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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187560
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/70 20060101AFI20221213BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20221213BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20221213BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221213BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20221213BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B65H29/70
B65H5/02 N
B65H5/02 S
B65H5/06 D
G03G15/00 461
G03G21/16 195
G03G15/20 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095600
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】岩見 真語
(72)【発明者】
【氏名】茂木 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】乾 祐馬
【テーマコード(参考)】
2H033
2H072
2H171
3F049
3F053
【Fターム(参考)】
2H033AA15
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB01
2H033BB39
2H033CA35
2H033CA39
2H072CA01
2H072CA05
2H072JA02
2H072JA03
2H171FA19
2H171FA22
2H171GA23
2H171JA16
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA24
2H171QB03
2H171QB15
2H171QB32
2H171QC03
2H171SA11
2H171SA12
2H171SA15
2H171SA18
2H171SA19
2H171SA22
2H171SA28
2H171SA29
3F049BB07
3F049DA02
3F049DA03
3F049DA12
3F049DB04
3F049DB05
3F049DB06
3F049DB11
3F049EA28
3F049LA01
3F049LB01
3F053HA03
3F053HA09
3F053HB01
3F053HB09
3F053HB22
3F053HB24
3F053LA01
3F053LB01
(57)【要約】
【課題】シートのカールを矯正するために必要な一対の可変ローラの移動量を小さくする。
【解決手段】シート搬送装置800は、一対の搬送ベルト830a、830bと、一対の入口ローラ801a、801bと、一対の出口ローラ802a、802bと、一対の入口ローラと一対の出口ローラとの間で一対の搬送ベルトを挟んで配置された一対の可変ローラ820a、820bと、一対の可変ローラの上流に配置された一対の上流ローラ810a、810bと、一対の可変ローラの下流に配置された一対の下流ローラ811a、811bと、シート搬送方向と一対の可変ローラの回転軸とに直交する第一の方向及び第二の方向に一対の可変ローラを移動させる移動装置と、を備え、一対の上流ローラの直径及び一対の下流ローラの直径は、一対の可変ローラの直径より小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の入口ローラと、
一対の出口ローラと、
前記一対の入口ローラと前記一対の出口ローラとの間に配置された一対の可変ローラと、
前記一対の可変ローラと前記一対の入口ローラとの間に配置された一対の上流ローラと、
前記一対の可変ローラと前記一対の出口ローラとの間に配置された一対の下流ローラと、
前記一対の入口ローラのうちの第一の入口ローラと、前記一対の出口ローラのうちの第一の出口ローラと、前記一対の可変ローラのうちの第一の可変ローラと、前記一対の上流ローラのうちの第一の上流ローラと、前記一対の下流ローラのうちの第一の下流ローラとに掛け回されている第一の搬送ベルトと、前記一対の入口ローラのうちの第二の入口ローラと、前記一対の出口ローラのうちの第二の出口ローラと、前記一対の可変ローラのうちの第二の可変ローラと、前記一対の上流ローラのうちの第二の上流ローラと、前記一対の下流ローラのうちの第二の下流ローラとに掛け回されている第二の搬送ベルトと、からなり、前記第一の搬送ベルト及び前記第二の搬送ベルトは、前記一対の入口ローラと前記一対の出口ローラとの間で互いに対向してシート搬送路を間に形成する一対の搬送ベルトと、
前記一対の入口ローラから前記一対の出口ローラへ向かうシート搬送方向と前記一対の可変ローラの回転軸とに直交する第一の方向及び前記第一の方向と反対の第二の方向に前記一対の可変ローラを移動させる移動装置と、
を備え、
前記一対の上流ローラの直径及び前記一対の下流ローラの直径は、前記一対の可変ローラの直径より小さいことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記シート搬送方向及び前記シート搬送方向と反対の上流方向に前記一対の下流ローラを移動させる下流ローラ移動装置を備えることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記シート搬送方向及び前記シート搬送方向と反対の上流方向に前記一対の上流ローラを移動させる上流ローラ移動装置を備えることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記シート搬送方向及び前記シート搬送方向と反対の上流方向に前記一対の下流ローラを移動させる下流ローラ移動装置と、
前記シート搬送方向及び前記上流方向に前記一対の上流ローラを移動させる上流ローラ移動装置と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記第一の可変ローラに関して前記シート搬送路と反対の側で前記第一の搬送ベルトを支持する第一の支持ローラと、
前記第二の可変ローラに関して前記シート搬送路と反対の側で前記第二の搬送ベルトを支持する第二の支持ローラと、
