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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187524
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】クローラクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/78 20060101AFI20221213BHJP
   B66C 23/26 20060101ALI20221213BHJP
   B66C 23/36 20060101ALI20221213BHJP
   B62D 21/18 20060101ALI20221213BHJP
   B62D 55/10 20060101ALI20221213BHJP
   E02F 9/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B66C23/78 A
B66C23/26 D
B66C23/36 A
B62D21/18 E
B62D55/10 Z
E02F9/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095537
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】松井 大朗
(72)【発明者】
【氏名】小矢畑 章
【テーマコード(参考)】
3D203
3F205
【Fターム(参考)】
3D203AA27
3D203BA02
3D203DB13
3F205AA07
3F205FA06
3F205JA07
3F205KA10
(57)【要約】
【課題】カーボディとこれに取り付けられた上部旋回体を一つのトレーラで輸送する場合に、トレーラのサイズが大きくなることを抑制でき、しかも、輸送に伴う付帯作業を複数のジャッキ装置を利用して行うことができるクローラクレーンを提供する。
【解決手段】クローラクレーン100の前アクスル30Aは、左前ジャッキ装置60FLの前ビーム61及び右前ジャッキ装置60FRの前ビーム61がカーボディ20から左斜め前方及び右斜め前方にそれぞれ延びるような位置である斜め前位置に左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRが配置された状態で左前ジャッキ装置60FLの前脚部62及び右前ジャッキ装置60FRの前脚部62がそれぞれ配置されるスペースである左前スペースS1及び右前スペースS2を前アクスル30Aと後アクスル30Bとの間の領域に形成するような形状を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラクレーンであって、
左右方向に間隔をおいて配置され、前後にそれぞれ延びる左右のクローラ走行装置と、
前記左右方向に延びて前記左右のクローラ走行装置を互いに連結する前アクスルと、
前記前アクスルよりも後方において前記左右方向に延びて前記左右のクローラ走行装置を互いに連結する後アクスルと、
前記前アクスルと前記後アクスルの間に配置されたカーボディであって、前記前アクスルが着脱可能に接続された前部と前記後アクスルが着脱可能に接続された後部とを有するカーボディと、
前記カーボディに旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、
前記左右方向に互いに間隔をおいて配置された左前ジャッキ装置及び右前ジャッキ装置であって、前記カーボディに接続された基端部から延びる前ビームと前記前ビームの先端部において前記前ビームに支持されて上下に延びる前脚部とをそれぞれ有する左前ジャッキ装置及び右前ジャッキ装置と、
前記左前ジャッキ装置及び前記右前ジャッキ装置よりも後方において前記左右方向に互いに間隔をおいて配置された左後ジャッキ装置及び右後ジャッキ装置であって、前記カーボディに接続された基端部から延びる後ビームと前記後ビームの先端部において前記後ビームに支持されて上下に延びる後脚部とをそれぞれ有する左後ジャッキ装置及び右後ジャッキ装置と、を備え、
前記前アクスルは、前記左前ジャッキ装置の前記前ビーム及び前記右前ジャッキ装置の前記前ビームが前記カーボディから左斜め前方及び右斜め前方にそれぞれ延びるような位置である斜め前位置に前記左前ジャッキ装置及び前記右前ジャッキ装置が配置された状態で前記左前ジャッキ装置の前記前脚部及び前記右前ジャッキ装置の前記前脚部がそれぞれ配置されることが可能なスペースである左前スペース及び右前スペースを前記前アクスルと前記後アクスルとの間の領域に形成するような形状を有し、
前記後アクスルは、前記左後ジャッキ装置の前記後ビーム及び前記右後ジャッキ装置の前記後ビームが前記カーボディから左斜め後方及び右斜め後方にそれぞれ延びるような位置である斜め後位置に前記左後ジャッキ装置及び前記右後ジャッキ装置が配置された状態で前記左後ジャッキ装置の前記後脚部及び前記右後ジャッキ装置の前記後脚部がそれぞれ配置されることが可能なスペースである左後スペース及び右後スペースを前記前アクスルと前記後アクスルとの間の領域に形成するような形状を有する、クローラクレーン。
【請求項2】
請求項1に記載のクローラクレーンであって、
前記前アクスルは、
前記左右方向に延びて前記左右のクローラ走行装置を互いに連結する部分である前アクスル本体と、
前記前アクスル本体から前記カーボディに向かって後方に張り出して前記カーボディの前記前部に着脱可能に接続された部分である前アクスル張出部と、を備え、
前記前アクスル張出部は、左のクローラ走行装置と当該前アクスル張出部との間の領域に前記左前スペースが形成され、右のクローラ走行装置と当該前アクスル張出部との間の領域に前記右前スペースが形成されるように、前記前アクスル本体よりも前記左右方向の寸法が小さな形状を有する、クローラクレーン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクローラクレーンであって、
前記後アクスルは、
前記左右方向に延びて前記左右のクローラ走行装置を互いに連結する部分である後アクスル本体と、
前記後アクスル本体から前記カーボディに向かって前方に張り出して前記カーボディの前記後部に着脱可能に接続された部分である後アクスル張出部と、を備え、
前記後アクスル張出部は、左のクローラ走行装置と当該後アクスル張出部との間の領域に前記左後スペースが形成され、右のクローラ走行装置と当該後アクスル張出部との間の領域に前記右後スペースが形成されるように、前記後アクスル本体よりも前記左右方向の寸法が小さな形状を有する、クローラクレーン。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のクローラクレーンであって、
前記左前ジャッキ装置及び前記右前ジャッキ装置のそれぞれは、前記前ビームの前記基端部を中心として前記カーボディに対して回動して前記斜め前位置から前格納位置に変位することが可能なように構成され、
