(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187595
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】コネクタ及びコネクタ接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/73 20060101AFI20221213BHJP
H01R 13/46 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01R13/73 A
H01R13/46 304L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095669
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田村 知夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 基泰
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087MM05
5E087MM12
5E087QQ04
5E087RR25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機器に取り付けられるコネクタを含むコネクタ接続構造について、コストをより低減する。
【解決手段】締結部材F1は、第1方向を軸方向とする軸部31と、軸部の一端に設けられる頭部32とを含むボルト30と、軸部に螺合されるナット40とを有し、相手取付部15及び取付部の一方は、頭部側への移動を規制した状態でナットを保持する第1保持部16を有し、第1保持部には、第1方向と直交する第2方向の一方側に開放され、第2方向からナットを含む締結部材の一部を挿入可能な第1スリットSL1が形成され、相手取付部及び取付部の他方は、ナット側への移動を規制した状態で頭部を保持する第2保持部26を有し、第2保持部には、第2方向の一方側に開放され、第2方向から頭部を含む締結部材の一部を挿入可能であり、第1スリットSL1と第1方向に通じる第2スリットSL2が形成されているコネクタを提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器側の相手コネクタに対して第1方向に嵌合されるコネクタであって、
前記相手コネクタが有する相手端子と電気的に接続する端子を内側に有する外装体と、
前記外装体に設けられ、前記相手コネクタが装着される前記機器側の筐体が有する相手取付部に対して締結部材によって締結される取付部と、
を備え、
前記締結部材は、
前記第1方向を軸方向とする軸部と、前記軸部の一端に設けられる頭部と、を含むボルトと、
前記軸部に螺合されるナットと、を有し、
前記相手取付部及び前記取付部の一方は、前記頭部側への移動を規制した状態で前記ナットを保持する第1保持部を有し、
前記第1保持部には、前記第1方向と直交する第2方向の一方側に開放され、前記第2方向から前記ナットを含む前記締結部材の一部を挿入可能な第1スリットが形成され、
前記相手取付部及び前記取付部の他方は、前記ナット側への移動を規制した状態で前記頭部を保持する第2保持部を有し、
前記第2保持部には、前記第2方向の一方側に開放され、前記第2方向から前記頭部を含む前記締結部材の一部を挿入可能であり、前記第1スリットと前記第1方向に通じる第2スリットが形成されている、
コネクタ。
【請求項2】
前記第1保持部は、前記ナットの側面との間に隙間を有して対向して前記ナットを回転可能とする非接触面を有し、
前記第2保持部は、前記ボルトに前記ナットを螺合させる際に、前記頭部の側面に接触することで前記ボルトの前記第2保持部に対する回転を規制する接触面を有する、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記接触面は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に第1距離だけ空けて対向する第1面及び第2面を含み、
前記第1方向から見て前記頭部は辺の数が偶数の多角形状であり、
前記第1距離は、前記多角形状の互いに対向する辺の最短距離よりも長く、前記多角形状の最長対角線の長さよりも短い、
請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1保持部は、前記ボルトに前記ナットを螺合させる際に、前記ナットの側面に接触することで前記ナットの前記第1保持部に対する回転を規制する接触面を有し、
前記第2保持部は、前記頭部の側面との間に隙間を有して対向して前記頭部を回転可能とする非接触面を有する、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記接触面は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に第1距離だけ空けて対向する第1面及び第2面を含み、
前記第1方向から見て前記ナットは辺の数が偶数の多角形状であり、
前記第1距離は、前記多角形状の互いに対向する辺の最短距離よりも長く、前記多角形状の最長対角線の長さよりも短い、
請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ナットは、フランジを有し、
前記第1保持部は、前記第1スリットに挿入された前記フランジに対して前記頭部側から接触可能な第1縁部を有し、
前記第1縁部は、前記第1スリットに挿入された前記軸部を前記第1方向に通す、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記第1保持部は、前記第1スリットに挿入された前記フランジに対して前記頭部側の反対側から接触可能な第1保持面を有する、
請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記第2保持部は、前記第2スリットに挿入された前記頭部に対して前記ナット側から接触可能な第2縁部を有し、
前記第2縁部は、前記第2スリットに挿入された前記軸部を前記第1方向に通す、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記第2保持部は、前記第2スリットに挿入された前記頭部に対して前記ナット側の反対側から接触可能な第2保持面を有する、
請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記第1スリット及び前記第2スリットの少なくとも一方は、前記第1方向の所定側に開放され、
前記ナット及び前記頭部の少なくとも一方は、前記第1スリット及び前記第2スリットの少なくとも一方に挿入された状態で、前記第1スリット及び前記第2スリットよりも前記所定側に突出している端部を有する、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記外装体は、
