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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187574
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】開封検知シート、包装材
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20221213BHJP
   B65D 83/04 20060101ALI20221213BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B65D25/20 P
B65D83/04 D
G06K19/077 304
G06K19/077 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095629
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(71)【出願人】
【識別番号】000231626
【氏名又は名称】株式会社UACJ製箔
(71)【出願人】
【識別番号】000157887
【氏名又は名称】KISCO株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521247825
【氏名又は名称】株式会社Uni Tag
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久弥
(72)【発明者】
【氏名】武田 友樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 大洋
(72)【発明者】
【氏名】高木 陽介
(72)【発明者】
【氏名】高石 将熙
(72)【発明者】
【氏名】淺田 大介
(72)【発明者】
【氏名】金子 慎司
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AA20
3E062AB08
3E062AC02
3E062BA07
3E062BB06
3E062BB10
3E062DA08
(57)【要約】
【課題】開封検知の確実性を向上する。
【解決手段】包装材10に貼り付けられる開封検知シート30Aであって、包装材10から剥離可能に設けられ、スリットを有する金属層32と、金属層32上においてスリット33の少なくとも一部を覆うように実装され、外部の機器と通信するためのIC40と、金属層32に対してIC40と反対側に配される絶縁層36と、絶縁層36に対して金属層32と反対側に粘着されると共に、包装材10と粘着可能に設けられる第1粘着層38と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装材に貼り付けられる開封検知シートであって、
前記包装材から剥離可能に設けられ、スリットを有する金属層と、
前記金属層上において前記スリットの少なくとも一部を覆うように実装され、外部の機器と通信するためのICと、
前記金属層に対して前記ICと反対側に配される絶縁層と、
前記絶縁層に対して前記金属層と反対側に粘着されると共に、前記包装材と粘着可能に設けられる第1粘着層と、を備える開封検知シート。
【請求項2】
前記第1粘着層に比して粘着力が大きく、前記絶縁層と前記金属層との間に配されて前記絶縁層と粘着される第2粘着層をさらに備える請求項1に記載の開封検知シート。
【請求項3】
前記第2粘着層は、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、またはゴム系の材料を含む粘着剤若しくは粘着テープである請求項2に記載の開封検知シート。
【請求項4】
前記第1粘着層は、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、またはゴム系の材料を含む粘着剤若しくは粘着テープである請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の開封検知シート。
【請求項5】
前記第1粘着層は、前記絶縁層に対する粘着力が0.01N/25mm以上10N/25mm未満である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の開封検知シート。
【請求項6】
前記絶縁層の層厚は1mm以上2mm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の開封検知シート。
【請求項7】
前記第1粘着層に対して前記絶縁層と反対側に配され、前記包装材に貼り付けられる前に前記第1粘着層から剥離されて前記第1粘着層を露出させる剥離紙をさらに備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の開封検知シート。
