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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187604
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】補助ベルト装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/10 20060101AFI20221213BHJP
   A44B 11/04 20060101ALI20221213BHJP
   B60R 22/00 20060101ALI20221213BHJP
   B60R 22/26 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B60R22/10 105
A44B11/04
B60R22/00 207
B60R22/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095681
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】591091021
【氏名又は名称】株式会社ハシモトBaggage
(71)【出願人】
【識別番号】514248547
【氏名又は名称】株式会社エムビーエムサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】發田 恭生
【テーマコード(参考)】
3B090
3D018
【Fターム(参考)】
3B090AC01
3B090AD10
3B090AE02
3B090BC18
3B090BC20
3D018BA12
(57)【要約】
【課題】幼児等でも素早く容易に着脱でき、一旦装着すると幼児等の身体が確実に固定される補助ベルト装置を提供する。
【解決手段】車両の座席の背受け面に沿って装着される背面シート14と、肩当て部材24、紐部材26及びバックル28を有する。背面シート14に、左右一対に取り付けられた肩ベルト16を備える。肩当て部材24は、背面シート14の、使用者Sの肩より高い位置に上端部が位置する。紐部材26は、座席に装着された背面シート14の、使用者Sの胸より低い位置に下端部が位置する。バックル28は、一対の側壁部38a,38bを相互に連結する第一、第二及び第三の連結バー40a,40b,40cを有したバックル本体34と、指を掛けることができる係止解除用リング36とを備える。バックル本体34は、肩当て部材24の外面側又は下端部に取り付けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の座席の背受け面に沿って装着される背面部材と、肩当て部材、紐部材及びバックルを有し、前記背面部材に左右一対に取り付けられて使用者の肩周りを固定する肩ベルトとを備え、
前記肩当て部材は、前記座席に装着された前記背面部材の、使用者の肩より高い位置に上端部が取り付けられ、
前記紐部材は、帯紐で成り、前記座席に装着された前記背面部材の、使用者の胸より低い位置に下端部が取り付けられ、
前記バックルは、一対の側壁部を相互に連結する第一、第二及び第三の連結バーを有し、第一及び第二の連結バーの間に上側スリットが開口し、第二及び第三の連結バーの間に下側スリットが開口しているバックル本体と、指を掛けることができる係止解除用リングとで構成され、前記バックル本体は、前記肩当て部材の外面側又は下端部に取り付けられており、
使用時、前記係止解除用リングの特定部分が、前記バックル本体の前記第二の連結バーの外面側に沿うように配置され、前記紐部材の先端部が、前記バックル本体の内面側から前記上側スリットに挿通され、前記第二の連結バー及び前記特定部分を巻き込むように、前記下側スリットを通じて前記バックル本体の内面側に引き出されていることを特徴とする補助ベルト装置。
【請求項2】
前記紐部材の先端部に、当該部分を引っ張る時に指を掛けるための引っ張り用リングが取り付けられている請求項1記載の補助ベルト装置。
【請求項3】
前記肩当て部材は、前記紐部材よりも幅広で変形しにくい素材で成る請求項1又は2記載の補助ベルト装置。
【請求項4】
車両の座席の背受け面に沿って装着される背面部材と、肩当て部材、紐部材及びバックルを有し、前記背面部材に左右一対に取り付けられて使用者の肩周りを固定する肩ベルトとを備え、
