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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187609
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】浮遊式水流発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 3/12 20060101AFI20221213BHJP
   F03B 13/26 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F03B3/12
F03B13/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095687
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】村田 祥
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝則
【テーマコード(参考)】
3H072
3H074
【Fターム(参考)】
3H072AA09
3H072AA26
3H072BB27
3H072CC43
3H072CC67
3H074AA08
3H074AA12
3H074BB30
3H074CC16
(57)【要約】
【課題】海水などの液体が浸入する可能性のある箇所において液体の流動を阻止して止水性を向上する浮遊式水流発電装置を説明する。
【解決手段】浮遊式水流発電装置1において、水中で浮遊する発電ポッド6の内部に配置された発電機4と、発電機4のロータ42に接続された回転軸31と、回転軸31に接続されたタービンブレード9と、を備え、タービンブレード9は、回転軸31に取り付けられた旋回座92と、旋回座92に固定された中空のブレード本体91と、ブレード本体91内に収容された浮力発生体90と、旋回座92と浮力発生体90との間に配置され、ブレード本体91の内部Sに浸入する液体及び内部Sの液体の少なくとも一方の移動を阻止するシール部材94及び止水蓋95と、を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊式水流発電装置において、
水中で浮遊する胴体の内部に配置された発電機と、
前記発電機のロータに接続された回転軸と、
前記回転軸に接続されたタービンブレードと、を備え、
前記タービンブレードは、
前記回転軸に取り付けられた取付座と、
前記取付座に固定された中空のブレード本体と、
前記ブレード本体内に収容された浮力発生体と、
前記取付座と前記浮力発生体との間に配置され、前記ブレード本体の内部に浸入する液体及び前記内部の液体の少なくとも一方の移動を阻止する液体規制部と、を備えている、浮遊式水流発電装置。
【請求項2】
前記ブレード本体は、前記内部に連通する開口が形成され、前記取付座に取り付けられた基端部を備え、
前記液体規制部は、前記基端部と前記取付座との間で挟持され、且つ前記開口を囲むように配置されて前記内部への前記液体の進入を阻止するシール部材である、請求項1記載の浮遊式水流発電装置。
【請求項3】
前記ブレード本体は、前記取付座に取り付けられた基端部と、前記基端部とは反対側の先端部とを備え、
前記液体規制部は、前記ブレード本体の前記内部を、前記先端部に近い先端領域と、前記先端領域よりも前記基端部に近い基端領域とに区画する止水壁であり、
前記浮力発生体は、前記先端領域内に配置されている、請求項1記載の浮遊式水流発電装置。
【請求項4】
前記ブレード本体は、前記内部に連通する開口が形成され、前記取付座に取り付けられた基端部と、前記基端部とは反対側の先端部とを備え、
前記液体規制部は、少なくとも二つ設けられており、
一方の前記液体規制部は、前記基端部と前記取付座との間で挟持され、且つ前記開口を囲むように配置されて前記内部への前記液体の進入を阻止するシール部材であり、
他方の前記液体規制部は、前記ブレード本体の前記内部を、前記先端部に近い先端領域と、前記先端領域よりも前記基端部に近い基端領域とに区画する止水壁であり、
前記浮力発生体は、前記先端領域内に配置されている、請求項1記載の浮遊式水流発電装置。
【請求項5】
前記先端領域内に配置され、前記ブレード本体の挙動に影響を与える要素を検出するセンサと、
前記センサに接続され、前記センサでの検出値を送信するケーブルと、を更に備え、
前記止水壁には、前記ケーブルが挿通されると共に封止材によって封止されているケーブル設置部が設けられており、