前記左前ジャッキ装置の前記前格納位置及び前記右前ジャッキ装置の前記前格納位置は、前記左前ジャッキ装置及び前記右前ジャッキ装置が前記斜め前位置に配置されている状態に比べて前記左前ジャッキ装置の前記前脚部と前記右前ジャッキ装置の前記前脚部との前記左右方向の距離が小さくなるように前記左前ジャッキ装置の前記前ビーム及び前記右前ジャッキ装置の前記前ビームが前記カーボディから前方又は斜め前方にそれぞれ延びるような位置である、クローラクレーン。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のクローラクレーンであって、
前記左後ジャッキ装置及び前記右後ジャッキ装置のそれぞれは、前記後ビームの前記基端部を中心として前記カーボディに対して回動して前記斜め後位置から後格納位置に変位することが可能なように構成され、
前記左後ジャッキ装置の前記後格納位置及び前記右後ジャッキ装置の前記後格納位置は、前記左後ジャッキ装置及び前記右後ジャッキ装置が前記斜め後位置に配置されている状態に比べて前記左後ジャッキ装置の前記後脚部と前記右後ジャッキ装置の前記後脚部との前記左右方向の距離が小さくなるように前記左後ジャッキ装置の前記後ビーム及び前記右後ジャッキ装置の前記後ビームが前記カーボディから後方又は斜め後方にそれぞれ延びるような位置である、クローラクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クローラクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
クローラクレーンは、下部走行体と、この下部走行体に旋回可能に支持される上部旋回体と、上部旋回体に起伏可能に支持されるブームを含む起伏部材と、複数のジャッキ装置(複数のトランスリフタ)と、を備える。
【0003】
特許文献1に記載のクローラクレーンでは、下部走行体は、左右のクローラ走行装置と、カーボディと、前後のカーボディウエイトと、を備える。上部旋回体は、カーボディに取り付けられる。前後のカーボディウエイトは、カーボディの前部と後部にそれぞれ取り付けられる。当該カーボディは、左右のクローラ走行装置を連結する。複数のジャッキ装置は、左右方向に間隔をおいてカーボディの前部に取り付けられた2つのジャッキ装置と、左右方向に間隔をおいてカーボディの後部に取り付けられた2つのジャッキ装置と、を含む。
【0004】
特許文献2及び特許文献3のそれぞれに記載のクローラクレーンでは、下部走行体は、左右のクローラ走行装置と、カーボディと、前アクスルと、後アクスルと、を備える。上部旋回体は、カーボディに取り付けられる。前アクスルは、カーボディの前部に取り付けられ、後アクスルは、カーボディの後部に取り付けられる。前アクスル及び後アクスルのそれぞれは、左右のクローラ走行装置を連結する。複数のジャッキ装置は、左右方向に間隔をおいて前アクスルに取り付けられた2つの前ジャッキ装置と、左右方向に間隔をおいて後アクスルに取り付けられた2つの後ジャッキ装置と、を含む。
【0005】
クローラクレーンは、公道を自走することができないので、トレーラによって輸送される。クローラクレーンが輸送されるときには、当該クローラクレーンの一部を構成する輸送対象のサイズが輸送の規制値の範囲内に収まるように、クローラクレーンはいくつかの部分に分解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-147729号公報
【特許文献2】特開2016-215744号公報
【特許文献3】特開2018-39638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のクローラクレーンでは、カーボディとこれに取り付けられた上部旋回体を一つのトレーラで輸送する場合、トレーラのサイズが大きくなることを抑制するのが難しい。具体的には、次の通りである。上部旋回体は前後の寸法が大きいため、上部旋回体の重量は必然的に大きくなる。特許文献1に記載のクローラクレーンは、カーボディが左右のクローラ走行装置を連結する構造を有するので、カーボディの左右方向の寸法は、左右のクローラ走行装置の間隔に対応する大きさに設定される。このことは、カーボディの重量が大きくなる原因となる。従って、特許文献1に記載のクローラクレーンでは、上部旋回体の重量及びカーボディの重量がともに大きくなるので、これらを輸送するトレーラとしては、これらの重量に見合った大きなサイズのものを使用する必要がある。
【0008】
特許文献2及び特許文献3のそれぞれに記載のクローラクレーンは、上述したように2つの前ジャッキ装置及び2つの後ジャッキ装置が前アクスル及び後アクスルにそれぞれ取り付けられた構造を有するが、これらのジャッキ装置は、上部旋回体とカーボディを一つのトレーラで輸送し、カーボディから取り外された前アクスル及び後アクスルを別のトレーラで輸送する場合、輸送に伴う付帯作業には利用できない。具体的には次の通りである。特許文献2及び特許文献3のそれぞれに記載のクローラクレーンでは、例えば、カーボディとこれに取り付けられた上部旋回体をトレーラに積み込む作業、これらをトレーラから降ろす作業、前アクスル及び後アクスルをカーボディに取り付ける作業などのような輸送に伴う付帯作業が行われるときには、前アクスル及び後アクスルは、カーボディから取り外されている。従って、上部旋回体が取り付けられたカーボディを4つのジャッキ装置でジャッキアップしながらこれらの付帯作業を行うことができない。
【0009】
本開示は、上記のような問題を踏まえてなされたものであり、カーボディとこれに取り付けられた上部旋回体を一つのトレーラで輸送する場合に、トレーラのサイズが大きくなることを抑制でき、しかも、輸送に伴う付帯作業を複数のジャッキ装置を利用して行うことができるクローラクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
提供されるクローラクレーンは、左右方向に間隔をおいて配置され、前後にそれぞれ延びる左右のクローラ走行装置と、前記左右方向に延びて前記左右のクローラ走行装置を互いに連結する前アクスルと、前記前アクスルよりも後方において前記左右方向に延びて前記左右のクローラ走行装置を互いに連結する後アクスルと、前記前アクスルと前記後アクスルの間に配置されたカーボディであって、前記前アクスルが着脱可能に接続された前部と前記後アクスルが着脱可能に接続された後部とを有するカーボディと、前記カーボディに旋回可能に取り付けられた上部旋回体と、前記左右方向に互いに間隔をおいて配置された左前ジャッキ装置及び右前ジャッキ装置であって、前記カーボディに接続された基端部から延びる前ビームと前記前ビームの先端部において前記前ビームに支持されて上下に延びる前脚部とをそれぞれ有する左前ジャッキ装置及び右前ジャッキ装置と、前記左前ジャッキ装置及び前記右前ジャッキ装置よりも後方において前記左右方向に互いに間隔をおいて配置された左後ジャッキ装置及び右後ジャッキ装置であって、前記カーボディに接続された基端部から延びる後ビームと前記後ビームの先端部において前記後ビームに支持されて上下に延びる後脚部とをそれぞれ有する左後ジャッキ装置及び右後ジャッキ装置と、を備え、前記前アクスルは、前記左前ジャッキ装置の前記前ビーム及び前記右前ジャッキ装置の前記前ビームが前記カーボディから左斜め前方及び右斜め前方にそれぞれ延びるような位置である斜め前位置に前記左前ジャッキ装置及び前記右前ジャッキ装置が配置された状態で前記左前ジャッキ装置の前記前脚部及び前記右前ジャッキ装置の前記前脚部がそれぞれ配置されることが可能なスペースである左前スペース及び右前スペースを前記前アクスルと前記後アクスルとの間の領域に形成するような形状を有し、前記後アクスルは、前記左後ジャッキ装置の前記後ビーム及び前記右後ジャッキ装置の前記後ビームが前記カーボディから左斜め後方及び右斜め後方にそれぞれ延びるような位置である斜め後位置に前記左後ジャッキ装置及び前記右後ジャッキ装置が配置された状態で前記左後ジャッキ装置の前記後脚部及び前記右後ジャッキ装置の前記後脚部がそれぞれ配置されることが可能なスペースである左後スペース及び右後スペースを前記前アクスルと前記後アクスルとの間の領域に形成するような形状を有する。
