(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187523
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】移動式クレーンの下部走行体
(51)【国際特許分類】
B66C 23/36 20060101AFI20221213BHJP
B66C 23/62 20060101ALI20221213BHJP
B62D 55/10 20060101ALI20221213BHJP
B62D 21/18 20060101ALI20221213BHJP
E02F 9/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B66C23/36 A
B66C23/62
B62D55/10 Z
B62D21/18 E
E02F9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095536
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓則
(72)【発明者】
【氏名】百濟 和文
【テーマコード(参考)】
3D203
3F205
【Fターム(参考)】
3D203AA27
3D203BA02
3D203DB13
3F205AA07
3F205KA10
(57)【要約】
【課題】下部走行体よりも前側又は後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときにアクスルに生じるたわみを小さくする移動式クレーンの下部走行体を提供する。
【解決手段】下部走行体101では、右クローラフレーム2Rは、右フレーム本体20Rの外れ部位201,202から左側に突出する右荷重受部21R,22Rを含み、左クローラフレーム2Lは、左フレーム本体20Lの外れ部位203,204から右側に突出する左荷重受部21L,22Lを含む。右荷重受部21R及び左荷重受部21Lは、右前及び左前アクスル部11R,11Lの中間部M1,M1から下向きの荷重を受けて右前アクスル部11R及び左前アクスル部11Lを支持する。右荷重受部22R及び左荷重受部22Lは、右後及び左後アクスル部12R,12Lの中間部M2,M2から下向きの荷重を受けて右後アクスル部12R及び左後アクスル部12Lを支持する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式クレーンの下部走行体であって、
前記移動式クレーンの上部旋回体を旋回中心軸の周りに旋回可能に支持するカーボディと、
前記カーボディに接続される前側カーボディ接続部と当該前側カーボディ接続部から右側に延びる右前アクスル部と前記前側カーボディ接続部から左側に延びる左前アクスル部とを含む前アクスルと、
前記前アクスルよりも後側において前記カーボディに接続される後側カーボディ接続部と当該後側カーボディ接続部から右側に延びる右後アクスル部と前記後側カーボディ接続部から左側に延びる左後アクスル部とを含む後アクスルと、
前記旋回中心軸よりも右側において前後方向に延びる右フレーム本体を含み、当該右フレーム本体が前記右前アクスル部及び前記右後アクスル部を支持する右前アクスル支持部及び右後アクスル支持部を有する右クローラフレームと、
前記旋回中心軸よりも左側において前記前後方向に延びる左フレーム本体を含み、当該左フレーム本体が前記左前アクスル部及び前記左後アクスル部を支持する左前アクスル支持部及び左後アクスル支持部を有する左クローラフレームと、を備え、
前記右前アクスル部は、前記右前アクスル支持部に支持される被支持部と、この被支持部と前記前側カーボディ接続部との間の中間部と、を有し、前記右後アクスル部は、前記右後アクスル支持部に支持される被支持部と、この被支持部と前記後側カーボディ接続部との間の中間部と、を有し、前記左前アクスル部は、前記左前アクスル支持部に支持される被支持部とこの被支持部と前記前側カーボディ接続部との間の中間部と、を有し、前記左後アクスル部は、前記左後アクスル支持部に支持される被支持部とこの被支持部と前記後側カーボディ接続部との間の中間部と、を有し、
前記右クローラフレームは、前記右フレーム本体のうち前記右前アクスル支持部及び前記右後アクスル支持部に対して前記前後方向に外れた部位である少なくとも一つの外れ部位から左側に突出する形状を有する少なくとも一つの右荷重受部をさらに含み、当該少なくとも一つの右荷重受部は、前記右前アクスル部の前記中間部から下向きの荷重を受けて前記右前アクスル部を支持するとともに、前記右後アクスル部の前記中間部から下向きの荷重を受けて前記右後アクスル部を支持することが可能なように構成され、
前記左クローラフレームは、前記左フレーム本体のうち前記左前アクスル支持部及び前記左後アクスル支持部に対して前記前後方向に外れた部位である少なくとも一つの外れ部位から右側に突出する形状を有する少なくとも一つの左荷重受部をさらに含み、当該少なくとも一つの左荷重受部は、前記左前アクスル部の前記中間部から下向きの荷重を受けて前記左前アクスル部を支持するとともに、前記左後アクスル部の前記中間部から下向きの荷重を受けて前記左後アクスル部を支持することが可能なように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項2】
請求項1に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記少なくとも一つの右荷重受部が前記右フレーム本体につながる前記少なくとも一つの外れ部位は、前記右フレーム本体のうち前記右前アクスル支持部よりも前側の部位である右前部位と、前記右フレーム本体のうち前記右後アクスル支持部よりも後側の部位である右後部位と、を含み、
前記少なくとも一つの右荷重受部は、前記右前部位から左側に突出する形状を有する右前荷重受部と、前記右後部位から左側に突出する形状を有する右後荷重受部と、を含み、前記右前荷重受部は、前記右前アクスル部の前記中間部から下向きの荷重成分を受けて前記右前アクスル部を支持するように構成され、前記右後荷重受部は、前記右後アクスル部の前記中間部から下向きの荷重成分を受けて前記右後アクスル部を支持するように構成され、
前記少なくとも一つの左荷重受部が前記左フレーム本体につながる前記少なくとも一つの外れ部位は、前記左フレーム本体のうち前記左前アクスル支持部よりも前側の部位である左前部位と、前記左フレーム本体のうち前記左後アクスル支持部よりも後側の部位である左後部位と、を含み、
前記少なくとも一つの左荷重受部は、前記左前部位から右側に突出する形状を有する左前荷重受部と、前記左後部位から右側に突出する形状を有する左後荷重受部と、を含み、前記左前荷重受部は、前記左前アクスル部の前記中間部から下向きの荷重成分を受けて前記左前アクスル部を支持するように構成され、前記左後荷重受部は、前記左後アクスル部の前記中間部から下向きの荷重成分を受けて前記左後アクスル部を支持するように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項3】
請求項2に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右フレーム本体は、前記右前アクスル部及び前記右後アクスル部に対する左右方向の位置を変えることが可能なように構成され、
前記左フレーム本体は、前記左前アクスル部及び前記左後アクスル部に対する左右方向の位置を変えることが可能なように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
平面視で前記右前荷重受部と前記右前アクスル部の前記中間部との間に前記前後方向にまたがるように配置され、前記右前アクスル部から受ける下向きの荷重を前記右前荷重受部に伝達することが可能なように構成される右前伝達部と、
平面視で前記右後荷重受部と前記右後アクスル部の前記中間部との間に前記前後方向にまたがるように配置され、前記右後アクスル部から受ける下向きの荷重を前記右後荷重受部に伝達することが可能なように構成される右後伝達部と、
平面視で前記左前荷重受部と前記左前アクスル部の前記中間部との間に前記前後方向にまたがるように配置され、前記左前アクスル部から受ける下向きの荷重を前記左前荷重受部に伝達することが可能なように構成される左前伝達部と、
平面視で前記左後荷重受部と前記左後アクスル部の前記中間部との間に前記前後方向にまたがるように配置され、前記左後アクスル部から受ける下向きの荷重を前記左後荷重受部に伝達することが可能なように構成される左後伝達部と、をさらに備える、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項5】
請求項4に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前荷重受部及び前記左前荷重受部のそれぞれは、上側を向く荷重受面を有し、
前記右前伝達部は、前記右前アクスル部の前記中間部につながり当該中間部から前側に張り出す前側張出部を含み、
前記左前伝達部は、前記左前アクスル部の前記中間部につながり当該中間部から前側に張り出す前側張出部を含み、
前記右前伝達部の前記前側張出部は、前記右前荷重受部の前記荷重受面に対して上下方向に対向する下面により構成される荷重伝達面を有し、
前記左前伝達部の前記前側張出部は、前記左前荷重受部の前記荷重受面に対して上下方向に対向する下面により構成される荷重伝達面を有する、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項6】
請求項5に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右後荷重受部及び前記左後荷重受部のそれぞれは、上側を向く荷重受面を有し、
前記右後伝達部は、前記右後アクスル部の前記中間部につながり当該中間部から後側に張り出す後側張出部を含み、
前記左後伝達部は、前記左後アクスル部の前記中間部につながり当該中間部から後側に張り出す後側張出部を含み、
前記右後伝達部の前記後側張出部は、前記右後荷重受部の前記荷重受面に対して上下方向に対向する下面により構成される荷重伝達面を有し、
前記左後伝達部の前記後側張出部は、前記左後荷重受部の前記荷重受面に対して上下方向に対向する下面により構成される荷重伝達面を有する、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項7】
請求項4~6の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前アクスル部の前記中間部及び前記左前アクスル部の前記中間部のそれぞれは、下側を向くアクスル下面を有し、
前記右前伝達部は、前記右前荷重受部につながり当該右前荷重受部から後側に張り出す後側張出部を含み、
前記左前伝達部は、前記左前荷重受部につながり当該左前荷重受部から後側に張り出す後側張出部を含み、
前記右前伝達部の前記後側張出部は、前記右前アクスル部の前記中間部の前記アクスル下面に対して上下方向に対向する上面により構成される荷重伝達面を有し、
前記左前伝達部の前記後側張出部は、前記左前アクスル部の前記中間部の前記アクスル下面に対して上下方向に対向する上面により構成される荷重伝達面を有する、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項8】
請求項7に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右後アクスル部の前記中間部及び前記左後アクスル部の前記中間部のそれぞれは、下側を向くアクスル下面を有し、
前記右後伝達部は、前記右後荷重受部につながり当該右後荷重受部から前側に張り出す前側張出部を含み、
前記左後伝達部は、前記左後荷重受部につながり当該左後荷重受部から前側に張り出す前側張出部を含み、
前記右後伝達部の前記前側張出部は、前記右後アクスル部の前記中間部の前記アクスル下面に対して上下方向に対向する上面により構成される荷重伝達面を有し、
前記左後伝達部の前記前側張出部は、前記左後アクスル部の前記中間部の前記アクスル下面に対して上下方向に対向する上面により構成される荷重伝達面を有する、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項9】
請求項4~8の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右前伝達部は、前記右前荷重受部と前記右前アクスル部の前記中間部との間において前記前後方向に延びてこれらを連結する少なくとも一つの連結ピンを含み、
前記左前伝達部は、前記左前荷重受部と前記左前アクスル部の前記中間部との間において前記前後方向に延びてこれらを連結する少なくとも一つの連結ピンを含む、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項10】
請求項9に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記右後伝達部は、前記右後荷重受部と前記右後アクスル部の前記中間部との間において前記前後方向に延びてこれらを連結する少なくとも一つの連結ピンを含み、
前記左後伝達部は、前記左後荷重受部と前記左後アクスル部の前記中間部との間において前記前後方向に延びてこれらを連結する少なくとも一つの連結ピンを含む、移動式クレーンの下部走行体。
【請求項11】
請求項4~10の何れか1項に記載の移動式クレーンの下部走行体であって、
前記前アクスルは、前側を向く前側面を有し、
前記後アクスルは、後側を向く後側面を有し、