前記ケーブルは、前記ケーブル設置部、及び前記基端領域を通過して延在している、請求項3または4記載の浮遊式水流発電装置。
【請求項6】
前記基端領域を複数の領域に区画して封止し、前記止水壁との間に中間領域を形成する副止水壁を更に備えている、請求項3~5のいずれか一項記載の浮遊式水流発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浮遊式水流発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海流を利用して発電する発電装置が知られている(特許文献1、2参照)。この種の発電装置は、海中の所定位置に設置されたタービンブレードを備えており、タービンブレードの回転を受けて発電される。これに対し、海中を浮遊した状態で発電する浮遊式水流発電装置が知られている(特許文献3参照)。浮遊式水流発電装置は、水中で浮遊する胴体と、胴体の内部に配置された発電機と、発電機のロータに接続された回転軸とを備えている。回転軸には、タービンブレードが接続されており、タービンブレードの回転は発電機のロータに伝達されて発電される。タービンブレード内には、発泡樹脂等の浮力発生体が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006-500510号公報
【特許文献2】国際公開第2010/067082号
【特許文献3】特開2020-94552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浮遊式水流発電装置内には、浮力発生体を収容する内部空間が形成されており、海水などの液体が浸入する可能性がある。更に、内部に浸入した液体が、発電機側に浸入すると安定した発電に不利に働く可能性がある。
【0005】
本開示は、海水などの液体が浸入する可能性のある箇所において液体の流動を阻止して止水性を向上する浮遊式水流発電装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、浮遊式水流発電装置において、水中で浮遊する胴体の内部に配置された発電機と、発電機のロータに接続された回転軸と、回転軸に接続されたタービンブレードと、を備え、タービンブレードは、回転軸に取り付けられた取付座と、取付座に固定された中空のブレード本体と、ブレード本体内に収容された浮力発生体と、取付座と浮力発生体との間に配置され、ブレード本体の内部に浸入する液体及び内部の液体の少なくとも一方の移動を阻止する液体規制部と、を備えている。
【0007】
この浮遊式水流発電装置において、液体の移動を阻止する液体規制部は、タービンブレードの取付座と浮力発生体との間に配置されているので、取付座側及び浮力発生体側の少なくとも一方側への液体の浸入を阻止して止水性を向上できる。
【0008】
いくつかの態様において、ブレード本体は、内部に連通する開口が形成され、取付座に取り付けられた基端部を備え、液体規制部は、基端部と取付座との間で挟持され、且つ開口を囲むように配置されて内部への液体の進入を阻止するシール部材であってもよい。基端部に設けられた開口は、浮力発生体をブレード本体内に収容する際の利便性に寄与する。一方で、開口を介し、浮力発生体が収容された内部に浸入する可能性のある液体は、シール部材によって阻止されて止水性を維持できる。
【0009】
いくつかの態様において、ブレード本体は、取付座に取り付けられた基端部と、基端部とは反対側の先端部とを備え、液体規制部は、ブレード本体の内部を、先端部に近い先端領域と、先端領域よりも基端部に近い基端領域とに区画する止水壁であり、浮力発生体は、先端領域内に配置されていてもよい。基端領域側から液体が浸入したとしても、その液体は、止水壁によって移動を阻止されるので、浮力発生体が収容された先端領域の止水性は維持される。また、先端領域側から液体が浸入したとしても、その液体は、止水壁によって液体の移動を阻止されるので、基端領域には到達せず、したがって、液体が取付座を超えて発電機側に浸入するのを阻止できる。
【0010】
