた状態を示している。図5の(d)は、カップシール21が溝部9内で反転した状態を示している。
【0041】
比較例のカップシール21は、図5に示すように、ピストン3の移動に伴う摩擦力が作用した結果、溝部9内でまくれ上がり、基部11の底面11bの内周縁を回転中心として溝部9内で反転(回転)し、シール性能が悪化する虞がある。
【0042】
一方、上述した第1実施例の第1セカンダリカップシール4bは、プライマリピストン3aと対向する内周面に第1凹部14及び第2凹部15が形成されている。
【0043】
そのため、第1実施例の第1セカンダリカップシール4bは、プライマリピストン3aとの接触面積を低減することができ、シリンダボディ2内をプライマリピストン3aが摺動した際に、プライマリピストン3aの動きに引きずられて反転することを抑制することができる。
【0044】
また、第1実施例の第1セカンダリカップシール4bは、第1凹部14及び第2凹部15にグリスが保持されているので、ピストン3をシリンダボディ2に組み付ける(挿入する)際の抵抗を低減できるとともに、ピストン3に対する摩擦抵抗低減によりピストン3の動きに追従しにくくなって溝部9内での反転を一層抑制することができる。
【0045】
また、第1実施例の第1セカンダリカップシール4bは、シリンダボディ2軸方向に沿って細長い断面形状となるように形成されている。換言すれば、第1実施例の第1セカンダリカップシール4bは、第1セカンダリカップシール4b軸方向に沿って細長い断面形状となるように形成されている。
【0046】
そのため、第1実施例の第1セカンダリカップシール4bは、シリンダボディ2内をピストン3が摺動した際に、プライマリピストン3aの動きに引きずられて反転しにくくなっている。
【0047】
シリンダボディ2軸方向に沿って細長い断面形状となるよう形成された第1セカンダリカップシール4bは、基部11の底面11bを含む平面からアウタリップ12のシールポイントまでの距離であるシール高さがリップ幅よりも長くなる。換言すれば、第1セカンダリカップシール4b軸方向に沿って細長い断面形状となるよう形成された第1セカンダリカップシール4bは、基部11の底面11bを含む平面からアウタリップ12のシールポイントまでの距離であるシール高さがリップ幅よりも長くなる。
【0048】
第1セカンダリカップシール4bは、シールポイントまでの高さ(シール高さ)がリップ幅に比べて長くなるほど反転しようとする際に溝部9の底壁面9bからの垂直抗力が大きくなる。つまり、第1セカンダリカップシール4bは、シールポイントまでの高さ(シール高さ)がリップ幅に比べて長くなるほど溝部9で反転しにくくなる。
【0049】
従って、第1セカンダリカップシール4bは、例えば図6に示す第1セカンダリカップシール31のように、シールポイントまでの高さ(シール高さ)がリップ幅に比べて第1実施例のカップシール4よりも長くなるよう、シリンダボディ2軸方向に沿って一層細長い断面形状に形成してもよい。
【0050】
以下、本発明の他の実施例について説明するが、上述した第1実施例と同一の構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0051】
図7を用いて本発明の第2実施例を説明する。図7は、本発明の第2実施例におけるシール部材である第1セカンダリカップシール41を模式的に示した説明図である。
【0052】
第2実施例の第1セカンダリカップシール41は、上述した第1実施例の第1セカンダリカップシール4bと略同一構成となっているが、第1凹部14及び第2凹部15が楕円形となっている。
【0053】
第1凹部14及び第2凹部15は、長軸が第1セカンダリカップシール41周方向と平行となり、短軸が第1セカンダリカップシール41軸方向と平行となるよう形成されている。
【0054】
このような第2実施例の第1セカンダリカップシール41は、上述した第1実施例の第1セカンダリカップシール4bと略同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した各実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0056】
例えば、第1凹部14及び第2凹部15の形状は、円形及び楕円形以外の形状とすることも可能である。
【0057】
また、第2凹部15は、所期のシール性能を確保できる範囲内であれば、インナリップ13の根元側に加えてそれ以外の部分(インナリップ13の根元側以外の内周面13a)にも形成してよい。
【符号の説明】
【0058】
1…マスタシリンダ
2…シリンダボディ
2a…内周面
2b…内側底面
3…ピストン
3a…プライマリピストン
3b…セカンダリピストン
4b…第1セカンダリカップシール
5…第1液圧室
6…第2液圧室
7…第1リターンスプリング
8…第2リターンスプリング
9…溝部
9a…側壁面
9b…底壁面
11…基部
11a…内周面
11b…底面
12…アウタリップ
13…インナリップ
13a…内周面
14…第1凹部
15…第2凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7