前記肩当て部材は、前記紐部材よりも幅広で変形しにくい素材で成り、上端部が、前記座席に装着された前記背面部材の、使用者の肩より高い位置に取り付けられて、内面側が使用者の肩周りに当接し、
前記紐部材は、下端部が、前記座席に装着された前記背面部材の、使用者の胸より低い位置に取り付けられ、
前記バックルは、前記肩当て部材の外面側又は下端部に取り付けられ、前記紐部材の途中の位置を長さ調節可能に係止することを特徴とする補助ベルト装置。
【請求項5】
前記肩当て部材は、下端部にガイド用リングが取り付けられ、前記バックルは、前記肩当て部材の外面側に取り付けられ、前記紐部材は、先端部が、前記ガイド用リングを通じて前記バックルに案内される請求項1乃至4のいずれか記載の補助ベルト装置。
【請求項6】
前記肩当て部材は、上端部が、前記座席に装着された前記背面部材に対し、上下方向又は上下左右方向に移動可能な遊びを持たせて取り付けられている請求項1乃至5のいずれか記載の補助ベルト装置。
【請求項7】
一対の前記肩当て部材の途中の位置を相互に連結する着脱式の連結部材を備える請求項1乃至6のいずれか記載の補助ベルト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の座席で身体の保持に使用される補助ベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
幼稚園バス等の幼児専用車(専ら幼児の運送の用に供する自動車)は、座席ベルトの装備義務が免除されている。これは、緊急時、幼児が自らベルトを外して脱出するのに時間が掛かる点、幼児の体格が年齢によって様々なので、一定の座席ベルトが設定しにくい点、同乗する幼稚園教諭等に着脱補助作業が発生する点等の諸事情によるものである。しかしながら、幼児の安全性を確保するためには、簡易的にでも、幼児の身体を座席に固定することが好ましい。
【0003】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、車両シートのシートバックに垂直に架け渡される一対のシートバック固定ベルトと、一対のシートバック固定ベルトの途中に設けられ、車両シートに着座した使用者の肩及び腋下の双方から使用者を固定する一対の身体固定ベルトとを備えた車両シート用固定ベルトがあった。身体固定ベルトは、長さ方向に2分割された帯紐部材で成り、使用者の胸部付近に、分割された端部同士を着脱自在にする身体固定ベルト接続部が設けられている。
【0004】
身体固定ベルト接続部は、例えば、2分割された片方の端部に取り付けたリング状の留め具と、他方の端部に取り付けた面ファスナ(雄部/雌部)とで構成され、留め具の中に、面ファスナを取り付けた方の端部を挿通して折り返し、面ファスナの雄部と雌部とを貼着することによって、端部同士が接続される。また、面ファスナの雄部と雌部との貼着位置を変更することによって、身体固定ベルトの固定長さを調節することができる。その他、2分割された身体固定ベルトの片方の端部にバックルを取り付け、バックルで端部同士を接続する構造にしてもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-184580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の車両シート用固定ベルトは、2分割された身体固定ベルトの端部同士を留め具と面ファスナとで接続する構造なので、幼児でも比較的容易に着脱できると思われる。しかしながら、面ファスナは、雄部と雌部との圧接の強さや貼着させる面積にバラツキが発生しやすいので、身体固定ベルトの接続強度が不安定になりやすく、安全性の面で十分とは言えない。
【0007】
また、2分割された身体固定ベルトの端部同士をバックルで接続する構造にすれば、身体固定ベルトの接続強度は安定に確保できる。しかし、身体固定ベルトを装着する時、片方の手でバックルを把持して位置決めし、他方の手で帯紐部材の端部を持ってバックルに通して係止させる動作を行う必要があり、幼児にとっては意外に難しい。また、身体固定ベルトを外す時、バックルの係止状態を幼児が容易に解除できることが求められるが、特許文献1では、この点については特に考慮されていない。