いくつかの態様において、ブレード本体は、内部に連通する開口が形成され、取付座に取り付けられた基端部と、基端部とは反対側の先端部とを備え、液体規制部は、少なくとも二つ設けられており、一方の液体規制部は、基端部と取付座との間で挟持され、且つ開口を囲むように配置されて内部への液体の進入を阻止するシール部材であり、他方の液体規制部は、ブレード本体の内部を、先端部に近い先端領域と、先端領域よりも基端部に近い基端領域とに区画する止水壁であり、浮力発生体は、先端領域内に配置されていてもよい。基端部に設けられた開口は、浮力発生体をブレード本体内に収容する際の利便性に寄与する。一方で、開口を介し、浮力発生体が収容された内部に浸入する可能性のある液体は、一方の液体規制部であるシール部材によって阻止されて止水性を維持できる。また、基端領域側から液体が浸入したとしても、その液体は、他方の液体規制部である止水壁によって移動を阻止されるので、浮力発生体が収容された先端領域の止水性は維持される。また、先端領域側から液体が浸入したとしても、その液体は、止水壁によって液体の移動を阻止されるので、基端領域には到達せず、したがって、液体が取付座を超えて発電機側に浸入するのを阻止できる。さらに、シール部材と止水壁との両方を備えることにより、仮に、シール部材を通過して液体が内部に浸入してきたとしても、浮力発生体が収容されている先端領域に液体が浸入するのを止水壁によって抑止でき、冗長性の観点で有利となる。
【0011】
いくつかの態様において、先端領域内に配置され、ブレード本体の挙動に影響を与える要素を検出するセンサと、センサに接続され、センサでの検出値を送信するケーブルと、を備え、止水壁には、ケーブルが挿通されると共に封止材によって封止されているケーブル設置部が設けられており、ケーブルは、ケーブル設置部、及び基端領域を通過して延在していてもよい。タービンブレードが回転する際に、水圧を受けるブレード本体の挙動は発電量に影響を与えるため、ブレード本体の挙動に影響を与える要素を検出するセンサは重要である。センサは、ブレード本体の挙動に影響を与える要素を検出するために先端領域に配置されており、センサで取得された情報はケーブルを介して胴体側に送信される。先端領域への液体の浸入は止水壁によって抑止されているので、先端領域内のセンサを液体から保護することができる。
【0012】
いくつかの態様において、基端領域を複数の領域に区画して封止し、止水壁との間に中間領域を形成する副止水壁を更に備えていてもよい。ブレード本体を取付座に取り付けるための構造により内部に液体が浸入する可能性がある場合に、その構造を挟むように止水壁と副止水壁とを設けることで、その構造から侵入してきた液体を中間領域で保持することができる。その結果、浸入してきた液体が先端領域に移動するの抑止でき、また、取付座側に移動するの抑止できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示のいくつかの態様によれば、液体が浸入する可能性のある箇所において液体の流動を阻止して止水性を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、浮遊式水流発電装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図2図2は、タービンを拡大して示す側面図である。
図3図3は、タービンブレードの分解斜視図である。
図4図4は、タービンブレードの斜視図である。
図5図5は、ブレード本体の基端部を拡大して示す断面図である。
図6図6は、ブレード本体の基端部を拡大して示す断面図であり、(a)の図及び(b)の図は、それぞれ変形例に係る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る浮遊式水流発電装置を示す概略構成図である。浮遊式水流発電装置1は、海水中で浮遊しながら、海流(水流)FLを利用して発電する浮遊式海流発電装置である。以下の説明では、「浮遊式水流発電装置1」を、単に「発電装置1」という。
【0017】
図1に示されるように、発電装置1は、海水中において所定の深度(水深)で浮遊する浮体2と、浮体2に対して回転可能に取り付けられているタービン3と、浮体2に収容されておりタービン3の回転によって発電する発電機4とを備える。浮体2は、海底Bに固定されたシンカー5に対して、係留索51を介して接続されている。なお、シンカー5に代えてアンカーが用いられてもよい。
【0018】
浮体2は、一対の発電ポッド6と、一対の発電ポッド6を連結するクロスビーム8と、クロスビーム8に固定された中央ポッド7とを備えている。一対の発電ポッド6は、同方向を向くように例えば左右に並んで配置されている。一対の発電ポッド6は、クロスビーム8(連結部)によって互いに連結されており、中央ポッド7は、クロスビーム8の略中央の下面に固定されている。発電ポッド6及び中央ポッド7は、中空の筒状容器であり、長手方向が同一方向を向くように配置されている。発電ポッド6の後部には、タービン3が設けられている。発電ポッド6及び中央ポッド7は、タービン3に適正な浮力を付与する。
【0019】
