(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187517
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】移動式クレーンの下部走行体
(51)【国際特許分類】
B66C 23/78 20060101AFI20221213BHJP
B66C 23/62 20060101ALI20221213BHJP
B66C 23/26 20060101ALI20221213BHJP
B62D 55/10 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B66C23/78 A
B66C23/62
B66C23/26 C
B62D55/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095530
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】百濟 和文
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA07
3F205JA05
(57)【要約】
【課題】下部走行体よりも前側又は後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときにクローラフレームに生じるたわみ及び下部フレームに生じるたわみを小さくすることが可能な移動式クレーンの下部走行体を提供する。
【解決手段】移動式クレーンの下部走行体101において、右前荷重伝達部21Rは、右フレーム本体20Rのうち旋回中心軸Cよりも右側で且つ前側の部位である右前部位201において右フレーム本体20Rにつながり、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに下部フレーム1が上部旋回体Cから受ける前側荷重を下部フレーム1の右前対向面S1から受けることが可能な右前受面S12を有し、平面視において旋回中心軸Cと右前端ローラ261とを通る右前直線LAに沿って右前受面S11から右前部位201まで連続する部分である右前連続部分C1を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式クレーンの下部走行体であって、
前記移動式クレーンの上部旋回体を旋回中心軸の周りに旋回可能に支持する下部フレームと、
前記旋回中心軸よりも右側において前後方向に延びる右フレーム本体と右前荷重伝達部と右後荷重伝達部とを含む右クローラフレームと、
前記旋回中心軸よりも左側において前記前後方向に延びる左フレーム本体と左前荷重伝達部と左後荷重伝達部とを含む左クローラフレームと、
前記右フレーム本体の前端部と後端部の間で前記前後方向に間隔をおいて配置されて前記右フレーム本体の下部に回転可能に支持される複数の右ローラであって、最も前に位置する右前端ローラと最も後に位置する右後端ローラとを含む複数の右ローラと、
前記左フレーム本体の前端部と後端部の間で前記前後方向に間隔をおいて配置されて前記左フレーム本体の下部に回転可能に支持される複数の左ローラであって、最も前に位置する左前端ローラと最も後に位置する左後端ローラとを含む複数の左ローラと、を備え、
前記下部フレームは、前記右前荷重伝達部に対向する右前対向面を有し当該右前荷重伝達部に接続される右前接続部と、前記右後荷重伝達部に対向する右後対向面を有し当該右後荷重伝達部に接続される右後接続部と、前記左前荷重伝達部に対向する左前対向面を有し当該左前荷重伝達部に接続される左前接続部と、前記左後荷重伝達部に対向する左後対向面を有し当該左後荷重伝達部に接続される左後接続部と、を含み、
前記右前荷重伝達部は、前記右フレーム本体のうち前記旋回中心軸よりも右側で且つ前側の部位である右前部位において前記右フレーム本体につながり、前記下部走行体よりも前側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記下部フレームが前記上部旋回体から受ける荷重である前側荷重を前記下部フレームの前記右前対向面から受けることが可能な右前受面を有し、平面視において前記旋回中心軸と前記右前端ローラとを通る直線である右前直線に沿って前記右前受面から前記右前部位まで連続する部分である右前連続部分を有し、
前記右後荷重伝達部は、前記右フレーム本体のうち前記旋回中心軸よりも右側で且つ後側の部位である右後部位において前記右フレーム本体につながり、前記下部走行体よりも後側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記下部フレームが前記上部旋回体から受ける荷重である後側荷重を前記下部フレームの前記右後対向面から受けることが可能な右後受面を有し、平面視において前記旋回中心軸と前記右後端ローラとを通る直線である右後直線に沿って前記右後受面から前記右後部位まで連続する部分である右後連続部分を有し、
前記左前荷重伝達部は、前記左フレーム本体のうち前記旋回中心軸よりも左側で且つ前側の部位である左前部位において前記左フレーム本体につながり、前記前側荷重を前記下部フレームの前記左前対向面から受けることが可能な左前受面を有し、平面視において前記旋回中心軸と前記左前端ローラとを通る直線である左前直線に沿って前記左前受面から前記左前部位まで連続する部分である左前連続部分を有し、
前記左後荷重伝達部は、前記左フレーム本体のうち前記旋回中心軸よりも左側で且つ後側の部位である左後部位において前記左フレーム本体につながり、前記後側荷重を前記下部フレームの前記左後対向面から受けることが可能な左後受面を有し、平面視において前記旋回中心軸と前記左後端ローラとを通る直線である左後直線に沿って前記左後受面から前記左後部位まで連続する部分である左後連続部分を有する、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前荷重伝達部は、前記下部フレームの前記右前接続部が着脱可能に接続される右前被接続部を含み、
前記右後荷重伝達部は、前記下部フレームの前記右後接続部が着脱可能に接続される右後被接続部を含む、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項3】
請求項2に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記左前荷重伝達部は、前記下部フレームの前記左前接続部が着脱可能に接続される左前被接続部を含み、
前記左後荷重伝達部は、前記下部フレームの前記左後接続部が着脱可能に接続される左後被接続部を含む、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項4】
請求項3に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右フレーム本体の前記前端部及び前記後端部にそれぞれ回転可能に支持される一対の右ホイールと、
前記左フレーム本体の前記前端部及び前記後端部にそれぞれ回転可能に支持される一対の左ホイールと、
前記一対の右ホイールに環状に架けられて周回移動可能な右クローラベルトと、
前記一対の左ホイールに環状に架けられて周回移動可能な左クローラベルトと、をさらに備え、
前記右前荷重伝達部及び前記右後荷重伝達部は、前記右前被接続部及び前記右後被接続部が平面視において前記右クローラベルトよりも左側に位置するように前記右フレーム本体の前記右前部位及び前記右後部位から左側にそれぞれ突出する形状を有し、
前記左前荷重伝達部及び前記左後荷重伝達部は、前記左前被接続部及び前記左後被接続部が平面視において前記左クローラベルトよりも右側に位置するように前記左フレーム本体の前記左前部位及び前記左後部位から右側にそれぞれ突出する形状を有する、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記下部フレームの前記右前接続部は、右前接続部本体と、右前接続ピンと、を含み、当該右前接続ピンは、前記右前接続部本体と、前記右前荷重伝達部の前記右前被接続部とを接続し、
前記下部フレームの前記左前接続部は、左前接続部本体と、左前接続ピンと、を含み、当該左前接続ピンは、前記左前接続部本体と、前記左前荷重伝達部の前記左前被接続部とを接続し、
前記右前接続ピン及び前記左前接続ピンは、前記下部走行体よりも前側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記右前対向面と前記右前受面とが接するとともに前記左前対向面と前記左前受面とが接するように、前記右前被接続部が前記右前接続部本体に対して前記右前接続ピンの周りに相対的に回動することを許容するとともに前記左前被接続部が前記左前接続部本体に対して前記左前接続ピンの周りに相対的に回動することを許容する、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項6】
請求項5に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記下部フレームの前記右後接続部は、右後接続部本体と、右後接続ピンと、を含み、当該右後接続ピンは、前記右後接続部本体と、前記右後荷重伝達部の前記右後被接続部とを接続し、
前記下部フレームの前記左後接続部は、左後接続部本体と、左後接続ピンと、を含み、当該左後接続ピンは、前記左後接続部と、前記左後荷重伝達部の前記左後被接続部とを接続し、
前記右後接続ピン及び前記左後接続ピンは、前記下部走行体よりも後側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記右後対向面と前記右後受面とが接するとともに前記左後対向面と前記左後受面とが接するように、前記右後被接続部が前記右後接続部本体に対して前記右後接続ピンの周りに相対的に回動することを許容するとともに前記左後被接続部が前記左後接続部本体に対して前記左後接続ピンの周りに相対的に回動することを許容する、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項7】
請求項6に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前接続ピン及び前記右後接続ピンのそれぞれは、その中心軸が前記前後方向に向く姿勢で配置され、
前記右前対向面及び前記右前受面は、互いに左右方向に対向する面であり、
前記右後対向面及び前記右後受面は、互いに前記左右方向に対向する面である、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項8】
請求項7に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記左前接続ピン及び前記左後接続ピンのそれぞれは、その中心軸が前記前後方向に向く姿勢で配置され、
前記左前対向面及び前記左前受面は、互いに前記左右方向に対向する面であり、
前記左後対向面及び前記左後受面は、互いに前記左右方向に対向する面である、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項9】
請求項6に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前対向面は、右斜め前に向く面であり、前記右前受面は、当該右前対向面に沿う形状を有する面であり、
前記右前接続ピンは、その中心軸が前記右前対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、
前記左前対向面は、左斜め前に向く面であり、前記左前受面は、当該左前対向面に沿う形状を有する面であり、
前記左前接続ピンは、その中心軸が前記左前対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項10】
請求項9に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右後対向面は、右斜め後に向く面であり、前記右後受面は、当該右後対向面に沿う形状を有する面であり、