前記端子を収容するハウジングと、
前記ハウジングを覆うシールドシェルと、
を有し、
前記取付部は、前記シールドシェルに設けられている、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記相手コネクタと、
前記筐体と、
前記相手コネクタに嵌合されている請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のコネクタと、
前記第1スリット及び前記第2スリットに挿入されている前記締結部材と、
を備えるコネクタ接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ及びコネクタ接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両に含まれるPCU(Power Control Unit)等の機器にコネクタを嵌合させる際、機器とコネクタとをボルトにより固定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、機器側のケースに設けられたボルト孔と連通する挿通孔が形成された機器用コネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図12は、本開示の課題を説明する図である。
図12は、従来のメスコネクタ910にオスコネクタ920を嵌合する前の状態を示す断面図である。オスコネクタ920は、メスコネクタ910に対して第1方向に嵌合される。
図12において、第1方向のメスコネクタ910側を一方側、オスコネクタ920側を他方側と称する。
【0005】
メスコネクタ910は、機器側に設けられているコネクタであり、機器側のケース930の取付孔931に取り付けられている。メスコネクタ910は、メスハウジング911と、メスハウジング911に収容されているメス端子912とを有する。ケース930にはネジ溝が形成されたボルト孔932が設けられている。
【0006】
オスコネクタ920は、オスハウジング921と、オスハウジング921に収容されているオス端子922と、オスハウジング921を覆うシールドシェル923とを有する。オス端子922は、電線950の末端に電気的に接続されている。シールドシェル923の開口縁には台座部924が張り出した状態で設けられている。台座部924には挿通孔925が第1方向に貫通して設けられている。
【0007】
ボルト940は、頭部941を台座部924の第1方向他方側に、軸部942を台座部924の第1方向一方側に位置させた状態で、挿通孔925に挿通されている。ボルト940にはCリング960(C型止め輪)が装着される溝が設けられており、Cリング960は挿通孔925に挿通されたボルト940のうち台座部924よりも第1方向一方側に装着されている。これにより、ボルト940は第1方向の移動を規制された状態(抜け止め状態)で台座部924に保持されている。軸部942のうちCリング960よりも第1方向一方側の外周面にはネジ山が形成されている。
【0008】
オスコネクタ920をメスコネクタ910に嵌合させる際、まずオスハウジング921をメスハウジング911に手で浅く嵌合させる(仮嵌合)。次に、工具を用いてボルト940をボルト孔932に締め込むことにより、オスコネクタ920をメスコネクタ910に完全に嵌合させる(本嵌合)。
【0009】
図12に示す従来構成では、ケース930にボルト孔932を設けるための加工(ねじ切り加工)を行う必要がある。また、ボルト孔932のネジ溝が潰れると、ケース930の修理又は交換が必要となる場合がある。ケース930へのねじ切り加工や、ケース930の修理又は交換は、メスコネクタ910とオスコネクタ920とを含むコネクタ接続構造のコスト(製造コスト、維持コストを含む)の増加要因となる。
【0010】
かかる課題に鑑み、本開示は、機器に取り付けられるコネクタを含むコネクタ接続構造について、コストをより低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のコネクタは、機器側の相手コネクタに対して第1方向に嵌合されるコネクタであって、前記相手コネクタが有する相手端子と電気的に接続する端子を内側に有する外装体と、前記外装体に設けられ、前記相手コネクタが装着される前記機器側の筐体が有する相手取付部に対して締結部材によって締結される取付部と、を備え、前記締結部材は、前記第1方向を軸方向とする軸部と、前記軸部の一端に設けられる頭部と、を含むボルトと、前記軸部に螺合されるナットと、を有し、前記相手取付部及び前記取付部の一方は、前記頭部側への移動を規制した状態で前記ナットを保持する第1保持部を有し、前記第1保持部には、前記第1方向と直交する第2方向の一方側に開放され、前記第2方向から前記ナットを含む前記締結部材の一部を挿入可能な第1スリットが形成され、前記相手取付部及び前記取付部の他方は、前記ナット側への移動を規制した状態で前記頭部を保持する第2保持部を有し、前記第2保持部には、前記第2方向の一方側に開放され、前記第2方向から前記頭部を含む前記締結部材の一部を挿入可能であり、前記第1スリットと前記第1方向に通じる第2スリットが形成されている、コネクタである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、機器に取り付けられるコネクタを含むコネクタ接続構造について、コストをより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る相手コネクタユニット及びコネクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る相手コネクタユニット、コネクタ及び締結部材の斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るコネクタ接続構造の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のコネクタ接続構造を前側から見た正面図である。
【
図5】
図5は、
図3のコネクタ接続構造を右側から見た側面図である。
【
図6】
図6は、
図3のコネクタ接続構造のうち第1スリット及び第2スリットを含む部分を拡大して示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1の相手コネクタユニット及びコネクタの断面図である。
【
図8】
図8は、相手コネクタユニット、コネクタ及び締結部材の断面図である。
【
図9】
図9は、
