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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187594
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20221213BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20221213BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B60R11/02 S
B60J5/04 Z
H04R1/02 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095668
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明善
(72)【発明者】
【氏名】田上 文保
(72)【発明者】
【氏名】舩石 芳樹
【テーマコード(参考)】
3D020
5D017
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BB01
3D020BC06
3D020BD05
5D017AE14
(57)【要約】
【課題】スピーカーユニットから車室内への音漏れを抑制し、音響性能の低下を抑制すること。
【解決手段】車室空間50に放音するスピーカーユニット40を有し、スピーカーユニット40のためのエンクロージャーとして空間11が形成されるドア100と、空間12を有し、ドア100と隣り合う車両構造体200と、を備え、空間11は、空間12に連通する車両1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室空間に放音するスピーカーユニットを有し、前記スピーカーユニットのためのエンクロージャーとして第1空間が形成されるドアと、
第2空間を有し、前記ドアと隣り合う車両構造体と、を備え、
前記第1空間は、前記第2空間に連通する
車両。
【請求項2】
前記ドアは、
車両の外部に面するアウターパネルと、
前記車室空間側に設けられ、第1開口部を有するドアトリムと、
前記アウターパネルと前記ドアトリムとの間に設けられ、第2開口部を有するインナーパネルと、を有し、
前記第1空間は、前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に設けられ、
前記スピーカーユニットは、前記インナーパネルに取り付けられ、前記第1開口部を介して前記車室空間に放音し、
前記インナーパネルと前記ドアトリムとの間には、前記車室空間に対して前記ドアトリムにより隔てられた第3空間が設けられ、
前記第1空間は、前記第3空間を介して前記第2空間に連通する、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記ドアは、
車両の外部に面するアウターパネルと、
前記車室空間側に設けられ、第1開口部を有するドアトリムと、
前記アウターパネルと前記ドアトリムとの間に設けられ、第2開口部を有するインナーパネルと、を有し、
前記第1空間は、前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に設けられ、
前記スピーカーユニットは、前記ドアトリムに取り付けられ、前記第1開口部を介して前記車室空間に放音し、
前記インナーパネルと前記ドアトリムとの間には、前記車室空間に対して前記ドアトリムにより隔てられた第3空間が設けられ、
前記第1空間は、前記第3空間を介して前記第2空間に連通する、
請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記車両構造体は、第3開口部を有し、
前記ドアトリムは、第4開口部を有し、
前記第3空間は、前記第3開口部および前記第4開口部を介して、前記第2空間に連通する
請求項2または請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記第3開口部および前記第4開口部のそれぞれの幅は、前記ドアトリムと前記車両構造体との間の隙間よりも大きい
請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記車両構造体は、前記ドアを取り囲む構造物の一部または全部である
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の車両。
【請求項7】
前記ドアは、バックドアである
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の車両。
【請求項8】
前記第2空間は、車室外の空間に連通する
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両のドアにスピーカーユニットを取り付けることが従来から知られている。例えば特許文献1では、ドアのインナーパネルにスピーカーユニットが取り付けられたスピーカシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/144818号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のスピーカシステムでは、スピーカーユニットの背面側からの音が、インナーパネルと他のパネルとの隙間を介して車室内に漏れてしまう。このため、スピーカーユニットの正面側からの音が、当該隙間から漏れた逆位相の音により打ち消され、音響性能が低下するという課題がある。
