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特開2022-187565間引き補助システム、間引き補助方法及び間引き補助プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187565
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】間引き補助システム、間引き補助方法及び間引き補助プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20221213BHJP
   G16Y 10/05 20200101ALI20221213BHJP
【FI】
G06Q50/02
G16Y10/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095608
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】山地 隆生
(72)【発明者】
【氏名】奥富 忠相
(72)【発明者】
【氏名】吉田 朝明
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】作物の成長の早い段階から、効率的な間引きの指示を行う。
【解決手段】間引き補助システムは、作物の枝葉を撮影する撮影部と、撮影部により撮影された間引き対象株順位決定前の枝葉の画像について、害虫病害状況、双葉の面積比、双葉の色の一致度、双葉が伸びる方向と畝の方向との平行度の少なくともいずれか1つに基づいて、各々の株に対して生育状況の順位付けを行う比較判定部と、間引き後に残す株数を設定する設定部と、比較判定部で付けられた順位を参考に間引き対象の株を選定する選定部と、選定された株の間引きの指示を行う指示部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の枝葉を撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影された間引き対象株順位決定前の枝葉の画像について、害虫病害状況、双葉の面積比、双葉の色の一致度、双葉が伸びる方向と畝の方向との平行度の少なくともいずれか1つに基づいて、各々の株に対して生育状況の順位付けを行う比較判定部と、
間引き後に残す株数を設定する設定部と、
前記比較判定部で付けられた順位を参考に間引き対象の株を選定する選定部と、
選定された株の間引きの指示を行う指示部と、
を備える、
間引き補助システム。
【請求項2】
前記比較判定部は、前記作物を育成する圃場を複数の領域に区切り、前記複数の領域の各々毎に前記生育状況の順位付けを行い、
前記選定部は、間引き後の前記領域に、前記作物の枝葉を単数本の株のみ残すよう間引き対象の株を選定する、
請求項1に記載の間引き補助システム。
【請求項3】
前記生育状況の順位は、残す株の順位であり、
各々の株の位置を検出する位置データ部を備え、
前記選定部は、隣接する領域の前記単数本の株の間の距離を前記位置の座標から算出し、前記距離が閾値以下の場合には、前記単数本の株のいずれか一方の株を前記一方の株を含む領域において前記閾値より遠い距離にある株で残す株の順位が最も高い株に置き換える、
請求項2に記載の間引き補助システム。
【請求項4】
作物の枝葉を撮影するステップと、
撮影された間引き対象株順位決定前の枝葉の画像について、害虫病害状況、双葉の面積比、双葉の色の一致度、双葉が伸びる方向と畝の方向との平行度の少なくともいずれか1つに基づいて、各々の株に対して生育状況の順位付けを行うステップと、
付けられた順位を参考に間引き対象の株を選定するステップと、
選定された株の間引きの指示を行うステップと、
を備える、
間引き補助方法。
【請求項5】
作物の枝葉を撮影するステップと、
撮影された間引き対象株順位決定前の枝葉の画像について、害虫病害状況、双葉の面積比、双葉の色の一致度、双葉が伸びる方向と畝の方向との平行度の少なくともいずれか1つに基づいて、各々の株に対して生育状況の順位付けを行うステップと、
付けられた順位を参考に間引き対象の株を選定するステップと、
選定された株の間引きの指示を行うステップと、
をコンピュータに実行させる、
間引き補助プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間引き補助システム、間引き補助方法及び間引き補助プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
作物の間引きは、より良い収穫のために必須の作業であるが、人の目により判断し、作業しなければならない。人の目による判断は、感覚的な作業になってしまうので、疲労ひいてはミスにつながる。また、作業の姿勢も、非常に苦痛である。作物の間引きの先行技術としては、胚軸径の大きさにより間引く株を決定することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-308804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の間引き装置は、胚軸径のみでの判断となるので、かなり成長を待たなければ胚軸の大きさの識別がつかず、葉に隠れて胚軸自体も確認が困難である。
