(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187522
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】移動式クレーンの下部走行体
(51)【国際特許分類】
B66C 23/36 20060101AFI20221213BHJP
B66C 23/62 20060101ALI20221213BHJP
B62D 55/10 20060101ALI20221213BHJP
B62D 21/18 20060101ALI20221213BHJP
E02F 9/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B66C23/36 A
B66C23/62
B62D55/10 Z
B62D21/18 E
E02F9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095535
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】百濟 和文
(72)【発明者】
【氏名】島津 泰彦
【テーマコード(参考)】
3D203
3F205
【Fターム(参考)】
3D203AA27
3D203BA02
3D203DB13
3F205AA07
3F205KA10
(57)【要約】
【課題】下部走行体よりも前側又は後側にいて吊り荷が上部旋回体から吊るされたときの変形が小さい移動式クレーンの下部走行体を提供する。
【解決手段】移動式クレーンの下部走行体101では、右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lは、前側荷重を、右前対向部ST1及び左前対向部ST3から右フレーム本体20Rの右前伝達部位201及び左フレーム本体20Lの左前伝達部位203にそれぞれ伝達することが可能なように構成され、右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lは、後側荷重を、右後対向部ST2及び左後対向部ST4から右フレーム本体20Rの右後伝達部位202及び左フレーム本体20Lの左後伝達部位204にそれぞれ伝達することが可能なように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式クレーンの下部走行体であって、
前記移動式クレーンの上部旋回体を旋回中心軸の周りに旋回可能に支持するカーボディと、
前記カーボディから右側及び左側にそれぞれ延びる前アクスルであって前側を向く前側面を有する前アクスルと、
前記前アクスルよりも後側において前記カーボディから右側及び左側にそれぞれ延びる後アクスルであって後側を向く後側面を有する後アクスルと、
前記旋回中心軸よりも右側において前後方向に延びる右フレーム本体と右前荷重伝達部と右後荷重伝達部とを含む右クローラフレームと、
前記旋回中心軸よりも左側において前記前後方向に延びる左フレーム本体と左前荷重伝達部と左後荷重伝達部とを含む左クローラフレームと、を備え、
前記右フレーム本体は、前記前アクスル及び前記後アクスルをそれぞれ支持する右前アクスル支持部及び右後アクスル支持部を有し、
前記左フレーム本体は、前記前アクスル及び前記後アクスルをそれぞれ支持する左前アクスル支持部及び左後アクスル支持部を有し、
前記右前荷重伝達部は、前記右フレーム本体のうち前記右前アクスル支持部よりも前側の部位である右前伝達部位から左側に突出する形状を有し、前記右前アクスル支持部よりも左側において前記前アクスルの前記前側面に前記前後方向に対向する右前対向部を有し、前記下部走行体よりも前側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記カーボディが前記上部旋回体から受ける荷重である前側荷重を、前記右前対向部から前記右前伝達部位に伝達することが可能なように構成され、
前記右後荷重伝達部は、前記右フレーム本体のうち前記右後アクスル支持部よりも後側の部位である右後伝達部位から左側に突出する形状を有し、前記右後アクスル支持部よりも左側において前記後アクスルの前記後側面に前記前後方向に対向する右後対向部を有し、前記下部走行体よりも後側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記カーボディが前記上部旋回体から受ける荷重である後側荷重を、前記右後対向部から前記右後伝達部位に伝達することが可能なように構成され、
前記左前荷重伝達部は、前記左フレーム本体のうち前記左前アクスル支持部よりも前側の部位である左前伝達部位から右側に突出する形状を有し、前記左前アクスル支持部よりも右側において前記前アクスルの前記前側面に前記前後方向に対向する左前対向部を有し、前記前側荷重を前記左前対向部から前記左前伝達部位に伝達することが可能なように構成され、
前記左後荷重伝達部は、前記左フレーム本体のうち前記左後アクスル支持部よりも後側の部位である左後伝達部位から右側に突出する形状を有し、前記左後アクスル支持部よりも右側において前記後アクスルの前記後側面に前記前後方向に対向する左後対向部を有し、前記後側荷重を前記左後対向部から前記左後伝達部位に伝達することが可能なように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前アクスル支持部及び前記右後アクスル支持部は、前記前アクスル及び前記後アクスルに対する前記右フレーム本体の左右方向の位置を変えることが可能なように前記前アクスル及び前記後アクスルをそれぞれ支持するように構成され、
前記左前アクスル支持部及び前記左後アクスル支持部は、前記前アクスル及び前記後アクスルに対する前記左フレーム本体の前記左右方向の位置を変えることが可能なように前記前アクスル及び前記後アクスルをそれぞれ支持するように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前対向部及び前記左前対向部の少なくとも一方は、前記カーボディが前記前側荷重を受けたときに前記前アクスルの前記前側面に接するように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右後対向部及び前記左後対向部の少なくとも一方は、前記カーボディが前記後側荷重を受けたときに前記後アクスルの前記後側面に接するように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
少なくとも一つの前側介在部材をさらに備え、
前記少なくとも一つの前側介在部材は、前記右前対向部及び前記左前対向部のうちの少なくとも一つの対向部と、前記前アクスルの前記前側面との間に形成された隙間に着脱可能に配置され、前記カーボディが前記前側荷重を受けたときに、前記前側面及び前記少なくとも一つの対向部の双方に接するように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
少なくとも一つの後側介在部材をさらに備え、
前記少なくとも一つの後側介在部材は、前記右後対向部及び前記左後対向部のうちの少なくとも一つの対向部と、前記後アクスルの前記後側面との間に形成された隙間に着脱可能に配置され、前記カーボディが前記後側荷重を受けたときに、前記後側面及び前記少なくとも一つの対向部の双方に接するように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
少なくとも一つの前側接続部材をさらに備え、
前記少なくとも一つの前側接続部材は、前記右前対向部及び前記左前対向部のうちの少なくとも一つの対向部と、前記前アクスルとに着脱可能に取り付けられ、前記少なくとも一つの対向部と前記前アクスルとを接続するように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項8】
請求項7に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記少なくとも一つの前側接続部材は、接続ピンにより構成され、
前記接続ピンの軸方向は、前記前後方向に向いている、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
少なくとも一つの後側接続部材をさらに備え、
前記少なくとも一つの後側接続部材は、前記右後対向部及び前記左後対向部のうちの少なくとも一つの対向部と、前記後アクスルとに着脱可能に取り付けられ、前記少なくとも一つの対向部と前記後アクスルとを接続するように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項10】
請求項9に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記少なくとも一つの後側接続部材は、接続ピンにより構成され、
前記接続ピンの軸方向は、前記前後方向に向いている、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右フレーム本体の前端部及び後端部にそれぞれ回転可能に支持される一対の右ホイールと、
前記左フレーム本体の前端部及び後端部にそれぞれ回転可能に支持される一対の左ホイールと、
前記一対の右ホイールの間で前記前後方向に間隔をおいて配置されて前記右フレーム本体の下部に回転可能に支持される複数の右ローラであって、最も前に位置する右前端ローラと最も後に位置する右後端ローラとを含む複数の右ローラと、
前記一対の左ホイールの間で前記前後方向に間隔をおいて配置されて前記左フレーム本体の下部に回転可能に支持される複数の左ローラであって、最も前に位置する左前端ローラと最も後に位置する左後端ローラとを含む複数の左ローラと、をさらに備え、
前記右前荷重伝達部は、平面視において前記右前対向部に含まれる何れかの点と前記右前伝達部位に含まれる何れかの点とを通る直線である右前直線が前記右前端ローラ又は前記右前端ローラよりも前側を通るように構成され、
前記左前荷重伝達部は、平面視において前記左前対向部に含まれる何れかの点と前記左前伝達部位に含まれる何れかの点とを通る直線である左前直線が前記左前端ローラ又は前記左前端ローラよりも前側を通るように構成されている、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項12】
請求項11に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前直線は、平面視において前記右前端ローラを通る直線であり、前記左前直線は、平面視において前記左前端ローラを通る直線である、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項13】
請求項12に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前直線は、平面視において前記旋回中心軸をさらに通る直線であり、前記左前直線は、平面視において前記旋回中心軸をさらに通る直線である、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項14】
請求項11~13の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前荷重伝達部は、平面視において前記右前直線に沿って前記右前対向部から前記右前伝達部位まで連続する右前連続部分を有し、
前記左前荷重伝達部は、平面視において前記左前直線に沿って前記左前対向部から前記左前伝達部位まで連続する左前連続部分を有する、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項15】
請求項11~14の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右後荷重伝達部は、平面視において前記右後対向部に含まれる何れかの点と前記右後伝達部位に含まれる何れかの点とを通る直線である右後直線が前記右後端ローラ又は前記右後端ローラよりも後側を通るように構成され、
前記左後荷重伝達部は、平面視において前記左後対向部に含まれる何れかの点と前記左後伝達部位に含まれる何れかの点とを通る直線である左後直線が前記左後端ローラ又は前記左後端ローラよりも後側を通るように構成されている、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項16】
請求項15に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右後直線は、平面視において前記右後端ローラを通る直線であり、前記左後直線は、平面視において前記左後端ローラを通る直線である、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項17】
請求項16に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右後直線は、平面視において前記旋回中心軸をさらに通る直線であり、前記左後直線は、平面視において前記旋回中心軸をさらに通る直線である、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項18】