【0005】
本開示は、上記した事情に鑑みてなされたものであって、スピーカーユニットから車室内への音漏れを抑制し、音響性能の低下を抑制することを解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る車両は、車室空間に放音するスピーカーユニットを有し、前記スピーカーユニットのためのエンクロージャーとして第1空間が形成されるドアと、第2空間を有し、前記ドアと隣り合う車両構造体と、を備え、前記第1空間は、前記第2空間に連通する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る車両の部分断面図である。
図2】ドアトリムおよび車両構造体に設けられた開口部を一方向に見た模式図である。
図3】参考例に係る車両の部分断面図である。
図4】第2実施形態に係る車両の部分断面図である。
図5】第3実施形態に係る車両の部分断面図である。
図6】変形例に係る車両の部分断面図である。
図7】変形例に係る車両の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際のものと適宜異ならせてある。また、以下に記載する実施形態は、本開示の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、第1実施形態に係る車両1の部分断面図であり、車両1の構成例を模式的に示す図である。車両1は、例えば、自動車などの車両である。車両1は、ドア100と、車両構造体200と、を有する。なお、以下では、ドア100の厚さ方向での一方向をX1方向といい、X1方向とは反対方向をX2方向という場合がある。X軸方向は、X1方向およびX2方向の両方向を含む方向である。また、車両1の高さ方向での一方向をZ1方向といい、Z1方向とは反対の方向をZ2方向という場合がある。Z軸方向は、Z1方向およびZ2方向の両方向を含む方向である。さらに、X軸およびZ軸の両方に直交する方向をY軸方向という場合がある。ここで、ドア100が車両1に用いられる状態では、X1方向が車両1の外部から車室空間50(車室内)に向かう方向であり、X2方向が車室空間50から車両1の外部に向かう方向である。
【0010】
ドア100は、車両1に用いられるドアであり、スピーカー機能を有する。ドア100は、例えば、車両1のバックドア、フロントドアまたはリアドアである。ドア100は、アウターパネル10と、ドアトリム20と、インナーパネル30と、スピーカーユニット40と、を有する。
【0011】
アウターパネル10、インナーパネル30、ドアトリム20は、この順でX1方向に並んで配置される。このように、アウターパネル10が車両1の外部に面するとともにドアトリム20が車室空間50側に配置されており、アウターパネル10とドアトリム20との間には、インナーパネル30が配置される。
【0012】
アウターパネル10は、車両1の外部に面するパネルである。アウターパネル10は、例えば、鋼板で構成される。アウターパネル10は、鋼板を用いた構成に限定されず、例えばアルミニウム合金または炭素繊維複合材料で構成されてもよい。
【0013】
ドアトリム20は、車両1の車室空間50側に設けられた内装材である。ドアトリム20は、インナーパネル30に対して複数の接続部材(図示略)により着脱可能に取り付けられる。当該接続部材は、例えば、樹脂で構成されるリベットまたはクリップである。ドアトリム20は、図1に示されるように、開口部20aを有する。開口部20aは「第1開口部」の一例である。開口部20aはサランネットなどのメッシュ材で覆われてもよい。
【0014】
また、ドアトリム20は、開口部20bを有する。開口部20bは、ドアトリム20のうち、Z1方向での端部に設けられる。図1に示す例では、開口部20bがZ軸方向にドアトリム20を貫通する。開口部20bの幅D2(図1に示す例では、X軸方向での長さ)は、ドアトリム20と後述する車両構造体200との隙間D3(図1に示す例では、Z軸方向での長さ)よりも大きい。開口部20bは「第4開口部」の一例である。ドアトリム20を構成する材料は、例えば、合成樹脂であるが、当該材料は特に限定されない。
【0015】
インナーパネル30は、アウターパネル10とドアトリム20との間に設けられる。インナーパネル30は、貫通孔30bを有する。貫通孔30bは、ドアトリム20の開口部20aとX軸方向に見て重なる。インナーパネル30の外周縁は全周にわたりアウターパネル10に接合されており、インナーパネル30とアウターパネル10との間には、空間11が形成される。インナーパネル30は、図1に示されるように、開口部30aを有する。開口部30aの位置、平面視形状および大きさは、特に限定されず、任意である。開口部30aは「第2開口部」の一例である。図1に示す例では、開口部30aがインナーパネル30に2つ設けられるが、1つでもよく、3つ以上でもよい。インナーパネル30は、例えば、鋼板で構成される。インナーパネル30は、鋼板を用いた構成に限定されず、例えばアルミニウム合金または炭素繊維複合材料で構成されてもよい。