【0008】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、座席ベルトの無い幼児専用車等で使用するのに好適で、幼児等でも素早く容易に着脱でき、一旦装着すると幼児等の身体が確実に固定される補助ベルト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、車両の座席の背受け面に沿って装着される背面部材と、肩当て部材、紐部材及びバックルを有し、前記背面部材に左右一対に取り付けられて使用者の肩周りを固定する肩ベルトとを備え、前記肩当て部材は、前記座席に装着された前記背面部材の、使用者の肩より高い位置に上端部が取り付けられ、前記紐部材は、帯紐で成り、前記座席に装着された前記背面部材の、使用者の胸より低い位置に下端部が取り付けられ、前記バックルは、一対の側壁部を相互に連結する第一、第二及び第三の連結バーを有し、第一及び第二の連結バーの間に上側スリットが開口し、第二及び第三の連結バーの間に下側スリットが開口しているバックル本体と、指を掛けることができる係止解除用リングとで構成され、前記バックル本体は、前記肩当て部材の外面側又は下端部に取り付けられており、
使用時、前記係止解除用リングの特定部分が、前記バックル本体の前記第二の連結バーの外面側に沿うように配置され、前記紐部材の先端部が、前記バックル本体の内面側から前記上側スリットに挿通され、前記第二の連結バー及び前記特定部分を巻き込むように、前記下側スリットを通じて前記バックル本体の内面側に引き出されている補助ベルト装置である。そして、使用者が、前記紐部材の先端部を、前記肩当て部材の内面側が使用者の肩周りに当接する位置まで引っ張ることによって、前記紐部材に締め付けられて前記第二の連結バーと前記特定部分とが密接し、前記紐部材が前記バックルとの間の摺動摩擦により係止されて抜け止めされ、使用者が、前記係止解除用リングを前記第二の連結バーから離間させる方向に引っ張ることによって、前記紐部材による締め付けが緩められ、前記紐部材の係止が解除されるものである。
【0010】
前記紐部材の先端部に、当該部分を引っ張る時に指を掛けるための引っ張り用リングが取り付けられていると良い。また、前記肩当て部材は、前記紐部材よりも幅広で変形しにくい素材で成ると好ましい。
【0011】
またこの発明は、車両の座席の背受け面に沿って装着される背面部材と、肩当て部材、紐部材及びバックルを有し、前記背面部材に左右一対に取り付けられて使用者の肩周りを固定する肩ベルトとを備え、前記肩当て部材は、前記紐部材よりも幅広で変形しにくい素材で成り、上端部が、前記座席に装着された前記背面部材の、使用者の肩より高い位置に取り付けられて、内面側が使用者の肩周りに当接し、前記紐部材は、下端部が、前記座席に装着された前記背面部材の、使用者の胸より低い位置に取り付けられ、前記バックルは、前記肩当て部材の外面側又は下端部に取り付けられ、前記紐部材の途中の位置を長さ調節可能に係止する補助ベルト装置である。
【0012】
前記肩当て部材は、下端部にガイド用リングが取り付けられ、前記バックルは、前記肩当て部材の外面側に取り付けられ、前記紐部材は、先端部が、前記ガイド用リングを通じて前記バックルに案内されるものでも良い。
【0013】
前記肩当て部材は、上端部が、前記座席に装着された前記背面部材に対し、上下方向又は上下左右方向に移動可能な遊びを持たせて取り付けられていると良い。さらに、一対の前記肩当て部材の途中の位置を相互に連結する着脱式の連結部材を備えても良い。
【発明の効果】
【0014】
この発明の補助ベルト装置は、座席ベルトが装備ざれていない幼児専用車等で使用するのに好適で、幼児等でも容易に着脱でき、一旦装着すると使用者の身体が確実に固定される。また、構造がシンプルで安価に提供することができ、しかも様々な座席に適用できる汎用性を備えているので、非常に普及させやすいものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の補助ベルト装置の一実施形態を車両の座席に装着した状態を示す側面図である。
図2】この実施形態の補助ベルト装置を車両の座席から取り外して展開した状態を示す平面図である。
図3】この実施形態の補助ベルト装置を車両の座席に装着した時の、肩ベルトのA部~D部を拡大して模式的に描いた側面図である。