【請求項8】
被収容物が収容される収容部と、
前記収容部を密閉するシート状の蓋材と、
前記蓋材に貼り付けられる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の開封検知シートと、を備える包装材。
【請求項9】
前記蓋材はアルミニウム箔を有する請求項8に記載の包装材。
【請求項10】
前記収容部は複数設けられており、
前記スリット及び前記ICは、前記収容部毎に設けられている請求項8または請求項9に記載の包装材。
【請求項11】
前記被収容物は、前記蓋材が押し破られることによって取り出し可能とされる請求項8から10のいずれか1項に記載の包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、開封検知シート、及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、錠剤等を収容する収容部を備える包装材(例えばプレススルーパッケージ)において、収容部の開封を検知するための技術が知られており、その一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の包装材は、収納物を収納するための収納部(収容部)を有する包装材本体部と、収納部を密閉するシートと、収納部の密閉された開口上を通過するようにシートに形成される導線と、導線と接続されるようにシートに形成される無線通信装置と、を備える。収納部毎に設けられた無線通信装置が収納部の開封の有無で相異する信号を発することで、収納物の取り出し検知の信頼性を高め、かつ、各収納部が個別に切り離されても収納部が開封されたことを検知することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/069772号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の包装材は、シートに形成される導線及び無線通信装置からの電磁波が、シートに含まれる金属材料と干渉してしまう懸念がある。電磁波干渉が生じると、無線通信装置から発する信号が収納部の開封の有無で相異しているか否かの判別が困難となり、開封検知が困難となってしまう。
【0005】
本技術は上記のような実情に基づいて完成されたものであって、開封検知の確実性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0007】
<1>包装材に貼り付けられる開封検知シートであって、前記包装材から剥離可能に設けられ、スリットを有する金属層と、前記金属層上において前記スリットの少なくとも一部を覆うように実装され、外部の機器と通信するためのICと、前記金属層に対して前記ICと反対側に配される絶縁層と、前記絶縁層に対して前記金属層と反対側に粘着されると共に、前記包装材と粘着可能に設けられる第1粘着層と、を備える開封検知シート。
【0008】
<2>前記第1粘着層に比して粘着力が大きく、前記絶縁層と前記金属層との間に配されて前記絶縁層に対して粘着される第2粘着層をさらに備える上記<1>に記載の開封検知シート。
【0009】
<3>前記第2粘着層は、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、またはゴム系の材料を含む粘着剤若しくは粘着テープである上記<2>に記載の開封検知シート。
【0010】
<4>前記第1粘着層は、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、またはゴム系の材料を含む粘着剤若しくは粘着テープである上記<1>から<3>のいずれかに記載の開封検知シート。
【0011】
<5>前記第1粘着層は、前記絶縁層に対する粘着力が0.01N/25mm以上10N/25mm未満である上記<1>から<4>のいずれかに記載の開封検知シート。
【0012】
<6>前記絶縁層の層厚は1mm以上2mm以下である上記<1>から<5>のいずれかに記載の開封検知シート。
【0013】
<7>前記第1粘着層に対して前記絶縁層と反対側に配され、前記包装材に貼り付けられる前に前記第1粘着層から剥離されて前記第1粘着層を露出させる剥離紙をさらに備える上記<1>から<6>のいずれかに記載の開封検知シート。
【0014】
<8>被収容物が収容される収容部と、前記収容部を密閉するシート状の蓋材と、前記蓋材に貼り付けられる上記<1>から<6>のいずれかに記載の開封検知シートと、を備える包装材。
【0015】
<9>前記蓋材はアルミニウム箔を有する上記<8>に記載の包装材。
【0016】
<10>前記収容部は複数設けられており、前記スリット及び前記ICは、前記収容部毎に設けられている上記<8>または<9>に記載の包装材。
【0017】
<11>前記被収容物は、前記蓋材が押し破られることによって取り出し可能とされる上記<8>から<10>のいずれかに記載の包装材。