を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記第一の支持ローラが前記第一の搬送ベルトにテンションを与えるように前記第一の支持ローラを付勢する第一の付勢部材と、
前記第二の支持ローラが前記第二の搬送ベルトにテンションを与えるように前記第二の支持ローラを付勢する第二の付勢部材と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記第一の入口ローラ、前記第二の入口ローラ、前記第一の出口ローラ及び前記第二の出口ローラのうちの少なくとも一つは、駆動ローラであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記一対の上流ローラは、前記第一の方向及び前記第二の方向に移動しないように回転可能に構成され、
前記一対の下流ローラは、前記第一の方向及び前記第二の方向に移動しないように回転可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
シートにトナー像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって形成された前記トナー像を前記シートに定着させる定着装置と、
前記定着装置によって前記トナー像が定着された前記シートを搬送する請求項1乃至8のいずれか一項に記載のシート搬送装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記シートの種類及び画像形成条件に基づいて前記シートに発生するカールの量を算出するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記カールの前記量に基づいて前記シートの両端部よりも中央部が前記第一の方向に盛り上がった第一のカールが前記シートに発生すると判断した場合に、前記移動装置によって前記一対の可変ローラを前記第一の方向に移動させ、
前記コントローラは、前記カールの前記量に基づいて前記シートの前記両端部よりも前記中央部が前記第二の方向に盛り上がった第二のカールが前記シートに発生すると判断した場合に、前記移動装置によって前記一対の可変ローラを前記第二の方向に移動させることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置が普及している。これらの画像形成装置によって画像が形成されたシートは、トレイ上に大量に積載されたり、中綴じ、ステイプルその他の製本処理が施されるようにインライン又はオフラインの後処理装置へ受け渡されたりする。電子写真方式を用いて画像が形成されたシートには、カールが発生することがある。例えば、定着装置によって加熱及び加圧されてシートにトナー像が定着されることによって、シートにヒートカールが発生することがある。トナーが収縮することによって、シートにトナーカールが発生することがある。また、屈曲したシート搬送路をシートが通過することによって、シートに搬送路カールが発生することがある。シートに生じるカールが大きいと、後処理装置内でシートの積載不良、整合不良、ステイプル不良その他の不具合が発生するおそれがある。
【0003】
このような問題を解決するために、シートに生じたカールを矯正するカール矯正装置が設けられた画像形成装置がある。例えば、特許文献1は、駆動ローラ及び従動ローラに掛け回された無端ベルトと、無端ベルトのベルト面に対して押圧させる回転可能な押圧ローラとを有するカール矯正装置を開示している。無端ベルトと押圧ローラとの圧接部分(ベルトニップ部)に、シート搬送路が形成される。シート搬送路は、無端ベルトに押圧ローラを押圧させることにより湾曲させられる。シートが、湾曲したシート搬送路(ベルトニップ部)を通過することによって、シートのカールが矯正される。
【0004】
特許文献1のカール矯正装置は、所定のカール方向にカールしたシートを一方向(矯正方向)に矯正する。しかし、画像が形成されるシートのカール方向は、一方向のみではない。特に、デジタル印刷における可変印刷によれば一枚毎に異なる画像が印刷されるので、一枚毎にシートに異なるカールが発生することがある。そこで、特許文献2は、両方向のカールを矯正することができるカール矯正装置を開示している。この構成においては、一対のベルトを挟み込む一対の押圧ローラを移動させることによって、矯正方向を変更することができる。また、矯正方向にかかわらず、一対のベルトによってシートを挟持するので、カール矯正中も安定した搬送性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-294355号公報
【特許文献2】特開平8-165049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1又は特許文献2に開示されているように、ベルトに押圧ローラを押し当ててシートのカールを矯正する構成においては、シートのカール量が大きければ大きいほど、押圧ローラをベルトに押し込む量が増加する。図13は、従来のカール矯正装置70を示す図である。カール矯正装置70は、シート搬送路71を間に形成する一対の搬送ベルト72a及び72bと、一対の搬送ベルト72a及び72bを挟むように配置された一対の押圧ローラ73a及び73bとを有する。搬送ベルト72aは、駆動ローラ74a、従動ローラ75a及び従動ローラ76aに巻き掛けられている。搬送ベルト72bは、従動ローラ74b、75b及び76bに巻き掛けられている。シートSは、シート搬送方向Vに上流ガイド77a及び77bからシート搬送路71を通って下流ガイド78a及び78bへ搬送される。
【0007】
図13に示すように、シートSのカールを矯正するために一対の押圧ローラ73a及び73bが上方向Uに移動されると、シート搬送路71が上方へ変形する。シートSの大きなカール量を矯正するためには、押圧ローラ73bの回りの一対の搬送ベルト72a及び72bの巻き付け角度を大きくする必要がある。巻き付け角度を大きくするために、上方向Uへの一対の押圧ローラ73a及び73bの移動量を大きくする必要がある。しかし、移動量を大きくすると、一対の押圧ローラ73a及び73bの移動時間が長くなり、生産性が低下する。また、図13に示す従来のカール矯正装置70では、上方向Uへの一対の押圧ローラ73a及び73bの移動量を大きくすると、下流側の駆動ローラ74aの回りのシート搬送路71の屈曲量も大きくなる。駆動ローラ74aの回りのシート搬送路71の屈曲方向は、カールを矯正するための屈曲方向と反対であり、カール矯正能力を低下させてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、シートのカールを矯正するために必要な一対の可変ローラの移動量が小さいシート搬送装置及び画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例によるシート搬送装置は、
一対の入口ローラと、
