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特開2022-187562熱搬送部材およびこれを備えた電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187562
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】熱搬送部材およびこれを備えた電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20221213BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221213BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H05K7/20 F
H05K7/20 B
H04N5/225 430
H04N5/232 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095602
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】都築 秀和
【テーマコード(参考)】
5C122
5E322
【Fターム(参考)】
5C122EA03
5C122EA41
5C122FC00
5C122GE01
5C122GE04
5C122GE11
5C122GE18
5E322AA01
5E322AA03
5E322AA11
5E322AB11
5E322EA11
5E322FA04
5E322FA09
(57)【要約】
【課題】筐体の内部において移動可能な部材に支持された発熱部品の動きを妨げることなく発熱部品から放出された熱を、効率的に搬送できる熱搬送部材を提供する。
【解決手段】基板4から放出される熱を搬送する熱搬送部材10であって、柔軟性を有するとともに、伸縮可能に構成され、基板4に接続された一端側から他端側に向かって熱を伝える本体部11を備え、本体部11は、熱エネルギを電磁波として放出する熱放射面11bと、熱放射面11bの他端側において熱放射面11bを臨む位置に設けられ、熱放射面11bから放出された電磁波を吸収する放射熱吸収面11cと、を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部から放出される熱を搬送する熱搬送部材であって、
前記発熱部に接続された一端側から他端側に向かって熱を伝える本体部を備え、
前記本体部は、
柔軟性を有するとともに、伸縮可能に構成され、
熱エネルギを電磁波として放出する熱放射面と、
前記熱放射面の他端側において前記熱放射面を臨む位置に設けられ、前記熱放射面から放出された電磁波を吸収する放射熱吸収面と、を有している
熱搬送部材。
【請求項2】
前記本体部は、
一端側から他端側に向かって一方の面側と他方の面側とに互い違いに屈曲する複数の屈曲部を有する一枚の板状部材であり、
一方の面および他方の面のそれぞれにおける、前記屈曲部を介して互いに向かい合う一対の面のうちの一方の面が前記熱放射面であり、他方の面が前記放射熱吸収面である
請求項1に記載の熱搬送部材。
【請求項3】
前記本体部は、
それぞれ一端側から他端側に向かう方向に対して直交する方向に延びるように形成され、一端側から他端側に向かって間隔をおいて複数のスリットを有する一枚の板状部材であり、
一方の面における前記スリットに隣接する位置に前記熱放射面が設けられ、
他方の面における前記スリットに隣接する位置に前記放射熱吸収面が設けられ、
一端側から他端側に向かう方向に引張することによって、前記スリットを介して前記熱放射面に対して前記放射熱吸収面が臨む配置となる
請求項1に記載の熱搬送部材。
【請求項4】
前記熱放射面および前記放射熱吸収面は、それぞれ、放射率が0.5以上である
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱搬送部材。
【請求項5】
前記熱放射面の放射率は、前記放射熱吸収面の放射率よりも大きい
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱搬送部材。
【請求項6】
前記熱放射面の放射率は、0.7以上であり、
前記放射熱吸収面の放射率は、0.2以下である
請求項5に記載の熱搬送部材。
【請求項7】
前記本体部は、熱伝導率が200W/m・K以上の金属、無機材料、または、金属および無機材料の複合材料が板状に形成されている