【発明の効果】
【0018】
本技術によれば、開封検知の確実性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係る開封検知シートの断面図
図2】開封検知シートが貼り付けられたPTPの平面図
図3図2のA-A線断面図
図4図2のB-B線断面図
図5図3のIC付近を拡大した断面図
図6】金属層が剥離される様子を示すPTPの斜視図
図7】金属層が剥離される様子を示す断面図
図8】評価実験結果1
図9】実施形態2に係る開封検知シートの外形を示す平面図
図10】実施形態3に係る開封検知シートの外形を示す平面図
図11】評価実験結果2
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
実施形態1を図1から図8を参照して説明する。本実施形態では、開封検知シート30Aと、及びこれが貼り付けられたプレススルーパッケージ(PTP、包装材の一例)10について例示する。なお、評価実験結果以外の各図面の一部には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。
【0021】
開封検知シート30は、図1に示すように、各種の層が積層された複合材31と、複合材31上に実装されるIC(Integrated Circuit)40と、複合材31に対してIC40と反対側に貼り付けられている剥離紙50と、を備える。剥離紙50は、複合材31の下面(IC40と反対側の表面)を構成する弱粘着層38(第1粘着層の一例)に対して剥離可能に貼り付けられている。剥離紙50を弱粘着層38から剥がすことで、弱粘着層38が露出され、露出した弱粘着層38が、図3及び図4に示すようにPTP10(より詳しくは後述するPTP本体部11の蓋材14)に貼り付けられる。本明細書では、剥離紙50が剥がされた状態の開封検知シートを符号30Aとして記し、剥離紙50が剥がされる前の状態の開封検知シートを符号30として記す。開封検知シート30は、剥離紙50によってPTP本体部11への貼り付け前には単体(別体)として保管、流通が可能になっている。弱粘着層38については、詳しく後述する。
【0022】
PTP10は、図3及び図4に示すように、被収容物T(錠剤の医薬品等)が収容されるPTP本体部11と、PTP本体部11に貼り付けられる開封検知シート30Aと、を備える。PTP本体部11は、被収容物Tが収容される収容部12が設けられたシート状容器13と、収容部12の開口12Aを覆うように貼り付けられて収容部12を密閉する蓋材14と、を備える。PTP本体部11の平面形状は、全体として矩形状(長方形状)をなしており、開封検知シート30Aもこれに倣う平面形状をなしている。また、開封検知シート30Aの平面サイズは、PTP本体部11全体を覆うことが可能な大きさとされ、本実施形態では両者の平面サイズは実質的に同一である。
【0023】
シート状容器13には、図4に示すように、蓋材14と反対側に窪んだ(略半球状に突出した)収容部12が複数形成されている。各収容部12の平面形状は、図2に示すように、被収容物Tの形状に倣う円形状をなしている。本実施形態では例えば、収容部12がX軸方向(長辺方向)に所定の間隔で5個ずつ、Y軸方向(短辺方向)に所定の間隔で2個ずつ、計10個形成されている。蓋材14は、平坦なシート状部材であって、プレススルー可能な薄手の素材からなる。蓋材14のうち、開口12Aを覆っている部分以外は、シート状容器13に貼り合わされている。シート状容器13及び蓋材14の材質には、既知のPTP用材料が適宜用いられるものとされ、例えばシート状容器13には樹脂材料が用いられ、蓋材14にはアルミニウム箔が用いられる。
【0024】
複合材31は、図5に示すように、上側(IC40側)から順に、金属層32、上側強粘着層34A、基材層35、下側強粘着層34B(第2粘着層の一例)、絶縁層36、弱粘着層38が積層された構成をなしている。金属層32は、例えばアルミニウム層であって、アンテナを構成する配線が形成されているアンテナ配線層とされる。アンテナ配線は、金属層32の面内全体に亘って一体的に形成されていても、金属層32の面内において分割して複数形成されていても構わない。分割形成する場合には、図2の一点鎖線で示すように、収容部12の配置に対応する形で金属層32の面内を矩形状に区分し、区分された領域毎(本実施形態では例えば10分割)にアンテナ配線を形成してもよい。また例えば、短辺方向に並ぶ2つずつの収容部12毎に金属層32の面内を区分し、区分された領域毎(本実施形態では例えば5分割)にアンテナ配線を形成してもよい。
【0025】
PTP10は、金属層32(アンテナ配線層)及びIC40によって外部通信機器との無線通信を実現可能に構成されている。IC40及び金属層32内のアンテナは例えば、外部通信機器から送信された信号を受信し、それに応答する形で、外部通信機器に対して信号を返信することができるように構成されている。無線通信方式としては、RFID等の近距離無線通信技術が採用されるが、通信方式は限定されない。