図4の矢印IXで示す切断線により切断したコネクタ接続構造を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るシールドシェル及び未挿入状態のボルトを上側から見た図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るシールドシェルにボルトを挿入した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態には、その要旨として、以下の構成が含まれる。
【0015】
(1)本開示のコネクタは、機器側の相手コネクタに対して第1方向に嵌合されるコネクタであって、前記相手コネクタが有する相手端子と電気的に接続する端子を内側に有する外装体と、前記外装体に設けられ、前記相手コネクタが装着される前記機器側の筐体が有する相手取付部に対して締結部材によって締結される取付部と、を備え、前記締結部材は、前記第1方向を軸方向とする軸部と、前記軸部の一端に設けられる頭部と、を含むボルトと、前記軸部に螺合されるナットと、を有し、前記相手取付部及び前記取付部の一方は、前記頭部側への移動を規制した状態で前記ナットを保持する第1保持部を有し、前記第1保持部には、前記第1方向と直交する第2方向の一方側に開放され、前記第2方向から前記ナットを含む前記締結部材の一部を挿入可能な第1スリットが形成され、前記相手取付部及び前記取付部の他方は、前記ナット側への移動を規制した状態で前記頭部を保持する第2保持部を有し、前記第2保持部には、前記第2方向の一方側に開放され、前記第2方向から前記頭部を含む前記締結部材の一部を挿入可能であり、前記第1スリットと前記第1方向に通じる第2スリットが形成されている、コネクタである。
【0016】
このように構成されるコネクタによれば、ボルトにナットを螺合することにより、相手取付部に取付部を締結するとともに、コネクタを相手コネクタに固定することができるため、筐体にネジ溝を加工する必要がない。このため、コネクタ接続構造の製造コストを低減することができる。また、仮にナットのネジ溝が潰れた場合であっても、ナットを修理又は交換すればよいため、従来のように相手コネクタの筐体を修理又は交換する必要がなく、コネクタ接続構造の維持コストを低減することができる。これにより、コネクタを含むコネクタ接続構造のコストをより低減することができる。
【0017】
(2)好ましくは、前記第1保持部は、前記ナットの側面との間に隙間を有して対向して前記ナットを回転可能とする非接触面を有し、前記第2保持部は、前記ボルトに前記ナットを螺合させる際に、前記頭部の側面に接触することで前記ボルトの前記第2保持部に対する回転を規制する接触面を有する。
【0018】
このように構成することで、ナットを回転可能としつつ、ナットを回転させる際にボルトが供回りすることを防止することができる。これにより、コネクタを相手コネクタと嵌合させる際の作業性を向上させることができる。
【0019】
(3)好ましくは、前記接触面は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に第1距離だけ空けて対向する第1面及び第2面を含み、前記第1方向から見て前記頭部は辺の数が偶数の多角形状であり、前記第1距離は、前記多角形状の互いに対向する辺の最短距離よりも長く、前記多角形状の最長対角線の長さよりも短い。
【0020】
このように構成することで、頭部を第2方向から第2スリットに挿入することを可能としつつ、第2スリットに挿入された頭部の側面が第1面及び第2面の少なくとも一方と第3方向に接触することで、ボルトの回転を抑制することができる。
【0021】
(4)好ましくは、前記第1保持部は、前記ボルトに前記ナットを螺合させる際に、前記ナットの側面に接触することで前記ナットの前記第1保持部に対する回転を規制する接触面を有し、前記第2保持部は、前記頭部の側面との間に隙間を有して対向して前記頭部を回転可能とする非接触面を有する。
【0022】
このように構成することで、ボルトを回転可能としつつ、ボルトを回転させる際にナットが供回りすることを防止することができる。これにより、コネクタを相手コネクタと嵌合させる際の作業性を向上させることができる。
【0023】
(5)前記接触面は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向に第1距離だけ空けて対向する第1面及び第2面を含み、前記第1方向から見て前記ナットは辺の数が偶数の多角形状であり、前記第1距離は、前記多角形状の互いに対向する辺の最短距離よりも長く、前記多角形状の最長対角線の長さよりも短い。
【0024】
このように構成することで、ナットを第2方向から第1スリットに挿入することを可能としつつ、第1スリットに挿入されたナットの側面が第1面及び第2面の少なくとも一方と第3方向に接触することで、ナットの回転を抑制することができる。
【0025】
(6)好ましくは、前記ナットは、フランジを有し、前記第1保持部は、前記第1スリットに挿入された前記フランジに対して前記頭部側から接触可能な第1縁部を有し、前記第1縁部は、前記第1スリットに挿入された前記軸部を前記第1方向に通す。
【0026】
このように構成することで、第1縁部によりナットの頭部側への移動を規制しつつ、軸部にナットを螺合させることができる。
【0027】
(7)好ましくは、前記第1保持部は、前記第1スリットに挿入された前記フランジに対して前記頭部側の反対側から接触可能な第1保持面を有する。
【0028】
このように構成することで、フランジは、頭部側への移動が第1縁部により規制され、頭部から離れる側への移動が第1保持面により規制される。これにより、第1スリットに挿入されたナットが脱落することを防止することができるため、相手コネクタにコネクタを嵌合する際、及び相手コネクタからコネクタを取り外す際の作業性を向上させることができる。
【0029】
(8)好ましくは、前記第2保持部は、前記第2スリットに挿入された前記頭部に対して前記ナット側から接触可能な第2縁部を有し、前記第2縁部は、前記第2スリットに挿入された前記軸部を前記第1方向に通す。
【0030】
このように構成することで、第2縁部により頭部のナット側への移動を規制しつつ、軸部にナットを螺合させることができる。
【0031】
(9)好ましくは、前記第2保持部は、前記第2スリットに挿入された前記頭部に対して前記ナット側の反対側から接触可能な第2保持面を有する。
【0032】
このように構成することで、頭部は、ナット側への移動が第2縁部により規制され、ナットから離れる側への移動が第2保持面により規制される。これにより、第2スリットに挿入されたボルトが脱落することを防止することができるため、相手コネクタにコネクタを嵌合する際、及び相手コネクタからコネクタを取り外す際の作業性を向上させることができる。
【0033】