この浮力は、発電ポッド6及び中央ポッド7に搭載される浮力調整機構によって提供される。浮力調整機構は、浮力調整用のタンクを含んでおり、このタンクに海水を注排水することによって、浮体2の内部の空間容積量が調整される。浮力調整機構は、具体的には、各発電ポッド6、中央ポッド7及びクロスビーム8の内部の空間容積量をそれぞれ調整する。浮力調整機構は、これらの空間容積量の調整によって、浮体2に加わる浮力を調整する。
【0020】
クロスビーム8は、一対の発電ポッド6間の対向方向に沿って延在する中空の板状部材である。クロスビーム8は、その内部に空洞を有することによって浮力を発生している。クロスビーム8の形状は、浮遊する発電装置1の姿勢を安定させるべく、左右方向から見て例えば翼形状である。クロスビーム8の左右方向の両端は、例えば、一対の発電ポッド6の中央部にそれぞれ固定されている。また、クロスビーム8には、係留索51が接続されている。係留索51は、クロスビーム8に代えて発電ポッド6に接続されていてもよい。
【0021】
図1及び図2に示されるように、タービン3は、発電ポッド6(胴体の一例)内の発電機4に回転軸31を介して接続されている。発電機4は、ステータ41とロータ42とを備えており、回転軸31の一方端を含む部分(前部)はロータ42に接続されている。回転軸31は、発電ポッド6の長手方向に沿うように後方に向けて延在する。発電ポッド6の後部には、主軸受けとなるハブ61が設けられており(図2参照)、回転軸31の他方端を含む部分(後部)は、ハブ61に回転自在に支持された状態で発電ポッド6から露出している。
【0022】
本実施形態に係るタービン3は、発電ポッド6の後部、つまり、発電ポッド6が海流FLを受ける下流側に配置されている。発電ポッド6の後部にタービン3を配置する構成は、いわゆるダウンウィンド型である。なお、タービン3は、アップウィンド型であってもよい。
【0023】
図2図3及び図4に示されるように、タービン3は、回転軸31と、回転軸31に設けられた1枚若しくは複数枚のタービンブレード9とを備えている。本実施形態では、2枚のタービンブレード9を例示している。回転軸31は、前述の通り、発電ポッド6の内部において発電機4のロータ42に接続されている。回転軸31の回転軸線Laは、発電ポッド6の中心軸線と略一致(実質的に一致)している。
【0024】
タービンブレード9は、回転軸線Laまわりの回転運動を生じさせる翼部材であり、海流FLを受けて回転する。タービンブレード9による回転運動は、回転軸31を介して発電機4に提供される。発電機4は、この回転駆動力に応じて発電する。なお、各タービンブレード9のピッチ角度は、任意の角度に調整可能とされている。
【0025】
発電装置1には、発電機4により発電された電力を送電するための送電ケーブル43が設けられている。送電ケーブル43の一端は、クロスビーム8を介して発電ポッド6内の発電機4に接続されており、送電ケーブル43の他端は、例えばシンカー5内に設けられた中継器(又は変圧器等)を介して海底送電ケーブル44に接続されている。海底送電ケーブル44は、海底Bに敷設されており、例えば地上の電力系統(外部電源等)に接続される。発電機4によって発電された電力は、送電ケーブル43及び海底送電ケーブル44を通じて、当該電力系統に送電される。逆に、当該電力系統から各発電ポッド6に給電することもできる。なお、中継器は、シンカー5外の海底Bに設置されてもよい。
【0026】
また、発電装置1には、タービンブレード9のブレード本体91の挙動に影響を与える要素を検出するセンサ10と、センサ10に接続され、センサ10での検出値を送信するケーブル11とが設けられている。タービンブレード9が回転する際に、ブレード本体91のひずみなどは、ブレード本体91の挙動に影響を与え、その挙動は発電量に影響を与える。したがって、ブレード本体91の挙動に影響を与える要素を検出するセンサ10は重要である。センサ10は、タービンブレード9内に配置されており、センサ10で取得された情報はケーブル11及び内部ケーブル12を介して発電ポッド6側に送信される。
【0027】
なお、ブレード本体91の挙動に影響を与える要素は、ひずみに限定されず、例えば、温度、音波、水圧等が考えられる。センサ10は、これらの要素を検出し、ケーブル11を介して送信する。
【0028】
次に、図2図3及び図4を参照しながら、タービンブレード9の構造について、より具体的に説明する。図3はタービンブレード9の分解斜視図であり、図4はタービンブレード9を形成する各部材を組み付けた斜視図である。
【0029】
