(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187579
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】汚染検査システム、汚染検査方法及び汚染検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01T 1/167 20060101AFI20221213BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20221213BHJP
G01T 1/00 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
G01T1/167 E
B25J13/08 A
G01T1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095638
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】518140494
【氏名又は名称】ふたばロボット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】坂井 良治
【テーマコード(参考)】
2G188
3C707
【Fターム(参考)】
2G188AA07
2G188AA15
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188DD23
2G188DD24
2G188EE25
2G188EE37
2G188EE39
3C707BS12
3C707JS03
3C707KS07
3C707KT03
3C707KT06
3C707LV19
3C707NS02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】検査対象の形状が不定の場合でも、検査精度を向上できる汚染検査の技術を提供すること
【解決手段】汚染検査システム100であって、計測手段、検査手段及び、搬送手段を備え、前記検査手段は、ワークWの放射線量を測定する測定ユニットを3次元的に移動自在なエンドエフェクタとして保持するロボット41を有しており、前記計測手段は、前記搬送手段により計測領域に搬送された前記ワークに対して、3次元計測処理を行い、ワーク形状を示す情報として、ワーク座標系における座標を含む形状情報を取得し、前記検査手段は、前記搬送手段により検査領域に搬送された前記ワークに対して、前記形状情報を前記検査領域の基準点から検査座標系に変換し、前記検査領域において前記ロボットが前記ワークと接触しない許容範囲を決定して、駆動信号を前記ロボットに送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染検査システムであって、
前記汚染検査システムは、計測手段、検査手段及び、搬送手段を備え、
前記検査手段は、ワークの放射線量を測定する測定ユニットを3次元的に移動自在なエンドエフェクタとして保持するロボットを有しており、
前記搬送手段は、前記ワークを搬送し、
前記計測手段は、前記搬送手段により計測領域に搬送された前記ワークに対して、3次元計測処理を行い、ワーク形状を示す情報として、ワーク座標系における座標を含む形状情報を取得し、
前記検査手段は、前記搬送手段により検査領域に搬送された前記ワークに対して、前記形状情報を前記検査領域の基準点から検査座標系に変換し、前記検査領域において前記ロボットが前記ワークと接触しない許容範囲を決定して、駆動信号を前記ロボットに送信する、
汚染検査システム。
【請求項2】
前記ロボットは1以上の関節部を備えたロボットアームであり、
前記検査手段は、前記駆動信号として、少なくとも前記関節部の変位角を決定し、前記ロボットアームに送信する、
請求項1に記載の汚染検査システム。
【請求項3】
前記計測手段は、側面方向から前記ワークを計測するセンサ及び、天頂方向から前記ワークを計測するセンサを備え、
少なくとも前記側面方向から計測するセンサの計測結果に基づいて前記3次元計測処理を実行し、
前記天頂方向から計測するセンサの計測結果に基づいて、基準方位に対する前記ワークの回転量を計測処理し、
前記検査手段は、前記形状情報及び、回転量に基づいて、駆動信号を決定する、
請求項1又は請求項2に記載の汚染検査システム。
【請求項4】
前記検査手段は、前記回転量に基づいてワークを検査する為の複数の検査方向を決定し、前記検査方向別に駆動信号を決定する、
請求項3に記載の汚染検査システム。
【請求項5】
前記ロボットは、第1のロボット及び前記第1のロボットよりも高解像度に放射線量を計測可能な第2のロボットを有し、前記第2のロボットは、複数の測定器を並べて配置した測定ユニットを備え、前記測定器の各々は同一方向に伸縮自在であると共に、伸長方向での近接検出手段を備えており、
前記第2のロボットは、前記駆動信号に基づいて前記測定ユニットを前記ワークに接近させる制御及び、前記近接検出手段での検出結果に基づいて、それぞれの前記測定器を伸長させる制御によって、放射線量の測定位置を決定する、
請求項1~4の何れかに記載の汚染検査システム。
【請求項6】
前記近接検出手段は、ワークに対して非接触での測距を行う近接センサ及び、ワークへの接触を検知する触覚スイッチを有する、
請求項5に記載の汚染検査システム。
【請求項7】
前記検査領域は、粗検査領域及び詳細検査領域を有し、
前記計測手段は、粗検査領域に搬送されたワークに対して、前記第1のロボットによる計測結果及び第1の閾値を用いて、詳細検査の要否を判定し、
要判定の場合、前記搬送手段は前記ワークを詳細検査領域に搬送し、否判定の場合、前記搬送手段は前記ワークを検査完了領域に搬送する、
請求項5又は請求項6に記載の汚染検査システム。
【請求項8】
前記検査手段は、更に、前記ワークの底面を検査する底面測定ユニットを備え、
前記搬送手段は、前記底面測定ユニットが配置されたコンベアを有し、
前記検査領域は、前記ロボットのみによる検査を実施する検査領域及び、前記ロボット及び前記底面測定ユニットにより検査する検査領域のそれぞれを有する、
請求項1~7の何れかに記載の汚染検査システム。
【請求項9】
制御部が実行する汚染検査プログラムであって、
前記制御部は、搬送手段により計測領域に搬送された前記ワークに対して、計測手段が3次元計測処理を行い、ワーク形状を示す情報として取得した、ワーク座標系における座標を含む形状情報を受け取り、