図4】この実施形態の補助ベルト装置で使用されるバックル本体の具体的な構成例を示す平面図(a)及びE-E断面図(b)、バックル本体に紐部材を通して係止させる動作を示す側面図(c)バックル本体による紐部材の係止を解除させる動作を示す側面図(d)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の補助ベルト装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態の補助ベルト装置10は、図1に示すように、座席ベルトが装備されていない幼稚園バス等の座席12に装着して使用される装置で、図1図2に示すように、座席12の背受け面12aに沿って装着される背面部材であるシート状の背面シート14と、背面シート14に左右一対に取り付けられて使用者Sの肩周りを固定する肩ベルト16とを備える。使用者Sは、幼児や幼稚園教諭等である。
【0017】
背面シート14は、略長方形の柔らかい布等で成る基材18を備え、基材18の長さ方向の一端部に上側固定紐20aが取り付けられ、反対側の端部に下側固定紐20bが取り付けられている。また、基材18の、2つの肩ベルト16が取り付けられる部分を補強するため、一対の補強帯22が上下方向に縫着されている。背面シート14を座席12に装着する時は、上側固定紐20aを取り付けた端部を上側に配し、基材18の裏面側を背受け面12a及び座面12aに沿って装着される。
【0018】
肩ベルト16は、図2図3に示すように、肩当て部材24、紐部材26及びバックル28で構成される。肩当て部材24は、上端部が、座席12に装着された背面シート14の、使用者Sの肩より高い位置に取り付けられて、内面側が使用者Sの肩周りに当接する部材で、紐部材24よりも幅広で変形しにくい素材(例えば、ランドセル等の肩ベルト又は肩当て部材として使用される天然皮革や人工皮革等)が使用されている。また、肩当て部材24の下端部には、紐部材26を案内するためのガイド用リング30が取り付けられている。
【0019】
なお、肩当て部材24の上端部は、背面シート14に対し、上下方向又は上下左右方向に移動可能な遊びを持たせて取り付けられている。具体的には、2つの孔を有した日の字形の枠体で成る取り付け具32を用意し、肩当て部材24の上端部を、取り付け具32の片方の孔に通して巻き付けて取り付け具32に取り付ける。そして、取り付け具32の他方の孔の孔に、補強帯22の、基材18に縫着されていない部分を通し、取り付け具32を補強帯22に保持させる。これで、肩当て部材24の上端部は、取り付け具32を介して背面シート14に取り付けられ、補強帯22の、基材18に縫着されていない部分の長さに応じて、上下方向又は上下左右方向に移動可能になる。
【0020】
紐部材26は、柔らかい生地の帯紐で成り、図2図3に示すように、下端部が、座席12に装着された背面シート14の、使用者Sの胸より低い位置に取り付けられている。具体的には、紐部材26の下端である基端部を補強帯22の特定の位置に重ね、基材18に一体に縫着することによって固定されている。紐部材26は、先端部がバックル28の中を通って外に引き出され、途中の位置がバックル28に係止されて肩ベルト16の一部となる。
【0021】
バックル28は、図2図3に示すように、バックル本体34と係止解除用リング36とで構成される。バックル本体34は、紐部材26の途中の位置を長さ調節可能に係止する部材で、一対の側壁部38a,38bを相互に連結する第一、第二及び第三の連結バー40a,40b,40cを有し、第一及び第二の連結バー40a,40bの間に上側スリット42aが開口し、第二及び第三の連結バー40b,40cの間に下側スリット42bが開口している。バックル本体34は、肩当て部材24の上下方向の途中の位置の外面側の、使用者Sの肩又は胸の高さに、第一の連結バー40aを軸に回動可能に吊り下げるように取り付けられている。なお、図3ではバックル本体34を模式的に描いているが、実際には、図4(a)、(b)に示すような構造のものを使用することが好ましい。なお、図4(a)、(b)に示すバックル34において、第一の連結バー40aの近傍に補助バー40dを有するが、補助バー40dは、適宜設けることができるもので、本発明の動作に大きく影響するものではない。
【0022】
係止解除用リング36は、バックル本体34が紐部材26を係止している状態から、その係止を解除して肩ベルト16を長くする時に使用される部材で、使用者Sが指を掛けることができる大きさの環状の部材である。例えば、Dカンと呼ばれる金具又は樹脂部材を使用することができる。
【0023】