請求項15~17の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右後荷重伝達部は、平面視において前記右後直線に沿って前記右後対向部から前記右後伝達部位まで連続する右後連続部分を有し、
前記左後荷重伝達部は、平面視において前記左後直線に沿って前記左後対向部から前記左後伝達部位まで連続する左後連続部分を有する、移動式クレーンの下部走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンの下部走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動式クレーンが知られている(例えば特許文献1,2)。この移動式クレーンは、地上を走行可能な下部走行体と、この下部走行体に搭載される上部旋回体と、を備える。上部旋回体は、ブーム及び吊りロープを含む作業装置を備える。下部走行体は、上部旋回体を旋回中心軸の周りに旋回可能に支持するカーボディと、このカーボディから右側及び左側にそれぞれ延びる前アクスルと、この前アクスルよりも後側においてカーボディから右側及び左側にそれぞれ延びる後アクスルと、旋回中心軸よりも右側及び左側のそれぞれにおいて前後方向に延び、前アクスル及び後アクスルを支持する左右一対のクローラフレームと、を備える。
【0003】
例えば特許文献1の移動式クレーンは、前記作業装置の前記吊りロープを介して吊り荷の吊り上げ作業が行われるときの安全性を高めるために一対のクローラフレームの旋回中心軸からの距離を左右方向に拡大し、移動式クレーンが輸送されるときの輸送幅を小さくするために一対のクローラフレームの旋回中心軸からの距離を左右方向に縮小するための拡縮機構を備えている。このような拡縮機構を備える移動式クレーンでは、前アクスル及び後アクスルに沿って各クローラフレームを左右方向に例えばスライド移動させる必要があるため、前アクスル及び後アクスルは左右方向に平行に延びる形状を有し、各クローラフレームは、前アクスル及び後アクスルをスライド移動可能に支持する一対のアクスル支持部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-70339号公報
【特許文献2】特開2017-171090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにカーボディから左右方向に平行に延びる前アクスル及び後アクスルがカーボディと左右のクローラフレームとを連結する構造を備える下部走行体では、前後方向の剛性が左右方向の剛性よりも低い。このため、移動式クレーンの吊り上げ作業(クレーン作業)において、下部走行体よりも前側又は後側において吊り荷が上部旋回体から吊るされる場合にカーボディの前側部分又は後側部分が下方に変位する量は、下部走行体の側方において吊り荷が上部旋回体から吊るされる場合にカーボディの右側部分又は左側部分が下方に変位する量よりも大きくなりやすい。
【0006】
具体的には、下部走行体よりも前側又は後側において吊り荷が上部旋回体から吊るされる場合には、カーボディが上部旋回体から受ける荷重に起因して、前後のアクスルにおいてねじり変形、たわみ変形などの変形が生じるとともにカーボディにおいても変形が生じることにより、カーボディの前側部分又は後側部分が下方に変位しやすい。また、前後のアクスルの変形に追随するように左右のクローラフレームにおいても変形が生じやすい。その結果、上部旋回体の旋回位置の変化に伴って下部走行体において生じる変形の度合いに差が生じ、これにより、吊り荷の位置が上下に変動するため、吊り上げ作業の作業性が低下することがある。従って、下部走行体における前後方向の剛性を向上させることにより、下部走行体よりも前側又は後側において吊り荷が上部旋回体から吊るされたときに下部走行体に生じる変形を小さくすることが望まれる。
【0007】
特許文献2は、カーボディの前後の部分における剛性をそれぞれ向上させるために、カーボディの胴部内の前部及び後部に一対の補強部材をそれぞれ設ける技術を開示している。しかしながら、カーボディの胴部の周辺には、上部旋回体を旋回させるための旋回モータ、ギア、油圧配管、電気配線などの種々の部材が配置されるので、一対の補強部材を配置するためのスペースが十分に確保できない場合がある。この場合、一対の補強部材によりカーボディの変形を抑制する効果は限定的なものとなる。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、下部走行体よりも前側又は後側において吊り荷が上部旋回体から吊るされたときの変形が小さい下部走行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
提供されるのは、移動式クレーンの下部走行体であって、前記移動式クレーンの上部旋回体を旋回中心軸の周りに旋回可能に支持するカーボディと、前記カーボディから右側及び左側にそれぞれ延びる前アクスルであって前側を向く前側面を有する前アクスルと、前記前アクスルよりも後側において前記カーボディから右側及び左側にそれぞれ延びる後アクスルであって後側を向く後側面を有する後アクスルと、前記旋回中心軸よりも右側において前後方向に延びる右フレーム本体と右前荷重伝達部と右後荷重伝達部とを含む右クローラフレームと、前記旋回中心軸よりも左側において前記前後方向に延びる左フレーム本体と左前荷重伝達部と左後荷重伝達部とを含む左クローラフレームと、を備え、前記右フレーム本体は、前記前アクスル及び前記後アクスルをそれぞれ支持する右前アクスル支持部及び右後アクスル支持部を有し、前記左フレーム本体は、前記前アクスル及び前記後アクスルをそれぞれ支持する左前アクスル支持部及び左後アクスル支持部を有し、前記右前荷重伝達部は、前記右フレーム本体のうち前記右前アクスル支持部よりも前側の部位である右前伝達部位から左側に突出する形状を有し、前記右前アクスル支持部よりも左側において前記前アクスルの前記前側面に前記前後方向に対向する右前対向部を有し、前記下部走行体よりも前側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記カーボディが前記上部旋回体から受ける荷重である前側荷重を、前記右前対向部から前記右前伝達部位に伝達することが可能なように構成され、前記右後荷重伝達部は、前記右フレーム本体のうち前記右後アクスル支持部よりも後側の部位である右後伝達部位から左側に突出する形状を有し、前記右後アクスル支持部よりも左側において前記後アクスルの前記後側面に前記前後方向に対向する右後対向部を有し、前記下部走行体よりも後側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記カーボディが前記上部旋回体から受ける荷重である後側荷重を、前記右後対向部から前記右後伝達部位に伝達することが可能なように構成され、前記左前荷重伝達部は、前記左フレーム本体のうち前記左前アクスル支持部よりも前側の部位である左前伝達部位から右側に突出する形状を有し、前記左前アクスル支持部よりも右側において前記前アクスルの前記前側面に前記前後方向に対向する左前対向部を有し、前記前側荷重を前記左前対向部から前記左前伝達部位に伝達することが可能なように構成され、前記左後荷重伝達部は、前記左フレーム本体のうち前記左後アクスル支持部よりも後側の部位である左後伝達部位から右側に突出する形状を有し、前記左後アクスル支持部よりも右側において前記後アクスルの前記後側面に前記前後方向に対向する左後対向部を有し、前記後側荷重を前記左後対向部から前記左後伝達部位に伝達することが可能なように構成される。
【0010】
この移動式クレーンの下部走行体では、右前荷重伝達部及び左前荷重伝達部は、カーボディが上部旋回体から受ける前側荷重を、右前対向部及び左前対向部から、右前アクスル支持部及び左前アクスル支持部よりも前側の右前伝達部位及び左前伝達部位にそれぞれ伝達することが可能である。すなわち、右前荷重伝達部及び左前荷重伝達部は、前アクスルを支持する右前アクスル支持部及び左前アクスル支持部よりも前側において前アクスルを支えることができる。これにより、前アクスルにおいてねじり変形などの変形が生じることが抑制され、カーボディ及び後アクスルにおいても変形が生じることが抑制される。このことは、カーボディの前側部分が下方に変位することを効果的に抑制することを可能にする。また、前アクスル及び後アクスルにおいて変形が生じることが抑制されると、左右のクローラフレームの変形も抑制される。
【0011】
同様に、右後荷重伝達部及び左後荷重伝達部は、カーボディが上部旋回体から受ける後側荷重を、右後対向部及び左後対向部から、右後アクスル支持部及び左後アクスル支持部よりも後側の右後伝達部位及び左後伝達部位にそれぞれ伝達することが可能である。すなわち、右後荷重伝達部及び左後荷重伝達部は、後アクスルを支持する右後アクスル支持部及び左後アクスル支持部よりも後側において後アクスルを支えることができる。これにより、後アクスルにおいてねじり変形などの変形が生じることが抑制され、カーボディ及び前アクスルにおいても変形が生じることが抑制される。このことは、カーボディの後側部分が下方に変位することを効果的に抑制することを可能にする。また、後アクスル及び前アクスルにおいて変形が生じることが抑制されると、左右のクローラフレームの変形も抑制される。
【0012】
従って、この下部走行体では、下部走行体よりも前側又は後側において吊り荷が上部旋回体から吊るされたときに下部走行体に生じる変形を小さくすることができる。このことは、上部旋回体の旋回位置の変化に伴って下部走行体において生じる変形の度合いに差が生じることを抑制することを可能にし、上部旋回体の旋回位置の変化に伴って吊り荷の位置が上下に変動することを抑制することを可能にする。これにより、吊り上げ作業の作業性の低下を抑制することができる。
【0013】
前記右前アクスル支持部及び前記右後アクスル支持部は、前記前アクスル及び前記後アクスルに対する前記右フレーム本体の左右方向の位置を変えることが可能なように前記前アクスル及び前記後アクスルをそれぞれ支持するように構成され、前記左前アクスル支持部及び前記左後アクスル支持部は、前記前アクスル及び前記後アクスルに対する前記左フレーム本体の前記左右方向の位置を変えることが可能なように前記前アクスル及び前記後アクスルをそれぞれ支持するように構成されることが好ましい。
【0014】
この態様では、クローラフレームの旋回中心軸からの距離を左右方向に拡大又は縮小することが可能な拡縮機構を備えているにもかかわらず、下部走行体よりも前側又は後側において吊り荷が上部旋回体から吊るされたときに下部走行体に生じる変形を小さくすることができる。
【0015】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右前対向部及び前記左前対向部の少なくとも一方は、前記カーボディが前記前側荷重を受けたときに、前記前アクスルの前記前側面に接するように構成されていてもよい。
【0016】
この態様では、右前対向部及び左前対向部の少なくとも一方は、カーボディが前側荷重を受けたときに前記前側面に接することにより、当該前側面から前側荷重を受けることができる。これにより、当該前側荷重は、右前伝達部位及び左前伝達部位のうちの対応する伝達部位に伝達される。
【0017】
同様に、前記右後対向部及び前記左後対向部の少なくとも一方は、前記カーボディが前記後側荷重を受けたときに前記後アクスルの前記後側面に接するように構成されていてもよい。
【0018】
この態様では、右後対向部及び左後対向部の少なくとも一方は、カーボディが後側荷重を受けたときに前記後側面に接することにより、当該後側面から後側荷重を受けることができる。これにより、当該後側荷重は、右後伝達部位及び左後伝達部位のうちの対応する伝達部位に伝達される。
【0019】
前記移動式クレーンの下部走行体は、少なくとも一つの前側介在部材をさらに備え、前記少なくとも一つの前側介在部材は、前記右前対向部及び前記左前対向部のうちの少なくとも一つの対向部と、前記前アクスルの前記前側面との間に形成された隙間に着脱可能に配置され、前記カーボディが前記前側荷重を受けたときに、前記前側面及び前記少なくとも一つの対向部の双方に接するように構成されていてもよい。
【0020】
この態様では、前記少なくとも一つの対向部と前側面との間に隙間が形成されている場合であっても、前記少なくとも一つの対向部は、カーボディが前側荷重を受けたときに当該前側荷重を、前記少なくとも一つの前側介在部材を介して受けることができる。これにより、前側荷重は、右前伝達部位及び左前伝達部位のうちの対応する伝達部位に伝達される。また、前記少なくとも一つの前側介在部材を前記隙間から取り外すことにより、右クローラフレーム及び左クローラフレームの左右方向の位置を前アクスル及び後アクスルに対して変えることができる。
【0021】