前記右前荷重受部は、前記右前アクスル部の前記中間部に前記前後方向に対向する右前対向部を有し、前記下部走行体よりも前側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記右前アクスル部の前記中間部から受ける荷重の少なくとも一部を、前記右前対向部から前記右フレーム本体の前記右前部位に伝達することが可能なように構成され、
前記左前荷重受部は、前記左前アクスル部の前記中間部に前記前後方向に対向する左前対向部を有し、前記下部走行体よりも前側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記左前アクスル部の前記中間部から受ける荷重の少なくとも一部を、前記左前対向部から前記左フレーム本体の前記左前部位に伝達することが可能なように構成され、
前記右後荷重受部は、前記右後アクスル部の前記中間部に前記前後方向に対向する右後対向部を有し、前記下部走行体よりも後側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記右後アクスル部の前記中間部から受ける荷重の少なくとも一部を、前記右後対向部から前記右フレーム本体の前記右後部位に伝達することが可能なように構成され、
前記左後荷重受部は、前記左後アクスル部の前記中間部に前記前後方向に対向する左後対向部を有し、前記下部走行体よりも後側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記左後アクスル部の前記中間部から受ける荷重の少なくとも一部を、前記左後対向部から前記左フレーム本体の前記左後部位に伝達することが可能なように構成される、移動式クレーンの下部走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンの下部走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1の移動式クレーンは、地上を走行可能な下部走行体と、この下部走行体に搭載される上部旋回体と、を備える。上部旋回体は、ブーム及び吊りロープを含む作業装置を備える。下部走行体は、上部旋回体を旋回中心軸の周りに旋回可能に支持するカーボディと、このカーボディから右側及び左側にそれぞれ延びる前アクスルと、この前アクスルよりも後側においてカーボディから右側及び左側にそれぞれ延びる後アクスルと、旋回中心軸よりも右側及び左側のそれぞれにおいて前後方向に延び、前アクスル及び後アクスルを支持する左右一対のクローラフレームと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-70339号公報
【特許文献2】特開2017-171090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、移動式クレーンでは、吊り荷の吊り上げ作業が行われるときに上部旋回体から前アクスル及び後アクスルに伝達される荷重に起因して各アクスルには下側へのたわみが生じる。特に、吊り荷が旋回中心軸に対して前後方向に吊るされる場合には、吊り荷が旋回中心軸に対して左右方向に吊るされる場合に比べて、前記上部旋回体の荷重が前アクスル又は後アクスルに偏りやすいため、前記たわみが大きくなりやすい。このように旋回中心軸に対する吊り荷の向きに応じてたわみの大きさに差が生じると、吊り荷の位置が変動するため、吊り上げ作業の作業性が低下することがある。具体的には、前アクスル又は後アクスルがたわむと、ブームの基端部の位置(ブームフットの位置)が変位するので、ブームの先端部の位置も変位し、吊り荷が揺れてしまう。従って、下部走行体よりも前側又は後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前アクスル又は後アクスルに生じるたわみを小さくすることが望まれる。
【0005】
特許文献2は、カーボディの前後の部分における剛性をそれぞれ向上させるために、カーボディの胴部内の前部及び後部に一対の補強部材をそれぞれ設ける技術を開示しているが、この特許文献2の移動式クレーンの一対の補強部材は、前アクスル及び後アクスルのたわみを抑制するものではない。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、下部走行体よりも前側又は後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときにアクスルに生じるたわみを小さくすることが可能な移動式クレーンの下部走行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動式クレーンの下部走行体は、前記移動式クレーンの上部旋回体を旋回中心軸の周りに旋回可能に支持するカーボディと、前記カーボディに接続される前側カーボディ接続部と当該前側カーボディ接続部から右側に延びる右前アクスル部と前記前側カーボディ接続部から左側に延びる左前アクスル部とを含む前アクスルと、前記前アクスルよりも後側において前記カーボディに接続される後側カーボディ接続部と当該後側カーボディ接続部から右側に延びる右後アクスル部と前記後側カーボディ接続部から左側に延びる左後アクスル部とを含む後アクスルと、前記旋回中心軸よりも右側において前後方向に延びる右フレーム本体を含み、当該右フレーム本体が前記右前アクスル部及び前記右後アクスル部を支持する右前アクスル支持部及び右後アクスル支持部を有する右クローラフレームと、前記旋回中心軸よりも左側において前記前後方向に延びる左フレーム本体を含み、当該左フレーム本体が前記左前アクスル部及び前記左後アクスル部を支持する左前アクスル支持部及び左後アクスル支持部を有する左クローラフレームと、を備え、前記右前アクスル部は、前記右前アクスル支持部に支持される被支持部と、この被支持部と前記前側カーボディ接続部との間の中間部と、を有し、前記右後アクスル部は、前記右後アクスル支持部に支持される被支持部と、この被支持部と前記後側カーボディ接続部との間の中間部と、を有し、前記左前アクスル部は、前記左前アクスル支持部に支持される被支持部とこの被支持部と前記前側カーボディ接続部との間の中間部と、を有し、前記左後アクスル部は、前記左後アクスル支持部に支持される被支持部とこの被支持部と前記後側カーボディ接続部との間の中間部と、を有し、前記右クローラフレームは、前記右フレーム本体のうち前記右前アクスル支持部及び前記右後アクスル支持部に対して前記前後方向に外れた部位である少なくとも一つの外れ部位から左側に突出する形状を有する少なくとも一つの右荷重受部をさらに含み、当該少なくとも一つの右荷重受部は、前記右前アクスル部の前記中間部から下向きの荷重を受けて前記右前アクスル部を支持するとともに、前記右後アクスル部の前記中間部から下向きの荷重を受けて前記右後アクスル部を支持することが可能なように構成され、前記左クローラフレームは、前記左フレーム本体のうち前記左前アクスル支持部及び前記左後アクスル支持部に対して前記前後方向に外れた部位である少なくとも一つの外れ部位から右側に突出する形状を有する少なくとも一つの左荷重受部をさらに含み、当該少なくとも一つの左荷重受部は、前記左前アクスル部の前記中間部から下向きの荷重を受けて前記左前アクスル部を支持するとともに、前記左後アクスル部の前記中間部から下向きの荷重を受けて前記左後アクスル部を支持することが可能なように構成される。
【0008】
この移動式クレーンの下部走行体では、右荷重受部が右前アクスル部の中間部から下向きの荷重を受けて当該右前アクスル部を支持するとともに左荷重受部が左前アクスル部の中間部から下向きの荷重を受けて左前アクスル部を支持するので、下部走行体よりも前側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前アクスルに生じるたわみを小さくすることが可能になる。同様に、この下部走行体では、右荷重受部が右後アクスル部の中間部から下向きの荷重を受けて当該右後アクスル部を支持するとともに左荷重受部が左後アクスル部の中間部から下向きの荷重を受けて当該左後アクスル部を支持するので、下部走行体よりも後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに後アクスルに生じるたわみを小さくすることが可能になる。また、この下部走行体では、少なくとも一つの右荷重受部は、右フレーム本体のうち右前アクスル支持部及び右後アクスル支持部に対して前後方向に外れた部位である少なくとも一つの外れ部位から左側に突出する形状を有する。このような少なくとも一つの右荷重受部を設置することにより、右前アクスル部及び右後アクスル部を支持し、右前アクスル部及び右後アクスル部からの鉛直方向荷重(下向きの荷重)の双方を受け止めることが可能になる。同様に、この下部走行体では、少なくとも一つの左荷重受部は、左フレーム本体のうち左前アクスル支持部及び左後アクスル支持部に対して前後方向に外れた部位である少なくとも一つの外れ部位から右側に突出する形状を有する。このような少なくとも一つの左荷重受部を設置することにより、左前アクスル部及び左後アクスル部を支持し、左前アクスル部及び左後アクスル部からの鉛直方向荷重(下向きの荷重)の双方を受け止めることが可能になる。
【0009】
前記下部走行体では、上述したように、前記少なくとも一つの右荷重受部は、右フレーム本体の前記少なくとも一つの外れ部位から左側に突出する形状を有していればよく、前記少なくとも一つの左荷重受部は、左フレーム本体の前記少なくとも一つの外れ部位から右側に突出する形状有していればよい。ただし、下部走行体よりも前側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに上部旋回体からカーボディを介して前アクスルに伝達される荷重は、下向きの荷重成分だけでなく、前アクスルの上面を前方にたわませるような前アクスルに対するねじり荷重成分も含む。また、下部走行体よりも後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに上部旋回体からカーボディを介して後アクスルに伝達される荷重は、下向きの荷重成分だけでなく、後アクスルの上面を後方にたわませるような後アクスルに対するねじり荷重成分も含む。従って、右荷重受部及び左荷重受部のそれぞれは、前アクスルにおける前側の部分に対応する位置において前アクスルを支持するとともに、後アクスルにおける後側の部分に対応する位置において後アクスルを支持することで支持断面が拡大された構造を有することが好ましい。
【0010】
すなわち、前記少なくとも一つの右荷重受部が前記右フレーム本体につながる前記少なくとも一つの外れ部位は、前記右フレーム本体のうち前記右前アクスル支持部よりも前側の部位である右前部位と、前記右フレーム本体のうち前記右後アクスル支持部よりも後側の部位である右後部位と、を含み、前記少なくとも一つの右荷重受部は、前記右前部位から左側に突出する形状を有する右前荷重受部と、前記右後部位から左側に突出する形状を有する右後荷重受部と、を含み、前記右前荷重受部は、前記右前アクスル部の前記中間部から下向きの荷重成分を受けて前記右前アクスル部を支持するように構成され、前記右後荷重受部は、前記右後アクスル部の前記中間部から下向きの荷重成分を受けて前記右後アクスル部を支持するように構成され、前記少なくとも一つの左荷重受部が前記左フレーム本体につながる前記少なくとも一つの外れ部位は、前記左フレーム本体のうち前記左前アクスル支持部よりも前側の部位である左前部位と、前記左フレーム本体のうち前記左後アクスル支持部よりも後側の部位である左後部位と、を含み、前記少なくとも一つの左荷重受部は、前記左前部位から右側に突出する形状を有する左前荷重受部と、前記左後部位から右側に突出する形状を有する左後荷重受部と、を含み、前記左前荷重受部は、前記左前アクスル部の前記中間部から下向きの荷重成分を受けて前記左前アクスル部を支持するように構成され、前記左後荷重受部は、前記左後アクスル部の前記中間部から下向きの荷重成分を受けて前記左後アクスル部を支持するように構成されることが好ましい。
【0011】
この態様では、右前荷重受部及び左前荷重受部のそれぞれは、下向きの荷重成分とねじり荷重成分が伝達される前アクスルをこの前アクスルにおける前側の部分に対応する位置において支持することができる。このことは、右前荷重受部及び左前荷重受部が前アクスルをより安定して支持することを可能にする。同様に、右後荷重受部及び左後荷重受部のそれぞれは、下向きの荷重成分とねじり荷重成分が伝達される後アクスルをこの後アクスルにおける後側の部分に対応する位置において支持することができる。このことは、右後荷重受部及び左後荷重受部が後アクスルをより安定して支持することを可能にする。
【0012】
また、この下部走行体では、前記右フレーム本体は、前記右前アクスル部及び前記右後アクスル部に対する左右方向の位置を変えることが可能なように構成され、前記左フレーム本体は、前記左前アクスル部及び前記左後アクスル部に対する左右方向の位置を変えることが可能なように構成されていてもよい。
【0013】
上記のように、右前荷重受部が右フレーム本体の右前部位から左側に突出し、右後荷重受部が右フレーム本体の右後部位から左側に突出する場合には、右フレーム本体が右前アクスル部及び右後アクスル部に対して左右方向に位置を変えるときに右前荷重受部及び右後荷重受部がカーボディと干渉しない構造を容易に実現することができる。同様に、左前荷重受部が左フレーム本体の左前部位から右側に突出し、左後荷重受部が左フレーム本体の左後部位から右側に突出する場合には、左フレーム本体が左前アクスル部及び左後アクスル部に対して左右方向に位置を変えるときに左前荷重受部及び左後荷重受部がカーボディと干渉しない構造を容易に実現することができる。
