(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187587
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、モータ駆動制御システム、ファンシステム、及びモータ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20221213BHJP
【FI】
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095652
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】海津 浩之
(72)【発明者】
【氏名】青木 政人
(72)【発明者】
【氏名】岡淵 良久
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛広
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 貴之
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA08
5H501BB08
5H501DD04
5H501GG03
5H501HB07
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ12
5H501JJ16
5H501JJ17
5H501JJ18
5H501JJ25
5H501LL05
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL35
5H501LL39
5H501LL53
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】気圧を監視することなく、モータの異常状態を適切に検出できるようにする。
【解決手段】モータ駆動制御装置10は、駆動対象のモータ50の動作に関連する物理量を監視パラメータとし、監視パラメータの計測データと監視パラメータの基準値とに基づいて駆動対象のモータ50の動作状態を監視する監視制御部24を有し、監視制御部24は、駆動対象のモータにおける監視パラメータの基準値に対する計測値のずれと、通信部15によって取得した、他のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれとの比較結果に基づいて、駆動対象のモータ50が異常状態であるか否かを判定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象のモータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、
前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、
外部と通信を行う通信部と、
前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量の計測値を含む計測データを生成する計測データ生成部と、
前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量を監視パラメータとし、前記監視パラメータの計測データと前記監視パラメータの基準値とに基づいて前記駆動対象のモータの動作状態を監視する監視制御部と、を有し、
前記監視制御部は、前記駆動対象のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれと、前記通信部によって取得した、他のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれとの比較結果に基づいて、前記駆動対象のモータが異常状態であるか否かを判定する
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記監視制御部は、前記駆動対象のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれと、前記他のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれとの差が閾値を超えている場合に、前記駆動対象のモータが異常状態であると判定する
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータ駆動制御装置において、
前記監視制御部は、前記駆動対象のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれが前記基準値に基づく許容範囲を超えている場合に、前記他のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれの情報を、前記通信部を介して取得する
モータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量として、前記駆動対象のモータの回転速度、コイル電流、およびコイル電圧を含み、
前記監視制御部は、前記回転速度、前記コイル電流、および前記コイル電圧のうち一つを前記監視パラメータとして選択し、選択した前記監視パラメータ毎に前記基準値を設定する
モータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ駆動制御装置において、
前記監視制御部は、前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量のうち前記監視パラメータ以外の一つの物理量を条件パラメータとして選択し、選択した前記条件パラメータに基づいて前記監視パラメータの前記基準値を設定する
モータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量として、温度を更に含み、
前記監視制御部は、前記監視パラメータおよび前記条件パラメータ以外の物理量を補正パラメータとして設定し、前記補正パラメータに基づいて、前記監視パラメータの前記基準値を補正する
モータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置を複数備え、
前記モータ駆動制御装置の前記通信部は、他の前記モータ駆動制御装置の前記通信部と通信を行う
モータ駆動制御システム。
【請求項8】
請求項7に記載のモータ駆動制御システムにおいて、
前記モータ駆動制御装置と通信を行う上位装置を更に備え、
前記モータ駆動制御装置は、前記監視制御部によって前記モータの異常状態を検出した場合に、前記通信部を介して前記上位装置に通知する
モータ駆動制御システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載のモータ駆動制御システムと、
前記モータ駆動制御装置毎に設けられ、対応する前記モータ駆動制御装置によって駆動されるモータと、
前記モータ毎に設けられ、対応する前記モータの回転力によって回転可能に構成されたインペラと、を備える
ファンシステム。
【請求項10】
駆動対象のモータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成ステップと、
前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動ステップと、
外部と通信を行う通信ステップと、
前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量の計測値を含む計測データを生成する計測データ生成ステップと、
前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量を監視パラメータとし、前記監視パラメータの計測データと前記監視パラメータの基準値とに基づいて前記駆動対象のモータの動作状態を監視する監視制御ステップと、を含み、
前記監視制御ステップは、前記駆動対象のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれと、前記通信ステップにおいて取得した他のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれとの比較結果に基づいて、前記駆動対象のモータが異常状態であるか否かを判定するステップと、を含む
モータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、モータ駆動制御システム、ファンシステム、及びモータ駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のモータ駆動制御装置を1つの制御装置により制御し、モータ駆動制御装置のそれぞれに接続されたモータを駆動させるモータ駆動システムがある。このようなモータ駆動システムとしては、例えば電気機器システムに用いられ、1台の制御装置により電気機器の各部にそれぞれ配置された複数台のファン(ファンモータ)を駆動して電気機器の冷却を行うものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、ファンを制御する複数のファン制御手段と、電気機器システムを制御するシステム制御手段とを有し、システム制御手段と複数のファン制御手段との間でデータ通信を行うことにより複数台のファンを制御する電気機器システムの構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファンの異常を検知する方法として、例えば、ファンを構成するモータのベアリングの異常を検出する手法が知られている。ベアリングの異常を精度よく検知するためには、モータの電圧、電流、回転速度、およびモータの周辺の温度、および気圧等の相関性を考慮した異常検出のためのアルゴリズムを構築することが好ましい。
【0006】
モータを駆動するモータ駆動制御装置が上述した異常検出用のアルゴリズムに従ってベアリングの異常を検出する場合、電圧、電流、温度、回転速度、および気圧等の物理量を計測するためのセンサが必要となる。
【0007】
電圧、電流、回転速度、および温度の計測は、比較的安価な回路構成によって実現することが可能であるが、気圧を計測するためには、高価なセンサおよび回路構成が必要となる。その一方で、モータの場合、気圧はベアリングの異常を精度よく検出するための重要なパラメータの一つであるため、気圧の情報を無視することは得策ではない。特に、サーバ内のような閉ざされた空間に複数のファン(ファンモータ)を設置して電子機器等を冷却する場合、空間内の気圧は変動しやすいため、モータの異常検知を精度よく行うために気圧の情報は重要である。
【0008】
本発明は、上述した課題を解消するためのものであり、気圧を監視することなく、モータの異常状態を適切に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、駆動対象のモータの駆動を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御信号生成部と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路と、外部と通信を行う通信部と、前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量の計測値を含む計測データを生成する計測データ生成部と、前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量を監視パラメータとし、前記監視パラメータの計測データと前記監視パラメータの基準値とに基づいて前記駆動対象のモータの動作状態を監視する監視制御部と、を有し、前記監視制御部は、前記駆動対象のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれと、前記通信部によって取得した、他のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれとの比較結果に基づいて、前記駆動対象のモータが異常状態であるか否かを判定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、気圧を監視することなく、モータの異常状態を適切に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係るファンシステムの構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施の形態に係るファンシステムにおけるファン装置の設置例を模式的に示す図である。
【
図3】本実施の形態に係るファンシステムにおけるモータ駆動制御装置の具体的な構成の一例を示す図である。
【
図4A】モータの動作に関連するパラメータ(物理量)間の相関関係の一例を示す図である。
【
図4B】モータの動作に関連するパラメータ(物理量)間の相関関係の一例を示す図である。
【
図4C】モータの動作に関連するパラメータ(物理量)間の相関関係の一例を示す図である。
【
図4D】モータの動作に関連するパラメータ(物理量)間の相関関係の一例を示す図である。
【
図4E】モータの動作に関連するパラメータ(物理量)間の相関関係の一例を示す図である。
【
図4F】モータの動作に関連するパラメータ(物理量)間の相関関係の一例を示す図である。
【
図4G】モータの動作に関連するパラメータ(物理量)間の相関関係の一例を示す図である。
【
図5A】監視パラメータの基準値の設定方法を説明するための図である。
【
図5B】監視パラメータの基準値の設定方法を説明するための図である。
【
図6】監視パラメータ、条件パラメータ、および補正パラメータの組み合わせの一例を示す図である。
【
図7】監視制御部によるモータの異常判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】本実施の形態に係るファンシステムにおける複数のモータ駆動制御装置間の通信の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(10)は、駆動対象のモータ(50)の駆動を制御するための駆動制御信号(Sd)を生成する駆動制御信号生成部(11)と、前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動回路(19)と、外部と通信を行う通信部(15)と、前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量の計測値を含む計測データ(251)を生成する計測データ生成部(23)と、前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量を監視パラメータとし、前記監視パラメータの計測データと前記監視パラメータの基準値とに基づいて前記駆動対象のモータの動作状態を監視する監視制御部(24)とを有し、前記監視制御部は、前記駆動対象のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれと、前記通信部によって取得した、他のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれとの比較結果に基づいて、前記駆動対象のモータが異常状態であるか否かを判定することを特徴とする。
【0014】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記監視制御部は、前記駆動対象のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれと、前記他のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記の計測値のずれとの差が閾値を超えている場合に、前記駆動対象のモータが異常状態であると判定してもよい。
【0015】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記監視制御部は、前記駆動対象のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれが前記基準値に基づく許容範囲を超えている場合に、前記他のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれの情報を、前記通信部を介して取得してもよい。
【0016】