一対の出口ローラと、
前記一対の入口ローラと前記一対の出口ローラとの間に配置された一対の可変ローラと、
前記一対の可変ローラと前記一対の入口ローラとの間に配置された一対の上流ローラと、
前記一対の可変ローラと前記一対の出口ローラとの間に配置された一対の下流ローラと、
前記一対の入口ローラのうちの第一の入口ローラと、前記一対の出口ローラのうちの第一の出口ローラと、前記一対の可変ローラのうちの第一の可変ローラと、前記一対の上流ローラのうちの第一の上流ローラと、前記一対の下流ローラのうちの第一の下流ローラとに掛け回されている第一の搬送ベルトと、前記一対の入口ローラのうちの第二の入口ローラと、前記一対の出口ローラのうちの第二の出口ローラと、前記一対の可変ローラのうちの第二の可変ローラと、前記一対の上流ローラのうちの第二の上流ローラと、前記一対の下流ローラのうちの第二の下流ローラとに掛け回されている第二の搬送ベルトと、からなり、前記第一の搬送ベルト及び前記第二の搬送ベルトは、前記一対の入口ローラと前記一対の出口ローラとの間で互いに対向してシート搬送路を間に形成する一対の搬送ベルトと、
前記一対の入口ローラから前記一対の出口ローラへ向かうシート搬送方向と前記一対の可変ローラの回転軸とに直交する第一の方向及び前記第一の方向と反対の第二の方向に前記一対の可変ローラを移動させる移動装置と、
を備え、
前記一対の上流ローラの直径及び前記一対の下流ローラの直径は、前記一対の可変ローラの直径より小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シートのカールを矯正するために必要な一対の可変ローラの移動量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像形成装置の断面図。
図2】実施例1のカール矯正装置を示す図。
図3】シートに生じるカールの説明図。
図4】一対の可変ローラの移動の説明図。
図5】一対の可変ローラの移動量と搬送ベルトの巻き付け角度の説明図。
図6】実施例1のコントローラのブロック図。
図7】実施例1のカール矯正装置の動作を示す流れ図。
図8】実施例2のカール矯正装置を示す図。
図9】実施例2のコントローラのブロック図。
図10】実施例2のカール矯正装置の動作を示す流れ図。
図11】実施例2の変形例のコントローラのブロック図。
図12】比較例のカール矯正装置を示す図。
図13】従来のカール矯正装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例0013】
(画像形成装置)
図1は、画像形成装置1の断面図である。画像形成装置1は、カール矯正装置(シート搬送装置)800を備えている。まず、画像形成装置1の全体構成について説明する。本実施例において、画像形成装置1は、複数色のトナーを用いて記録媒体(以下、シートという)Sに画像を形成する電子写真方式のデジタルフルカラープリンタである。画像形成装置1は、複数の画像形成部513Y、513M、513C、513Kを並べて配置したタンデム方式である。しかし、画像形成装置1は、複数の現像器を保持した回転体を回転させて一つの感光体上にそれぞれの色のトナー像を形成するロータリー方式であってもよい。画像形成装置1は、複数の感光ドラム(以下、感光体という)508Y、508M、508C、508Kから一旦各トナー像を中間転写体としての中間転写ベルト506に転写した後にシートSに転写する中間転写方式である。しかし、画像形成装置1は、複数の感光体508Y、508M、508C、508Kから直接シートSに各トナー像を転写する直接転写方式であってもよい。中間転写方式は、直接転写方式のようにシートSを転写ドラム又は転写ベルト上に保持する必要がないため、超厚紙、コート紙等の多種多様なシートSに対応できる。中間転写方式は、更に、複数の画像形成部513Y、513M、513C、513Kにおける並列処理およびフルカラー画像の一括転写という特長から高生産性の実現に適している。
【0014】
画像形成部513Yは、イエロートナーを用いてイエロートナー像を形成する。画像形成部513Mは、マゼンタトナーを用いてマゼンタトナー像を形成する。画像形成部513Cは、シアントナーを用いてシアントナー像を形成する。画像形成部513Kは、ブラックトナーを用いてブラックトナー像を形成する。参照符号の添字Y、M、CおよびKは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックを示す。以下の説明において、特に必要でない場合、参照符号の添字Y、M、C、Kを省略することがある。4つの画像形成部513は、現像剤(トナー)の色を除いて同一の構造を有する。
【0015】
画像形成部513は、感光体508、帯電ローラ514、露光装置511、現像器510、一次転写装置507及び感光体クリーナ509を有する。感光体508の下方には、無端状の中間転写ベルト506が配置されている。中間転写ベルト506は、駆動ローラ504、テンションローラ505及び二次転写内ローラ503に張架されている。中間転写ベルト506は、画像形成の際に図1の矢印で示す回転方向Bに回転する。一次転写装置507は、中間転写ベルト506を介して感光体508に対向して配置されている。一次転写装置507は、感光体508の表面上のトナー像を中間転写ベルト506へ転写する。二次転写外ローラ56は、中間転写ベルト506を介して二次転写内ローラ503に対向して配置され、中間転写ベルト506と二次転写外ローラ56との間に二次転写部(トナー像転写挟持部)STを形成する。
【0016】
画像形成装置1の下部には、シートSを収容したシートカセット51が配置されている。シートSは、シートカセット51内に設けられたリフトアップ装置52上に積載される。給送装置53は、画像形成装置1の画像形成タイミングに合わせてシートカセット51からシートSを給送する。給送装置53は、エアによるシート給送方式を用いている。しかし、給送装置53は、給送ローラによる摩擦分離を利用する方式、エアによる分離吸着を利用する方式その他の方式を用いてもよい。給送装置53によって給送されたシートSは、搬送ユニット54の搬送パス54aを通って搬送部300へ搬送される。シートSは、搬送部300から斜行補正部700へシート搬送方向Vに搬送される。斜行補正部700は、シートSの斜行を補正する。斜行補正部700の下流には、レジストレーションローラ7が配置されている。レジストレーションローラ7は、所定のタイミングでシートSを二次転写部STへ搬送する。二次転写部STは、シートSに所定の加圧力と静電的負荷バイアスを与えて、中間転写ベルト506上のトナー像をシートSに転写する。
【0017】