タービンブレード9は、回転軸31に取り付けられた旋回座92(取付座の一例)と、旋回座92に固定された中空のブレード本体91と、ブレード本体91内に設けられた一対の骨組部93と、ブレード本体91内に収容された浮力発生体90と、を備えている。ブレード本体91は、骨組部93及び浮力発生体90を収容した状態で旋回座92に着脱自在である。したがって、ブレード本体91が損傷あるいは経年劣化した場合には、ブレード本体91は、旋回座92から取り外して交換できる。
【0030】
旋回座92は、回転軸31の後部に固定されている(図2参照)。旋回座92は、ブレード本体91に固定される円盤状の旋回テーブル92aと、旋回テーブル92aを回転自在に支持する旋回座軸受92bと、旋回座軸受92bの回転角を所定角度に調整可能な角度調整機構等を備えている。旋回座軸受92bの回転軸線(旋回軸線Lb)は、主軸である回転軸31の回転軸線Laに交差する方向に延在しており、例えば、直交している。旋回座軸受92bの回転角を角度調整機構によって調整することにより、タービンブレード9のピッチ角度の調整が可能になる。
【0031】
ブレード本体91は、旋回軸線Lbに沿った方向Dに沿って延在するカバー部材である。ブレード本体91は、一対の骨組部93を挟持するように覆う一対の外皮材91aと、一対の外皮材91aの接続線である側部を補強する補強材91bとを備えている。一対の外皮材91a、補強材91bは、例えば、接着剤によって互いに接続されている。
【0032】
また、ブレード本体91は、一対の外皮材91aを束ねるように、一対の外皮材91aの根本側に装着される支持金具91c(支持部)を備えている。支持金具91cは、一対の外皮材91aに固定される装着部91dと、装着部91dから張り出すように設けられたフランジ部91eとを備えている。フランジ部91eは、旋回座92にボルト等の締結部材92fで締結され、固定される。
【0033】
ブレード本体91は、支持金具91cが設けられた根本側の基端部91xと、D方向で基端部91xとは反対側となる先端部91yとを備えている。ブレード本体91は、基端部91xから先端部91yにかけて一旦膨らんで浮力発生体90を収容する浮力室Rを形成し、その後、先端部91yに向かうにつれて漸次縮径して先細りしている。先端部91yでは湾曲した閉鎖部を形成している。
【0034】
基端部91xにおいて、一対の外皮材91aは互に一体となって円筒形状を形成する。支持金具91cの装着部91dは筒状であり、一対の外皮材91aの円筒形状に外嵌される。外皮材91aと支持金具91cとが重なり合う円筒部分は、外皮材91aと支持金具91cとが互に密着するようにボルト等の結合部材91f(図5参照)で固定される。さらに、外皮材91aと支持金具91cとが重なり合う部分には止水及び防食のために弾性接着剤が塗布されている。なお、ブレード本体91の外表面の全体には、防食塗装が施されている。
【0035】
ブレード本体91内に配置されている一対の骨組部93は、方向Dに沿って延在する板状の補強部材である。一対の骨組部93は、ブレード本体91の内面を翼厚方向に支持している。具体的には、一対の骨組部93は、タービンブレード9の翼幅方向に並んで配置されており、それぞれブレード本体91の内面に接着剤によって接着されている。
【0036】
ブレード本体91及び一対の骨組部93は、例えば繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)を含んで構成されている。一対の骨組部93及びブレード本体91のそれぞれは、例えば金属を含んでもよく、その他の材質を含んでもよい。
【0037】
浮力発生体90は、ブレード本体91の内部に収容される固体物質である。浮力発生体90は、具体的には、発泡樹脂を含んで構成されている。発泡樹脂は、表面及び内部に複数の気泡が形成された構造を有している。浮力発生体90に含まれる発泡樹脂がこのような構造を有しているため、浮力発生体90の内部には、複数の気泡が含まれる。この気泡は、浮力発生体90内に取り込まれて存在するため、周囲に液体が存在しても液体と置き換わることは無く、あるいは置き換わり難く、所望の浮力を安定して保持することができる。
【0038】
本開示で言う発泡樹脂は、平均的な値として0より大きく且つ1.0以下の比重を有する樹脂材料を意味するものとしてもよい。本実施形態では、発泡樹脂が、現場で発泡可能な現場発泡樹脂である場合を例示する。現場発泡樹脂の材料として、例えば発泡シリコーン、発泡ウレタン、発泡エポキシ、発泡ポリエステル、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンテレフタラート、又は発泡フェノール等が挙げられる。