【0011】
このクローラクレーンでは、前アクスルが前記左前スペース及び前記右前スペースを形成するような形状を有し、後アクスルが前記左後スペース及び前記右後スペースを形成するような形状を有するので、左右のクローラ走行装置を互いに連結する前アクスル及び後アクスルは、カーボディの前後において横たわるように左右方向に延びているにもかかわらず、カーボディに接続された4つのジャッキ装置の前脚部及び後脚部の配置の邪魔にならず、これにより、カーボディに接続された左前ジャッキ装置及び右前ジャッキ装置を斜め前位置にそれぞれ配置し、カーボディに接続された左後ジャッキ装置及び右後ジャッキ装置を斜め後位置にそれぞれ配置することが可能になる。このことは、斜め前位置に配置された2つのジャッキ装置と斜め後位置に配置された2つのジャッキ装置を利用してカーボディ及び上部旋回体を安定してジャッキアップしながら前アクスル及び後アクスルをカーボディに取り付ける作業などの輸送に伴う付帯作業を行うことを可能にするとともに、左右のクローラ走行装置を連結する必要のないカーボディの左右方向の寸法を小さくしてカーボディの重量が大きくなることを抑制し、トレーラのサイズが大きくなることを抑制することを可能にする。
【0012】
前記クローラクレーンにおいて、前記前アクスルは、前記左右方向に延びて前記左右のクローラ走行装置を互いに連結する部分である前アクスル本体と、前記前アクスル本体から前記カーボディに向かって後方に張り出して前記カーボディの前記前部に着脱可能に接続された部分である前アクスル張出部と、を備え、前記前アクスル張出部は、左のクローラ走行装置と当該前アクスル張出部との間の領域に前記左前スペースが形成され、右のクローラ走行装置と当該前アクスル張出部との間の領域に前記右前スペースが形成されるように、前記前アクスル本体よりも前記左右方向の寸法が小さな形状を有することが好ましい。この構成では、前アクスルは、前アクスル本体よりも左右方向の寸法が小さい前アクスル張出部が前アクスル本体からカーボディに向かって後方に張り出すような形状を有するので、カーボディを前方に延ばさなくても、前アクスル本体をカーボディから前方に離れた位置に配置して前アクスル張出部の左右両サイドに前記左前スペース及び前記右前スペースを形成することができる。これにより、カーボディのサイズをコンパクトに維持しながら、前記左前スペース及び前記右前スペースを形成することができる。
【0013】
前記クローラクレーンにおいて、前記後アクスルは、前記左右方向に延びて前記左右のクローラ走行装置を互いに連結する部分である後アクスル本体と、前記後アクスル本体から前記カーボディに向かって前方に張り出して前記カーボディの前記後部に着脱可能に接続された部分である後アクスル張出部と、を備え、前記後アクスル張出部は、左のクローラ走行装置と当該後アクスル張出部との間の領域に前記左後スペースが形成され、右のクローラ走行装置と当該後アクスル張出部との間の領域に前記右後スペースが形成されるように、前記後アクスル本体よりも前記左右方向の寸法が小さな形状を有することが好ましい。この構成では、後アクスルは、後アクスル本体よりも左右方向の寸法が小さい後アクスル張出部が後アクスル本体からカーボディに向かって前方に張り出すような形状を有するので、カーボディを後方に延ばさなくても、後アクスル本体をカーボディから後方に離れた位置に配置して後アクスル張出部の左右両サイドに前記左後スペース及び前記右後スペースを形成することができる。これにより、カーボディのサイズをコンパクトに維持しながら、前記左後スペース及び前記右後スペースを形成することができる。
【0014】
前記クローラクレーンにおいて、前記左前ジャッキ装置及び前記右前ジャッキ装置のそれぞれは、前記前ビームの前記基端部を中心として前記カーボディに対して回動して前記斜め前位置から前格納位置に変位することが可能なように構成され、前記左前ジャッキ装置の前記前格納位置及び前記右前ジャッキ装置の前記前格納位置は、前記左前ジャッキ装置及び前記右前ジャッキ装置が前記斜め前位置に配置されている状態に比べて前記左前ジャッキ装置の前記前脚部と前記右前ジャッキ装置の前記前脚部との前記左右方向の距離が小さくなるように前記左前ジャッキ装置の前記前ビーム及び前記右前ジャッキ装置の前記前ビームが前記カーボディから前方又は斜め前方にそれぞれ延びるような位置であることが好ましい。この構成では、左前ジャッキ装置及び右前ジャッキ装置のそれぞれが前格納位置に配置されたときに、これらの前ビームはその基端部から後ビームに対して遠ざかる方向に延びるように配置されるので、コンパクトなカーボディに前ビームと後ビームの両方が接続されているにもかかわらず、前ビームが後ビームに接触することを回避しながら、左前ジャッキ装置及び右前ジャッキ装置を斜め前位置から前格納位置に変位させることができる。
【0015】
前記クローラクレーンにおいて、前記左後ジャッキ装置及び前記右後ジャッキ装置のそれぞれは、前記後ビームの前記基端部を中心として前記カーボディに対して回動して前記斜め後位置から後格納位置に変位することが可能なように構成され、前記左後ジャッキ装置の前記後格納位置及び前記右後ジャッキ装置の前記後格納位置は、前記左後ジャッキ装置及び前記右後ジャッキ装置が前記斜め後位置に配置されている状態に比べて前記左後ジャッキ装置の前記後脚部と前記右後ジャッキ装置の前記後脚部との前記左右方向の距離が小さくなるように前記左後ジャッキ装置の前記後ビーム及び前記右後ジャッキ装置の前記後ビームが前記カーボディから後方又は斜め後方にそれぞれ延びるような位置であることが好ましい。この構成では、左後ジャッキ装置及び右後ジャッキ装置のそれぞれが後格納位置に配置されたときに、これらの後ビームはその基端部から前ビームに対して遠ざかる方向に延びるように配置されるので、コンパクトなカーボディに前ビームと後ビームの両方が接続されているにもかかわらず、後ビームが前ビームに接触することを回避しながら、左後ジャッキ装置及び右後ジャッキ装置を斜め後位置から後格納位置に変位させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、カーボディとこれに取り付けられた上部旋回体を一つのトレーラで輸送する場合に、トレーラのサイズが大きくなることを抑制でき、しかも、輸送に伴う付帯作業を4つのジャッキ装置を利用して行うことができるクローラクレーンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施形態に係るクローラクレーンを示す側面図である。