(10)好ましくは、前記第1スリット及び前記第2スリットの少なくとも一方は、前記第1方向の所定側に開放され、前記ナット及び前記頭部の少なくとも一方は、前記第1スリット及び前記第2スリットの少なくとも一方に挿入された状態で、前記第1スリット及び前記第2スリットよりも前記所定側に突出している端部を有する。
【0034】
このように構成することで、端部を工具により軸部まわりの所定方向に容易に回転させることができるため、コネクタを相手コネクタに嵌合させる際の作業性を向上させることができる。
【0035】
(11)好ましくは、前記外装体は、前記端子を収容するハウジングと、前記ハウジングを覆うシールドシェルと、を有し、前記取付部は、前記シールドシェルに設けられている。
【0036】
シールドシェルは、端子をシールドするために、従来よりコネクタに設けられている部材である。このようなシールドシェルに取付部を設けるため、取付部を設けるためにコネクタに新たな部材を追加する必要がなく、コストの増加を抑制することができる。
【0037】
(12)本開示のコネクタ接続構造は、前記相手コネクタと、前記筐体と、前記相手コネクタに嵌合されている前記(1)から前記(11)のいずれかのコネクタと、前記第1スリット及び前記第2スリットに挿入されている前記締結部材と、を備えるコネクタ接続構造である。
【0038】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。
【0039】
《コネクタ接続構造の全体構成》
図1は、本実施形態に係る相手コネクタユニットU1及びコネクタ20の斜視図である。相手コネクタユニットU1は、相手コネクタ10と、相手コネクタ10が装着される機器側の筐体13とを備える。
図1のコネクタ20は、相手コネクタ10に嵌合される前の状態(未嵌合状態)である。
【0040】
図2は、相手コネクタユニットU1、コネクタ20及び締結部材F1の斜視図である。
図2のコネクタ20は、相手コネクタ10に仮嵌合されている状態(仮嵌合状態)である。また、
図2の締結部材F1は、筐体13及びコネクタ20に挿入される前の状態(未挿入状態)である。締結部材F1は、ボルト30と、ナット40とを有する。
【0041】
図3は、相手コネクタユニットU1、コネクタ20及び締結部材F1の斜視図である。
図3のコネクタ20は、相手コネクタ10に本嵌合されている状態(本嵌合状態)である。また、
図3の締結部材F1は、筐体13及びコネクタ20に挿入されており、ナット40がボルト30に所定回転以上螺合されている状態(螺合状態)である。
図3に示す状態の相手コネクタユニットU1、コネクタ20及び締結部材F1を「コネクタ接続構造50」と称する。
【0042】
以下の説明において、コネクタ20を相手コネクタ10に嵌合及び取り外す方向を「上下方向(本開示の第1方向)」と称し、図面中ではz方向として示す。コネクタ20を相手コネクタ10へ嵌合する側が「上側(z方向正側)」である。また、コネクタ20において、上下方向と直交し、後述のシールドシェル23に対して第2スリットSL2が位置する方向を「前後方向(本開示の第2方向)」と称し、図面中ではx方向として示す。シールドシェル23に対し、第2スリットSL2が位置する側が「前側(x方向正側)」である。また、上下方向及び前後方向と直交する方向を「左右方向」と称し、図面中ではy方向として示す。前側を向いた際に左側となる側が「左側(y方向正側)」である。なお、上記の方向はコネクタ20の構成等を説明するための相対的な方向であり、実際にコネクタ20が相手コネクタ10に嵌合された際の方向を意味するものではない。
【0043】
図4は、前側から見たコネクタ接続構造50を示す正面図である。
図5は、右側から見たコネクタ接続構造50を示す側面図である。
図6は、コネクタ接続構造50のうち後述の第1スリットSL1及び第2スリットSL2を含む部分を拡大して示す斜視図である。
図6では、説明のために締結部材F1を省略している。
【0044】
図7は、
図1の相手コネクタユニットU1及びコネクタ20の断面図である。
図8は、相手コネクタユニットU1、コネクタ20、締結部材F1の断面図である。
図8のコネクタ20は仮嵌合状態であり、筐体13及びコネクタ20には、
図2に示す締結部材F1が挿入されている。
図9は、
図4の矢印IXで示す切断線により切断したコネクタ接続構造50を示す断面図である。
図7、
図8及び
図9は、それぞれ同じ断面を示している。
【0045】
コネクタ接続構造50は、
図1から
図2に示すように相手コネクタ10にコネクタ20を手で仮嵌合し、
図2から
図3に示すように筐体13及びコネクタ20に締結部材F1を挿入して、ナット40をボルト30に螺合させることで、形成される。断面図でいうと、
図7から
図8、
図8から
図9の順番に、相手コネクタユニットU1、コネクタ20、締結部材F1を組み合わせることで、コネクタ接続構造50が形成される。
【0046】
以下、コネクタ接続構造50に含まれる各部の構成について説明する。
【0047】
《相手コネクタユニットの構成》
図1を参照する。
相手コネクタユニットU1は、相手コネクタ10と、筐体13とを備える。
相手コネクタ10は、自動車等の車両に搭載されている第1の機器(例えば、PCU)に設けられているコネクタである。筐体13は、第1の機器を覆う金属製の筐体である。筐体13には、相手コネクタ10が装着されている。なお、筐体13は、第1の機器に対して着脱可能な箱状の部材であってもよい。
【0048】
相手コネクタ10は、筐体13に覆われている樹脂製のハウジング11と、ハウジング11の下側の端部に設けられているゴムリング12とを有する。より具体的には、
図7に示すように、筐体13には上下方向に貫通する貫通孔14が形成されている。ハウジング11は、貫通孔14の内径よりも幅の広いつば112を有する。ハウジング11は、貫通孔14の下側からハウジング11を貫通孔14に挿入し、つば112を筐体13の下面131に当接させた状態で、図示省略するボルトにより筐体13に固定されている。
【0049】
ハウジング11は下側に開放された開口Ap1を有し、この開口Ap1の内部に、下側に露出するように設けられた金属製の相手端子111が収容されている。相手端子111は、第1の機器に含まれる電気回路(図示省略)と電気的に接続している。
【0050】
筐体13は、前側に突出した相手取付部15を有する。相手取付部15は、ナット40を保持する第1保持部16を有する。第1保持部16には、前側、上側及び下側に開放された第1スリットSL1が形成されている。
【0051】
《コネクタの構成》
図1を参照する。
コネクタ20は、自動車等の車両に搭載されている第2の機器(例えば、モータ)とワイヤW1を介して接続されているコネクタである。コネクタ20は、ハウジング21と、ハウジング21の上側の端部に設けられているゴムリング22と、ハウジング21を覆うシールドシェル23とを有する。ワイヤW1の一端は、ハウジング21の下側に取り付けられ、ワイヤW1の他端は、第2の機器に含まれる電気回路(図示省略)と電気的に接続している。ハウジング21は、例えば樹脂製である。シールドシェル23は、例えば金属製である。ハウジング21及びシールドシェル23は、コネクタ20の「外装体」に相当する。