【0026】
金属層32及び上側強粘着層34Aには、図2に示すように、平面に視て略J字状をなすスリット33が収容部12毎に1つずつ、複数(本実施形態では10つ)形成されている。各スリット33は、収容部12の外周縁(開口12Aの開口縁)を部分的に囲むように略J字状に延在している。各スリット33は、図4に示すように、金属層32及び上側強粘着層34Aを貫通する切れ目であり、略J字状に延在する一方の端部33Aは、金属層32の外周縁32Aに達している。これにより使用者は、図6に示すように、一端部33Aを剥離のきっかけとして、金属層32(及びこれに粘着する絶縁層36)を一端部33A側からスリット33の形状に沿って剥離することができる。なお、スリット33の平面形状は、略J字状に限らず、例えば略L字状や略I字状等、一端部33Aから収容部12の外周縁に部分的に沿う形で延在していればよい。このような形状によれば、使用者は金属層32及び絶縁層36を一端部33A側からスリット33に沿って剥離した後、収容部12の開口12Aを覆う蓋材14をプレススルー可能となる。
【0027】
基材層35は、図5に示すように、上側強粘着層34Aによって金属層32と粘着され、金属層32を支持している。基材層35によって、金属層32の形状安定性、及び製造時の加工に対する耐熱性を向上することができる。基材層35は、絶縁性を有する樹脂材料からなり、層厚は絶縁層36に比して十分小さいものとされる(例えば25μmから50μm程度)。基材層35として具体的には、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムを用いることができる。
【0028】
上側強粘着層34Aは、図5に示すように、金属層32と基材層35との間に介在して両者を強固に粘着している。また、下側強粘着層34Bは、基材層35と絶縁層36との間に介在して両者を強固に粘着している。上側強粘着層34A及び下側粘着層34Bは、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、またはゴム系の材料からなる粘着剤若しくは粘着テープとされる。上側強粘着層34A及び下側粘着層34Bは、その粘着力が弱粘着層38に比して大きく、具体的には絶縁層36に対する粘着力(JIS Z 0237(2000))が10N/25mm以上とされる。これにより、金属層32が剥離される際には、これに強固に粘着された基材層35及び絶縁層36もスリット33に沿って共に剥離可能となっている(図7)。なお、基材層35及び絶縁層36には、剥離時に容易に破断されるように、スリット33と平面に視て重なる位置にミシン目状の破断線、スリット等が形成されていてもよい。
【0029】
弱粘着層38は、図5に示すように、絶縁層36とPTP本体部11の蓋材14とを剥離可能に粘着している。開封検知シート30Aは、弱粘着層38を蓋材14のシート面に粘着することで、PTP本体部11に貼り付けられている。また弱粘着層38は、図1に示すように、開封検知シート30AがPTP本体部11に貼り付けられる前には絶縁層36と剥離紙50とを剥離可能に粘着している。弱粘着層38は、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、またはゴム系の材料からなる粘着剤若しくは粘着テープとされる。弱粘着層38の粘着力は上側強粘着層34A及び下側粘着層34Bに比して小さく、具体的には絶縁層36に対する粘着力(JIS Z 0237(2000))が0.01N/25mm以上10N/25mm未満とされる。
【0030】
絶縁層36は、図5に示すように、金属層32に対してIC40と反対側に配されており、下側強粘着層34Bによって基材層35と粘着されている。絶縁層36は、金属層32(アンテナ配線層)及びこれに実装されたIC40と、PTP本体部11の蓋材14(アルミニウム箔)との間に介在し、両者間で生じる電磁波干渉を抑制する機能を担っている。絶縁層36には既知の樹脂製シートを適宜用いることができるが、通信距離を大きくするために、比誘電率εが小さい材料からなり、層厚が所定の厚さ以上であることが好ましい。
【0031】
ここで絶縁層36の比誘電率ε及び層厚dと、通信距離との関係について説明する。PTP10の通信距離は、そのインピーダンスZ10が大きいほど大きくなり、インピーダンスZ10は、その静電容量C及び無線通信の周波数fを用いて
10=1/(2πf×C) (式1)
と表される。PTP10の静電容量Cは、絶縁層36を挟んで対向する平板導体(金属層32及び蓋材14)によるものと近似することができ、次式で表される。
C=S×ε×ε0/d (式2)
S:開封検知シート30Aの面積
ε:絶縁層36の比誘電率
ε0:真空誘電率
d:絶縁層36の層厚
【0032】