【0039】
また、浮力発生体90の発泡樹脂は、ブレード本体91に浸入した海水から受ける静水圧に対する耐圧性を有している。すなわち、浮力発生体90の発泡樹脂の圧縮強度は、当該静水圧よりも大きい。当該静水圧は、例えば0MPaより大きく且つ1MPa以下の範囲内である。この静水圧の範囲は、発電装置1が運用される深度である0mより大きく且つ100m以下の範囲に対応している。
【0040】
発泡樹脂の圧縮強度は、「JIS-K7220」に準じた圧縮強度試験により得た値としてよい。具体的には、発泡樹脂から直径10mmの円柱状に切り出した試験片を、直径200mm、高さ200mmの円筒状の耐圧容器の内部に配置する。その後、試験片に対して、ハンドポンプによる圧縮負荷(上限2.5MPa)を高さ方向に加える。発泡樹脂の圧縮強度は、このように試験片に圧縮負荷を加えたときにおいて、試験片が耐えることができる最大荷重を、試験前の試験片の加重方向に垂直な断面積で除した値である。
【0041】
このように測定される圧縮強度が上記の静水圧よりも大きい発泡樹脂を採用することによって、浮力発生体90を当該静水圧に耐え得る強固な構造にすることが可能となる。このような圧縮強度を有する発泡樹脂の材料として、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、又はフェノール樹脂等が挙げられる。また、このような圧縮強度を有する発泡樹脂の一例として、深海用のROV(遠隔操作無人探査機:Remotely operated vehicle)に用いられる発泡樹脂(Diab社製、型番:HCP30)が挙げられる。この発泡樹脂は、比重0.2を有し、3.0MPa以上且つ3.9MPa以下の圧縮強度を有する。Diab社製の型番HCP30の発泡樹脂以外の例として、GENERAL PLASTIC社製の型番R-3312の発泡樹脂が挙げられる。この発泡樹脂は、比重0.24を有し、2.75MPa以下の圧縮強度を有する。
【0042】
また、本実施形態のように、浮力発生体90の発泡樹脂が現場発泡樹脂である場合、上述した圧縮強度を有する現場発泡樹脂は、現場発泡樹脂の材料に微小球を含有してもよい。この微小球の例として、中空ガラス微小球、中空アルミノ・ケイ酸塩微小球、中空フェノール微小球、又は、ガラスエポキシ、炭素エポキシ、或いは熱塑性樹脂によって形成される微小球等が挙げられる。
【0043】
なお、浮力発生体90は、海水(液体)の比重よりも小さい構造部分を備えていればよい。したがって、発泡樹脂などの気泡を取り込んだ構造ではなく、材料自体の比重が海水よりも小さい固体物質であってもよい。
【0044】
次に、図5を参照し、ブレード本体91の基端部91xを中心に、ブレード本体91の内部Sの構造を説明する。ブレード本体91は、旋回座92に取り付けられた基端部91xを備えている。基端部91xには、浮力発生体90を充填(配置)するために内部Sに連通する開口Mが形成されている。基端部91xには、支持金具91cが設けられている。支持金具91cのフランジ部91eは、旋回座92の旋回テーブル92aにボルト等の締結部材92fで締結固定されている。
【0045】
フランジ部91eと旋回テーブル92aとの間には、開口Mを囲むように配置されたOリングやガスケットなどのシール部材94が配置されている。シール部材94は、フランジ部91eと旋回テーブル92aとの間で挟持されることによって弾性変形し、止水性を確保する。開口Mを囲むようにシール部材94を配置することで、外部の海水(液体)が内部Sに浸入するのを阻止できる。シール部材94は、一方の液体規制部の一例である。
【0046】
また、ブレード本体91の内部Sには止水蓋95が設けられている。止水蓋95は、ブレード本体91の内部Sを、先端部91yに近い先端領域Saと、先端領域Saよりも基端部91xに近い基端領域Sbとに区画する壁本体95aを備えている。壁本体95aの外周形状及び外径は、ブレード本体91の内面形状及び内径に一致しており、壁本体95aの外周端はブレード本体91の内面に接着されている。なお、壁本体95aの外周形状及び外径がブレード本体91の内面形状及び内径に一致するとは、封止可能な程度に一致しているという意味であり、実質的に一致していれば足りる。止水蓋95は、繊維強化プラスチック(FRP)、耐圧発泡樹脂、金属(鉄)のいずれか、あるいは、それらの複合材料によって形成することができる。止水蓋95は、止水壁及び他方の液体規制部の一例である。
【0047】