前記搬送手段により検査領域に搬送された前記ワークに対して、前記形状情報を前記検査領域の基準点から検査座標系に変換し、前記検査領域において、ワークの放射線量を測定する測定ユニットを3次元的に移動自在なエンドエフェクタとして保持するロボットが前記ワークと接触しない許容範囲を決定して、前記ロボットを動作制御する、
汚染検査プログラム。
【請求項10】
汚染検査システムによる汚染検査方法であって、
前記汚染検査システムは、計測手段、検査手段及び、搬送手段を備え、
前記検査手段は、ワークの放射線量を測定する測定ユニットを3次元的に移動自在なエンドエフェクタとして保持するロボットを有しており、
前記搬送手段が、前記ワークを搬送する工程と、
前記計測手段が、前記搬送手段により計測領域に搬送された前記ワークに対して、3次元計測処理を行い、ワーク形状を示す情報として、ワーク座標系における座標を含む形状情報を取得する工程と、
前記検査手段が、前記搬送手段により検査領域に搬送された前記ワークに対して、前記形状情報を前記検査領域の基準点から検査座標系に変換し、前記検査領域において前記ロボットが前記ワークと接触しない許容範囲を決定して、駆動信号を前記ロボットに送信する工程と、を有する、
汚染検査方法。
【請求項11】
搬送手段、計測手段、ロボット及び、測定ユニットを備えた前記汚染検査システムが、計測工程及び、検査工程を実行する汚染検査方法であって、
前記測定ユニットは、ワークの放射線量を測定する測定器を備え、前記ロボットは、前記測定ユニットを3次元的に移動自在なエンドエフェクタとして保持しており、
前記計測工程は、前記搬送手段により計測領域に搬送されたワークに対して、1又は複数の計測手段が3次元計測処理を行う工程と、
前記計測手段が、3次元計測処理結果からワーク形状を示す座標を含む形状情報を取得する工程を有し、
前記検査工程は、前記形状情報に基づいて、検査領域において前記ロボットが前記ワークと接触しない許容範囲を決定し、前記ロボットの駆動信号を生成する工程と、
前記ロボットに、前記駆動信号を送信する工程と、
前記前記ロボットが、前記搬送手段により検査領域に搬送された前記ワークに対して、前記駆動信号に基づいて前記測定器を近接させる工程と、
前記測定器が、前記ワークに対して放射線量の計測を行う工程を有する、
汚染検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染検査システム、汚染検査方法及び汚染検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型トラックなどの車両が(放射線)管理区域から管理区域外に出る場合、放射性物質によって車両が汚染されていないかを確認する検査(以下、車両の汚染検査ともいう)が行われている。車両の汚染検査は、ハンディタイプの放射線検知器を用いて手作業で行うことが主流である。一方、車両の汚染検査の検査時間の短縮、検査精度の向上が求められている。
【0003】
特許文献1には、車両の汚染検査を行う汚染検査システムの技術が開示されている。この汚染検査システムは、放射線量を検知する検知器と、三次元的に移動自在なアームを有し、アームの先端に検知器が固定されたロボットと、検知器が車両の形状に追従して移動するように既定された動作情報であって、少なくとも車両の識別情報と車両の形状に関する形状情報とを含む車両の属性情報に応じて設定された動作情報に基づいて、ロボットを制御する制御装置とを備え、検知器は、車両の外面の放射線量を検知する外面用検知器と、外面用検知器の近傍に設けられ、車両の細部の放射線量を検知する細部用検知器と、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射線量は、放射性物質からの距離に応じて変化する。そのため、対象表面の汚染検査精度を向上するには、検査対象の形状に沿って一定の距離から放射線量の検知を行う必要がある。
【0006】
特許文献1の技術では、既定の動作情報に基づいて、アーム先端に検知器が固定されたロボットの制御を行っている。しかし、検査対象が資機材であって、その点数が膨大になる場合や、建築廃材等の廃棄物であって、そもそも形状が不定の場合、動作情報を事前に既定しておくことは困難である。
【0007】
上記事情を鑑みて、本発明は、検査対象の形状が不定の場合でも、検査精度を向上できる汚染検査の技術を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記発明を解決するために、本発明は、汚染検査システムであって、
前記汚染検査システムは、計測手段、検査手段及び、搬送手段を備え、
前記検査手段は、ワークの放射線量を測定する測定ユニットを3次元的に移動自在なエンドエフェクタとして保持するロボットを有しており、
前記搬送手段は、前記ワークを搬送し、
前記計測手段は、前記搬送手段により計測領域に搬送された前記ワークに対して、3次元計測処理を行い、ワーク形状を示す情報として、ワーク座標系における座標を含む形状情報を取得し、
前記検査手段は、前記搬送手段により検査領域に搬送された前記ワークに対して、前記形状情報を前記検査領域の基準点から検査座標系に変換し、前記検査領域において前記ロボットが前記ワークと接触しない許容範囲を決定して、駆動信号を前記ロボットに送信する。
【0009】
また、本発明は、制御部が実行する汚染検査プログラムであって、
前記制御部は、搬送手段により計測領域に搬送された前記ワークに対して、計測手段が3次元計測処理を行い、ワーク形状を示す情報として取得した、ワーク座標系における座標を含む形状情報を受け取り、
前記搬送手段により検査領域に搬送された前記ワークに対して、前記形状情報を前記検査領域の基準点から検査座標系に変換し、前記検査領域において、ワークの放射線量を測定する測定ユニットを3次元的に移動自在なエンドエフェクタとして保持するロボットが前記ワークと接触しない許容範囲を決定して、前記ロボットを動作制御する。
【0010】
また、本発明は、汚染検査システムによる汚染検査方法であって、
前記汚染検査システムは、計測手段、検査手段及び、搬送手段を備え、
前記検査手段は、ワークの放射線量を測定する測定ユニットを3次元的に移動自在なエンドエフェクタとして保持するロボットを有しており、
前記搬送手段が、前記ワークを搬送する工程と、
前記計測手段が、前記搬送手段により計測領域に搬送された前記ワークに対して、3次元計測処理を行い、ワーク形状を示す情報として、ワーク座標系における座標を含む形状情報を取得する工程と、