図2】前記クローラクレーンにおけるカーボディ、前アクスル、後アクスル、左右のクローラ走行装置、及び4つのジャッキ装置を示す平面図である。
図3】前記カーボディ、前記前アクスル、前記後アクスル、及び2つのジャッキ装置を示す側面図である。
図4】前記カーボディに対する前記4つのジャッキ装置の配置を説明するための平面図である。
図5】前記クローラクレーンの輸送に伴う付帯作業の一例を説明するための概略図である。
図6】前記クローラクレーンの輸送に伴う付帯作業の一例を説明するための概略図である。
図7】前記クローラクレーンの輸送に伴う付帯作業の一例を説明するための概略図である。
図8】前記クローラクレーンの輸送に伴う付帯作業の一例を説明するための概略図である。
図9】前記クローラクレーンの輸送に伴う付帯作業の一例を説明するための概略図である。
図10】前記実施形態の変形例1に係るクローラクレーンにおけるカーボディ、前アクスル、後アクスル、左右のクローラ走行装置、及び4つのジャッキ装置を示す平面図である。
図11】前記実施形態の変形例2に係るクローラクレーンにおけるカーボディ、前アクスル、後アクスル、左右のクローラ走行装置、及び4つのジャッキ装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態に係るクローラクレーンについて図面を参照して説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、クローラクレーン100は、下部走行体10と、上部旋回体50と、複数のジャッキ装置と、起伏部材70と、吊具90と、を備える。
【0020】
上部旋回体50は、上下方向に延びる縦軸(図2に示す旋回中心軸A)の回りに旋回可能なように下部走行体10に支持されている。上部旋回体50は、下部走行体10に取り付けられた旋回フレームを含む旋回本体部51と、旋回本体部51の前部に支持されたキャビン52と、旋回本体部51の後部に取り付けられたカウンタウエイト53と、水平方向に延びる軸回りに回動可能なように旋回本体部51に支持された箱マスト54と、起伏用ロープ55と、ガイライン56と、起伏用ウインチ装置57と、を含む。
【0021】
起伏部材70は、旋回本体部51の長手方向に直交する水平な方向に延びる軸回りに上部旋回体50の旋回本体部51に起伏可能に支持されたブーム71を含む。起伏部材70は、ブーム71の先端部に回動可能に接続される図略のジブをさらに含んでいてもよい。吊具90は、起伏部材70の先端部からロープを介して吊り下げられている。吊具90は、ロープを巻き取り又は繰り出し可能な吊荷用ウインチ装置58により昇降する。
【0022】
箱マスト54は、ブーム71の起伏方向と同方向に回動可能なように上部旋回体50の旋回本体部51に支持されている。ガイライン56は、左右方向に沿って一対配置されている。ガイライン56は、箱マスト54の先端部とブーム71の上端部とを接続する。起伏用ロープ55は、上部旋回体50の旋回本体部51に配置された複数のシーブを含むシーブブロックと、箱マスト54の先端部に配置された複数のシーブを含むシーブブロックとの間で複数回掛け回されている。
【0023】
起伏用ウインチ装置57は、箱マスト54の近くに配置されている。起伏用ウインチ装置57は、起伏用ロープ55の巻き取り及び繰り出しを行う。起伏用ウインチ装置57の巻き取り動作及び繰り出し動作によって、箱マスト54の先端部に配置されたシーブブロックと上部旋回体50の旋回本体部51に配置されたシーブブロックとの間の距離が変化し、旋回本体部51に対して箱マスト54及びブーム71が一体的に回動する。なお、箱マスト54の回動は、例えば後述するクローラクレーン100の輸送に伴う付帯作業時に行われ、クローラクレーン100の使用時(吊荷作業時)には箱マスト54の位置(上部旋回体50の旋回本体部51に対する角度)はほぼ固定されている。
【0024】
下部走行体10は、地面上を自走可能なクローラ式の走行体である。図2及び図3に示すように、下部走行体10は、カーボディ20と、前アクスル30Aと、後アクスル30Bと、左右のクローラ走行装置40L,40Rと、を含む。図面に示される「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」の方向は、下部走行体10の向きを基準とするものである。左右のクローラ走行装置40L,40Rのそれぞれが延びる方向が前後方向であり、この前後方向に直交する水平な方向が左右方向である。
【0025】
左右のクローラ走行装置40L,40Rは、左右方向に間隔をおいて配置され、前後にそれぞれ延びる形状を有する。左右のクローラ走行装置40L,40Rは、左右対称な構造を有することを除いて、互いに同様の構造を有する。従って、以下では一方のクローラ走行装置について主に説明する。図2に示すように、クローラ走行装置は、前後方向に延びるクローラフレーム41と、クローラフレーム41の前端部及び後端部に回転可能に支持された図略の前後のホイールと、これらのホイールに環状に架けられて周回移動可能なクローラベルト42と、前後の一方のホイールを駆動する図略の駆動装置と、を備える。クローラベルト42は、多数のクローラシューが連結されることにより環状に形成されている。前記駆動装置は、例えば図略のモータと減速機とを備える。駆動装置が一方のホイールを駆動することにより、クローラベルト42が周回移動する。なお、図2では、左右のクローラ走行装置40L,40Rのクローラベルト42,42は、一点鎖線でそれぞれ描かれている。
【0026】
前アクスル30Aは、左右方向に延びて左右のクローラ走行装置40L,40Rのクローラフレーム41,41を互いに連結する。前アクスル30Aの左端部は、左のクローラフレーム41における前後方向の中央よりも前側の部分に接続され、前アクスル30Aの右端部は、右のクローラフレーム41における前後方向の中央よりも前側の部分に接続されている。
【0027】
後アクスル30Bは、前アクスル30Aよりも後方において左右方向に延びて左右のクローラ走行装置40L,40Rのクローラフレーム41,41を互いに連結する。後アクスル30Bの左端部は、左のクローラフレーム41における前後方向の中央よりも後側の部分に接続され、後アクスル30Bの右端部は、右のクローラフレーム41における前後方向の中央よりも後側の部分に接続されている。
【0028】
カーボディ20は、前アクスル30Aと後アクスル30Bの間に配置されている。カーボディ20は、前アクスル30A及び後アクスル30Bよりも左右方向の寸法が小さい。カーボディ20は、平面視で矩形状を呈するカーボディ本体21と、カーボディ本体21の上部に配置された旋回装置22と、カーボディ本体21における前側の部分に配置された前接続部23F,23Fと、カーボディ本体21における後側の部分に配置された後接続部23R,23Rと、を備える。前接続部23F,23Fは、カーボディ20の前部の一例であり、前アクスル30Aが接続される部分である。後接続部23R,23Rは、カーボディ20の後部の一例であり、後アクスル30Bが接続される部分である。
【0029】
