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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187590
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
A63B37/00 326
A63B37/00 314
A63B37/00 322
A63B37/00 328
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095656
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山邊 将大
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、コアと、該コアを被覆する少なくとも1層のカバーを具備するゴルフボールであり、上記カバーの少なくとも1層は、下記(I)~(III)成分
(I)ポリウレタン又はポリウレア
(II)熱可塑性ポリエステルエラストマー
(III)芳香族ビニル系エラストマー
を含有した樹脂組成物により形成され、上記(II)成分は、ショアD硬度45以下、反発弾性率74%以下、200℃・剪断速度243(1/sec)における溶融粘度1.5×104(dPa・s)以下であり、その配合量が(I)成分100質量部に対して20質量部以下であると共に、上記(III)成分は、ショアD硬度30以下、反発弾性率30%以下、その配合量が(I)成分100質量部に対して20質量部以下であるゴルフボールを提供する。
【効果】本発明のゴルフボールは、アプローチショット時のコントロール性に優れると共に、耐擦過傷性と成型性とを良好に維持できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のゴム製コアと、該コアを被覆する少なくとも1層のカバーを具備するゴルフボールにおいて、上記カバーの少なくとも1層は、下記(I)~(III)成分
(I)ポリウレタン又はポリウレア
(II)熱可塑性ポリエステルエラストマー
(III)芳香族ビニル系エラストマー
を含有した樹脂組成物により形成され、上記(II)成分の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ショアD硬度が45以下であり、反発弾性率が74%以下であり、200℃・剪断速度243(1/sec)における溶融粘度が1.5×104(dPa・s)以下であり、その配合量が上記(I)成分100質量部に対して20質量部以下であると共に、上記(III)成分の芳香族ビニル系エラストマーは、ショアD硬度が30以下であり、反発弾性率が30%以下であり、その配合量が上記(I)成分100質量部に対して20質量部以下であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記(II)成分の配合量は、上記(I)成分100質量部に対して15質量部以下である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記(III)成分の配合量は、上記(I)成分100質量部に対して15質量部以下である請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記(III)成分が水添芳香族ビニル系エラストマーである請求項1~3のいずれか1項記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記(III)成分が、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック、および、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体ブロックからなる重合体を水添して得られるエラストマーである請求項1~4のいずれか1項記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記(III)成分が、スチレンからなる重合体ブロック、および、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体ブロックからなり、両末端にスチレンからなる重合体ブロック、中間にランダム共重合体ブロックを有する重合体を水添して得られる水添芳香族ビニル系エラストマーである請求項1~5のいずれか1項記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1層のコアと、少なくとも1層のカバーを有するゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールの要求特性は、主に飛距離の増大であるが、そのほかには、アプローチショット時にはボールが良く止まる性能や耐擦過傷性がある。即ち、今までは、ドライバー打撃時はよく飛び、アプローチショット時にはバックスピンが好適にかかるゴルフボールが多く開発されている。最近では、プロや上級者向きとして、アイオノマー樹脂材料に代わるものとしてウレタン樹脂材料を採用するものが多くなっている。
【0003】
ウレタン樹脂材料をベース樹脂して、他の樹脂材料を混合させたポリマーブレンドのカバー材料がいくつか提案されている。例えば、特開平11-9721号公報(特許文献1)には、カバー材の耐擦過傷性を改良するため、熱可塑性ポリウレタンとスチレンベースブロック共重合体のブレンド物をカバーの主材として用いることが提案されている。しかし、このブレンドのカバーは、反発弾性や耐擦過傷性の面で不充分であった。
【0004】
また、特開2021-3451号公報(特許文献2)には、ポリウレタン樹脂材料に芳香族ビニル系エラストマーを配合した樹脂組成物をカバー材料に用いることにより、ドライバーショット時の飛距離を落とすことなく、アプローチ時のコントロール性に優れ、耐擦過傷性を良好に維持できるゴルフボールを提供するが記載されている。しかしながら、上記提案のゴルフボールであっても、アプローチ時のスピン量が不十分な点もあり、耐擦過傷性や成型性を良好に維持しつつ、更なるスピン量を多くしてコントロール性をより一層高めることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-9721号公報
【特許文献2】特開2021-3451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、従来のウレタン製カバーを有するゴルフボールに比べて、アプローチショット時のコントロール性が高くなると共に、耐擦過傷性及び成型性が良好なゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため、コアとカバーとを具備するゴルフボールにおいて、上記カバーの材料として、ポリウレタン又はポリウレアを主成分として用いる樹脂材料のポリマーブレンドとして、ポリウレタン又はポリウレアとの相溶性が良好な特定の低硬度の熱可塑性ポリエステルエラストマー(本発明の(II)成分)と、ポリウレタン又はポリウレアとの相溶性が良好な特定の芳香族ビニル系エラストマー(本発明の(III)成分)とを併用したものを用いることにより、これらの材料成分からなる樹脂組成物の成型物をカバーとするゴルフボールを作製したところ、このゴルフボールは、アプローチショット時のコントロール性に優れると共に、耐擦過傷性と成型性とが共に良好であることを知見し、本発明をなすに至った。即ち、本発明は、ポリウレタン又はポリウレアを主成分として用いる樹脂組成物において、添加する樹脂として、上記特定の熱可塑性ポリエステルエラストマーと特定の芳香族ビニル系エラストマーとを併用することにより、ポリウレタン等のベース樹脂との相溶性が良く、樹脂組成物に低硬度且つ一定以上の反発弾性を与え、アプローチ時のコントロール性、耐擦過傷性及び成形性の点で満足できるゴルフボールを得ることができ、本発明の課題を解決し得るものである。