同様に、前記移動式クレーンの下部走行体は、少なくとも一つの後側介在部材をさらに備え、前記少なくとも一つの後側介在部材は、前記右後対向部及び前記左後対向部のうちの少なくとも一つの対向部と、前記後アクスルの前記後側面との間に形成された隙間に着脱可能に配置され、前記カーボディが前記後側荷重を受けたときに、前記後側面及び前記少なくとも一つの対向部の双方に接するように構成されていてもよい。
【0022】
この態様では、前記少なくとも一つの対向部と後側面との間に隙間が形成されている場合であっても、前記少なくとも一つの対向部は、カーボディが後側荷重を受けたときに当該後側荷重を、前記少なくとも一つの後側介在部材を介して受けることができる。これにより、後側荷重は、右後伝達部位及び左後伝達部位のうちの対応する伝達部位に伝達される。また、前記少なくとも一つの後側介在部材を前記隙間から取り外すことにより、右クローラフレーム及び左クローラフレームの左右方向の位置を前アクスル及び後アクスルに対して変えることができる。
【0023】
前記移動式クレーンの下部走行体は、少なくとも一つの前側接続部材をさらに備え、前記少なくとも一つの前側接続部材は、前記右前対向部及び前記左前対向部のうちの少なくとも一つの対向部と、前記前アクスルとに着脱可能に取り付けられ、前記少なくとも一つの対向部と前記前アクスルとを接続するように構成されていてもよい。
【0024】
この態様では、前記少なくとも一つの対向部は、カーボディが前側荷重を受けたときに当該前側荷重を前記少なくとも一つの前側接続部材を介して受けることができる。これにより、前側荷重は、右前伝達部位及び左前伝達部位のうち前側接続部材が取り付けられた対向部に対応する伝達部位に伝達される。また、前記少なくとも一つの前側接続部材を取り外すことにより、右クローラフレーム及び左クローラフレームの左右方向の位置を前アクスル及び後アクスルに対して変えることができる。
【0025】
この態様の場合、前記少なくとも一つの前側接続部材は、接続ピンにより構成され、前記接続ピンの軸方向は、前記前後方向に向いていることがより好ましい。
【0026】
この態様では、接続ピンが前後方向に向いているので、当該接続ピンは、当該接続ピンが取り付けられた対向部を含むクローラフレームが前アクスルに対して左右方向に変位すること、すなわち接続ピンの軸方向に交差する方向に変位することを効果的に規制できる。従って、この態様では、接続ピンは、移動式クレーンによる吊り荷の吊り上げ作業が行われるときに、前側荷重を右前荷重伝達部又は左前荷重伝達部に伝達する機能と、前アクスルに対するクローラフレームの左右方向の変位を効果的に規制する機能とを併せ持つ。また、この態様では、前アクスルに対してクローラフレームが左右方向に変位するのを抑制するための補強対策を省略すること又は当該補強対策を簡略化することが可能になる。
【0027】
同様に、前記移動式クレーンの下部走行体は、少なくとも一つの後側接続部材をさらに備え、前記少なくとも一つの後側接続部材は、前記右後対向部及び前記左後対向部のうちの少なくとも一つの対向部と、前記後アクスルとに着脱可能に取り付けられ、前記少なくとも一つの対向部と前記後アクスルとを接続するように構成されていてもよい。
【0028】
この態様では、前記少なくとも一つの対向部は、カーボディが後側荷重を受けたときに当該後側荷重を前記少なくとも一つの後側接続部材を介して受けることができる。これにより、後側荷重は、右後伝達部位及び左後伝達部位のうち後側接続部材が取り付けられた対向部に対応する伝達部位に伝達される。また、前記少なくとも一つの後側接続部材を取り外すことにより、右クローラフレーム及び左クローラフレームの左右方向の位置を前アクスル及び後アクスルに対して変えることができる。
【0029】
この態様の場合、前記少なくとも一つの後側接続部材は、接続ピンにより構成され、前記接続ピンの軸方向は、前記前後方向に向いていることがより好ましい。
【0030】
この態様では、接続ピンが前後方向に向いているので、当該接続ピンは、当該接続ピンが取り付けられた対向部を含むクローラフレームが後アクスルに対して左右方向に変位すること、すなわち接続ピンの軸方向に交差する方向に変位することを効果的に規制できる。従って、この態様では、接続ピンは、移動式クレーンによる吊り荷の吊り上げ作業が行われるときに、後側荷重を右後荷重伝達部又は左後荷重伝達部に伝達する機能と、後アクスルに対するクローラフレームの左右方向の変位を効果的に規制する機能とを併せ持つ。また、この態様では、後アクスルに対してクローラフレームが左右方向に変位するのを抑制するための補強対策を省略すること又は当該補強対策を簡略化することが可能になる。
【0031】
前記移動式クレーンの下部走行体は、前記右フレーム本体の前端部及び後端部にそれぞれ回転可能に支持される一対の右ホイールと、前記左フレーム本体の前端部及び後端部にそれぞれ回転可能に支持される一対の左ホイールと、前記一対の右ホイールの間で前記前後方向に間隔をおいて配置されて前記右フレーム本体の下部に回転可能に支持される複数の右ローラであって、最も前に位置する右前端ローラと最も後に位置する右後端ローラとを含む複数の右ローラと、前記一対の左ホイールの間で前記前後方向に間隔をおいて配置されて前記左フレーム本体の下部に回転可能に支持される複数の左ローラであって、最も前に位置する左前端ローラと最も後に位置する左後端ローラとを含む複数の左ローラと、をさらに備え、前記右前荷重伝達部は、平面視において前記右前対向部に含まれる何れかの点と前記右前伝達部位に含まれる何れかの点とを通る直線である右前直線が前記右前端ローラ又は前記右前端ローラよりも前側を通るように構成され、前記左前荷重伝達部は、平面視において前記左前対向部に含まれる何れかの点と前記左前伝達部位に含まれる何れかの点とを通る直線である左前直線が前記左前端ローラ又は前記左前端ローラよりも前側を通るように構成されていることが好ましい。
【0032】
通常、右前端ローラは右フレーム本体の前端部に比較的近い位置に配置され、左前端ローラは左フレーム本体の前端部に比較的近い位置に配置される。従って、右前直線と右前端ローラとが上記の位置関係を有するように右前荷重伝達部が構成されることにより、右前荷重伝達部が右フレーム本体に対して前側荷重を伝達する部分と右フレーム本体の前端部との前後方向の距離を効果的に小さくすることができる。また、左前直線と左前端ローラとが上記の位置関係を有するように左前荷重伝達部が構成されることにより、左前荷重伝達部が左フレーム本体に対して前側荷重を伝達する部分と左フレーム本体の前端部との前後方向の距離を効果的に小さくすることができる。このことは、下部走行体よりも前側において吊り荷が上部旋回体から吊るされたときに右フレーム本体の前側部分及び左フレーム本体の前側部分にそれぞれ生じるたわみを小さくすることを可能にする。
【0033】
また、この態様では、右前荷重伝達部は、右フレーム本体のうちその前端部に比較的近い部分、すなわち、右フレーム本体のうち右前端ローラに対応する部分又はこれよりも前側の部分において当該右フレーム本体によって支えられることが可能な構造を有し、前アクスルは、このような構造を有する右前荷重伝達部によって支えられる。同様に、左前荷重伝達部は、左フレーム本体のうちその前端部に比較的近い部分、すなわち、左フレーム本体のうち左前端ローラに対応する部分又はこれよりも前側の部分において当該左フレーム本体によって支えられることが可能な構造を有し、前アクスルは、このような構造を有する左前荷重伝達部によって支えられる。これにより、前アクスルにおいて変形が生じることがより効果的に抑制され、その結果、カーボディの前側部分が下方に変位することがより効果的に抑制される。
【0034】
ここで、カーボディが上部旋回体から比較的大きな前側荷重を受けたときには右前端ローラ及び左前端ローラがおおよその転倒支点(前側転倒支点)となるので、前記右前直線は、平面視において前記右前端ローラを通る直線であり、前記左前直線は、平面視において前記左前端ローラを通る直線であることが好ましい。
【0035】
この態様では、右前荷重伝達部及び左前荷重伝達部は、前側荷重を、右フレーム本体のうち前側転倒支点に対応する部分及び左フレーム本体のうち前側転倒支点に対応する部分にそれぞれ直接的に伝達することができる。このことは、前側荷重に起因して右フレーム本体の前側部分及び左フレーム本体の前側部分にそれぞれ生じるたわみをより小さくすることを可能にする。
【0036】
また、前記右前直線は、平面視において前記旋回中心軸をさらに通る直線であり、前記左前直線は、平面視において前記旋回中心軸をさらに通る直線であることが好ましい。
【0037】
この態様は、平面視において右前対向部に含まれる何れかの点と右前伝達部位に含まれる何れかの点とを、旋回中心軸と右前端ローラとを通る右前直線上に位置させることができ、平面視において左前対向部に含まれる何れかの点と左前伝達部位に含まれる何れかの点とを、旋回中心軸と左前端ローラとを通る左前直線上に位置させることができる。これにより、右前荷重伝達部により前側荷重が右フレーム本体に伝達される経路を旋回中心軸から右前端ローラに向かう方向に近づけることができ、左前荷重伝達部により前側荷重が左フレーム本体に伝達される経路を旋回中心軸から左前端ローラに向かう方向に近づけることができる。このことは、前側荷重が右フレーム本体における前側転倒支点に対応する部分及び左フレーム本体における前側転倒支点に対応する部分にそれぞれ効率よく伝達されることを可能にする。
【0038】
さらに、前記右前荷重伝達部は、平面視において前記右前直線に沿って前記右前対向部から前記右前伝達部位まで連続する右前連続部分を有し、前記左前荷重伝達部は、平面視において前記左前直線に沿って前記左前対向部から前記左前伝達部位まで連続する左前連続部分を有することが好ましい。
【0039】
この態様では、右前連続部分は、平面視において右前対向部から右前伝達部位まで途切れることなく連続し、左前連続部分は、平面視において左前対向部から左前伝達部位まで途切れることなく連続するので、右前対向部及び左前対向部が受ける前側荷重は、右前連続部分及び左前連続部分に沿って右前伝達部位及び左前伝達部位まで連続的に効率よく伝達される。
【0040】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右後荷重伝達部は、平面視において前記右後対向部に含まれる何れかの点と前記右後伝達部位に含まれる何れかの点とを通る直線である右後直線が前記右後端ローラ又は前記右後端ローラよりも後側を通るように構成され、前記左後荷重伝達部は、平面視において前記左後対向部に含まれる何れかの点と前記左後伝達部位に含まれる何れかの点とを通る直線である左後直線が前記左後端ローラ又は前記左後端ローラよりも後側を通るように構成されていることが好ましい。
【0041】
通常、右後端ローラは右フレーム本体の後端部に比較的近い位置に配置され、左後端ローラは左フレーム本体の後端部に比較的近い位置に配置される。従って、右後直線と右後端ローラとが上記の位置関係を有するように右後荷重伝達部が構成されることにより、右後荷重伝達部が右フレーム本体に対して後側荷重を伝達する部分と右フレーム本体の後端部との前後方向の距離を効果的に小さくすることができる。また、左後直線と左後端ローラとが上記の位置関係を有するように左後荷重伝達部が構成されることにより、左後荷重伝達部が左フレーム本体に対して後側荷重を伝達する部分と左フレーム本体の後端部との前後方向の距離を効果的に小さくすることができる。このことは、下部走行体よりも後側において吊り荷が上部旋回体から吊るされたときに右フレーム本体の後側部分及び左フレーム本体の後側部分にそれぞれ生じるたわみを小さくすることを可能にする。
【0042】
また、この態様では、右後荷重伝達部は、右フレーム本体のうちその後端部に比較的近い部分、すなわち、右フレーム本体のうち右後端ローラに対応する部分又はこれよりも後側の部分において当該右フレーム本体によって支えられることが可能な構造を有し、後アクスルは、このような構造を有する右後荷重伝達部によって支えられる。同様に、左後荷重伝達部は、左フレーム本体のうちその後端部に比較的近い部分、すなわち、左フレーム本体のうち左後端ローラに対応する部分又はこれよりも後側の部分において当該左フレーム本体によって支えられることが可能な構造を有し、後アクスルは、このような構造を有する左後荷重伝達部によって支えられる。これにより、後アクスルにおいて変形が生じることがより効果的に抑制され、その結果、カーボディの後側部分が下方に変位することがより効果的に抑制される。
【0043】
ここで、カーボディが上部旋回体から比較的大きな後側荷重を受けたときには右後端ローラ及び左後端ローラがおおよその転倒支点(後側転倒支点)となるので、前記右後直線は、平面視において前記右後端ローラを通る直線であり、前記左後直線は、平面視において前記左後端ローラを通る直線であることが好ましい。
【0044】
この態様では、右後荷重伝達部及び左後荷重伝達部は、後側荷重を、右フレーム本体のうち後側転倒支点に対応する部分及び左フレーム本体のうち後側転倒支点に対応する部分にそれぞれ直接的に伝達することができる。このことは、後側荷重に起因して右フレーム本体の後側部分及び左フレーム本体の後側部分にそれぞれ生じるたわみをより小さくすることを可能にする。