【0052】
より具体的には、
図7に示すように、シールドシェル23には上下方向に貫通する貫通孔24が形成されている。シールドシェル23は、下側に向かって貫通孔24の内径が小さくなる段部231を有する。ハウジング11は、ハウジング11の外周面において前側及び後側に突出するつば212を有する。ハウジング21は、貫通孔24の上側からハウジング21を貫通孔24に挿入し、つば212を段部231に当接させた状態で、シールドシェル23に保持されている。
【0053】
ハウジング21は上側に開放された開口Ap2を有し、この開口Ap2の内部に、上側に露出するように設けられた金属製の端子211が収容されている。端子211は、ワイヤW1と電気的に接続している。
【0054】
コネクタ20の外装体には、相手取付部16に対して締結部材F1によって締結される取付部25が設けられている。より具体的には、取付部25は、シールドシェル23の上側の端部から前側に突出して設けられている。取付部25は、ボルト30の後述の頭部32を保持する第2保持部26を有する。第2保持部26には、前側及び上側に開放された第2スリットSL2が形成されている。
【0055】
《締結部材の構成》
図2を参照する。
締結部材F1は、ボルト30と、ナット40とを有する。
ボルト30は、上下方向を軸方向とする軸部31と、軸部31の下端に一体的に設けられている頭部32とを有する。軸部31の外周面には、ネジ山が形成されている。頭部32は、上側から見ると、六角形状(より具体的には、正六角形状)を有する。すなわち、本実施形態のボルト30は、六角ボルトである。なお、上側から見た頭部32の形状は、六角形状に限られず、辺の数が偶数となるその他の多角形状(例えば、四角形状、八角形状)であってもよい。
【0056】
ナット40は、上側から見ると六角形状(より具体的には、正六角形状)の本体41と、本体41の下端に一体的に設けられているフランジ42とを有する。フランジ42は、上側から見ると円形状を有する。すなわち、本実施形態のナット40は、フランジ付き六角ナットである。ナット40の内周面にはネジ溝が形成されており、ナット40はボルト30の軸部31と螺合することができる。
【0057】
《相手取付部の構成》
図6を参照する。
相手取付部15は、上部分15Aと、上部分15Aの下側に一体的に形成されている下部分15Bとを有する。上部分15Aは略直方体形状を有する。下部分15Bは前側に向かうほど左右方向の幅が狭くなっており、上側から見ると略三角形状を有する。
【0058】
第1スリットSL1は、上部分15A及び下部分15Bの左右方向の中央において、上部分15A及び下部分15Bを上下方向に貫通するように形成されている。第1スリットSL1は、上側空間SL1aと、下側空間SL1bとを有する。上側空間SL1aは、第1保持部16により囲まれることで形成されている。下側空間SL1bは、面151,152,153により囲まれることで形成されている。
【0059】
面151,152,153は、それぞれ相手取付部15の内側に設けられている平坦な面であり、下部分15Bの下端から上部分15Aの上下方向の途中まで延びる。面151は、下側空間SL1bの右側の面であり、上下方向及び前後方向に延びる。面152は、下側空間SL1bの左側の面であり、上下方向及び前後方向に延びる。面151と面152は左右方向に所定距離だけ空けて対向している。当該所定距離は、軸部31の直径(すなわち、ボルト30の呼び径(d))よりも長く、フランジ42の直径よりも短い。
【0060】
面153は、下側空間SL1bの後側の面であり、上下方向及び左右方向に延びる。面153は、面151及び面152のそれぞれの後端と直角に接続している。
【0061】
第1保持部16は、第1縁部161と、内面162と、つば163とを有する。第1縁部161は、上側を向く水平面(xy平面上の面)を含み、面151,152,153のそれぞれの上端と直角に接続している。
【0062】
内面162は、第1縁部161の左端、右端及び後端からそれぞれ上側に延びる面である。内面162の左右方向の内幅は、フランジ42の直径よりも長い。
【0063】
つば163は、内面162の上端から内側に突出している部分である。つば163の内周面164は、上側から見ると、前側に開放された略C形状を有する。内周面164の内径は、本体41の対角距離よりも長く、フランジ42の直径よりも短い。つば163の下面である第1保持面165は、第1縁部161と上下方向に隙間を空けて対向している。
【0064】
《取付部の構成》
図10は、シールドシェル23及び未挿入状態のボルト30を上側から見た図である。
図11は、シールドシェル23の第2スリットSL2にボルト30を挿入した様子を示す図である。
図6、
図10及び
図11を参照する。
【0065】
取付部25は、前側に向かうほど左右方向の幅が狭くなっており、上側から見ると略三角形状を有する。第2スリットSL2は、第2保持部26により囲まれることで、取付部25の左右方向の中央に形成されている。
【0066】
図6に示すように、相手コネクタ10にコネクタ20が嵌合された嵌合状態において、第2スリットSL2は第1スリットSL1と上下方向に通じる。本実施形態では、嵌合状態において、第2スリットSL2と第1スリットSL1は上下方向に隙間なく通じている。しかしながら、第2スリットSL2と第1スリットSL1は上下方向に隙間を空けて通じていてもよい。
【0067】
第2保持部26は、第2保持面261と、第1面262と、第2面263と、奥面264と、第2縁部265とを有する。第2保持面261は、第2スリットSL2の下側の面であり、上側を向く水平面である。第1面262及び第2面263は、第2保持面261の左右方向の端部からそれぞれ上側に延びる面である。奥面264は、第2保持面261の後側の端部から上側に延びる面である。
【0068】
奥面264は、上側から見ると、所定角度で屈曲する略V字形状を有する。所定角度は、上側から見た頭部32の多角形状の内角と等しい角度である。奥面264は、ボルト30の頭部32の後側に位置する2つの面とそれぞれ当接することで、第2スリットSL2に挿入されるボルト30を前後方向及び左右方向に位置決めする。
【0069】
第1面262と第2面263は、左右方向に第1距離D1だけ空けて対向している。ここで、第1距離D1は、上側から見た頭部32の多角形状において、互いに対向する辺の最短距離D2よりも長い(D1>D2)。最短距離D2は、ボルト30の「二面幅(S)」とも称される。このため、
図10から
図11に示すように、ボルト30の頭部32を前側から第2スリットSL2に挿入することができる。