シート搬送方向Vにおいて、二次転写部STの下流には、定着前シート搬送装置57が配置されている。定着前シート搬送装置57の下流には、定着装置58が配置されている。二次転写部STによってトナー像が転写されたシートSは、定着前シート搬送装置57によって定着装置58へ搬送される。定着装置58は、ヒ-タ等の熱源が設けられた加熱ローラ又は加熱ベルトと、加熱ローラ又は加熱ベルトに対向して配置された加圧ローラ又は加圧ベルトとを有する。定着装置58は、シートSを加熱及び加圧してトナーを溶融し、トナー像をシートSに定着させる。
【0018】
シート搬送方向Vにおいて、定着装置58の下流には、分岐搬送装置59が設けられている。分岐搬送装置59は、定着装置58によってトナー像が定着されたシートSの搬送先を、分岐搬送装置59の下流に配置されたカール矯正装置800又は反転搬送装置501へ切り替える。片面印刷の場合、分岐搬送装置59は、第一面に画像が形成されたシートSをカール矯正装置800へ搬送する。両面印刷の場合、分岐搬送装置59は、第一面に画像が形成されたシートSを反転搬送装置501へ搬送する。反転搬送装置501は、シートSの第一面と第二面を反転させ、シートSを両面搬送装置502へ搬送する。両面搬送装置502は、シートSを搬送ユニット54の搬送パス54bへ搬送する。シートSは、再び二次転写部STへ搬送され、第二面に画像が形成され、カール矯正装置800へ搬送される。カール矯正装置800は、画像が形成されたシートSのカールを矯正する。画像が形成されたシートSは、排出トレイ500へ排出される。
【0019】
(画像形成プロセス)
次に、画像形成装置1の画像形成プロセスを説明する。4つの画像形成部513Y、513M、513C及び513Kにおける画像形成プロセスは同じであるので、イエロートナー像を形成する画像形成部513Yにおける画像形成プロセスを説明する。画像形成部513M、513C及び513Kにおける画像形成プロセスの説明は、省略する。
【0020】
感光体508Yは、図1の矢印で示す回転方向Aに回転させられる。帯電ローラ514Yは、感光体508Yの表面を均一に帯電する。露光装置511Yは、イエロー成分の画像情報の信号に従って変調された光ビームを出射する。光ビームは、反射鏡512Yによって反射され、感光体508Yの表面に静電潜像を形成する。現像器510Yは、イエロートナー(現像剤)によって静電潜像を現像してイエロートナー像にする。一次転写装置507Yは、静電的負荷バイアスが与えられ、感光体508Y上のイエロートナー像を中間転写ベルト506へ転写する。感光体クリーナ509Yは、転写後に感光体508Y上に僅かに残ったトナーを回収する。
【0021】
同様にして、画像形成部513Mによって形成されたマゼンタトナー像は、中間転写ベルト506上のイエロートナー像の上に精度よく重ねて転写される。画像形成部513Cによって形成されたシアントナー像は、中間転写ベルト506上のマゼンタトナー像の上に精度よく重ねて転写される。画像形成部513Kによって形成されたブラックトナー像は、中間転写ベルト506上のシアントナー像の上に精度よく重ねて転写される。その結果、中間転写ベルト506上に4色のトナー像が重ね合わされる。中間転写ベルト506上に重ね合わされた4色のトナー像は、回転方向Bへの中間転写ベルト506の回転によって二次転写部STへ搬送される。
【0022】
シートカセット51から搬送されたシートSは、二次転写部STでシートSの先端部と中間転写ベルト506上のトナー像の先端部が一致するように、レジストレーションローラ7によって二次転写部STへ搬送される。中間転写ベルト506上のトナー像は、二次転写部STで一括してシートS上に転写される。トナー像が転写されたシートSは、定着前シート搬送装置57によって定着装置58へ搬送される。定着装置58は、トナー像をシートSに定着させ、それによって、フルカラーの画像がシートSに形成される。画像が形成されたシートSは、分岐搬送装置59によってカール矯正装置800又は反転搬送装置501へ搬送される。カール矯正装置800は、シートSのカールを矯正し、シートSを排出トレイ500へ排出する。
【0023】
本実施例において、カール矯正装置800は、シート搬送方向Vに関して分岐搬送装置59の下流に配置されている。しかし、本実施例は、これに限定されるものではない。カール矯正装置800は、シート搬送方向Vに関して分岐搬送装置59の上流に配置されていてもよい。
【0024】
(比較例のカール矯正装置)
実施例1のカール矯正装置800を説明する前に、図12を用いて、比較例のカール矯正装置80を説明する。図12は、比較例のカール矯正装置80を示す図である。カール矯正装置80は、シート搬送路81を間に形成する一対の搬送ベルト82a及び82bと、一対の搬送ベルト82a及び82bを挟むように配置された一対の可変ローラ83a及び83bとを有する。搬送ベルト82aは、可変ローラ83a、駆動ローラ84a、従動ローラ85a及び従動ローラ86aに巻き掛けられており、矢印で示す回転方向Raに回転可能である。搬送ベルト82bは、可変ローラ83b、従動ローラ84b、85b及び86bに巻き掛けられており、矢印で示す回転方向Rbに回転可能である。一対の下流ローラ89a及び89bは、シート搬送方向Vに関して一対の可変ローラ83a及び83bの下流で一対の搬送ベルト82a及び82bを挟むように配置されている。一対の下流ローラ89a及び89bの直径は、一対の可変ローラ83a及び83bの直径より小さい。シートSは、一対の上流ガイド87a及び87bの間からシート搬送路81を通って一対の下流ガイド88a及び88bの間へシート搬送方向Vに搬送される。
【0025】
一対の可変ローラ83a及び83bは、シート搬送方向Vに直交する上方向(第一の方向)U及び下方向(第二の方向)Dに移動可能である。図12(a)は、シート搬送路81が直線状になるように一対の可変ローラ83a及び83bが初期位置に位置する時のカール矯正装置80を示す図である。一対の下流ローラ89a及び89bのそれぞれは、シートSのカールを矯正するために大きな曲率を有する小径ローラである。一対の下流ローラ89a及び89bは、上方向U及び下方向Dに移動しないように固定されており、一対の搬送ベルト82a及び82bの回転に従って回転可能に構成されている。
【0026】
シートSのカールを矯正するために、一対の下流ローラ89a及び89bより直径が大きい一対の可変ローラ83a及び83bは、矯正方向に従って上方向U又は下方向Dに移動される。図12(b)は、一対の可変ローラ83a及び83bが上方向Uに移動されたカール矯正装置80を示す図である。一対の搬送ベルト82a及び82bは、第一の下流ローラ89aに巻き付けられる。一対の可変ローラ83a及び83bの上方向Uへの移動量を変更することによって、第一の下流ローラ89aに巻き付く一対の搬送ベルト82a及び82bの巻き付け角度θ1が変化する。巻き付け角度θ1が大きくなるとカール矯正量が大きくなり、巻き付け角度θ1が小さくなるとカール矯正量が小さくなる。一対の可変ローラ83a及び83bの上方向Uへの移動量を調整することによって巻き付け角度θ1を変更し、カール矯正量を調整することができる。