【0045】
また、前記右後直線は、平面視において前記旋回中心軸をさらに通る直線であり、前記左後直線は、平面視において前記旋回中心軸をさらに通る直線であることが好ましい。
【0046】
この態様は、平面視において右後対向部に含まれる何れかの点と右後伝達部位に含まれる何れかの点とを、旋回中心軸と右後端ローラとを通る右後直線上に位置させることができ、平面視において左後対向部に含まれる何れかの点と左後伝達部位に含まれる何れかの点とを、旋回中心軸と左後端ローラとを通る左後直線上に位置させることができる。これにより、右後荷重伝達部により後側荷重が右フレーム本体に伝達される経路を旋回中心軸から右後端ローラに向かう方向に近づけることができ、左後荷重伝達部により後側荷重が左フレーム本体に伝達される経路を旋回中心軸から左後端ローラに向かう方向に近づけることができる。このことは、後側荷重が右フレーム本体における後側転倒支点に対応する部分及び左フレーム本体における後側転倒支点に対応する部分にそれぞれ効率よく伝達されることを可能にする。
【0047】
さらに、前記右後荷重伝達部は、平面視において前記右後直線に沿って前記右後対向部から前記右後伝達部位まで連続する右後連続部分を有し、前記左後荷重伝達部は、平面視において前記左後直線に沿って前記左後対向部から前記左後伝達部位まで連続する左後連続部分を有することが好ましい。
【0048】
この態様では、右後連続部分は、平面視において右後対向部から右後伝達部位まで途切れることなく連続し、左後連続部分は、平面視において左後対向部から左後伝達部位まで途切れることなく連続するので、右後対向部及び左後対向部が受ける後側荷重は、右後連続部分及び左後連続部分に沿って右後伝達部位及び左後伝達部位まで連続的に効率よく伝達される。
【発明の効果】
【0049】
本発明では、下部走行体よりも前側又は後側において吊り荷が上部旋回体から吊るされたときの変形が小さい下部走行体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】実施形態に係る下部走行体を備える移動式クレーンの一例を示す側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る下部走行体を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る下部走行体を示す平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る下部走行体を示す平面図である。
【
図5】
図3のV-V線における概略の断面図である。
【
図6】
図5において一点鎖線VIで囲まれた部分を拡大した断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る下部走行体を示す平面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線における概略の断面図である。
【
図9】
図8において一点鎖線IXで囲まれた部分を拡大した断面図である。
【
図10】第3実施形態に係る下部走行体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照しつつ、実施形態に係る移動式クレーンの下部走行体について説明する。なお、図面において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」及び「下」の文字が記載されているが、これらは、下部走行体が前進後退する方向を基準とするものである。すなわち、下部走行体の前後方向は、後述するクローラフレームが延びる水平な方向であり、下部走行体の左右方向は、前記前後方向に直交する水平な方向である。下部走行体の上下方向は、上部旋回体の旋回中心軸に平行な方向である。
【0052】
[移動式クレーンの全体構造]
図1に示すように、本実施形態に係る移動式クレーン100は、下部走行体101と、上部旋回体102と、を備える。下部走行体101は、上部旋回体102を旋回可能に下から支持するとともに、地上を走行することができるように構成されている。
【0053】
上部旋回体102は、下部走行体101上に配置される。上部旋回体102は、旋回フレーム103と、作業装置と、キャブ104と、カウンタウエイト105とを含む。前記作業装置、キャブ104及びカウンタウエイト105は、旋回フレーム103上に搭載されている。
【0054】
前記作業装置は、吊り荷の吊り上げ作業(クレーン作業)等を行うためのものである。本実施形態では、前記作業装置は、ブーム106と、吊用ウィンチ107と、吊りロープ108と、フック装置109と、ガントリ110と、起伏用ウィンチ111と、下部スプレッダ112と、起伏ロープ113と、上部スプレッダ114と、ガイライン115と、を含む。なお、前記作業装置は、
図1に示す具体例に限られず、例えば、ブームの先端部に取り付け可能な図略のジブをさらに備えていてもよい。また、
図1に示す具体例では、ブーム106は、ラチス構造を有するラチスブームであるが、これに限られず、伸縮することにより長さを変化させることが可能なテレスコピックブームであってもよい。
【0055】
ブーム106は、旋回フレーム103の前部に起伏可能に取り付けられており、そのブーム106の先端から吊りロープ108を介して吊り荷を吊るためのフック装置109が吊り下げられている。吊用ウィンチ107は、旋回フレーム103上に搭載されており、吊りロープ108の巻き取り又は繰り出しを行うことによりフック装置109の巻き上げ又は巻き下げを行う。ガントリ110は、旋回フレーム103の後部上に立設されている。ガイライン115は、その一端がブーム106の先端部に接続されており、その他端部が上部スプレッダ114に接続されている。下部スプレッダ112は、ガントリ110の上端部に設けられており、この下部スプレッダ112と上部スプレッダ114とは互いに離間して配置されている。下部スプレッダ112及び上部スプレッダ114には、起伏ロープ113が掛け回されている。起伏用ウィンチ111は、旋回フレーム103上に搭載されており、起伏ロープ113の巻き取り又は繰り出しを行うことにより下部スプレッダ112に対する上部スプレッダ114の離間距離を縮小又は拡大させる。この両スプレッダ112,114間の離間距離の縮小又は拡大に伴って、ブーム106が起伏される。
【0056】
[下部走行体の構造]
図2は、第1実施形態に係る下部走行体101を示す斜視図であり、
図3は、その平面図である。本実施形態では、
図1、
図2及び
図3に示すように、下部走行体101の前後方向は、後述するクローラフレーム2R,2Lの長手方向であり、前記前後方向のうちの前方は、各クローラフレームのホイール24R(ドライブタンブラ)からホイール23R(アイドラ)に向かう方向であり、後方は、その反対方向である。ただし、下部走行体101の前後方向は、
図2及び
図3に規定される方向とは反対方向として規定されていてもよい。
【0057】
下部走行体101は、下部フレーム1と、右走行装置と、左走行装置と、を備える。下部フレーム1は、上部旋回体102を旋回可能に支持するためのフレームである。右走行装置及び左走行装置のそれぞれは、下部フレーム1を支持しながら地上を走行するための装置である。
【0058】
下部フレーム1は、カーボディ10と、前アクスル11と、後アクスル12と、一対のクローラ移動シリンダ15R,15Lと、を備える。カーボディ10、前アクスル11及び後アクスル12は一体の構造物を構成する。なお、
図3では、一対のクローラ移動シリンダ15R,15Lの図示が省略されている。
【0059】
カーボディ10は、移動式クレーン100の上部旋回体102を旋回中心軸Cの周りに旋回可能に支持する。旋回中心軸Cは、地面が水平である場合には、鉛直方向にほぼ平行である。カーボディ10は、旋回中心軸Cを中心とする円筒形状を有する筒部14と、この筒部14の上部に支持される旋回ベアリング13と、筒部14の下部において当該筒部14を支持する接続部16と、を含む。この旋回ベアリング13上に上部旋回体102が旋回可能に取り付けられる。
【0060】
前アクスル11は、カーボディ10から右側及び左側にそれぞれ延び、後アクスル12は、前アクスル11よりも後側においてカーボディ10から右側及び左側にそれぞれ延びている。具体的に、
図3に示す平面視において、前アクスル11は、カーボディ10の前側部分から右側及び左側にそれぞれ突出し、後アクスル12は、カーボディ10の後側部分から右側及び左側にそれぞれ突出している。本実施形態では、前アクスル11及び後アクスル12のそれぞれは、左右方向に平行に延びる柱形状、具体的には、四角柱形状を有する。
【0061】
図2に示すように、前アクスル11と後アクスル12は、前後方向に間隔をおいて設けられている。前アクスル11は、旋回中心軸Cよりも前側に位置し、後アクスル12は、旋回中心軸Cよりも後側に位置する。前記接続部16は、これらのアクスル11,12の間に介在する。この接続部16は、前アクスル11、後アクスル12及び筒部14と接続され、これにより、接続部16、前アクスル11、後アクスル12及び筒部14は一体の構造物を構成する。接続部16は、前アクスル11及び後アクスル12の左右方向の中央に設けられている。従って、本実施形態では、前記構造物は、
図3に示す平面視において略H字形状を有する。
【0062】
図3に示すように、前アクスル11は、前側を向く前側面SFを有し、
図2及び
図3に示すように、後アクスル12は、後側を向く後側面SRを有する。本実施形態では、前側面SF及び後側面SRのそれぞれは、左右方向及び上下方向に平行な平面である。
【0063】
右走行装置は、右クローラフレーム2Rと、一対の右ホイール23R,24Rと、右クローラベルト25Rと、複数の右ローラ26と、走行駆動装置29(
図1参照)と、を備える。同様に、左走行装置は、左クローラフレーム2Lと、一対の左ホイール23L,24Lと、左クローラベルト25Lと、複数の左ローラ26と、走行駆動装置29と、を備える。
【0064】
右クローラフレーム2Rは、右フレーム本体20Rを含み、左クローラフレーム2Lは、左フレーム本体20Lを含む。
【0065】
右フレーム本体20Rは、旋回中心軸Cよりも右側において前後方向に延びる形状を有する。右フレーム本体20Rは、右前アクスル支持部27及び右後アクスル支持部28を有する。これらのアクスル支持部27,28は、前アクスル11及び後アクスル12にそれぞれ対応する位置に設けられ、右フレーム本体20Rが前アクスル11及び後アクスル12に対する左右方向の位置を変えることが可能なように前アクスル11及び後アクスル12をそれぞれ支持する。
【0066】
右前アクスル支持部27及び右後アクスル支持部28のそれぞれは、右フレーム本体20Rを左右方向に貫通する貫通孔を画定する内側面を有し、前アクスル11及び後アクスル12のそれぞれは前記貫通孔に挿入されている。本実施形態では、当該内側面は、前アクスル11及び後アクスル12のうちの対応するアクスルの4つの外側面(前側面、後側面、下面及び上面)に対応する4つの面(前面、後面、底面及び天井面)により構成される。前面及び後面は、対応するアクスルが前後方向に変位することを規制し、底面及び上面は、対応するアクスルが上下方向に変位することを規制する。
【0067】
本実施形態では、右前アクスル支持部27及び右後アクスル支持部28のそれぞれは、右フレーム本体20Rのうち、当該アクスル支持部の周りに位置する左側面から左側に環状に突出する補強部27a,28aをさらに有する。これらの補強部27a,28aは、前アクスル11及び後アクスル12の周りを囲むように設けられている。これにより、右前アクスル支持部27及び右後アクスル支持部28は、前アクスル11及び後アクスル12をより安定して支持することができる。
【0068】
同様に、左フレーム本体20Lは、旋回中心軸Cよりも左側において前後方向に延びる形状を有する。左フレーム本体20Lは、左前アクスル支持部27及び左後アクスル支持部28を有する。これらのアクスル支持部27,28は、前アクスル11及び後アクスル12にそれぞれ対応する位置に設けられ、左フレーム本体20Lが前アクスル11及び後アクスル12に対する左右方向の位置を変えることが可能なように前アクスル11及び後アクスル12をそれぞれ支持する。左フレーム本体20Lのアクスル支持部27,28の具体的な構造は、上述した右フレーム本体20Rのアクスル支持部27,28と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0069】
一対の右ホイール23R,24Rは、右フレーム本体20Rの前端部及び後端部にそれぞれ回転可能に支持される。本実施形態では、前側に位置する右ホイール23Rは、アイドラによって構成され、後側に位置する右ホイール24Rは、ドライブタンブラによって構成される。このドライブタンブラは、当該ドライブタンブラに隣接する位置において右フレーム本体20Rの後端部に支持される前記走行駆動装置29に連結されている。走行駆動装置29は、例えば、走行モータと走行減速機とを含む。