【0014】
前記移動式クレーンの下部走行体は、平面視で前記右前荷重受部と前記右前アクスル部の前記中間部との間に前記前後方向にまたがるように配置され、前記右前アクスル部から受ける下向きの荷重を前記右前荷重受部に伝達することが可能なように構成される右前伝達部と、平面視で前記右後荷重受部と前記右後アクスル部の前記中間部との間に前記前後方向にまたがるように配置され、前記右後アクスル部から受ける下向きの荷重を前記右後荷重受部に伝達することが可能なように構成される右後伝達部と、平面視で前記左前荷重受部と前記左前アクスル部の前記中間部との間に前記前後方向にまたがるように配置され、前記左前アクスル部から受ける下向きの荷重を前記左前荷重受部に伝達することが可能なように構成される左前伝達部と、平面視で前記左後荷重受部と前記左後アクスル部の前記中間部との間に前記前後方向にまたがるように配置され、前記左後アクスル部から受ける下向きの荷重を前記左後荷重受部に伝達することが可能なように構成される左後伝達部と、をさらに備えることが好ましい。
【0015】
この態様では、右前荷重受部は、この右前荷重受部と右前アクスル部の中間部との間に前後方向にまたがるように配置される右前伝達部を介して、右前アクスル部の中間部から下向きの荷重を受けてこの右前アクスル部を支持することができ、右後荷重受部は、この右後荷重受部と右後アクスル部の中間部との間に前後方向にまたがるように配置される右後伝達部を介して、右後アクスル部の中間部から下向きの荷重を受けてこの右後アクスル部を支持することができる。同様に、左前荷重受部は、この左前荷重受部と左前アクスル部の中間部との間に前後方向にまたがるように配置される左前伝達部を介して、左前アクスル部の中間部から下向きの荷重を受けてこの左前アクスル部を支持することができ、左後荷重受部は、この左後荷重受部と左後アクスル部の中間部との間に前後方向にまたがるように配置される左後伝達部を介して、左後アクスル部の中間部から下向きの荷重を受けてこの左後アクスル部を支持することができる。
【0016】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右前荷重受部及び前記左前荷重受部のそれぞれは、上側を向く荷重受面を有し、前記右前伝達部は、前記右前アクスル部の前記中間部につながり当該中間部から前側に張り出す前側張出部を含み、前記左前伝達部は、前記左前アクスル部の前記中間部につながり当該中間部から前側に張り出す前側張出部を含み、前記右前伝達部の前記前側張出部は、前記右前荷重受部の前記荷重受面に対して上下方向に対向する下面により構成される荷重伝達面を有し、前記左前伝達部の前記前側張出部は、前記左前荷重受部の前記荷重受面に対して上下方向に対向する下面により構成される荷重伝達面を有することが好ましい。
【0017】
この態様では、下部走行体よりも前側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに、右前伝達部の前側張出部は、右前アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重を、上下方向に対向する荷重伝達面及び荷重受面を介して右前荷重受部に伝達することができ、左前伝達部の前側張出部は、左前アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重を、上下方向に対向する荷重伝達面及び荷重受面を介して左前荷重受部に伝達することができる。
【0018】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右後荷重受部及び前記左後荷重受部のそれぞれは、上側を向く荷重受面を有し、前記右後伝達部は、前記右後アクスル部の前記中間部につながり当該中間部から後側に張り出す後側張出部を含み、前記左後伝達部は、前記左後アクスル部の前記中間部につながり当該中間部から後側に張り出す後側張出部を含み、前記右後伝達部の前記後側張出部は、前記右後荷重受部の前記荷重受面に対して上下方向に対向する下面により構成される荷重伝達面を有し、前記左後伝達部の前記後側張出部は、前記左後荷重受部の前記荷重受面に対して上下方向に対向する下面により構成される荷重伝達面を有することが好ましい。
【0019】
この態様では、下部走行体よりも後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに、右後伝達部の後側張出部は、右後アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重を、上下方向に対向する荷重伝達面及び荷重受面を介して右後荷重受部に伝達することができ、左後伝達部の後側張出部は、左後アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重を、上下方向に対向する荷重伝達面及び荷重受面を介して左後荷重受部に伝達することができる。
【0020】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右前アクスル部の前記中間部及び前記左前アクスル部の前記中間部のそれぞれは、下側を向くアクスル下面を有し、前記右前伝達部は、前記右前荷重受部につながり当該右前荷重受部から後側に張り出す後側張出部を含み、前記左前伝達部は、前記左前荷重受部につながり当該左前荷重受部から後側に張り出す後側張出部を含み、前記右前伝達部の前記後側張出部は、前記右前アクスル部の前記中間部の前記アクスル下面に対して上下方向に対向する上面により構成される荷重伝達面を有し、前記左前伝達部の前記後側張出部は、前記左前アクスル部の前記中間部の前記アクスル下面に対して上下方向に対向する上面により構成される荷重伝達面を有していてもよい。
【0021】
この態様では、下部走行体よりも前側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに、右前伝達部の後側張出部は、右前アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重成分を、上下方向に互いに対向するアクスル下面及び荷重伝達面を介して右前荷重受部に伝達することができ、左前伝達部の後側張出部は、左前アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重成分を、上下方向に互いに対向するアクスル下面及び荷重伝達面を介して左前荷重受部に伝達することができる。
【0022】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右後アクスル部の前記中間部及び前記左後アクスル部の前記中間部のそれぞれは、下側を向くアクスル下面を有し、前記右後伝達部は、前記右後荷重受部につながり当該右後荷重受部から前側に張り出す前側張出部を含み、前記左後伝達部は、前記左後荷重受部につながり当該左後荷重受部から前側に張り出す前側張出部を含み、前記右後伝達部の前記前側張出部は、前記右後アクスル部の前記中間部の前記アクスル下面に対して上下方向に対向する上面により構成される荷重伝達面を有し、前記左後伝達部の前記前側張出部は、前記左後アクスル部の前記中間部の前記アクスル下面に対して上下方向に対向する上面により構成される荷重伝達面を有していてもよい。
【0023】
この態様では、下部走行体よりも後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに、右後伝達部の前側張出部は、右後アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重成分を、上下方向に互いに対向するアクスル下面及び荷重伝達面を介して右後荷重受部に伝達することができ、左後伝達部の前側張出部は、左後アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重成分を、上下方向に互いに対向するアクスル下面及び荷重伝達面を介して左後荷重受部に伝達することができる。
【0024】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右前伝達部は、前記右前荷重受部と前記右前アクスル部の前記中間部との間において前記前後方向に延びてこれらを連結する少なくとも一つの連結ピンを含み、前記左前伝達部は、前記左前荷重受部と前記左前アクスル部の前記中間部との間において前記前後方向に延びてこれらを連結する少なくとも一つの連結ピンを含んでいてもよい。
【0025】
この態様では、下部走行体よりも前側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに、右前伝達部の連結ピンは、右前アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重成分を右前荷重受部に伝達することができ、左前伝達部の連結ピンは、左前アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重成分を左前荷重受部に伝達することができる。
【0026】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記右後伝達部は、前記右後荷重受部と前記右後アクスル部の前記中間部との間において前記前後方向に延びてこれらを連結する少なくとも一つの連結ピンを含み、前記左後伝達部は、前記左後荷重受部と前記左後アクスル部の前記中間部との間において前記前後方向に延びてこれらを連結する少なくとも一つの連結ピンを含んでいてもよい。
【0027】
この態様では、下部走行体よりも後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに、右後伝達部の連結ピンは、右後アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重成分を右後荷重受部に伝達することができ、左後伝達部の連結ピンは、左後アクスル部の中間部から受ける下向きの荷重成分を左後荷重受部に伝達することができる。
【0028】
前記移動式クレーンの下部走行体において、前記前アクスルは、前側を向く前側面を有し、前記後アクスルは、後側を向く後側面を有し、前記右前荷重受部は、前記右前アクスル部の前記中間部に前記前後方向に対向する右前対向部を有し、前記下部走行体よりも前側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記右前アクスル部の前記中間部から受ける荷重の少なくとも一部を、前記右前対向部から前記右フレーム本体の前記右前部位に伝達することが可能なように構成され、前記左前荷重受部は、前記左前アクスル部の前記中間部に前記前後方向に対向する左前対向部を有し、前記下部走行体よりも前側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記左前アクスル部の前記中間部から受ける荷重の少なくとも一部を、前記左前対向部から前記左フレーム本体の前記左前部位に伝達することが可能なように構成され、前記右後荷重受部は、前記右後アクスル部の前記中間部に前記前後方向に対向する右後対向部を有し、前記下部走行体よりも後側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記右後アクスル部の前記中間部から受ける荷重の少なくとも一部を、前記右後対向部から前記右フレーム本体の前記右後部位に伝達することが可能なように構成され、前記左後荷重受部は、前記左後アクスル部の前記中間部に前記前後方向に対向する左後対向部を有し、前記下部走行体よりも後側において前記上部旋回体に吊り荷が吊るされたときに前記左後アクスル部の前記中間部から受ける荷重の少なくとも一部を、前記左後対向部から前記左フレーム本体の前記左後部位に伝達することが可能なように構成されることが好ましい。
【0029】
この態様では、右前荷重受部及び左前荷重受部は、右前アクスル部の中間部及び左前アクスル部の中間部から受ける荷重の少なくとも一部を、右前対向部及び左前対向部から右フレーム本体の右前部位及び左フレーム本体の左前部位にそれぞれ伝達することが可能であり、右後荷重受部及び左後荷重受部は、右後アクスル部の中間部及び左後アクスル部の中間部から受ける荷重の少なくとも一部を、右後対向部及び左後対向部から右フレーム本体の右後部位及び左フレーム本体の左後部位にそれぞれ伝達することが可能である。従って、この下部走行体では、右クローラフレーム及び左クローラフレームのそれぞれにおいて、その前端部と前記荷重が伝達される部位との前後方向の距離を、従来に比べて小さくすることができ、その後端部と前記荷重が伝達される部位との前後方向の距離を、従来に比べて小さくすることができる。このことは、前アクスルを介して伝達される前記荷重に起因して各クローラフレームの前側部分において生じるたわみを小さくすることを可能にし、後アクスルを介して伝達される前記荷重に起因して各クローラフレームの後側部分において生じるたわみを小さくすることを可能にする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、下部走行体よりも前側又は後側において上部旋回体に吊り荷が吊るされたときにアクスルに生じるたわみを小さくすることが可能な移動式クレーンの下部走行体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態に係る下部走行体を備える移動式クレーンの一例を示す側面図である。
【