〔4〕上記〔1〕乃至〔3〕の何れかのモータ駆動制御装置において、前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量として、前記駆動対象のモータの回転速度、コイル電流、およびコイル電圧を含み、前記監視制御部は、前記回転速度、前記コイル電流、および前記コイル電圧のうち一つを前記監視パラメータとして選択し、選択した前記監視パラメータ毎に前記基準値を設定してもよい。
【0017】
〔5〕上記〔4〕のモータ駆動制御装置において、前記監視制御部は、前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量のうち前記監視パラメータ以外の一つの物理量を条件パラメータとして選択し、選択した前記条件パラメータに基づいて前記監視パラメータの前記基準値を設定してもよい。
【0018】
〔6〕上記〔5〕のモータ駆動制御装置において、前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量として、温度を更に含み、前記監視制御部は、前記監視パラメータおよび前記条件パラメータ以外の物理量を補正パラメータとして設定し、前記補正パラメータに基づいて、前記監視パラメータの前記基準値を補正してもよい。
【0019】
〔7〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御システム(2)は、上記〔1〕乃至〔6〕の何れかのモータ駆動制御装置(10)を複数備え、前記モータ駆動制御装置の前記通信部は、他の前記モータ駆動制御装置の前記通信部と通信を行ってもよい。
【0020】
〔8〕上記〔7〕のモータ駆動制御システムにおいて、前記モータ駆動制御装置と通信を行う上位装置(4)を更に備え、前記モータ駆動制御装置は、前記監視制御部によって前記モータの異常状態を検出した場合に、前記通信部を介して前記上位装置に通知してもよい。
【0021】
〔9〕本発明の代表的な実施の形態に係るファンシステム(1)は、上記〔7〕または〔8〕に記載のモータ駆動制御システム(2)と、前記モータ駆動制御装置毎に設けられ、対応する前記モータ駆動制御装置によって駆動されるモータ(50)と、前記モータ毎に設けられ、対応する前記モータの回転力によって回転可能に構成されたインペラ(51)と、を備えることを特徴とする。
【0022】
〔10〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御方法は、駆動対象のモータ(50)の駆動を制御するための駆動制御信号(Sd)を生成する駆動制御信号生成ステップと、前記駆動制御信号に基づいて前記モータを駆動するモータ駆動ステップと、外部と通信を行う通信ステップと、前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量の計測値を含む計測データを生成する計測データ生成ステップと、前記駆動対象のモータの動作に関連する物理量を監視パラメータとし、前記監視パラメータの計測データと前記監視パラメータの基準値とに基づいて前記駆動対象のモータの動作状態を監視する監視制御ステップと、を含み、前記監視制御ステップは、前記駆動対象のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれと、前記通信ステップにおいて取得した他のモータにおける前記監視パラメータの前記基準値に対する前記計測値のずれとの比較結果に基づいて、前記駆動対象のモータが異常状態であるか否かを判定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0023】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0024】
≪実施の形態≫
図1は、本実施の形態に係るファンシステムの構成の一例を示す図である。
図1に示されるモータ駆動制御システム2は、制御装置である1つの上位装置(外部の一例)4と1つ以上のモータ駆動制御装置10とを備え、上位装置4が各モータ駆動制御装置10を制御することにより、各モータ駆動制御装置10に接続されたモータ50を駆動するシステムである。
【0025】
モータ駆動制御システム2は、例えば、電気機器システムに用いられ、複数のファンの動作を1つの制御装置によって制御して、複数の冷却対象のそれぞれに対して送風するファンシステム1を構成している。本実施の形態に係るファンシステム1は、例えば、サーバ内の閉ざされた空間に配置されて、当該サーバを構成する各種の電子部品等を冷却する冷却システムを構成している。
【0026】
ファンシステム1は、例えば、n(nは2以上の整数)個の冷却対象9_1~9_n毎に設けられたn個のファン装置3_1~3_nと、各ファン装置3_1~3_nのモータ50を駆動するための各種指令を各ファン装置3_1~3_nに対して送信する上位装置(制御装置の一例)4とを備えている。
【0027】
以下の説明において、各ファン装置3_1~3_nを区別しない場合には、「ファン装置3」とも称する。なお、本実施の形態では、一例として、ファンシステム1が、4(n=4)個の冷却対象にそれぞれ対応する4個のファン装置3_1~3_4を有しているものとして説明するが、ファンシステム1が備えるファン装置3は1つ以上であればよく、その数は特に制限されない。
【0028】
上位装置4は、各ファン装置3の駆動を制御する制御装置である。例えば、ファンシステム1がサーバ用の冷却システムを構成している場合、上位装置4は、サーバとしての主たる機能を実現するためのプログラム処理装置である。
【0029】
例えば、上位装置4は、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力I/F回路等の周辺回路とが、バスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)が、ファン装置3とともに一つの筐体内に収容されることによって実現されている。
【0030】
上位装置4は、例えば、ファンシステム1の環境変化(処理負荷の変化やサーバ内部の温度の変化など)あるいは制御するファン装置の状況(制御するファン装置の個数の変化、一部のファン装置が故障するなど)に応じてファン(モータ)の風量が適切になるように、各ファン装置3を制御する。
【0031】
上位装置4と各ファン装置3とは、通信線6を介して互いにデータの送受信が可能となっている。また、各ファン装置3は、通信線7を介して互いにデータの送受信が可能となっている。
【0032】
なお、本実施の形態では、上位装置4と各ファン装置3が通信を行う通信線6と、各ファン装置3が通信を行うための通信線7とを分ける場合を例示するが、これに限定されるものではない。例えば、上位装置と各ファン装置との間の通信とファン装置間の通信を、共通の一つの通信線によって実現してもよい。また、上位装置4と各ファン装置3が通信を行う通信と各ファン装置3が通信を行うための通信は、有線に限られず、無線であってもよい。また、通信媒体および通信方式等は、特に制限されない。
【0033】
各ファン装置3は、モータ50と、インペラ51と、上位装置4からの指令に応じてモータ50の駆動を制御するモータ駆動制御装置10とを備えている。
【0034】
モータ50は、例えば、3相のブラシレスモータである。なお、モータ50の種類は特に限定されず、相数も3相に限定されない。
【0035】
インペラ(羽根車)51は、風を発生させる部品であり、モータ50の回転力によって回転可能に構成されている。例えば、インペラ51の回転軸は、モータ50の出力軸に同軸に連結されている。本実施の形態では、例えば、インペラ51とモータ50とが一つのファン(ファンモータ)5を構成しているものとする。
【0036】
図2は、本実施の形態に係るファンシステム1におけるファン装置3の設置例を模式的に示す図である。
【0037】
ファンシステム1において、例えば、冷却対象9_1~9_4が一つの密閉された空間を形成する筐体8内に配置され、筐体8に形成された4つの開口部に各ファン装置3_1~3_4のインペラ51が取り付けられている。これにより、ファン装置3_1~3_4が動作している状態において、筐体8内の気圧は略均一になる。換言すれば、各ファン装置3のモータ50およびインペラ51は、気圧が均一となるような同一の空間内に設置されている。ここで、気圧が均一である状態とは、各モータ50が受ける気圧が同一である状態に限られず、各モータ50が受ける気圧に多少の誤差がある場合も含まれる。例えば、各モータ50が受ける気圧の誤差が±5%以下である場合には、気圧が均一な状態と言える。