【0070】
右クローラベルト25Rは、一対の右ホイール23R,24Rに環状に架けられて周回移動可能なベルト状の構造を有する。言い換えると、右クローラベルト25Rは、一対の右ホイール23R,24Rに無端状に支持されている。この右クローラベルト25Rは、多数のクローラシューが連結されて構成されている。
【0071】
ドライブタンブラにより構成される右ホイール24Rの外周部には、右クローラベルト25Rの内周部と係合可能なように周方向に沿って複数の突起が形成されている。右ホイール24Rは、走行駆動装置29から駆動力を与えられ、この駆動力は、右クローラベルト25Rに伝達される。これにより、右クローラベルト25Rは周回移動する。アイドラにより構成される右ホイール23Rは、右クローラベルト25Rに従動して回転する。
【0072】
複数の右ローラ26は、右クローラフレーム2Rの右フレーム本体20Rの下部においてそれぞれ回転可能に支持されている。複数の右ローラ26は、一対の右ホイール23R,24Rの間で前後方向に間隔をおいて配置されている。複数の右ローラ26は、右クローラベルト25Rを地面に押し付けるとともに、右クローラベルト25Rの周回移動を案内する。
【0073】
以下では、複数の右ローラ26のうち最も前に位置する右ローラ26(本実施形態では、右ホイール23Rに最も近い右ローラ26)を、右前端ローラ261と称し、複数の右ローラ26のうち最も後に位置する右ローラ26(本実施形態では、右ホイール24Rに最も近い右ローラ26)を、右後端ローラ262と称する。
【0074】
左走行装置における一対の左ホイール23L,24L、左クローラベルト25L及び複数の左ローラ26の構造は、上述した右走行装置における一対の右ホイール23R,24R、右クローラベルト25R及び複数の右ローラ26の構造と、左右対称である点を除いて、同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、以下では、複数の左ローラ26のうち最も前に位置する左ローラ26(本実施形態では、左ホイール23Lに最も近い左ローラ26)を、左前端ローラ261と称し、複数の左ローラ26のうち最も後に位置する左ローラ26(本実施形態では、左ホイール24Lに最も近い左ローラ26)を、左後端ローラ262と称する。
【0075】
下部フレーム1の一対のクローラ移動シリンダ15R,15Lは、前アクスル11と後アクスル12との間に配置され、下部フレーム1と右走行装置及び左走行装置とを連結する油圧式シリンダである。右側のクローラ移動シリンダ15Rの先端部は、右クローラフレーム2Rの右フレーム本体20Rに固定され、左側のクローラ移動シリンダ15Lの先端部は、左クローラフレーム2Lの左フレーム本体20Lに固定されている。従って、右側のクローラ移動シリンダ15Rの伸縮動作に応じて、前記右走行装置の右クローラフレーム2Rが左右方向に変位し、左側のクローラ移動シリンダ15Lの伸縮動作に応じて、前記左走行装置の左クローラフレーム2Lが左右方向に変位する。
図3は、右クローラフレーム2R及び左クローラフレーム2Lが旋回中心軸Cから最も離れた状態を示し、
図4は、右クローラフレーム2R及び左クローラフレーム2Lが旋回中心軸Cに最も近づいた状態を示している。
【0076】
[荷重伝達構造]
本実施形態に係る下部走行体101は、上述したように右クローラフレーム2R及び左クローラフレーム2Lの旋回中心軸Cからの距離を左右方向に拡大又は縮小することが可能な拡縮機構を備えていながら、以下に説明する荷重伝達構造を備えることにより、前側荷重及び後側荷重に起因してカーボディ10、前アクスル11、後アクスル12、クローラフレーム2R,2Lなどにおいて生じるたわみなどの変形を小さくすることができる。この前側荷重は、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102のフック装置109に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける荷重であり、前記後側荷重は、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102のフック装置109に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける荷重である。以下、下部走行体101が備える荷重伝達構造について詳細に説明する。
【0077】
図1及び
図2に示すような下部走行体101を備える移動式クレーン100では、前記右走行装置の右クローラベルト25R及び前記左走行装置の左クローラベルト25Lのそれぞれの先端部及び後端部は、側面視で円弧形状を有する。このため、これらのクローラベルト25R,25Lの先端部及び後端部は地面から浮いた状態となる。右クローラベルト25R及び左クローラベルト25Lにおいて、カーボディ10が上部旋回体102から前記前側荷重を受けたときに転倒支点(前側転倒支点)となる部位は、右前端ローラ261及び左前端ローラ261に対応する部位であり、カーボディ10が上部旋回体102から前記後側荷重を受けたときに転倒支点(後側転倒支点)となる部位は、右後端ローラ262及び左後端ローラ262に対応する部位である。
【0078】
本実施形態に係る下部走行体101では、右クローラフレーム2Rは、右前荷重伝達部21Rと、右後荷重伝達部22Rと、をさらに含み、左クローラフレーム2Lは、左前荷重伝達部21Lと、左後荷重伝達部22Lと、をさらに含む。
【0079】
右クローラフレーム2Rの右前荷重伝達部21Rは、右フレーム本体20Rのうち右前アクスル支持部27よりも前側の部位である右前伝達部位201から左側に突出する形状を有し、当該右前伝達部位201において右フレーム本体20Rに支持されている。右前荷重伝達部21Rは、右フレーム本体20Rの右前アクスル支持部27よりも左側において前アクスル11の前側面SFに前後方向に対向する右前対向部ST1を有する。右前荷重伝達部21Rは、前記前側荷重を右前対向部ST1から右前伝達部位201に伝達することが可能なように構成される。右前荷重伝達部21Rが右前対向部ST1から右前伝達部位201に伝達する前側荷重は、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0080】
右クローラフレーム2Rの右後荷重伝達部22Rは、右フレーム本体20Rのうち右後アクスル支持部28よりも後側の部位である右後伝達部位202から左側に突出する形状を有し、当該右後伝達部位202において右フレーム本体20Rに支持されている。右後荷重伝達部22Rは、右フレーム本体20Rの右後アクスル支持部28よりも左側において後アクスル12の後側面SRに前後方向に対向する右後対向部ST2を有する。右後荷重伝達部22Rは、前記後側荷重を右後対向部ST2から右後伝達部位202に伝達することが可能なように構成される。右後荷重伝達部22Rが右後対向部ST2から右後伝達部位202に伝達する後側荷重は、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0081】
左クローラフレーム2Lの左前荷重伝達部21Lは、左フレーム本体20Lのうち左前アクスル支持部27よりも前側の部位である左前伝達部位203から右側に突出する形状を有し、当該左前伝達部位203において左フレーム本体20Lに支持されている。左前荷重伝達部21Lは、左フレーム本体20Lの左前アクスル支持部27よりも右側において前アクスル11の前側面SFに前後方向に対向する左前対向部ST3を有する。左前荷重伝達部21Lは、前記前側荷重を左前対向部ST3から左前伝達部位203に伝達することが可能なように構成される。左前荷重伝達部21Lが左前対向部ST3から左前伝達部位203に伝達する前側荷重は、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0082】
左クローラフレーム2Lの左後荷重伝達部22Lは、左フレーム本体20Lのうち左後アクスル支持部28よりも後側の部位である左後伝達部位204から右側に突出する形状を有し、当該左後伝達部位204において左フレーム本体20Lに支持されている。左後荷重伝達部22Lは、左フレーム本体20Lの左後アクスル支持部28よりも右側において後アクスル12の後側面SRに前後方向に対向する左後対向部ST4を有する。左後荷重伝達部22Lは、前記後側荷重を左後対向部ST4から左後伝達部位204に伝達することが可能なように構成される。左後荷重伝達部22Lが左後対向部ST4から左後伝達部位204に伝達する後側荷重は、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0083】
上記のような荷重伝達構造を備える本実施形態に係る下部走行体101では、右クローラフレーム2Rの右前荷重伝達部21R及び左クローラフレーム2Lの左前荷重伝達部21Lは、カーボディ10が上部旋回体102から受ける前記前側荷重を、右前対向部ST1及び左前対向部ST3から、右前アクスル支持部27及び左前アクスル支持部27よりも前側の右前伝達部位201及び左前伝達部位203にそれぞれ伝達することが可能である。具体的に、カーボディ10が上部旋回体102から前記前側荷重を受けると、この前側荷重は、前アクスル11に伝達され、この前アクスル11の前側面SFから右前荷重伝達部21Rの右前対向部ST1及び左前荷重伝達部21Lの左前対向部ST3にそれぞれ伝達される。右前荷重伝達部21Rは、右前対向部ST1から右前伝達部位201まで連続する部材であり、左前荷重伝達部21Lは、左前対向部ST3から左前伝達部位203まで連続する部材であるので、これらの右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lは、右前対向部ST1及び左前対向部ST3にそれぞれ伝達された前記前側荷重を、右前伝達部位201及び左前伝達部位203にそれぞれ伝達することができる。
【0084】
同様に、右クローラフレーム2Rの右後荷重伝達部22R及び左クローラフレーム2Lの左後荷重伝達部22Lは、カーボディ10が上部旋回体102から受ける前記後側荷重を、右後対向部ST2及び左後対向部ST4から、右後アクスル支持部28及び左後アクスル支持部28よりも後側の右後伝達部位202及び左後伝達部位204にそれぞれ伝達することが可能である。具体的に、カーボディ10が上部旋回体102から前記後側荷重を受けると、この後側荷重は、後アクスル12に伝達され、この後アクスル12の後側面SRから右後荷重伝達部22Rの右後対向部ST2及び左後荷重伝達部22Lの左後対向部ST4にそれぞれ伝達される。右後荷重伝達部22Rは、右後対向部ST2から右後伝達部位202まで連続する部材であり、左後荷重伝達部22Lは、左後対向部ST4から左後伝達部位204まで連続する部材であるので、これらの右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lは、右後対向部ST2及び左後対向部ST4にそれぞれ伝達された前記前側荷重を、右後伝達部位202及び左後伝達部位204にそれぞれ伝達することができる。
【0085】
一方、上記のような荷重伝達部を備えていない従来の下部走行体では、カーボディが上部旋回体から受ける前側荷重は、前アクスルから右クローラフレームの右前アクスル支持部及び左クローラフレームの左前アクスル支持部に伝達される。すなわち、従来の下部走行体では、前記前側荷重が前アクスルから右クローラフレームに伝達される部位は、右前アクスル支持部よりも前にはなく、前記前側荷重が前アクスルから左クローラフレームに伝達される部位は、左前アクスル支持部よりも前にはない。同様に、カーボディが上部旋回体から受ける後側荷重は、後アクスルから右クローラフレームの右後アクスル支持部及び左クローラフレームの左後アクスル支持部に伝達される。すなわち、従来の下部走行体では、前記後側荷重が後アクスルから右クローラフレームに伝達される部位は、右後アクスル支持部よりも後にはなく、前記後側荷重が後アクスルから左クローラフレームに伝達される部位は、左後アクスル支持部よりも後にはない。
【0086】
本実施形態に係る下部走行体101では、右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lは、前アクスル11を支持する右前アクスル支持部27及び左前アクスル支持部27よりも前側において前アクスル11を支えることができる。これにより、前アクスル11においてねじり変形などの変形が生じることが抑制され、カーボディ10及び後アクスル12においても変形が生じることが抑制される。前アクスル11のねじり変形は、例えば前アクスル11の上面を前方にたわませるような変形である。同様に、右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lは、後アクスル12を支持する右後アクスル支持部28及び左後アクスル支持部28よりも後側において後アクスル12を支えることができる。これにより、後アクスル12においてねじり変形などの変形が生じることが抑制され、カーボディ10及び前アクスル11においても変形が生じることが抑制される。後アクスル12のねじり変形は、後アクスルの上面を後方にたわませるような変形である。また、前アクスル11及び後アクスル12において変形が生じることが抑制されると、左右のクローラフレーム2R,2Lの変形も抑制される。