【0027】
シート搬送路81は、一対の下流ローラ89a及び89bから一対の下流ガイド88a及び88bまで直線状に維持される。一対の下流ローラ89a及び89bによってカールが矯正されたシートSは、一対の下流ガイド88a及び88bまで直線状のシート搬送路81を搬送されるので、カール矯正能力の低下が防止される。図13に示す従来のカール矯正装置70においては、一対の押圧ローラ73a及び73bによってカールが矯正されたシートSは、駆動ローラ74a又は従動ローラ74bの回りのシート搬送路71の屈曲によってカール矯正能力が低下させられていた。これに対して、比較例のカール矯正装置80においては、駆動ローラ84a又は従動ローラ84bによってシート搬送路81が屈曲されることがないので、カール矯正能力の低下が防止される。
【0028】
カール矯正量を大きくする場合、巻き付け角度θ1を増加させるために一対の可変ローラ83a及び83bの上方向U又は下方向Dへの移動量Zを大きくする。しかし、移動量Zが大きくなると、一対の可変ローラ83a及び83bを移動量Zだけ移動させるための時間が長くなる。一対の可変ローラ83a及び83bの移動時間が長くなると、連続画像形成において生産性が低下することがある。例えば、連続画像形成においてシート毎にカール矯正量及び矯正方向が異なる場合には、搬送されるシートとシートとの間で一対の可変ローラ83a及び83bが移動されるので、移動時間が長いことによって生産性が低下する。また、一枚のシートに画像を形成する場合であっても一枚のシート内に複数の異なる方向のカールがある場合には、一枚のシートがカール矯正装置80内を搬送されている間に一対の可変ローラ83a及び83bを異なる方向に移動させる必要がある。この場合も、移動時間が長いことによって生産性が低下する。
【0029】
(実施例1のカール矯正装置の構造)
実施例1のカール矯正装置800は、比較例のカール矯正装置80に比べて、一対の可変ローラ820a及び820bの移動量Zが小さくなるように構成されている。図2は、実施例1のカール矯正装置800を示す図である。カール矯正装置800は、シート搬送路860を間に形成する一対の搬送ベルト830a及び830bを有する。一対の搬送ベルト830a及び830bは、シート搬送路860を画定するように互いに対向して配置されている。なお、一対の搬送ベルト830a及び830bは、画像形成装置1の前後方向に複数に分割されていてもよい。カール矯正装置800は、一対の搬送ベルト830a及び830bが互いに対向する対向部で一対の搬送ベルト830a及び830bを挟むように配置された一対の可変ローラ820a及び820bを有する。
【0030】
カール矯正装置800は、一対の入口ローラ801a及び801bと、一対の出口ローラ802a及び802bと、を備える。一対の可変ローラ820a及び820bは、一対の入口ローラ801a及び801bと一対の出口ローラ802a及び802bとの間に配置されている。一対の可変ローラ820a及び820bと一対の入口ローラ801a及び801bとの間に、一対の上流ローラ810a及び810bが配置されている。一対の可変ローラ820a及び820bと一対の出口ローラ802a及び802bとの間に、一対の下流ローラ811a及び811bが配置されている。
【0031】
一対の搬送ベルト830a及び830bは、シート搬送路860の一方の側(図2の上側)に配置された第一の搬送ベルト830aと、シート搬送路860の他方の側(図2の下側)に配置された第二の搬送ベルト830bと、からなる。シート搬送路860の一方の側に配置された第一の可変ローラ820aに関して、シート搬送路860と反対の側に、第一の搬送ベルト830aを支持する第一の支持ローラ803aが設けられている。また、シート搬送路860の他方の側に配置された第二の可変ローラ820bに関して、シート搬送路860と反対の側に、第二の搬送ベルト830bを支持する第二の支持ローラ803bが設けられている。
【0032】
第一の搬送ベルト830aは、第一の入口ローラ801a、第一の上流ローラ810a、第一の可変ローラ820a、第一の下流ローラ811a、第一の出口ローラ802a及び第一の支持ローラ803aに巻き掛けられている。第一の搬送ベルト830aは、矢印で示す回転方向Raに回転可能である。第二の搬送ベルト830bは、第二の入口ローラ801b、第二の上流ローラ810b、第二の可変ローラ820b、第二の下流ローラ811b、第二の出口ローラ802b及び第二の支持ローラ803bに巻き掛けられている。第二の搬送ベルト830bは、矢印で示す回転方向Rbに回転可能である。
【0033】
一対の上流ローラ810a及び810bは、シート搬送方向Vに関して一対の可変ローラ820a及び820bの上流で一対の搬送ベルト830a及び830bを挟むように配置されている。一対の下流ローラ811a及び811bは、シート搬送方向Vに関して一対の可変ローラ820a及び820bの下流で一対の搬送ベルト830a及び830bを挟むように配置されている。一対の上流ローラ810a及び810bの直径並びに一対の下流ローラ811a及び811bの直径は、一対の可変ローラ820a及び820bの直径より小さい。一対の上流ローラ810a及び810bの直径並びに一対の下流ローラ811a及び811bの直径は、第一の入口ローラ801a、第二の入口ローラ801b、第一の出口ローラ802a及び第二の出口ローラ802bの直径より小さい。一対の上流ローラ810a及び810b並びに一対の下流ローラ811a及び811bは、例えば、金属で形成されたハードローラであるとよい。
【0034】
第一の支持ローラ803a及び第二の支持ローラ803bは、上方向(第一の方向)U及び下方向(第二の方向)Dに移動可能に構成されており、第一のテンションローラ及び第二のテンションローラとして機能する。しかし、一対の支持ローラ803a及び803bは、必ずしも一対のテンションローラとして機能する必要はなく、上方向U及び下方向Dに移動しないように構成されていてもよい。第一の支持ローラ803aは、第一の搬送ベルト830aにテンションを与えるように圧縮バネ(第一の付勢部材)807aによって上方向Uに付勢されている。第二の支持ローラ803bは、第二の搬送ベルト830bにテンションを与えるように圧縮バネ(第二の付勢部材)807bによって下方向Dに付勢されている。第一の支持ローラ803a及び第二の支持ローラ803bは、一対の可変ローラ820a及び820bが上方向U又は下方向Dに移動しても第一の搬送ベルト830a及び第二の搬送ベルト830bに適切なテンションを付与する。
【0035】