【0008】
従って、本発明は、下記のゴルフボールを提供する。
1.少なくとも1層のゴム製コアと、該コアを被覆する少なくとも1層のカバーを具備するゴルフボールにおいて、上記カバーの少なくとも1層は、下記(I)~(III)成分
(I)ポリウレタン又はポリウレア
(II)熱可塑性ポリエステルエラストマー
(III)芳香族ビニル系エラストマー
を含有した樹脂組成物により形成され、上記(II)成分の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ショアD硬度が45以下であり、反発弾性率が74%以下であり、200℃・剪断速度243(1/sec)における溶融粘度が1.5×104(dPa・s)以下であり、その配合量が上記(I)成分100質量部に対して20質量部以下であると共に、上記(III)成分の芳香族ビニル系エラストマーは、ショアD硬度が30以下であり、反発弾性率が30%以下であり、その配合量が上記(I)成分100質量部に対して20質量部以下であることを特徴とするゴルフボール。
2.上記(II)成分の配合量は、上記(I)成分100質量部に対して15質量部以下である上記1記載のゴルフボール。
3.上記(III)成分の配合量は、上記(I)成分100質量部に対して15質量部以下である上記1又は2記載のゴルフボール。
4.上記(III)成分が水添芳香族ビニル系エラストマーである上記1~3のいずれかに記載のゴルフボール。
5.上記(III)成分が、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック、および、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体ブロックからなる重合体を水添して得られるエラストマーである上記1~4のいずれかに記載のゴルフボール。
6.上記(III)成分が、スチレンからなる重合体ブロック、および、スチレンとブタジエンとのランダム共重合体ブロックからなり、両末端にスチレンからなる重合体ブロック、中間にランダム共重合体ブロックを有する重合体を水添して得られる水添芳香族ビニル系エラストマーである上記1~5のいずれかに記載のゴルフボール。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴルフボールは、従来のウレタン製カバーを有するゴルフボールに比べて、アプローチショット時のコントロール性が高くなり、耐擦過傷性を良好に維持でき、成型性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、少なくとも1層からなるコアに、少なくとも1層のカバー、即ち、単層又は複数層のカバーが被覆されるゴルフボールである。
【0011】
上記コアは、公知のゴム材料を基材として形成することができる。基材ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムの公知の基材ゴムを使用することができ、より具体的には、ポリブタジエン、特にシス構造を少なくとも40%以上有するシス-1,4-ポリブタジエンを主に使用することが推奨される。また、基材ゴム中には、所望により上述したポリブタジエンと共に、天然ゴム,ポリイソプレンゴム,スチレンブタジエンゴムなどを併用することができる。
【0012】
また、ポリブタジエンは、Nd触媒の希土類元素系触媒,コバルト触媒及びニッケル触媒等の金属触媒により合成することができる。
【0013】
上記の基材ゴムには、不飽和カルボン酸及びその金属塩等の共架橋剤,酸化亜鉛,硫酸バリウム,炭酸カルシウム等の無機充填剤,ジクミルパーオキサイドや1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物等を配合することができる。また、必要により、市販品の老化防止剤等を適宜添加することができる。
【0014】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形又は射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、100~200℃、好ましくは140~180℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて製造することができる。
【0015】
本発明のゴルフボールは、コアに単層又は複数層のカバーが被覆される。このようなゴルフボールの態様としては、例えば、コアに単層のカバーを有するゴルフボールや、コアと、該コアを被覆する中間層と、該中間層を被覆する最外層を有するゴルフボールが挙げられる。
【0016】
本発明では、上記カバーの少なくとも1層の樹脂材料としては、下記(I)~(III)成分
(I)ポリウレタン又はポリウレア
(II)熱可塑性ポリエステルエラストマー
(III)芳香族ビニル系エラストマー
を含有した樹脂組成物により形成される。
【0017】
(I)ポリウレタンまたはポリウレア
【0018】
ポリウレタンまたはポリウレアは、上記カバー材料(樹脂組成物)の主材またはベース樹脂となり得るものである。この成分であるポリウレタン(I-a)またはポリウレア(I-b)の詳細は以下のとおりである。
【0019】
(I-a)ポリウレタン
【0020】
ポリウレタンの構造は、長鎖ポリオールである高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、ハードセグメントを構成する鎖延長剤及びポリイソシアネートからなる。ここで、原料となる高分子ポリオールとしては、従来からポリウレタン材料に関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではない。例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。ポリエステル系ポリオールとしては、具体的には、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリプロピレンアジペートグリコール、ポリブタジエンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール等のアジペート系ポリオールやポリカプロラクトンポリオール等のラクトン系ポリオールを採用することができる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)及びポリ(テトラメチレングリコール)、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記高分子ポリオールとしては、ポリエーテル系ポリオールを用いることが好適である。
【0022】