【0087】
また、本実施形態に係る下部走行体101では、右クローラフレーム2Rの右フレーム本体20R及び左クローラフレーム2Lの左フレーム本体20Lのそれぞれにおいて、前記前側転倒支点に対応する部位と前記前側荷重が伝達される部位との前後方向の距離を、従来の下部走行体に比べて小さくすることができ、前記後側転倒支点に対応する部位と前記後側荷重が伝達される部位との前後方向の距離を、従来の下部走行体に比べて小さくすることができる。このことは、前記前側荷重に起因して右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lの前側部分において生じるたわみ、及び前記後側荷重に起因して右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lの後側部分において生じるたわみを、従来に比べて小さくすることを可能にする。
【0088】
また、本実施形態では、右クローラフレーム2Rの右前荷重伝達部21Rは、
図3に示す平面視において、右前対向部ST1に含まれる点A1と右前伝達部位201に含まれる点A2とを通る直線である右前直線LAが右前端ローラ261を通るような形状を有する。右前直線LAは、平面視において右前端ローラ261と旋回中心軸Cとを通る直線である。右前荷重伝達部21Rは、右前直線LAに重なるような位置に設けられている。本実施形態では、右前直線LAは、平面視において、右前端ローラ261の回転中心軸上であって右前端ローラ261の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを通る直線である。このような位置に設けられる右前荷重伝達部21Rは、前記前側荷重を、右フレーム本体20Rにおける前記前側転倒支点に対応する部位にさらに近い部位に伝達することができる。また、右前直線LAと右前端ローラ261とが上記の位置関係を有するように右前荷重伝達部21Rが構成されることにより、右前荷重伝達部21Rは、右フレーム本体20Rのうち右前端ローラ261に対応する部分において当該右フレーム本体20Rによって支えられることが可能な構造を有し、前アクスル11は、このような構造を有する右前荷重伝達部21Rによって支えられる。これにより、前アクスル11及びカーボディ10において変形が生じることがより効果的に抑制される。また、右前直線LAと右前端ローラ261とが上記の位置関係を有するように右前荷重伝達部21Rが構成されることにより、前記前側荷重に起因して右フレーム本体20Rの前側部分において生じるたわみをより小さくすることを可能にする。
【0089】
ただし、右前直線LAを規定するための右前対向部ST1における点A1及び右前伝達部位201における点A2のそれぞれは、上記のような位置の点に限られない。点A1は、前アクスル11の前側面SFから前側荷重を受けることが可能な右前対向部ST1に含まれる他の点であってもよく、点A2は、右フレーム本体20Rに前側荷重を伝達することが可能な右前伝達部位201に含まれる他の点であってもよい。具体的には、右前直線LAは、例えば、
図3に示す平面視において、右前対向部ST1のうち最も右の点と、右前伝達部位201のうち最も前の点とを通る直線であってもよい。
【0090】
また、右前荷重伝達部21Rは、
図3に示す平面視において右前直線LAに沿って右前対向部ST1から右前伝達部位201まで連続する右前連続部分CXを有する。このように右前連続部分CXは、平面視において右前対向部ST1から右前伝達部位201まで途切れることなく連続するので、右前対向部ST1が受ける前記前側荷重は、右前連続部分CXに沿って右前伝達部位201まで連続的に効率よく伝達される。具体的には、右前連続部分CXは、右前対向部ST1から右前伝達部位201まで平面視で右前直線LAに重なりながら連続している。
【0091】
なお、上記のような右前荷重伝達部21Rと旋回中心軸Cと右前端ローラ261との位置関係は、これらを平面視したときのものであるので、右前荷重伝達部21Rと旋回中心軸Cと右前端ローラ261とは、必ずしも上下方向の位置が同じである必要はなく、上下方向に互いにずれた位置に配置されていてもよい。以下に説明する他の荷重伝達部22R,21L,22Lについても同様である。
【0092】
右クローラフレーム2Rの右後荷重伝達部22Rは、平面視において、右後対向部ST2に含まれる点B1と右後伝達部位202に含まれる点B2とを通る直線である右後直線LBが右後端ローラ262を通るような形状を有する。右後直線LBは、平面視において右後端ローラ262と旋回中心軸Cとを通る直線である。右後荷重伝達部22Rは、右後直線LBに重なるような位置に設けられている。本実施形態では、右後直線LBは、平面視において、右後端ローラ262の回転中心軸上であって右後端ローラ262の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを結ぶ直線である。
【0093】
ただし、右後直線LBを規定するための右後対向部ST2における点B1及び右後伝達部位202における点B2のそれぞれは、上記のような位置の点に限られない。点B1は、後アクスル12の後側面SRから後側荷重を受けることが可能な右後対向部ST2に含まれる他の点であってもよく、点B2は、右フレーム本体20Rに後側荷重を伝達することが可能な右後伝達部位202に含まれる他の点であってもよい。具体的には、右後直線LBは、例えば、
図3に示す平面視において、右後対向部ST2のうち最も右の点と、右後伝達部位202のうち最も後の点とを通る直線であってもよい。
【0094】
また、本実施形態では、右後荷重伝達部22Rは、平面視において右後直線LBに沿って右後対向部ST2から右後伝達部位202まで連続する右後連続部分CXを有する。具体的には、右後連続部分CXは、右後対向部ST2から右後伝達部位202まで平面視で右後直線LBに重なりながら連続している。
【0095】
右後荷重伝達部22Rが上記のような構成を備えることにより得られる効果は、右前荷重伝達部21Rについて上述した効果と同様である。
【0096】
左クローラフレーム2Lの左前荷重伝達部21Lは、平面視において、左前対向部ST3に含まれる点C1と左前伝達部位203に含まれる点C2とを通る直線である左前直線LCが左前端ローラ261を通るような形状を有する。左前直線LCは、平面視において左前端ローラ261と旋回中心軸Cとを通る直線である。左前荷重伝達部21Lは、左前直線LCに重なるような位置に設けられている。本実施形態では、左前直線LCは、平面視において、左前端ローラ261の回転中心軸上であって左前端ローラ261の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを結ぶ直線である。
【0097】
ただし、左前直線LCを規定するための左前対向部ST3における点C1及び左前伝達部位203における点C2のそれぞれは、上記のような位置の点に限られない。点C1は、前アクスル11の前側面SFから前側荷重を受けることが可能な左前対向部ST3に含まれる他の点であってもよく、点C2は、左フレーム本体20Lに前側荷重を伝達することが可能な左前伝達部位203に含まれる他の点であってもよい。具体的には、左前直線LCは、例えば、
図3に示す平面視において、左前対向部ST3のうち最も左の点と、左前伝達部位203のうち最も前の点とを通る直線であってもよい。
【0098】
また、本実施形態では、左前荷重伝達部21Lは、平面視において左前直線LCに沿って左前対向部ST3から左前伝達部位203まで連続する左前連続部分CXを有する。左前連続部分CXは、左前対向部ST3から左前伝達部位203まで平面視で左前直線LCに重なりながら連続している。
【0099】
左前荷重伝達部21Lが上記のような構成を備えることにより得られる効果は、右前荷重伝達部21Rについて上述した効果と同様である。
【0100】
左クローラフレーム2Lの左後荷重伝達部22Lは、平面視において、左後対向部ST4に含まれる点D1と左後伝達部位204に含まれる点D2とを通る直線である左後直線LDが左後端ローラ262を通るような形状を有する。左後直線LDは、平面視において左後端ローラ262と旋回中心軸Cとを通る直線である。左後荷重伝達部22Lは、左後直線LDに重なるような位置に設けられている。本実施形態では、左後直線LDは、平面視において、左後端ローラ262の回転中心軸上であって左後端ローラ262の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを結ぶ直線である。
【0101】
ただし、左後直線LDを規定するための左後対向部ST4における点D1及び左後伝達部位204における点D2のそれぞれは、上記のような位置の点に限られない。点D1は、後アクスル12の後側面SRから後側荷重を受けることが可能な左後対向部ST4に含まれる他の点であってもよく、点D2は、左フレーム本体20Lに後側荷重を伝達することが可能な左後伝達部位204に含まれる他の点であってもよい。具体的には、左後直線LDは、例えば、
図3に示す平面視において、左後対向部ST4のうち最も左の点と、左後伝達部位204のうち最も後の点とを通る直線であってもよい。
【0102】
また、本実施形態では、左後荷重伝達部22Lは、平面視において左後直線LDに沿って左後対向部ST4から左後伝達部位204まで連続する左後連続部分CXを有する。具体的には、左後連続部分CXは、左後対向部ST4から左後伝達部位204まで平面視で左後直線LDに重なりながら連続している。
【0103】
左後荷重伝達部22Lが上記のような構成を備えることにより得られる効果は、右前荷重伝達部21Rについて上述した効果と同様である。
【0104】
また、本実施形態では、
図3に示すように、右フレーム本体20Rの右前伝達部位201は、この右前伝達部位201の前後方向の位置と右前端ローラ261の前後方向の位置とが重なるような位置に設けられている。具体的には、右前伝達部位201の前端F1は、右前端ローラ261の前端よりも前側に位置し、右前伝達部位201の後端R1は、右前端ローラ261の後端よりも後側に位置している。これにより、右前荷重伝達部21Rは、前記前側荷重を、右フレーム本体20Rにおける前記前側転倒支点に対応する部位により直接的に伝達することができる。
【0105】
同様に、右フレーム本体20Rの右後伝達部位202は、この右後伝達部位202の前後方向の位置と右後端ローラ262の前後方向の位置とが重なるような位置に設けられている。具体的には、右後伝達部位202の後端R2は、右後端ローラ262の後端よりも後側に位置し、右後伝達部位202の前端F2は、右後端ローラ262の前端よりも前側に位置している。左前伝達部位203の前端F3及び後端R3と左前端ローラ261の前端及び後端との前後方向の位置関係、及び左後伝達部位204の前端F4及び後端R4と左後端ローラ262の前端及び後端との前後方向の位置関係についても、同様である。
【0106】
また、
図3に示すように、右クローラフレーム2Rの右前荷重伝達部21R及び右後荷重伝達部22Rのそれぞれの左端は、右クローラベルト25Rの左端よりも左側に位置している。そして、右前荷重伝達部21Rの右前対向部ST1は、右クローラベルト25Rの左端よりも左側の位置において、前アクスル11の前側面SFから前記前側荷重を受け、右後荷重伝達部22Rの右後対向部ST2は、右クローラベルト25Rの左端よりも左側の位置において、後アクスル12の後側面SRから前記後側荷重を受けるように構成される。これにより、前記前側荷重は、前記右前直線LA及び前記左前直線LCに近い部位を介して右前対向部ST1及び左前対向部ST3から右前伝達部位201及び左前伝達部位203のそれぞれに効率よく伝達されることが可能になる。
【0107】
同様に、左クローラフレーム2Lの左前荷重伝達部21L及び左後荷重伝達部22Lのそれぞれの右端は、左クローラベルト25Lの右端よりも右側に位置している。そして、左前荷重伝達部21Lの左前対向部ST3は、左クローラベルト25Lの右端よりも右側の位置において、前アクスル11の前側面SFから前記前側荷重を受け、左後荷重伝達部22Lの左後対向部ST4は、左クローラベルト25Lの右端よりも右側の位置において、後アクスル12の後側面SRから前記後側荷重を受けるように構成される。これにより、前記後側荷重は、前記右後直線LB及び前記左後直線LDに近い部位を介して右後対向部ST2及び左後対向部ST4から右後伝達部位202及び左後伝達部位204のそれぞれに効率よく伝達されることが可能になる。
【0108】
また、