【0005】
そのため、間引きが発芽後かなりの日時経過した後になってしまい、効率的な間引きを行うことができなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、成長の早い段階から、効率的な間引きの指示を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る間引き補助システムは、作物の枝葉を撮影する撮影部と、前記撮影部により撮影された間引き対象株順位決定前の枝葉の画像について、害虫病害状況、双葉の面積比、双葉の色の一致度、双葉が伸びる方向と畝の方向との平行度の少なくともいずれか1つに基づいて、各々の株に対して生育状況の順位付けを行う比較判定部と、間引き後に残す株数を設定する設定部と、前記比較判定部で付けられた順位を参考に間引き対象の株を選定する選定部と、選定された株の間引きの指示を行う指示部と、を備える。
【0008】
本発明に係る間引き補助方法は、作物の枝葉を撮影するステップと、撮影された間引き対象株順位決定前の枝葉の画像について、害虫病害状況、双葉の面積比、双葉の色の一致度、双葉が伸びる方向と畝の方向との平行度の少なくともいずれか1つに基づいて、各々の株に対して生育状況の順位付けを行うステップと、付けられた順位を参考に間引き対象の株を選定するステップと、選定された株の間引きの指示を行うステップと、を備える。
【0009】
本発明に係る間引き補助プログラムは、作物の枝葉を撮影するステップと、撮影された間引き対象株順位決定前の枝葉の画像について、害虫病害状況、双葉の面積比、双葉の色の一致度、双葉が伸びる方向と畝の方向との平行度の少なくともいずれか1つに基づいて、各々の株に対して生育状況の順位付けを行うステップと、付けられた順位を参考に間引き対象の株を選定するステップと、選定された株の間引きの指示を行うステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成長の早い段階から、効率的な間引きの指示を行うことができるので、疲労によるミスがなくなり、より生育の良い作物だけを選定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る間引き補助システムの構成例を示すブロック図である。
図2図2は、株の葉の例を示す図である。
図3図3は、株の葉の例を示す図である。
図4図4は、株の葉の例を示す図である。
図5図5は、株の葉の例を示す図である。
図6図6は、株の葉の例を示す図である。
図7図7は、株の葉及び根の例を示す図である。
図8図8は、実施形態に係る間引き補助システムにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、圃場の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る間引き補助システム、間引き補助方法及び間引き補助プログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る間引き補助システムの構成例を示すブロック図である。
【0014】
実施形態では、間引き補助システム1は、根菜の間引きを補助することとするが、本開示はこれに限定されない。間引き補助システム1は、根菜以外の種々の作物の間引きを補助することも可能である。
【0015】
また、実施形態では、間引き補助システム1は、作物の双葉(子葉、初期葉、初生葉)の時期での間引きを補助することとするが、本開示はこれに限定されない。間引き補助システム1は、作物の本葉の時期での間引きを補助することも可能である。
【0016】
間引き補助システム1は、データ記憶部10と、株認識部20と、データ処理部30と、間引き実行部40と、を含む。
【0017】
データ記憶部10は、間引きに必要な事前データを記憶する装置である。データ記憶部10は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)が例示されるが、本開示はこれに限定されない。データ記憶部10は、害虫・病害データ記憶部11と、残置株数データ記憶部13と、を含む。
【0018】
害虫・病害データ記憶部11は、害虫や病害の被害を受けた葉の状態のデータを記憶する。データは、立体的なモデルであっても良いし、2次元モデルであっても良い。葉は、害虫や病害の被害を受けると、形状が変化したり(孔が開いたり)、色が変化したりする。害虫・病害データ記憶部11は、形状が変化したり、色が変化したりした葉の状態のデータを記憶する。害虫・病害データ記憶部11は、HDD、SSDが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0019】
図2から図6までは、株の葉の例を示す図である。
【0020】