【0070】
また、第1距離D1は、上側から見た頭部32の多角形状において、最長対角線の長さD3よりも短い(D1<D3)。最長対角線の長さD3は、ボルト30の「対角距離(e)」とも称される。このため、
図11に示すように第2スリットSL2に頭部32が挿入された状態において、ボルト30に軸部31まわりに回転する方向の力が作用しても、頭部32の外周面が第1面262及び第2面263の少なくとも一方と左右方向に接触することで、ボルト30の回転を規制することができる。すなわち、第1面262及び第2面263は、本開示の「接触面」の一例である。
【0071】
第2縁部265は、第1面262、第2面263及び奥面264の上端から内側に突出している部分である。第2縁部265の内周面266は、上側から見ると、前側に開放された略C形状を有する。内周面266の左右方向の幅は、軸部31の直径よりも長く、最短距離D2よりも短い。
【0072】
《コネクタと相手コネクタとの嵌合》
相手コネクタ10にコネクタ20が嵌合される様子を説明する。はじめに、
図1(
図7)から
図2に示すように、相手コネクタ10にコネクタ20を手で仮嵌合する。具体的には、コネクタ20を手で上側に移動させて、相手コネクタ10の開口Ap1に下側からハウジング21を挿入させる。なお、相手コネクタ10にコネクタ20を嵌合する際、相手コネクタ10及びコネクタ20は上下方向に相対的に近づけばよく、相手コネクタ10を下側に移動させてもよい。
【0073】
次に、
図8に示すように、筐体13及びコネクタ20に締結部材F1を挿入する。未挿入状態において、ナット40は、
図2に示すように軸部31の上端に数回転だけ軽く螺合されることで、ボルト30に取り付けられている。このため、筐体13及びコネクタ20に締結部材F1を挿入する際に、ボルト30からナット40が脱落することを防止することができる。
【0074】
ボルト30は、第1スリットSL1及び第2スリットSL2に前側から挿入される。より具体的には、軸部31は第1スリットSL1及び第2スリットSL2にまたがって挿入され、頭部32は第2スリットSL2に挿入される。このとき、軸部31は第1縁部161及び第2縁部265の内側を上下方向に通り、第1縁部161よりも上側に突出する。
【0075】
ナット40は、ボルト30とともに第1スリットSL1の上側空間SL1aに挿入される。このとき、フランジ42は第1縁部161とつば163とにより上下方向に挟まれた空間に収容される。また、本体41の上側の端部41aは、第1スリットSL1の上側に露出する。すなわち、ナット40の高さH1は、第1縁部161からつば163の上端までの上下方向の高さH2よりも高い(H1>H2)。
【0076】
また、このとき、下側及び上側のいずれが重力側であっても、挿入されたナット40が第1保持部16により保持されるか、挿入されたボルト30が第2保持部26により保持されるため、ボルト30の第1スリットSL1及び第2スリットSL2からの脱落を防止することができる。
【0077】
下側が重力側(地面側)に対応する場合、フランジ42の下面が第1縁部161と当接することで、ナット40が第1保持部16により下側から支えられる。すなわち、第1保持部16は、ナット40の頭部32側への移動を規制した状態で、ナット40を保持する。このとき、頭部32の下面が第2保持面261と当接することで、ボルト30が第2保持部26により下側から支えられてもよい。
【0078】
上側が重力側(地面側)に対応する場合、頭部32の上面が第2縁部265と当接することで、ボルト30が第2保持部26により上側から保持される。すなわち、第2保持部26は、頭部32のナット40側への移動を規制した状態で、頭部32を保持する。このとき、フランジ42の上面がつば163と当接することで、ナット40が第1保持部16により上側から支えられてもよい。
【0079】
続いて、
図8から
図9(
図3)に示すように、ナット40をボルト30にさらに螺合させることで、相手コネクタ10にコネクタ20を本嵌合させる。より具体的には、ナット40の端部41aを工具により軸部31まわりの所定方向に回転させる。第1保持部16の内面162は、ナット40の側面との間に隙間を有して対向するため、ナット40は内面162と接触することなく回転することができる。このため、本実施形態の内面162は本開示の「非接触面」として機能する。このとき、ナット40のネジ溝とボルト30のネジ山との摩擦により、ボルト30には軸部31まわりに回転する方向の力が作用する。
【0080】
しかしながら、
図10及び
図11により説明したように、このような力が作用しても、頭部32の外周面が第1面262及び第2面263の少なくとも一方と左右方向に接触するため、ボルト30は回転せず、ナット40のみが回転する。これにより、ボルト30にナット40が螺合される。
【0081】
より具体的には、ナット40の回転に伴い、ボルト30の軸部31が上側に移動する。このとき、ボルト30の頭部32が第2保持部26の第2縁部265を上側に押圧することで、シールドシェル23が上側に移動し、シールドシェル23の段部231がハウジング21のつば212を上側に押圧することで、ハウジング21が上側に移動する。これにより、相手コネクタ10にコネクタ20がより深く進入し、相手コネクタ10にコネクタ20が本嵌合する。
【0082】
そして、
図9に示すように、第1保持部16及び第2保持部26(より具体的には、第1縁部161及び第2縁部265)が、頭部32及びフランジ42により上下方向に挟まれることで、コネクタ20が相手コネクタ10に固定される。
【0083】
この結果、相手コネクタ10の相手端子111と、コネクタ20の端子211とが電気的に接触する。これにより、第1の機器(相手コネクタ10側の機器)の電気回路と、第2の機器(コネクタ20側の機器)の電気回路とが、相手端子111、端子211及びワイヤW1を介して、電気的に接触する。
【0084】
図9に示す状態において、ハウジング11に取り付けられたゴムリング12は、シールドシェル23の内面に密着している。また、ハウジング21に取り付けられたゴムリング22は、ハウジング11の内面に密着している。これにより、相手端子111及び端子211が位置する領域に外部から水等の異物が進入することを防止することができる。
【0085】
《コネクタと相手コネクタとの取り外し》
相手コネクタ10からコネクタ20が取り外される様子を説明する。はじめに、
図9から
図8に示すように、ナット40の端部41aを工具により軸部31まわりの所定方向とは反対方向に回転させる。このとき、嵌合時と同様に、ボルト30は回転せず、ナット40のみが回転することで、ボルト30の軸部31が下側に移動する。
【0086】
そして、ボルト30の頭部32が第2保持部26の第2保持面261を下側に押圧することで、コネクタ20が下側に移動し、