【0038】
図3は、本実施の形態に係るファンシステム1におけるモータ駆動制御装置10の具体的な構成の一例を示す図である。
【0039】
図3に示すように、上位装置4は、例えば、サーバとしての主たる機能を実現するためのデータ処理制御部41と、各ファン装置3と通信を行うための通信部42とを備えている。
【0040】
上位装置4(通信部42)と各ファン装置3(モータ駆動制御装置10)との間の通信線6を介した通信は、例えば、シリアル通信によって実現される。
【0041】
データ処理制御部41および通信部42は、例えば、上位装置4を構成するプログラム処理装置において、プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、カウンタやA/D変換回路等の周辺回路を制御することによって実現される。
【0042】
データ処理制御部41は、例えば、サーバ内に配置された各ファン装置3から供給される風量を調整するために、各ファン装置3のモータ50の目標となる回転速度(目標回転速度)を指定する速度指令信号Scを、通信部42を介して各ファン装置3に送信する。
【0043】
なお、速度指令信号Scの送受信は、上述したシリアル通信ではなく、例えば、上位装置4と各ファン装置3とを接続する専用線を用いて実現されてもよい。この場合、速度指令信号Scは、例えば、目標回転速度に応じたデューティ比を有するPWM信号としてもよい。
【0044】
データ処理制御部41は、各ファン装置3から出力されるモータ50の実際の回転速度(回転数)を表す回転速度信号So(例えば、FG(Frequency Generator)信号)を、通信部42を介して受信することにより、各ファン装置3のモータ50の回転状態を監視する。なお、回転速度信号Soの送受信は、例えば、上位装置4と各ファン装置3とを接続する専用線を用いて実現してもよいし、上述のシリアル通信によって実現してもよい。
【0045】
データ処理制御部41は、例えば、モータ50の駆動電流や温度、モータ50の累積動作時間、異常発生の有無等のモータ50の動作に関する情報を送信するように通信部42を介して各ファン装置3に要求し、要求に応じて各ファン装置3から送信された情報を、通信部42を介して受信する。これにより、上位装置4は、各ファン装置3におけるモータ50の駆動状態をより詳細に知ることができる。
【0046】
モータ駆動制御装置10は、主たる機能として、モータ50の回転を制御するモータ駆動制御機能、上位装置4および他のモータ駆動制御装置10(ファン装置3)との間で通信を行う通信機能、およびモータ50の動作状態を監視する監視機能を備えている。
【0047】
具体的には、モータ駆動制御装置10は、モータ駆動制御機能として、上位装置4からの指令(速度指令信号Sc)に応じて駆動制御信号Sdを生成して、モータ50の各相(例えば、3相)のコイルに周期的に正弦波状の駆動電流を流してモータ50を回転させる。
【0048】
モータ駆動制御装置10は、通信機能として、上位装置4との間でデータの送受信を行うことにより、上位装置4から各種指令を受信するとともに、受信した指令に対する応答等を上位装置4に送信する。また、モータ駆動制御装置10は、他のファン装置3のモータ駆動制御装置10との間でデータの送受信を行うことにより、他のモータ50の動作状態の情報を取得するとともに、自身のモータ50の動作状態の情報を他のモータ駆動制御装置10に与える。
【0049】
モータ駆動制御装置10は、監視機能として、駆動対象のモータ50の動作に関連する物理量を計測することによりモータ50の動作状態を監視し、計測結果に基づいて、駆動対象のモータ50の異常の有無を判定する。
【0050】
ここで、モータ50の動作状態に関連する物理量には、例えば、モータ50の駆動電流(コイル電流)、モータ50の回転速度(回転数)、モータ50の駆動電圧(コイル電圧)、モータ50の周辺の温度等が含まれる。
【0051】
図3に示すように、モータ駆動制御装置10は、上述した各機能を実現するための機能部として、例えば、駆動制御信号生成部11、通信部15、モータ駆動回路19、センサ部20、回転速度計測部21、FG信号生成部22、計測データ生成部23、監視制御部24、および記憶部25有している。
【0052】
これらの機能部のうち、駆動制御信号生成部11、通信部15、回転速度計測部21、計測データ生成部23、監視制御部24、および記憶部25は、例えば、プログラム処理装置によって実現されている。例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力I/F回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)において、CPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、その処理結果に基づいてA/D変換回路や入出力インターフェース回路等の周辺回路を制御することによって、上述した機能ブロックが実現されている。
【0053】
なお、モータ駆動制御装置10は、モータ駆動回路19とその他の機能部の少なくとも一部とが一つの集積回路装置(IC)としてパッケージ化された構成であってもよいし、モータ駆動回路19とその他の機能部がそれぞれ個別の集積回路装置として夫々パッケージ化された構成であってもよい。
【0054】
以下、モータ駆動制御装置10を構成する各機能部について詳細に説明する。
【0055】
駆動制御信号生成部11は、モータ50の駆動を制御するための駆動制御信号Sdを生成するための機能部である。駆動制御信号生成部11は、例えば、上位装置4から出力された速度指令信号Scを受信した場合に、モータ50の回転速度が速度指令信号Scによって指定された目標回転速度と一致するように、駆動制御信号Sdを生成する。
【0056】
駆動制御信号Sdは、例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0057】
図3に示すように、駆動制御信号生成部11は、例えば、速度指令解析部12、デューティ比決定部13、および通電制御部14を備えている。
【0058】
速度指令解析部12は、上位装置4から出力された速度指令信号Scを受信し、速度指令信号Scによって指定された目標回転速度を解析する。例えば、速度指令信号Scが目標回転速度に対応するデューティ比を有するPWM信号である場合、速度指令解析部12は、速度指令信号Scのデューティ比を解析し、そのデューティ比に対応する回転速度の情報を目標回転速度として出力する。
【0059】
デューティ比決定部13は、速度指令解析部12から出力された目標回転速度と後述する回転速度計測部21によって計測されたモータ50の回転速度の計測値とに基づいて、駆動制御信号SdとしてのPWM信号のデューティ比を決定する。具体的には、デューティ比決定部13は、目標回転速度とモータ50の回転速度の計測値との差が小さくなるようにモータ50の制御量を算出し、その制御量に応じたPWM信号のデューティ比を決定する。
【0060】
通電制御部14は、デューティ比決定部13によって決定したデューティ比を有するPWM信号を生成し、駆動制御信号Sdとして出力する。
【0061】
モータ駆動回路19は、駆動制御信号生成部11によって生成された駆動制御信号Sdに基づいてモータ50を駆動する。モータ駆動回路19は、例えば、インバータ回路及びプリドライブ回路(不図示)を有している。
【0062】
インバータ回路は、プリドライブ回路から出力された出力信号に基づいてモータ50に駆動信号を出力し、モータ50が備えるコイルに通電する。インバータ回路は、例えば、直流電源の両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対が、各相のコイルに対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ50の各相の端子が接続されている。
【0063】