上記の長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,000~5,000の範囲内であることが好ましい。かかる数平均分子量を有する長鎖ポリオールを使用することにより、上記した反発性や生産性などの種々の特性に優れたポリウレタン組成物からなるゴルフボールを確実に得ることができる。長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,500~4,000の範囲内であることがより好ましく、1,700~3,500の範囲内であることが更に好ましい。
【0023】
なお、上記の数平均分子量とは、JIS-K1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である(以下、同様。)。
【0024】
鎖延長剤としては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限されるものではない。本発明では、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有し、かつ分子量が2,000以下である低分子化合物を用いることができ、その中でも炭素数2~12の脂肪族ジオールを好適に用いることができる。具体的には、1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができ、その中でも特に1,4-ブチレングリコールを好適に使用することができる。
【0025】
ポリイソシアネートとしては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はない。具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。ただし、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。
【0026】
また、上記ポリウレタン形成反応における活性水素原子:イソシアネート基の配合比は適宜好ましい範囲にて調整することができる。具体的には、上記の長鎖ポリオール、ポリイソシアネート化合物及び鎖延長剤を反応させてポリウレタンを製造するに当たり、長鎖ポリオールと鎖延長剤とが有する活性水素原子1モルに対して、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が0.95~1.05モルとなる割合で各成分を使用することが好ましい。
【0027】
ポリウレタンの製造方法は特に限定されず、長鎖ポリオール、鎖延長剤及びポリイソシアネート化合物を使用して、公知のウレタン化反応を利用して、プレポリマー法、ワンショット法のいずれで製造してもよい。そのうちでも、実質的に溶剤の不存在下に溶融重合することが好ましく、特に多軸スクリュー型押出機を用いて連続溶融重合により製造することが好ましい。
【0028】
上述したポリウレタンとしては、熱可塑性ポリウレタン材料を用いることが好ましく、特にエーテル系熱可塑性ポリウレタン材料であることが好適である。熱可塑性ポリウレタン材料としては、市販品を好適に用いることができ、例えば、ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」や、大日精化工業社製の商品名「レザミン」などを挙げることができる。
【0029】
(I-b)ポリウレア
ポリウレアは、(i)イソシアネートと(ii)アミン末端化合物との反応により生成するウレア結合を主体にした樹脂組成物である。この樹脂組成物について以下に詳述する。
【0030】
(i)イソシアネート
イソシアネートは、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はなく、上記ポリウレタン材料で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0031】
(ii)アミン末端化合物
アミン末端化合物は、分子鎖の末端にアミノ基を有する化合物であり、本発明では、以下に示す長鎖ポリアミン及び/又はアミン系硬化剤を用いることができる。
【0032】
長鎖ポリアミンは、イソシアネート基と反応し得るアミノ基を分子中に2個以上有し、かつ数平均分子量が1,000~5,000であるアミン化合物である。本発明では、より好ましい数平均分子量は1,500~4,000であり、更に好ましくは1,900~3,000である。上記長鎖ポリアミンの具体例としては、アミン末端を持つ炭化水素、アミン末端を持つポリエーテル、アミン末端を持つポリエステル、アミン末端を持つポリカーボネート、アミン末端を持つポリカプロラクトン、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの長鎖ポリアミンは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
一方、アミン系硬化剤は、イソシアネート基と反応し得るアミノ基を分子中に2個以上有し、かつ数平均分子量が1,000未満であるアミン化合物である。本発明では、より好ましい数平均分子量は800未満であり、更に好ましくは600未満である。上記アミン系硬化剤の具体例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1-メチル-2,6-シクロヘキシルジアミン、テトラヒドロキシプロピレンエチレンジアミン、2,2,4-及び2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタン、1,4-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、1,2-ビス-(sec-ブチルアミノ)-シクロヘキサン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジシクロヘキシルメタンの誘導体、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサン-ビス-(メチルアミン)、1,3-シクロヘキサン-ビス-(メチルアミン)、ジエチレングリコールジ-(アミノプロピル)エーテル、2-メチルペンタメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、プロピレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピレントリアミン、イミド-ビス-プロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、イソホロンジアミン、4,4’-メチレンビス-(2-クロロアニリン)、3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,6-トルエンジアミン、3,5-ジエチルチオ-2,4-トルエンジアミン、3,5-ジエチルチオ-2,6-トルエンジアミン、4,4’-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ジフェニルメタン及びその誘導体、1,4-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン、1,2-ビス-(sec-ブチルアミノ)-ベンゼン、N,N’-ジアルキルアミノ-ジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリメチレングリコール-ジ-p-アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、4,4’-メチレンビス-(3-クロロ-2,6-ジエチレンアニリン)、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジエチルアニリン)、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。これらのアミン系硬化剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(iii)ポリオール