前記検査手段が、前記搬送手段により検査領域に搬送された前記ワークに対して、前記形状情報を前記検査領域の基準点から検査座標系に変換し、前記検査領域において前記ロボットが前記ワークと接触しない許容範囲を決定して、駆動信号を前記ロボットに送信する工程と、を有する。
【0011】
また、本発明は、搬送手段、計測手段、ロボット及び、測定ユニットを備えた前記汚染検査システムが、計測工程及び、検査工程を実行する汚染検査方法であって、
前記測定ユニットは、ワークの放射線量を測定する測定器を備え、前記ロボットは、前記測定ユニットを3次元的に移動自在なエンドエフェクタとして保持しており、
前記計測工程は、前記搬送手段により計測領域に搬送されたワークに対して、1又は複数の計測手段が3次元計測処理を行う工程と、
前記計測手段が、3次元計測処理結果からワーク形状を示す座標を含む形状情報を取得する工程を有し、
前記検査工程は、前記形状情報に基づいて、検査領域において前記ロボットが前記ワークと接触しない許容範囲を決定し、前記ロボットの駆動信号を生成する工程と、
前記ロボットに、前記駆動信号を送信する工程と、
前記前記ロボットが、前記搬送手段により検査領域に搬送された前記ワークに対して、前記駆動信号に基づいて前記測定器を近接させる工程と、
前記測定器が、前記ワークに対して放射線量の計測を行う工程を有する。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記ロボットは1以上の関節部を備えたロボットアームであり、
前記検査手段は、前記駆動信号として、少なくとも前記関節部の変位角を決定し、前記ロボットアームに送信する。
【0013】
このような構成とすることで、ワーク形状を示す形状情報に基づいて汚染検査を行うことができ、検査ライン上を搬送可能なワークであれば、ワーク形状に関する情報を事前に格納することなく、検査を実施することが可能となる。そのため、従来、手作業で行っていた汚染検査を自動化でき、作業員の安全性も向上することができると共に、作業員毎の検査品質のばらつきを低減できる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記計測手段は、側面方向から前記ワークを計測するセンサ及び、天頂方向から前記ワークを計測するセンサを備え、
少なくとも前記側面方向から計測するセンサの計測結果に基づいて前記3次元計測処理を実行し、
前記天頂方向から計測するセンサの計測結果に基づいて、基準方位に対する前記ワークの回転量を計測処理し、
前記検査手段は、前記形状情報及び、回転量に基づいて、駆動信号を決定する。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記検査手段は、前記回転量に基づいてワークを検査する為の複数の検査方向を決定し、前記検査方向別に駆動信号を決定する。
【0016】
このような構成とすることで、ワークに対して測定ユニットをより近接させることができ、より正確な放射線量を測定することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記ロボットは、第1のロボット及び前記第1のロボットよりも高解像度に放射線量を計測可能な第2のロボットを有し、前記第2のロボットは、複数の測定器を並べて配置した測定ユニットを備え、前記測定器の各々は同一方向に伸縮自在であると共に、伸長方向での近接検出手段を備えており、
前記第2のロボットは、前記駆動信号に基づいて前記測定ユニットを前記ワークに接近させる制御及び、前記近接検出手段での検出結果に基づいて、それぞれの前記測定器を伸長させる制御によって、放射線量の測定位置を決定する。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記近接検出手段は、ワークに対して非接触での測距を行う近接センサ及び、ワークへの接触を検知する触覚スイッチを有する。
【0019】
このような構成とすることで、それぞれの測定器を伸長させる制御によって、ワーク形状に関する情報を事前に格納することなく、より詳細に、ワークの立体形状に沿って放射線量の測定を行うことが可能となる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記検査領域は、粗検査領域及び詳細検査領域を有し、
前記計測手段は、粗検査領域に搬送されたワークに対して、前記第1のロボットによる計測結果及び第1の閾値を用いて、詳細検査の要否を判定し、
要判定の場合、前記搬送手段は前記ワークを詳細検査領域に搬送し、否判定の場合、前記搬送手段は前記ワークを検査完了領域に搬送する。
【0021】
このような構成とすることで、2工程の検査により汚染検査を実施することで、検査を効率的に実施し、検査時間を短縮することができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記検査手段は、更に、前記ワークの底面を検査する底面測定ユニットを備え、
前記搬送手段は、前記底面測定ユニットが配置されたコンベアを有し、
前記検査領域は、前記ロボットのみによる検査を実施する検査領域及び、前記ロボット及び前記底面測定ユニットにより検査する検査領域のそれぞれを有する。
【0023】
このような構成とすることで、検査を効率的に実施し、検査時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、検査対象の形状が不定の場合でも、検査精度を向上できる汚染検査の技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】一実施形態の検査ライン上の領域を示す平面図。
【
図3】一実施形態の汚染検査システムのブロック図。
【
図8】一実施形態の詳細検査用の測定ユニットの斜視図。
【
図10】一実施形態のシステムにおける汚染検査方法のフローチャート。
【
図11】一実施形態のシステムにおける粗検査の処理フローチャート。
【
図12】一実施形態のシステムにおける詳細検査の処理フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。図面には好ましい実施形態が示されている。しかし、多くの異なる形態で実施されることが可能であり、本明細書に記載される実施形態に限定されない。
【0027】
例えば、本実施形態では汚染検査システムの構成、動作等について説明するが、実行される方法、装置、コンピュータプログラム等によっても、同様の作用効果を奏することができる。本実施形態におけるプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一過性の記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよい。