プリドライブ回路は、駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路を駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路に出力する。プリドライブ回路は、例えば、駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路の各スイッチ素子を駆動する駆動信号を生成して出力する。この駆動信号がインバータ回路を構成する各スイッチ素子をオン/オフさせることにより、モータ50の各相に電力が供給されてモータ50のロータが回転する。
【0064】
センサ部20は、モータ50の動作状態に関連する物理量を検出する機能部である。センサ部20は、例えば、モータ50の回転位置を検出する位置検出器(例えば、ホール素子)、モータ50のコイルに流れる電流を検出する電流センサ(例えば、シャント抵抗)、モータ50のコイルの電圧を検出する電圧センサ(例えば、抵抗分圧回路)、およびモータ50の周辺の温度を検出する温度センサ(例えば、サーミスタ)等の各種センサを含む。センサ部20を構成する各センサは、検出した物理量に応じた電気信号をそれぞれ出力する。なお、本実施の形態において、センサ部20を構成する各種センサがモータ駆動制御装置10の内に設けられる場合を例示するが、センサ部20を構成する各種センサの全部または一部がモータ駆動制御装置10の外部に設けられていてもよい。
【0065】
回転速度計測部21は、モータ50の回転速度を計測する機能部である。回転速度計測部21は、例えば、センサ部20における位置検出器としてのホール素子の検出信号(ホール信号)に基づいて、モータ50の回転速度を計測し、その計測結果を出力する。
【0066】
FG信号生成部22は、モータ50の回転速度を示す回転速度信号SoとしてのFG信号を生成する。FG信号生成部22は、例えば、センサ部20における位置検出器としてのホール素子から出力された検出信号(ホール信号)に基づいて、モータ50の回転速度に比例する周期(周波数)を有する信号(FG信号)を発生させる。FG信号生成部22から出力されたFG信号は、回転速度信号Soとして上位装置4に入力される。
【0067】
なお、FG信号生成部22は、例えば、モータ50が搭載される基板(プリント基板)上に形成されたFGパターンによって実現してもよい。
【0068】
通信部15は、外部と通信を行うための機能部である。具体的には、通信部15は、制御装置としての上位装置4との間でデータの送受信を行うとともに、他のモータ駆動制御装置10(ファン装置30)との間でデータの送受信を行う。各モータ駆動制御装置10の通信部15間の通信線7を介した通信は、例えば、シリアル通信によって実現される。
【0069】
通信部15は、例えば、送信部16、受信部17、および通信制御部18を有する。
【0070】
送信部16は、外部(例えば、上位装置4および他のモータ駆動制御装置10等の外部装置)に信号を送信する。受信部17は、外部から信号を受信する。送信部16および受信部17は、例えば、通信制御部18に制御されて、所定のシリアル信号を生成して通信線路に送信し、通信線路からシリアル信号を受信するシリアル通信用インターフェース回路である。
【0071】
通信制御部18は、送信部16にエンコードしたデータを送り、また、受信部17からのデータをデコードすることで、上位装置4および他のモータ駆動制御装置10との間でデータの送受信を実現する。通信制御部18は、例えば、上述したモータ駆動制御装置10を構成するプロセッサによるプログラム処理によって実現される。
【0072】
通信制御部18は、受信部17によって受信した他のモータ駆動制御装置10からの要求指令を監視制御部24に与えるとともに、監視制御部24から与えられた上記要求指令に対する応答を送信部16から他のモータ駆動制御装置10に送信する。
【0073】
例えば、他のモータ駆動制御装置10から送信された駆動対象のモータ50の動作状態に関する情報の送信要求を受信部17が受信したとき、通信制御部18は、その送信要求を監視制御部24に与える。その後、通信制御部18は、監視制御部24から受け取ったモータ50の動作状態に関する情報を、上記送信要求に対する応答として、送信部16から、他のモータ駆動制御装置10に送信する。
【0074】
また、例えば、通信制御部18が監視制御部24から出力されたモータ50の動作状態に関する情報の送信要求を受け取った場合、通信制御部18は、その送信要求を送信部16から他のモータ駆動制御装置10に送信する。その後、上記送信要求に対する応答として、他のモータ駆動制御装置10から送信された駆動対象のモータ50の動作状態に関する情報を受信部17が受信したとき、通信制御部18は、その受信した情報を監視制御部24に与える。
【0075】
なお、上述した他のモータ駆動制御装置10との間で送受信の対象となる、モータ50の動作状態に関する情報の詳細については、後述する。
【0076】
計測データ生成部23は、モータ50の動作に関連する計測データ251を生成するための機能部である。具体的に、計測データ生成部23は、センサ部20によって検出されたモータ50の動作状態に関連する物理量の検出結果に基づいて計測データ251を生成する。計測データ生成部23は、例えば、センサ部20の各種センサから出力される電気信号に基づいて、モータ50の動作状態に関連する物理量の計測値(デジタル値)を算出し、その計測値を計測データ251として記憶部25に記憶する。
【0077】
例えば、計測データ生成部23は、単位時間毎に、センサ部20の温度センサによる温度の検知結果を計測データ251として記憶部25に記憶する。また、計測データ生成部23は、例えば、回転速度計測部21によって計測されたモータ50の単位時間当たりの回転数(回転速度)を計測データ251として記憶部25に記憶する。また、計測データ生成部23は、例えば、単位時間毎に、センサ部20の電流センサによるモータ50の駆動電流の検出値を計測データ251として記憶部25に記憶する。また、計測データ生成部23は、例えば、単位時間毎に、電圧センサによるモータ50の駆動電圧(コイル電圧)の検出値を計測データ251として記憶部25に記憶する。
【0078】
また、計測データ生成部23は、デューティ比決定部13によって決定したデューティ比の情報や通電制御部14から出力される駆動制御信号SdとしてのPWM信号の立ち上がりタイミング等の情報も計測データ251として記憶部25に記憶してもよい。
【0079】
なお、計測データ生成部23による計測データ251の取得は、上位装置4および他のモータ駆動制御装置10からの要求に応じて行われてもよい。
【0080】
監視制御部24は、駆動対象のモータ50の動作状態の異常の有無を判定するための機能部である。
【0081】
監視制御部24の詳細を説明する前に、モータ50の動作に関連する物理量(パラメータ)間の相関関係について説明する。
【0082】
図4A~
図4Gは、モータの動作に関連するパラメータ(物理量)間の相関関係の一例を示す図である。
【0083】
図4Aにおいて、横軸はモータ50のコイル電圧を表し、縦軸はモータ50の回転速度を表している。
図4Bにおいて、横軸はモータ50のコイル電流を表し、縦軸はモータ50の回転速度を表している。
図4Cにおいて、横軸は気圧を表し、縦軸はモータ50の回転速度を表している。
図4Dにおいて、横軸は温度を表し、縦軸はモータ50の回転速度を表している。
図4Eにおいて、横軸は温度を表し、縦軸はモータ50のコイル電流を表している。
図4Fにおいて、横軸は温度を表し、縦軸はモータ50のコイル電圧を表している。
図4Gにおいて、横軸はコイル電圧を表し、縦軸はモータ50のコイル電流を表している。
【0084】
図4A~
図4Gから理解されるように、モータ50の動作に関連する回転速度、コイル電流、コイル電圧、モータ50周辺の温度、および気圧は、互いに相関関係がある。すなわち、モータ50の動作に関連する物理量の適正値は、モータ50の動作状態や動作環境に依存して変化するので、モータ50の動作が正常に動作しているか否かの基準値(例えば、閾値)を、モータ50の動作状態や動作環境に依らない固定値にすることは好ましくない。
【0085】
そこで、本実施の形態に係る監視制御部24は、モータ50の動作に関連する物理量の中から、監視パラメータ、条件パラメータ、および補正パラメータをそれぞれ設定し、これらの3つパラメータを用いた異常判定アルゴリズムによって、モータ50の異常の有無を判定する。