ポリウレアには、必須成分ではないが、上述した(i)成分及び(ii)成分に加えて更にポリオールを配合することができる。このポリオールとして、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はないが、具体例として、以下に示す長鎖ポリオール及び/又はポリオール系硬化剤を例示することができる。
【0035】
長鎖ポリオールとしては、従来からポリウレタンに関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの長鎖ポリオールは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記長鎖ポリオールの数平均分子量は、1,000~5,000であることが好ましく、より好ましくは1,700~3,500である。この数平均分子量の範囲であれば、反発性及び生産性等がより一層優れるものとなる。
【0037】
ポリオール系硬化剤としては、従来のポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限されるものではない。本発明では、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有し、かつ分子量が1000未満である低分子化合物を用いることができ、その中でも炭素数2~12の脂肪族ジオールを好適に用いることができる。具体的には、1,4-ブチレングリコール、1,2-エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等を挙げることができ、その中でも特に1,4-ブチレングリコールを好適に使用することができる。また、上記ポリオール系硬化剤の、好ましい数平均分子量は800未満であり、より好ましくは600未満である。
【0038】
上記ポリウレアの製造方法については、公知の方法を採用し得、プレポリマー法、ワンショット法等の公知の方法を適宜選択すればよい。
【0039】
上記(I)成分の材料硬度については、ゴルフボールとして得られるスピン特性や耐擦過傷性の点から、ショアD硬度で52以下であることが好ましく、より好ましくはショアD硬度で50以下、更に好ましくは48以下である。また、その下限値としては、成型性の点からショアD硬度で38以上が好ましく、より好ましくはショアD硬度で40以上である。
【0040】
上記(I)成分の反発弾性率は、アプローチスピン量の向上の点から、55%以上であることが好ましく、より好ましくは57%以上、更に好ましくは59%以上である。上記の反発弾性率は、JIS-K 6255:2013規格に基づいて測定される。
【0041】
上記(I)成分は樹脂組成物の主材であり、ウレタン樹脂が有する耐擦過傷性を十分に付与する点から、樹脂組成物の50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0042】
(II)熱可塑性ポリエステルエラストマー
(II)成分の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、樹脂組成物に一定以上の反発性を付与し、この反発性付与と相まってアプローチ時のスピン量を一定以上に高く維持できるものである。また、(II)成分の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ベース樹脂である上記(I)成分との相溶性が良く、特に、従来から用いられる熱可塑性ポリエステルエラストマーよりも相溶性が良好となり、その結果、耐擦過傷性を良好に付与し得る。さらに、樹脂組成物に上記熱可塑性ポリエステルエラストマーを必須成分とする配合することにより、一定以上の溶融粘度を有することで、樹脂組成物の成型後に固化性を付与し、即ち、ベース樹脂である上記(I)成分が軟らかいことにより樹脂組成物全体の粘度が下がることを抑制し、成型性(生産性)低下や、成型後のゴルフボールの外観不良増加の防止、冷却時間の増大による生産コスト高を抑制することができる。
【0043】
(II)成分の熱可塑性ポリエステルエラストマーは、
(b-1)ポリエステルブロック共重合体と(b-2)硬質樹脂とからなる樹脂組成物である。更に、上記(b-1)成分は、(b-1-1)高融点結晶性重合体セグメントと、(b-1-2)低融点重合体セグメントとを構成成分とする。
【0044】
上記(b-1)成分のポリエステルブロック共重合体を構成する(b-1-1)高融点結晶性重合体セグメントは、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、ジオール又はそのエステル形成性誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上で形成されるポリエステルである。
【0045】
まず、芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、及び3-スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。本発明においては、芳香族ジカルボン酸を主に用いるが、必要に応じてこの芳香族ジカルボン酸の一部を、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、及び4,4’-ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、及びダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸に置換してもよい。また、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の具体例としては、上述したジカルボン酸の低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル及び酸ハロゲン化物等を挙げることができる。
【0046】
次に、ジオールとしては、分子量400以下のジオールを好適に用いることができる。具体的には、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びデカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジシクロヘキサンジメタノール、及びトリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2’-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、及び4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニル等の芳香族ジオールを例示することができる。また、ジオールのエステル形成性誘導体の具体例としては、上述したジオールのアセチル体、アルカリ金属塩等を挙げることができる。