前記右後接続ピンは、その中心軸が前記右後対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、
前記左後対向面は、左斜め後に向く面であり、前記左後受面は、当該左後対向面に沿う形状を有する面であり、
前記左後接続ピンは、その中心軸が前記左後対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項11】
請求項1~6の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前対向面は、右斜め前に向く面であり、前記右前受面は、当該右前対向面に沿う形状を有する面であり、
前記左前対向面は、左斜め前に向く面であり、前記左前受面は、当該左前対向面に沿う形状を有する面である、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項12】
請求項11に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右後対向面は、右斜め後に向く面であり、前記右後受面は、当該右後対向面に沿う形状を有する面であり、
前記左後対向面は、左斜め後に向く面であり、前記左後受面は、当該左後対向面に沿う形状を有する面である、移動式クレーンの下部走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンの下部走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動式クレーンが知られている(例えば特許文献1,2)。この移動式クレーンは、地上を走行可能な下部走行体と、この下部走行体に搭載される上部旋回体と、を備える。上部旋回体は、ブーム及び吊りロープを含む作業装置を備える。下部走行体は、下部フレームと、下部フレームの右側及び左側のそれぞれにおいて前後方向に延びて下部フレームを支持する左右一対のクローラフレームと、を備える。下部フレームは、上部旋回体を旋回中心軸の周りに旋回可能に支持するカーボディと、このカーボディから右側及び左側にそれぞれ延びる前側アクスルと、この前側アクスルよりも後側においてカーボディから右側及び左側にそれぞれ延びる後側アクスルと、を含む。
【0003】
各クローラフレームは前側アクスル及び後側アクスルを支持する一対のアクスル支持部を有する。これら一対のアクスル支持部は、通常、各クローラフレームの長手方向(前後方向)の中央付近に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-70339号公報
【特許文献2】特開2017-171090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、移動式クレーンによる吊り上げ作業が行われるときには、上部旋回体及び吊り荷の荷重は、前側アクスル及び後側アクスルを介して各クローラフレームの前記一対のアクスル支持部に伝達される。このため、前記荷重に起因して各クローラフレームにはたわみが生じる。特に、吊り荷が旋回中心軸に対して前後方向に吊るされる場合には、吊り荷が旋回中心軸に対して左右方向に吊るされる場合に比べて、前記荷重が各クローラフレームの前側又は後側に偏りやすいため、前記たわみが大きくなりやすい。具体的には、例えば、下部走行体よりも前側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときには、各クローラフレームの下部に設けられる複数のローラのうちの最も前のローラである前端ローラが移動式クレーンの転倒支点となる。この場合、前側アクスルから各クローラフレームに前記荷重が伝達される部位であるアクスル支持部と前記転倒支点とは前後方向に比較的大きく離れているので、アクスル支持部と前記転倒支点との間の部分に大きなたわみが生じやすい。また、特許文献1の移動式クレーンのようにカーボディの前後において左右方向に平行に延びる前側アクスル及び後側アクスルが左右のクローラフレームを連結する構造(平面視においてH形状を有する構造)では、下部走行体よりも前側又は後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに、前側アクスル又は後側アクスルにたわみ及びねじり変形が生じやすく、それに伴ってカーボディにもたわみが生じやすい。
【0006】
上記のように吊り荷の方向に起因して前記たわみの大きさに差が生じると、吊り上げ作業の作業性が低下することがある。従って、下部走行体よりも前側又は後側において、前記作業装置の前記吊りロープを介して上部旋回体に吊り荷が吊るされたときにクローラフレームに生じるたわみ、カーボディを含む下部フレームに生じるたわみなどの変形を小さくすることが望まれる。
【0007】
特許文献2は、カーボディの前後の部分における剛性をそれぞれ向上させるために、カーボディの胴部内の前部及び後部に一対の補強部材をそれぞれ設ける技術を開示しているが、この特許文献2の移動式クレーンの一対の補強部材は、クローラフレームのたわみを抑制するものではない。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、下部走行体よりも前側又は後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときにクローラフレームに生じるたわみ、下部フレームに生じるたわみなどの変形を小さくすることが可能な移動式クレーンの下部走行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の移動式クレーンの下部走行体は、前記移動式クレーンの上部旋回体を旋回中心軸の周りに旋回可能に支持する下部フレームと、前記旋回中心軸よりも右側において前後方向に延びる右フレーム本体と右前荷重伝達部と右後荷重伝達部とを含む右クローラフレームと、前記旋回中心軸よりも左側において前記前後方向に延びる左フレーム本体と左前荷重伝達部と左後荷重伝達部とを含む左クローラフレームと、前記右フレーム本体の前端部と後端部の間で前記前後方向に間隔をおいて配置されて前記右フレーム本体の下部に回転可能に支持される複数の右ローラであって、最も前に位置する右前端ローラと最も後に位置する右後端ローラとを含む複数の右ローラと、前記左フレーム本体の前端部と後端部の間で前記前後方向に間隔をおいて配置されて前記左フレーム本体の下部に回転可能に支持される複数の左ローラであって、最も前に位置する左前端ローラと最も後に位置する左後端ローラとを含む複数の左ローラと、を備える。前記下部フレームは、前記右前荷重伝達部に対向する右前対向面を有し当該右前荷重伝達部に接続される右前接続部と、前記右後荷重伝達部に対向する右後対向面を有し当該右後荷重伝達部に接続される右後接続部と、前記左前荷重伝達部に対向する左前対向面を有し当該左前荷重伝達部に接続される左前接続部と、前記左後荷重伝達部に対向する左後対向面を有し当該左後荷重伝達部に接続される左後接続部と、を含む。前記右前荷重伝達部は、前記右フレーム本体のうち前記旋回中心軸よりも右側で且つ前側の部位である右前部位において前記右フレーム本体につながり、前記下部走行体よりも前側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記下部フレームが前記上部旋回体から受ける荷重である前側荷重を前記下部フレームの前記右前対向面から受けることが可能な右前受面を有し、平面視において前記旋回中心軸と前記右前端ローラとを通る直線である右前直線に沿って前記右前受面から前記右前部位まで連続する部分である右前連続部分を有する。前記右後荷重伝達部は、前記右フレーム本体のうち前記旋回中心軸よりも右側で且つ後側の部位である右後部位において前記右フレーム本体につながり、前記下部走行体よりも後側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記下部フレームが前記上部旋回体から受ける荷重である後側荷重を前記下部フレームの前記右後対向面から受けることが可能な右後受面を有し、平面視において前記旋回中心軸と前記右後端ローラとを通る直線である右後直線に沿って前記右後受面から前記右後部位まで連続する部分である右後連続部分を有する。前記左前荷重伝達部は、前記左フレーム本体のうち前記旋回中心軸よりも左側で且つ前側の部位である左前部位において前記左フレーム本体につながり、前記前側荷重を前記下部フレームの前記左前対向面から受けることが可能な左前受面を有し、平面視において前記旋回中心軸と前記左前端ローラとを通る直線である左前直線に沿って前記左前受面から前記左前部位まで連続する部分である左前連続部分を有する。前記左後荷重伝達部は、前記左フレーム本体のうち前記旋回中心軸よりも左側で且つ後側の部位である左後部位において前記左フレーム本体につながり、前記後側荷重を前記下部フレームの前記左後対向面から受けることが可能な左後受面を有し、平面視において前記旋回中心軸と前記左後端ローラとを通る直線である左後直線に沿って前記左後受面から前記左後部位まで連続する部分である左後連続部分を有する。
【0010】
この移動式クレーンの下部走行体では、右前荷重伝達部の右前連続部分は、平面視において右前受面から右フレーム本体の右前部位まで前記右前直線に沿って途切れることなく連続するので、下部フレームの右前対向面から右前荷重伝達部の右前受面が受ける前記前側荷重は、右前連続部分に沿って右フレーム本体の右前部位に直接的に伝達される。このことは、前記前側荷重が右フレーム本体の右前部位に効率よく伝達されることを可能にするとともに、下部走行体よりも前側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに移動式クレーンの転倒支点となる右前端ローラとそのときの前記前側荷重が右フレーム本体に伝達される部位との前後方向の距離を近づけることを可能にする。また、左前荷重伝達部の左前連続部分は、平面視において左前受面から左フレーム本体の左前部位まで前記左前直線に沿って途切れることなく連続するので、下部フレームの左前対向面から左前荷重伝達部の左前受面が受ける前記前側荷重は、左前連続部分に沿って左フレーム本体の左前部位に直接的に伝達される。このことは、前記前側荷重が左フレーム本体の左前部位に効率よく伝達されることを可能にするとともに、下部走行体よりも前側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに移動式クレーンの転倒支点となる左前端ローラとそのときの前記前側荷重が左フレーム本体に伝達される部位との前後方向の距離を近づけることを可能にする。従って、本発明の下部走行体では、下部走行体よりも前側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに、従来の下部走行体に比べて、右フレーム本体及び左フレーム本体に生じるたわみを小さくすることができる。また、前記前側荷重が右前連続部分及び左前連続部分に沿って右フレーム本体の右前部位及び左フレーム本体の左前部位に直接的に伝達される構造は、下部フレームに生じるたわみも小さくすることができる。また、下部走行体よりも後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときにも、上記と同様の理由から、右フレーム本体及び左フレーム本体に生じるたわみ及び下部フレームに生じるたわみを小さくすることができる。
【0011】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右前荷重伝達部は、前記下部フレームの前記右前接続部が着脱可能に接続される右前被接続部を含み、前記右後荷重伝達部は、前記下部フレームの前記右後接続部が着脱可能に接続される右後被接続部を含むことが好ましい。
【0012】
この態様では、下部走行体の輸送時には、下部フレームから右クローラフレームを取り外して、これらを別々に輸送することができる。これにより、各部品の左右方向の寸法を輸送制限内におさめやすくなる。
【0013】