カーボディ20には、上部旋回体50が旋回可能に取り付けられる。旋回装置22は、外側サークルと、内側サークルと、旋回モータと、を備える。外側サークル及び内側サークルの一方がカーボディ本体21に固定され、他方が上部旋回体50の旋回フレームに固定されている。内側サークルには旋回ギアが形成されており、この旋回ギアは、旋回モータにより回転するピニオンに噛み合っている。旋回モータにより内側サークルが外側サークルに対して回転することにより、上部旋回体50が図2に示す旋回中心軸Aの回りに下部走行体10に対して旋回する。
【0030】
複数のジャッキ装置は、旋回中心軸Aの左斜め前方に配置された左前ジャッキ装置60FLと、旋回中心軸Aの右斜め前方に配置された右前ジャッキ装置60FRと、旋回中心軸Aの左斜め後方に配置された左後ジャッキ装置60RLと、旋回中心軸Aの右斜め後方に配置された右後ジャッキ装置60RRと、を含む。
【0031】
左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRは、左右方向に互いに間隔をおいて配置されている。左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRのそれぞれは、ビーム61と、脚部62と、を有する。左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRのそれぞれのビーム61は、前ビームの一例であり、カーボディ20のカーボディ本体21に接続された基端部611と、その反対側の先端部612と、を有し、基端部611から先端部612まで斜め前に延びる形状を有する。左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRのそれぞれの脚部62は、前脚部の一例であり、ビーム61の先端部612においてビーム61に支持され、上下に延びている。左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRのそれぞれの脚部62は、例えば油圧機構により駆動される上下に伸縮可能なシリンダ装置を含む脚部本体と、脚部本体の下端に取り付けられた座部63と、を有し、上下方向の長さを変化させることが可能である。座部63は、脚部本体よりも平面視における面積が大きい。
【0032】
左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRは、左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRよりも後方において左右方向に互いに間隔をおいて配置されている。左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRのそれぞれは、ビーム61と、脚部62と、を有する。左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRのそれぞれのビーム61は、後ビームの一例であり、カーボディ20のカーボディ本体21に接続された基端部611と、その反対側の先端部612と、を有し、基端部611から先端部612まで斜め後に延びる形状を有する。左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRのそれぞれの脚部62は、後脚部の一例であり、ビーム61の先端部612においてビーム61に支持され、上下に延びている。左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRのそれぞれの脚部62は、例えば油圧機構により駆動される上下に伸縮可能なシリンダ装置を含む脚部本体と、脚部本体の下端に取り付けられた座部63と、を有し、上下方向の長さを変化させることが可能である。座部63は、脚部本体よりも平面視における面積が大きい。
【0033】
図2に示すように、左前ジャッキ装置60FLのビーム61の基端部611は、上下方向に延びる回動軸の回りに回動可能なようにカーボディ本体21の左端部における旋回中心軸Aよりも前側の部分に接続されている。右前ジャッキ装置60FRのビーム61の基端部611は、上下方向に延びる回動軸の回りに回動可能なようにカーボディ本体21の右端部における旋回中心軸Aよりも前側の部分に接続されている。左後ジャッキ装置60RLのビーム61の基端部611は、上下方向に延びる回動軸の回りに回動可能なようにカーボディ本体21の左端部における旋回中心軸Aよりも後側の部分に接続されている。右後ジャッキ装置60RRのビーム61の基端部611は、上下方向に延びる回動軸の回りに回動可能なようにカーボディ本体21の右端部における旋回中心軸Aよりも後側の部分に接続されている。
【0034】
例えば、右前ジャッキ装置60FRのビーム61の基端部611は、上下方向の挿通孔を有し、カーボディ本体21は、ビーム61の前記挿通孔に対応する部位に上下方向の挿通孔を有する。これらの挿通孔内に図3に示すピン613が配置されることにより、ビーム61は、基端部611を中心としてカーボディ20に回動可能に支持されている。他の3つのジャッキ装置60FL,60RL,60RRの回動構造も右前ジャッキ装置60FRと同様である。
【0035】
図4に示すように、左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRのそれぞれは、ビーム61の基端部611を中心として回動することにより、斜め前位置P1と、前格納位置P2と、の間で変位することが可能である。左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRのそれぞれは、ビーム61の基端部611を中心として回動することにより、斜め後位置P1と、後格納位置P2と、の間で変位することが可能である。4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRの回動は、例えば図略の油圧シリンダなどのアクチュエータによって行われてもよく、作業者が手動で行ってもよい。各ジャッキ装置は、斜め前位置P1及び前格納位置P2のそれぞれにおいて位置決め機構により位置決め可能なように構成されていてもよい。位置決め機構としては、4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRのビーム61のそれぞれに設けられたピン孔と、カーボディ本体21に設けられたピン孔と、に挿通されるピンを例示することができるが、位置決め機構はこのような形態に限られない。
【0036】
左前ジャッキ装置60FLの斜め前位置P1は、左前ジャッキ装置60FLのビーム61がカーボディ本体21の左端部から左斜め前方に延びるような位置である。右前ジャッキ装置60FRの斜め前位置P1は、右前ジャッキ装置60FRのビーム61がカーボディ本体21の右端部から右斜め前方に延びるような位置である。左後ジャッキ装置60RLの斜め後位置P1は、左後ジャッキ装置60RLのビーム61がカーボディ本体21の左端部から左斜め後方に延びるような位置である。右後ジャッキ装置60RRの斜め後位置P1は、右後ジャッキ装置60RRのビーム61がカーボディ本体21の右端部から右斜め後方に延びるような位置である。
【0037】