なお、例えば、一対の入口ローラ801a及び801b並びに一対の出口ローラ802a及び802bの直径が一対の可変ローラ820a及び820bの直径より大きい場合、第一の支持ローラ803a及び第二の支持ローラ803bが設けられていなくてもよい。第一の搬送ベルト830aの内側の空間内に第一の可変ローラ820aの移動領域を確保でき、第二の搬送ベルト830bの内側の空間内に第二の可変ローラ820bの移動領域を確保できれば、一対の支持ローラ803a及び803bを省略することができる。
【0036】
実施例1では、第一の出口ローラ802aが一つの駆動ローラとして用いられ、第一の入口ローラ801a、第二の入口ローラ801b及び第二の出口ローラ802bが従動ローラとして用いられている。しかし、駆動ローラの位置や個数は、これに限定されるものではない。第一の入口ローラ801a、第二の入口ローラ801b又は第二の出口ローラ802bが駆動ローラとして機能してもよい。第一の入口ローラ801a、第二の入口ローラ801b、第一の出口ローラ802a及び第二の出口ローラ802bのうちの少なくとも一つが駆動ローラであるとよい。
【0037】
シート搬送方向Vに搬送されるシートSは、一対の上流ガイド850a及び850bの間から、一対の搬送ベルト830a及び830bの間に形成されるシート搬送路860へ進入する。シートSは、回転する一対の搬送ベルト830a及び830bの間に挟まれてシート搬送路860を搬送される。シートSは、一対の搬送ベルト830a及び830bの間から一対の下流ガイド851a及び851bの間へシート搬送方向Vに搬送される。
【0038】
一対の上流ローラ810a及び810b及び一対の下流ローラ811a及び811bのそれぞれは、シートSのカールを矯正するために大きな曲率を有する小径ローラである。一対の上流ローラ810a及び810b及び一対の下流ローラ811a及び811bは、上方向(第一の方向)U及び下方向(第二の方向)Dに移動しないように固定されており、一対の搬送ベルト830a及び830bの回転に従って回転可能に構成されている。一対の可変ローラ820a及び820bは、シート搬送方向Vと一対の可変ローラ820a及び820bの回転軸821a及び821bとに直交する上方向(第一の方向)U及び下方向(第二の方向)Dに移動可能である。シートSのカールを矯正するために、一対の上流ローラ810a及び810b及び一対の下流ローラ811a及び811bより直径が大きい一対の可変ローラ820a及び820bは、カール矯正方向に従って上方向U又は下方向Dに移動される。
【0039】
図3は、シートSに生じるカールの説明図である。図3(a)は、ヒートカールが生じたシートSを示す図である。ヒートカールは、シートSが定着装置58によって加熱され、シートSの表面と裏面の水分状態の差によって生じる。図3(a)に示すヒートカールは、シートSを水平に置いたときに両端部よりも中央部が盛り上がった下向きカール(第一のカール)である。図3(b)は、トナーカールが生じたシートSを示す図である。トナーカールは、トナーTが載ったシートSが定着装置58によって加熱され、その後、温度が低下したときのトナーTとシートSの温度変化に対する体積変化率の差によって生じる。図3(b)に示すトナーカールは、シートSを水平に置いたときに中央部よりも両端部が盛り上がった上向きカール(第二のカール)である。図3(c)は、トナーカールとシートカールの両方が生じたシートSを示す図である。図3(c)に示す一枚のシートSには、上向きカールと下向きカールの両方が生じている。このように、一枚のシートSに向きが異なる複数のカールが発生することがある。
【0040】
図4は、一対の可変ローラ820a及び820bの移動の説明図である。図4(a)は、一対の可変ローラ820a及び820bが上方向Uに移動されたカール矯正装置800を示す図である。図3(a)に示すように下向きカールが生じているシートSをカール矯正装置800によって矯正する場合に、一対の可変ローラ820a及び820bは、図4(a)に示すように上方向Uに移動される。搬送ベルト830a及び830bは、第一の上流ローラ810a及び第一の下流ローラ811aに巻き付き、シート搬送路860が湾曲される。シートSは、湾曲したシート搬送路860を搬送され、第一の上流ローラ810a及び第一の下流ローラ811aによって上向きカールが付けられることにより、下向きカールが補正される。シート搬送路860は、一対の下流ローラ811a及び811bから一対の下流ガイド851a及び851bまで直線状に維持される。第一の上流ローラ810a及び第一の下流ローラ811aによってカールが矯正されたシートSは、一対の下流ガイド851a及び851bまで直線状のシート搬送路860を搬送されるので、カール矯正能力の低下が防止される。
【0041】
図4(b)は、一対の可変ローラ820a及び820bが下方向Dに移動されたカール矯正装置800を示す図である。図3(b)に示すように上向きカールが生じているシートSをカール矯正装置800によって矯正する場合に、一対の可変ローラ820a及び820bは、図4(b)に示すように下方向Dに移動される。搬送ベルト830a及び830bは、第二の上流ローラ810b及び第二の下流ローラ811bに巻き付き、シート搬送路860が湾曲される。シートSは、湾曲したシート搬送路860を搬送され、第二の上流ローラ810b及び第二の下流ローラ811bによって下向きカールが付けられることにより、上向きカールが補正される。シート搬送路860は、一対の下流ローラ811a及び811bから一対の下流ガイド851a及び851bまで直線状に維持されるので、カール矯正能力の低下が防止される。
【0042】
また、図3(c)に示すように上向きカールと下向きカールの両方が生じているシートSをカール矯正装置800によって矯正する場合に、一対の可変ローラ820a及び820bは、下方向Dに移動され、その後、上方向Uに移動される。一対の可変ローラ820a及び820bは、シートSに生じているカールの向きに従って上方向U又は下方向Dへ移動され、カール量に従って移動量Zが決定される。
【0043】
図5は、一対の可変ローラ820a及び820b(83a、83b)の移動量Zと搬送ベルト830a及び830b(82a、82b)の巻き付け角度θの説明図である。図5(a)は、図12に示す比較例のカール矯正装置80の第一の下流ローラ89aに巻き付く一対の搬送ベルト82a及び82bの巻き付け角度θ1を示す図である。図5(b)は、実施例1のカール矯正装置800の第一の下流ローラ811aに巻き付く一対の搬送ベルト830a及び830bの巻き付け角度θ1及び第一の上流ローラ810aに巻き付く巻き付け角度θ2を示す図である。図5(c)は、一対の可変ローラ820a及び820b(83a、83b)の移動量Zと巻き付け角度θの関係を示すグラフである。
【0044】