図8に示すように相手コネクタ10からコネクタ20がある程度抜き出される。この状態において、ボルト30及びナット40を第1スリットSL1及び第2スリットSL2から取り出し、その後、コネクタ20を手で相手コネクタ10から取り外す。
【0087】
《実施形態の作用効果》
本実施形態のコネクタ20は、機器側の相手コネクタ10に対して上下方向に嵌合されるコネクタである。コネクタ20は、相手コネクタ10が有する相手端子111と電気的に接続する端子211を内側に有する外装体と、前記外装体に設けられ、相手コネクタ10が装着される機器側の筐体13が有する相手取付部15に対して締結部材F1によって締結される取付部26と、を備える。
【0088】
締結部材F1は、上下方向を軸方向とする軸部31と、軸部31の下端に設けられる頭部32と、を含むボルト30と、軸部31に螺合されるナット40と、を有する。
【0089】
相手取付部15は、頭部32側への移動を規制した状態でナット40を保持する第1保持部16を有し、第1保持部16には、前側に開放され、前後方向からナット40を含む締結部材F1の一部を挿入可能な第1スリットSL1が形成されている。
【0090】
取付部25は、ナット40側への移動を規制した状態で頭部32を保持する第2保持部26を有し、第2保持部26には、前側に開放され、前後方向から頭部32を含む締結部材F1の一部を挿入可能であり、第1スリットSL1と上下方向に通じる第2スリットSL2が形成されている。
【0091】
このように構成されるコネクタ20によれば、ボルト30にナット40を螺合することにより、相手取付部15に取付部26を締結するとともに、コネクタ20を相手コネクタ10に固定することができるため、筐体13にネジ溝を加工する必要がない。このため、コネクタ接続構造50の製造コストを低減することができる。また、仮にナット40のネジ溝が潰れた場合であっても、ナット40を修理又は交換すればよいため、従来のように相手コネクタ10の筐体13を修理又は交換する必要がなく、コネクタ接続構造50の維持コストを低減することができる。これにより、コネクタ20を含むコネクタ接続構造50のコストをより低減することができる。
【0092】
従来、ボルト940は、
図12に示すように、台座部924に取り付けた状態でボルト孔932に第1方向(本実施形態の上下方向)に挿入される。ボルト孔932の他方側への開口は狭く、メスコネクタ910にオスコネクタ920が仮嵌合される際、オスコネクタ920が前後方向又は左右方向に少しずれるだけでもボルト940とボルト孔932の位置が合わない場合がある。また、メスコネクタ910とオスコネクタ920とを仮嵌合させると、ボルト940及び台座部924に遮られ、作業者はボルト孔932を目視することができない。このため、ボルト940とボルト孔932との位置がずれた場合、作業者はオスコネクタ920を手で前後方向又は左右方向に揺らして、ボルト孔932が見えない状態のまま、ボルト940がボルト孔932と合う位置を探す必要があった。
【0093】
これに対し、本実施形態では、締結部材F1は、前側に開放されている第1スリットSL1及び第2スリットSL2に前後方向に挿入される。第1スリットSL1及び第2スリットSL2は、相手コネクタ10にコネクタ20が嵌合する上下方向と直交する方向である前後方向の一方側(前側)に開放されているため、相手コネクタ10にコネクタ20を仮嵌合させた状態(
図2の状態)でも、作業者は第1スリットSL1及び第2スリットSL2を目視することができる。このため、より容易に締結部材F1を第1スリットSL1及び第2スリットSL2に挿入することができる。このため、本実施形態のコネクタ20によれば、相手コネクタ10と嵌合させる際の作業性を向上させることができる。
【0094】
本実施形態の第1保持部16は、ナット40の側面との間に隙間を有して対向してナット40を回転可能とする非接触面(具体的には、内面162)を有し、第2保持部26は、ボルト30にナット40を螺合させる際に、頭部32の側面に接触することでボルト30の第2保持部26に対する回転を規制する接触面(具体的には、第1面262又は第2面263)を有する。
【0095】
このように構成することで、ナット40を回転可能としつつ、ナット40を回転させる際にボルト30が供回りすることを防止することができる。これにより、コネクタ20を相手コネクタ10と嵌合させる際の作業性を向上させることができる。
【0096】
本実施形態の接触面は、左右方向に第1距離D1だけ空けて対向する第1面262及び第2面263を含み、上下方向から見て頭部32は辺の数が偶数の多角形状であり、第1距離D1は、前記多角形状の互いに対向する辺の最短距離D2よりも長く、前記多角形状の最長対角線の長さD3よりも短い。
【0097】
このように構成することで、頭部32を前側から第2スリットSL2に挿入することを可能としつつ、第2スリットSL2に挿入された頭部32の側面が第1面262及び第2面263の少なくとも一方と左右方向に接触することで、ボルト30の回転を抑制することができる。
【0098】
本実施形態のナット40は、フランジ42を有し、第1保持部16は、第1スリットSL1に挿入されたフランジ42に対して頭部32側から接触可能な第1縁部161を有し、第1縁部161は、第1スリットSL1に挿入された軸部31を上下方向に通す。
【0099】
このように構成することで、第1縁部161によりナット40の頭部32側への移動を規制しつつ、軸部31にナット40を螺合させることができる。
【0100】
本実施形態の第1保持部16は、第1スリットSL1に挿入されたフランジ42に対して頭部32側の反対側から接触可能な第1保持面165を有する。
【0101】
このように構成することで、フランジ42は、頭部32側への移動が第1縁部161により規制され、頭部32から離れる側への移動が第1保持面165により規制される。すなわち、第1縁部161及び第1保持面165によりナット40の上下方向の移動が規制される。これにより、第1スリットSL1に挿入されたナット40が脱落することを防止することができるため、相手コネクタ10にコネクタ20を嵌合する際、及び相手コネクタ10からコネクタ20を取り外す際の作業性を向上させることができる。
【0102】
本実施形態の第2保持部26は、第2スリットSL2に挿入された頭部32に対してナット40側から接触可能な第2縁部265を有し、第2縁部265は、第2スリットSL2に挿入された軸部31を上下方向に通す。
【0103】
このように構成することで、第2縁部265により頭部32のナット40側への移動を規制しつつ、軸部31にナット40を螺合させることができる。
【0104】
本実施形態の第2保持部26は、第2スリットSL2に挿入された頭部32に対してナット40側の反対側から接触可能な第2保持面261を有する。
【0105】