左前ジャッキ装置60FLの前格納位置P2及び右前ジャッキ装置60FRの前格納位置P2は、左前ジャッキ装置60FLのビーム61及び右前ジャッキ装置60FRのビーム61がカーボディ本体21から前方にそれぞれ延びるような位置である。前格納位置P2に配置されている左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRの脚部62同士の左右方向の距離は、左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRが斜め前位置P1に配置されている状態に比べて小さい。左後ジャッキ装置60RLの後格納位置P2及び右後ジャッキ装置60RRの後格納位置P2は、左後ジャッキ装置60RLのビーム61及び右後ジャッキ装置60RRのビーム61がカーボディ本体21から後方にそれぞれ延びるような位置である。後格納位置P2に配置されている左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRの脚部62同士の左右方向の距離は、左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRが斜め後位置P1に配置されている状態に比べて小さい。
【0038】
図2及び図3に示すように、前アクスル30Aは、左右方向に延びて左右のクローラ走行装置40L,40Rを互いに連結する部分であるアクスル本体31(前アクスル本体の一例)と、このアクスル本体31からカーボディ20に向かって後方に張り出すアクスル張出部32(前アクスル張出部の一例)と、アクスル張出部32をカーボディ20に着脱可能に接続する接続部33,33と、を備える。すなわち、前アクスル30Aのアクスル張出部32は、接続部33,33を介してカーボディ20の前部に着脱可能に接続された部分である。前アクスル30Aの接続部33,33は、カーボディ20の前接続部23F,23Fに対応する部位に配置されている。
【0039】
同様に、後アクスル30Bは、左右方向に延びて左右のクローラ走行装置40L,40Rを互いに連結する部分であるアクスル本体31(後アクスル本体の一例)と、アクスル本体31からカーボディ20に向かって前方に張り出すアクスル張出部32(後アクスル張出部の一例)と、アクスル張出部32をカーボディ20に着脱可能に接続する接続部33,33と、を備える。すなわち、後アクスル30Bのアクスル張出部32は、接続部33,33を介してカーボディ20の後部に着脱可能に接続された部分である。後アクスル30Bの接続部33,33は、カーボディ20の後接続部23R,23Rに対応する部位に配置されている。
【0040】
前アクスル30Aの接続部33,33のそれぞれは、前アクスル30Aのアクスル張出部32の後側の部分から後方に突出する一対の突出片を含む。カーボディ20の前接続部23F,23Fのそれぞれは、カーボディ本体21の前側の部分から前方に突出する突出片を含む。前アクスル30Aの接続部33の一対の突出片は、左右方向に隙間をあけて配置され、この隙間にカーボディ20の前接続部23Fの突出片が挿入される。前アクスル30Aの接続部33の一対の突出片の上部には、これらの間にまたがるように延びる棒状部材81が接合されており、カーボディ20の前接続部23Fの突出片の上部には、棒状部材81が嵌りこむことが可能な切り欠き82が形成されている。各突出片には、貫通孔が設けられている。棒状部材81を切り欠き82内に配置し、貫通孔同士の位置を合わせた状態で、これらの貫通孔にピン80が挿入される。これにより、前アクスル30Aがカーボディ20に接続される。なお、ピン80が貫通孔から抜き出されることにより、前アクスル30Aをカーボディ20から取り外すことができる。後アクスル30Bの接続部33,33の構造及びカーボディ20の後接続部23R,23Rの構造は、上述した前アクスル30Aの接続部33,33及びカーボディ20の前接続部23F,23Fと同様である。
【0041】
図2に示すように、前アクスル30Aは、左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRが斜め前位置P1に配置された状態で左前ジャッキ装置60FLの脚部62及び右前ジャッキ装置60FRの脚部62がそれぞれ配置されることが可能な左前スペースS1及び右前スペースS2を前アクスル30Aと後アクスル30Bとの間の領域に形成するような形状を有する。同様に、後アクスル30Bは、左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRが斜め後位置P1に配置された状態で左後ジャッキ装置60RLの脚部62及び右後ジャッキ装置60RRの脚部62がそれぞれ配置されることが可能な左後スペースS3及び右後スペースS4を前アクスル30Aと後アクスル30Bとの間の領域に形成するような形状を有する。
【0042】
具体的には、以下の通りである。前アクスル30Aのアクスル本体31及び後アクスル30Bのアクスル本体31のそれぞれは、例えば図2に示すように直線状に延びるような形状(平面視で矩形状)を有する。前アクスル30Aのアクスル張出部32及び後アクスル30Bのアクスル張出部32のそれぞれは、例えば図2及び図3に示すように平面視の形状が矩形状である箱形状を有するが、これらのアクスル張出部32の形状は、図2及び図3に示す具体例に限られない。前アクスル30Aのアクスル張出部32における左右方向の中央は、前アクスル30Aのアクスル本体31における左右方向の中央にほぼ一致し、後アクスル30Bのアクスル張出部32における左右方向の中央は、後アクスル30Bのアクスル本体31における左右方向の中央にほぼ一致しているが、中央同士の位置は、左右方向に多少ずれていてもよい。
【0043】
前アクスル30Aのアクスル張出部32は、左のクローラ走行装置40Lと前アクスル30Aのアクスル張出部32との間の領域に左前スペースS1が形成され、右のクローラ走行装置40Rと前アクスル30Aのアクスル張出部32との間の領域に右前スペースS2が形成されるように、前アクスル30Aのアクスル本体31よりも左右方向の寸法が小さな形状を有する。後アクスル30Bのアクスル張出部32は、左のクローラ走行装置40Lと後アクスル30Bのアクスル張出部32との間の領域に左後スペースS3が形成され、右のクローラ走行装置40Rと後アクスル30Bのアクスル張出部32との間の領域に右後スペースS4が形成されるように、後アクスル30Bのアクスル本体31よりも左右方向の寸法が小さな形状を有する。各スペースSは、図2において二点鎖線の四角で囲まれた部分である。
【0044】
図2に示す具体例では、前アクスル30A及び後アクスル30Bのアクスル張出部32の左右方向の寸法は、カーボディ20のカーボディ本体21の左右方向の寸法とほぼ同じであるが、カーボディ本体21の左右方向の寸法よりも小さくてもよく、カーボディ本体21の左右方向の寸法よりも大きくてもよい。
【0045】
左前スペースS1は、カーボディ本体21よりも前方でかつ旋回中心軸Aよりも左方に形成されている。右前スペースS2は、カーボディ本体21よりも前方でかつ旋回中心軸Aよりも右方に形成されている。左後スペースS3は、カーボディ本体21よりも後方でかつ旋回中心軸Aよりも左方に形成されている。右後スペースS4は、カーボディ本体21よりも後方でかつ旋回中心軸Aよりも右方に形成されている。
【0046】