【0086】
監視パラメータとは、モータ50の異常の有無を判定するための監視対象となるパラメータ(物理量)である。例えば、駆動対象のモータ50の回転速度、コイル電流、およびコイル電圧のうち、何れか一つが監視パラメータとして設定される。
【0087】
条件パラメータとは、監視パラメータの計測値が異常であるか否かの判定基準となる基準値を決定するためのパラメータである。例えば、駆動対象のモータ50の回転速度、コイル電流、およびコイル電圧のうち、監視パラメータとして設定されている物理量以外の物理量が条件パラメータとして設定される。
【0088】
補正パラメータとは、条件パラメータに基づいて設定された監視パラメータの基準値を補正するためのパラメータである。例えば、駆動対象のモータ50の回転速度、コイル電流、およびコイル電圧、およびモータ50の周辺の温度のうち、監視パラメータおよび条件パラメータとして設定されている物理量以外の物理量が条件パラメータとして設定される。
【0089】
監視制御部24は、モータ50の動作に関連するパラメータ(物理量)のうち一つを監視パラメータとして選択し、監視パラメータとして選択された物理量の計測値を監視する。監視制御部24は、モータ50の動作に関連する物理量のうちの監視パラメータ以外の物理量を条件パラメータとして選択し、その条件パラメータに基づいて、モータ50の異常判定のための監視パラメータの基準値を設定する。監視制御部24は、監視パラメータの計測値と基準値とを用いて、駆動対象のモータ50が異常状態であるか否かを判定するための異常判定処理を行う。
【0090】
ここで、監視パラメータの基準値の設定方法について説明する。
【0091】
図5Aおよび
図5Bは、監視パラメータの基準値の設定方法を説明するための図である。
図5Aおよび
図5Bにおいて、横軸はモータ50のコイル電流を表し、縦軸はモータ50の回転速度を表している。参照符号500は、コイル電流と回転速度との対応関係を示す関数を表している。
【0092】
例えば、コイル電流を監視パラメータとし、回転速度を条件パラメータとした場合、監視制御部24は、監視パラメータとしてのコイル電流の基準値を、そのときのモータ50の回転速度の計測値に基づいて算出する。例えば、
図5Aに示すように、条件パラメータとしてのモータ50の回転速度の計測値が“r1”である場合、監視制御部24は、
図5Aに示すコイル電流と回転速度との対応関係を示す関数500を用いて、監視パラメータとしてのコイル電流の基準値を“i1”と設定する。基準値の情報(基準値情報)252は、例えば、記憶部25に記憶され、監視制御部24が算出する毎に更新される。
【0093】
図4A~
図4Gに示したように、コイル電流および回転速度は温度に対して依存性があるため、コイル電流と回転速度との対応関係も温度に応じて変化する。換言すれば、
図5Aに示すように、コイル電流と回転速度との対応関係を示す関数が、温度毎に複数存在する。同様に、
図5Bに示すように、コイル電流と回転速度との対応関係を示す関数が、温コイル電圧毎に複数存在する。
【0094】
そこで、監視制御部24は、条件パラメータに基づいて決定した監視パラメータの基準値を、補正パラメータによって補正してもよい。例えば、補正パラメータ毎に監視パラメータと条件パラメータとの対応関係を示す関数を複数用意しておき、監視制御部24が、それらの複数の関数の中から補正パラメータの計測値に応じた適切な関数を選択し、選択した関数を用いて基準値を決定してもよい。
【0095】
例えば、温度が補正パラメータに設定されている場合には、
図5Aに示すように、監視制御部24は、温度の計測値T1に対応する関数501を選択し、その関数501を用いて条件パラメータである回転速度r1に対応するコイル電流の値i2をコイル電流の基準値とする。また、例えば、コイル電圧が補正パラメータに設定されている場合、
図5Bに示すように、監視制御部24は、コイル電圧の計測値V1に対応する関数502を選択し、その関数502を用いて条件パラメータである回転速度r1に対応するコイル電流の値i3をコイル電流の基準値とする。
【0096】
なお、監視パラメータの基準値の補正方法は、上述の方法に限定されない。例えば、監視制御部24は、監視パラメータとしてのコイル電流と条件パラメータとしての回転速度との対応関係を示す関数500に基づいて決定した基準値i1に、補正パラメータである温度またはコイル電圧の計測値に応じた係数を加算、減算、乗算、除算等を行うことにより、条件パラメータに基づいて算出した基準値を補正してもよい。
【0097】
監視制御部24は、駆動対象のモータ50の動作に関連する物理量としてのモータ50の回転速度、コイル電流、およびコイル電圧のうち一つを監視パラメータとして選択し、選択した監視パラメータ毎に基準値を設定する。
【0098】
図6は、監視パラメータ、条件パラメータ、および補正パラメータの組み合わせの一例を示す図である。
【0099】
図6に示すように、モータ駆動制御装置10は、複数の監視モードを有する。監視制御部24は、設定された監視モードに応じて監視対象を切り替える。例えば、監視モードとして第1モードが設定された場合、監視制御部24は、監視パラメータとしてのコイル電流を監視し、条件パラメータとしての回転速度に基づいてコイル電流の基準値を決定するとともに、補正パラメータとしてのコイル電圧または温度に基づいて、コイル電流の基準値を補正する。
【0100】
例えば、監視制御部24は、監視モードを所定の順番で切り替えることにより、モータ50の動作に関連する複数のパラメータ(物理量)毎に、モータ50が異常状態であるか否かを判定する。
【0101】
なお、上述した監視パラメータの基準値の補正は必須ではなく、条件パラメータのみによって監視パラメータの基準値を決定してもよい。
【0102】
上述したように、モータ50の回転速度、コイル電流、コイル電圧は、モータ50周辺の温度のみならず、気圧の影響も受ける。そのため、気圧を考慮したモータ50の異常判定アルゴリズムを構築することが望ましい。しかしながら、気圧を計測する手段を設けることは容易ではない。
【0103】
一方で、駆動対象のモータ50と他のモータ50とは、気圧が均一になるような同一の空間内に配置されるため、各モータ50が気圧から受ける影響は略等しい。すなわち、気圧が変化して駆動対象のモータ50における監視パラメータの計測値が変化した場合、他のモータ50における監視パラメータの計測値も同様に気圧の影響を受けて変化する。例えば、
図4Cに示したように、気圧が上昇して一つのモータ50の回転速度が低下した場合、同一環境下に置かれている他のモータ50の回転速度も低下する。
【0104】
そこで、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10は、気圧を計測するのではなく、自身の駆動対象のモータ50の動作に関連する物理量の計測結果と、他のモータ50の動作に関連する物理量の計測結果とを比較することにより、駆動対象のモータ50の異常の有無を判定する。
【0105】
具体的には、監視制御部24は、モータ50の異常判定処理として、駆動対象のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれと、通信部15によって取得した、他のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれとの比較結果に基づいて、駆動対象のモータ50が異常状態であるか否かを判定する。
【0106】
より具体的には、監視制御部24は、駆動対象のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれが基準値に基づく許容範囲を超えている場合に、他のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれの情報を、通信部15を介して取得する。
【0107】
例えば、モータ50のコイル電流が監視パラメータとして設定され、駆動対象のモータ50のコイル電流の基準値に対する計測値のずれ幅の基準値に対する割合(以下、「ずれの割合」とも称する。)が25%であり、コイル電流の基準値に基づく許容範囲が±20%である場合を考える。この場合、監視制御部24は、駆動対象のモータ50のコイル電流のずれの割合(25%)が、コイル電流の基準値に基づく許容範囲(±20%)を超えているため、他のモータ駆動制御装置10に対して、他のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれの情報の送信を、通信部15を介して要求する。