図2は、好適な株の一例を示す図である。ここでの子葉とは、双葉のことである。株100の第1の子葉100aと、第2の子葉100bとは、略同じ大きさであり、略同じ形状であり、茎100cを軸として対称の方向に延びている。また、第1の子葉100aと、第2の子葉100bとは、同じ色である。第1の子葉100aと、第2の子葉100bの面積比は、1:1である。
【0021】
図3は、好適ではない株の一例を示す図である。株101の第1の子葉101aは、欠損しており、第2の子葉101bと比べて、子葉の面積が異なる。
【0022】
図4は、好適ではない株の一例を示す図である。株102の第1の子葉102aは、変色しており、第2の子葉102bとは色が異なっている。
【0023】
図5は、好適ではない株の一例を示す図である。株103の第2の子葉103bは、第1の子葉103aと比べて、小さく、子葉の面積が異なる。
【0024】
図6は、好適ではない株の一例を示す図である。株104は、種の殻104aが残存しており、子葉104bが開いていない。
【0025】
図7は、株の葉及び根の一例を示す図である。株105の第1の子葉105aと、第2の子葉105bとは、矢印106の方向に延びている。主根105cは、地表面107から鉛直下方向に延びている。側根105dは、主根105cから地表面107と平行に延びている。側根105dは、矢印106の方向に延びる性質を有する。もし、矢印106が畝が延びる方向と交差すると、側根105dの成長が畝によって阻害され得る。従って、矢印106は、畝が延びる方向と平行であることが、好ましい。より詳しくは、株105の第1の子葉105aと、第2の子葉105bとが延びる方向は、畝が延びる方向と平行であることが、好ましい。
【0026】
再び図1を参照すると、残置株数データ記憶部13は、生産者が必要とする株の数、つまり間引きをしないで圃場に残す株の数を記憶する。残す株の数は、前年までの実績、つまり残した株数と収穫量とに基づいて定められることが例示されるが、本開示はこれに限定されない。なお、些細な害虫被害、病害だけで株を間引いてしまうこととすると、収穫量が大きく減ってしまう可能性がある。そこで、残す株の数は、収穫量まで見越して定められることが好ましい。また、残す株の数は、双葉の時期と、本葉の時期と、で異なっていても良い。例えば、双葉の時期は、多めに株を残しておき、本葉の時期は、双葉の時期よりも少なめに株を残すことが例示されるが、本開示はこれに限定されない。残置株数データ記憶部13は、HDD、SSDが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0027】
残置株数データ記憶部13が、本開示の「設定部」の一例に相当する。
【0028】
株認識部20は、間引きする前の株の状態を認識する装置である。株認識部20は、畝を移動する装置であることが例示されるが、本開示はこれに限定されない。株認識部20は、圃場を俯瞰する位置に固定的に配置される装置であっても良い。
【0029】
株認識部20は、位置データ部21と、第1センサ22と、第2センサ23と、データ送信部24と、を含む。
【0030】
位置データ部21は、株の位置を検出する装置である。位置データ部21は、GPS(Global Positioning System)装置が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0031】
第1センサ22は、葉の色を検出する装置である。第1センサ22は、カメラが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0032】
第2センサ23は、葉の形状を立体的に認識する装置である。第2センサ23は、超音波センサ、ミリ波センサが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0033】
第1センサ22及び第2センサ23が、本開示の「撮影部」の一例に相当する。
【0034】
データ送信部24は、位置データ部21、第1センサ22、第2センサ23で取得されたデータを、データ処理部30へ送信するインタフェース装置である。通信は、有線であっても良いし、無線であっても良い。
【0035】
データ処理部30は、データ記憶部10及び株認識部20のデータを基に処理を行う装置である。データ処理部30は、データ受信部31と、害虫・病害判定部33と、葉対称性判定部34と、間引き対象株順位決定部35と、間引き対象株決定部36と、データ送信部37と、を含む。
【0036】
データ受信部31は、データ送信部24からデータを受信するインタフェース装置である。
【0037】
害虫・病害判定部33は、害虫・病害データ記憶部11に記憶されているデータと、撮影部で撮影された間引き対象株順位決定前の枝葉の画像と、を比較して公知の技術で一致度を求め、複数の株の各々について害虫被害・病害を判定し、状態によって順位付けを行う。順位付けは、状態の悪い(間引く)順位であっても良いし、状態の良い(残す)順位であっても良い。害虫・病害判定部33は、CPUとプログラムで実現可能である。
【0038】