PTP10のインピーダンスZ10は、同一の周波数fによって通信する場合、(式1)及び(式2)から、絶縁層36の比誘電率εが小さいほど大きくなり、層厚dが大きいほど大きくなる。これによりPTP10の通信距離は、絶縁層36の比誘電率εが小さいほど大きくなり、層厚dが大きいほど大きくなるといえる。絶縁層36として、例えば発泡倍率2倍の発泡PET(ポリエチレンテレフタラート)シートを用いると、比誘電率εを1.58程度に小さくできる。絶縁層36としてはその他、比誘電率εが1.58程度以下のポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリイミド等の樹脂製シートを適宜用いることができる。絶縁層36の層厚dは、後述する評価実験結果1において説明するように、通信距離の点からは1mm以上が好ましいが、絶縁層36が厚くなり過ぎると、使用者が金属層32及び絶縁層36をスリット33に沿って剥離する際に、剥離しにくくなってしまう。通信距離及び剥離性の両方を考慮すると、絶縁層36の層厚dは1mm以上2mm以下が好ましい。
【0033】
IC40は、図2に示すように、直方体状のICチップであり、スリット33毎(収容部12毎)に1つずつ、複数(本実施形態では10つ)実装されている。IC40は、金属層32において、スリット33の一端部33A寄りの部分を覆うように配されている。各IC40は、図5に示すように、その端子41が金属層32に形成されたアンテナを構成する配線と接続されている。一方の端子(正電極が印加される+端子)41Aは、他方の端子(負電極が印加される-端子)41Bと、スリット33を挟んで対向している。
【0034】
金属層32及び絶縁層36がスリット33に沿って剥離されると、図7に示すように、金属層32のうち+端子41Aが実装されている部分はPTP10側から離れ、-端子41Bは引っ張られて金属層32から外れることとなる。その結果、IC40と金属層32内のアンテナ配線とが断線して非導通状態になり、IC40は外部通信機器と通信できないようになる。外部通信機器では、その送信信号に対するIC40からの返信(交信)信号が途絶えるようになる。
【0035】
金属層32及び絶縁層36が剥離されると、剥離された金属層32及び絶縁層36に覆われていた収容部12を開封可能となる。より詳しくは、金属層32及び絶縁層36の剥離後に、使用者によって収容部12内の被収容物Tが蓋材14側へ押し込まれて蓋材14が押し破られると、PTP本体部11が開封される。従って、PTP10は、まず金属層32及び絶縁層36が剥離されて、その後に蓋材14が押し破られてPTP本体部11が開封されるピール・アンド・プッシュ型の包装材である。
【0036】
上記した構成によれば、外部通信機器は送信信号に対するIC40からの返信信号が受信できる場合には、そのIC40が配された収容部12が未開封であると判別できる。一方で、返信信号が途絶え受信できない場合には、当該収容部12が開封されたものと判別できる。外部通信機器は、開封の前後で所定の信号を受信するか否かで開封の有無を判別する仕組みであり、開封の前後で異なる信号を受信して開封の有無を判別する仕組みではない。従って、IC40及び金属層32内のアンテナによって送信された信号(電磁波)が、例え電磁波干渉等によってS/N比が低下した場合でも、開封の有無を判別しやすい。また、開封検知シート30Aは、絶縁層36によってPTP本体部11の蓋材14(アルミニウム箔)との間で生じる電磁波干渉が抑制されている。このようにPTP10は、絶縁層36によってPTP本体部11との電磁波干渉が抑制されていることに加えて、例え電磁波干渉等によってS/N比が低下した場合であっても開封の有無を判別しやすいように構成されており、開封検知の確実性が向上されている。
【0037】
<評価実験1>
上記のようなPTP10の通信性能を評価するため、評価実験1を行った。評価実験1では、PTP10を模した簡易構成の評価用サンプル(実施例1から6)について通信距離を評価した。
【0038】
<条件>
・開封検知シート30Aの平面サイズ:35mm×92mm
・金属層32:銅箔またはアルミニウム箔
・上側強粘着層34A及び下側強粘着層34B:アクリル系粘着剤
・絶縁層36:発泡PETシート(比誘電率ε=1.58程度)
・絶縁層36の層厚d:1mmまたは2mm
・PTP本体部11及び弱粘着層38:アルミニウムシール
・IC40:RFID用IC
・IC40の実装数:実施例1から4は、図2に示すように10個を実装、実施例5から6は、図2の長辺方向の両左右端部に位置する収容部12に対応する形で、4個のIC40A(位置1),IC40B(位置2),IC40C(位置9)、IC40D(位置10)を実装
・測定機器:RFIDテスター(Voyantic社製「Tagformance lite」)、測定用アンテナは直線偏波アンテナ
・測定環境:電波暗箱内において測定用アンテナとの距離測定45cmにて交信(測定距離下限=0.45m)
・測定内容:識別コードとしてEPCコードを指定し、コマンドQueryで測定