【0047】
上記の芳香族ジカルボン酸、ジオール、並びにこれらの誘導体は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記(b-1-1)成分としては、特にテレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4-ブタジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位からなるものや、イソフタル酸及び/又はジメチルイソフタレートと1,4ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位からなるもの、更には、その両者の共重合体を好適に用いることができる。
【0049】
上記(b-1-2)低融点重合体セグメントは、脂肪族ポリエーテル及び/又は脂肪族ポリエステルである。
【0050】
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール等が挙げられる。また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。本発明では、弾性特性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、及びポリエチレンアジペート等を好適に使用することができる。更には、これらの中でも特にポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、及びエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールを使用することが推奨される。また、これらのセグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300~6000程度であることが好ましい。
【0051】
上記(b-1)成分は公知の方法で製造することができる。具体的には、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール及び低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下でエステル交換反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法や、ジカルボン酸と過剰量のグリコール及び低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下でエステル化反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法等を採用することができる。
【0052】
(b-1)成分において上記(b-1-2)成分が占める割合は30~60質量%である。この場合、好ましい下限値は35質量%以上とすることができ、好ましい上限値は55質量%以下とすることができる。(b-1-2)成分の割合が少なすぎると、(特に低温時における)耐衝撃性や相溶性が不足するおそれがある。一方、(b-1-2)成分の割合が多すぎると、樹脂組成物(及び成形体)の剛性が不足することがある。
【0053】
(b-2)成分の硬質樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ABS樹脂やポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、及び変性ポリフェニレンエーテルよりなる群から選択される1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、相溶性の点からポリエステル樹脂を好適に使用することができ、更に好ましくは、ポリブチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンナフタレートを使用することが推奨される。
【0054】
上記の(b-1)成分及び(b-2)成分の配合比率((b-1):(b-2))は、特に制限されるものではないが、質量比で50:50~90:10とすることが好ましく、より好ましくは55:45~80:20である。(b-1)成分の割合が少なすぎると、(低温時における)耐衝撃性が不足するおそれがある。一方、(b-1)成分の割合が多すぎると、組成物(及び成形体)の剛性及び成形加工性が不足するおそれがある。
【0055】
このような(II)熱可塑性ポリエステル系エラストマーとしては、市販品を用いることができ、具体例としては、東レ・デュポン社製の“ハイトレル”を挙げることができる。
【0056】
上記(II)成分の材料硬度については、アプローチスピン量の向上の点から、ショアD硬度で45以下であり、より好ましくはショアD硬度で43以下、更に好ましくは41以下である。また、その下限値としては、ショアD硬度で36以上が好ましく、より好ましくはショアD硬度で38以上である。
【0057】
(II)成分の反発弾性率は、アプローチ初速低下の点からの点から、74%以下であることが好ましく、より好ましくは73%以下、更に好ましくは72%以下である。また、上記反発弾性率の下限値は、好ましくは50%以上、より好ましくは52%以上、さらに好ましくは60%以上である。上記の反発弾性率は、JIS-K 6255:2013規格に基づいて測定される。
【0058】
(II)成分の熱可塑性ポリエステルエラストマーの溶融粘度は、1.5×104(dPa・s)以下であり、好ましくは1.45×104(dPa・s)以下、より好ましくは1.0×104(dPa・s)以下、さらに好ましくは0.8×104(dPa・s)以下であり、下限値は、0.4×104(dPa・s)以上とすることが好ましく、より好ましくは0.5×104(dPa・s)以上である。この溶融粘度を有することにより、樹脂組成物の成型後に固化性を付与し、成型性(生産性)を良好に維持することができる。この溶融粘度は、ISO 11443:1995に準じて、温度条件200℃にてキャピログラフで測定したとき、せん断速度243(1/sec)における溶融粘度を示す。
【0059】
(II)成分の配合量については、上記(I)成分100質量部に対して、20質量部以下であり、好ましくは15質量部以下であり、この値を超えると、擦過傷性が低下するおそれがある。なお、上記の配合量の下限値は、上記(I)成分100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、さらに5質量部以上であることが好適である。
【0060】
(III)芳香族ビニル系エラストマー
次に(III)芳香族ビニル系エラストマーについて説明する。
(III)芳香族ビニル系エラストマーは、上述した(II)成分と併用することにより、従来のゴルフボールよりもアプローチ時のスピン量が高く得られ、コントロール性を十分に高めることができる。また、(III)芳香族ビニル系エラストマーは、後述するように一定以下の少量の配合により、ベース樹脂である上記(I)成分との相溶性が良く、また、上記(II)成分の熱可塑性ポリエステルエラストマーとの相溶性は良好であり、ゴルフボー及びその製造方法において、耐擦過傷性及び成形性を良好に維持できる。
【0061】