また、前記左前荷重伝達部は、前記下部フレームの前記左前接続部が着脱可能に接続される左前被接続部を含み、前記左後荷重伝達部は、前記下部フレームの前記左後接続部が着脱可能に接続される左後被接続部を含むことがより好ましい。
【0014】
この態様では、下部走行体の輸送時には、下部フレームから右クローラフレーム及び左クローラフレームを取り外して、これらを別々に輸送することができる。これにより、各部品の左右方向の寸法を輸送制限内にさらにおさめやすくなる。
【0015】
前記移動式クレーンの下部走行体は、前記右フレーム本体の前記前端部及び前記後端部にそれぞれ回転可能に支持される一対の右ホイールと、前記左フレーム本体の前記前端部及び前記後端部にそれぞれ回転可能に支持される一対の左ホイールと、前記一対の右ホイールに環状に架けられて周回移動可能な右クローラベルトと、前記一対の左ホイールに環状に架けられて周回移動可能な左クローラベルトと、をさらに備え、前記右前荷重伝達部及び前記右後荷重伝達部は、前記右前被接続部及び前記右後被接続部が平面視において前記右クローラベルトよりも左側に位置するように前記右フレーム本体の前記右前部位及び前記右後部位から左側にそれぞれ突出する形状を有し、前記左前荷重伝達部及び前記左後荷重伝達部は、前記左前被接続部及び前記左後被接続部が平面視において前記左クローラベルトよりも右側に位置するように前記左フレーム本体の前記左前部位及び前記左後部位から右側にそれぞれ突出する形状を有することが好ましい。
【0016】
この態様では、作業者は、右クローラフレーム及び左クローラフレームを下部フレームに取り付ける取り付け作業を行うときに、右クローラベルトよりも左側に位置する右前被接続部及び右後被接続部に下部フレームの右前接続部及び右後接続部を接続し、左クローラベルトよりも右側に位置する左前被接続部及び左後被接続部に下部フレームの左前接続部及び左後接続部を接続すればよい。従って、前記取り付け作業において左右のクローラベルトが邪魔になりにくいので、取り付け作業が容易になる。また、この態様のように各荷重伝達部を左右方向(幅方向)の内側に比較的大きく突出させることにより、下部フレームの左右方向の寸法を小さくすることができる。これにより、下部フレームの左右方向の寸法を輸送制限内におさめやすくなる。
【0017】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記下部フレームの前記右前接続部は、右前接続部本体と、右前接続ピンと、を含み、当該右前接続ピンは、前記右前接続部本体と、前記右前荷重伝達部の前記右前被接続部とを接続し、前記下部フレームの前記左前接続部は、左前接続部本体と、左前接続ピンと、を含み、当該左前接続ピンは、前記左前接続部本体と、前記左前荷重伝達部の前記左前被接続部とを接続し、前記右前接続ピン及び前記左前接続ピンは、前記下部走行体よりも前側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記右前対向面と前記右前受面とが接するとともに前記左前対向面と前記左前受面とが接するように、前記右前被接続部が前記右前接続部本体に対して前記右前接続ピンの周りに相対的に回動することを許容するとともに前記左前被接続部が前記左前接続部本体に対して前記左前接続ピンの周りに相対的に回動することを許容することが好ましい。
【0018】
この態様では、下部走行体よりも前側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときには、右前被接続部が右前接続部本体に対して右前接続ピンの周りに相対的に回動し、左前被接続部が左前接続部本体に対して左前接続ピンの周りに相対的に回動することにより、右前対向面と右前受面とを接触させることができるとともに左前対向面と左前受面とを接触させることができる。これにより、前記前側荷重を、右前連続部分及左前連続部分を介して右フレーム本体の右前部位及び左フレーム本体の左前部位に伝達させることができる。
【0019】
また、前記移動式クレーンの下部走行体において、前記下部フレームの前記右後接続部は、右後接続部本体と、右後接続ピンと、を含み、当該右後接続ピンは、前記右後接続部と、前記右後荷重伝達部の前記右後被接続部とを接続し、前記下部フレームの前記左後接続部は、左後接続部本体と、左後接続ピンと、を含み、当該左後接続ピンは、前記左後接続部と、前記左後荷重伝達部の前記左後被接続部とを接続し、前記右後接続ピン及び前記左後接続ピンは、前記下部走行体よりも後側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記右後対向面と前記右後受面とが接するとともに前記左後対向面と前記左後受面とが接するように、前記右後被接続部が前記右後接続部本体に対して前記右後接続ピンの周りに相対的に回動することを許容するとともに前記左後被接続部が前記左後接続部本体に対して前記左後接続ピンの周りに相対的に回動することを許容することがより好ましい。
【0020】
この態様では、下部走行体よりも後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときには、右後被接続部が右後接続部本体に対して右後接続ピンの周りに相対的に回動し、左後被接続部が左後接続部本体に対して左後接続ピンの周りに相対的に回動することにより、右後対向面と右後受面とを接触させるとともに左後対向面と左後受面とを接触させることができる。これにより、前記後側荷重を、右後連続部分及左後連続部分を介して右フレーム本体の右後部位及び左フレーム本体の左後部位に伝達させることができる。
【0021】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右前接続ピン及び前記右後接続ピンのそれぞれは、その中心軸が前記前後方向に向く姿勢で配置され、前記右前対向面及び前記右前受面は、互いに左右方向に対向する面であり、前記右後対向面及び前記右後受面は、互いに前記左右方向に対向する面であることが好ましい。
【0022】
この態様では、接続ピンのそれぞれの中心軸が前記前後方向に向く姿勢で配置されるので、右クローラフレームを下部フレームに取り付ける取り付け作業の作業性がよい。また、この態様では、前記前側荷重は、左右方向に互いに対向する右前対向面から右前受面に伝達され、右前連続部分を介して右フレーム本体の右前部位に伝達される。同様に、前記後側荷重は、左右方向に互いに対向する右後対向面から右後受面に伝達され、右後連続部分を介して右フレーム本体の右後部位に伝達される。
【0023】
また、前記移動式クレーンの下部走行体において、前記左前接続ピン及び前記左後接続ピンのそれぞれは、その中心軸が前記前後方向に向く姿勢で配置され、前記左前対向面及び前記左前受面は、互いに前記左右方向に対向する面であり、前記左後対向面及び前記左後受面は、互いに前記左右方向に対向する面であることがより好ましい。
【0024】
この態様では、接続ピンのそれぞれの中心軸が前記前後方向に向く姿勢で配置されるので、左クローラフレームを下部フレームに取り付ける取り付け作業の作業性がよい。また、この態様では、前記前側荷重は、左右方向に互いに対向する左前対向面から左前受面に伝達され、左前連続部分を介して左フレーム本体の左前部位に伝達される。同様に、前記後側荷重は、左右方向に互いに対向する左後対向面から左後受面に伝達され、左後連続部分を介して左フレーム本体の左後部位に伝達される。
【0025】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右前対向面は、右斜め前に向く面であり、前記右前受面は、当該右前対向面に沿う形状を有する面であり、前記右前接続ピンは、その中心軸が前記右前対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、前記左前対向面は、左斜め前に向く面であり、前記左前受面は、当該左前対向面に沿う形状を有する面であり、前記左前接続ピンは、その中心軸が前記左前対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置されてもよい。
【0026】
この態様では、右前対向面は、右斜め前に向く面であるので、右前連続部分の延びる方向に近い方向を向き、左前対向面は、左斜め前に向く面であるので、左前連続部分の延びる方向に近い方向を向く。このため、前記前側荷重は、右前対向面及びこれに沿う形状を有する右前受面を介して右フレーム本体の右前部位に効率よく伝達され、左前対向面及びこれに沿う形状を有する左前受面を介して左フレーム本体の左前部位に効率よく伝達される。また、右前接続ピンは、その中心軸が右前対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、左前接続ピンは、その中心軸が左前対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置されるので、右前接続ピンの周りに右前接続部と右前被接続部が相対的に回動することにより右前対向面と右前受面とを接触させることができ、左前接続ピンの周りに左前接続部と左前被接続部が相対的に回動することにより左前対向面と左前受面とを接触させることができる。
【0027】
また、前記右後対向面は、右斜め後に向く面であり、前記右後受面は、当該右後対向面に沿う形状を有する面であり、前記右後接続ピンは、その中心軸が前記右後対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、前記左後対向面は、左斜め後に向く面であり、前記左後受面は、当該左後対向面に沿う形状を有する面であり、前記左後接続ピンは、その中心軸が前記左後対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置されてもよい。
【0028】
この態様では、右後対向面は、右斜め後に向く面であるので、右後連続部分の延びる方向に近い方向を向き、左後対向面は、左斜め後に向く面であるので、左後連続部分の延びる方向に近い方向を向く。このため、前記後側荷重は、右後対向面及びこれに沿う形状を有する右後受面を介して右フレーム本体の右後部位に効率よく伝達され、左後対向面及びこれに沿う形状を有する左後受面を介して左フレーム本体の左後部位に効率よく伝達される。また、右後接続ピンは、その中心軸が右後対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、左後接続ピンは、その中心軸が左後対向面に沿う水平な方向に向く姿勢で配置されるので、右後接続ピンの周りに右後接続部と右後被接続部が相対的に回動することにより右後対向面と右後受面とを接触させることができ、左後接続ピンの周りに左後接続部と左後被接続部が相対的に回動することにより左後対向面と左後受面とを接触させることができる。
【0029】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右前対向面は、右斜め前に向く面であり、前記右前受面は、当該右前対向面に沿う形状を有する面であり、前記左前対向面は、左斜め前に向く面であり、前記左前受面は、当該左前対向面に沿う形状を有する面であってもよい。
【0030】
この態様では、前記前側荷重は、右前及び左前の対向面及び受面を介して、前記右前部位及び前記左前部位に効率よく伝達される。
【0031】
また、前記右後対向面は、右斜め後に向く面であり、前記右後受面は、当該右後対向面に沿う形状を有する面であり、前記左後対向面は、左斜め後に向く面であり、前記左後受面は、当該左後対向面に沿う形状を有する面であってもよい。
【0032】
この態様では、前記後側荷重は、右後及び左後の対向面及び受面を介して、前記右後部位及び前記左後部位に効率よく伝達される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、下部走行体よりも前側又は後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときにクローラフレームに生じるたわみ及び下部フレームに生じるたわみを小さくすることが可能な移動式クレーンの下部走行体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実施形態に係る下部走行体を備える移動式クレーンの一例を示す側面図である。