【0016】
空間11は、アウターパネル10とインナーパネル30とに画定される空間である。空間11は、スピーカーユニット40のエンクロージャーとして機能し、スピーカーユニット40を収容する。空間11は、開口部30aを介して、空間132に連通する。
【0017】
インナーパネル30とドアトリム20との間には、図1に示されるように、クッション部材17およびリブ18が設けられる。
【0018】
リブ18は、ドアトリム20のX2方向を向く表面からX2方向に突出する突起物であり、開口部20aの外周縁に沿って環状に構成される。リブ18は、インナーパネル30とドアトリム20との間の空間を、空間131と空間132とに区分する。空間131は、スピーカーユニット40の正面から放音される音SNaを車室空間50に放出するための空間である。空間132は、スピーカーユニット40の背面から放音される音SNを後述する車両構造体200の空間12に逃すための空間であり、車室空間50に対してドアトリム20により隔てられる。空間132は「第3空間」の一例である。
【0019】
クッション部材17は、インナーパネル30のX1方向を向く表面とリブ18との間に配置され、リブ18の周方向に沿って環状に構成される。クッション部材17は、インナーパネル30とリブ18との隙間を封止する弾性部材であり、例えば、ゴムまたはエラストマーなどで構成される。
【0020】
スピーカーユニット40は、車室空間50に向けて放音する音響装置である。スピーカーユニット40は、円環状の取付部材14を介してインナーパネル30に取り付けられる。取付部材14は、複数のねじ孔14aと、複数の孔14bとを有する。ねじ孔14aは、スピーカーユニット40のフランジ部40bを貫通するねじ16に嵌め合う。これにより、スピーカーユニット40に取付部材14が取り付けられる。さらに、スピーカーユニット40が取り付けられた取付部材14の孔14bは、ねじ15に貫通される。当該孔14bを貫通するねじ15は、インナーパネル30に設けられた貫通孔30cに嵌め合う。これにより、スピーカーユニット40が取り付けられた取付部材14が、インナーパネル30のX2方向を向く表面に取り付けられる。ここで、スピーカーユニット40は、貫通孔30bを塞いでおり、空間11と空間131とは、スピーカーユニット40により隔てられる。スピーカーユニット40は、貫通孔30bおよび開口部20aを介して、車室空間50に向けて放音する。
【0021】
車両構造体200は、車両1を構成する各種の構造物のうち、ドア100を取り囲む構造物の一部または全部であり、ドア100に隣り合う。具体的には、ドア100が車両1のバックドアである場合、車両構造体200は、例えば、車両1のエンドパネルである。あるいは、ドア100が車両1のフロントドアまたはリアドアである場合、車両構造体200は、例えば、車両1のサイドシルまたはピラー(Aピラー、BピラーまたはCピラーなど)である。
【0022】
図1に示されるように、インナーパネル30と車両構造体200との間には、弾性部材19が設けられる。弾性部材19は、ドア100と車両構造体200との直接の当接を防止するクッションとして機能する。弾性部材19は、ゴムまたはエラストマーなどで構成される。
【0023】
車両構造体200は、第1パネル210と、第2パネル220と、空間12と、を有する。第1パネル210は、車両1の外部に面するパネルである。第1パネル210は、例えば、鋼板で構成される。第1パネル210は、鋼板を用いた構成に限定されず、例えばアルミニウム合金または炭素繊維複合材料で構成されてもよい。なお、第1パネル210は、複数のパネルが積層された構成であってもよい。第2パネル220は、車両1の車室空間50側に設けられたパネルである。第2パネル220を構成する材料は、例えば合成樹脂であるが当該材料は特に限定されない。
【0024】
図2は、開口部20bをZ1方向に見た模式図である。車両構造体200は、開口部12aを有する。開口部12aは、図1に示されるように、ドアトリム20に設けられた開口部20bとZ2方向に見て重なる。同様に、開口部20bは、図2に示されるように、Z1方向に見て、開口部12aに重なる。当該「重なる」とは、開口部20bをZ1方向に見たときに、開口部20bの周縁の少なくとも一部が、開口部12aの周縁と交差することを意味する。開口部12aの幅D1(図1に示す例では、X軸方向での長さ)は、ドアトリム20と車両構造体200との隙間D3(図1に示す例では、Z軸方向での長さ)よりも大きい。開口部12aは「第3開口部」の一例である。前述の幅D1および幅D2は、開口部12aの周縁に沿う平面上でY軸方向に交差する方向での長さである。なお、開口部20bおよび開口部12aの位置、平面視形状および大きさは、特に限定されず、任意である。さらに、開口部20bおよび開口部12aの数は1つまたは2つ以上であってもよい。
【0025】