図2】実施形態に係る下部走行体を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る下部走行体を示す平面図である。
【
図4】実施形態に係る下部走行体を示す平面図である。
【
図5】
図3に示す下部走行体を矢印Vの方向から見た拡大斜視図である。
【
図6】
図3に示す下部走行体を矢印VIの方向から見た正面図である。
【
図7】実施形態に係る下部走行体の右クローラフレームを示す左側面図である。
【
図8】実施形態の変形例1に係る下部走行体を示す拡大斜視図である。
【
図9】実施形態の変形例1に係る下部走行体を示す正面図である。
【
図10】実施形態の変形例1に係る下部走行体の右クローラフレームを示す左側面図である。
【
図11】実施形態の変形例2に係る下部走行体を示す拡大斜視図である。
【
図12】実施形態の変形例2に係る下部走行体を示す正面図である。
【
図13】実施形態の変形例2に係る下部走行体の右クローラフレームを示す左側面図である。
【
図14】実施形態の変形例3に係る下部走行体を示す正面図である。
【
図15】実施形態の変形例4に係る下部走行体を示す正面図である。
【
図16】実施形態の変形例5に係る下部走行体の右クローラフレームを示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しつつ、実施形態に係る移動式クレーンの下部走行体について説明する。なお、図面において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」及び「下」の文字が記載されているが、これらは、下部走行体が前進後退する方向を基準とするものである。すなわち、下部走行体の前後方向は、後述するクローラフレームが延びる水平な方向であり、下部走行体の左右方向は、前記前後方向に直交する水平な方向である。下部走行体の上下方向は、上部旋回体の旋回中心軸に平行な方向である。
【0033】
[移動式クレーンの全体構造]
図1に示すように、本実施形態に係る移動式クレーン100は、下部走行体101と、上部旋回体102と、を備える。下部走行体101は、上部旋回体102を旋回可能に下から支持するとともに、地上を走行することができるように構成されている。
【0034】
上部旋回体102は、下部走行体101上に配置される。上部旋回体102は、旋回フレーム103と、作業装置と、キャブ104と、カウンタウエイト105とを含む。前記作業装置、キャブ104及びカウンタウエイト105は、旋回フレーム103上に搭載されている。
【0035】
前記作業装置は、吊り荷の吊り上げ作業(クレーン作業)等を行うためのものである。本実施形態では、前記作業装置は、ブーム106と、吊用ウィンチ107と、吊りロープ108と、フック装置109と、ガントリ110と、起伏用ウィンチ111と、下部スプレッダ112と、起伏ロープ113と、上部スプレッダ114と、ガイライン115と、を含む。なお、前記作業装置は、
図1に示す具体例に限られず、例えば、ブームの先端部に取り付け可能な図略のジブをさらに備えていてもよい。
【0036】
ブーム106は、旋回フレーム103の前部に起伏可能に取り付けられており、そのブーム106の先端から吊りロープ108を介して吊り荷を吊るためのフック装置109が吊り下げられている。吊用ウィンチ107は、旋回フレーム103上に搭載されており、吊りロープ108の巻き取り又は繰り出しを行うことによりフック装置109の巻き上げ又は巻き下げを行う。ガントリ110は、旋回フレーム103の後部上に立設されている。ガイライン115は、その一端がブーム106の先端部に接続されており、その他端部が上部スプレッダ114に接続されている。下部スプレッダ112は、ガントリ110の上端部に設けられており、この下部スプレッダ112と上部スプレッダ114とは互いに離間して配置されている。下部スプレッダ112及び上部スプレッダ114には、起伏ロープ113が掛け回されている。起伏用ウィンチ111は、旋回フレーム103上に搭載されており、起伏ロープ113の巻き取り又は繰り出しを行うことにより下部スプレッダ112に対する上部スプレッダ114の離間距離を縮小又は拡大させる。この両スプレッダ112,114間の離間距離の縮小又は拡大に伴って、ブーム106が起伏される。
【0037】
[下部走行体の構造]
図2は、実施形態に係る下部走行体101を示す斜視図であり、
図3は、その平面図である。本実施形態では、
図1、
図2及び
図3に示すように、下部走行体101の前後方向は、後述するクローラフレーム2R,2Lの長手方向であり、前記前後方向のうちの前方は、各クローラフレームのホイール24R(ドライブタンブラ)からホイール23R(アイドラ)に向かう方向であり、後方は、その反対方向である。ただし、下部走行体101の前後方向は、
図2及び
図3に規定される方向とは反対方向として規定されていてもよい。
【0038】
下部走行体101は、下部フレーム1と、右側走行装置と、左側走行装置と、を備える。下部フレーム1は、上部旋回体102を旋回可能に支持するためのフレームである。右側及び左側走行装置のそれぞれは、下部フレーム1を支持しながら地上を走行するための装置である。
【0039】
下部フレーム1は、カーボディ10と、前アクスル11と、後アクスル12と、一対のクローラ移動シリンダ15R,15Lと、を備える。カーボディ10、前アクスル11及び後アクスル12は一体の構造物を構成する。なお、
図3では、一対のクローラ移動シリンダ15R,15Lの図示が省略されている。
【0040】
カーボディ10は、移動式クレーン100の上部旋回体102を旋回中心軸Cの周りに旋回可能に支持する。旋回中心軸Cは、地面が水平である場合には、鉛直方向にほぼ平行である。カーボディ10は、旋回中心軸Cを中心とする円筒形状を有する筒部14と、この筒部14の上部に支持される旋回ベアリング13と、筒部14の下部において当該筒部14を支持するベース部16と、を含む。この旋回ベアリング13上に上部旋回体102が旋回可能に取り付けられる。
【0041】
前アクスル11は、カーボディ10から右側及び左側にそれぞれ延び、後アクスル12は、前アクスル11よりも後側においてカーボディ10から右側及び左側にそれぞれ延びている。具体的に、
図3に示す平面視において、前アクスル11は、カーボディ10の前側部分から右側及び左側にそれぞれ突出し、後アクスル12は、カーボディ10の後側部分から右側及び左側にそれぞれ突出している。本実施形態では、前アクスル11及び後アクスル12のそれぞれは、左右方向に平行に延びる柱形状、具体的には、四角柱形状を有する。
【0042】
図2に示すように、前アクスル11と後アクスル12は、前後方向に間隔をおいて設けられている。前アクスル11は、旋回中心軸Cよりも前側に位置し、後アクスル12は、旋回中心軸Cよりも後側に位置する。前記ベース部16は、これらの前アクスル11と後アクスル12との間に介在する。このベース部16は、前アクスル11、後アクスル12及び筒部14と接続され、これにより、ベース部16、前アクスル11、後アクスル12及び筒部14は一体の構造物を構成する。ベース部16は、前アクスル11及び後アクスル12の左右方向の中央に設けられている。従って、本実施形態では、前記構造物は、
図3に示す平面視において略H字形状を有する。
【0043】
具体的に、
図3に示すように、前アクスル11は、カーボディ10のベース部16に接続される前側カーボディ接続部C1と、前側カーボディ接続部C1から右側に延びる右前アクスル部11Rと、前側カーボディ接続部C1から左側に延びる左前アクスル部11Lと、を含む。後アクスル12は、前アクスル11よりも後側においてカーボディ10のベース部16に接続される後側カーボディ接続部C2と、後側カーボディ接続部C2から右側に延びる右後アクスル部12Rと、後側カーボディ接続部C2から左側に延びる左後アクスル部12Lと、を含む。
【0044】
右側走行装置は、右クローラフレーム2Rと、一対のホイール23R,24Rと、右側クローラベルト25Rと、複数の右側ローラ26と、走行駆動装置29と、を備える。同様に、左側走行装置は、左クローラフレーム2Lと、一対のホイール23L,24Lと、左側クローラベルト25Lと、複数の左側ローラ26と、走行駆動装置29と、を備える。左右のクローラベルト25R,25Lのそれぞれは、複数のシューを環状につなぎ合わせたものである。
【0045】
右クローラフレーム2Rは、右フレーム本体20Rを含み、左クローラフレーム2Lは、左フレーム本体20Lを含む。
【0046】
右フレーム本体20Rは、旋回中心軸Cよりも右側において前後方向に延びる形状を有する。右フレーム本体20Rは、右前アクスル支持部27及び右後アクスル支持部28を有する。これらのアクスル支持部27,28は、前アクスル11及び後アクスル12にそれぞれ対応する位置に設けられ、右フレーム本体20Rが前アクスル11及び後アクスル12に対する左右方向の位置を変えることが可能なように前アクスル11及び後アクスル12をそれぞれ支持する。
【0047】
右前アクスル支持部27及び右後アクスル支持部28のそれぞれは、右フレーム本体20Rを左右方向に貫通する貫通孔を画定する内側面を有し、前アクスル11及び後アクスル12のそれぞれは前記貫通孔に挿入されている。本実施形態では、当該内側面は、前アクスル11及び後アクスル12のうちの対応するアクスルの4つの外側面(前側面、後側面、下面及び上面)に対応する4つの面(前面、後面、底面及び天井面)により構成される。前面及び後面は、対応するアクスルが前後方向に変位することを規制し、底面及び上面は、対応するアクスルが上下方向に変位することを規制する。
【0048】
本実施形態では、右前アクスル支持部27は、右フレーム本体20Rのうち、当該アクスル支持部27の周りに位置する左側面から左側に突出する突出片27aと、この補強部としての突出片27aの周りを囲む環状部材27bとをさらに有する。右後アクスル支持部28は、上記と同様の突出片28aと、環状部材28bとをさらに有する。これらの部材27a,27b,28a,28bが設けられていることにより、右前アクスル支持部27及び右後アクスル支持部28は、前アクスル11及び後アクスル12をより安定して支持することができる。
【0049】
同様に、左フレーム本体20Lは、旋回中心軸Cよりも左側において前後方向に延びる形状を有する。左フレーム本体20Lは、左前アクスル支持部27及び左後アクスル支持部28を有する。これらのアクスル支持部27,28は、前アクスル11及び後アクスル12にそれぞれ対応する位置に設けられ、左フレーム本体20Lが前アクスル11及び後アクスル12に対する左右方向の位置を変えることが可能なように前アクスル11及び後アクスル12をそれぞれ支持する。左フレーム本体20Lのアクスル支持部27,28の具体的な構造は、上述した右フレーム本体20Rのアクスル支持部27,28と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0050】
一対のホイール23R,24Rは、右フレーム本体20Rの前端部及び後端部にそれぞれ回転可能に支持される。本実施形態では、前側に位置する右前ホイール23Rは、アイドラによって構成され、後側に位置する右後ホイール24Rは、ドライブタンブラによって構成される。このドライブタンブラは、当該ドライブタンブラに隣接する位置において右フレーム本体20Rの後端部に支持される走行駆動装置29に連結されている。走行駆動装置29は、例えば、走行モータと走行減速機とを含む。
【0051】
右側クローラベルト25Rは、一対のホイール23R,24Rに環状に架けられて周回移動可能なベルト状の構造を有する。言い換えると、右側クローラベルト25Rは、一対のホイール23R,24Rに無端状に支持されている。この右側クローラベルト25Rは、多数のクローラシューが連結されて構成されている。
【0052】
ドライブタンブラにより構成される右後ホイール24Rの外周部には、右側クローラベルト25Rの内周部と係合可能なように周方向に沿って複数の突起が形成されている。右後ホイール24Rは、走行駆動装置29から駆動力を与えられ、この駆動力は、右側クローラベルト25Rに伝達される。これにより、右側クローラベルト25Rは周回移動する。アイドラにより構成される右前ホイール23Rは、右側クローラベルト25Rに従動して回転する。
【0053】
複数の右側ローラ26は、右クローラフレーム2Rの右フレーム本体20Rの下部においてそれぞれ回転可能に支持されている。複数の右側ローラ26は、一対のホイール23R,24Rの間で前後方向に間隔をおいて配置されている。複数の右側ローラ26は、右側クローラベルト25Rを地面に押し付けるとともに、右側クローラベルト25Rの周回移動を案内する。
【0054】
以下では、複数の右側ローラ26のうち最も前に位置する右側ローラ26(本実施形態では、ホイール23Rに最も近い右側ローラ26)を、右側前端ローラ261と称し、複数の右側ローラ26のうち最も後に位置する右側ローラ26(本実施形態では、ホイール24Rに最も近い右側ローラ26)を、右側後端ローラ262と称する。
【0055】
左側走行装置における一対のホイール23L,24L、左側クローラベルト25L及び複数の左側ローラ26の構造は、上述した右側走行装置における一対のホイール23R,24R、右側クローラベルト25R及び複数の右側ローラ26の構造と、左右対称である点を除いて、同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、以下では、複数の左側ローラ26のうち最も前に位置する左側ローラ26(本実施形態では、ホイール23Lに最も近い左側ローラ26)を、左側前端ローラ261と称し、複数の左側ローラ26のうち最も後に位置する左側ローラ26(本実施形態では、ホイール24Lに最も近い左側ローラ26)を、左側後端ローラ262と称する。