【0028】
<汚染検査システムのシステム構成>
図1は、実施形態に係るシステムの概要を示す図である。
図2は、実施形態に係る検査ライン上の領域を示す平面図である。
図3は、実施形態に係る汚染検査システムのブロック図である。また、
図4は、ハードウェア構成図である。これらを適宜参照しながら、汚染検査システム100のシステム構成について説明する。
【0029】
図2に示すように、実施形態に係る汚染検査システム100は、搬送手段2、計測手段3及び、検査手段4を備える。より詳細には、汚染検査システム100は、管理装置10、搬送手段2としての搬送制御装置20及びコンベア21、計測手段3としての計測制御装置30、計測センサ31及び32並びに、検査手段4としてのロボット制御装置40、ロボット41、測定ユニット制御装置50、測定ユニット51及び52を備える。
【0030】
本実施形態に係る管理装置10は、搬送手段2、計測手段3及び、検査手段4と、ネットワークNWを介して通信可能に構成される。ネットワークNWは、各装置同士が、有線及び/又は無線で接続されることで構成されたネットワークであり、管理装置10からの各装置に対する操作指示及び検査結果等の取得並びに、装置間での同期した処理実行等を可能とする。
【0031】
図3に示すように、検査対象であるワークWは投入領域INよりコンベア21に投入され、各領域に搬送される。計測領域MAには計測センサ31及び32が配置され、第1検査領域CA1(粗検査領域:第1領域CA11、第2領域CA12)及び、第2検査領域CA2(詳細検査領域:第1領域CA21、第2領域CA22)には、ロボット41及び、測定ユニット51が配置される。また、コンベア21には、ワークWの搬送先を切り替える第1切替領域TP1及び第2切替領域TP2が設けられ、ワークWが第1検査完了領域FA1、第2検査完了領域FA2又は、第3検査完了領域FA3に搬送される。
【0032】
図4(a)は、端末装置70(管理装置10)のハードウェア構成の一例を示す図である。端末装置70は、ハードウェア構成として、制御部71と、記憶部72と、通信部73と、入力・操作部74と、出力部75と、を備える。
【0033】
端末装置70の制御部71は、CPU等の1以上のプロセッサを含み、端末装置70の動作処理全体を制御する。端末装置70の記憶部72は、HDD、ROM、RAM等であって、管理プログラム及び、制御部71がプログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶する。端末装置70の通信部73は、ネットワークNWや動作制御の対象との通信を制御する通信モジュール(例えば、ネットワークカード)である。端末装置70の入力・操作部74は、タッチパネル、マウス及びキーボード等であって、利用者による操作要求を制御部71に入力する。端末装置70の出力部75は、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、CRT(Cathode Ray Tube)、エレクトロルミネッセンスパネル等であって、制御部71の表示処理結果等を表示する。
【0034】
搬送制御装置20はコンベア21と、計測制御装置30は計測センサ31及び32と、ロボット制御装置40はロボット41と、測定ユニット制御装置50は測定ユニット51及び52と、それぞれ有線又は無線で接続され、制御等が可能に構成される。
【0035】
図4(b)は、制御装置90(管理装置10)のハードウェア構成の一例を示す図である。制御装置90は、ハードウェア構成として、制御部91と、記憶部92と、通信部93と、を備える。
【0036】
制御装置90の制御部91は、CPU等の1以上のプロセッサを含み、制御装置90の動作処理全体を制御する。制御装置90の記憶部92は、HDD、ROM、RAM等であって、制御プログラム及び、制御部91がプログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶する。制御装置90の通信部93は、ネットワークNWや動作制御の対象との通信を制御する。なお、汚染検査システム100を構成した一部又は全部の制御装置90が、端末装置70の入力部や出力部に相当する要素を備えていてもよい。
【0037】
例えば、搬送制御装置20は、例えばシーケンサ、PLC(Programmable Logic Controller)等であり、ロボット制御装置40及び測定ユニット制御装置50は、マシンコントローラ(ロボットコントローラ)である。これらは、汎用PCや産業用PC上で制御アプリケーションを実行し、ソフトウェア的に実装されてもよい。
【0038】
本実施形態では、搬送制御装置20がコンベア21の動作制御を行い、計測制御装置30が計測センサ31及び32の動作制御及び計測結果の取得を行い、ロボット制御装置40がロボット41の動作制御を行い、測定ユニット制御装置50が測定ユニット51及び52の動作制御及び計測結果の取得を行い、管理装置10が計測結果の表示処理を行うものとして説明する。例えば、コンベア、計測センサ、ロボット及び測定ユニットのうちの複数又は全部を、1の装置が制御する構成としてもよい。例えば、統合コントローラ(例えば、ロボット及び制御機器の統合コントローラ)がこれらの複数又は全てを制御するように構成してもよいし、汎用PC又は産業用PCにおいてソフトウェアロボットコントローラやソフトウェアPLCを実行し、これらの複数又は全てを制御等する構成としてしてもよい。
【0039】
<管理装置10>
管理装置10は、汚染検査システム100の少なくとも一部装置と接続され、検査結果を表示処理する。本実施形態では、管理装置10は、搬送制御装置20、計測制御装置30、ロボット制御装置40及び、測定ユニット制御装置50と接続され、これらに対して、装置の起動や動作開始・停止等を操作可能に構成されと共に、測定ユニット制御装置50が格納した検査結果を表示処理する。なお、例えば、測定ユニットを制御する測定ユニット制御装置50が、管理装置10を兼ねるような構成としてもよい。
【0040】
<ワークW>
ワークWは、汚染検査の対象物を指し、具体的には、工具や建築資材といった資機材、廃棄物等である。実施形態に係る汚染検査システム100では、ワークWは、パレットPに載置され、コンベア21によって搬送される。
【0041】
<搬送手段2>