図5(c)から分かるように、一対の可変ローラ83a及び83bの上方向U又は下方向Dへの移動量Zが大きくなるにつれて、第一の下流ローラ89aに巻き付く一対の搬送ベルト82a及び82bの巻き付け角度θ1が大きくなる。つまり、一対の可変ローラ83a及び83bの移動量Zを大きくすることによって、カール矯正能力を大きくすることができる。実施例1のカール矯正装置800においては、シートSは、一対の搬送ベルト830a及び830bが下流ローラ811aに巻き付く巻き付け角度θ1及び上流ローラ810aに巻き付く巻き付け角度θ2の搬送区間を搬送されながらカールが矯正される。実施例1のカール矯正装置800における巻き付け角度θ(=θ1+θ2)は、比較例のカール矯正装置80における巻き付け角度θ1の2倍になるので、カール矯正効果を得られる搬送区間の長さも2倍になる。実施例1のカール矯正装置800と比較例のカール矯正装置80とにおいてシートSが同じ搬送速度で搬送される場合に、実施例1のカール矯正装置800によってシートSに付与されるカール矯正時間は、比較例のカール矯正装置80におけるものの2倍になる。
【0045】
また、図5(c)から分かるように、実施例1のカール矯正装置800において、比較例のカール矯正装置80と同じ巻き付け角度θを得るためには、一対の可変ローラ820a及び820bの移動量Zが比較例のカール矯正装置80のものの半分でよい。すなわち、実施例1のカール矯正装置800は、一対の可変ローラ820a及び820bの移動量Zを比較例のカール矯正装置80より小さくしても比較例のカール矯正装置80と同等以上のカール矯正能力を得ることができる。一対の可変ローラ820a及び820bの移動量Zを小さくすることによって、一対の可変ローラ820a及び820bの移動に係る時間が短くなり、画像形成装置1の生産性を向上することができる。
【0046】
画像形成装置1は、一対の可変ローラ820a及び820bの移動量Zを制御するコントローラ100が設けられている。図6は、実施例1のコントローラ100のブロック図である。コントローラ100は、CPU101、ROM(記憶装置)102及びRAM(記憶装置)103を有する。コントローラ100は、ベルト駆動モータ890及び可変ローラ移動装置(移動装置)891に電気的に接続されている。ベルト駆動モータ890は、図2を参照すると、駆動ローラとしての第一の出口ローラ802aを回転させて搬送ベルト830aを回転方向Raに回転させる。第二の搬送ベルト830bは、第一の搬送ベルト830aの回転に追従して回転方向Rbに回転される。可変ローラ移動装置891は、コントローラ100からの制御信号に従って一対の可変ローラ820a及び820bを上方向U又は下方向Dに移動させる。
【0047】
(実施例1のカール矯正装置の動作)
以下、図7を用いて、実施例1のカール矯正装置800の動作を説明する。図7は、実施例1のカール矯正装置800の動作を示す流れ図である。CPU101は、ROM102に保存された制御プログラムに従ってカール矯正装置800の動作を制御する。CPU101は、ベルト駆動モータ890の回転を開始して一対の搬送ベルト830a及び830bを回転させる(S1)。CPU101は、シートSの種類及び画像形成条件から、シートSに発生するカールの量(カール量)を算出する(S2)。
【0048】
CPU101は、算出されたカール量が単一方向カールを表しているか否かを判断する(S3)。算出されたカール量が単一方向カールを表していると判断した場合(S3でYES)、CPU101は、単一方向カールが下向きカールであるか否かを判断する(S4)。単一方向カールが下向きカールであると判断した場合(S4でYES)、CPU101は、可変ローラ移動装置891を制御して一対の可変ローラ820a及び820bを上方向Uへ移動させる(S5)。これによって、図4(a)に示すように、一対の搬送ベルト830a及び830bが第一の上流ローラ810a及び第一の下流ローラ811aに巻き付いてシート搬送路860が上方へ湾曲する。湾曲したシート搬送路860にシートSを通すことによって、シートSの下向きカールを矯正するようにシートSに上向きにカール付けがなされる。
【0049】
一方、単一方向カールが上向きカールであると判断した場合(S4でNO)、CPU101は、可変ローラ移動装置891を制御して一対の可変ローラ820a及び820bを下方向Dへ移動させる(S6)。これによって、図4(b)に示すように、一対の搬送ベルト830a及び830bが第二の上流ローラ810b及び第二の下流ローラ811bに巻き付いてシート搬送路860が下方へ湾曲する。湾曲したシート搬送路860にシートSを通すことによって、シートSの上向きカールを矯正するようにシートSに下向きにカール付けがなされる。なお、一対の可変ローラ820a及び820bの上方向U又は下方向Dへの移動量Zは、算出されたカール量に基づいて決定されてもよい。
【0050】
一方、S2で算出されたカール量が単一方向カールを表していないと判断した場合(S3でNO)、CPU101は、算出されたカール量が下向きカールから上向きカールへの変化を表しているか否かを判断する(S7)。算出されたカール量が下向きカールから上向きカールへの変化を表していると判断した場合(S7でYES)、CPU101は、処理をS8へ進める。この場合、一枚のシートSの下流側が下向きにカールし、上流側が上向きにカールしている。S8において、CPU101は、一対の可変ローラ820a及び820bを上方向Uへ移動させ、シートが算出量だけ搬送された後に一対の可変ローラ820a及び820bを下方向Dへ移動させる。これによって、一枚のシートSの下流側の下向きカールを矯正したのちに、上流側の上向きカールを矯正することができる。
【0051】
一方、算出されたカール量が上向きカールから下向きカールへの変化を表していると判断した場合(S7でNO)、CPU101は、処理をS9へ進める。この場合、一枚のシートSの下流側が上向きにカールし、上流側が下向きにカールしている。S9において、CPU101は、一対の可変ローラ820a及び820bを下方向Dへ移動させ、シートが算出量だけ搬送された後に一対の可変ローラ820a及び820bを上方向Uへ移動させる。これによって、一枚のシートSの下流側の上向きカールを矯正したのちに、上流側の下向きカールを矯正することができる。
【0052】
実施例1によれば、シートSのカールを矯正するための一対の可変ローラ820a及び820bの移動量Zを低減することができる。一対の可変ローラ820a及び820bの移動に要する時間が短縮されるので、連続搬送される複数枚のシートSのカールを矯正する場合であっても一枚のシートSのカール矯正方向及び矯正量が変化する場合であっても、生産性を向上させることができる。
【実施例0053】
次に、実施例2を説明する。実施例2において、実施例1と同様の構造には同様の参照符号を付して説明を省略する。実施例2の画像形成装置1は、実施例1と同様であるので説明を省略する。実施例2のカール矯正装置(シート搬送装置)900は、実施例1のカール矯正装置800と異なる。以下、実施例1と異なる点を主に説明する。