・通信距離の換算方法:応答(返信)があった最小出力に基づき、EIRP(EquivalentIsotropically Radiated Power、等価等方輻射電力)が3.28W出力時での交信距離(通信距離)へ換算
【0039】
<通信距離の評価方法>
金属層32に形成されたアンテナ配線が、面内に分割して複数形成されている評価用サンプル(実施例1から2、5)と、面内全体に亘って一体的に形成されている評価用サンプル(実施例3から4、6)について、それぞれ評価した。実施例5の分割数は、収容部12の数(10つ)に対応する形で10分割とし、実施例1及び2では収容部12の数(10つ)を2つずつ(図2の短辺方向に並ぶ2つずつ)に分割する形で5分割とした。各実施例について、IC40A(位置1)、IC40B(位置2)、IC40C(位置9)、IC40D(位置10)との通信距離をそれぞれ評価した。通信距離の評価はAからDの4段階評価とし、通信距離の範囲が5m以上の場合をA(大変良い)、1m以上5m未満の場合をB(良い)、0.45m以上1m未満の場合をC(可)、0.45m未満の場合をD(不可)とした。
【0040】
<通信距離の評価結果>
評価実験1の実験結果について説明する。通信距離は、図6に示すように、IC40が実装される位置(IC40A(位置1)、IC40B(位置2)、IC40C(位置9)、IC40D(位置10))によってバラつきはあるものの、実施例1から実施例6の全てにおいてC評価以上が得られたことが確認された。最も評価が低かった実施例1でも、位置1,2における通信距離は0.8mであり使用に適していることが確認できた。また、実施例1と2、実施例3と4をそれぞれ比較すると、絶縁層36の膜厚は、1mmの実施例(実施例1,3)より2mmの実施例(実施例2,4)の方が、通信距離が大きいことが確認された。これは既述した(式1)及び(式2)で説明されるメカニズムと一致している。このため、仮に実施例1において絶縁層36の膜厚を1mm未満にしたものを比較例1とすれば、比較例1の位置1,2における通信距離は0.8mより小さくなり、D評価になると推測される。従って、通信性能の点からは、絶縁層36の膜厚は1mm以上が好ましい。
【0041】
また、実施例1と3、実施例2と4、実施例5と6とをそれぞれ比較すると、アンテナ配線は分割型(実施例1,2,5)より一体型の実施例(実施例3,4,6)の方が、通信距離が大きいことが確認された。一体型の実施例は、アンテナ配線の寸法が大きくとれることから通信距離が大きくなると考えられる。一方で、一体型の実施例では、位置1,2,9,10のいずれかにおいて金属層32がスリット33に沿って剥離され、その位置に配されたIC40A,40B,40C,40Dのいずれかが外れると、その影響が他の位置にも及びやすいことが分かった。また、一体型の実施例では、隣接位置(例えば位置1と2、位置9と10)間の影響が大きく、周波数調整が困難であることが分かった。このため、通信安定性の点では、分割型の実施例の方が優れていることが確認された。
【0042】
<実施形態2、3>
実施形態2に係るPTP110、及び実施形態3に係るPTP210について図9から図11を参照して説明する。PTP110,210は、図9及び図10にそれぞれ示すように、開封検知シート130A,230Aの平面サイズが、PTP本体部11に比べて大きい点が実施形態1と異なる。実施形態2,3において、実施形態1と同様の構成、作用及び効果については重複する説明は省略する。また、図9及び図10では、PTP本体部11に対する開封検知シート130A,230Aの外形を明示するために、これを構成する部材(スリット33、IC40等)の図示は省略するが、基本的な構造は実施形態1と同じである。
【0043】
実施形態2の開封検知シート130Aは、図9に示すように、平面サイズが35×102mmであり、PTP本体部11に比して長辺方向の寸法が10mmだけ大きい。開封検知シート130Aは、実施形態1の開封検知シート30Aの長辺方向における右端部を10mmだけ長辺方向(+Y軸方向)に延出したものとなっている。すなわち、開封検知シート130Aを構成する各層は、実施形態1に比して長辺方向の外形寸法が10mmだけ大きく形成されている。開封検知シート130Aのそれ以外の構成(例えばスリット33の数や間隔)は、実施形態1と同じである。
【0044】
実施形態3の開封検知シート230Aは、図10に示すように、平面サイズが45×90mmであり、PTP本体部11に比して短辺方向の寸法が10mmだけ大きい。開封検知シート230Aは、実施形態1の開封検知シート30Aの短辺方向における上下両端部を5mmずつ短辺方向(+X軸方向、-X軸方向)に延出したものとなっている。すなわち、開封検知シート230Aを構成する各層は、実施形態1に比して短辺方向の外形寸法が10mmだけ大きく形成されている。開封検知シート230Aのそれ以外の構成(例えばスリット33の数や間隔)は、実施形態1と同じである。
【0045】