搬送手段2は、コンベア21及び、コンベア21の動作制御を行う搬送制御装置20を備える。搬送制御装置20は、コンベア21を制御することで、検査対象であるワークWを検査のステップに応じて各領域に移動させる。
【0042】
実施形態におけるコンベア21は、更に、ワークWを所望の領域で停止させるための停止手段22(実施形態では、22A、22B、22C、22D及び、22E)及び、ワークWの搬送先を切り替える為の切替手段23(実施形態では、23A及び23B)を備える。
【0043】
停止手段22は、所定の領域にワークWを停止させる手段であり、本実施形態では、コンベア21を移動するワークWあるいはパレットPを支持してコンベア21による進行を阻害するストッパやアームである。これらは、計測領域MA、第1検査領域CA1の第1領域CA11及び第2領域CA12並びに、第2検査領域CA2の第1領域CA21及び第2領域CA22に設けられる。本実施形態における停止手段22Aは、計測領域MAにおいてワークWを停止させる。停止手段22Bは、第1検査領域CA1中の第1領域CA11においてワークWを停止させ、停止手段22Cは、第1検査領域CA1中の第2領域CA12においてワークWを停止させる。停止手段22Dは、第2検査領域CA2中の第1領域CA21においてワークWを停止させ、停止手段22Eは、第2検査領域CA2中の第2領域CA22においてワークWを停止させる。
【0044】
停止手段22が、例えば、コンベア21の動作制御を行う制御装置(搬送制御装置20)に組み込まれてもよく、コンベア21の駆動を制御することでワークWを所望の領域に停止させてもよい。
【0045】
切替手段23は、ワークWの搬送先を切り替える手段であり、本実施形態では、ワークWやパレットPと接触し、コンベア21上での進行方向を切り替える分岐装置やアーム、プッシャー、移載装置等である。本実施形態における切替手段23Aは第1切替領域TP1に配置され、第1検査領域CA1での検査結果に基づいて、ワークWを第1検査完了領域FA1又は第2検査領域CA2に搬送する為に、搬送先の切り替えを行う。切替手段23Bは第2切替領域TP2に配置され、第2検査領域CA2での検査結果に基づいて、ワークWを第2検査完了領域FA2又は第3検査完了領域FA3に搬送する為に、搬送先の切り替えを行う。
【0046】
切替手段23が、例えば、コンベア21の動作制御を行う制御装置(搬送制御装置20)に組み込まれてもよく、コンベア21の駆動や、進行方向、傾き等を制御することでワークWの搬送先を切り替えてもよい。
【0047】
<計測手段3>
計測手段3は、搬送手段2により計測領域MAに搬送されたワークWに対して、3次元計測処理を行い、ワーク形状を示す情報として、ワーク座標系における座標を含む形状情報を取得する。本実施形態における計測手段3は、計測センサ31及び32(32A~32D)並びに、これらの動作制御及び計測結果の格納を行う計測制御装置30を備える。計測制御装置30は、計測センサ31及び計測センサ32の動作制御及び、計測処理制御を行い、計測処理結果を記憶部に格納する。計測制御装置30(計測手段3)は、計測処理結果に基づいて、形状情報を検査手段4に受け渡す。
【0048】
図5(a)は計測領域MAの斜視図であり、
図5(b)は計測領域MAの平面図である。
図5に示すように、実施形態における計測手段3は、更に支持機構33を備え、支持機構33によって、1台の計測センサ31及び、4台の計測センサ32が支持される。計測センサ31及び32は、ワークWの3次元形状を計測する為のステレオカメラであり、本実施形態における計測センサ31及び32は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサと、レンズ等を備え、取得したステレオ画像データを計測制御装置30に出力する撮像モジュールである。例えば、計測センサは3次元計測処理が実現可能な種々の装置を利用することが可能であり、例えば、赤外線等のレーザ光により3次元計測を行うTOF(Time Of Flight)式、光切断法、ランダムパターン当光法、位相シフト法等のセンサモジュールであってもよい。
【0049】
計測センサ31は、支持機構33によって支持され、停止手段22Aによって停止するワークWの天頂(鉛直)方向に配置されたセンサモジュールである。計測センサ32は、支持機構33によってワークWの側面方向(本実施形態では斜め上方)に配置され、ワークWを3次元計測処理するセンサモジュールである。本実施形態では、計測センサ32は、コンベア21の進行方向に対して、平面視斜め方向に配置されている。なお、計測センサ32の数量、撮影方向は任意であるが、2以上の計測センサ32を配置するのが好ましい。
【0050】
計測制御装置30は、天頂方向から計測する計測センサ31の計測結果に基づいて回転計測処理を実行し、基準方位に対するワークWの回転量を取得する。本実施形態では、計測制御装置30は、画像データも基づいて、ワークW及びその他の要素(パレットPやコンベア21等)との境界認識を行い、平面視におけるワークWの外縁、即ちワークWの平面視シルエット形状を囲む平面視矩形形状を決定し、コンベア21の進行方向を基準方位とした時に、決定した矩形形状の回転量を計測する。なお、本実施形態では、矩形形状を推定しているが、すべての角が直角でない4角形や、3角形以上の多角形により、ワークWの平面視外縁形状を決定するようにしてもよい。
【0051】
計測制御装置30は、少なくとも側面方向から計測する計測センサ32(32A~32D)の計測結果に基づいて3次元計測処理を実行し、ワーク形状を示す情報として、ワーク座標系における座標を含む形状情報を取得する。ワーク座標系は、ワークW、パレットPあるいは計測領域MA中の所定の3次元座標を基準点とする座標系である。
【0052】
本実施形態における形状情報は、ワークWの表面形状を示す複数の座標(点群データ)を有する。本実施形態では、取得した回転量、矩形形状の辺の長さ、点群データに基づいて算出したワークWの高さを、更に含んで良い。ワークWの平面視外縁形状を示す頂点の座標を、点群データとは区別される座標として、形状情報に含めてもよい。
【0053】
<検査手段4>
検査手段4は、搬送手段2によって第1検査領域CA1及び第2検査領域CA2に搬送されたワークWの放射線量を測定して、ワークWの汚染検査を行う。本実施形態における検査手段4は、ロボット制御装置40、ロボット41(41A~41D)、測定ユニット制御装置50、測定ユニット51(51A~D)及び52(52A、52B)を備える。
【0054】
ロボット制御装置40は、ワークWの形状情報に基づいてロボット41を動作制御して、エンドエフェクタである測定ユニット51又は52をワークWに近接させる。