葉対称性判定部34は、撮影部で撮影された間引き対象株順位決定前の枝葉の画像について、双葉の面積比、双葉の色の一致度、双葉が伸びる方向と畝の方向との平行度に基づいて、複数の株の各々について葉の対称性を判定し、状態によって順位付けを行う。双葉の面積比は1:1に近いものが状態の良い順位が高い。双葉の色の一致度は公知の技術を用い、一致度が高いものが状態の良い順位が高い。双葉が伸びる方向と畝の方向との平行度は、双葉が伸びる方向と畝が延びる方向が交わる角度が0度に近いものが状態の良い順位が高い。順位付けは、状態の悪い(間引く)順位であっても良いし、状態の良い(残す)順位であっても良い。上記3つの要素の順位を加えて、葉の対称性についての総合的な順位を決定しても良いし、3つの要素について重み付けを変えても良い。葉対称性判定部34は、CPUとプログラムで実現可能である。
【0039】
害虫・病害判定部33及び葉対称性判定部34が、本開示の「比較判定部」の一例に相当する。
【0040】
間引き対象株順位決定部35は、害虫・病害判定部33及び葉対称性判定部34で順位付けされた複数の株の中から、生育状況の悪い順に間引き対象の株の順位を決定する。間引き対象株順位決定部35は、CPUとプログラムで実現可能である。
【0041】
間引き対象株決定部36は、残置株数データ記憶部13に記憶されている株数に合うように、間引き対象株順位決定部35で順位決定された株の中から、間引き対象の株を決定する。間引き対象株決定部36は、例えば、害虫被害・病害のある株を優先的に間引き対象株に決定しても良いし、葉の対称性が悪い株を優先的に間引き対象株に決定しても良い。或いは、間引き対象株決定部36は、害虫被害・病害の程度を数値化(点数化)するとともに、葉の対称性の程度を数値化し、これらの数値の和に基づいて、間引き対象株を決定しても良い。間引き対象株決定部36は、CPUとプログラムで実現可能である。
【0042】
間引き対象株決定部36が、本開示の「選定部」の一例に相当する。
【0043】
データ送信部37は、間引き対象に選定された株のデータを送信するインタフェース装置である。通信は、有線であっても良いし、無線であっても良い。
【0044】
間引き実行部40は、データ処理部30で間引き対象に選定された株を実際に間引く補助をする装置である。
【0045】
データ受信部45は、データ送信部37から間引き対象に選定された株のデータを受信するインタフェース装置である。
【0046】
カメラ41は、間引き対象に選定された株が生えている場所の画像を撮像する装置である。
【0047】
画像処理部42は、カメラ41で撮影された画像データに基づいて、間引きされようとしている株が間引き対象に選定された株であるかどうかの画像処理を行う。画像処理部42は、CPUとプログラムで実現可能である。
【0048】
位置情報発信部43は、間引き実行部40の位置情報を発信する装置である。位置情報発信部43は、GPS装置が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0049】
データ比較部44は、画像処理部42、位置情報発信部43及びデータ受信部45からのデータに基づいて、間引きされようとしている株と間引き対象に選定された株とに差異がないかどうかを判定し、判定データを間引き指示部46に送信する。これにより、間引きされようとしている株が間引き対象に選定された株であるかどうかの事前確認が可能である。
【0050】
間引き指示部46は、データ比較部44から受信した判定データに基づいて、間引き指示データを表示部47に送信する。
【0051】
間引き指示部46が、本開示の「指示部」の一例に相当する。
【0052】
表示部47は、間引き指示部46から受信した間引き指示データを表示する装置である。表示部47は、ヘッドマウントディスプレイが例示されるが、本開示はこれに限定されない。ヘッドマウントディスプレイを装着した人は、表示された間引き指示に従って、間引き作業を行うことが可能である。
【0053】
なお、実施形態では、間引き実行部40が表示部47を含み、間引き指示部46が表示部47に間引き指示データを送信することとしたが、本開示はこれに限定されない。間引き指示部46が、間引きを実行する農機に間引き指示データを送信することとしても良い。これにより、間引きを実行する農機は、間引き対象に選定された株を間引くことが可能である。
【0054】
次に、図8を用いて、間引き補助システム1の処理の流れについて説明する。図8は、実施形態に係る間引き補助システムにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0055】
株認識部20は、圃場に生えている複数の株を撮影し、複数の株の葉のデータを取得し、データ処理部30に送信する(ステップS100)。
【0056】