空間12は、第1パネル210と第2パネル220とに画定される空間である。空間12は、開口部12aおよび開口部20bを介して、空間132に連通する。すなわち、空間11は、空間132を介して、空間12に連通する。空間12は「第2空間」の一例である。なお、第1パネル210が複数のパネルで構成される場合、空間12は、当該複数のパネルの各パネル間の空間であってもよい。
【0026】
上述したように、第1実施形態に係る車両1は、車室空間50に放音するスピーカーユニット40を有し、スピーカーユニット40のためのエンクロージャーとして空間11が形成されるドア100と、空間12を有し、ドア100と隣り合う車両構造体200と、を備え、空間11は、空間12に連通する。この態様によれば、空間11と空間12が連通していることによって、スピーカーユニット40の背面から空間11に放音された音SNは、空間12に放出される。このため、スピーカーユニット40の背面から逆位相の音が車室空間50に放出されることが低減される。この結果、当該背面からの音SNが車室空間50に放出される構成に比べて、音響性能を高めることができる。また、空間11が空間12と連通しない構成に比べて、エンクロージャーの容積が拡大されるので、低音再生能力を高めることもできる。
【0027】
これに対し、図3に示す構成では、前述のような車両1の効果を得ることができない。以下、図3に基づいて、この点を簡単に説明する。
【0028】
図3は、参考例に係る車両2の部分断面図である。車両2のドア100では、スピーカーユニット40の背面から空間11に放音された音SNbが、隙間D3を介して車室空間50に漏れてしまう。このため、車両2のドア100では、車室空間50において、スピーカーユニット40の正面からの音SNaと音SNbとが打ち消し合ってしまい、その結果、音質の低下を招く。ここで、隙間D3を塞ぐことが考えられるが、車両2のドア100の形状などによっては、隙間D3を完全に塞ぐことは、現実的に難しいか、または、高コスト化を招く。
【0029】
上述したように、第1実施形態に係るドア100は、車両1の外部に面するアウターパネル10と、車室空間50側に設けられ、開口部20aを有するドアトリム20と、アウターパネル10とドアトリム20との間に設けられ、開口部30aを有するインナーパネル30と、を有し、空間11は、アウターパネル10とインナーパネル30との間に設けられ、スピーカーユニット40は、インナーパネル30に取り付けられ、開口部20aを介して車室空間50に放音し、インナーパネル30とドアトリム20との間には、車室空間50に対してドアトリム20により隔てられた空間132が設けられ、空間11は、空間132を介して空間12に連通する。この態様によれば、空間11と、空間12と、空間132とが連通していることによって、スピーカーユニット40の背面から空間11に放音された音SNは、空間132を介して空間12に放出される。このため、スピーカーユニット40の背面から逆位相の音が車室空間50に放出されることが低減される。この結果、当該背面からの音SNが車室空間50に放出される構成に比べて、音響性能を高めることができる。
【0030】
さらに、上述したように、第1実施形態に係る車両構造体200は、開口部12aを有し、第1実施形態に係るドアトリム20は、開口部20bを有し、空間132は、開口部12aおよび開口部20bを介して、空間12に連通する。この態様では、インナーパネル30に開口部を設ける構成に比べて、車室空間50への雨水などの水の侵入を防止する構成が簡単に済む。
【0031】
加えて、上述したように、第1実施形態に係る開口部12aの幅D1と、開口部20bの幅D2は、ドアトリム20と車両構造体200との間の隙間D3よりも大きい。この態様によれば、空間132からの音SNを車室空間50よりも空間12に優先的に導入させることができる。
【0032】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係る車両1の部分断面図であり、当該車両1の構成例を模式的に示す図である。以降の第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0033】
第2実施形態では、スピーカーユニット40がドアトリム20に取り付けられる点で、第1実施形態と異なる。具体的には、スピーカーユニット40は、円環状の取付部材14を介してドアトリム20に取り付けられる。より詳細には、スピーカーユニット40が取り付けられた取付部材14の孔14bを貫通するねじ15は、ドアトリム20に設けられた貫通孔20cに嵌め合う。これにより、スピーカーユニット40が取り付けられた取付部材14が、ドアトリム20のX2方向を向く表面に取り付けられる。第2実施形態に係るスピーカーユニット40は、開口部20aを介して、車室空間50に向けて放音する。
【0034】
図4に示されるように、第2実施形態に係るドア100は、車両1の外部に面するアウターパネル10と、車室空間50側に設けられ、開口部20aを有するドアトリム20と、アウターパネル10とドアトリム20との間に設けられ、開口部30aを有するインナーパネル30と、を有する。また、第2実施形態に係る空間11は、アウターパネル10とインナーパネル30との間に設けられる。さらに、第2実施形態に係るスピーカーユニット40は、ドアトリム20に取り付けられ、開口部20aを介して車室空間50に放音する。加えて、第2実施形態では、インナーパネル30とドアトリム20との間には、車室空間50に対してドアトリム20により隔てられた空間132が設けられ、空間11は、空間132を介して空間12に連通する。