【0055】
ロボット制御装置40は、計測手段3より受け取った形状情報を検査領域における基準点から検査座標系に変換し、検査領域においてロボット41がワークWと接触しない許容範囲を決定して、少なくとも関節部の変位角を示す駆動信号をロボットに送信することで、動作制御を行う。駆動信号は、例えば、許容範囲内でワークWに最も近接する座標へ、ロボット41の先端に設けられたエンドエフェクタを移動させる動作制御を行う。
【0056】
ロボット制御装置40は、コンベア21によって各領域に搬送され、停止手段22によって停止したワークWの形状情報(ワーク座標系:ワークのローカル座標系)を、ロボット41の駆動信号を生成する為の検査座標系に変換する。なお、第1検査領域CA1の第1領域CA11及び第2領域CA12並びに、第2検査領域CA2の第1領域CA21及び第2領域CA22毎に検査座標系及び基準点が設定されていてもよいし、一部又は全部のロボット41について、共通する検査座標系(例えば、ワールド座標系、グローバル座標系)及び基準点を用いて計算を行ってもよい。
【0057】
測定ユニット制御装置50は、測定ユニット51及び52を動作制御すると共に、測定結果を受け取り、測定結果を記憶部に格納する。測定結果に基づいて閾値に基づく判定を行い、判定結果を搬送手段2に受け渡す。搬送手段2は、判定結果に応じて、ワークWを所定の領域に搬送する。
【0058】
<ロボット41>
ロボット41は、ワークの放射線量を測定する測定ユニット51を3次元的に移動自在なエンドエフェクタとして保持し、1以上の関節部を備えたロボットアームである。本実施形態におけるロボット41は、所謂6軸多関節のシリアルリンクロボットアームである。ロボット41は、例えば、パラレルリンクのロボット等であってもよい。
【0059】
本実施形態では、ロボット41A及び41B(第1のロボット)は、粗検査用の測定ユニット51A及び51Bを備え、ロボット41C及び41D(第2のロボット)は、詳細検査用の測定ユニット51C及び51Dを備える。
【0060】
検査ラインには、第1検査領域CA1の第1領域CA11に搬送されたワークWを検査するロボット41A、第1検査領域CA1の第2領域CA12に搬送されたワークWを検査するロボット41B、第2検査領域CA2の第1領域CA21に搬送されたワークWを検査するロボット41C、第2検査領域CA2の第2領域CA22に搬送されたワークWを検査するロボット41D、4基のロボット41が配置されている。2基以上のロボット41を第1領域及び第2領域のそれぞれに配置する場合、好ましくは、コンベア21をはさむ形でロボット41を配置するのが好ましい。
【0061】
本実施形態では、例えば、ワークWを6面体としたときに、第1領域では、コンベア21の進行方向に対して、ワークWの正面側、一方の側面側、背面側をロボット41及び測定ユニット51を用いて検査し、第2領域では、コンベア21の進行方向に対して、ワークWの他方の側面側、平面側をロボット41及び測定ユニット51を用いて検査し、ワークWの底面側を、測定ユニット52(底面測定ユニット)を用いて検査する。なお、進行方向に対する正面及び背面並びに左右側面は、ワークWの回転量から、平面視において、進行方向となす角が小さい面を左右側面、なす角が大きい(90度に近い)面を正面及び背面としてよい。また、底面は第1領域及び第2領域の何れで測定してもよく、あるいは双方で測定しても構わない。
【0062】
ロボット41の先端にはアタッチメントを設け、測定ユニットを取り外し自在に固定してもよい。ロボット41は、7軸、5軸等でもよく、軸数は特に限定されない。また、ロボット41は、1基でも3基等でもよく、設置台数は特に限定されない。好ましくは、第1検査領域CA1でワークWを粗検査するロボット41と、第2検査領域CA2でワークWを詳細検査するロボット41の少なくとも2基のロボット41が配置されるのが好ましい。好ましくは、測定ユニットに応じて、専用のロボットを設置する。詳細検査は、粗検査比較して高解像度で検査を行うことを指す。本実施形態において、高解像度とは、必ずしもより高性能の測定器511を備えた測定ユニット51を用いて検査を行うことのみを意味するわけではない。例えば、詳細検査では、高解像度に検査すべく、粗検査に比べて多数の計測点で検査を行う場合がある。好ましくは、詳細検査では、粗検査に比べて単位面積当たりの検出点が多数となる測定ユニット51を用いて検査を行う。また、詳細検査では、高解像度に検査すべく、粗検査に比べてワークに測定ユニット51(ロボット41のエンドエフェクタ)を近接して検査を行う場合がある。粗検査用の測定ユニット51及び、詳細検査用の測定ユニット51の構成については後述する。
【0063】
<測定ユニット51、52>
測定ユニット51は、ロボット41の先端に固定され、ワークWの放射線量を検知する。
図6は、本実施形態に係る粗検査用の測定ユニット51を備えたロボット41(第1のロボット)の斜視図を示す。測定ユニット51は、ワークの放射線量を検知する。粗検査用の測定ユニット51は、検知面が平板状のβ線プラスチックサーベイメータである測定器511を1基備える。測定ユニット制御装置50は、測定器511を用いてワークW放射線量を計測し、計測結果を記憶部に格納する。
【0064】
図7は、本実施形態に係る詳細検査用の測定ユニット51を備えたロボット41(第2のロボット)の斜視図を示す。
図8は、本実施形態に係る詳細検査用の測定ユニット51の斜視図を示す。
図9は、測定器の斜視図である。
【0065】
詳細検査用の測定ユニット51は、横方向に並べて配置された複数の(本実施形態では、3基の)検知面が平板状のβ線プラスチックサーベイメータである測定器511と、それぞれの測定器511を独立して伸長させる伸長手段512と、近接検出手段513と、を備える。測定ユニット制御装置50は、測定器511を用いてワークW放射線量を計測し、計測結果を記憶部に格納する。伸長手段512は、例えば、伸長自在アクチュエータ等であり、測定ユニット制御装置50は、近接検出手段513からの入力に応じて、測定器511を前後方向に伸縮自在に構成される。なお、並べて配置された複数の測定器511は、同一方向に伸縮自在に構成される。
【0066】
本実施形態では、詳細検査用の測定ユニット51は、近接検出手段513として、測定器511の伸長方向に対して非接触でのワークW等との測距を行う近接センサ514及び、ワークWへの接触を検知する触覚スイッチ515を備える。本実施形態では、3基の測定器511各々に、近接検出手段513として、近接センサ514及び触覚スイッチ515が設けられている。触覚スイッチ515は、例えば圧力センサ等である。