ここで、図3を基に、バックル本体34と係止解除用リング36との位置関係、及びこれらと紐部材26との接続構造を簡単に説明すると、紐部材26の先端部側は、肩当て部材24の下端部に設けたガイド用リング30を通じてバックル28の位置に案内される。係止解除用リング36は、特定部分36a(例えばDカンの真っすぐな部分)がバックル本体34の第二の連結バー40bの外面側に沿うように配置される。そして、紐部材26の先端部が、バックル本体34の内面側から上側スリット42aに挿通され、第二の連結バー40b及び特定部分36aを巻き込むように、下側スリット42bを通じてバックル本体34の内面側に引き出される。バックル28が紐部材26を係止する動作や係止を解除する動作は、補助ベルト装置10の使用方法の中で詳しく述べる。
【0024】
その他、バックル本体34から引き出された紐部材26の先端部には、指を掛けることができる大きさのDカン等である引っ張り用リング38が取り付けられている。また、一対の肩当て部材24の途中の位置に、2つの肩当て部材24を相互に連結する着脱式の連結部材40が設けられている。
【0025】
次に、補助ベルト装置10の使用方法について説明する。補助ベルト装置10を幼稚園バス等の座席12に取り付ける時は、背面シート14(基材18)の裏面側を背受け面12a及び座面12aに当接させ、上側固定紐20aを背受け面12aの裏側の取っ手12cに図示しないネジ又はボルト等により取り付け、さらに下側固定紐20bを座席12の脚部12dに図示しないネジ又はボルト等により取り付け、背面シート14が位置ずれしないように固定する。そして、初期状態として、肩ベルト16の長さはゆとりを持って長くしておき、2つの肩ベルト16が自由に移動できるように連結部材40による連結は解除しておく。
【0026】
幼稚園バス等に乗車する使用者Sは、座席12に着座して両腕を2つの肩ベルト16の内側に通した後、肩ベルト16の長さを自分の体格に合わせて短くする。具体的には、片方の手でバックル28を位置決めし、他方の手で紐部材26の先端部を引いて、肩当て部材24の内面側が使用者Sの肩周りに当接させる。紐部材26の先端部を下向きに引っ張る動作は、紐部材26の先端部に取り付けられた引っ張り用リング38に指を掛けることによって、幼児でも簡単に引っ張ることができる。この動作を行うと、図4(c)に示すように、紐部材26に締め付けられて第二の連結バー40bと係止解除用リング36の特定部分36aとが密接し、所定の位置で引っ張るのを止めると、紐部材26がバックル28との間の摺動摩擦により係止されてしっかりと抜け止めされ、肩ベルト16が適切な長さに保持される。
【0027】
肩ベルト16の長さを短くする時、バックル28の位置決めは、肩当て部材24の特定の位置(好ましくはバックル28の近傍の位置)を片方の手で把持することによって行い、必要に応じてその手の指をバックル28に添えるとよい。例えば、バックル28の外形が小さいと、バックル28を把持するのに苦労する場合があるが、バックル28が取り付けられた肩当て部材24は比較的大形でしっかりしているので、肩当て部材24を把持することにより、幼児でも容易にバックル28を位置決めすることができる。
【0028】
肩ベルト16を適切な長さに設定した後は、2つの肩当て部材24を連結部材40で相互に連結し、肩ベルト16が左右に開いて脱落するのを防止する。これで、使用者Sの肩周りが肩ベルト16でしっかり固定され、安全が確保された状態で幼稚園バス等が発車する。
【0029】
幼稚園バス等が目的地に到着すると、使用者Sは、座席12から立ち上がって下車するため、連結部材40を外して2つの肩ベルト16が自由に移動できるようにした後、肩ベルト16の長さを長くする。具体的には、上記と同様に片方の手でバックル28を位置決めし、他方の手で係止解除用リング36に指を掛けて上向きに引っ張る。この動作を行うと、図4(d)に示すように、バックル28が自動的に立ち上がって第二及び第三の連結バー40b,40cの配置が変化し、紐部材26のとの間の摺動摩擦が小さくなって抜け止めの係止が解除され、紐部材26を容易に引き抜くことができる。このように、肩ベルト16の長さを長くする動作も、長さを短くする動作と同様に、幼児でも容易に行うことができる。
【0030】
肩ベルト16を長くすると肩周りの固定が解除されるので、使用者Sは、肩ベルト16を左右に開いて両腕を抜くことができ、座席12から立ち上がって下車することができる。