開封検知シート130A,230Aの平面サイズを大きくすることで、後述する評価実験結果2に示すように、通信距離を増大できるようになる。これは既述した(式1)及び(式2)で説明されるメカニズムにおいて面積S(少なくとも金属層32の面積)が大きくなる効果、及び金属層32内のアンテナ配線の寸法が大きくとりやすくなる効果によるものと考えられる。
【0046】
<評価実験2>
上記のようなPTP110,210の通信性能を評価するため、評価実験2を行った。評価実験2では、PTP110,210を模した簡易構成の評価用サンプル(実施例7から実施例10)について、通信距離を評価した。
【0047】
<条件>
・開封検知シート130Aの平面サイズ:35mm×102mm
・開封検知シート230Aの平面サイズ:45mm×92mm
・金属層32:平面サイズ以外は評価実験1と同じ
・上側強粘着層34A及び下側強粘着層34B:平面サイズ以外は評価実験1と同じ
・絶縁層36:平面サイズ以外は評価実験1と同じ
・絶縁層36の層厚d:2mm
・PTP本体部11及び弱粘着層38:評価実験1と同じ
・IC40:評価実験1と同じ
・IC40の実装数:図2の長辺方向の両左右端部に位置する収容部12に対応する形で、4個のIC40A(位置1),IC40B(位置2),IC40C(位置9)、IC40D(位置10)を実装
・測定機器:評価実験1と同じ
・測定環境:評価実験1と同じ
・測定内容:評価実験1と同じ
・通信距離の換算方法:評価実験1と同じ
【0048】
<通信距離の評価方法>
金属層32に形成されたアンテナ配線が、面内に分割して複数形成されている評価用サンプル(実施例7,9)と、面内全体に亘って一体的に形成されている評価用サンプル(実施例8,10)について、それぞれ評価した。実施例7,9の分割数は、収容部12の数(10つ)に対応する形で10分割とした。各実施例について、評価実験1と同様に、IC40A(位置1)、IC40B(位置2)、IC40C(位置9)、IC40D(位置10)との通信距離をそれぞれ評価した。通信距離の評価は、評価実験1と同様に、AからDの4段階評価とした。
【0049】
<通信距離の評価結果>
評価実験2の実験結果について説明する。通信距離は、図11に示すように、IC40が配される位置(位置1,2,9,10)によってバラつきはあるものの、実施例7から実施例10の全てにおいてB評価以上が得られ、使用に十分適していることが確認できた。また、実施例7と8、実施例9と10をそれぞれ比較すると、評価実験結果1と同様に、アンテナ配線は分割型(実施例7、9)より一体型の実施例(実施例8,10)の方が、通信距離が大きいことが確認された。一体型の実施例は、アンテナ配線の寸法が大きくとれることから通信距離が大きくなると考えられる。一方で、一体型の実施例では、位置1,2,9,10のいずれかにおいて金属層132,232がスリット33に沿って剥離され、その位置に配されたIC40A,B,C,Dのいずれかが外れると、その影響が他の位置にも及びやすいことが分かった。また、一体型の実施例では、近接位置(例えば位置1と2、位置9と10)間の影響が大きく、周波数調整が困難であることが分かった。このため、評価実験結果1と同様に、通信安定性の点では、分割型の実施例の方が優れていることが確認された。
【0050】
また、実施例7,9を評価実験結果1における実施例5と比較すると、実施形態2(実施例7)及び実施形態3(実施例9)では、実施例5より通信距離が増大していることが確認された。さらに、実施例8,10を評価実験結果1における実施例6と比較すると、実施形態2(実施例8)及び実施形態3(実施例10)は、実施例6より通信距離が増大していることが確認された。これにより、開封検知シート130A,230Aの平面サイズを大きくすることで、通信距離を増大できることが確認された。
【0051】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
(1)開封検知シート130A,230Aは、各層の平面サイズが全てPTP本体部11より大きくなくても構わない。評価実験結果2で実証された通信距離を増大できる効果は、少なくとも金属層32の平面サイズがPTP本体部11より大きい時に得られるといえる。
【0053】
(2)図示におけるPTP10,110,210の形状、収容部12の数や間隔等は一例であり、適宜変更可能である。また、収容部12毎に個別に切り離せるように構成されていても構わない。
【符号の説明】
【0054】
10,110,210…PTP(包装材)、11…PTP本体部、12…収容部、14…蓋材、30,30A,130A,230A…開封検知シート、32…金属層、33…スリット、34B…下側強粘着層(第2粘着層)、36…絶縁層、38…弱粘着層(第1粘着層)、40,40A,40B,40C,40D…IC、50…剥離紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11