芳香族ビニル系エラストマーは、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック、および、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体ブロックからなる重合体(エラストマー)である。すなわち、芳香族ビニル系エラストマーは一般的に、SEBS等に代表されるように、ハードセグメントとして芳香族ビニル化合物の成分からなるブロックを両末端に、ソフトセグメントとして共役ジエン化合物の成分からなるブロックを中間に有している。最近の研究では、中間ブロックに、共役ジエン化合物の成分に加えて、芳香族ビニル系の成分をランダムに組み込んだポリマーも報告されている。芳香族ビニル系エラストマーの硬度は一般的に、ハードセグメントとなる芳香族ビニル含有量が減少するほど硬度が低下し、ソフトセグメント成分が増大するため反発弾性が上昇する。その一方、中間ブロックのソフト成分に対し芳香族ビニル成分をランダムに組み込んだ場合、硬度はあまり上昇せずに反発弾性が低下する。また、中間ブロックにランダムに組み込む芳香族ビニル化合物の代わりに、高Tgを示す共役ジエン化合物を用いることによっても同様な効果が得られる。特に、本発明では、上述した作用効果を十分に発揮させるために、(III)成分として、上記重合体(エラストマー)を水素添加処理されたものを用いることが好適である。
【0062】
上記重合体中の芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの群の中では、スチレンが好ましい。
【0063】
上記重合体中の共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの群の中では、ブタジエン、イソプレンが好ましく、ブタジエンがより好ましい。
【0064】
なお、上記共役ジエン化合物に由来する単位、例えば、ブタジエンに由来する単位は、水素添加処理が施されることにより、エチレン単位又はブチレン単位となる。例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)に対して、水素添加処理が施されることにより、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)となる。
【0065】
上述したように(III)成分である芳香族ビニル系エラストマーとしては、水素添加処理されたもの、すなわち、水添芳香族ビニル系エラストマーを採用することが好適である。水添芳香族ビニル系エラストマーとしては、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック、および、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体ブロックからなる重合体を水添して得られるエラストマーが好ましく、スチレンを主体とする重合体ブロックおよびスチレンとブタジエンとのランダム共重合体ブロックからなる重合体を水添して得られるエラストマーがより好ましく、スチレンを主体とする重合体ブロックおよびスチレンとブタジエンとのランダム共重合体ブロックからなり、特に、両末端にスチレンを主体とする重合体ブロック(特に両末端にスチレンのみから重合体ブロック)、中間にランダム共重合体ブロックを有する重合体を水添して得られるエラストマーが好ましい。この構造を有する共重合体を使用することで、低硬度化と低反発化を共に具備し、且つ成形後の固化速度が早いためタックが少なく、主成分である(I)ポリウレタンまたはポリウレアとの相溶性に優れるためブレンドによる物性低下を最小限に抑制することができると考えられる。
【0066】
上記水添芳香族ビニル系エラストマーの具体例としては、例えば、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIB)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP)等が挙げられる。
【0067】
上記芳香族ビニル系エラストマーにおいて、芳香族ビニル化合物に由来する単位がその共重合体に占める割合(即ち、芳香族ビニル化合物含有量、好ましくはスチレン含有量)については、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、最も好ましくは60質量%以上である。このように、芳香族ビニル化合物含有量、好ましくはスチレン含有量を多く設定することで、(I)成分であるポリウレタンまたはポリウレアとの相溶性が良好となり、且つ、所望の硬度と成形性の悪化を防ぐことができる。なお、上記の芳香族ビニル化合物に由来する単位の含有量(好ましくはスチレン含有量)の測定は、H1-NMR測定により算出することができる。
【0068】
また、上記芳香族ビニル系エラストマーにおいて、動的粘弾性測定(DMA)により得られるtanδピーク温度で示されるガラス転移温度(Tg)が-20~50℃であることが好ましく、より好ましくは0℃以上、更に好ましくは5℃以上である。即ち、上記tanδピーク温度が、ゴルフボールが通常使用される温度付近に有することにより、ゴルフボールが通常使用される温度領域において樹脂組成物全体の反発弾性を低く抑えて本発明の所望の効果を高めることができると考えられる。
【0069】
(III)成分である芳香族ビニル系エラストマーとしては市販品を用いることができ、例えば、市販品としては、旭化成社製の「S.O.E.(商標名)」、「タフテック」及び「タフプレン」、或いは、DIC社製の「ディックスチレン」等を挙げることができる。
【0070】
(III)成分の材料硬度については、アプローチスピン量の向上の点から、ショアD硬度で30以下であり、より好ましくはショアD硬度で28以下、更に好ましくは26以下である。また、その下限値としては、ショアD硬度で18以上が好ましく、より好ましくはショアD硬度で20以上である。
【0071】
(III)成分の反発弾性率は、アプローチスピン量を維持且つアプローチでの反発性を低く抑えてコントロール性を得る点から、30%以下であることが好ましく、より好ましくは25%以下、更に好ましくは22%以下である。このように反発弾性率を非常に低く抑えることにより、少ない添加量でゴルフボール物性に悪影響を及ぼすことなく、アプローチショット時のボール初速低下が実現できる。但し、その反発弾性率の下限値は、ドライバーショット時の反発低下及び飛距離の低減への影響をできるだけ抑制するために15%以上が好ましく、より好ましくは20%以上である。上記の反発弾性率は、JIS-K 6255:2013規格に基づいて測定される。
【0072】
(III)成分の配合量は、上記(I)成分100質量部に対して30質量部以下であり、好ましくは15質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下である。また上記配合量の下限値としては、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であることが好ましい。(III)成分の配合量が多くなると、耐擦過傷性や成型性が悪化するおそれがある。一方、(III)成分の配合量があまりにも少ないと、カバー樹脂材料として低硬度且つ所望の反発弾性が得らなくなり、アプローチショット時のボール初速低下効果も少なくなる場合がある。
【0073】
上記(I)~(III)を含有する樹脂組成物には、上述した樹脂成分以外には、他の樹脂材料を配合してもよい。その目的は、ゴルフボール用樹脂組成物の更なる流動性の向上や反発性、割れ耐久性などの諸物性を高めるなどの点からである。