【
図5】前記下部走行体における接続部と被接続部とを示す斜視図であり、
図3における下部走行体を矢印Vの方向から見た図である。
【
図6】前記下部走行体における接続部と被接続部とを示す背面図であり、
図3における下部走行体を矢印VIの方向から見た図である。
【
図7】前記接続部と被接続部の接続が解除された状態を示す斜視図である。
【
図8】前記接続部と被接続部の接続が解除された状態を示す背面図である。
【
図9】前記実施形態の変形例1に係る下部走行体を示す平面図である。
【
図10】前記実施形態の変形例2に係る下部走行体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、実施形態に係る移動式クレーンの下部走行体について説明する。なお、図面において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」及び「下」の文字が記載されているが、これらは、下部走行体が前進後退する方向を基準とするものである。すなわち、下部走行体の前後方向は、後述するクローラフレームが延びる水平な方向であり、下部走行体の左右方向は、前記前後方向に直交する水平な方向である。下部走行体の上下方向は、上部旋回体の旋回中心軸に平行な方向である。
【0036】
[移動式クレーンの全体構造]
図1に示すように、本実施形態に係る移動式クレーン100は、下部走行体101と、上部旋回体102と、を備える。下部走行体101は、上部旋回体102を旋回可能に下から支持するとともに、地上を走行することができるように構成されている。
【0037】
上部旋回体102は、下部走行体101上に配置される。上部旋回体102は、旋回フレーム103と、作業装置と、キャブ104と、カウンタウエイト105とを含む。前記作業装置、キャブ104及びカウンタウエイト105は、旋回フレーム103上に搭載されている。
【0038】
前記作業装置は、吊り荷の吊り上げ作業(クレーン作業)等を行うためのものである。本実施形態では、前記作業装置は、ブーム106と、吊用ウィンチ107と、吊りロープ108と、フック装置109と、ガントリ110と、起伏用ウィンチ111と、下部スプレッダ112と、起伏ロープ113と、上部スプレッダ114と、ガイライン115と、を含む。なお、前記作業装置は、
図1に示す具体例に限られず、例えば、ブームの先端部に取り付け可能な図略のジブをさらに備えていてもよい。
【0039】
ブーム106は、旋回フレーム103の前部に起伏可能に取り付けられており、そのブーム106の先端から吊りロープ108を介して吊り荷を吊るためのフック装置109が吊り下げられている。吊用ウィンチ107は、旋回フレーム103上に搭載されており、吊りロープ108の巻き取り又は繰り出しを行うことによりフック装置109の巻き上げ又は巻き下げを行う。ガントリ110は、旋回フレーム103の後部上に立設されている。ガイライン115は、その一端がブーム106の先端部に接続されており、その他端部が上部スプレッダ114に接続されている。下部スプレッダ112は、ガントリ110の上端部に設けられており、この下部スプレッダ112と上部スプレッダ114とは互いに離間して配置されている。下部スプレッダ112及び上部スプレッダ114には、起伏ロープ113が掛け回されている。起伏用ウィンチ111は、旋回フレーム103上に搭載されており、起伏ロープ113の巻き取り又は繰り出しを行うことにより下部スプレッダ112に対する上部スプレッダ114の離間距離を縮小又は拡大させる。この両スプレッダ112,114間の離間距離の縮小又は拡大に伴って、ブーム106が起伏される。
【0040】
[下部走行体の構造]
図2は、実施形態に係る下部走行体101を示す斜視図であり、
図3は、その平面図であり、
図4は、その正面図である。本実施形態では、
図1~
図4に示すように、下部走行体101の前後方向は、後述するクローラフレーム2R,2Lの長手方向であり、前記前後方向のうちの前方は、各クローラフレームのホイール24R(ドライブタンブラ)からホイール23R(アイドラ)に向かう方向であり、後方は、その反対方向である。ただし、下部走行体101の前後方向は、
図2及び
図3に規定される方向とは反対方向として規定されていてもよい。
【0041】
下部走行体101は、下部フレーム1と、右走行装置と、左走行装置と、を備える。下部フレーム1は、上部旋回体102を旋回可能に支持するためのフレームである。右走行装置及び左走行装置のそれぞれは、下部フレーム1を支持しながら地上を走行するための装置である。
【0042】
下部フレーム1は、カーボディ10と、このカーボディ10の上部に支持される旋回ベアリング13と、4つの接続部31~34と、を備える。この旋回ベアリング13上に上部旋回体102が旋回可能に取り付けられる。カーボディ10は、移動式クレーン100の上部旋回体102を、旋回ベアリング13を介して旋回中心軸Cの周りに旋回可能に支持する。旋回中心軸Cは、地面が水平である場合には、鉛直方向にほぼ平行である。接続部31~34については後述する。
【0043】
右走行装置は、右クローラフレーム2Rと、一対の右ホイール23R,24Rと、右クローラベルト25Rと、複数の右ローラ26と、走行駆動装置29と、を備える。同様に、左走行装置は、左クローラフレーム2Lと、一対の左ホイール23L,24Lと、左クローラベルト25Lと、複数の左ローラ26と、走行駆動装置29と、を備える。
【0044】
右クローラフレーム2Rは、右フレーム本体20Rを含み、左クローラフレーム2Lは、左フレーム本体20Lを含む。右フレーム本体20Rは、旋回中心軸Cよりも右側において前後方向に延びる形状を有する。左フレーム本体20Lは、旋回中心軸Cよりも左側において前後方向に延びる形状を有する。
【0045】
一対の右ホイール23R,24Rは、右フレーム本体20Rの前端部及び後端部にそれぞれ回転可能に支持される。本実施形態では、前側に位置する右ホイール23Rは、アイドラによって構成され、後側に位置する右ホイール24Rは、ドライブタンブラによって構成される。このドライブタンブラは、当該ドライブタンブラに隣接する位置において右フレーム本体20Rの後端部に支持される走行駆動装置29に連結されている。走行駆動装置29は、例えば、走行モータと走行減速機とを含む。
【0046】
右クローラベルト25Rは、一対の右ホイール23R,24Rに環状に架けられて周回移動可能なベルトである。言い換えると、右クローラベルト25Rは、一対の右ホイール23R,24Rに無端状に支持されている。この右クローラベルト25Rは、多数のクローラシューが連結されて構成されている。
【0047】
ドライブタンブラにより構成される右ホイール24Rの外周部には、右クローラベルト25Rの内周部と係合可能なように周方向に沿って複数の突起が形成されている。右ホイール24Rは、走行駆動装置29から駆動力を与えられ、この駆動力は、右クローラベルト25Rに伝達される。これにより、右クローラベルト25Rは周回移動する。アイドラにより構成される右ホイール23Rは、右クローラベルト25Rに従動して回転する。
【0048】
複数の右ローラ26は、右クローラフレーム2Rの右フレーム本体20Rの下部においてそれぞれ回転可能に支持されている。複数の右ローラ26は、一対の右ホイール23R,24Rの間で前後方向に間隔をおいて配置されている。複数の右ローラ26は、右クローラベルト25Rを地面に押し付けるとともに、右クローラベルト25Rの周回移動を案内する。
【0049】
以下では、複数の右ローラ26のうち最も前に位置する右ローラ26(本実施形態では、ホイール23Rに最も近い右ローラ26)を、右前端ローラ261と称し、複数の右ローラ26のうち最も後に位置する右ローラ26(本実施形態では、ホイール24Rに最も近い右ローラ26)を、右後端ローラ262と称する。
【0050】
左走行装置における一対の左ホイール23L,24L、左クローラベルト25L及び複数の左ローラ26の構造は、上述した右走行装置における一対の右ホイール23R,24R、右クローラベルト25R及び複数の右ローラ26の構造と、左右対称である点を除いて、同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、以下では、複数の左ローラ26のうち最も前に位置する左ローラ26(本実施形態では、ホイール23Lに最も近い左ローラ26)を、左前端ローラ261と称し、複数の左ローラ26のうち最も後に位置する左ローラ26(本実施形態では、ホイール24Lに最も近い左ローラ26)を、左後端ローラ262と称する。
【0051】
[荷重伝達構造]
本実施形態に係る下部走行体101は、以下に説明する荷重伝達構造を備えることにより、前側荷重及び後側荷重に起因してクローラフレーム2R,2Lにおいて生じるたわみ及びカーボディ10に生じるたわみを小さくすることができる。この前側荷重は、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102のフック装置109に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける荷重であり、前記後側荷重は、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102のフック装置109に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける荷重である。以下、下部走行体101が備える荷重伝達構造について詳細に説明する。
【0052】
図1及び
図2に示すような下部走行体101を備える移動式クレーン100では、前記右走行装置の右クローラベルト25R及び前記左走行装置の左クローラベルト25Lのそれぞれの先端部及び後端部は、側面視で円弧形状を有する。このため、これらのクローラベルト25R,25Lの先端部及び後端部は地面から浮いた状態となる。右側及び左側のクローラベルト25R,25Lにおいて、カーボディ10が上部旋回体102から前記前側荷重を受けたときに転倒支点(前側転倒支点)となる部位は、右前端ローラ261及び左前端ローラ261に対応する部位であり、カーボディ10が上部旋回体102から前記後側荷重を受けたときに転倒支点(後側転倒支点)となる部位は、右側及び左側の後端ローラ262,262に対応する部位である。
【0053】
本実施形態に係る下部走行体101では、右クローラフレーム2Rは、右前荷重伝達部21Rと、右後荷重伝達部22Rと、をさらに含み、左クローラフレーム2Lは、左前荷重伝達部21Lと、左後荷重伝達部22Lと、をさらに含む。
【0054】
右前荷重伝達部21Rは、右フレーム本体20Rのうち旋回中心軸Cよりも右側で且つ前側の部位である右前部位201において右フレーム本体20Rにつながる。この右前部位201は、
図3において二点鎖線201で示される部位である。この右前荷重伝達部21Rは、右前部位201から左側に突出する形状を有する本体部40と、この本体部40に取り付けられた右前被接続部41と、を含む。この右前被接続部41は、右前荷重伝達部21Rの左端部を構成する。
【0055】
右後荷重伝達部22Rは、右フレーム本体20Rのうち旋回中心軸Cよりも右側で且つ後側の部位である右後部位202において右フレーム本体20Rにつながる。この右後部位202は、
図3において二点鎖線202で示される部位である。この右後荷重伝達部22Rは、右後部位202から左側に突出する形状を有する本体部40と、この本体部40に取り付けられた右後被接続部42と、を含む。この右後被接続部42は、右後荷重伝達部22Rの左端部を構成する。
【0056】
左前荷重伝達部21Lは、左フレーム本体20Lのうち旋回中心軸Cよりも左側で且つ前側の部位である左前部位203において左フレーム本体20Lにつながる。この左前部位203は、