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱搬送部材。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の熱搬送部材を備えた電子機器であって、
筐体と、
前記筐体の内部に収容された前記発熱部と、を備え、
前記本体部は、一端側が前記発熱部に接続され、他端側が前記筐体に接続されている
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子機器の筐体の内部に収容された発熱部品から放出された熱を、筐体に搬送するための熱搬送部材およびこれを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱搬送部材は、電子機器の筐体の内部において、筐体の内部に収容された発熱部品と筐体とを接続し、発熱部品から放出された熱を筐体に搬送する部材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-132486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱搬送部材は、熱伝導性に優れた金属材料により構成され、一端側が発熱部品、他端側が筐体に接続され、発熱部品の一定温度以上の昇温を防いでいる。このため、従来の熱搬送部材は、筐体内において移動可能な部材に支持された発熱部品に対して適用することが困難である。また、従来の熱搬送部材は、筐体の内部に収容される部品点数が多く、限られたスペースに設置することになり、効率的な熱の搬送が困難である。
【0005】
本発明の目的とするところは、筐体の内部において移動可能な部材に支持された発熱部品の動きを妨げることなく発熱部品から放出された熱を、効率的に搬送できる熱搬送部材およびこれを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る熱搬送部材は、発熱部から放出される熱を搬送する熱搬送部材であって、前記発熱部に接続された一端側から他端側に向かって熱を伝える本体部を備え、前記本体部は、柔軟性を有するとともに、伸縮可能に構成され、熱エネルギを電磁波として放出する熱放射面と、前記熱放射面の他端側において前記熱放射面を臨む位置に設けられ、前記熱放射面から放出された電磁波を吸収する放射熱吸収面と、を有している。
【0007】
また、本発明に係る熱搬送部材は、前記本体部が、一端側から他端側に向かって一方の面側と他方の面側とに互い違いに屈曲する複数の屈曲部を有する一枚の板状部材であり、一方の面および他方の面のそれぞれにおける、前記屈曲部を介して互いに向かい合う一対の面のうちの一方の面が前記熱放射面であり、他方の面が前記放射熱吸収面である。
【0008】
また、本発明に係る熱搬送部材は、前記本体部が、それぞれ一端側から他端側に向かう方向に対して直交する方向に延びるように形成され、一端側から他端側に向かって間隔をおいて複数のスリットを有する一枚の板状部材であり、一方の面における前記スリットに隣接する位置に前記熱放射面が設けられ、他方の面における前記スリットに隣接する位置に前記放射熱吸収面が設けられ、一端側から他端側に向かう方向に引張することによって、前記スリットを介して前記熱放射面に対して前記放射熱吸収面が臨む配置となる。
【0009】
また、本発明に係る熱搬送部材は、前記熱放射面および前記放射熱吸収面が、それぞれ、放射率が0.5以上である。
【0010】
また、本発明に係る熱搬送部材は、前記熱放射面の放射率が、前記放射熱吸収面の放射率よりも大きい。
【0011】
また、本発明に係る熱搬送部材は、前記熱放射面の放射率が0.7以上であり、前記放射熱吸収面の放射率が0.2以下である。
【0012】
また、本発明に係る熱搬送部材は、前記本体部が、熱伝導率が200W/m・K以上の金属、無機材料、または、金属および無機材料の複合材料が板状に形成されている。
【0013】
また、本発明に係る電子機器は、熱搬送部材を備えた電子機器であって、筐体と、前記筐体の内部に収容された前記発熱部と、を備え、前記本体部は、一端側が前記発熱部に接続され、他端側が筐体に接続されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、柔軟性を有する本体部によって熱を搬送することができるので、発熱部に対して本体部を接続した場合に、筐体内において移動可能に支持された発熱部の動きを妨げることがなく、発熱部から放出された熱を搬送することが可能となる。