止水蓋95によって区画される先端領域Saは浮力室Rを含み、先端領域Sa内には、浮力発生体90が配置されている。したがって、先端領域Saの容積は基端領域Sbの容積よりも大きい。これに対し、基端領域Sbは、ブレード本体91の根本側の一部分であり、実質的に、外皮材91aの根本側と支持金具91cとが重なり合う部分である。この重なり合う部分は、結合部材91fで接続されており、したがって、結合部材91fは、基端領域Sbに配置されていることになる。
【0048】
また、センサ10は、ブレード本体91の挙動に影響を与える要素を検出するために先端領域Sa内である浮力室Rに配置されている。センサ10は、ケーブル11に接続されており、止水蓋95の壁本体95aには、ケーブル11が貫通するケーブル設置部95bが設けられている。ケーブル設置部95bは、ケーブル11が挿通される孔部95cと、封止材によってケーブル11と孔部95cとの間の隙間が封止された封止部95dとを備えている。ケーブル11は、ケーブル設置部95b、及び基端領域Sbを通過して延在する。
【0049】
旋回座92の旋回テーブル92aには、ケーブル11が接続される水中コネクタ92gが取り付けられている。ケーブル11は、水中コネクタ92gに接続されて内部ケーブル12に接続され、内部ケーブル12は発電ポッド6内に達する。ケーブル11及び内部ケーブル12は、例えば、光ケーブルを用いた水中ケーブルを使用することができる。
【0050】
次に、実施形態に係る発電装置1によって得られる作用・効果を説明する。発電装置1は、旋回座92と浮力発生体90との間に配置され、ブレード本体91の内部Sに浸入する海水及び内部Sの海水の少なくとも一方の移動を阻止するシール部材94及び止水蓋95を備えている。シール部材94及び止水蓋95により、旋回座92側及び浮力発生体90側の少なくとも一方側への海水の浸入を阻止して止水性を向上できる。
【0051】
特に、本実施形態において、旋回座92を通過して海水が発電ポッド6側に浸入してしまうと、発電ポッド6内の発電機4に何らかの不利益を及ぼす可能性がある。したがって、ブレード本体91の内部Sへの海水の浸入の阻止、及び内部Sに入ってしまった海水の移動の阻止は非常に重要であり、技術的意義は大きい。
【0052】
また、ブレード本体91の基端部91xには内部Sに連通する開口Mが設けられており、シール部材94は、開口Mを囲むように配置されて内部Sへの海水の進入を阻止している。基端部91xに設けられた開口Mは、浮力発生体90をブレード本体91内に収容する際の利便性に寄与する。一方で、開口Mを介し、浮力発生体90が収容された内部Sに浸入する可能性のある海水は、シール部材94によって阻止される結果、止水性を維持できる。
【0053】
また、ブレード本体91の内部Sには、浮力発生体90が収容された先端領域Saと基端領域Sbとを区画する止水蓋95が設けられている。仮に、基端領域Sb側から海水が浸入したとしても、その海水は、止水蓋95によって移動を阻止されるので、先端領域Saの止水性は維持される。逆に、先端領域Sa側から海水が浸入したとしても、その海水は、止水蓋95によって移動を阻止されるので、基端領域Sbには到達せず、したがって、海水が旋回座92を超えて発電機4側に浸入するのを阻止できる。
【0054】
また、本実施形態では、シール部材94と止水蓋95との両方を備えている。したがって、仮に、シール部材94を通過して海水が基端領域Sbに浸入してきたとしても、浮力発生体90が収容されている先端領域Saに液体が浸入するのを抑止でき、冗長性の観点で有利となる。なお、この場合の冗長性とは、何らかの障害が発生した場合でもシステム全体での機能性を維持できるようにしたバックアップ性として言い換えることも可能である。また、本実施形態では、シール部材94と止水蓋95との両方を備えているが、どちらか一方のみを設ける形態であってもよい。
【0055】
また、本実施形態において、センサ10は、ブレード本体91の挙動に影響を与える要素を検出するために先端領域Saに配置されており、センサ10で取得された情報はケーブル11を介して発電ポッド6側に送信される。先端領域Saへの海水の浸入は、止水蓋95によって抑止されているので、先端領域Sa内のセンサ10を海水から保護することができる。
【0056】
次に、図6を参照し、変形例に係る発電装置1のタービンブレード9について説明する。図6の(a)図は、第1の変形例に係るブレード本体91Aの基端部91xを拡大して示す断面図であり、(b)の図は、第2の変形例に係るブレード本体91Bの基端部91xを拡大して示す断面図である。また、これらの変形例と上記の実施形態とは、実質的に共通の構造や要素を備えており、共通の構造や要素によって同様の作用や効果を奏することができる。したがって、以下の説明では、相違点を中心に説明し、実質的に共通する構造や要素については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