以上の態様によれば、第1実施形態と同様に、空間11と、空間12と、空間132とが連通していることによって、スピーカーユニット40の背面から空間11に放音された音SNは、空間132を介して空間12に放出される。このため、スピーカーユニット40の背面から逆位相の音が車室空間50に放出されることが低減される。この結果、当該背面からの音SNが車室空間50に放出される構成に比べて、音響性能を高めることができる。また、以上の態様によれば、スピーカーユニット40がドアトリム20に取り付けられることによって、空間132を車室空間50に対してドアトリム20により容易に隔てることができる。
【0035】
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、車両構造体200が開口部12aを有し、ドアトリム20が開口部20bを有する。第2実施形態に係る空間132は、第1実施形態と同様に、開口部12aおよび開口部20bを介して、空間12に連通する。このため、インナーパネル30に開口部を設ける構成に比べて、車室空間50への雨水などの水の侵入を防止する構成が簡単に済む。
【0036】
さらに、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、開口部12aの幅D1と開口部20bの幅D2が、ドアトリム20と車両構造体200との間の隙間D3よりも大きい。このため、空間132からの音SNを車室空間50よりも空間12に優先的に導入させることができる。
【0037】
<第3実施形態>
図5は、第3実施形態に係る車両1の部分断面図であり、当該車両1の構成例を模式的に示す図である。以降の第3実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
第3実施形態では、車両構造体200のうち第1パネル210に開口部210aが設けられる点で、第1実施形態と異なる。第3実施形態の空間12は、開口部210aを介して、車室外の空間に連通する。この構成により、スピーカーユニット40の背面から空間11および空間132を介して空間12に放出された音SNは、車室外の空間に放出される。このため、車両構造体200に開口部210aが設けられない場合と比較して、スピーカーユニット40の背面からの音SNが空間12に導入されやすくなり、空間12に放出された逆位相の音が車室空間50に放出されることが低減される。この結果、車両構造体200に開口部210aが設けられない場合と比較して、音響性能を高めることができる。また、開口部210aが設けられることにより、車室外の空間もエンクロージャーに利用される。このため、開口部21aが設けられない構成に比べて、エンクロージャーの容積が拡大されるので、低音再生能力を高めることができる。なお、上述した「車室外の空間」は、車室空間50と連通しない空間であればよく、車両1の外部のみならず、例えば、車両1のエンジンルーム内、または、ホイールハウス内などの空間も含まれる。なお、開口部210aの位置、平面視形状および大きさは、特に限定されず、任意である。
【0039】
<変形例>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく種々の変更を加え得る。前述の態様に付与され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0040】
[変形例1]
図6は、変形例1に係る車両1の部分断面図であり、当該車両1の構成例を模式的に示す図である。前述の態様の車両1は、図6に示されるように、開口部30aがインナーパネル30のうちZ1方向での端部に設けられ、開口部12aが第1パネル210に設けられる構成であってもよい。変形例1に係る車両1では、開口部30aと開口部12aとがZ軸方向に見て重なり、空間11が開口部30aおよび開口部12aを介して空間12に連通する。この構成であっても、スピーカーユニット40の背面から空間11に放音された音SNが空間12に放出されるので、前述の第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0041】
[変形例2]
図7は、変形例2に係る車両1の部分断面図であり、当該車両1の構成例を模式的に示す図である。前述の態様の車両1は、図7に示されるように、第2パネル220に開口部12bが設けられる構成であってもよい。すなわち、空間12が開口部12bを介して車室空間50に連通する構成であってもよい。
【0042】
<補足>
前述の態様の車両1は典型的には自動車である。ただし、本発明の用途は特に限定されず、自動車とは異なる車両全般に適用されてよい。
【0043】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本発明は、上述の効果とともに、または上述の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0044】