左前スペースS1は、カーボディ20よりも前方でかつカーボディ20よりも左方に形成されていてもよく、右前スペースS2は、カーボディ20よりも前方でかつカーボディ20よりも右方に形成されていてもよく、左後スペースS3は、カーボディ20よりも後方でかつカーボディ20よりも左方に形成されていてもよく、右後スペースS4は、カーボディ20よりも後方でかつカーボディ20よりも右方に形成されていてもよい。
【0047】
左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRが斜め前位置P1に配置された状態では、左前ジャッキ装置60FLの脚部62は、左前スペースS1の少なくとも一部を占める領域に配置され、右前ジャッキ装置60FRの脚部62は、右前スペースS2の少なくとも一部を占める領域に配置されている。同様に、左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRが斜め後位置P1に配置された状態では、左後ジャッキ装置60RLの脚部62は、左後スペースS3の少なくとも一部を占める領域に配置され、右後ジャッキ装置60RRの脚部62は、右後スペースS4の少なくとも一部を占める領域に配置されている。
【0048】
本実施形態に係るクローラクレーン100では、前アクスル30Aが左前スペースS1及び右前スペースS2を形成するような形状を有し、後アクスル30Bが左後スペースS3及び右後スペースS4を形成するような形状を有するので、カーボディ20に接続された左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRを斜め前位置P1にそれぞれ配置し、カーボディ20に接続された左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRを斜め後位置P1にそれぞれ配置することできる。このことは、斜め前位置P1に配置された2つのジャッキ装置60FL,60FRと斜め後位置P1に配置された2つのジャッキ装置60RL,60RRを利用してカーボディ20及び上部旋回体50を安定してジャッキアップしながら輸送に伴う付帯作業を行うことを可能にするとともに、左右のクローラ走行装置40L,40Rを連結する必要のないカーボディ20の左右方向の寸法を小さくしてカーボディ20の重量が大きくなることを抑制し、トレーラのサイズが大きくなることを抑制することを可能にする。
【0049】
本実施形態では、前アクスル30Aは、アクスル本体31よりも左右方向の寸法が小さいアクスル張出部32がアクスル本体31からカーボディ20に向かって後方に張り出すような形状を有するので、カーボディ20を前方に延ばさなくても、アクスル本体31をカーボディ20から前方に離れた位置に配置してアクスル張出部32の左右両サイドに左前スペースS1及び右前スペースS2を形成することができる。これにより、カーボディ20のサイズをコンパクトに維持しながら、左前スペースS1及び右前スペースS2を形成することができる。
【0050】
本実施形態では、後アクスル30Bは、アクスル本体31よりも左右方向の寸法が小さいアクスル張出部32がアクスル本体31からカーボディ20に向かって前方に張り出すような形状を有するので、カーボディ20を後方に延ばさなくても、アクスル本体31をカーボディ20から後方に離れた位置に配置してアクスル張出部32の左右両サイドに左後スペースS3及び右後スペースS4を形成することができる。これにより、カーボディ20のサイズをコンパクトに維持しながら、左後スペースS3及び右後スペースS4を形成することができる。
【0051】
本実施形態では、左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRのそれぞれが前格納位置P2に配置されたときに、これらのビーム61は基端部611から左後ジャッキ装置60RLのビーム61及び右後ジャッキ装置60RRのビーム61に対してそれぞれ遠ざかる方向に延びるように配置される。これにより、コンパクトなカーボディ20に4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRのビーム61が接続されているにもかかわらず、左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRのビーム61が左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRのビーム61に接触することを回避しながら、左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRを斜め前位置P1から前格納位置P2に変位させることができる。
【0052】
本実施形態では、左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRのそれぞれが後格納位置P2に配置されたときに、これらのビーム61は基端部611から左前ジャッキ装置60FLのビーム61及び右前ジャッキ装置60FRのビーム61に対してそれぞれ遠ざかる方向に延びるように配置される。これにより、コンパクトなカーボディ20に4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRのビーム61が接続されているにもかかわらず、左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRのビーム61が左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRのビーム61に接触することを回避しながら、左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRを斜め後位置P1から後格納位置P2に変位させることができる。
【0053】
4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRのそれぞれが格納位置P2に配置されることにより、カーボディ20、上部旋回体50及び4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRを含む輸送対象の幅を輸送に係る規制値の範囲内に収めることができる。
【0054】
本実施形態では、前アクスル30A及び後アクスル30Bが左右のクローラ走行装置40L,40Rを互いに連結するので、クローラ走行装置40L,40Rのそれぞれにおいて前アクスル30Aが接続される部位と、後アクスル30Bが接続される部位との距離(前後方向の距離)を大きくすることができる。このことは、クローラフレーム41の強度の観点で有利であり、クローラフレーム41を軽量化することができる。また、クローラクレーン100は、前アクスル30A及び後アクスル30Bを備えるので、カーボディウエイトを省略することができる。また、カーボディウエイトが必要な場合でも、カーボディウエイトを小さくできる。
【0055】
[輸送に伴う付帯作業]
図5図9は、クローラクレーン100の輸送に伴う付帯作業の一例を説明するための概略図である。以下で説明する付帯作業は、輸送対象をトレーラ110から降ろす作業と、前アクスル30A、後アクスル30B及び左右のクローラ走行装置40L,40Rをカーボディ20に取り付ける作業と、を含む。前記輸送対象は、カーボディ20、上部旋回体50の少なくとも一部及び4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRを含む。