害虫・病害判定部33は、害虫・病害データ記憶部11に記憶されているデータと、撮影部で撮影された間引き対象株順位決定前の枝葉の画像と、を比較して、複数の株の各々について害虫・病害を判定し、状態によって順位付けを行う。葉対称性判定部34は、撮影部で撮影された間引き対象株順位決定前の枝葉の画像について、双葉の面積比、双葉の色の一致度、双葉が伸びる方向と畝の方向との平行度に基づいて、複数の株の各々について葉の対称性を判定し、状態によって順位付けを行う。間引き対象株順位決定部35は、害虫・病害判定部33及び葉対称性判定部34で順位付けされた複数の株の中から、生育状況の悪い順に間引き対象の株の順位を決定する(ステップS104)。
【0057】
間引き対象株決定部36は、残置株数データ記憶部13に記憶されている株数に合うように、間引き対象株順位決定部35で順位決定された株の中から、間引き対象の株を決定する(ステップS106)。
【0058】
データ比較部44は、間引きされようとしている株と間引き対象に選定された株とに差異がないかどうかを判定し、判定データを間引き指示部46に送信する。間引き指示部46は、データ比較部44から受信した判定データに基づいて、間引き指示データを表示部47に送信する(ステップS108)。
【0059】
間引き補助システム1は、間引き対象株の間引きが終了したか否かを判定する(ステップS112)。間引きが終了したか否かは、設定された間引き数をカウントすることが例示される。間引き補助システム1は、間引き対象株の間引きが終了していないと判定した場合(ステップS112でNo)、処理をステップS108に進める。間引き補助システム1は、間引き対象株の間引きが終了したと判定した場合(ステップS112でYes)、処理を終了する。
【0060】
本実施形態によれば、人の目で見て判断する手間がなくなるので、疲労によるミスがなくなり、より生育の良い作物だけを選定することができる。また、人の目で見て判断する手間がなくなるので、時間管理の容易化や作業時間の短縮につながる。また、間引きを農機に任せることとすれば、労働者不足の改善や疲労を減らすことができる。
【0061】
(付記1)
害虫・病害判定部33及び葉対称性判定部34は、残す株数に応じて、圃場を複数の領域に区切っても良い。そして、害虫・病害判定部33及び葉対称性判定部34は、複数の領域の各々の中で、害虫・病害の順位付け及び葉の対称性の順位付けを行っても良い。更に、間引き対象株決定部36は、隣の領域の残す株との間の距離を重み付けして、残す株を決定しても良い。領域には単数本を残しても良い。
【0062】
図9は、圃場の一例を示す図である。害虫・病害判定部33及び葉対称性判定部34は、残す株数に応じて、圃場110を、領域111から領域118までに区切る。そして、害虫・病害判定部33及び葉対称性判定部34は、領域111から領域118までの各々の中で、害虫・病害の順位付け及び葉の対称性の順位付けを行う。
【0063】
例えば、領域112の中で、領域112と領域113との境界線119の近傍に、間引かずに残す順位1位の株121が存在する。また、領域113の中で、境界線119の近傍に、間引かずに残す順位1位の株131が存在する場合を検討する。この場合、株121と株131との間の距離が短い。距離は、間引き対象株決定部36が、位置データ部21のデータに基づいて、算出可能である。従って、株121及び株131の両方を残すこととすると、間引きの効果が十分に得られない可能性がある。
【0064】
そこで、間引き対象株決定部36は、株121との間の距離を重み付けして、領域113内の残す株を決定しても良い。具体的には、間引き対象株決定部36は、株121との間の距離が短いほど残す順位を下げる重み付けをし、株121との間の距離が長いほど残す順位を上げる重み付けをする。重み付けの仕方は、閾値を設定して、株121と株131との間の距離が閾値以下の場合には、株131以外の株132を残す株として選定することが例示されるが、本開示はこれに限定されない。従って、間引き対象株決定部36は、領域113の中で、株121との間の距離が長い残す順位2位の株132を残す順位1位に繰り上げ、株131を残す順位2位以下(例えば、残す順位最下位)に繰り下げる。
【0065】
これにより、間引き補助システム1は、株131を残す順位を繰り下げることにより、株131が間引き対象株に選定され易くすることができるので、間引きの効果が十分に得られない可能性を抑制できる。
【0066】
(付記2)
害虫・病害判定部33及び葉対称性判定部34は、最初に最良の株を決定し、処理を進めるようにしても良い。
【0067】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 間引き補助システム
10 データ記憶部
11 害虫・病害データ記憶部
13 残置株数データ記憶部
20 株認識部
21 位置データ部
22 第1センサ
23 第2センサ
24 データ送信部
30 データ処理部
31 データ受信部
33 害虫・病害判定部
34 葉対称性判定部
35 間引き対象株順位決定部
36 間引き対象株決定部
37 データ送信部
40 間引き実行部
41 カメラ
42 画像処理部
43 位置情報発信部
44 データ比較部
45 データ受信部
46 間引き指示部
47 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9