さらに、前述の態様では、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0045】
<付記>
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0046】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る車両は、車室空間に放音するスピーカーユニットを有し、前記スピーカーユニットのためのエンクロージャーとして第1空間が形成されるドアと、第2空間を有し、前記ドアと隣り合う車両構造体と、を備え、前記第1空間は、前記第2空間に連通する。以上の態様によれば、第1空間と第2空間が連通していることによって、スピーカーユニットの背面から第1空間に放音された音は、第2空間に放出される。このため、スピーカーユニットの背面から逆位相の音が車室空間に放出されることが低減される。この結果、当該背面からの音が車室空間に放出される構成に比べて、音響性能を高めることができる。
【0047】
態様1の具体例(態様2)において、前記ドアは、車両の外部に面するアウターパネルと、前記車室空間側に設けられ、第1開口部を有するドアトリムと、前記アウターパネルと前記ドアトリムとの間に設けられ、第2開口部を有するインナーパネルと、を有し、前記第1空間は、前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に設けられ、前記スピーカーユニットは、前記インナーパネルに取り付けられ、前記第1開口部を介して前記車室空間に放音し、前記インナーパネルと前記ドアトリムとの間には、前記車室空間に対して前記ドアトリムにより隔てられた第3空間が設けられ、第1空間は、前記第3空間を介して前記第2空間に連通する。この態様によれば、第1空間と、第2空間と、第3空間とが連通していることによって、スピーカーユニットの背面から第1空間に放音された音は、第3空間を介して第2空間に放出される。このため、スピーカーユニットの背面から逆位相の音が車室空間に放出されることが低減される。この結果、当該背面からの音が車室空間に放出される構成に比べて、音響性能を高めることができる。
【0048】
態様1の具体例(態様3)において、前記ドアは、車両の外部に面するアウターパネルと、前記車室空間側に設けられ、第1開口部を有するドアトリムと、前記アウターパネルと前記ドアトリムとの間に設けられ、第2開口部を有するインナーパネルと、を有し、前記第1空間は、前記アウターパネルと前記インナーパネルとの間に設けられ、前記スピーカーユニットは、前記ドアトリムに取り付けられ、前記第1開口部を介して前記車室空間に放音し、前記インナーパネルと前記ドアトリムとの間には、前記車室空間に対して前記ドアトリムにより隔てられた第3空間が設けられ、前記第1空間は、前記第3空間を介して前記第2空間に連通する。この態様によれば、第1空間と、第2空間と、第3空間とが連通していることによって、スピーカーユニットの背面から第1空間に放音された音は、第3空間を介して第2空間に放出される。このため、スピーカーユニットの背面から逆位相の音が車室空間に放出されることが低減される。この結果、当該背面からの音が車室空間に放出される構成に比べて、音響性能を高めることができる。また、以上の態様によれば、第3空間を車室空間に対してドアトリムにより容易に隔てることができる。
【0049】
態様2または態様3の具体例(態様4)において、前記車両構造体は、第3開口部を有し、前記ドアトリムは、第4開口部を有し、前記第3空間は、前記第3開口部および前記第4開口部を介して、前記第2空間に連通する。この態様によれば、インナーパネルに開口部を設ける構成に比べて、車室空間への雨水等の水の侵入を防止する構成が簡単に済む。
【0050】
態様4の具体例(態様5)において、前記第3開口部および前記第4開口部のそれぞれの幅は、前記ドアトリムと前記車両構造体との間の隙間よりも大きい。この態様によれば、第3空間からの音を車室空間よりも第2空間に優先的に導入させることができる。
【0051】
態様1から態様5の何れかの具体例(態様6)によれば、前記車両構造体は、前記ドアを取り囲む構造物の一部または全部である。
【0052】
態様1から態様6の何れかの具体例(態様7)によれば、前記ドアは、バックドアである。
【0053】
態様1から態様7の何れかの具体例(態様8)によれば、前記第2空間は、車室外の空間に連通する。この態様によれば、スピーカーユニットの背面から第1空間および第3空間を介して第2空間に放出された音は、車室外の空間に放出される。このため、第2空間が車室外の空間に連通していない場合と比較して、スピーカーユニットの背面から第2空間に放出された逆位相の音が車室空間に放出されることが低減される。
【符号の説明】
【0054】
1,2…車両、10…アウターパネル、11,12,131,132…空間、12a,20a,20b,30a,210a…開口部、20…ドアトリム、30…インナーパネル、40…スピーカーユニット、100…ドア、200…車両構造体。
図1
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図5
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図7