【0056】
下部フレーム1の一対のクローラ移動シリンダ15R,15Lは、前アクスル11と後アクスル12との間に配置され、下部フレーム1と右側走行装置及び左側走行装置とを連結する油圧式シリンダである。右側のクローラ移動シリンダ15Rの先端部は、前記右側走行装置の右クローラフレーム2Rに固定され、左側のクローラ移動シリンダ15Lの先端部は、前記左側走行装置の左クローラフレーム2Lに固定されている。従って、右側のクローラ移動シリンダ15Rの伸縮動作に応じて、前記右側走行装置の右クローラフレーム2Rが左右方向に変位し、左側のクローラ移動シリンダ15Lの伸縮動作に応じて、前記左側走行装置の左クローラフレーム2Lが左右方向に変位する。
図3は、右クローラフレーム2R及び左クローラフレーム2Lが旋回中心軸Cから最も離れた状態を示し、
図4は、右クローラフレーム2R及び左クローラフレーム2Lが旋回中心軸Cに最も近づいた状態を示している。
【0057】
[荷重伝達構造]
下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに上部旋回体102からカーボディ10を介して前アクスル11に伝達される荷重は、下向きの荷重成分と、ねじり荷重成分とを含む。このねじり荷重成分は、前アクスル11の上面を前方にたわませるような前アクスルに対する荷重成分である。下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに上部旋回体102からカーボディ10を介して後アクスル12に伝達される荷重は、下向きの荷重成分と、ねじり荷重成分とを含む。このねじり荷重成分は、後アクスル12の上面を後方にたわませるような後アクスルに対する荷重成分である。
【0058】
本実施形態に係る下部走行体101は、以下に説明する荷重伝達構造を備えることにより、上部旋回体102から前アクスル11に伝達される下向きの荷重成分(例えば
図6の荷重成分L)に起因して前アクスル11に生じるたわみを小さくすることができ、上部旋回体102から後アクスル12に伝達される下向きの荷重成分に起因して後アクスル12に生じるたわみを小さくすることができる。
図6では、前アクスル11に生じることのあるたわみを二点鎖線で示している。
【0059】
また、本実施形態に係る下部走行体101は、上部旋回体102から前アクスル11に伝達される荷重に起因して右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lに生じるたわみ、具体的には、右前アクスル支持部27と右側前端ローラ261との間の部分に生じるたわみ、及び左前アクスル支持部27と左側前端ローラ261との間の部分に生じるたわみを小さくすることができる。また、下部走行体101は、上部旋回体102から後アクスル12に伝達される荷重に起因して右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lに生じるたわみ、具体的には、右後アクスル支持部28と右側後端ローラ262との間の部分に生じるたわみ、及び左後アクスル支持部28と左側後端ローラ262との間の部分に生じるたわみを小さくすることができる。以下、下部走行体101が備える荷重伝達構造について詳細に説明する。
【0060】
まず、前アクスル11及び後アクスル12に生じるたわみを小さくするための荷重伝達構造について説明する。
【0061】
図3に示すように、前アクスル11の右前アクスル部11Rは、右前アクスル支持部27に支持される被支持部S1と、この被支持部S1と前側カーボディ接続部C1との間の中間部M1と、を有する。後アクスル12の右後アクスル部12Rは、右後アクスル支持部28に支持される被支持部S2と、この被支持部S2と後側カーボディ接続部C2との間の中間部M2と、を有する。
【0062】
前アクスル11の左前アクスル部11Lは、左前アクスル支持部27に支持される被支持部S1と、この被支持部S1と前側カーボディ接続部C1との間の中間部M1と、を有する。後アクスル12の左後アクスル部12Lは、左後アクスル支持部28に支持される被支持部S2と、この被支持部S2と後側カーボディ接続部C2との間の中間部M2と、を有する。
図3では、前アクスル11における前側カーボディ接続部C1、被支持部S1,S1、及び中間部M1,M1の範囲、並びに後アクスル12における後側カーボディ接続部C2、被支持部S2,S2、及び中間部M2,M2の範囲をそれぞれ矢印にて示している。なお、被支持部S1,S2は、移動式クレーン100の吊り上げ作業(クレーン作業)が行われるとき、すなわち、
図3に示すように右クローラフレーム2Rと左クローラフレーム2Lとの左右方向の距離が拡大されたときに、前アクスル11及び後アクスル12にそれぞれ支持される部位である。
【0063】
右前アクスル部11Rの中間部M1及び左前アクスル部11Lの中間部M1のそれぞれは、前側を向く前側面SFを有する。
図2及び
図3に示すように、右後アクスル部12Rの中間部M2及び左後アクスル部12Lの中間部M2のそれぞれは、後側を向く後側面SRを有する。
【0064】
本実施形態では、前側面SF及び後側面SRのそれぞれは、左右方向及び上下方向に平行な平面である。
【0065】
本実施形態に係る下部走行体101では、右クローラフレーム2Rは、右前荷重受部21Rと、右後荷重受部22Rと、をさらに含み、左クローラフレーム2Lは、左前荷重受部21Lと、左後荷重受部22Lと、をさらに含む。右前荷重受部21R及び右後荷重受部22Rのそれぞれは、右荷重受部の一例であり、左前荷重受部21L及び左後荷重受部22Lのそれぞれは、左荷重受部の一例である。
【0066】
下部走行体101は、右前伝達部と、右後伝達部と、左前伝達部と、左後伝達部と、をさらに備える。
【0067】
本実施形態では、前記右前伝達部は、前側張出部41を含み、前記右後伝達部は、後側張出部42を含み、前記左前伝達部は、前側張出部43を含み、前記左後伝達部は、後側張出部44を含む。これらの張出部については後述する。
【0068】
右クローラフレーム2Rの右前荷重受部21Rは、右フレーム本体20Rのうち右前アクスル支持部27よりも前側の部位である右前部位201から左側に突出する形状を有する。右前部位201は、右フレーム本体20Rのうち右前アクスル支持部27及び右後アクスル支持部28に対して前後方向に外れた部位である外れ部位の一例である。具体的には次の通りである。
【0069】
図5及び
図7に示すように、前アクスル11の右前アクスル部11R及び左前アクスル部11Lのそれぞれは、左右方向に延びる上板部11Aと、この上板部11Aに対して上下方向に間隔をあけて当該上板部11Aの下方に配置され、左右方向に延びる下板部11Bと、上板部11A及び下板部11Bの前側においてこれらを連結するように左右方向に延びる前板部11Cと、上板部11A及び下板部11Bの後側においてこれらを連結するように左右方向に延びる後板部11Dと、を含む角柱状の構造を有する。後アクスル12の右後アクスル部12R及び左後アクスル部12Lのそれぞれは、前アクスル11と同様に、上板部12A、下板部12B、前板部12C及び後板部12Dを含む角柱状の構造を有する。
【0070】
右前荷重受部21Rは、右フレーム本体20Rの右前部位201から左側に張り出す上板部21Aと、この上板部21Aに対して上下方向に間隔をあけて当該上板部21Aの下方に配置され、右前部位201から左側に張り出す下板部21Bと、右前部位201から左側に張り出し、上板部21A及び下板部21Bの前側においてこれらを連結する前板部21Cと、右前部位201から左側に張り出し、上板部21A及び下板部21Bの後側においてこれらを連結する後板部21Dと、を含む箱型の構造を有する。右後荷重受部22Rは、上板部22Aと、下板部22Bと、後板部22Cと、前板部22Dと、を含む右前荷重受部21Rと同様の箱型の構造を有する。左前荷重受部21L及び左後荷重受部22Lの構造も同様である。なお、荷重受部21R,21L,22R,22Lのそれぞれは、上記のような箱型の構造に限られず、H形鋼、I形鋼などの構造部材により構成されていてもよい。
【0071】
図6及び
図7に示すように、右前荷重受部21Rは、右前アクスル部11Rの中間部M1に対応する部位に、上側を向く荷重受面21Sを有する。この荷重受面21Sは、右前荷重受部21Rの表面の一部により構成され、前側張出部41を介して右前アクスル部11Rの中間部M1から下向きの荷重を受ける面である。本実施形態では、この荷重受面21Sは、右前荷重受部21Rの上面のうち、前アクスル11に隣接する後側の部分により構成され、前側張出部41に対して上下方向に対向する部分により構成される。
【0072】
左クローラフレーム2Lの左前荷重受部21Lは、左フレーム本体20Lのうち左前アクスル支持部27よりも前側の部位である左前部位203から右側に突出する形状を有する。左前部位203は、左フレーム本体20Lのうち左前アクスル支持部27及び左後アクスル支持部28に対して前後方向に外れた部位である外れ部位の一例である。左前荷重受部21Lの構造は、右前荷重受部21Rと向きが異なる以外は右前荷重受部21Rと同様の構造を有する。
【0073】
左前荷重受部21Lは、左前アクスル部11Lの中間部M1に対応する部位に、上側を向く荷重受面21Sを有する。この荷重受面21Sは、左前荷重受部21Lの表面の一部により構成され、前側張出部43を介して左前アクスル部11Lの中間部M1から下向きの荷重を受ける面である。本実施形態では、この荷重受面21Sは、左前荷重受部21Lの上面のうち、前アクスル11に隣接する後側の部分により構成され、前側張出部43に対して上下方向に対向する部分により構成される。
【0074】
前記右前伝達部の前側張出部41は、右前アクスル部11Rの中間部M1につながる構造部材である。具体的に、前側張出部41は、右前アクスル部11Rの前側面SFの上部から前側に張り出す板形状を有する。これにより、前側張出部41は、平面視で右前荷重受部21Rと右前アクスル部11Rの中間部M1との間に前後方向にまたがるように配置されている。前側張出部41は、右前アクスル部11Rの前側面SFに沿って左右方向に延びる板形状を有する。前側張出部41の下面の少なくとも一部は荷重伝達面41Sを構成する。この荷重伝達面41Sは、右前荷重受部21Rの荷重受面21Sに対して上下方向に対向するようにこの荷重受面21Sの上側に位置する。
【0075】
前記左前伝達部の前側張出部43は、左前アクスル部11Lにつながる構造部材である。具体的に、前側張出部43は、左前アクスル部11Lの前側面SFの上部から前側に張り出す板形状を有する。これにより、前側張出部43は、平面視で左前荷重受部21Lと左前アクスル部11Lの中間部M1との間に前後方向にまたがるように配置されている。前側張出部43は、左前アクスル部11Lの前側面SFに沿って左右方向に延びる板形状を有する。前側張出部43の下面の少なくとも一部は荷重伝達面43Sを構成する。この荷重伝達面43Sは、左前荷重受部21Lの荷重受面21Sに対して上下方向に対向するようにこの荷重受面21Sの上側に位置する。
【0076】
この下部走行体101では、前記右前伝達部の前側張出部41は、この前側張出部41が右前アクスル部11Rから受ける下向きの荷重成分を、上下方向に対向する荷重伝達面41S及び荷重受面21Sを介して右前荷重受部21Rに伝達する。当該右前荷重受部21Rは、右前部位201において右フレーム本体20Rに支持されているので、この下向きの荷重成分を受けて右前アクスル部11Rを支持することができる。また、前記左前伝達部の前側張出部43は、この前側張出部43が左前アクスル部11Lから受ける下向きの荷重成分を、上下方向に対向する荷重伝達面43S及び荷重受面21Sを介して左前荷重受部21Lに伝達する。当該左前荷重受部21Lは、左フレーム本体20Lに支持されているので、この下向きの荷重成分を受けて左前アクスル部11Lを支持することができる。従って、この下部走行体101では、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに右前アクスル部11R及び左前アクスル部11Lに生じるたわみを小さくすることが可能になる。
【0077】
具体的には、
図3に示すように、前側カーボディ接続部C1はカーボディ10に接続されている一方で、右前アクスル部11Rの中間部M1及び左前アクスル部11Lの中間部M1のそれぞれは、カーボディ10から左右方向に離れた位置に設けられている。このため、右前アクスル部11Rの中間部M1及び左前アクスル部11Lの中間部M1のそれぞれは、前側カーボディ接続部C1に比べてたわみが生じやすい部分であるが、本実施形態では、これらの中間部M1が右前荷重受部21R及び左前荷重受部21Lによりそれぞれ支持されるので、中間部M1に生じるたわみを小さくすることができる。
【0078】
右クローラフレーム2Rの右後荷重受部22Rは、右フレーム本体20Rのうち右後アクスル支持部28よりも後側の部位である右後部位202から左側に突出する形状を有する。右後部位202は、右フレーム本体20Rの前記外れ部位の一例である。右後荷重受部22Rの構造は、右前荷重受部21Rと向きが異なる以外は右前荷重受部21Rと同様の構造を有する。
【0079】