【0108】
そして、監視制御部24は、駆動対象のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれと、通信部15を介して取得した、他のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれとの差が閾値を超えている場合に、駆動対象のモータ50が異常状態であると判定する。閾値の情報(閾値情報)253は、例えば、記憶部25に予め記憶されている。
【0109】
上述の例において、更に、他のモータ50のコイル電流のずれの割合が24%であり、異常判定のための閾値(第2閾値)が10%であった場合を考える。この場合、駆動対象のモータ50におけるコイル電流のずれの割合(20%)と、他のモータ50のコイル電流のずれの割合(24%)との差(絶対値)が“4%”となり、閾値である“10%”より小さいので、監視制御部24は、駆動対象のモータ50が正常状態であると判定する。
【0110】
一方、他のモータ50のコイル電流のずれの割合が5%であった場合を考える。この場合、駆動対象のモータ50におけるコイル電流のずれの割合(20%)と他のモータ50のコイル電流のずれの割合(5%)との差(絶対値)が“15%”となり、閾値である10%より大きいので、監視制御部24は、駆動対象のモータ50が異常状態であると判定する。
【0111】
監視制御部24は、モータ50が異常状態であると判定したとき、異常検出情報254を生成して記憶部25に記憶する。異常検出情報254は、モータ50において発生した異常の内容を示す情報を含む。異常の内容を示す情報とは、例えば、コイル電流の異常、コイル電圧の異常、回転速度の異常、温度の異常などの情報である。
【0112】
また、監視制御部24は、モータ50が異常状態であると判定したとき、通信部15を介して上位装置4に異常検出情報254を送信する。これにより、上位装置4は、ファン装置3において異常が発生したことを知ることができる。
【0113】
なお、監視制御部24は、モータ50が使用された程度を示す累積情報を生成して記憶部25に記憶してもよい。累積情報には、例えば、モータ50の累積回転数、累積動作時間、などの情報が含まれる。例えば、監視制御部24は、FG信号生成部22によって生成された回転速度信号So(FG信号)に基づいてモータ50の単位時間当たりのモータの回転数を算出し、その回転数を積算することにより、モータ50の累積回転数を算出して記憶部25に記憶してもよい。また、監視制御部24は、例えば、モータ50の回転速度毎に動作時間を計測して積算し、積算した回転速度毎の動作時間に基づいてモータ50の累積動作時間を算出して記憶部25に記憶してもよい。監視制御部24は、上位装置4からの指令に応じて、記憶部25から累積情報を読み出し、通信部15を介して上位装置4に送信してもよい。
【0114】
次に、監視制御部24によるモータの異常判定処理の流れについて説明する。
【0115】
図7は、監視制御部24によるモータの異常判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0116】
例えば、監視モードとして所定のモードが設定された場合、監視制御部24は、設定された監視モードに応じて、監視パラメータ、条件パラメータ、および補正パラメータをそれぞれ設定するとともに、設定した条件パラメータおよび補正パラメータに基づいて、監視パラメータの基準値を設定する(ステップS1)。
【0117】
ここでは、
図6における第1モードが監視モードとして選択され、コイル電流が監視パラメータ、回転速度が条件パラメータ、コイル電圧および温度が補正パラメータとしてそれぞれ設定された場合を例にとり、説明する。
【0118】
監視制御部24は、監視パラメータとして設定されたコイル電流の監視を開始する(ステップS2)。監視制御部24は、コイル電流が基準値に基づく許容範囲内にあるか否かを判定する(ステップS3)。例えば、監視制御部24は、そのときのコイル電流のずれの割合を算出し、そのずれの割合が基準値に基づく許容範囲(例えば、±20%)内であるか否かを判定する。監視制御部24は、コイル電流のずれの割合が基準値に基づく許容範囲(例えば、±20%)内にある場合には(ステップS3:YES)、ステップS1に戻る。
【0119】
一方、コイル電流のずれの割合が基準値に基づく許容範囲(例えば、±20%)を超えている場合には(ステップS3:NO)、監視制御部24は、他のモータ駆動制御装置10(ファン装置3)に対して、他のモータ50の動作状態の問い合わせを行う(ステップS4)。
【0120】
具体的には、監視制御部24は、他のモータ50の動作状態に関する情報の送信要求を他のモータ駆動制御装置10(ファン装置3)に送信する。上述の例の場合、監視制御部24は、他のモータ50におけるコイル電流のずれの割合を示す情報の送信を、通信部15を介して他のモータ駆動制御装置10(ファン装置3)に要求する。
【0121】
監視制御部24は、ステップS4において送信した送信要求に対する応答として、他のモータ50におけるコイル電流のずれの割合の情報を受信したとき、駆動対象のモータ50におけるコイル電流のずれの割合と他のモータ50のコイル電流のずれの割合との差が、閾値を超えているか否かを判定する(ステップS5)。
【0122】
上記差が閾値を超えていない場合には(ステップS5:NO)、監視制御部24は、駆動対象のモータ50が正常状態であると判定する(ステップS6)。一方、上記差が閾値を超えている場合には(ステップS5:YES)、監視制御部24は、駆動対象のモータ50が異常状態であると判定し、異常検出情報254を生成する(ステップS7)。そして、監視制御部24は、異常検出情報254を通信部15を介して上位装置4に送信することにより、駆動対象のモータ50にコイル電流の異常が発生したことを上位装置4に通知する(ステップS8)。
【0123】
次に、ファンシステム1における複数のモータ駆動制御装置10間の通信について説明する。
【0124】
図8は、本実施の形態に係るファンシステム1における複数のモータ駆動制御装置10間の通信の一例を示すシーケンス図である。
【0125】
例えば、ファン装置3_1のモータ駆動制御装置10が、モータ50の回転中に、監視パラメータとしてのコイル電流のずれの割合が許容範囲(±20%)を超えたとする(ステップS20)。ここでは、ファン装置3_1のモータ50のコイル電流のずれの割合が+22%であったとする。
【0126】
ファン装置3_1のモータ駆動制御装置10は、先ず、ファン装置3_2に対して、監視パラメータとしてのコイル電流に関する問い合わせを行う(ステップS21)。次に、ファン装置3_2のモータ駆動制御装置10が、自身の駆動対象であるモータ50のコイル電流のずれの割合を算出し、その情報をファン装置3_1に対して送信する。ここでは、ファン装置3_2におけるモータ50のコイル電流のずれの割合が+20%であったとする。
【0127】
次に、ファン装置3_1は、自身の駆動対象のモータ50のコイル電流のずれの割合と、ファン装置3_2のモータ50のコイル電流のずれの割合との差(22%-20%=2%)を算出し、算出した差と閾値(例えば、10%)とを比較する(ステップS22)。上述の例の場合、差が“2%”であり、閾値(10%)を超えていないため、ファン装置3_1のモータ駆動制御装置10は、駆動対象のモータ50が正常状態であると判定する(ステップS23)。
【0128】
次に、ファン装置3_1のモータ駆動制御装置10は、残りのファン装置3_3,3_4に対しても同様に、コイル電流に関する問い合わせを行う(ステップS25,S26)。ここでは、ファン装置3_4から送信されたコイル電流のずれの割合が“+5%”であったとする(ステップS27)。
【0129】