また、熱伝導および熱放射を利用して熱を搬送するので、発熱部から放出された熱を効率的に搬送し、発熱部品の一定温度以上の昇温の防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る熱搬送部材を適用したカメラの概略図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る熱搬送部材の要部側面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る熱搬送部材を適用したカメラの概略図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る熱搬送部材の平面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る熱搬送部材を伸長させた状態を示す平面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る熱搬送部材を伸長させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1および図2は、本発明の第1実施形態を示す部材である。図1は熱搬送部材を適用したカメラの概略図であり、図2は熱搬送部材の要部側面図である。
【0017】
本発明の熱搬送部材10は、例えば、電子機器に適用される部材であり、本実施形態では、手振れ補正機構を有するカメラ1に適用されている。
【0018】
カメラ1は、図1に示すように、筐体2と、発熱部としてのイメージセンサ3が搭載された基板4と、基板4から放出される熱を筐体2に搬送するための熱搬送部材10と、を有している。基板4は、筐体2に対して所定範囲内を移動自在に支持されている。熱搬送部材10は、筐体2の外周部の内面と基板4の外周側とを連結しており、基板4から放出された熱を、熱搬送部材10を介して筐体2に搬送する。筐体2に搬送された熱は、大気中に放出される。
【0019】
熱搬送部材10は、図2に示すように、柔軟性を有する銅基シートからなる本体部11を備えている。ここで、本体部11は、柔軟性を有する板状であれば、銅基シートに限られず、熱伝導率が200W/m・K以上の金属、例えばカーボンシート等の無機材料、または、金属および無機材料の複合材料でもよい。本体部11は、平面方向の熱伝導率が1000W/m・K以上のグラフェンシートやヒートパイプ、ベーパチャンバ等の部材を採用して柔軟性を有する板状部品であれば、さらに好ましい。
【0020】
また、本体部11は、一端側から他端側に向かって順に一方の面と他方の面とに互い違いに屈曲された複数の屈曲部11aを有し、折り畳まれた状態が保持される。本体部11は、弾性変形によって一端側から他端側に延びる方向に伸縮可能である。本体部11は、伸縮する方向に対して直交する方向に変形可能であり、局所的な応力集中の発生が抑制される。本体部11は、一端側が基板4に接続されるとともに、他端側が筐体2に接続されることで、基板4と筐体2との間に取り付けられる。本体部11は、基板4と筐体2との間に取り付けられた状態で、所定の範囲内で伸長させた状態となっている。
【0021】
本体部11は、一方および他方の面のそれぞれにおける、各屈曲部11aを介して向かい合う一対の平面のうちの一方の面が熱エネルギを電磁波として放出する熱放射面11bであり、他方の面が熱放射面11bから放出された電磁波を吸収する放射熱吸収面11cである。本体部11は、基板4と筐体2との間に取り付けられた状態において、各熱放射面11bに対して他端側に隣り合う放射熱吸収面11cが間隔をおいて臨む配置となっている。
【0022】
また、本体部11の熱放射面11bは、表面に酸化処理を施した酸化面で、放射率が0.7である。放射熱吸収面11cは、表面に粗化処理を施した粗化面で、放射率が0.55である。即ち、本体部11の熱放射面11bおよび放射熱吸収面11cは、それぞれ、放射率が0.5以上である。また、本体部11の熱放射面11bの放射率は、放射熱吸収面11cの放射率よりも大きい。
【0023】
以上のように構成された熱搬送部材10において、本体部11は、一端側を基板4に接続するとともに、他端側を筐体2の内面に接続することによって、筐体2の内部に取り付けられる。ここで、本体部11の一端側と基板4との間および本体部11の他端側と筐体2との間では、それぞれ、互いに熱の移動が可能である。
【0024】
基板4から放出されて本体部11に伝わる熱の一部は、熱伝導によって、図2の実線の矢印で示すように、本体部11の内部を一端側から他端側に向かって伝わり、筐体2に搬送される。
【0025】
また、基板4から放出された熱搬送部材10に伝わるその他の熱は、熱放射によって、本体部11を一端側から他端側に向かって伝わり、筐体2に搬送される。