図3において二点鎖線203で示される部位である。この左前荷重伝達部21Lは、左前部位203から右側に突出する形状を有する本体部40と、この本体部40に取り付けられた左前被接続部43と、を含む。この左前被接続部43は、左前荷重伝達部21Lの右端部を構成する。
【0057】
左後荷重伝達部22Lは、左フレーム本体20Lのうち旋回中心軸Cよりも左側で且つ後側の部位である左後部位204において左フレーム本体20Lにつながる。この左後部位204は、
図3において二点鎖線204で示される部位である。この左後荷重伝達部22Lは、左後部位204から右側に突出する形状を有する本体部40と、この本体部40に取り付けられた左後被接続部44と、を含む。この左後被接続部44は、左後荷重伝達部22Lの右端部を構成する。
【0058】
右前荷重伝達部21Rの本体部40及び右後荷重伝達部22Rの本体部40は、右前被接続部41及び右後被接続部42が平面視において右クローラベルト25Rよりも左側に位置するように右フレーム本体20Rの右前部位201及び右後部位202から左側にそれぞれ突出している。
【0059】
左前荷重伝達部21Lの本体部40及び左後荷重伝達部22Lの本体部40は、左前被接続部43及び左後被接続部44が平面視において左クローラベルト25Lよりも右側に位置するように左フレーム本体20Lの左前部位203及び左後部位204から右側にそれぞれ突出している。
【0060】
下部フレーム1の前記4つの接続部は、右前荷重伝達部21Rの右前被接続部41に着脱可能に接続される右前接続部31と、右後荷重伝達部22Rの右後被接続部42に着脱可能に接続される右後接続部32と、左前荷重伝達部21Lの左前被接続部43に着脱可能に接続される左前接続部33と、左後荷重伝達部22Lの左後被接続部44に着脱可能に接続される左後接続部34と、を含む。
【0061】
右前接続部31は、カーボディ10における旋回中心軸Cよりも右側で且つ前側の部位に取り付けられており、旋回中心軸Cよりも右側で且つ前側に位置している。右後接続部32は、カーボディ10における旋回中心軸Cよりも右側で且つ後側の部位に取り付けられており、旋回中心軸Cよりも右側で且つ後側に位置している。左前接続部33は、カーボディ10における旋回中心軸Cよりも左側で且つ前側の部位に取り付けられており、旋回中心軸Cよりも左側で且つ前側に位置している。左後接続部34は、カーボディ10における旋回中心軸Cよりも左側で且つ後側の部位に取り付けられており、旋回中心軸Cよりも左側で且つ後側に位置している。
【0062】
右前接続部31は、右前荷重伝達部21Rに対向する右前対向面S1を有し、右後接続部32は、右後荷重伝達部22Rに対向する右後対向面S2を有し、左前接続部33は、左前荷重伝達部21Lに対向する左前対向面S3を有し、左後接続部34は、左後荷重伝達部22Lに対向する左後対向面S4を有する。本実施形態では、右前対向面S1は、右前接続部31の上部を構成する部材の右端面により構成され、右後対向面S2は、右後接続部32の上部を構成する部材の右端面により構成され、左前対向面S3は、左前接続部33の上部を構成する部材の左端面により構成され、左後対向面S4は、左後接続部34の上部を構成する部材の左端面により構成される。
【0063】
右前荷重伝達部21Rは、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに下部フレーム1のカーボディ10が上部旋回体102から受ける荷重である前側荷重を右前接続部31の右前対向面S1から受けることが可能な右前受面S11を有する。この右前受面S11は、右前荷重伝達部21Rの本体部40の上部から左側に突出する部分の端面により構成される。右前受面S11が右前対向面S1から受ける前側荷重は、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに下部フレーム1のカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0064】
右後荷重伝達部22Rは、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに下部フレーム1のカーボディ10が上部旋回体102から受ける荷重である後側荷重を右後接続部32の右後対向面S2から受けることが可能な右後受面S12を有する。この右後受面S12は、右後荷重伝達部22Rの本体部40の上部から左側に突出する部分の端面により構成される。右後受面S12が右後対向面S2から受ける後側荷重は、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに下部フレーム1のカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0065】
左前荷重伝達部21Lは、前記前側荷重を左前接続部33の左前対向面S3から受けることが可能な左前受面S13を有する。この左前受面S13は、左前荷重伝達部21Lの本体部40の上部から右側に突出する部分の端面により構成される。左前受面S13が左前対向面S3から受ける前側荷重は、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに下部フレーム1のカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0066】
左後荷重伝達部22Lは、前記後側荷重を左後接続部34の左後対向面S4から受けることが可能な左後受面S14を有する。この左後受面S14は、左後荷重伝達部22Lの本体部40の上部から右側に突出する部分の端面により構成される。左後受面S14が左後対向面S4から受ける後側荷重は、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに下部フレーム1のカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0067】
図3に示すように、右前接続部31は、右前接続部本体と、右前接続ピンP1と、を含む。右後接続部32は、右後接続部本体と、右後接続ピンP2とを含む。左前接続部33は、左前接続部本体と、左前接続ピンP3とを含む。左後接続部34は、左後接続部本体と、左後接続ピンP4とを含む。右前接続ピンP1は、カーボディ10の右前接続部31の右前接続部本体と、右前荷重伝達部21Rの右前被接続部41とを接続するための部材である。右後接続ピンP2は、カーボディ10の右後接続部32の右後接続部本体と、右後荷重伝達部22Rの右後被接続部42とを接続するための部材である。左前接続ピンP3は、カーボディ10の左前接続部33の左前接続部本体と、左前荷重伝達部21Lの左前被接続部43とを接続するための部材である。左後接続ピンP4は、カーボディ10の左後接続部34の左後接続部本体と、左後荷重伝達部22Lの左後被接続部44とを接続するための部材である。
【0068】
これらの接続ピンP1~P4のそれぞれは、その中心軸が前記前後方向に向く姿勢で配置される。右前対向面S1及び右前受面S11は、互いに左右方向に対向する面であり、右後対向面S2及び右後受面S12は、互いに前記左右方向に対向する面であり、左前対向面S3及び左前受面S13は、互いに前記左右方向に対向する面であり、左後対向面S4及び左後受面S14は、互いに前記左右方向に対向する面である。具体的には次の通りである。
【0069】
図5は、下部フレーム1の右前接続部31と右前荷重伝達部21Rの右前被接続部41とを示す斜視図であり、
図6は、右前接続部31と右前被接続部41とを示す背面図である。
図7は、右前接続部31と右前被接続部41の接続が解除された状態を示す斜視図であり、
図8は、右前接続部31と右前被接続部41の接続が解除された状態を示す背面図である。
【0070】
図5~
図8に示すように、右前接続部31の前記右前接続部本体は、カーボディ10に取り付けられた2つの板部材301,302を有する。これらの板部材301,302は、前後方向に直交する姿勢で配置された平板形状をそれぞれ有し、互いに前後方向に間隔をおいて配置され、カーボディ10から右側に延びるように配置されている。
【0071】
右前被接続部41は、右前荷重伝達部21Rの本体部40に取り付けられた板部材401を有する。この板部材401は、前後方向に直交する姿勢で配置された平板形状を有し、前記本体部40から左側に延びるように配置されている。右前接続部31の2つの板部材301,302同士の間隔は、右前被接続部41の板部材401を挿入することが可能なようにこの板部材401の厚みよりも若干大きく設定されている。
【0072】
右前接続部31の板部材301,302のぞれぞれは、前後方向に貫通するピン挿通孔304を有し、右前被接続部41の板部材401は、前記ピン挿通孔304に対応する位置に前後方向に貫通するピン挿通孔402を有する。
【0073】
右前接続部31は、ピン挿通孔304よりも上方で板部材301,302に前後方向にまたがるように配置された支柱P11を有する。この支柱は、その軸方向が前後方向に向く姿勢で板部材301,302に固定されている。
【0074】
右前被接続部41は、支柱P11に係合可能なフック部403を有する。フック部403が支柱P11に係合し、右前接続部31のピン挿通孔304と右前被接続部41のピン挿通孔402の位置を一致させた状態で、右前接続ピンP1がこれらのピン挿通孔304,402に挿通される。これにより、右前接続部31が右前被接続部41に接続される。
【0075】
右前接続部31が右前被接続部41に接続されると、右前接続部31の右前対向面S1と右前荷重伝達部21Rの右前受面S11は、互いに左右方向に対向する。
図6に示すように、これらの右前対向面S1と右前受面S11との間には隙間Gが設けられている。
【0076】
なお、右前接続部31、右前被接続部41及び右前接続ピンP1以外の接続部32,33,34、被接続部42,43,44及び接続ピンP2,P3、P4の構造は、向きが異なる以外は右前接続部31及び右前被接続部41と同様である。すなわち、右後接続部32の前記右後接続部本体、左前接続部33の前記左前接続部本体、及び左後接続部34の前記左後接続部本体のそれぞれは、上記と同様にカーボディ10に取り付けられた2つの板部材301,302を有し、対応する接続ピンによって被接続部に接続される。
【0077】
右前接続ピンP1及び左前接続ピンP3は、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、右前被接続部41が右前接続部31の板部材301,302に対して右前接続ピンP1の周りに相対的に回動することを許容するとともに、左前被接続部43が左前接続部33の板部材301,302に対して左前接続ピンP3の周りに相対的に回動することを許容するように構成されている。これにより、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、
図6に示すように右前対向面S1と右前受面S11との間に隙間Gが形成された状態から、右前対向面S1と右前受面S11とが接する状態にこれらの相対位置が変化するとともに、左前対向面S3と左前受面S13との間に図略の隙間が形成された状態から、左前対向面S3と左前受面S13とが接する状態にこれらの相対位置が変化する。従って、前記前側荷重は、右前対向面S1と右前受面S11とのメタルタッチにより、カーボディ10から右前荷重伝達部21Rに伝達され、左前対向面S3と左前受面S13とのメタルタッチにより、カーボディ10から左前荷重伝達部21Lに伝達される。
【0078】
同様に、右後接続ピンP2及び左後接続ピンP4は、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、右後被接続部42が右後接続部32の板部材301,302に対して右後接続ピンP2の周りに相対的に回動することを許容するとともに、左後被接続部44が左後接続部34の板部材301,302に対して左後接続ピンP4の周りに相対的に回動することを許容するように構成されている。これにより、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、右後対向面S2と右後受面S12との間に図略の隙間が形成された状態から、右後対向面S2と右後受面S12とが接する状態にこれらの相対位置が変化するとともに、左後対向面S4と左後受面S14との間に図略の隙間が形成された状態から、左後対向面S4と左後受面S14とが接する状態に相対位置が変化する。従って、前記後側荷重は、右後対向面S2と右後受面S12とのメタルタッチにより、カーボディ10から右後荷重伝達部22Rに伝達され、左後対向面S4と左後受面S14とのメタルタッチにより、カーボディ10から左後荷重伝達部22Lに伝達される。