右後荷重受部22Rは、右後アクスル部12Rの中間部M2に対応する部位に、上側を向く荷重受面22Sを有する。この荷重受面22Sは、右後荷重受部22Rの表面の一部により構成され、後側張出部42を介して右後アクスル部12Rの中間部M2から下向きの荷重を受ける面である。本実施形態では、この荷重受面22Sは、右後荷重受部22Rの上面のうち、後アクスル12に隣接する前側の部分により構成され、後側張出部42に対して上下方向に対向する部分により構成される。
【0080】
左クローラフレーム2Lの左後荷重受部22Lは、左フレーム本体20Lのうち左後アクスル支持部28よりも後側の部位である左後部位204から右側に突出する形状を有する。左後部位204は、左フレーム本体20Lの前記外れ部位の一例である。左後荷重受部22Lの構造は、右前荷重受部21Rと向きが異なる以外は右前荷重受部21Rと同様の構造を有する。
【0081】
左後荷重受部22Lは、左後アクスル部12Lの中間部M2に対応する部位に、上側を向く荷重受面22Sを有する。この荷重受面22Sは、左後荷重受部22Lの表面の一部により構成され、後側張出部44を介して左後アクスル部12Lの中間部M2から下向きの荷重を受ける面である。本実施形態では、この荷重受面22Sは、左後荷重受部22Lの上面のうち、後アクスル12に隣接する前側の部分により構成され、後側張出部44に対して上下方向に対向する部分により構成される。
【0082】
前記右後伝達部の後側張出部42は、右後アクスル部12Rの中間部M2につながる構造部材である。具体的に、後側張出部42は、右後アクスル部12Rの後側面SRの上部から後側に張り出す板形状を有する。これにより、後側張出部42は、平面視で右後荷重受部22Rと右後アクスル部12Rの中間部M2との間に前後方向にまたがるように配置されている。後側張出部42は、右後アクスル部12Rの後側面SRに沿って左右方向に延びる板形状を有する。後側張出部42の下面の少なくとも一部は荷重伝達面42Sを構成する。この荷重伝達面42Sは、右後荷重受部22Rの荷重受面22Sに対して上下方向に対向するようにこの荷重受面22Sの上側に位置する。
【0083】
前記左後伝達部の後側張出部44は、左後アクスル部12Lの中間部M2につながる構造部材である。具体的に、後側張出部44は、左後アクスル部12Lの後側面SRの上部から後側に張り出す板形状を有する。これにより、後側張出部44は、平面視で左後荷重受部22Lと左後アクスル部12Lの中間部M2との間に前後方向にまたがるように配置されている。後側張出部44は、左後アクスル部12Lの後側面SRに沿って左右方向に延びる板形状を有する。後側張出部44の下面の少なくとも一部は荷重伝達面44Sを構成する。この荷重伝達面44Sは、左後荷重受部22Lの荷重受面22Sに対して上下方向に対向するようにこの荷重受面22Sの上側に位置する。なお、荷重伝達面44Sの図示は省略されている。
【0084】
この下部走行体101では、前記右後伝達部の後側張出部42は、この後側張出部42が右後アクスル部12Rから受ける下向きの荷重成分を、上下方向に対向する荷重伝達面42S及び荷重受面22Sを介して右後荷重受部22Rに伝達する。当該右後荷重受部22Rは、右後部位202において右フレーム本体20Rに支持されているので、この下向きの荷重成分を受けて右後アクスル部12Rを支持することができる。また、前記左後伝達部の後側張出部44は、この後側張出部44が左後アクスル部12Lから受ける下向きの荷重成分を、上下方向に対向する荷重伝達面44S及び荷重受面22Sを介して左後荷重受部22Lに伝達する。当該左後荷重受部22Lは、左フレーム本体20Lに支持されているので、この下向きの荷重成分を受けて左後アクスル部12Lを支持することができる。従って、この下部走行体101では、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに右後アクスル部12R及び左後アクスル部12Lに生じるたわみを小さくすることが可能になる。
【0085】
次に、右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lに生じるたわみを小さくするための荷重伝達構造について説明する。下部走行体101では、前端ローラ261又は後端ローラ262を支点に前アクスル11又は後アクスル12にねじり変形が生じ、その結果、右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lに曲げ変形が生じる。このようなねじり変形及び曲げ変形が生じることを抑制するために、本実施形態に係る下部走行体101では、右クローラフレーム2Rは、右前荷重受部21R及び右後荷重受部22Rにより曲げ剛性が向上し、左クローラフレーム2Lは、左前荷重受部21L及び左後荷重受部22Lにより曲げ剛性が向上している。
【0086】
右前荷重受部21Rは、右フレーム本体20Rの右前アクスル支持部27よりも左側において右前アクスル部11Rの前側面SFに前後方向に対向する右前対向部ST1を有する。右クローラフレーム2Rの右前荷重受部21Rは、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける荷重である前側荷重を、右前アクスル部11Rを介して、右前対向部ST1から右前部位201にさらに伝達することが可能なように構成される。右前荷重受部21Rが右前対向部ST1から右前部位201に伝達する前側荷重は、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0087】
右後荷重受部22Rは、右フレーム本体20Rの右後アクスル支持部28よりも左側において右後アクスル部12Rの後側面SRに前後方向に対向する右後対向部ST2を有する。右クローラフレーム2Rの右後荷重受部22Rは、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける荷重である後側荷重を、右後アクスル部12Rを介して、右後対向部ST2から右後部位202にさらに伝達することが可能なように構成される。右後荷重受部22Rが右後対向部ST2から右後部位202に伝達する後側荷重は、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0088】
左前荷重受部21Lは、左フレーム本体20Lの左前アクスル支持部27よりも右側において左前アクスル部11Lの前側面SFに前後方向に対向する左前対向部ST3を有する。左クローラフレーム2Lの左前荷重受部21Lは、前記前側荷重を、左前アクスル部11Lを介して、左前対向部ST3から左前部位203にさらに伝達することが可能なように構成される。左前荷重受部21Lが左前対向部ST3から左前部位203に伝達する前側荷重は、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0089】
左後荷重受部22Lは、左フレーム本体20Lの左後アクスル支持部28よりも右側において左後アクスル部12Lの後側面SRに前後方向に対向する左後対向部ST4を有する。左クローラフレーム2Lの左後荷重受部22Lは、前記後側荷重を、左後アクスル部12Lを介して、左後対向部ST4から左後部位204にさらに伝達することが可能なように構成される。左後荷重受部22Lが左後対向部ST4から左後部位204に伝達する後側荷重は、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から受ける全ての荷重のうちの一部である。
【0090】
上記のような荷重伝達構造を備える本実施形態に係る下部走行体101では、右クローラフレーム2Rの右前荷重受部21R及び左クローラフレーム2Lの左前荷重受部21Lは、カーボディ10が上部旋回体102から受ける前記前側荷重を、右前対向部ST1及び左前対向部ST3から、右前アクスル支持部27及び左前アクスル支持部27よりも前側の右前部位201及び左前部位203にそれぞれ伝達することが可能である。具体的に、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から前記前側荷重を受けると、この前側荷重は、右前アクスル部11R及び左前アクスル部11Lにそれぞれ伝達され、これらの右前アクスル部11Rの前側面SF及び左前アクスル部11Lの前側面SFから右前荷重受部21Rの右前対向部ST1及び左前荷重受部21Lの左前対向部ST3にそれぞれ伝達される。右前荷重受部21Rは、右前対向部ST1から右前部位201まで連続する部材であり、左前荷重受部21Lは、左前対向部ST3から左前部位203まで連続する部材であるので、これらの右前荷重受部21R及び左前荷重受部21Lは、右前対向部ST1及び左前対向部ST3にそれぞれ伝達された前記前側荷重を、右前部位201及び左前部位203にそれぞれ伝達することができる。
【0091】
同様に、右クローラフレーム2Rの右後荷重受部22R及び左クローラフレーム2Lの左後荷重受部22Lは、カーボディ10が上部旋回体102から受ける前記後側荷重を、右後対向部ST2及び左後対向部ST4から、右後アクスル支持部28及び左後アクスル支持部28よりも後側の右後部位202及び左後部位204にそれぞれ伝達することが可能である。具体的に、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から前記後側荷重を受けると、この後側荷重は、右後アクスル部12R及び左後アクスル部12Lにそれぞれ伝達され、これらの右後アクスル部12Rの後側面SR及び左後アクスル部12Lの後側面SRから右後荷重受部22Rの右後対向部ST2及び左後荷重受部22Lの左後対向部ST4にそれぞれ伝達される。右後荷重受部22Rは、右後対向部ST2から右後部位202まで連続する部材であり、左後荷重受部22Lは、左後対向部ST4から左後部位204まで連続する部材であるので、これらの右後荷重受部22R及び左後荷重受部22Lは、右後対向部ST2及び左後対向部ST4にそれぞれ伝達された前記後側荷重を、右後部位202及び左後部位204にそれぞれ伝達することができる。
【0092】
一方、上記のような荷重受部を備えていない従来の下部走行体では、カーボディが上部旋回体から受ける前記前側荷重は、前アクスルから右クローラフレームの右前アクスル支持部及び左クローラフレームの左前アクスル支持部に伝達され、これらのアクスル支持部よりも前側には伝達されない。同様に、カーボディが上部旋回体から受ける前記後側荷重は、後アクスルから右クローラフレームの右後アクスル支持部及び左クローラフレームの左後アクスル支持部に伝達され、これらのアクスル支持部よりも後側には伝達されない。
【0093】
従って、本実施形態に係る下部走行体101では、右クローラフレーム2Rの右フレーム本体20R及び左クローラフレーム2Lの左フレーム本体20Lのそれぞれにおいて、前側の転倒支点に対応する部位と前記荷重が伝達される部位との前後方向の距離を、従来の下部走行体に比べて小さくすることができ、後側の転倒支点に対応する部位と前記荷重が伝達される部位との前後方向の距離を、従来の下部走行体に比べて小さくすることができる。このことは、上部旋回体102から前アクスル11に伝達される荷重に起因して右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lの前側部分において生じるたわみ、及び上部旋回体102から後アクスル12に伝達される荷重に起因して右フレーム本体20R及び左フレーム本体20Lの後側部分において生じるたわみを、従来に比べて小さくすることを可能にする。
【0094】
ここで、
図1及び
図2に示すような下部走行体101を備える移動式クレーン100では、前記右側走行装置の右側クローラベルト25R及び前記左側走行装置の左側クローラベルト25Lのそれぞれの先端部及び後端部は、側面視で円弧形状を有する。このため、これらのクローラベルト25R,25Lの先端部及び後端部は地面から浮いた状態となる。右側及び左側のクローラベルト25R,25Lにおいて、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から前記荷重を受けたときに転倒支点(前側の転倒支点)となる部位は、右側及び左側の前端ローラ261,261に対応する部位であり、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときにカーボディ10が上部旋回体102から前記荷重を受けたときに転倒支点(後側の転倒支点)となる部位は、右側及び左側の後端ローラ262,262に対応する部位である。
【0095】
本実施形態では、右クローラフレーム2Rの右前荷重受部21Rは、
図3に示す平面視において、右側前端ローラ261と旋回中心軸Cとを通る直線である第1直線LAに重なるような位置に設けられている。第1直線LAは、平面視において、右側前端ローラ261の回転中心軸上であって右側前端ローラ261の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを通る直線である。このような位置に設けられる右前荷重受部21Rは、前記荷重を、右フレーム本体20Rにおける前記前側の転倒支点に対応する部位にさらに近い部位に伝達することができる。このことは、前記荷重に起因して右フレーム本体20Rの前側部分において生じるたわみをより小さくすることを可能にする。
【0096】
また、本実施形態では、右フレーム本体20Rの右前部位201は、
図3に示す平面視において、第1直線LAに重なる位置に設けられている。これにより、右前荷重受部21Rは、前記荷重を、右フレーム本体20Rにおける前記前側の転倒支点に対応する部位に直接的に伝達することができる。このことは、前記荷重に起因して右フレーム本体20Rの前側部分において生じるたわみをさらに小さくすることを可能にする。
【0097】