【0031】
以上説明したように、補助ベルト装置10は、座席ベルトが装備されていない幼児専用車等で使用するのに好適で、幼児でも素早く容易に着脱でき、一旦装着すると、幼児の身体が確実に固定される。また、構造がシンプルで安価に提供することができ、しかも様々な座席12に適用できる汎用性を備えているので、非常に普及させやすいものである。
【0032】
なお、この発明の補助ベルト装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、適用対象は、高齢者や障害者の送迎用の車両にも利用可能であり、一般のバスやその他の車両にも利用することができる。
【0033】
その他、上記の補助ベルト装置10の肩ベルト16は、長さ調節を容易にするため、2つの特徴的な工夫がなされている。1つは、肩当て部材24を紐部材26よりも幅広で変形しにくい素材で形成し、肩当て部材24を把持することによってバックル28を容易に位置決めできるようにしている点と、係止解除用リング36を設けて紐部材26の係止を容易に解除できるようにしている点である。この2つの工夫は、両方を実施することが好ましいが、必要に応じて、どちらか一方だけを実施するようにしてもよい。また、肩ベルト16を短くする時に紐部材26を引っ張りやすくするために設けた引っ張り用リング38は、必要なければ省略してもよい。
【0034】
バックル28又はバックル本体36は、肩当て部材24の、上下方向の途中の位置(使用者Sの肩又は胸の高さ)の外面側に取り付けているが、肩当て部材24の下端部の位置が使用者Sの手が届きやすい位置(使用者Sの胸の高さ)であれば、肩当て部材24の下端部に取り付けてもよい。この場合、ガイド用リング30は省くことができる。
【0035】
また、図4に示すバックル28は、第二及び第三の連結バー40b.40cの特徴的な形状及び配置によって、帯紐(紐部材26)との間の摺動摩擦を制御するものであり、本発明の補助ベルト装置に好適なものである。しかし、第二及び第三の連結バーの形状及び配置は図4と全く同じでなくても、ほぼ同様の効果が得られる。また、使用時の取り扱い動作の容易なものであれば、全く別構造のバックルと紐部材とを組み合わせた構成にしてもよい。例えば、細長い紐を係止する構造のバックルと細長い紐(紐部材)とを組み合わせた構成が考えられる。
【0036】
補助ベルト装置10は、肩ベルト16が左右に開かないようにするために連結部材40を設けているが、連結部材40は必要に応じて省略することができる。また、肩当て部材24の上端部は、使用者Sが肩周りを固定された時に窮屈に感じないようにするため、上下方向又は上下左右方向に移動可能な遊びを持たせて取り付けているが、遊びを持たせる部分の構造は上記と異なる構造にしてもよく、遊びを持たせずに固定することも可能である。
【0037】
背面部材の構成は、上記の背面シート14の構成に限定されるものではなく、座席12の形態に合わせて適宜変更することができる。背面シート14の場合、座席12の背受け面12aと座面12bとに跨るように装着されることが想定され、略長方形の基材18に補強帯22を縫い付けて補強し、基材18の両端部に、座席12の取っ手12cと脚部12dに縛り付けるための固定紐20a,20bを設けた構造になっている。しかしながら、座席12の背受け面12aと座面12bとが不連続な場合等は、背受け面12aだけに装着する構造にすることができる。また、基材18単体で十分な強度を有している場合は、基材18を補強帯22で補強する構造は省略することができる。その他、背面シート14を座席12に固定する部分の構造は自由に変更することができ、例えば、基材18の複数箇所を座席12の表面にネジ固定する構造にしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 補助ベルト装置
12 座席
12a 背受け面
14 背面シート(背面部材)
16 肩ベルト
24 肩当て部材
26 紐部材
28 バックル
30 ガイド用リング
34 バックル本体
36 係止解除用リング
38 引っ張り用リング
38a,38b 側壁部(バックル本体)
40a 第一の連結バー(バックル本体)
40b 第二の連結バー(バックル本体)
40c 第三の連結バー(バックル本体)
42a 上側スリット(バックル本体)
42b 下側スリット(バックル本体)
図1
図2
図3
図4