(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187541
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ドリル
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
B23B51/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095567
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】中田 敦
(72)【発明者】
【氏名】山田 将司
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037AA02
3C037DD03
(57)【要約】
【課題】振れを抑制し、破損を回避することができるドリルを提供する。
【解決手段】ドリル100は、切れ刃22に連なる逃げ面26の外周に第1マージン28a及び第2マージン28bを備え、正面視においてマージン部28a及び28bは円弧状であり、第1マージン28a及び第2マージン28bの円弧の半径は、ドリル100の半径よりも小さい。第1マージン28a及び第2マージン28bの円弧の半径は、ドリル100の半径の10%以上20%以下であることが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切れ刃に連なる逃げ面の外周にマージン部を備えるドリルであって、
正面視において前記マージン部は円弧状であり、
前記マージン部の円弧の半径は、前記ドリルの半径よりも小さいことを特徴とするドリル。
【請求項2】
前記マージン部の円弧の半径は、前記ドリルの半径の10%以上20%以下であることを特徴とする請求項1に記載のドリル。
【請求項3】
前記マージン部は、第1マージン部と、前記ドリルの正転方向の反対方向に前記第1マージン部から45°~80°回転した位置に設けられている第2マージン部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のドリル。
【請求項4】
前記第2マージン部の円弧の半径は、前記第1マージン部の円弧の半径の1倍以上2倍以下であることを特徴とする請求項3に記載のドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
マージンを有するドリルが知られている(特許文献1および2など)。加工対象物の穴の内壁にマージンが接触することで、ドリルのガイドが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-15073号公報
【特許文献2】特開2014-87873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3Aに示すように、斜め穴加工でドリルが加工対象物を貫通したとき、ドリルの一方側は穴の内壁に面し、ドリルの他方側は空間に面することになるので、ドリルの一方側の抵抗が高く、ドリルの他方側の抵抗が低くなる。
【0005】
ところで、従来のドリルでは、
図3Bに示すように、マージンは加工対象物と面で接触するので、ドリルは加工対象物の穴の内壁から強い抵抗を受ける。このため、貫通時の内壁側の抵抗と空間側の抵抗との差が大きくなり、ドリルの振れが大きくなり、ドリルが破損することがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、振れを抑制し、破損を回避することができるドリルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、明細書に開示されたドリルは、切れ刃に連なる逃げ面の外周にマージン部を備えるドリルであって、正面視において前記マージン部は円弧状であり、前記マージン部の円弧の半径は、前記ドリルの半径よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
ドリルの振れを抑制し、破損を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3A】斜め穴加工でドリルが加工対象物を貫通した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本実施形態のドリルについて説明する。
【0011】
図1はドリル100の側面図であり、
図2はドリル100の正面図である。
図1において、ドリル100は、例えば金属で形成されたツイストドリルである。ドリル100は、例えば金属などの加工対象物の切削加工を行う。軸Lは、ドリル100の回転軸を示す。
【0012】
ドリル100は、軸Lの延伸方向に沿った一方の側にシャンク10を有し、他方の側に先端部20を有する。シャンク10と先端部20との間には、切り刃22およびねじれ溝24が、軸Lに沿ってらせん状に延伸する。マージン部として機能する第1マージン28aと第2マージン28bは、ともにねじれ溝24と平行にしてねじれ溝24の終端近くまで延ばされている。ドリル100では、ねじれ溝24が切上げられる位置まで、第1マージン28a及び第2マージン28bが延びている。シャンク10が工作機械の主軸(不図示)に固定される。工作機械の主軸が回転することで、ドリル100は軸Lを中心として、
図1の矢印の方向に回転する。先端部20は、加工対象物に接触し、加工を行う部分である。
【0013】
図2において、矢印Aはドリル100の回転方向を表す。先端部20には、回転中心(軸L)を基準にして点対称に位置する2枚の波状の切れ刃22、2つの逃げ面26と、及び2つのシンニング面30が設けられている。切れ刃22には、ドリル回転方向Aの反対側(後方側)に向かうにしたがい、逃げ面26及びシンニング面30が連なっており、多段的に大きくなるような逃げが与えられている。さらに、一方の切れ刃22と他方の切れ刃22に連なるシンニング面30との間には、ねじれ溝24が設けられている。各逃げ面26の外周には、第1マージン28a及び第2マージン28bが設けられている。32はクーラント穴であり、切削加工の際に、このクーラント穴32から切削部位にクーラントが供給される。
【0014】
第1マージン28aは、逃げ面26のドリル正転方向Aの前方の縁に沿って設けられており、第2マージン28bは、第1マージン28aからドリル正転方向Aの反対方向にθ回転した位置に設けられている。第1マージン28aから第2マージン28bまでの回転角度θは45°~80°、より好ましくは60°前後に設定されている。逃げ面26の周方向途中(シンニング面30よりもドリルの正転方向前方)に第2マージン28bがある。なお、回転角度θは、90°であってもよい。つまり、正面視で90°毎にマージンが配置されていてもよい。
【0015】
第1マージン28aと第2マージン28bは、ともに正面視において円弧状である。第1マージン28aの円弧の半径(曲率半径)r1と第2マージン28bの円弧の半径(曲率半径)r2は、ドリル100の半径Rよりも小さく、ドリル100の半径Rの10%以上20%以下であるのが好ましい。また、第2マージン28bの円弧の半径r2が小さすぎると第2マージン28bの設置効果が充分に発揮されず、一方、第2マージン28bの円弧の半径r2が大きすぎると接触抵抗が増加するおそれがあるので、第2マージン28bの円弧の半径r2は、第1マージン28aの円弧の半径r1の1倍以上2倍以下に設定するのが好ましい。
【0016】
この場合、第1マージン28aと第2マージン28bは、加工対象物と点接触するので、玉受ベアリングのように第1マージン28a及び第2マージン28bの頂点でドリル100をガイドすることができ、
図3Bの加工対象物と面接触するマージンよりも、加工対象物の穴の内壁から受ける抵抗を減らすことができる。この結果、貫通時の加工対象物の内壁側の抵抗と空間側の抵抗の差を小さくすることができ、ドリルの振れを抑制し、ドリルの破損を回避することができる。換言すれば、点接触にすることで、マージン1か所あたりにかかる負荷を低減できるので、従来のドリルよりも振れを抑えることができる。
【0017】
以上説明したように、本実施の形態に係るドリル100は、正面視において逃げ面26の外周に円弧状の第1マージン28a及び第2マージン28bを備え、第1マージン28aの円弧の半径r1及び第2マージン28bの円弧の半径r2は、ドリル100の半径Rよりも小さく構成されている。このため、貫通時の加工対象物の内壁側の抵抗と空間側の抵抗の差を小さくすることができ、ドリルの振れを抑制し、ドリルの破損を回避することができる。
【0018】
なお、本実施の形態では、ドリル100はダブルマージン付きのツイストドリルであるが、シングルマージン付き又はトリプルマージン付きのツイストドリルであってもよい。また、本実施の形態は、マージン付きのドリルであればよく、ドリルの種類は上記の例に限定されるものではない。
【0019】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0020】
10 シャンク、20 先端部、22 切り刃、24 ねじれ溝、26 逃げ面、28a 第1マージン、28b 第2マージン、30 シンニング面、32 クーラント穴、100 ドリル