【0074】
他の樹脂材料としては、具体的には、ポリアミドエラストマー、アイオノマー樹脂、エチレン-エチレン・ブチレン-エチレンブロック共重合体又はその変性物、ポリアセタール、ポリエチレン、ナイロン樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド及びポリアミドイミドから選ばれ、その1種又は2種以上を用いることができる。
【0075】
また、上記樹脂組成物には、更に、活性のあるイソシアネート化合物を含むことができる。この活性イソシアネート化合物は、主成分であるポリウレタン又はポリウレアと反応して、樹脂組成物全体の耐擦過傷性を更に向上させることができるほか、イソシアネートの可塑化効果により流動性を向上させて成型性を向上させることができる。
【0076】
上記のイソシアネート化合物としては、通常のポリウレタンに使用されているイソシアネート化合物であれば特に制限なく用いることができ、例えば芳香族イソシアネート化合物としては、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート又はこれら両者の混合物、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニルジイソシアネートなどが挙げられ、これら芳香族イソシアネート化合物の水添物、例えばジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどを用いることもできる。また、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。更に、末端に2個以上のイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基と活性水素を有する化合物とを反応させたブロックイソシアネート化合物や、イソシアネートの二量化によるウレチジオン体などが挙げられる。
【0077】
上記のイソシアネート化合物の配合量は、(I)成分であるポリウレタンまたはポリウレア樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、上限値としては、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。この配合量が少なすぎると、十分な架橋反応が得られず、物性の向上が認められない場合がある。一方、この配合量が多すぎると、経時、熱や紫外線による変色が大きくなり、あるいは、熱可塑性を失ってしまったり、反発の低下等の問題が生じる場合がある。
【0078】
更に、上記樹脂組成物には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、本発明のゴルフボール用材料をカバー材として用いる場合、上記成分に、充填剤(無機フィラー)、有機短繊維、補強剤、架橋剤、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、基材樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0079】
上記樹脂組成物の反発弾性率については、アプローチスピン量の向上のために、JIS-K 6255:2013規格の測定で50%以上であることが必要とされ、好ましくは52%以上、さらに好ましくは54%以上であり、上限値は72%以下であり、好ましくは70%以下、より好ましくは68%以下である。
【0080】
また、上記樹脂組成物の材料硬度については、アプローチスピン量の向上の点から、ショアD硬度で49以下であることが必要とされ、好ましくは48以下、より好ましくはショアD硬度で47以下である。その下限値としては、成型性の点からショアD硬度で30以上が好ましく、より好ましくはショアD硬度で35以上である。
【0081】
上記樹脂組成物の各成分の調製方法については、例えば、混練型(単軸又は)二軸押出機,バンバリー,ニーダー,ラボプラストミル等の各種の混練機を用いて混合することができ、或いは、樹脂組成物の射出成形時にドライブレンドにより各成分を混合しても良い。更に、上記の活性イソシアネート化合物を用いる場合には、各種混練機を用いて樹脂混合時に含有させてもよく、または、予め活性イソシアネート化合物やその他の成分を含有したマスターバッチを別途用意し、樹脂組成物の射出成形時にドライブレンドすることにより、各成分を混合しても良い。
【0082】
例えば、上記樹脂組成物によりカバーを成形する方法としては、例えば、射出成形機に上述の樹脂組成物を供給し、コアの周囲に溶融した樹脂組成物を射出することによりカバーを成形することができる。この場合、成形温度としては、主成分である(I)ポリウレタン又はポリウレア等の種類によって異なるが、通常150~270℃の範囲である。
【0083】
カバーの厚さは、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.6mm以上であり、上限として、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。
【0084】
上記コアと上記との間に少なくとも1層の中間層を介在させる場合、中間層の材料としては、ゴルフボールのカバー材で使用される各種の熱可塑性樹脂、特にアイオノマー樹脂を採用することが好適であり、アイオノマー樹脂としては市販品を用いることができる。この場合、中間層の厚さは、上記カバーの厚さと同様の範囲内で設定することができる。
【0085】
本発明のゴルフボールには、空気力学的性能の点から、最外層の表面に多数のディンプルが設けられる。上記最外層表面に形成されるディンプルの個数については、特に制限はないが、空気力学的性能を高め飛距離を増大させる点から、好ましくは250個以上、より好ましくは270個以上、さらに好ましくは290個以上、最も好ましくは300個以上であり、上限値として、好ましくは400個以下、より好ましくは380個以下、さらに好ましくは360個以下である。
【0086】
本発明では、カバー表面には塗膜層が形成される。この塗膜層を形成する塗料としては、2液硬化型ウレタン塗料を採用することが好適である。具体的には、この場合、上記2液硬化型ウレタン塗料は、ポリオール樹脂を主成分とする主剤と、ポリイソシアネートを主成分とする硬化剤とを含むものである。
【0087】
カバー表面に上記の塗料を塗装して塗膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、エアガン塗装法や静電塗装法等、所望の方法を用いることができる。
【0088】
塗膜層の厚さについては、特に制限はないが、通常、8~22μm、好ましくは10~20μmである。
【0089】
なお、本発明のゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、ボール外径は42.672mm内径のリングを通過しない大きさで42.80mm以下、質量は好ましくは45.0~45.93gに形成することができる。
【実施例0090】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0091】
〔実施例1~12、比較例1~6〕
共通するコア
表1に示す配合により、全ての例に共通するコア用のゴム組成物を調製・加硫成形することにより直径38.6mmのコアを作製した。