ファン装置3_1は、自身の駆動対象のモータ50のコイル電流のずれの割合と、ファン装置3_4のモータ50のコイル電流のずれの割合との差(22%-5%=17%)を算出し、算出した差と閾値(例えば、10%)とを比較する(ステップS22)。上述の例の場合、差が“17%”であり、閾値(10%)を超えているため、ファン装置3_1のモータ駆動制御装置10は、駆動対象のモータ50が異常状態であると判定する(ステップS29)。そして、ファン装置3_1のモータ駆動制御装置10は、モータ50が異常状態であることを上位装置4に通知する(S30)。
【0130】
このように、ファンシステム1における各ファン装置3のモータ駆動制御装置10は、監視パラメータの基準値に対する計測値のずれの割合が所定の範囲を超えていた場合に、自身の監視パラメータのずれの割合と他のファン装置3における監視パラメータのずれの割合との差を夫々算出する。そして、例えば、本例のように、ずれの割合の差が一つでも閾値を超えていた場合には、駆動対象のモータ50が異常状態であると判定する。
【0131】
なお、モータ駆動制御装置10は、他のファン装置3における監視パラメータのずれの割合の平均値を算出し、その平均値と自身の監視パラメータのずれの割合との差を算出し、その差が閾値を超えていた場合に、駆動対象のモータ50が異常状態であると判定してもよい。
【0132】
以上、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10は、駆動対象のモータ50の動作に関連する物理量を監視パラメータとし、駆動対象のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれと、通信部15によって取得した他のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれとの比較結果に基づいて、駆動対象のモータ50が異常状態であるか否かを判定する。
【0133】
上述したように、駆動対象のモータ50と、他のモータ駆動制御装置10によって駆動制御されるモータ50とが、気圧が均一となるような同一の空間内に設置されている場合、気圧の影響により、駆動対象のモータ50における監視パラメータの計測値が変化したとき、他のモータ50における監視パラメータの計測値も気圧の影響を受けて同様に変化する。
【0134】
したがって、本モータ駆動制御装置10のように、駆動対象のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれと、通信部15によって取得した他のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれとを比較することにより、各モータ50の監視パラメータ間における相対的な気圧の影響を無視することができる。これにより、気圧を監視することなく、モータ50の異常状態を適切に検出することが可能となる。
【0135】
また、モータ駆動制御装置10によれば、気圧を監視するためのセンサや回路等が不要であるため、コストを抑えつつ、モータ50の異常判定精度を向上させたモータ駆動制御装置を実現することが可能となる。
【0136】
また、各モータ50における監視パラメータの計測値そのものを比較するのではなく、監視パラメータの基準値に対する計測値のずれを比較することにより、各モータ50の回転速度が異なる等、各モータ50の動作条件が互いに異なる場合であっても、モータ50の異常状態を適切に検出することが可能となる。
【0137】
また、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10は、駆動対象のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれと、他のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれとの差が閾値を超えている場合に、駆動対象のモータ50が異常状態であると判定する。
【0138】
これによれば、駆動対象のモータ50における監視パラメータが他のモータ50の監視パラメータに対してどの程度乖離しているのかを定量的に判断することが可能となるので、モータ50の異常判定処理が容易となる。
【0139】
また、監視制御部24は、駆動対象のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれが基準値に基づく許容範囲を超えている場合に、他のモータ50における監視パラメータの基準値に対する計測値のずれの情報を、通信部15を介して取得する。
これによれば、駆動対象のモータ50が異常である可能性が高い場合に他のモータ駆動制御装置10との間で通信を行うようにすることができるので、モータ駆動制御装置10間の通信の効率化が図れる。
【0140】
また、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10は、駆動対象のモータ50の動作に関連する物理量としてのモータ50の回転速度、モータ50のコイル電流、およびコイル電圧のうち一つを監視パラメータとして選択し、選択した監視パラメータ毎に基準値を設定する。
【0141】
これによれば、モータ50の回転速度、モータ50のコイル電流、およびコイル電圧のそれぞれをモータ50の異常検出のための監視対象とすることができ、監視対象毎にモータ50の異常判定処理を行うことが可能となる。
【0142】
また、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10は、駆動対象のモータ50の動作に関連する物理量のうち監視パラメータ以外の一つの物理量を条件パラメータとして選択し、選択した条件パラメータに基づいて監視パラメータの基準値を設定する。
【0143】
これによれば、駆動対象のモータ50の動作状態に応じて適切な基準値を設定することができるので、モータ50の動作に関連する複数の物理量間の相関性を考慮した、モータ50の異常判定処理を行うことができる。
【0144】
更に、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置10は、監視パラメータおよび条件パラメータ以外の温度を含む物理量を補正パラメータとして設定し、補正パラメータに基づいて、監視パラメータの基準値を補正してもよい。
これによれば、駆動対象のモータ50の動作状態に応じてより適切な基準値を設定することができるので、より高精度なモータ50の異常判定処理を行うことができる。
【0145】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0146】
例えば、上記実施の形態では、モータの動作に関連するパラメータ(物理量)のうち一つを監視パラメータとして選択する場合を例示したが、これに限られない。例えば、監視制御部24は、複数の物理量を監視パラメータとして設定して監視してもよい。
【0147】
上述の実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータの相数は、3相に限られない。また、ホール素子の数は、3個に限られない。
【0148】
また、モータの回転速度の検出方法は特に限定されない。例えば、ホール素子などの位置検出器を用いず、モータコイルに誘起する逆起電圧を用いて回転速度を検出する位置センサレス方式によって回転速度を検出してもよい。
【0149】
上述のシーケンス図およびフローチャートは具体例であって、このシーケンス図およびフローチャートに限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されていてもよいし、処理が並列化されていてもよい。
【符号の説明】
【0150】
1…ファンシステム、2…モータ駆動制御システム、3,3_1~3_4…ファン装置、4…上位装置(外部の一例)、5…ファン(ファンモータ)、6,7…通信線、8…筐体、9_1~9_4…冷却対象、10…モータ駆動制御装置、11…駆動制御信号生成部、12…速度指令解析部、13…デューティ比決定部、14…通電制御部、15…通信部、16…送信部、17…受信部、18…通信制御部、19…モータ駆動回路、20…センサ部、21…回転速度計測部、22…FG信号生成部、23…計測データ生成部、24…監視制御部、25…記憶部、41…データ処理制御部、42…通信部、50…モータ、51…インペラ(羽根車)、251…計測データ、252…基準値情報、253…閾値情報、254…異常検出情報、Sc…速度指令信号、Sd…駆動制御信号、So…回転速度信号。