【0026】
熱放射による熱の搬送を詳細に説明すると、本体部11の一端側に伝わるその他の熱は、熱放射面11bから電磁波として放出される。熱放射面11bから電磁波としての放出された熱は、熱放射面11bの他端側において、熱放射面11bを臨む位置に設けられた放射熱吸収面11cにおいて吸収される。
【0027】
放射熱吸収面11cにおいて吸収した熱は、熱伝導によって本体部11の他端側に向かって伝わるとともに、本体部11の放射熱吸収面11cの厚さ方向の反対側に位置する熱放射面11bから電磁波として放出される。
【0028】
即ち、本体部11の一端側に伝わるその他の熱は、図2の白抜き矢印で示すように、熱放射面11bからの電磁波としての放出と、放射熱吸収面11cにおける吸収と、を本体部11の一端側から他端側に向かって順に繰り返すことにより、筐体2に搬送される。
【0029】
上述のように、基板4から本体部11の一端側に伝わる熱は、熱伝導および熱放射によって他端側に伝わることになるため、効率的に筐体2に搬送される。
【0030】
このように、本実施形態の熱搬送部材10によれば、基板4から放出される熱を搬送する熱搬送部材10であって、基板4に接続された一端側から他端側に向かって熱を伝える本体部11を備え、本体部11は、柔軟性を有するとともに、伸縮可能に構成され、熱エネルギを電磁波として放出する熱放射面11bと、熱放射面11bの他端側において熱放射面11bを臨む位置に設けられ、熱放射面11bから放出された電磁波を吸収する放射熱吸収面11cと、を有している。
【0031】
これにより、柔軟性を有する本体部11によって熱を搬送することができるので、基板4に対して本体部11を接続した場合に、筐体2内において移動可能に支持された基板4の動きを妨げることがなく、基板4から放出された熱を搬送することが可能となる。また、本体部11において熱伝導および熱放射を利用して熱を搬送するので、基板4から放出された熱を効率的に搬送し、発熱部品の一定温度以上の昇温の防止が可能となる。
【0032】
また、本体部11は、一端側から他端側に向かって一方の面側と他方の面側とに互い違いに屈曲する複数の屈曲部11aを有する一枚の板状部材であり、一方の面および他方の面のそれぞれにおける、屈曲部11aを介して互いに向かい合う一対の面のうちの一方の面が熱放射面11bであり、他方の面が放射熱吸収面11cである、ことが好ましい。
【0033】
これにより、簡単な構造によって熱放射面11bの他端側において熱放射面11bを臨むように放射熱吸収面11cを配置することが可能となるので、製造コストの低減を可能とする工業的に優れた部材の提供が可能である。
【0034】
また、熱放射面11bおよび放射熱吸収面11cは、それぞれ、放射率が0.5以上である、ことが好ましい。
【0035】
これにより、熱放射によって有効に熱を本体部11の一端側から他端側に向かって伝えることが可能となり、本体部11を伝わる熱量の増加が可能となる。
【0036】
また、熱放射面11bの放射率は、放射熱吸収面11cの放射率よりも大きい、ことが好ましい。
【0037】
これにより、熱放射面11bと比較して放射率の小さい放射熱吸収面11cにおいて電磁波の吸収が促進され、本体部11を伝わる熱量の増加が可能となる。
【0038】
また、本体部11は、熱伝導率が200W/m・K以上の金属、無機材料、または、金属および無機材料の複合材料が板状に形成されている、ことが好ましい。
【0039】
これにより、本体部11を伝わる熱量の増大が可能となるので、基板4から放出された熱を効率的に筐体2に搬送することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態の電子機器によれば、熱搬送部材10を備えた電子機器であって、筐体2と、筐体2の内部に収容された基板4と、を備え、本体部11は、一端側が基板4に接続され、他端側が筐体2に接続されている。
【0041】
これにより、本体部11によって基板4から放出された熱を筐体2に搬送することが可能となるので、基板4から放出された熱を筐体2から大気中に放出することによって、基板4の温度の上昇を確実に抑制することが可能となる。
【0042】
図3は、本発明の第2実施形態を示す部材であり、熱搬送部材を適用したカメラの概略図である。
【0043】