【0056】
図5は、トレーラ110に前記輸送対象が積まれた状態を示している。トレーラ110は、運転手が座る座席などを有するキャビン111と、キャビン111の後部に接続された荷台112と、を備える。前記輸送対象は、荷台112上に載置されている。前記輸送対象がトレーラ110により輸送されるときには、4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRは、格納位置P2に配置されている。
【0057】
図6は、トレーラ110が例えば作業現場などの輸送先に到着し、前記付帯作業が開始された様子を示している。この付帯作業では、まず、4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRの配置が格納位置P2から斜め位置P1にそれぞれ変えられ、ついで、各ジャッキ装置60の脚部62が伸長させられることにより脚部62の座部63が接地し、カーボディ20及び上部旋回体50がトレーラ110の荷台112から浮き上がる。この状態で、トレーラ110が前進することにより、前記輸送対象は、トレーラ110から降ろされる。なお、図5及び図6に示す具体例では、トレーラ110の前記輸送対象は、カーボディ20と、上部旋回体50の旋回本体部51及び箱マスト54と、4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRと、を含む。ただし、箱マスト54は、前記輸送対象に含まれていなくてもよい。この場合、箱マスト54が旋回本体部51から取り外された状態で前記輸送対象がトレーラ110によって輸送先に輸送され、当該輸送先において前記輸送対象がトレーラ110から降ろされた後に、箱マスト54が旋回本体部51に取り付けられてもよい。
【0058】
図7は、前アクスル30Aをカーボディ20に取り付ける作業を示し、図8は、クローラ走行装置40Lをカーボディ20に取り付ける作業を示している。これらの作業は、4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRによりカーボディ20及び上部旋回体50が支持された状態で、カーボディ20に対する上部旋回体50の向きを調節しながら、箱マスト54及び起伏用ロープ55を利用して行われる。これらの作業が完了すると、図9に示すように4つのジャッキ装置60FL,60FR,60RL,60RRの脚部62が縮小させられることにより、左右のクローラ走行装置40L,40Rが接地する。なお、トレーラ110の前記輸送対象は、上部旋回体50のキャビン52をさらに含んでいてもよい。この場合、旋回本体部51にキャビン52が支持された状態で図5に示すように前記輸送対象がトレーラ110によって輸送先に輸送され、旋回本体部51にキャビン52が支持された状態で図7及び図8に示すように前アクスル30A及び左右のクローラ走行装置40L,40Rをカーボディ20に取り付ける作業が行われる。
【0059】
本開示は、以上説明した実施形態に限定されない。本開示は、例えば次のような態様を包含する。
【0060】
(A)前アクスル及び後アクスルの形状について
前記実施形態では、前アクスル30A及び後アクスル30Bのアクスル本体31は、左右方向に直線状に延びるような形状(平面視で矩形状)を有し、前アクスル30A及び後アクスル30Bのアクスル本体31から張り出すアクスル張出部32は、平面視で矩形状を有するが、アクスル本体31及びアクスル張出部32の形状は、前記実施形態に限られない。アクスル本体31は、例えば屈曲するような部分を含んでいてもよい。アクスル張出部32は、例えば図10に示すように平面視で台形状を有していてもよい。また、アクスル張出部32は、例えば図11に示すように左右方向に互いに間隔をおいて配置された複数の部分を含んでいてもよい。
【0061】
(B)ジャッキ装置について
前記実施形態では、各ジャッキ装置60は、斜め位置P1と格納位置P2との間で変位することが可能なように構成されているが、斜め位置P1に配置された状態であっても輸送対象の幅を輸送に係る規制値の範囲内に収めることができる場合には、斜め位置P1に固定されていてもよい。
【0062】
また、前記実施形態では、左前ジャッキ装置60FL及び右前ジャッキ装置60FRが格納位置P2に配置されたときに、これらのビーム61は、基端部611から左後ジャッキ装置60RLのビーム61及び右後ジャッキ装置60RRのビーム61に対してそれぞれ遠ざかる方向に延びるように配置されるが、基端部611から左後ジャッキ装置60RLのビーム61及び右後ジャッキ装置60RRのビーム61に対して近づく方向に延びるように配置されてもよい。同様に、前記実施形態では、左後ジャッキ装置60RL及び右後ジャッキ装置60RRが格納位置P2に配置されたときに、これらのビーム61は、基端部611から左前ジャッキ装置60FLのビーム61及び右前ジャッキ装置60FRのビーム61に対してそれぞれ遠ざかる方向に延びるように配置されるが、基端部611から左前ジャッキ装置60FLのビーム61及び右前ジャッキ装置60FRのビーム61に対して近づく方向に延びるように配置されてもよい。
【0063】
前記実施形態では、左前ジャッキ装置60FLの前格納位置P2及び右前ジャッキ装置60FRの前格納位置P2は、左前ジャッキ装置60FLのビーム61及び右前ジャッキ装置60FRのビーム61がカーボディ20から前方にそれぞれ延びるような位置であるが、これらの前格納位置P2は、左前ジャッキ装置60FLのビーム61及び右前ジャッキ装置60FRのビーム61がカーボディ20から斜め前方にそれぞれ延びるような位置であってもよい。同様に、前記実施形態では、左後ジャッキ装置60RLの後格納位置P2及び右後ジャッキ装置60RRの後格納位置P2は、左後ジャッキ装置60RLのビーム61及び右後ジャッキ装置60RRのビーム61がカーボディ20から後方にそれぞれ延びるような位置であるが、これらの後格納位置P2は、左後ジャッキ装置60RLのビーム61及び右後ジャッキ装置60RRのビーム61がカーボディ20から斜め後方にそれぞれ延びるような位置であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
20 :カーボディ
21 :カーボディ本体
23F :前接続部(カーボディの前部の一例)
23R :後接続部(カーボディの後部の一例)
30A :前アクスル
30B :後アクスル
31 :アクスル本体
32 :アクスル張出部
40L :左のクローラ走行装置
40R :右のクローラ走行装置
50 :上部旋回体
60FL:左前ジャッキ装置
60FR:右前ジャッキ装置
60RL:左後ジャッキ装置
60RR:右後ジャッキ装置
61 :ビーム
611 :ビームの基端部
612 :ビームの先端部
62 :脚部
100 :クローラクレーン
P1 :斜め前位置、斜め後位置
P2 :前格納位置、後格納位置
S1 :左前スペース
S2 :右前スペース
S3 :左後スペース
S4 :右後スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11