【0079】
本実施形態では、右前荷重伝達部21Rは、
図3に示す平面視において旋回中心軸Cと右前端ローラ261とを通る直線である右前直線LAに沿って右前受面S11から右前部位201まで連続する部分である右前連続部分C1を有する。具体的には、右前連続部分C1は、右前受面S11から右前部位201まで平面視で右前直線LAに重なりながら連続している。本実施形態では、右前直線LAは、平面視において、右前端ローラ261の回転中心軸上であって右前端ローラ261の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを通る直線である。なお、上記のような右前荷重伝達部21Rと旋回中心軸Cと右前端ローラ261との位置関係は、これらを平面視したときのものであるので、右前荷重伝達部21Rと旋回中心軸Cと右前端ローラ261とは、必ずしも上下方向の位置が同じである必要はなく、上下方向に互いにずれた位置に配置されていてもよい。以下に説明する他の荷重伝達部22R,21L,22Lについても同様である。
【0080】
右後荷重伝達部22Rは、
図3に示す平面視において旋回中心軸Cと右後端ローラ262とを通る直線である右後直線LBに沿って右後受面S12から右後部位202まで連続する部分である右後連続部分C2を有する。具体的には、右後連続部分C2は、右後受面S12から右後部位202まで平面視で右後直線LBに重なりながら連続している。本実施形態では、右後直線LBは、平面視において、右後端ローラ262の回転中心軸上であって右後端ローラ262の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを通る直線である。
【0081】
左前荷重伝達部21Lは、
図3に示す平面視において旋回中心軸Cと左前端ローラ261とを通る直線である左前直線LCに沿って左前受面S13から左前部位203まで連続する部分である左前連続部分C3を有する。具体的には、左前連続部分C3は、左前受面S13から左前部位203まで平面視で左前直線LCに重なりながら連続している。本実施形態では、左前直線LCは、平面視において、左前端ローラ261の回転中心軸上であって左前端ローラ261の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを通る直線である。
【0082】
左後荷重伝達部22Lは、
図3に示す平面視において旋回中心軸Cと左後端ローラ262とを通る直線である左後直線LDに沿って左後受面S14から左後部位204まで連続する部分である左後連続部分C4を有する。具体的には、左後連続部分C4は、左後受面S14から左後部位204まで平面視で左後直線LDに重なりながら連続している。本実施形態では、左後直線LDは、平面視において、左後端ローラ262の回転中心軸上であって左後端ローラ262の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを通る直線である。
【0083】
右前荷重伝達部21Rの右前連続部分C1は、平面視において右前受面S11から右フレーム本体20Rの右前部位201まで右前直線LAに重なりながら途切れることなく連続するので、下部フレーム1の右前対向面S1から右前荷重伝達部21Rの右前受面S11が受ける前記前側荷重は、右前連続部分C1に沿って右フレーム本体20Rの右前部位201に直接的に伝達される。このことは、前記前側荷重が右フレーム本体20Rの右前部位201に効率よく伝達されることを可能にするとともに、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに移動式クレーン100の転倒支点となる右前端ローラ261とそのときの前記前側荷重が右フレーム本体20Rに伝達される部位との前後方向の距離を近づけることを可能にする。
【0084】
また、左前荷重伝達部21Lの左前連続部分C3は、平面視において左前受面S13から左フレーム本体20Lの左前部位203まで左前直線LCに重なりながら途切れることなく連続するので、下部フレーム1の左前対向面S3から左前荷重伝達部21Lの左前受面S13が受ける前記前側荷重は、左前連続部分C3に沿って左フレーム本体20Lの左前部位203に直接的に伝達される。このことは、前記前側荷重が左フレーム本体20Lの左前部位203に効率よく伝達されることを可能にするとともに、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに移動式クレーン100の転倒支点となる左前端ローラ261とそのときの前記前側荷重が左フレーム本体20Lに伝達される部位との前後方向の距離を近づけることを可能にする。
【0085】
従って、この下部走行体101では、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、従来の下部走行体に比べて、右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lに生じるたわみを小さくすることができる。
【0086】
右後荷重伝達部22Rの右後連続部分C2は、平面視において右後受面S12から右フレーム本体20Rの右後部位202まで右後直線LBに重なりながら途切れることなく連続するので、下部フレーム1の右後対向面S2から右後荷重伝達部22Rの右後受面S12が受ける前記後側荷重は、右後連続部分C2に沿って右フレーム本体20Rの右後部位202に直接的に伝達される。このことは、前記後側荷重が右フレーム本体20Rの右後部位202に効率よく伝達されることを可能にするとともに、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに移動式クレーン100の転倒支点となる右後端ローラ262とそのときの前記後側荷重が右フレーム本体20Rに伝達される部位との前後方向の距離を近づけることを可能にする。
【0087】
また、左後荷重伝達部22Lの左後連続部分C4は、平面視において左後受面S14から左フレーム本体20Lの左後部位204まで左後直線LDに重なりながら途切れることなく連続するので、下部フレーム1の左後対向面S4から左後荷重伝達部22Lの左後受面S14が受ける前記後側荷重は、左後連続部分C4に沿って左フレーム本体20Lの左後部位204に直接的に伝達される。このことは、前記後側荷重が左フレーム本体20Lの左後部位204に効率よく伝達されることを可能にするとともに、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに移動式クレーン100の転倒支点となる左後端ローラ262とそのときの前記後側荷重が左フレーム本体20Lに伝達される部位との前後方向の距離を近づけることを可能にする。
【0088】
従って、この下部走行体101では、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、従来の下部走行体に比べて、右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lに生じるたわみを小さくすることができる。
【0089】
前記前側荷重が右前連続部分C1及び左前連続部分C3に沿って右フレーム本体20Rの右前部位201及び左フレーム本体20Lの左前部位203に直接的に効率よく伝達される構造では、従来のH形状を有する構造に比べて、前記前側荷重に対する下部走行体101の剛性を高めることができるので、カーボディ10に生じるたわみも小さくすることができる。同様に、前記後側荷重が右後連続部分C2及び左後連続部分C4に沿って右フレーム本体20Rの右後部位202及び左フレーム本体20Lの左後部位204に直接的に効率よく伝達される構造では、従来のH形状を有する構造に比べて、前記後側荷重に対する下部走行体101の剛性を高めることができるので、カーボディ10に生じるたわみも小さくすることができる。しかも、本実施形態に係る前記構造では、下部走行体101よりも左側又は右側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに下部走行体101が上部旋回体102から受ける荷重に対する下部走行体101の剛性は、従来のH形状を有する構造に比べて、ほとんど低減しない。以上のように、上部旋回体102が下部走行体101に対して旋回周方向の何れの位置に配置されていても、下部走行体101は、上部旋回体102から受ける荷重に対する高い剛性を備えている。これにより、上部旋回体102の旋回時において下部走行体101の剛性の変化を抑制できる。
【0090】
図3に示すように、右クローラフレーム2Rの右前荷重伝達部21R及び右後荷重伝達部22Rは、右前部位201及び右後部位202から左側にそれぞれ突出する形状を有し、左クローラフレーム2Lの左前荷重伝達部21L及び左後荷重伝達部22Lは、左前部位203及び左後部位204から右側にそれぞれ突出する形状を有する。これにより、下部フレーム1においてアクスルを省略することができ、しかも、カーボディ10のサイズを小さくすることができる。カーボディ10がコンパクトになることで、カーボディ10に生じるたわみを抑制することができる。
【0091】
図3に示す実施形態では、右前荷重伝達部21Rの本体部40及び右後荷重伝達部22Rの本体部40のそれぞれは、当該本体部40の左端から右フレーム本体20Rに向かうにつれて前後の寸法が次第に大きくなるような形状(平面視で略台形状)を有する。従って、右前荷重伝達部21R及び右後荷重伝達部22Rのそれぞれが右フレーム本体20Rに片持ち梁のような状態で支持される片持ち構造であっても、右クローラフレーム2Rの強度を高くすることができる。同様に、左前荷重伝達部21Lの本体部40及び左後荷重伝達部22Lの本体部40のそれぞれは、当該本体部40の右端から左フレーム本体20Lに向かうにつれて前後の寸法が次第に大きくなるような形状(平面視で略台形状)を有する。従って、左前荷重伝達部21L及び左後荷重伝達部22Lのそれぞれが左フレーム本体20Lに片持ち梁のような状態で支持される片持ち構造であっても、左クローラフレーム2Lの強度を高くすることができる。これにより、
図3に示す実施形態に係る下部走行体101は、従来のH形状を有する構造に比べて、クローラフレーム2R,2Lに生じるたわみ及びカーボディ10に生じるたわみを効果的に抑制できる。
【0092】
図3に示す実施形態では、右前荷重伝達部21Rの本体部40における前縁が右斜め前方に延びるような形状を有するので、カーボディ10のサイズが小さくても、右前直線LAに右前受面S11から右前部位201まで平面視で重なりながら連続する右前連続部分C1を右前荷重伝達部21Rに形成することができる。同様に、右後荷重伝達部22Rの本体部40における後縁が右斜め後方に延びるような形状を有するので、カーボディ10のサイズが小さくても、右後直線LBに右後受面S12から右後部位202まで平面視で重なりながら連続する右後連続部分C2を右後荷重伝達部22Rに形成することができる。左前荷重伝達部21Lの本体部40における前縁が左斜め前方に延びるような形状を有するので、カーボディ10のサイズが小さくても、左前直線LCに左前受面S13から左前部位203まで平面視で重なりながら連続する左前連続部分C3を左前荷重伝達部21Lに形成することができる。左後荷重伝達部22Lの本体部40における後縁が左斜め後方に延びるような形状を有するので、カーボディ10のサイズが小さくても、左後直線LDに左後受面S14から左後部位204まで平面視で重なりながら連続する左後連続部分C4を左後荷重伝達部22Lに形成することができる。