図3に示すように、右クローラフレーム2Rの右前荷重伝達部21R及び右後荷重伝達部22Rのそれぞれの左端は、前記右フレーム本体20Rにおける右前アクスル支持部27と右後アクスル支持部28との間の部分よりも左側に位置している。同様に、左クローラフレーム2Lの左前荷重伝達部21L及び左後荷重伝達部22Lのそれぞれの右端は、前記左フレーム本体20Lにおける左前アクスル支持部27と左後アクスル支持部28との間の部分よりも右側に位置している。
【0109】
図5は、
図3のV-V線における概略の断面図であり、
図6は、
図5において一点鎖線VIで囲まれた部分を拡大した断面図である。
図5及び
図6は、前記前側荷重が前アクスル11の前側面SFから左前荷重伝達部21Lの左前対向部ST3に伝達されるための具体的な構造の一例を示す図である。
【0110】
図5及び
図6に示すように、前記前側荷重を伝達するための前側面SF及び左前対向部ST3は、前アクスル11の上部及び左前荷重伝達部21Lの上部にそれぞれ設けられている。
【0111】
本実施形態では、カーボディ10が上部旋回体102から前記前側荷重を受けていないときには、
図6に示すように、前アクスル11の前側面SFと左前荷重伝達部21Lの左前対向部ST3の側面とは、前後方向に離れている。一方、カーボディ10が上部旋回体102から前記前側荷重を受けると、下部フレーム1が部分的に前側にわずかにたわむことにより、前アクスル11の前側面SFと左前荷重伝達部21Lの左前対向部ST3の側面とが接する。これにより、前記前側荷重が前アクスル11の前側面SFから左前荷重伝達部21Lの左前対向部ST3に伝達される。すなわち、前記前側荷重は、前側面SFと左前対向部ST3の側面とのメタルタッチにより、前アクスル11から左前荷重伝達部21Lに伝達され、さらに左前荷重伝達部21Lから左フレーム本体20Lに伝達される。
【0112】
なお、図示は省略するが、前記前側荷重を伝達するための前側面SF及び右前対向部ST1の構造、前記後側荷重を伝達するための後側面SR及び右後対向部ST2の構造、並びに前記後側荷重を伝達するための後側面SR及び左後対向部ST4の構造は、
図5及び
図6に示す構造と同様である。すなわち、右前対向部ST1及び左前対向部ST3は、カーボディ10が前記前側荷重を受けたときに前アクスル11の前側面SFに接するように構成され、右後対向部ST2及び左後対向部ST4は、カーボディ10が前記後側荷重を受けたときに後アクスル12の後側面SRに接するように構成される。
【0113】
また、本実施形態では、
図3に示すように、右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lのそれぞれは、平面視において、前側に向かうにつれて左右方向の長さが小さくなるような形状を有する。具体的には、右前荷重伝達部21Rにおける前縁は、右フレーム本体20Rに向かって右斜め前方に延びるような形状を有し、左前荷重伝達部21Lにおける前縁は、左フレーム本体20Lに向かって左斜め前方に延びるような形状を有する。このことは、前記前側荷重を、フレーム本体20R,20Lのそれぞれにおけるできるだけ前側に伝達するという機能を確保しつつ、右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lのそれぞれの重量の増加を抑制できる。同様に、右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lのそれぞれは、平面視において、後側に向かうにつれて左右方向の長さが小さくなるような形状を有する。具体的には、右後荷重伝達部22Rにおける後縁は、右フレーム本体20Rに向かって右斜め後方に延びるような形状を有し、左後荷重伝達部22Lにおける後縁は、左フレーム本体20Lに向かって左斜め後方に延びるような形状を有する。このことは、前記後側荷重を、フレーム本体20R,20Lのそれぞれにおけるできるだけ後側に伝達するという機能を確保しつつ、右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lのそれぞれの重量の増加を抑制できる。
【0114】
本実施形態では、右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lが設けられていることにより、前側荷重が前アクスル11から右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lにそれぞれ伝達される経路を、平面視において右前直線LA及び左前直線LCにそれぞれ近づけること又は一致させることができる。このように前側荷重が右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lにそれぞれストレートに伝達されることにより、下部走行体101の変形、特に前アクスル11の変形が従来に比べて抑制される。右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lについても同様である。
【0115】
また、前側荷重を右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lを介して右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lにそれぞれ伝達する必要があるのは、カーボディ10が上部旋回体102から前側荷重を受けたとき、すなわち、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときである。従って、前アクスル11の前側面SFと右前対向部ST1の側面及び左前対向部ST3の側面とは、カーボディ10が上部旋回体102から前側荷重を受けていないときには、上述したように前後方向に離れていてもよく、接していてもよい。同様の理由から、後アクスル12の後側面SRと右後対向部ST2の側面及び左後対向部ST4の側面とは、カーボディ10が上部旋回体102から後側荷重を受けていないときには、
図6に示したように前後方向に離れていてもよく、接していてもよい。
【0116】
また、カーボディ10が上部旋回体102から前側荷重を受けたときには、前アクスル11の上部が、前アクスル11の下部に比べて、右前荷重伝達部21Rの右前対向部ST1及び左前荷重伝達部21Lの左前対向部ST3により近づきやすい。そこで、本実施形態では、右前荷重伝達部21Rの右前対向部ST1及び左前荷重伝達部21Lの左前対向部ST3のそれぞれは、前アクスル11の上部に対して前後方向に対向する位置に前記側面(後側を向く面)を有する。これにより、前側荷重が前アクスル11から右前荷重伝達部21Rの右前対向部ST1及び左前荷重伝達部21Lの左前対向部ST3のそれぞれにより確実に伝達される。同様の理由から、本実施形態では、右後荷重伝達部22Rの右後対向部ST2及び左後荷重伝達部22Lの左後対向部ST4のそれぞれは、後アクスル12の上部に対して前後方向に対向する位置に前記側面(前側を向く面)を有する。
【0117】
また、本実施形態では、右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lは、前アクスル11と後述する第3実施形態のように接続ピンなどの接続部材によって互いに接続されておらず、同様に、右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lは、後アクスル12と前記接続部材によって互いに接続されていない。これにより、構造が簡素になり、製造時の組立作業、輸送時の分解作業及び組立作業などの作業性がよい。
【0118】
なお、
図6に示すように、左前荷重伝達部21Lの左前対向部ST3は、左前荷重伝達部21Lの本体部とは別の部材により構成されていてもよく、この場合、左前対向部ST3は、前記本体部に溶接、ボルトナットなどの接続手段により接続される。右前荷重伝達部21Rの右前対向部ST1、右後荷重伝達部22Rの右後対向部ST2及び左後荷重伝達部22Lの左後対向部ST4についても同様に構成されていてもよい。このように各対向部が本体部とは別の部材により構成されることにより、前アクスル11と右前対向部ST1及び左前対向部ST3との相対位置の調節(位置決め)、並びに、後アクスル12と右後対向部ST2及び左後対向部ST4との相対位置の調節(位置決め)が容易になる。ただし、各対向部が本体部とは別の部材により構成されていなくてもよく、一つの部材により構成されていてもよい。
【0119】
また、本実施形態では、
図2に示すように、右前荷重伝達部21Rは、前記前側荷重を受けて伝達するために必要な剛性を確保するために、天板、底板及びこれらをつなぐ側板を含む箱型の構造を有する。他の荷重伝達部21L,22R,22Lについても同様である。ただし、これらの荷重伝達部のそれぞれは、中実の部材によって構成されていてもよい。
【0120】
図7は、第2実施形態に係る下部走行体101を示す平面図である。
図8は、
図7のVIII-VIII線における概略の断面図である。
図9は、
図8において一点鎖線IXで囲まれた部分を拡大した断面図である。
【0121】
この第2実施形態に係る下部走行体101は、以下に説明する右前介在部材、右後介在部材、左前介在部材及び左後介在部材をさらに備える点で、上述した第1実施形態と異なり、その他の構成については第1実施形態と同様である。従って、以下では、第2実施形態に係る下部走行体101について、主に、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0122】
図7~
図9に示すように、第2実施形態に係る下部走行体101は、右前介在部材30、右後介在部材30、左前介在部材30及び左後介在部材30をさらに備える。右前介在部材30及び左前介在部材30のそれぞれは、前側介在部材を構成し、右後介在部材30及び左後介在部材30のそれぞれは、後側介在部材を構成する。
【0123】
右前介在部材30は、前アクスル11の前側面SFと右前対向部ST1との間に形成された隙間である右前隙間G1に着脱可能に配置される。この右前介在部材30は、カーボディ10が前記前側荷重を受けたときに前側面SF及び右前対向部ST1の双方に接するように構成される。これにより、前記前側荷重は、前側面SFと右前介在部材30とのメタルタッチ及び右前対向部ST1の側面と右前介在部材30とのメタルタッチにより、前アクスル11から右前荷重伝達部21Rに伝達され、さらに右前荷重伝達部21Rから右フレーム本体20Rに伝達される。
【0124】
右後介在部材30は、後アクスル12の後側面SRと右後対向部ST2との間に形成された隙間である右後隙間G2に着脱可能に配置される。この右後介在部材30は、カーボディ10が前記後側荷重を受けたときに後側面SR及び右後対向部ST2の双方に接するように構成される。これにより、前記後側荷重は、後側面SRと右後介在部材30とのメタルタッチ及び右後対向部ST2の側面と右後介在部材30とのメタルタッチにより、後アクスル12から右後荷重伝達部22Rに伝達され、さらに右後荷重伝達部22Rから右フレーム本体20Rに伝達される。
【0125】
左前介在部材30は、前アクスル11の前側面SFと左前対向部ST3との間に形成された隙間である左前隙間G3に着脱可能に配置される。この左前介在部材30は、カーボディ10が前記前側荷重を受けたときに前側面SF及び左前対向部ST3の双方に接するように構成される。これにより、前記前側荷重は、前側面SFと左前介在部材30とのメタルタッチ及び左前対向部ST3の側面と左前介在部材30とのメタルタッチにより、前アクスル11から左前荷重伝達部21Lに伝達され、さらに左前荷重伝達部21Lから左フレーム本体20Lに伝達される。
【0126】
左後介在部材30は、後アクスル12の後側面SRと左後対向部ST4との間に形成された隙間である左後隙間G4に着脱可能に配置される。この左後介在部材30は、カーボディ10が前記後側荷重を受けたときに後側面SR及び左後対向部ST4の双方に接するように構成される。これにより、前記後側荷重は、後側面SRと左後介在部材30とのメタルタッチ及び左後対向部ST4の側面と左後介在部材30とのメタルタッチにより、後アクスル12から左後荷重伝達部22Lに伝達され、さらに左後荷重伝達部22Lから左フレーム本体20Lに伝達される。
【0127】
本実施形態では、
図8及び
図9に示すように、各介在部材30は、伝達プレート32と、この伝達プレート32の上端に設けられたストッパー31と、を含む。伝達プレート32は、例えば平板状の部分であり、対応する前記隙間に挿入することができるように当該隙間の大きさよりも若干小さい厚み(前後方向の寸法)を有する。前記ストッパー31は、対応する前記隙間に挿入することができないように当該隙間の大きさよりも大きい前後方向の寸法を有する。従って、各介在部材30の伝達プレート32が対応する隙間に挿入され、ストッパー31の下面が前アクスル11又は後アクスル12の上面と対応する荷重伝達部の上面との間にまたがるように配置されると、各介在部材30はそれよりも下方への移動が規制される。
【0128】