【0092】
【表1】
【0093】
上記コア材料の詳細は下記のとおりである。
・「cis-1,4-ポリブタジエン」JSR社製、商品名「BR01」
・「アクリル酸亜鉛」日本触媒社製
・「酸化亜鉛」堺化学工業社製
・「硫酸バリウム」堺化学工業社製
・「老化防止剤」商品名「ノクラックNS6」(大内新興化学工業社製)
・「有機過酸化物(1)」ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・「有機過酸化物(2)」1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカの混合物、商品名「パーヘキサC-40」(日油社製)
・「ステアリン酸亜鉛」日油社製
【0094】
共通する中間層
直径38.6mmのコアの周囲に中間層用の樹脂材料を射出成形し、厚さ1.25mmの中間層を有する中間層被覆球体を作製した。この中間層用の樹脂材料は、全ての例に共通する樹脂配合であり、酸含量18質量%のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体のナトリウム中和物50質量部と、酸含量15質量%のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体の亜鉛中和物50質量部との合計100質量部とするブレンド物である。
【0095】
カバー(最外層)
次に、実施例3,4,8,10,11及び比較例1,2,3,5,6については、上記の中間層被覆球体の周囲に下記表2に示す最外層のカバー材料を射出成形し、厚さ0.8mmの最外層を有する直径42.7mmのスリーピースゴルフボールを作製した。この際、各実施例、比較例のカバー表面には、特に図示してはいないが、共通するディンプルが形成された。なお、カバーの樹脂組成物については、下記の表2に示す各成分の配合量となるように設計し、成形温度200~250℃で射出成型した。
また、実施例1,2,5~7、9、12及び比較例4については、上記と同様に、スリーピースゴルフボールを作製することとする。
【0096】
下記表2中の組成物中の含有成分の詳細は、以下の通りである。
・「TPU (1)」ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン(ショアD硬度「43」及び反発弾性率「61%」)
・「TPU (2)」ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン(ショアD硬度「47」及び反発弾性率「54%」)
【0097】
・「ポリエステルエラストマー1」東レ・デュポン社製の商品名「ハイトレル2401」、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(ショアD硬度「40」)
・「ポリエステルエラストマー2」東レ・デュポン社製の商品名「ハイトレル4001」と、商品名「ハイトレル2401」とを質量比29:1の比率で混合したもの
・「ポリエステルエラストマー3」東レ・デュポン社製の商品名「ハイトレル3001」、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(ショアD硬度「31」)
・「ポリエステルエラストマー4」東レ・デュポン社製、 熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(ショアD硬度「55」)
・「ポリエステルエラストマー5」東レ・デュポン社製の商品名「ハイトレル4001」、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(ショアD硬度「37」)
・「水添芳香族ビニル系エラストマー」旭化成社製の商品名「S.O.E. S1611」(スチレン含有量:60wt%、ショアD硬度「23」、及び反発弾性:20%)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)
【0098】
樹脂組成物の物性
〔1〕反発弾性率
JIS-K 6255:2013規格に基づいて測定した樹脂組成物の反発弾性率を表2に示す。
〔2〕溶融粘度
ISO 11443:1995に準じて、温度条件200℃にてキャピログラフで測定したとき、せん断速度243(1/sec)における溶融粘度を表2及び表3に示す。
【0099】
各ゴルフボールのアプローチ時のスピン性能、初速性能、耐擦過傷性、コントロール性及び成型性を下記の方法で評価する。その結果を表2及び表3に示す。
【0100】
アプローチ時の初速及びスピン性能
ゴルフ打撃ロボットにサンドウェッジ(SW)を装着し、ヘッドスピード(HS)20m/sで打撃した直後の初速及びバックスピン量を初期条件計測装置により測定する。
【0101】
コントロール性
また、アプローチ時のボールのコントロール性についての官能評価を下記の方法により行った。使用したクラブは、上記と同様のサンドウェッジ(SW)製品名「ブリヂストン ツアーステージ TW-03(ロフト角57°)」であり、ゴルファーが実際で打撃したとき下記の基準で評価した。
〔判定評価〕
◎ ・・・ 操作性に非常に優れる。
〇 ・・・ 操作性に優れる。
△ ・・・ 操作性にやや劣る。
× ・・・ 操作性に劣る。
なお、操作性が優れるか否かの判定には、ボールのスピン量の高低に加えて、低反発性に起因するボールとクラブフェースとの接触時間の長さが影響する。接触時間が長い場合は操作性が良くなり、短い場合は操作性が悪くなる。ここでは、スピン量と接触時間の長さとを含めたコントロール性(操作性)を判定する。
【0102】
耐擦過傷性の評価
ボールを23℃に保温するとともに、スウィングロボットマシンを用い、クラブはピッチングウェッジ(PW)を使用して、ヘッドスピード33m/sで各ボールを各5球ずつ打撃し、打撃傷を以下の基準で目視にて評価する。
◎ ・・・ やや傷がついているか、ほとんど傷が目立たない。
○ ・・・ 表面がやや毛羽立っているか、ディンプルがやや欠けている。
× ・・・ ディンプルが完全に削り取られている。
【0103】
成型性(脱型性)の評価
カバー射出成形後の金型からの脱型性を以下の基準で各例のボールを評価する。
◎ ・・・ 脱型時ランナー切れやピン付き等の外傷が生じない。
○ ・・・ 脱型時ランナー切れやピン付き等の外傷が生じるが、成型には問題ない。
× ・・・ 脱型時ランナー切れやピン付き等の外傷が生じ、成型できない。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
表2の結果に示されるように、比較例1~6のゴルフボールは、本発明品(実施例)に比べて以下の点で劣る。
比較例1は、樹脂組成物に(II)成分が配合されておらず、その結果、アプローチ時のコントロール性が悪い。
比較例2は、樹脂組成物の(II)成分の反発弾性率が所定範囲より高くなり、その結果、アプローチ時のコントロール性が悪い。
比較例3は、樹脂組成物の(III)成分の配合量が多いものであり、その結果、耐擦過傷性と成型性との両方が悪い。
比較例4は、樹脂組成物の(II)成分の溶融粘度が高く、材料硬度が高いものであり、その結果、耐擦過傷性と成型性との両方が悪い。
比較例5は、樹脂組成物に(II)成分が配合されておらず、その結果、アプローチ時のコントロール性が悪い。
比較例6は、(II)成分及び(III)成分の両方とも配合されておらず、その結果、アプローチ時のコントロール性が悪い。