【0093】
図3に示す本実施形態では、カーボディ10は、前後方向の寸法が左右方向の寸法よりも大きい形状を有する。これにより、前後方向に平行な鉛直面でカーボディ10を切断したときの断面を大きくすることができ、しかも、右前接続部31と右後接続部32との前後の距離、及び左前接続部33と左後接続部34との前後の距離をそれぞれ大きくすることができる。このことは、前記前側荷重又は前記後側荷重に対する下部走行体101の剛性(特にねじり剛性)を向上させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、右前接続部31及び右前被接続部41の少なくとも一方は、平面視において右前直線LAに重なるような位置に設けられ、左前接続部33及び左前被接続部43の少なくとも一方は、平面視において左前直線LCに重なるような位置に設けられている。これにより、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、前記前側荷重が右フレーム本体20Rの右前部位201及び左フレーム本体20Lの左前部位203により効率よく伝達される。同様に、右後接続部32及び右後被接続部42の少なくとも一方は、平面視において右後直線LBに重なるような位置に設けられ、左後接続部34及び左後被接続部44の少なくとも一方は、平面視において左後直線LDに重なるような位置に設けられている。これにより、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、前記後側荷重が右フレーム本体20Rの右後部位202及び左フレーム本体20Lの左後部位204により効率よく伝達される。
【0095】
また、本実施形態では、
図3に示すように、右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lのそれぞれは、平面視において、前側に向かうにつれて左右方向の長さが小さくなるような形状を有する。これにより、右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lにおいて上述したような右前連続部分C1及び左前連続部分C3を形成しつつ、右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lのそれぞれの重量の増加を抑制できる。同様に、右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lのそれぞれは、平面視において、後側に向かうにつれて左右方向の長さが小さくなるような形状を有する。これにより、右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lにおいて上述したような右後連続部分C2及び左後連続部分C4を形成しつつ、右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lのそれぞれの重量の増加を抑制できる。
【0096】
また、本実施形態では、
図2に示すように、右前荷重伝達部21Rは、前記前側荷重を受けて伝達するために必要な剛性を確保するために、天板、底板及びこれらをつなぐ側板を含む箱型の構造を有する。他の荷重伝達部21L,22R,22Lについても同様である。
【0097】
図9は、前記実施形態の変形例1に係る下部走行体101を示す平面図である。
【0098】
この変形例1に係る下部走行体101は、
図3等を参照して説明した前記実施形態に係る下部走行体101と基本的な構成は同様であるので、以下では、主に、
図9に示す変形例1と
図3に示す前記実施形態との相違点について説明する。
【0099】
この変形例1に係る下部走行体101は、下部フレーム1が下部走行体101の中で占める大きさの割合が
図3に示す実施形態に比べて大きく、また、下部フレーム1の形状が
図3に示す実施形態とは異なっている。具体的には次の通りである。
【0100】
図9に示す変形例1では、下部フレーム1は、カーボディ10と、このカーボディ10の上部に支持される旋回ベアリング13と、4つの接続部31~34と、を備え、カーボディ10は、旋回ベアリング13を支持する中央部10Eと、右前張出部10Aと、右後張出部10Bと、左前張出部10Cと、左後張出部10Dと、を含む。
【0101】
右前張出部10Aは、平面視で中央部10Eの右前部分から右前直線LAに沿って右前端ローラ261に向かって張り出す部分である。右後張出部10Bは、平面視で中央部10Eの右後部分から右後直線LBに沿って右後端ローラ262に向かって張り出す部分である。左前張出部10Cは、平面視で中央部10Eの左前部分から左前直線LCに沿って左前端ローラ261に向かって張り出す部分である。左後張出部10Dは、平面視で中央部10Eの左後部分から左後直線LDに沿って左後端ローラ262に向かって張り出す部分である。
【0102】
この変形例1では、上記のような張出部10A~10Dが設けられていることにより、右前荷重伝達部21R及び右後荷重伝達部22Rが右フレーム本体20Rから左側に突出する寸法、並びに左前荷重伝達部21L及び左後荷重伝達部22Lが左フレーム本体20Lから右側に突出する寸法が、
図3に示す実施形態よりも小さい。
【0103】
右前接続部31、右後接続部32、左前接続部33及び左後接続部34は、右前張出部10Aの端部、右後張出部10Bの端部、左前張出部10Cの端部及び左後張出部10Dの端部にそれぞれ取り付けられている。これらの接続部31~34と被接続部41~44の基本的な構造は、
図5~
図8に示す前記実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0104】
なお、この変形例1では、右前接続部31の右前対向面S1は、右前接続ピンP1の右側面により構成され、右前荷重伝達部21Rの右前受面S11は、右前接続ピンP1の前記右側面に対して左右方向に対向する左側面により構成される。この左側面は、右前接続ピンP1が挿通される挿通孔の内周面の一部である。右後接続部32の右後対向面S2は、右後接続ピンP2の右側面により構成され、右後荷重伝達部22Rの右後受面S12は、右後接続ピンP2の前記右側面に対して左右方向に対向する左側面により構成される。この左側面は、右後接続ピンP2が挿通される挿通孔の内周面の一部である。
【0105】
同様に、左前接続部33の左前対向面S3は、左前接続ピンP3の左側面により構成され、左前荷重伝達部21Lの左前受面S13は、左前接続ピンP3の前記左側面に対して左右方向に対向する右側面により構成される。この右側面は、左前接続ピンP3が挿通される挿通孔の内周面の一部である。左後接続部34の左後対向面S4は、左後接続ピンP4の左側面により構成され、左後荷重伝達部22Lの左後受面S14は、左後接続ピンP4の前記左側面に対して左右方向に対向する右側面により構成される。この右側面は、左後接続ピンP4が挿通される挿通孔の内周面の一部である。
【0106】
この変形例1においても、前記前側荷重は、右前対向面S1と右前受面S11とのメタルタッチにより、カーボディ10から右前荷重伝達部21Rに伝達され、左前対向面S3と左前受面S13とのメタルタッチにより、カーボディ10から左前荷重伝達部21Lに伝達される。前記後側荷重は、右後対向面S2と右後受面S12とのメタルタッチにより、カーボディ10から右後荷重伝達部22Rに伝達され、左後対向面S4と左後受面S14とのメタルタッチにより、カーボディ10から左後荷重伝達部22Lに伝達される。
【0107】
この変形例1では、
図3に示す前記実施形態と同様に、右前荷重伝達部21Rの右前連続部分C1は、平面視において右前受面S11から右フレーム本体20Rの右前部位201まで右前直線LAに重なりながら途切れることなく連続するので、下部フレーム1の右前対向面S1から右前荷重伝達部21Rの右前受面S11が受ける前記前側荷重は、右前連続部分C1に沿って右フレーム本体20Rの右前部位201に直接的に伝達される。このことは、前記前側荷重が右フレーム本体20Rの右前部位201に効率よく伝達されることを可能にするとともに、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに移動式クレーン100の転倒支点となる右前端ローラ261とそのときの前記前側荷重が右フレーム本体20Rに伝達される部位との前後方向の距離を近づけることを可能にする。
【0108】
また、左前荷重伝達部21Lの左前連続部分C3は、平面視において左前受面S13から左フレーム本体20Lの左前部位203まで左前直線LCに重なりながら途切れることなく連続するので、下部フレーム1の左前対向面S3から左前荷重伝達部21Lの左前受面S13が受ける前記前側荷重は、左前連続部分C3に沿って左フレーム本体20Lの左前部位203に直接的に伝達される。このことは、前記前側荷重が左フレーム本体20Lの左前部位203に効率よく伝達されることを可能にするとともに、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに移動式クレーン100の転倒支点となる左前端ローラ261とそのときの前記前側荷重が左フレーム本体20Lに伝達される部位との前後方向の距離を近づけることを可能にする。
【0109】
従って、この変形例1に係る下部走行体101では、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、従来の下部走行体に比べて、右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lに生じるたわみを小さくすることができる。
【0110】
前記前側荷重が右前連続部分C1及び左前連続部分C3に沿って右フレーム本体20Rの右前部位201及び左フレーム本体20Lの左前部位203に直接的に効率よく伝達される構造では、従来のH形状を有する構造に比べて、前記前側荷重に対する下部走行体101の剛性を高めることができるので、カーボディ10に生じるたわみも小さくすることができる。同様に、前記後側荷重が右後連続部分C2及び左後連続部分C4に沿って右フレーム本体20Rの右後部位202及び左フレーム本体20Lの左後部位204に直接的に効率よく伝達される構造では、従来のH形状を有する構造に比べて、前記後側荷重に対する下部走行体101の剛性を高めることができるので、カーボディ10に生じるたわみも小さくすることができる。
【0111】
また、この変形例1に係る下部走行体101では、上述したように荷重伝達部21R,22Rが右フレーム本体20Rから左側に突出する寸法及び荷重伝達部21L,22Lが左フレーム本体20Lから右側に突出する寸法が
図3に示す実施形態よりも小さい。従って、この変形例1では、
図3に示す実施形態に比べて、右クローラフレーム2R及び左クローラフレーム2Lを軽量化することができる。また、この変形例1では、下部フレーム1の右前接続部31及び右後接続部32と右クローラフレーム2Rの右前被接続部41及び右後被接続部42が、
図3に示す前記実施形態に比べて、右フレーム本体20Rに近い位置にあり、下部フレーム1の左前接続部33及び左後接続部34と左クローラフレーム2Lの左前被接続部43及び左後被接続部44が、
図3に示す前記実施形態に比べて、左フレーム本体20Lに近い位置にある。従って、この変形例1では、上部旋回体102が下部フレーム1に取り付けられた状態でクローラフレーム2R,2Lを下部フレーム1に取り付ける作業時に、
図3に示す実施形態に比べて上部旋回体102が邪魔になりにくいので、取付作業が行いやすい。
【0112】
図10は、前記実施形態の変形例2に係る下部走行体を示す平面図である。
【0113】
この変形例2に係る下部走行体101は、
図3等を参照して説明した前記実施形態に係る下部走行体101と基本的な構成は同様であるので、以下では、主に、
図10に示す変形例1と
図3に示す前記実施形態との相違点について説明する。
【0114】
この変形例2に係る下部走行体101は、下部フレーム1が下部走行体101の中で占める大きさの割合が