【0054】
(実施例2のカール矯正装置の構造)
図8は、実施例2のカール矯正装置900を示す図である。実施例2のカール矯正装置900は、一対の下流ローラ911a及び911bがシート搬送方向(下流方向)V及びシート搬送方向Vと反対の方向(上流方向)Wに移動可能である点を除いて、実施例1のカール矯正装置800と同様である。実施例2のカール矯正装置900において、実施例1のカール矯正装置800と同様の構造には同様の参照符号を付して説明を省略する。
【0055】
例えば、下向きカールが生じているシートSをカール矯正装置900によって矯正する場合に、図8に示すように、一対の可変ローラ820a及び820bは上方向Uに移動され、一対の下流ローラ911a及び911bは上流方向Wに移動される。一対の搬送ベルト830a及び830bは、第一の上流ローラ810a及び第一の下流ローラ911aに巻き付き、シート搬送路860が湾曲される。一対の下流ローラ911a及び911bの上流方向Wへの移動量が大きくなると、第一の下流ローラ911aに巻き付く一対の搬送ベルト830a及び830bの巻き付け角度θ3は、大きくなる。例えば、一対の可変ローラ820a及び820bの上方向Uへの移動量Zが実施例1と同じである場合、実施例2の巻き付け角度θ3は、実施例1の巻き付け角度θ1より大きい(θ3>θ1)。したがって、実施例2によれば、実施例1と同じ巻き付け角度θ1を得るために移動される一対の可変ローラ820a及び820bの上方向Uへの移動量Zを小さくすることができる。
【0056】
図9は、実施例2のコントローラ100のブロック図である。実施例2のコントローラ100において、実施例1と同様の構造には同様の参照符号を付して説明を省略する。コントローラ100は、ベルト駆動モータ890、可変ローラ移動装置891及び下流ローラ移動装置892に電気的に接続されている。下流ローラ移動装置892は、コントローラ100からの制御信号に従って一対の下流ローラ911a及び911bをシート搬送方向V及びシート搬送方向Vと反対の上流方向Wに移動させる。
【0057】
(実施例2のカール矯正装置の動作)
以下、図10を用いて、実施例2のカール矯正装置900の動作を説明する。図10は、実施例2のカール矯正装置900の動作を示す流れ図である。CPU101は、ROM102に保存された制御プログラムに従ってカール矯正装置900の動作を制御する。図10の流れ図において、図7に示す実施例1の流れ図と同様のステップには同様のステップ番号を付して説明を省略する。図10のステップS1からステップS9は、図7のステップS1からステップS9と同様であるので説明を省略する。
【0058】
CPU101は、可変ローラ移動装置891を制御して一対の可変ローラ820a及び820bを上方向U又は下方向Dに移動する(S5、S6、S8又はS9)。その後、CPU101は、下流ローラ移動装置892を制御して一対の下流ローラ911a及び911bをシート搬送方向Vと反対の上流方向Wに移動する(S10)。例えば、S5で一対の可変ローラ820a及び820bを上方向Uに移動したときに、一対の搬送ベルト830a及び830bが巻き付け角度θ1で下流ローラ911aに巻き付くとする。その後、下流ローラ移動装置892によって一対の下流ローラ911a及び911bが上流方向Wに移動されると(S10)、一対の搬送ベルト830a及び830bは、巻き付け角度θ1より大きい巻き付け角度θ3で下流ローラ911aに巻き付く。一対の下流ローラ911a及び911bの上流方向Wへの移動量を調整することによって、カール矯正効果を調整することができる。
【0059】
実施例2によれば、可変ローラ移動装置891による一対の可変ローラ820a及び820bの移動量Z及び下流ローラ移動装置892による一対の下流ローラ911a及び911bの移動量を調整することによって、巻き付け角度θ3を調整することができる。したがって、カール矯正装置900のカール矯正能力を、より短い時間で、所望の値に設定することができる。
【0060】
実施例2によれば、シートSのカールを矯正するための一対の可変ローラ820a及び820bの移動量Zを低減することができる。一対の可変ローラ820a及び820bの移動に要する時間が短縮されるので、連続搬送される複数枚のシートSのカールを矯正する場合であっても一枚のシートSのカール矯正方向及び矯正量が変化する場合であっても、生産性を向上させることができる。
【0061】
実施例2においては、一対の下流ローラ911a及び911bがシート搬送方向V及びシート搬送方向Vと反対の上流方向Wに移動可能に構成されている。しかし、実施例2はこれに限定されるものではなく、一対の上流ローラ810a及び810bがシート搬送方向V及びシート搬送方向Vと反対の上流方向Wに移動可能に構成されていてもよい。図11は、実施例2の変形例のコントローラ100のブロック図である。図11(a)に示すように、コントローラ100は、下流ローラ移動装置892の代わりに上流ローラ移動装置893に電気的に接続されているとよい。また、一対の下流ローラ911a及び911b並びに一対の上流ローラ810a及び810bの両方がシート搬送方向V及びシート搬送方向Vと反対の上流方向Wに移動可能に構成されていてもよい。その場合、図11(b)に示すように、コントローラ100は、下流ローラ移動装置892及び上流ローラ移動装置893に電気的に接続されているとよい。
【0062】
実施例2においては、可変ローラ移動装置891によって一対の可変ローラ820a及び820bを移動させた後に、下流ローラ移動装置892によって一対の下流ローラ911a及び911bを移動させる。しかし、一対の可変ローラ820a及び820bの移動と一対の下流ローラ911a及び911bの移動との順序は、これに限定されるものではない。下流ローラ移動装置892によって一対の下流ローラ911a及び911bを移動させた後に、可変ローラ移動装置891によって一対の可変ローラ820a及び820bを移動させてもよい。また、可変ローラ移動装置891による一対の可変ローラ820a及び820bの移動と下流ローラ移動装置892による一対の下流ローラ911a及び911bの移動とを並行に実施してもよい。
【符号の説明】
【0063】
800・・・カール矯正装置
801a・・・第一の入口ローラ
801b・・・第二の入口ローラ
802a・・・第一の出口ローラ
802b・・・第二の出口ローラ
810a・・・第一の上流ローラ
810b・・・第二の上流ローラ
811a・・・第一の下流ローラ
811b・・・第二の下流ローラ
820a・・・第一の可変ローラ
820b・・・第二の可変ローラ
830a・・・第一の搬送ベルト
830b・・・第二の搬送ベルト
891・・・可変ローラ移動装置
図1
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