このように構成することで、頭部32は、ナット40側への移動が第2縁部265により規制され、ナット40から離れる側への移動が第2保持面261により規制される。すなわち、第2縁部265及び第2保持面261によりボルト30の上下方向の移動が規制される。これにより、第2スリットSL2に挿入されたボルト30が脱落することを防止することができるため、相手コネクタ10にコネクタ20を嵌合する際、及び相手コネクタ10からコネクタ20を取り外す際の作業性を向上させることができる。
【0106】
また、従来はボルト30の上下方向の移動を規制するために、
図12に示すようなCリング960が用いられていた。これに対し、本実施形態では第2縁部265及び第2保持面261によりボルト30の上下方向の移動が規制されるため、Cリング960が不要となる。このため、Cリング960の分だけ部品点数を削減することができ、コネクタ20を含むコネクタ接続構造50のコストをより低減することができる。
【0107】
本実施形態において、第1スリットSL1は、上側に開放されている。そして、ナット40は、第1スリットSL1に挿入された状態で、第1スリットSL1よりも上側に突出している端部41aを有する。
【0108】
このように構成することで、端部41aを工具により軸部31まわりの所定方向に容易に回転させることができるため、コネクタ20を相手コネクタ10に嵌合させる際の作業性を向上させることができる。
【0109】
本実施形態のコネクタ20の外装体は、端子211を収容するハウジング21と、ハウジング21を覆うシールドシェル23と、を備え、取付部25は、シールドシェル23に設けられている。
【0110】
シールドシェル23は、端子211をシールドするために、従来よりコネクタ20に設けられている部材である。このようなシールドシェル23に取付部25を設けるため、取付部25を設けるためにコネクタ20に新たな部材を追加する必要がなく、コストの増加を抑制することができる。
【0111】
《変形例》
以下、実施形態の変形例を説明する。変形例において、実施形態から変更のない部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0112】
《第1保持部及び第2保持部の変形例》
上記の実施形態では、相手コネクタ10の相手取付部15にナット40を保持する第1保持部16が設けられ、コネクタ20の取付部25にボルト30の頭部32を保持する第2保持部26が設けられている。
【0113】
しかしながら、これらの関係は逆であってもよい。すなわち、相手コネクタ10の相手取付部15に頭部32を保持する第2保持部26が設けられ、コネクタ20の台座部26にナット40を保持する第1保持部16が設けられてもよい。この場合、相手コネクタ10に形成された第1スリットSL1は前側及び下側に開放され、コネクタ20に形成された第2スリットSL2は前側、上側及び下側に開放されている。また、この場合、締結部材F1は、ボルト30の頭部32を上側に、ナット40を下側にした状態で、第1スリットSL1及び第2スリットSL2に挿入される。
【0114】
《接触面及び端部の変形例》
上記の実施形態では、第1保持部16にナット40を回転可能とするための非接触面としての内面162が設けられ、第2保持部26にボルト30の回転を規制するための接触面としての第1面262及び第2面263が設けられている。また、第1スリットSL1が上側に開放され、ナット40の端部41aが第1スリットSL1から上側に突出する。これにより、ナット40の端部41aを工具により回転させ、この際にボルト30が供回りすることを接触面により防止している。
【0115】
しかしながら、これらの関係は逆であってもよい。すなわち、第1保持部16にナット40の回転を規制するための接触面が設けられ、第2保持部26にボルト30の頭部32を回転可能とするための非接触面が設けられ、第2スリットSL2が下側に開放されていてもよい。このとき、ボルト30の頭部32は、第2スリットSL2から下側に突出する端部32aを有する。この場合、ボルト30の端部32aを工具により回転させる際、ナット40が供回りすることを接触面により防止することができる。
【0116】
第1保持部16に設ける接触面は、実施形態の第1面262及び第2面263と同様に、ナット40の本体41に対して左右方向に接触する面とすればよい。この場合、第1保持部16に設ける接触面は、左右方向に第1距離D4だけ空けて対向する第1面166及び第2面167を含む。そして、ナット40の本体41は上下方向から見て正六角形状(辺の数が偶数の多角形状)であり、第1距離D4は、本体41の多角形状の互いに対向する辺の最短距離D5よりも長く、当該多角形状の最長対角線の長さD6よりも短い(D5<D4<D6)。このように構成することで、ナット40を前側から第1スリットSL1に挿入することを可能としつつ、第1スリットSL1に挿入されたナット40の外周面が第1面166及び第2面167の少なくとも一方と左右方向に接触することで、ナット40の回転を抑制することができる。
【0117】
《補記》
なお、上記の実施形態及び各種の変形例については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。また、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
10 相手コネクタ
11 ハウジング
111 相手端子
12 ゴムリング
13 筐体
131 下面
14 貫通孔
15 相手取付部
15A 上部分
15B 下部分
151 面
152 面
153 面
16 第1保持部
161 第1縁部
162 内面(非接触面)
163 つば
164 内周面
165 下面(第1保持面)
166 第1面(接触面の一例)
167 第2面(接触面の一例)
20 コネクタ
21 ハウジング
211 端子
22 ゴムリング
23 シールドシェル
231 段部
24 貫通孔
25 取付部
26 第2保持部
261 第2保持面
262 第1面(接触面の一例)
263 第2面(接触面の一例)
264 奥面
265 第2縁部
266 内周面
30 ボルト
31 軸部
32 頭部
32a 端部
40 ナット
41 本体
41a 端部
42 フランジ
50 コネクタ接続構造
910 メスコネクタ
911 メスハウジング
912 メス端子
920 オスコネクタ
921 オスハウジング
922 オス端子
923 シールドシェル
924 台座部
925 挿通孔
930 ケース
931 取付孔
932 ボルト孔
940 ボルト
941 頭部
942 軸部
950 電線
960 Cリング
U1 相手コネクタユニット
F1 締結部材
SL1 第1スリット
SL1a 上側空間
SL1b 下側空間
SL2 第2スリット
Ap1 開口
Ap2 開口
W1 ワイヤ
D1 第1距離
D2 最短距離
D3 最長対角線の長さ
D4 第1距離
D5 最短距離
D6 最長対角線の長さ