本実施形態のカメラ1は、熱搬送部材10が、筐体2に対して所定範囲内を移動自在に支持された基板4の一方の面と、筐体2における基板4の一方の面と対向する内面と、を連結している。基板4から放出された熱は、熱搬送部材10を介して筐体2に搬送され、筐体2から大気中に放出される。熱搬送部材10は、筐体2内に収容される他の部品が設置されていない空いているスペースに設置することにより、筐体2内のスペースを有効に利用することが可能となり、カメラ1の小型化を図ることが可能となる。
【0044】
このように、本実施形態の熱搬送部材10によれば、第1実施形態と同様に、柔軟性を有する本体部11によって熱を搬送することができるので、基板4に対して本体部11を接続した場合に、筐体2内において移動可能に支持された基板4の動きを妨げることがなく、基板4から放出された熱を搬送することが可能となる。また、本体部11において熱伝導および熱放射を利用して熱を搬送するので、基板4から放出された熱を効率的に搬送し、発熱部品の一定温度以上の昇温の防止が可能となる。
【0045】
図4乃至図6は、本発明の第3実施形態を示す部材である。図4は熱搬送部材の平面図であり、図5は熱搬送部材を伸長させた状態を示す平面図であり、図6は熱搬送部材を伸長させた状態を示す断面図である。
【0046】
本実施形態の熱搬送部材10の本体部12は、第1実施形態と同様に、グラファイトシートからなる。本体部12は、それぞれ一端側から他端側に向かう方向に対して直交する方向に延びるように形成され、一端側から他端側に向かって間隔をおいて複数のスリット12aを有する一枚の板状部材であり、一方の面におけるスリット12aに隣接する位置に熱放射面12bが設けられ、他方の面におけるスリット12aに隣接する位置に放射熱吸収面12cが設けられている。
【0047】
本体部12は、スリット12aを変形させることによって、一端部から他端部に向かう方向に伸縮自在である。本体部12は、一端部から他端部に向かう方向に引張することによって、スリット12aを介して熱放射面12bに対して放射熱吸収面12cが臨む配置となる。
【0048】
以上のように構成された熱搬送部材10において、本体部12は、スリット12aが開くまで引張した状態で、一端側を基板4に接続するとともに、他端側を筐体2の内面に接続することによって、筐体2の内部に取り付けられる。
【0049】
基板4から放出されて本体部12に伝わる熱の一部は、熱伝導によって、図5の実線の矢印で示すように、本体部11の内部を一端側から他端側に向かって伝わり、筐体2に搬送される。
【0050】
また、基板4から放出された熱搬送部材10に伝わるその他の熱は、熱放射によって、本体部12を一端側から他端側に向かって伝わり、筐体2に搬送される。
【0051】
即ち、本体部12の一端側に伝わるその他の熱は、図5および図6の白抜き矢印で示すように、熱放射面12bからの電磁波としての放出と、放射熱吸収面12cにおける吸収と、を本体部11の一端側から他端側に向かって順に繰り返すことにより、筐体2に搬送される。
【0052】
上述のように、基板4から本体部12の一端側に伝わる熱は、熱伝導および熱放射によって他端側に伝わることになるため、効率的に筐体2に搬送される。
【0053】
このように、本実施形態の熱搬送部材10によれば、第1および第2実施形態と同様に、柔軟性を有する本体部11によって熱を搬送することができるので、基板4に対して本体部11を接続した場合に、筐体2内において移動可能に支持された基板4の動きを妨げることがなく、基板4から放出された熱を搬送することが可能となる。また、本体部11において熱伝導および熱放射を利用して熱を搬送するので、基板4から放出された熱を効率的に搬送し、発熱部品の一定温度以上の昇温の防止が可能となる。
【0054】
また、本体部12は、それぞれ一端側から他端側に向かう方向に対して直交する方向に延びるように形成され、一端側から他端側に向かって間隔をおいて複数のスリット12aを有する一枚の板状部材であり、一方の面におけるスリット12aに隣接する位置に熱放射面12bが設けられ、他方の面におけるスリット12aに隣接する位置に放射熱吸収面12cが設けられ、一端側から他端側に向かう方向に引張することによって、スリット12aを介して熱放射面12bに対して放射熱吸収面12cが臨む配置となる、ことが好ましい。
【0055】
これにより、本体部12を引張した状態とすることによって、本体部12において熱伝導および熱放射を利用して熱を搬送することが可能となるとともに、伸長した状態の本体部12によって基板4に作用する振動の減衰が可能となる。
【0056】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0057】