【0067】
本実施形態では、各々の測定器511は、検知面を開放しながら覆う接触部516を備え、この接触部516を介して触覚スイッチ515に入力が行われる。接触部516に、複数(図示例では4つ)の近接センサ514が、検知面を挟んで対向するように配置される。また、接触部516は、検知面を開放しながら覆う格子を備える。
【0068】
測定ユニット制御装置50は、ロボット41に対する動作制御によってエンドエフェクタである測定ユニット51がワークWに近接した後、各々の測定器511を更にワークWへ近接させ、放射線量の測定位置を決定する。近接センサ514又は触覚スイッチ515からの信号(検出結果)に基づいて測定位置を決定し、測定器511による測定指示を行い、測定結果を受け取る。
【0069】
測定ユニット52(底面測定ユニット)は、コンベア21を挟んでワークWと対向するように配置されるγ線サーベイメータである測定器が用いられている。本実施形態では、測定ユニット52Aは第2領域CA12に、測定ユニット52Bは第2領域CA22に配置され、コンベア21を挟んで、ワークWの底面側の放射線量を計測する。測定ユニット51及び52は、放射線量を検知できればよく、測定線種(α線、β線、γ線等)等は特に限定されない。
【0070】
<汚染検査方法>
次に汚染検査方法について、汚染検査システム100の動作と共に説明する。
図10は、本実施形態に係る汚染検査方法のフローチャートである。また、
図11は、本実施形態に係る粗検査の処理フローチャートであり、
図12は、詳細検査の処理フローチャートである。
【0071】
ステップS1001において、検査ラインの投入領域INより、検査対象とするワークWが投入される。ここで、少なくとも計測領域MAに、別のワークWが存在する場合は、別のワークWが計測され、計測領域MAから搬出されるまで、停止手段22によって、投入したワークWを停止させてもよい。
【0072】
ステップS1002において、ワークWが計測領域MAに搬送されると、計測制御装置30(計測手段3)は計測センサ31及び32(計測手段3)を介して、ワークWの形状情報を取得する。計測情報の取得後、コンベア21(搬送手段2)は、粗検査用の検査領域(第1検査領域CA1)の第1領域CA11にワークを搬送する。計測制御装置30(計測手段3)は,計測した形状情報を、ロボット制御装置40(検査手段4)に送信する。
【0073】
ステップS1003において、ロボット制御装置40(検査手段4)は、形状情報に含まれたワーク座標系の座標や距離を、ロボット41(検査手段4)の動作制御を行う為の検査座標系における座標や距離に変換する。
【0074】
<粗検査工程>
ステップS1004では、ワークWに対する粗検査が行われる。本実施形態では、粗検査として、ワークWを6面体とした時の6方向から放射線量を測定する。
【0075】
ステップS1101において、ロボット制御装置40は、測定ユニット51を近接させる3次元座標である最大近接座標を決定し、ステップS1102において、形状情報に基づいて、エンドエフェクタ(EE)である測定ユニット51をワークWに近接させる際の進行方向を決定する。なお、これらの決定は順不同で行われてよい。
【0076】
本実施形態では、ワークWを4角柱とした時の6方向から放射線量を測定する。この四角柱は、2次元の矩形形状と、ワークの高さ情報と、に基づいて決定され、この四角柱の平面及び側面に対して、測定器511(測定ユニット51)の検知面が平行移動する向きを進行方向とする。
【0077】
そのため、平面(上面)については、鉛直下向き方向を進行方向として事前定義していてよい。ロボット制御装置40が平面(上面)に対して測定ユニット51を移動させる目的地となる最大近接座標は、平面視シルエット形状中の検査座標系における2次元座標(例えば、対角線交点や重心の座標)を通り、鉛直方向において高さに対応する座標値から所定距離離れる3次元座標となる。
【0078】
ロボット制御装置40は、ワークWの回転量に基づいて、ワークWを検査する為の複数の検査方向を決定し、検査方向別に進行方向に沿って最大近接座標にエンドエフェクタである測定ユニット51到達する駆動信号を決定する。側面(正面、背面、右側面、左側面)については、例えば、ワークWの形状情報に含まれた矩形形状各辺について、辺に直交する方向を進行方向とする。最大近接座標は、例えば、辺の中心の2次元座標と、高さ座標値により決定される3次元座標とする。例えば、高さの座標値は、任意に設定した座標値であってもよいし、高さに基づいて算出される座標値(例えば、高さの二分の一となる座長値等)であってもよい。
【0079】
進行方向と最大近接座標が決定すると、ステップS1103において、ロボット制御装置40は、駆動信号を生成し、ロボット41(第1のロボット)を動作制御する。ロボット41が動作制御され、測定ユニット51が最大近接座標に到達すると、ステップS1104において、測定ユニット51は放射線量を測定する。
【0080】
四角柱の各面に対して、ステップS1103でのロボット41の動作制御と、ステップS1104における放射線量の計測が行われる。なお、底面については、測定ユニット52Aが設置された領域(第2領域CA12)にワークWを搬送して、ロボット41(第1ロボット)を制御することなく放射線量を測定する。
【0081】
ステップS1005において、計測手段3は、粗検査領域に搬送されたワークWに対して、粗検査用の測定ユニット51を備えたロボット41(第1ロボット)による計測結果及び、記憶部に格納した第1の閾値を用いて、詳細検査の要否を判定する。本実施形態では、6面の検査結果のうち、1つでも第1の閾値を超える放射線量が測定された場合は要判定し(ステップS1105でYES)、搬送手段2に対してワークWの搬送指示を行って、コンベア21及び切替手段23Aにより、第2検査領域CA2(詳細検査領域)に搬送する。第1の閾値を超える放射線量が測定されなかった場合は否判定し(ステップS1105でNO)、搬送手段2に対してワークWの搬送指示を行って、コンベア21及び切替手段23Aにより、第1検査完了領域FA1に搬送する(ステップS1106)。例えば、非汚染のワークWが、第1検査完了領域FA1に搬送される。
【0082】
<詳細検査工程>