なお、上記のような右前荷重受部21Rと旋回中心軸Cと右側前端ローラ261との位置関係は、これらを平面視したときのものであるので、右前荷重受部21Rと旋回中心軸Cと右側前端ローラ261とは、必ずしも上下方向の位置が同じである必要はなく、上下方向に互いにずれた位置に配置されていてもよい。以下に説明する他の荷重受部22R,21L,22Lについても同様である。
【0098】
右クローラフレーム2Rの右後荷重受部22Rは、平面視において、右側後端ローラ262と旋回中心軸Cとを通る直線である第2直線LBに重なるような位置に設けられている。第2直線LBは、平面視において、右側後端ローラ262の回転中心軸上であって右側後端ローラ262の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを通る直線である。また、右フレーム本体20Rの右後部位202は、平面視において、第2直線LBに重なる位置に設けられている。これらの構成により得られる効果は上述した通りである。
【0099】
左クローラフレーム2Lの左前荷重受部21Lは、平面視において、左側前端ローラ261と旋回中心軸Cとを通る直線である第3直線LCに重なるような位置に設けられている。第3直線LCは、平面視において、左側前端ローラ261の回転中心軸上であって左側前端ローラ261の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを通る直線である。また、左フレーム本体20Lの左前部位203は、平面視において、第3直線LCに重なる位置に設けられている。これらの構成により得られる効果は上述した通りである。
【0100】
左クローラフレーム2Lの左後荷重受部22Lは、平面視において、左側後端ローラ262と旋回中心軸Cとを通る直線である第4直線LDに重なるような位置に設けられている。第4直線LDは、平面視において、左側後端ローラ262の回転中心軸上であって左側後端ローラ262の幅方向(左右方向)の中央の位置と、旋回中心軸Cとを通る直線である。また、左フレーム本体20Lの左後部位204は、平面視において、第4直線LDに重なる位置に設けられている。これらの構成により得られる効果は上述した通りである。
【0101】
また、本実施形態では、
図3に示すように、右フレーム本体20Rの右前部位201は、この右前部位201の前後方向の位置と右側前端ローラ261の前後方向の位置とが重なるような位置に設けられている。具体的には、右前部位201の前端F1は、右側前端ローラ261の前端よりも前側に位置し、右前部位201の後端R1は、右側前端ローラ261の後端よりも後側に位置している。これにより、右前荷重受部21Rは、前記荷重を、右フレーム本体20Rにおける前記前側転倒支点に対応する部位に直接的に伝達することができる。
【0102】
同様に、右フレーム本体20Rの右後部位202は、この右後部位202の前後方向の位置と右側後端ローラ262の前後方向の位置とが重なるような位置に設けられている。具体的には、右後部位202の後端R2は、右側後端ローラ262の後端よりも後側に位置し、右後部位202の前端F2は、右側後端ローラ262の前端よりも前側に位置している。左前部位203と左側前端ローラ261との前後方向の位置関係、及び左後部位204と左側後端ローラ262の前後方向の位置関係についても、同様である。
【0103】
また、
図3に示すように、右クローラフレーム2Rの右前荷重受部21R及び右後荷重受部22Rのそれぞれの左端は、右側クローラベルト25Rの左端よりも左側に位置している。そして、右前荷重受部21Rの右前対向部ST1は、右側クローラベルト25Rの左端よりも左側の位置において、前アクスル11の前側面SFから前記荷重を受け、右後荷重受部22Rの右後対向部ST2は、右側クローラベルト25Rの左端よりも左側の位置において、後アクスル12の後側面SRから前記荷重を受けるように構成される。これにより、前記荷重は、前記第1直線LA及び前記第3直線LCに近い部位を介して右前対向部ST1及び左前対向部ST3から右前部位201及び左前部位203のそれぞれに効率よく伝達される。
【0104】
同様に、左クローラフレーム2Lの左前荷重受部21L及び左後荷重受部22Lのそれぞれの右端は、左側クローラベルト25Lの右端よりも右側に位置している。そして、左前荷重受部21Lの左前対向部ST3は、左側クローラベルト25Lの右端よりも右側の位置において、前アクスル11の前側面SFから前記荷重を受け、左後荷重受部22Lの左後対向部ST4は、左側クローラベルト25Lの右端よりも右側の位置において、後アクスル12の後側面SRから前記荷重を受けるように構成される。これにより、前記荷重は、前記第2直線LB及び前記第4直線LDに近い部位を介して右後対向部ST2及び左後対向部ST4から右後部位202及び左後部位204のそれぞれに効率よく伝達される。
【0105】
また、
図3に示すように、右クローラフレーム2Rの右前荷重受部21R及び右後荷重受部22Rのそれぞれの左端は、前記右フレーム本体20Rにおける右前アクスル支持部27と右後アクスル支持部28との間の部分よりも左側に位置している。同様に、左クローラフレーム2Lの左前荷重受部21L及び左後荷重受部22Lのそれぞれの右端は、前記左フレーム本体20Lにおける左前アクスル支持部27と左後アクスル支持部28との間の部分よりも右側に位置している。
【0106】
また、本実施形態では、
図3に示すように、右前荷重受部21R及び左前荷重受部21Lのそれぞれは、平面視において、前側に向かうにつれて左右方向の長さが小さくなるような形状を有する。具体的には、右前荷重受部21Rにおける前縁は、右フレーム本体20Rに向かって右斜め前方に延びるような形状を有し、左前荷重受部21Lにおける前縁は、左フレーム本体20Lに向かって左斜め前方に延びるような形状を有する。このことは、前記前側荷重を、フレーム本体20R,20Lのそれぞれにおけるできるだけ前側に伝達するという機能を確保しつつ、右前荷重受部21R及び左前荷重受部21Lのそれぞれの重量の増加を抑制できる。同様に、右後荷重受部22R及び左後荷重受部22Lのそれぞれは、平面視において、後側に向かうにつれて左右方向の長さが小さくなるような形状を有する。具体的には、右後荷重受部22Rにおける後縁は、右フレーム本体20Rに向かって右斜め後方に延びるような形状を有し、左後荷重受部22Lにおける後縁は、左フレーム本体20Lに向かって左斜め後方に延びるような形状を有する。このことは、前記後側荷重を、フレーム本体20R,20Lのそれぞれにおけるできるだけ後側に伝達するという機能を確保しつつ、右後荷重受部22R及び左後荷重受部22Lのそれぞれの重量の増加を抑制できる。
【0107】
図8は、実施形態の変形例1に係る下部走行体101を示す拡大斜視図である。
図9は、実施形態の変形例1に係る下部走行体101を示す正面図である。
図10は、実施形態の変形例1に係る下部走行体101の右クローラフレーム2Rを示す左側面図である。
【0108】
図8~
図10に示すように、変形例1に係る下部走行体101は、右前アクスル部11Rの前側面SFの下部から前側に張り出す張出部61と、左前アクスル部11Lの前側面SFの下部から前側に張り出す張出部63と、右後アクスル部12Rの後側面SRの下部から後側に張り出す張出部62と、左後アクスル部12Lの後側面SRの下部から後側に張り出す張出部64と、をさらに備える点で、
図5~
図7に示す前記実施形態と異なり、その他の構成は、
図5~
図7に示す前記実施形態と同様である。
【0109】
張出部61は、右前アクスル部11Rの前側面SFの下部から前側に張り出す板形状を有する。張出部61は、右前アクスル部11Rの前側面SFに沿って左右方向に延びる板形状を有する。張出部61の上面の少なくとも一部は、右前荷重受部21Rの下面に対して上下方向に対向するように当該下面の下側に位置する。
【0110】
張出部63は、左前アクスル部11Lの前側面SFの下部から前側に張り出す板形状を有する。張出部63は、左前アクスル部11Lの前側面SFに沿って左右方向に延びる板形状を有する。張出部63の上面の少なくとも一部は、左前荷重受部21Lの下面に対して上下方向に対向するように当該下面の下側に位置する。
【0111】
張出部62は、右後アクスル部12Rの後側面SRの下部から後側に張り出す板形状を有する。張出部62は、右後アクスル部12Rの後側面SRに沿って左右方向に延びる板形状を有する。張出部62の上面の少なくとも一部は、右後荷重受部22Rの下面に対して上下方向に対向するように当該下面の下側に位置する。
【0112】
張出部64は、左後アクスル部12Lの後側面SRの下部から後側に張り出す板形状を有する。張出部64は、左後アクスル部12Lの後側面SRに沿って左右方向に延びる板形状を有する。張出部64の上面の少なくとも一部は、左後荷重受部22Lの下面に対して上下方向に対向するように当該下面の下側に位置する。なお、
図8~
図10では、張出部64の図示は省略されている。
【0113】
この変形例1に係る下部走行体101では、張出部61~64は、右前荷重受部21R、右後荷重受部22R、左前荷重受部21L及び左後荷重受部22Lを下から支持することができる。これにより、各荷重受部及びそれに隣接するアクスル支持部の剛性を向上させることができる。
【0114】
図11は、実施形態の変形例2に係る下部走行体101を示す拡大斜視図である。
図12は、実施形態の変形例2に係る下部走行体101を示す正面図である。
図13は、実施形態の変形例2に係る下部走行体101の右クローラフレーム2Rを示す左側面図である。
【0115】
図11~
図13に示すように、変形例2に係る下部走行体101は、複数の連結ピンP1~P4をさらに備える点で、
図5~
図7に示す前記実施形態と異なり、その他の構成は、
図5~
図7に示す前記実施形態と同様である。
【0116】
この変形例2では、前記右前伝達部は、前側張出部41と、連結ピンP1とを含む。前記右後伝達部は、後側張出部42と、連結ピンP2とを含む。前記左前伝達部は、前側張出部43と連結ピンP3とを含む。前記左後伝達部は、後側張出部44と、連結ピンP4とを含む。前側張出部41、後側張出部42、前側張出部43及び後側張出部44の構造は、
図5~
図7に示す実施形態と同様である。
【0117】
図11~
図13に示すように、右前荷重受部21R及び右前アクスル部11Rには挿通孔H1及び挿通孔H2がそれぞれ設けられている。連結ピンP1は、挿通孔H1及び挿通孔H2にそれぞれ挿通された状態で、右前荷重受部21Rと右前アクスル部11Rとの間において前後方向に延びる姿勢で配置され、これらを連結する。
【0118】
同様に、右後荷重受部22R及び右後アクスル部12Rには挿通孔H1及び挿通孔H2がそれぞれ設けられている。連結ピンP2は、挿通孔H1及び挿通孔H2にそれぞれ挿通された状態で、右後荷重受部22Rと右後アクスル部12Rとの間において前後方向に延びる姿勢で配置され、これらを連結する。
【0119】
左前荷重受部21L及び左前アクスル部11Lには挿通孔H1及び挿通孔H2がそれぞれ設けられている。連結ピンP3は、挿通孔H1及び挿通孔H2にそれぞれ挿通された状態で、左前荷重受部21Lと左前アクスル部11Lとの間において前後方向に延びる姿勢で配置され、これらを連結する。
【0120】
左後荷重受部22L及び左後アクスル部12Lには挿通孔H1及び挿通孔H2がそれぞれ設けられている。連結ピンP4は、挿通孔H1及び挿通孔H2にそれぞれ挿通された状態で、左後荷重受部22Lと左後アクスル部12Lとの間において前後方向に延びる姿勢で配置され、これらを連結する。なお、
図5~
図7では、連結ピンP4の図示は省略されている。
【0121】
この変形例2では、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、連結ピンP1,P3は、右前アクスル部11R及び左前アクスル部11Lから受ける下向きの荷重成分を、当該連結ピンP1,P3と右前アクスル部11R及び左前アクスル部11Lとの接続部分において受けることができ、受けた下向きの荷重成分を、連結ピンP1,P3と右前荷重受部21R及び左前荷重受部21Lとの接続部分を介して右前荷重受部21R及び左前荷重受部21Lにそれぞれ伝達することができる。これらの右前荷重受部21R及び左前荷重受部21Lは、前記下向きの荷重成分を受けて右前アクスル部11R及び左前アクスル部11Lをそれぞれ支持することができる。
【0122】
すなわち、この変形例2では、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、右前アクスル部11Rは、前側張出部41と連結ピンP1とを介して右前荷重受部21Rに支持され、左前アクスル部11Lは、前側張出部43と連結ピンP3とを介して左前荷重受部21Lに支持される。従って、この変形例2に係る下部走行体101では、右前アクスル部11R及び左前アクスル部11Lに生じるたわみを、
図5~
図7に示す実施形態よりもさらに小さくすることが可能になる。
【0123】
同様に、この変形例2では、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、連結ピンP2,P4は、右後アクスル部12R及び左後アクスル部12Lから受ける下向きの荷重成分を、当該連結ピンP2,P4と右後アクスル部12R及び左後アクスル部12Lとの接続部分において受けることができ、受けた下向きの荷重成分を、連結ピンP2,P4と右後荷重受部22R及び左後荷重受部22Lとの接続部分を介して右後荷重受部22R及び左後荷重受部22Lにそれぞれ伝達することができる。これらの右後荷重受部22R及び左後荷重受部22Lは、前記下向きの荷重成分を受けて右後アクスル部12R及び左後アクスル部12Lをそれぞれ支持することができる。