本実施形態は、第1実施形態において説明した本体部11の熱放射面11bが、表面に酸化処理を施した酸化面で、放射率が0.7である。また、放射熱吸収面11cは、銅板によって形成された本体部11の外面をそのまま利用し、放射率が0.09である。
【0058】
以上のように構成された熱搬送部材10では、第1実施形態と比べて、熱放射面11bの放射率と放射熱吸収面11cの放射率との差異が大きいため、熱放射面11bから放射熱吸収面11cに伝わる熱量の増加が可能となる。
【0059】
このように、本実施形態の熱搬送部材10によれば、第1実施形態と同様に、柔軟性を有する本体部11によって熱を搬送することができるので、基板4に対して本体部11を接続した場合に、筐体2内において移動可能に支持された基板4の動きを妨げることがなく、基板4から放出された熱を搬送することが可能となる。また、本体部11において熱伝導および熱放射を利用して熱を搬送するので、基板4から放出された熱を効率的に搬送し、発熱部品の一定温度以上の昇温の防止が可能となる。
【0060】
また、熱放射面11bの放射率は、0.7以上であり、放射熱吸収面11cの放射率は、0.2以下である、ことが好ましい。
【0061】
これにより、熱放射面11bの放射率と放射熱吸収面11cとの間に差異を設けることによって、熱放射面11bから放射熱吸収面11cに伝わる熱量の増加が可能となるので、本体部11を伝わる熱量の増加が可能となる。
【0062】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0063】
本実施形態は、第1実施形態において説明した本体部11の熱放射面11bが、表面にアルミナを溶射する処理を行ったアルミナ表面で、放射率が0.96である。また、放射熱吸収面11cは、表面にポリイミドフィルムを貼付したポリイミド表面で、放射率が0.03である。
【0064】
以上のように構成された熱搬送部材10では、第1実施形態と比べて、熱放射面11bの放射率と放射熱吸収面11cの放射率との差異が大きいため、熱放射面11bから放射熱吸収面11cに伝わる熱量の増加が可能となる。
【0065】
このように、本実施形態の熱搬送部材10によれば、第1実施形態と同様に、柔軟性を有する本体部11によって熱を搬送することができるので、基板4に対して本体部11を接続した場合に、筐体2内において移動可能に支持された基板4の動きを妨げることがなく、基板4から放出された熱を搬送することが可能となる。また、本体部11において熱伝導および熱放射を利用して熱を搬送するので、基板4から放出された熱を効率的に搬送し、発熱部品の一定温度以上の昇温の防止が可能となる。
【0066】
また、熱放射面11bの放射率は、0.7以上であり、放射熱吸収面11cの放射率は、0.2以下である、ことが好ましい。
【0067】
これにより、熱放射面11bから放射熱吸収面11cに伝わる熱量の増加が可能となるので、本体部11を伝わる熱量の増加が可能となる。
【0068】
尚、前記実施形態では、手振れ補正機構を有するカメラ1を熱搬送部材10が適用される電子機器として示したが、これに限られるものではない。熱を放出する部品が筐体に収容される電子機器であれば、本発明を適用可能である。
【0069】
また、前記実施形態では、熱搬送部材10の本体部11の一端側を、イメージセンサ3が搭載された基板4に接続した部品を示したが、これに限られるものではない。熱搬送部材の本体部の一端側を、熱を放出する部品に対して直接的に接続するようにしてもよい。
【0070】
また、前記実施形態では、熱搬送部材10の本体部11の他端側を、筐体2に接続した部品を示したが、これに限られるものではない。熱を大気中に放出可能な部品であれば、例えば、熱搬送部材の本体部の他端側をヒートシンクに接続するようにしてもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、本体部11を銅基シートから形成し、銅基シートの表面に酸化処理を施したり、アルミナを溶射する処理を施したりすることにより熱放射面11bを形成した部材を示したが、これに限られるものではない。熱放射面11bおよび放射熱吸収面11cは、それぞれ、本体部11の表面に対して、アルミナ分散層、カーボンやグラフェンの分散層等を形成する表面処理を施すことによって形成してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 カメラ
2 筐体
3 イメージセンサ
4 基板
10 熱搬送部材
11 本体部
11a 屈曲部
11b 熱放射面
11c 放射熱吸収面
12 本体部
12a スリット
12b 熱放射面
12c 放射熱吸収面
図1
図2
図3
図4
図5
図6