本実施形態では、前アクスル11及び後アクスル12に対する各クローラフレーム2R,2Lの左右方向の位置の調節がより円滑に行われることと、前記前側荷重を右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lにそれぞれ伝達することと、前記後側荷重を右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lにそれぞれ伝達することと、を可能にすることができる。
【0129】
すなわち、この態様では、前側面SFと右前対向部ST1及び左前対向部ST3との間に右前隙間G1及び左前隙間G3がそれぞれ形成され、後側面SRと右後対向部ST2及び左後対向部ST4との間に右後隙間G2及び左後隙間G4が形成されているので、右クローラフレーム2R及び左クローラフレーム2Lの左右方向の位置を前アクスル11及び後アクスル12に対して変えるときに、前側面SF及び後側面SRと対向部ST1~ST4との間に摩擦が生じにくい。このことは、各クローラフレーム2R,2Lの左右方向の位置の調節がより円滑に行われることを可能にする。
【0130】
その一方で、移動式クレーン100による吊り荷の吊り上げ作業が行われる場合には、前記隙間G1~G4に前記介在部材30がそれぞれ配置される。これにより、前記前側荷重を前アクスル11から右前介在部材30及び左前介在部材30を介して右クローラフレーム2Rの右前荷重伝達部21R及び左クローラフレーム2Lの左前荷重伝達部21Lに伝達することができ、前記後側荷重を後アクスル12から右後介在部材30及び左後介在部材30を介して右クローラフレーム2Rの右後荷重伝達部22R及び左クローラフレーム2Lの左後荷重伝達部22Lに伝達することができる。
【0131】
図10は、第3実施形態に係る下部走行体101を示す平面図である。
図11は、
図10のXI-XI線における概略の断面図である。
【0132】
この第3実施形態に係る下部走行体101は、以下に説明する右前接続ピン、右後接続ピン、左前接続ピン及び左後接続ピンをさらに備える点で、上述した第1実施形態と異なり、その他の構成については第1実施形態と同様である。従って、以下では、第3実施形態に係る下部走行体101について、主に、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0133】
図10及び
図11に示すように、第3実施形態に係る下部走行体101は、右前接続ピンP1、右後接続ピンP2、左前接続ピンP3及び左後接続ピンP4をさらに備える。右前接続ピンP1及び左前接続ピンP3のそれぞれは、前側接続部材を構成し、右後接続ピンP2及び左後接続ピンP4のそれぞれは、後側接続部材を構成する。
【0134】
右前接続ピンP1は、前アクスル11と右前対向部ST1に着脱可能に取り付けられ、これらを接続する。右後接続ピンP2は、後アクスル12と右後対向部ST2に着脱可能に取り付けられ、これらを接続する。左前接続ピンP3は、前アクスル11と左前対向部ST3に着脱可能に取り付けられ、これらを接続する。左後接続ピンP4は、後アクスル12と左後対向部ST4に着脱可能に取り付けられ、これらを接続する。
【0135】
図11に示すように、左クローラフレーム2Lの左前荷重伝達部21Lの左前対向部ST3及び左後荷重伝達部22Lの左後対向部ST4には、挿通孔H1がそれぞれ設けられ、前アクスル11における前側面SFを含む前側部分及び後アクスル12の後側面SRを含む後側部分のうち、前記挿通孔H1に対応する部位には、挿通孔H2がそれぞれ設けられている。図示は省略するが、右前対向部ST1及び右後対向部ST2にも同様の挿通孔H1がそれぞれ設けられ、前アクスル11における前側面SFを含む前側部分及び後アクスル12の後側面SRを含む後側部分のうち、これらの挿通孔H1に対応する部位にも、同様の挿通孔H2がそれぞれ設けられている。
【0136】
本実施形態では、
図11に示すように、各接続ピンは、軸部と、この軸部の一端に設けられたストッパーと、を含む。軸部は、例えば円柱状の部分であり、対応する挿通孔H1,H2に挿入することができるようにこれらの挿通孔H1,H2よりも若干小さい外径を有する。前記ストッパーは、例えば挿通孔H1に挿入することができないように当該挿通孔H1よりも大きい外径を有する。対応するアクスルと対向部に取り付けられた各接続ピンの他端には、図略の脱落防止部材が取り付けられ、これにより各接続ピンが挿通孔H1,H2から脱落するのが防止される。
【0137】
この実施形態では、カーボディ10が前記前側荷重を受けると、この前側荷重は、右前接続ピンP1及び左前接続ピンP3を介して前アクスル11の前側面SFから右前対向部ST1及び左前対向部ST3に伝達され、カーボディ10が前記後側荷重を受けると、この後側荷重は、右後接続ピンP2及び左後接続ピンP4を介して後アクスル12の後側面SRから右後対向部ST2及び左後対向部ST4に伝達される。これにより、前記前側荷重を、右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lにそれぞれ伝達することができ、前記後側荷重を、右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lにそれぞれ伝達することができる。一方、前記接続ピンP1~P4が取り外されることにより、右クローラフレーム2R及び左クローラフレーム2Lの左右方向の位置を前アクスル11及び後アクスル12に対して変えることができる。
【0138】
また、この実施形態では、前記接続ピンP1~P4のそれぞれの軸方向は、前記前後方向に向いている。この場合、前記接続ピンP1~P4は、前アクスル11及び後アクスル12に対する各クローラフレームの左右方向の変位を効果的に規制することができる。従って、前記接続ピンP1~P4は、移動式クレーン100による吊り荷の吊り上げ作業が行われるときに、前記前側荷重及び前記後側荷重を対応する荷重伝達部にそれぞれ伝達する機能と、前アクスル11及び後アクスル12に対する各クローラフレームの左右方向の変位を効果的に規制する機能とを併せ持つ。
【0139】
また、この実施形態では、右前荷重伝達部21R及び左前荷重伝達部21Lは、前アクスル11と前記接続ピンP1,P3によって互いに接続され、右後荷重伝達部22R及び左後荷重伝達部22Lは、後アクスル12と前記接続ピンP2,P4によって互いに接続されている。従って、例えばカーボディ10が前記前側荷重を受けると、前アクスル11などの下部走行体101の前側の部分は前側及び下側にたわむ一方で、後アクスル12などの下部走行体101の後側の部分は上側にたわむように変形する。このため、第3実施形態のように接続ピンP1,P3によって前アクスル11と荷重伝達部21R,21Lが結合され、接続ピンP2,P4によって後アクスル12と荷重伝達部22R,22Lが結合されている場合には、上記のような前側の部分のたわみと後側の部分のたわみとが抑制され、下部走行体101全体としてたわみがより効果的に抑制される。
【0140】
本開示は、以上説明した実施形態に限定されない。本開示は、例えば次のような態様を包含する。
【0141】
(A)対向部がアクスルから荷重を受ける構造について
前記第1~第3実施形態のそれぞれでは、前アクスルから右前対向部及び左前対向部が荷重を受ける構造、並びに後アクスルから右後対向部及び左後対向部が荷重を受ける構造は4か所とも同じであるが、このような態様に限られない。4つの対向部がアクスルから荷重を受ける構造として、対向部が前側面又は後側面に直接接することにより荷重を受ける構造(第1実施形態)、対向部が介在部材を介して荷重を受ける構造(第2実施形態)、及び対向部が接続ピンを介して荷重を受ける構造(第3実施形態)のうちの複数の構造が混在していてもよい。また、4つの対向部がアクスルから荷重を受ける構造として、第1~第3実施形態に係る構造以外の構造が含まれていてもよい。
【0142】
(B)直線LA~LDについて
第1~第3実施形態では、右前直線LAは、平面視において、右前端ローラ261の回転中心軸上であって右前端ローラ261の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを結ぶ直線であり、右後直線LB、左前直線LC及び左後直線LDについても同様に規定されているが、このような態様に限られない。前記右前直線LAは、例えば、平面視において、旋回中心軸Cと、右前端ローラ261のうち予め選択された何れかの部位と、を結ぶ直線であってもよい。前記何れかの部位は、例えば、平面視において、右前端ローラ261における最も後で且つ最も右の部位を挙げることができる。同様に、前記右後直線LBは、平面視において、旋回中心軸Cと、右後端ローラ262のうち予め選択された何れかの部位と、を結ぶ直線であってもよく、前記左前直線LCは、例えば、平面視において、旋回中心軸Cと、左前端ローラ261のうち予め選択された何れかの部位と、を結ぶ直線であってもよく、前記左後直線LDは、平面視において、旋回中心軸Cと、左後端ローラ262のうち予め選択された何れかの部位と、を結ぶ直線であってもよい。
【0143】
また、右前直線LAは、例えば、旋回ベアリング13の何れかの部位から右前端ローラ261に向かう直線であってもよく、左前直線LCは、例えば、旋回ベアリング13の何れかの部位から左前端ローラ261に向かう直線であってもよい。これらの場合、旋回ベアリング13の何れかの部位は、例えば、旋回ベアリングの前端(前アクスル11の中央位置に対応する部位)であってもよい。また、右前直線LAの場合、旋回ベアリング13の何れかの部位は、例えば、旋回ベアリング13のうち前記前端と右端(最も右側の部位)との間の範囲の何れかの部位であってもよい。同様に、左前直線LCの場合、旋回ベアリング13の何れかの部位は、例えば、旋回ベアリング13のうち前記前端と左端(最も左側の部位)との間の範囲の何れかの部位であってもよい。
【0144】
同様に、右後直線LBは、例えば、旋回ベアリング13の何れかの部位から右後端ローラ262に向かう直線であってもよく、左後直線LDは、例えば、旋回ベアリング13の何れかの部位から左後端ローラ262に向かう直線であってもよい。これらの場合、旋回ベアリング13の何れかの部位は、例えば、旋回ベアリングの後端(後アクスル12の中央位置に対応する部位)であってもよい。また、右後直線LBの場合、旋回ベアリング13の何れかの部位は、例えば、旋回ベアリング13のうち前記後端と前記右端との間の範囲の何れかの部位であってもよい。同様に、左後直線LDの場合、旋回ベアリング13の何れかの部位は、例えば、旋回ベアリング13のうち前記後端と前記左端との間の範囲の何れかの部位であってもよい。
【0145】
(C)前記実施形態に係る下部走行体は、クローラフレームの旋回中心軸からの距離を左右方向に拡大又は縮小することが可能な拡縮機構を備えるが、拡縮機構は省略可能である。この場合、前記右前アクスル支持部及び前記右後アクスル支持部は、前記前アクスル及び前記後アクスルに対する前記右フレーム本体の左右方向の位置を変えることができないように前記前アクスル及び前記後アクスルをそれぞれ支持し、前記左前アクスル支持部及び前記左後アクスル支持部は、前記前アクスル及び前記後アクスルに対する前記左フレーム本体の前記左右方向の位置を変えることができないように前記前アクスル及び前記後アクスルをそれぞれ支持する。
【0146】
(D)前記実施形態では、前側面SF及び後側面SRのそれぞれは、左右方向及び上下方向に平行な平面であるが、このような態様に限られない。前記拡縮機構が省略されている場合には、前側面SFは、前側を向く曲面であってもよく、前側を向いて左右方向及び上下方向の少なくとも一方に対して傾斜した平面であってもよい。同様に、後側面SRは、後側を向く曲面であってもよく、後側を向いて左右方向及び上下方向の少なくとも一方に対して傾斜した平面であってもよい。
【0147】
(E)クレーンの仕様について
図1に示す前記実施形態に係るクレーンは、ジブ及びストラットを備えていないが、クレーンの仕様は、
図1に示すものに限定されない。本開示に係るクレーンは、ジブ、フロントストラット及びリヤストラットを備えるラッフィングクレーンであってもよく、ジブ及び1つのストラットを備える固定ジブ仕様のクレーンであってもよい。また、本開示に係るクレーンは、ガントリではなくマストを備えるクレーン(例えば大型のクレーン)であってもよい。
【符号の説明】
【0148】
2L :左クローラフレーム
2R :右クローラフレーム
10 :カーボディ
11 :前アクスル
12 :後アクスル
20L :左フレーム本体
20R :右フレーム本体
21L :左前荷重伝達部
21R :右前荷重伝達部
22L :左後荷重伝達部
22R :右後荷重伝達部
23L,24L :左ホイール
23R,24R :右ホイール
25L :左クローラベルト
25R :右クローラベルト
26 :右ローラ,左ローラ
261 :左前端ローラ,右前端ローラ
262 :右後端ローラ,左後端ローラ
27 :右前アクスル支持部、左前アクスル支持部
28 :右後アクスル支持部、左後アクスル支持部
100 :移動式クレーン
101 :下部走行体
102 :上部旋回体
C :旋回中心軸
SF :前アクスルの前側面
SR :後アクスルの後側面