【0124】
すなわち、この変形例2では、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、右後アクスル部12Rは、後側張出部42と連結ピンP2とを介して右後荷重受部22Rに支持され、左後アクスル部12Lは、後側張出部44と連結ピンP4とを介して左後荷重受部22Lに支持される。従って、この変形例2に係る下部走行体101では、右後アクスル部12R及び左後アクスル部12Lに生じるたわみを、
図5~
図7に示す実施形態よりもさらに小さくすることが可能になる。
【0125】
図14は、実施形態の変形例3に係る下部走行体を示す正面図である。
図15は、実施形態の変形例4に係る下部走行体を示す正面図である。
【0126】
これらの変形例3,4のそれぞれは、各荷重受部とそれに対応するアクスル部とを連結するための連結ピンの個数が
図11~
図13に示す変形例2と異なり、その他の構成は、変形例2と同様である。
【0127】
具体的に、
図14に示す変形例3では、右前荷重受部21Rと右前アクスル部11Rとは、上下方向に互いに間隔をおいて配置される一対の連結ピンP1により連結されている。同様に、左前荷重受部21Lと左前アクスル部11Lとは、上下方向に互いに間隔をおいて配置される一対の連結ピンP3により連結されている。なお、図示は省略されているが、右後荷重受部22Rと右後アクスル部12Rとは、上下方向に互いに間隔をおいて配置される一対の連結ピンP2により連結され、左後荷重受部22Lと左後アクスル部12Lとは、上下方向に互いに間隔をおいて配置される一対の連結ピンP4により連結されている。各連結ピンは、前後方向に延びる姿勢となるように配置される。
【0128】
図15に示す変形例4では、右前荷重受部21Rと右前アクスル部11Rとは、左右方向に互いに間隔をおいて配置される一対の連結ピンP1により連結されている。同様に、左前荷重受部21Lと左前アクスル部11Lとは、左右方向に互いに間隔をおいて配置される一対の連結ピンP3により連結されている。なお、図示は省略されているが、右後荷重受部22Rと右後アクスル部12Rとは、左右方向に互いに間隔をおいて配置される一対の連結ピンP2により連結され、左後荷重受部22Lと左後アクスル部12Lとは、左右方向に互いに間隔をおいて配置される一対の連結ピンP4により連結されている。各連結ピンは、前後方向に延びる姿勢となるように配置される。
【0129】
これらの変形例3,4では、各荷重受部とそれに対応するアクスル部とが複数の連結ピンにより連結されるので、各荷重受部とそれに対応するアクスルとが一つの連結ピンにより連結される場合に比べて、各荷重受部とそれに対応するアクスルとの相対位置の変化を抑制できる。すなわち、各荷重受部とそれに対応するアクスルとが一つの連結ピンにより連結される場合には、その連結ピンの軸周りに、各荷重受部とそれに対応するアクスルとが相対的に回転することがある。一方、各荷重受部とそれに対応するアクスルとが複数の連結ピンにより連結される場合には、上記のような相対的な回転を抑制できる。
【0130】
図16は、実施形態の変形例5に係る下部走行体の右クローラフレームを示す左側面図である。
【0131】
図16に示すように、変形例5に係る下部走行体101は、各荷重受部から延びる張出部をさらに備える点で、
図5~
図7に示す前記実施形態と異なり、その他の構成は、
図5~
図7に示す前記実施形態と同様である。
【0132】
この変形例5では、前記右前伝達部は、前側張出部41と、後側張出部51とを含む。前記右後伝達部は、後側張出部42と、前側張出部52とを含む。前記左前伝達部は、前側張出部43と、後側張出部53とを含む。前記左後伝達部は、後側張出部44と、前側張出部54とを含む。
図16に示す前側張出部41、後側張出部42、前側張出部43及び後側張出部44の構造は、
図5~
図7に示す実施形態と同様である。
【0133】
図16に示すように、前記右前伝達部の後側張出部51は、右前荷重受部21Rにつながる構造部材である。具体的に、後側張出部51は、当該右前荷重受部21Rの後側面の下部から後側に張り出す板形状を有する。これにより、後側張出部51は、平面視で右前荷重受部21Rと右前アクスル部11Rの中間部M1との間に前後方向にまたがるように配置されている。後側張出部51は、右前アクスル部11Rに沿って左右方向に延びる板形状を有する。後側張出部51の上面の少なくとも一部は荷重伝達面51Sを構成する。この荷重伝達面51Sは、右前アクスル部11Rの下面の一部を構成するアクスル下面11Sに対して上下方向に対向するようにこのアクスル下面11Sの下側に位置する。
【0134】
前記右後伝達部の前側張出部52は、右後荷重受部22Rにつながる構造部材である。具体的に、前側張出部52は、当該右後荷重受部22Rの前側面の下部から前側に張り出す板形状を有する。これにより、前側張出部52は、平面視で右後荷重受部22Rと右後アクスル部12Rの中間部M2との間に前後方向にまたがるように配置されている。前側張出部52は、右後アクスル部12Rに沿って左右方向に延びる板形状を有する。前側張出部52の上面の少なくとも一部は荷重伝達面52Sを構成する。この荷重伝達面52Sは、右後アクスル部12Rの下面の一部を構成するアクスル下面12Sに対して上下方向に対向するようにこのアクスル下面12Sの下側に位置する。
【0135】
なお、図示は省略されているが、後側張出部53及び前側張出部54は、向きが異なる点を除いて、後側張出部51及び前側張出部52と同様の構造を有する。具体的には、前記左前伝達部の後側張出部53は、左前荷重受部21Lにつながる構造部材であり、当該左前荷重受部21Lの後側面の下部から後側に張り出す板形状を有する。これにより、後側張出部53は、平面視で左前荷重受部21Lと左前アクスル部11Lの中間部M1との間に前後方向にまたがるように配置されている。後側張出部53は、左前アクスル部11Lに沿って左右方向に延びる板形状を有する。後側張出部53の上面の少なくとも一部は荷重伝達面53Sを構成する。この荷重伝達面53Sは、左前アクスル部11Lの下面の一部を構成するアクスル下面に対して上下方向に対向するようにこのアクスル下面の下側に位置する。前記左後伝達部の前側張出部54は、左後荷重受部22Lにつながる構造部材であり、当該左後荷重受部22Lの前側面の下部から前側に張り出す板形状を有する。これにより、前側張出部54は、平面視で左後荷重受部22Lと左後アクスル部12Lの中間部M2との間に前後方向にまたがるように配置されている。前側張出部54は、左後アクスル部12Lに沿って左右方向に延びる板形状を有する。前側張出部54の上面の少なくとも一部は荷重伝達面54Sを構成する。この荷重伝達面54Sは、左後アクスル部12Lの下面の一部を構成するアクスル下面に対して上下方向に対向するようにこのアクスル下面の下側に位置する。
【0136】
この変形例5では、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、後側張出部51及び後側張出部53は、右前アクスル部11R及び左前アクスル部11Lから受ける下向きの荷重成分を、上下方向に互いに対向するアクスル下面11S及び荷重伝達面51S,53Sを介して右前荷重受部21R及び左前荷重受部21Lにそれぞれ伝達することができる。これらの右前荷重受部21R及び左前荷重受部21Lは、前記下向きの荷重成分を受けて右前アクスル部11R及び左前アクスル部11Lをそれぞれ支持することができる。
【0137】
すなわち、この変形例5では、下部走行体101よりも前側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、右前アクスル部11Rは、前側張出部41と後側張出部51とを介して右前荷重受部21Rに支持され、左前アクスル部11Lは、前側張出部43と後側張出部53とを介して左前荷重受部21Lに支持される。従って、この変形例5に係る下部走行体101では、右前アクスル部11R及び左前アクスル部11Lに生じるたわみを、
図5~
図7に示す実施形態よりもさらに小さくすることが可能になる。
【0138】
また、この変形例5では、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、前側張出部52及び前側張出部54は、右後アクスル部12R及び左後アクスル部12Lから受ける下向きの荷重成分を、上下方向に互いに対向するアクスル下面12S,12S及び荷重伝達面52S,54Sを介して右後荷重受部22R及び左後荷重受部22Lにそれぞれ伝達することができる。これらの右後荷重受部22R及び左後荷重受部22Lは、前記下向きの荷重成分を受けて右後アクスル部12R及び左後アクスル部12Lをそれぞれ支持することができる。
【0139】
すなわち、この変形例5では、下部走行体101よりも後側において上部旋回体102に吊り荷が吊るされたときに、右後アクスル部12Rは、後側張出部42と前側張出部52とを介して右後荷重受部22Rに支持され、左後アクスル部12Lは、後側張出部44と前側張出部54とを介して左後荷重受部22Lに支持される。従って、この変形例5に係る下部走行体101では、右後アクスル部12R及び左後アクスル部12Lに生じるたわみを、
図5~
図7に示す実施形態よりもさらに小さくすることが可能になる。
【0140】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0141】
(A)前記実施形態及びその変形例では、下部走行体101が前記拡縮機構を備えるが、本発明の下部走行体は、このような態様に限られず、前記拡縮機構を備えていなくてもよい。
【0142】
(B)前記実施形態及びその変形例では、右前荷重受部21R及び右後荷重受部22Rは、右フレーム本体20Rの右前部位201及び右後部位202から左側にそれぞれ突出する形状を有するが、これに限られず、右フレーム本体20Rのうち右前アクスル支持部27と右後アクスル支持部28との間の中間部位から左側にそれぞれ突出する形状を有していてもよい。
【0143】
前記実施形態及びその変形例では、左前荷重受部21L及び左後荷重受部22Lは、左フレーム本体20Lの左前部位203及び左後部位204から右側にそれぞれ突出する形状を有するが、これに限られず、左フレーム本体20Lのうち左前アクスル支持部27と左後アクスル支持部28との間の中間部位から右側にそれぞれ突出する形状を有していてもよい。
【0144】
(C)変形例3では、前記右前伝達部は、前側張出部41と、連結ピンP1とにより構成され、前記右後伝達部は、後側張出部42と、連結ピンP2とにより構成され、前記左前伝達部は、前側張出部43と連結ピンP3とにより構成され、前記左後伝達部は、後側張出部44と、連結ピンP4とにより構成されるが、このような態様に限られない。前記右前伝達部は、一つ又は複数の連結ピンP1のみにより構成され、前記右後伝達部は、一つ又は複数の連結ピンP2により構成され、前記左前伝達部は、一つ又は複数の連結ピンP3により構成され、前記左後伝達部は、一つ又は複数の連結ピンP4により構成されていてもよい。
【0145】
(D)変形例5では、前記右前伝達部は、前側張出部41と、後側張出部51とにより構成され、前記右後伝達部は、後側張出部42と、前側張出部52とにより構成され、前記左前伝達部は、前側張出部43と、後側張出部53とにより構成され、前記左後伝達部は、後側張出部44と、前側張出部54とにより構成されるが、このような態様に限られない。前記右前伝達部は、後側張出部51のみにより構成され、前記右後伝達部は、前側張出部52のみにより構成される。前記左前伝達部は、後側張出部53のみにより構成され、前記左後伝達部は、前側張出部54のみにより構成されていてもよい。
【0146】
(E)前記実施形態では、前側面SF及び後側面SRのそれぞれは、左右方向及び上下方向に平行な平面であるが、このような態様に限られない。右フレーム本体及び左フレーム本体が右前アクスル部及び右後アクスル部に対する左右方向の位置を変えることができない構造を下部走行体が有する場合には、前側面SFは、前側を向く曲面であってもよく、前側を向いて左右方向及び上下方向の少なくとも一方に対して傾斜した平面であってもよく、後側面SRは、後側を向く曲面であってもよく、後側を向いて左右方向及び上下方向の少なくとも一方に対して傾斜した平面であってもよい。
【0147】
(F)クレーンの仕様について
図1に示す前記実施形態に係るクレーンは、ジブ及びストラットを備えていないが、クレーンの仕様は、
図1に示すものに限定されない。本開示に係るクレーンは、ジブ、フロントストラット及びリヤストラットを備えるラッフィングクレーンであってもよく、ジブ及び1つのストラットを備える固定ジブ仕様のクレーンであってもよい。また、本開示に係るクレーンは、ガントリではなくマストを備えるクレーン(例えば大型のクレーン)であってもよい。
【符号の説明】
【0148】
2L :左クローラフレーム
2R :右クローラフレーム
10 :カーボディ
11 :前アクスル
11R :右前アクスル部
11L :左前アクスル部
12 :後アクスル
12R :右後アクスル部
12L :左後アクスル部
20L :左フレーム本体
20R :右フレーム本体
21L :左前荷重受部
21R :右前荷重受部
22L :左後荷重受部
22R :右後荷重受部
27 :右前アクスル支持部,左前アクスル支持部
28 :右後アクスル支持部、左後アクスル支持部
100 :移動式クレーン
101 :下部走行体
102 :上部旋回体
C :旋回中心軸