ステップS1007では、ワークWに対する詳細検査が行われる。本実施形態では、詳細検査として、ワークWを6面体とした時の6方向から放射線量を測定する。ロボット制御装置40は、ワークWの回転量に基づいて、ワークWを検査する為の複数の検査方向を決定し、検査方向別に複数の最大近接座標及び進行方向を決定して、進行方向に沿って最大近接座標にエンドエフェクタである測定ユニット51到達する駆動信号を決定する。
【0083】
ステップS1201において、ロボット制御装置40は、測定ユニット51を近接させる3次元座標である最大近接座標を決定し、ステップS1202において、形状情報に基づいて、エンドエフェクタ(EE)である測定ユニット51をワークWに近接させる際の進行方向を決定する。なお、これらの決定は順不同で行われてよい。
【0084】
本実施形態では、ワークWを4角柱とした時の6方向から放射線量を測定する。この四角柱は、2次元の矩形形状と、ワークの高さ情報と、に基づいて決定される。ステップS1201では、ロボット制御装置40は、この四角柱の平面及び側面の幅及び高さと、ロボット制御装置40等の記憶部に格納された測定ユニット51の検知範囲に基づいて、面毎に、3次元の最大近接座標を決定するための、1又は複数の2次元座標を決定する。そして、形状情報として格納されたワークWの形状を示す3次元座標とこの2次元座標に基づいて、面毎に、1又は複数の3次元の最大近接座標を決定する。
【0085】
ステップS1202において、ロボット制御装置40は、最大近接座標と、形状情報における最大近接座標周辺の複数の3次元座標点に基づいて、最大近接座標周辺の面の傾きを算出し、最大近接座標ごとに、傾きに直交する方向を進行方向として決定する。
【0086】
なお、底面については、測定ユニット52Bが設置された領域(第2領域CA22)にワークWを搬送して、ロボット41(第2ロボット)を制御することなく放射線量を測定する。
【0087】
進行方向と最大近接座標が決定すると、ステップS1203において、ロボット制御装置40は、駆動信号を生成し、ロボット41(第2のロボット)を動作制御する。ロボット41が動作制御され、測定ユニット51が最大近接座標に到達すると、ステップS1204において、測定ユニット制御装置50(伸長手段512)は、それぞれの測定器511を独立して伸長させる。測定器511の伸長は、長さが閾値に達するまでか、近接検出手段513によって閾値に達する距離までワークWに近接するまでか、触覚スイッチ515によってワークWとの接触が検知されるまでか、行われ、測定ユニット制御装置50は、測定位置を決定する。そして、ステップS1205において、測定ユニット51は測定位置において放射線量を測定する。
【0088】
各計測面に対して、ステップS1203でのロボット41の動作制御と、ステップS1204における測定器511の伸長と、ステップS1205における放射線量の計測が行われる。なお、底面については、測定ユニット52Aが設置された領域(第2領域CA12)にワークWを搬送して、ロボット41(第2ロボット)を制御することなく放射線量を測定する。
【0089】
ステップS1005において、計測手段3は、詳細検査領域に搬送されたワークWに対して、詳細検査用の測定ユニット51を備えたロボット41(第2ロボット)による計測結果及び、記憶部に格納した第2の閾値を用いて、汚染を判定する。本実施形態では、6面の検査結果のうち、1つでも第2の閾値を超える放射線量が測定された場合は汚染判定し(ステップS1008でYES)、搬送手段2に対してワークWの搬送指示を行って、コンベア21及び切替手段23Bにより、第2検査完了領域FA2に搬送する(ステップS1009)。第2の閾値を超える放射線量が測定されなかった場合は否判定し(ステップS1008でNO)、搬送手段2に対してワークWの搬送指示を行って、コンベア21及び切替手段23Bにより、第3検査完了領域FA3に搬送する(ステップS1010)。例えば、非汚染のワークWが、第3検査完了領域FA3に搬送され、汚染されたワークWが、第2検査完了領域FA2に搬送される。そして、すべてのワークWについて検査完了するまで、検査を繰り返してよい(ステップS1011)。
【0090】
ここで、粗検査工程では詳細検査工程ほど、測定器511がワークWに近接できない可能性がある。そのため、第1の閾値は、第2の閾値と異なる放射線量が閾値として設定されるのが好ましい。例えば、第1の閾値は、第2の閾値よりも小さな放射線量が閾値として設定されてよく、例えば、汚染が間違いなくされていないワークWのみを、第1検査完了領域FA1に搬送するように構成できる。
【0091】
本実施形態に係る汚染検査システム100によれば、ワークWの形状情報に基づいて汚染検査を行うことができ、検査ライン上を搬送可能なワークWであれば、ワーク形状に関する情報を事前に格納することなく、検査を実施することが可能となる。そのため、従来、手作業で行っていた汚染検査を自動化でき、作業員の安全性も向上することができると共に、作業員毎の検査品質のばらつきを低減できる。
【0092】
また、粗検査及び詳細検査の2工程により検査実施することで、検査を効率的に実施し、検査時間を短縮することができる。
【0093】
また、詳細検査では、複数の測定器511を独立して伸長させて、ワークWに近接させることが可能であり、ワーク形状に関する情報を事前に格納することなく、より詳細に、ワークWの立体形状に沿って放射線量の測定を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0094】
100 :汚染検査システム
2 :搬送手段
3 :計測手段
4 :検査手段
10 :管理装置
20 :搬送制御装置
21 :コンベア
22A~E :停止手段
23A,B :切替手段
30 :計測制御装置
31 :計測センサ(天長)
32 :計測センサ(側面)
33 :支持機構
40 :ロボット制御装置
41A~D :ロボット
50 :測定ユニット制御装置
51A~D :測定ユニット
511 :測定器
512 :伸長手段
513 :近接検出手段
514 :近接センサ
515 :触覚スイッチ
516 :接触部
52A,B :測定ユニット
70 :端末装置
71 :制御部
72 :記憶部
73 :通信部
74 :操作部
75 :出力部
90 :制御装置
91 :制御部
92 :記憶部
93 :通信部
IN :投入領域
MA :計測領域
CA1 :第1検査領域
CA11 :第1領域
CA12 :第2領域
CA2 :第2検査領域
CA21 :第1領域
TP1 :第1切替領域
CA22 :第2領域
TP2 :第2切替領域
FA1 :第1検査完了領域
FA2 :第2検査完了領域
FA3 :第3検査完了領域
NW :ネットワーク
P :パレット
W :ワーク