図3に示す実施形態に比べて小さく、また、対向面S1~S4及び受面S11~S14の向きが
図3に示す実施形態とは異なっている。具体的には次の通りである。
【0115】
図10に示す変形例2では、右前対向面S1は、右斜め前に向く面であり、好ましくは、右前直線LAに直交する面である。右前受面S11は、当該右前対向面S1に沿う形状を有する面であり、好ましくは右前対向面S1に平行な面である。右前接続ピンP1は、その中心軸が右前対向面S1に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、好ましくは、右前対向面S1に平行で水平な方向に向く姿勢で配置される。
【0116】
左前対向面S3は、左斜め前に向く面であり、好ましくは、左前直線LCに直交する面である。左前受面S13は、当該左前対向面S3に沿う形状を有する面であり、好ましくは左前対向面S3に平行な面である。左前接続ピンP3は、その中心軸が左前対向面S3に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、好ましくは、左前対向面S3に平行で水平な方向に向く姿勢で配置される。
【0117】
この変形例2では、右前対向面S1は、右斜め前に向く面であるので、右前連続部分C1の延びる方向に近い方向を向き、左前対向面S3は、左斜め前に向く面であるので、左前連続部分C3の延びる方向に近い方向を向く。このため、前記前側荷重は、右前対向面S1及びこれに沿う形状を有する右前受面S11を介して右フレーム本体20Rの右前部位201に効率よく伝達され、左前対向面S3及びこれに沿う形状を有する左前受面S13を介して左フレーム本体20Lの左前部位203に効率よく伝達される。また、右前接続ピンP1は、その中心軸が右前対向面S1に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、左前接続ピンP3は、その中心軸が左前対向面S3に沿う水平な方向に向く姿勢で配置されるので、右前接続ピンP1の周りに右前被接続部41が右前接続部31の前記右前接続部本体に対して相対的に回動することにより右前対向面S1と右前受面S11とを接触させることができ、左前接続ピンP3の周りに左前被接続部43が左前接続部33の左前接続部本体に対して相対的に回動することにより左前対向面S3と左前受面S13とを接触させることができる。従って、前記前側荷重は、右前対向面S1と右前受面S11とのメタルタッチにより、カーボディ10から右前荷重伝達部21Rに伝達され、左前対向面S3と左前受面S13とのメタルタッチにより、カーボディ10から左前荷重伝達部21Lに伝達される。
【0118】
右後対向面S2は、右斜め後に向く面であり、好ましくは、右後直線LBに直交する面である。右後受面S12は、当該右後対向面S2に沿う形状を有する面であり、好ましくは、右後対向面S2に平行な面である。右後接続ピンP2は、その中心軸が右後対向面S2に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、好ましくは、右後対向面S2に平行で水平な方向に向く姿勢で配置される。
【0119】
左後対向面S4は、左斜め後に向く面であり、好ましくは、左後直線LDに直交する面である。左後受面S14は、当該左後対向面S4に沿う形状を有する面であり、好ましくは、左後対向面S4に平行な面である。左後接続ピンP4は、その中心軸が左後対向面S4に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、好ましくは、左後対向面S4に平行で水平な方向に向く姿勢で配置される。
【0120】
この変形例2では、右後対向面S2は、右斜め後に向く面であるので、右後連続部分C2の延びる方向に近い方向を向き、左後対向面S4は、左斜め後に向く面であるので、左後連続部分C4の延びる方向に近い方向を向く。このため、前記後側荷重は、右後対向面S2及びこれに沿う形状を有する右後受面S12を介して右フレーム本体20Rの右後部位202に効率よく伝達され、左後対向面S4及びこれに沿う形状を有する左後受面S14を介して左フレーム本体20Lの左後部位204に効率よく伝達される。また、右後接続ピンP2は、その中心軸が右後対向面S2に沿う水平な方向に向く姿勢で配置され、左後接続ピンP4は、その中心軸が左後対向面S4に沿う水平な方向に向く姿勢で配置されるので、右後接続ピンP2の周りに右後被接続部が右後接続部32の右後接続部本体に対して相対的に回動することにより右後対向面S2と右後受面S12とを接触させることができ、左後接続ピンP4の周りに左後被接続部44が左後接続部34の左後接続部本体に対して相対的に回動することにより左後対向面S4と左後受面S14とを接触させることができる。従って、前記後側荷重は、右後対向面S2と右後受面S12とのメタルタッチにより、カーボディ10から右後荷重伝達部22Rに伝達され、左後対向面S4と左後受面S14とのメタルタッチにより、カーボディ10から左後荷重伝達部22Lに伝達される。
【0121】
また、この変形例2では、
図3に示す前記実施形態と同様に、右前荷重伝達部21Rの右前連続部分C1は、平面視において右前受面S11から右フレーム本体20Rの右前部位201まで右前直線LAに重なりながら途切れることなく連続するので、下部フレーム1の右前対向面S1から右前荷重伝達部21Rの右前受面S11が受ける前記前側荷重は、右前連続部分C1に沿って右フレーム本体20Rの右前部位201に直接的に伝達される。このことは、前記前側荷重が右フレーム本体20Rの右前部位201に効率よく伝達されることを可能にするとともに、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに移動式クレーン100の転倒支点となる右前端ローラ261とそのときの前記前側荷重が右フレーム本体20Rに伝達される部位との前後方向の距離を近づけることを可能にする。
【0122】
また、左前荷重伝達部21Lの左前連続部分C3は、平面視において左前受面S13から左フレーム本体20Lの左前部位203まで左前直線LCに重なりながら途切れることなく連続するので、下部フレーム1の左前対向面S3から左前荷重伝達部21Lの左前受面S13が受ける前記前側荷重は、左前連続部分C3に沿って左フレーム本体20Lの左前部位203に直接的に伝達される。このことは、前記前側荷重が左フレーム本体20Lの左前部位203に効率よく伝達されることを可能にするとともに、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに移動式クレーン100の転倒支点となる左前端ローラ261とそのときの前記前側荷重が左フレーム本体20Lに伝達される部位との前後方向の距離を近づけることを可能にする。
【0123】
従って、この変形例2に係る下部走行体101では、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、従来の下部走行体に比べて、右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lに生じるたわみを小さくすることができる。
【0124】
前記前側荷重が右前連続部分C1及び左前連続部分C3に沿って右フレーム本体20Rの右前部位201及び左フレーム本体20Lの左前部位203に直接的に効率よく伝達される構造では、従来のH形状を有する構造に比べて、前記前側荷重に対する下部走行体101の剛性を高めることができるので、カーボディ10に生じるたわみも小さくすることができる。同様に、前記後側荷重が右後連続部分C2及び左後連続部分C4に沿って右フレーム本体20Rの右後部位202及び左フレーム本体20Lの左後部位204に直接的に効率よく伝達される構造では、従来のH形状を有する構造に比べて、前記後側荷重に対する下部走行体101の剛性を高めることができるので、カーボディ10に生じるたわみも小さくすることができる。
【0125】
また、この変形例2に係る下部走行体101では、荷重伝達部21R,22Rが右フレーム本体20Rから左側に突出する寸法及び荷重伝達部21L,22Lが左フレーム本体20Lから右側に突出する寸法が
図3に示す実施形態及び
図9に示す変形例1よりも大きい。従って、この変形例2では、下部フレーム1のカーボディ10を、
図3に示す実施形態及び
図9に示す変形例1に比べて、さらに軽量化することができる。
【0126】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0127】
(A)右前直線、右後直線、左前直線及び左後直線について
前記実施形態及びその変形例1,2では、右前直線LAは、平面視において、右前端ローラ261の回転中心軸上であって右前端ローラ261の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを通る直線であり、右後直線LB、左前直線LC及び左後直線LDについても同様に規定されているが、このような態様に限られない。前記右前直線LAは、例えば、平面視において、旋回中心軸Cと、右前端ローラ261のうち予め選択された何れかの部位と、を通る直線であってもよい。前記何れかの部位は、例えば、平面視において、右前端ローラ261における最も後で且つ最も右の部位を挙げることができる。同様に、前記右後直線LBは、平面視において、旋回中心軸Cと、右後端ローラ262のうち予め選択された何れかの部位と、を通る直線であってもよく、前記左前直線LCは、例えば、平面視において、旋回中心軸Cと、左前端ローラ261のうち予め選択された何れかの部位と、を通る直線であってもよく、前記左後直線LDは、平面視において、旋回中心軸Cと、左後端ローラ262のうち予め選択された何れかの部位と、を通る直線であってもよい。
【0128】
(B)着脱構造について
前記実施形態及びその変形例1,2では、下部フレーム1に対して左右のクローラフレーム2R,2Lのそれぞれが着脱可能な構造であるが、このような態様に限られない。左右のクローラフレーム2R,2Lのそれぞれは、下部フレーム1に対して着脱可能な構造を有していなくてもよい。
【0129】
(C)接続ピンについて
前記実施形態及びその変形例1,2では、接続部の接続部本体が被接続部に対して接続ピンにより接続されるが、接続ピン以外の接続部材によって被接続部に対して接続されてもよい。
【0130】
(D)クレーンの仕様について
図1に示す前記実施形態に係るクレーンは、ジブ及びストラットを備えていないが、クレーンの仕様は、
図1に示すものに限定されない。本開示に係るクレーンは、ジブ、フロントストラット及びリヤストラットを備えるラッフィングクレーンであってもよく、ジブ及び1つのストラットを備える固定ジブ仕様のクレーンであってもよい。また、本開示に係るクレーンは、ガントリではなくマストを備えるクレーン(例えば大型のクレーン)であってもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 :下部フレーム
2L :左クローラフレーム
2R :右クローラフレーム
20L :左フレーム本体
20R :右フレーム本体
21L :左前荷重伝達部
21R :右前荷重伝達部
22L :左後荷重伝達部
22R :右後荷重伝達部
23L,23R,24L,24R :ホイール
25L :左クローラベルト
25R :右クローラベルト
26 :左ローラ,右ローラ
31~34 :右前接続部、右後接続部、左前接続部、左後接続部
41~44 :右前被接続部、右後被接続部、左前被接続部、左後被接続部
100 :移動式クレーン
101 :下部走行体
102 :上部旋回体
201~204 :右前部位、右後部位、左前部位、左後部位
261 :右前端ローラ,左前端ローラ
262 :右後端ローラ,左後端ローラ
C :旋回中心軸
C1~C4 :右前連続部分、右後連続部分、左前連続部分、左後連続部分
LA :右前直線
LB :右後直線
LC :左前直線
LD :左後直線
P1~P4 :接続ピン
S1~S4 :右前対向面、右後対向面、左前対向面、左後対向面
S11~S14 :右前受面、右後受面、左前受面、左後受面