図6の(a)図に示されるように、第1の変形例に係るブレード本体91Aは、支持金具91cを備えておらず、代わりに外皮材91hの根本側の端部が直接的に旋回座92に取り付けられている。具体的には、ブレード本体91Aは、繊維強化プラスチック(FRP)によって一体的に形成されている。ブレード本体91Aの内部Sには、内部Sを先端領域Saと基端領域Sbとに区画する止水蓋95が設けられており、先端領域Saには浮力発生体90が収容されている。
【0058】
また、ブレード本体91Aの基端領域Sbを形成する外周壁91kにはTナット91mが埋設されている。Tナット91mは、旋回座92に固定するために使用するボルト92kが螺合する。ブレード本体91Aの基端部91xは、旋回テーブル92aに当接され、Tナット91mに螺合するボルト92kは、旋回テーブル92aとブレード本体91Aとを締結して固定する。ここで、Tナット91mは、ブレード本体91Aを旋回座92に取り付けるための構造である。Tナット91mは、ブレード本体91Aの外周壁91kを貫通するように設けられるので、Tナット91mを埋設した部分を介して内部Sに海水が浸入する可能性がある。しかしながら、Tナット91mは基端領域Sbに配置されているので、Tナット91mを介して海水が浸入してきても、その海水が先端領域Saに浸入するのを、止水蓋95によって阻止することができる。
【0059】
また、図6の(b)図に示されるように、第2の変形例に係るブレード本体91Bは、第1の変形例に係るブレード本体91Aと同様に、支持金具91cを備えておらず、代わりに外皮材91hの根本側の端部が直接的に旋回座92に取り付けられている。また、ブレード本体91Bは、繊維強化プラスチック(FRP)によって一体的に形成されており、内部Sには止水蓋95が設けられており、浮力発生体90は先端領域Saに収容されている。
【0060】
第2の変形例に係るブレード本体91Bは、基端領域Sbを複数の領域に区画して封止し、止水蓋95との間に中間領域Scを形成する副止水蓋96(副止水壁の一例)を備えている。この第2の変形例は、第1の変形例に係るブレード本体91Aと同様に、ブレード本体91Bを旋回座92に取り付けるための構造であるTナット91mを備えている。Tナット91mは、ブレード本体91Bを旋回座92に取り付けるための構造であり、内部Sの止水蓋95と副止水蓋96とは、Tナット91mを挟むように設けられている。したがって、Tナット91mを介して外部の海水が侵入してきたとしても、その海水は中間領域Scで保持される。その結果、浸入してきた海水が先端領域Saに移動するの抑止でき、また、旋回座92側に移動するの抑止できる。
【0061】
本開示は、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態及び各変形例を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。また、上述の実施形態では、少なくとも二つの液体規制部を備えた形成を例示しており、一方の液体規制部としてシール部材を例示し、他方の液体規制部として止水壁を例示している。しかしながら、液体規制部は、シール部材あるいは止水壁の一方のみを備えた単体であってもよく、また、三つ以上の複数の液体規制部を備えた形態であってもよい。また、発電装置は、浮遊式海流発電装置に限られず、海以外の水中に設置されるその他の浮遊式発電装置であってもよい。例えば、発電装置は、浮遊式潮流発電装置であってもよい。
【0062】
このように、本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SustainableDevelopment Goals:SDGs)の目標14.海の豊かさを守ろう「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する。」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 浮遊式水流発電装置
4 発電機
6 発電ポッド(胴体の一例)
9 タービンブレード
10 センサ
11 ケーブル
31 回転軸
42 ロータ
90 浮力発生体
91,91A,91B ブレード本体
91x 基端部
91y 先端部
92 旋回座(取付座の一例)
94 シール部材(液体規制部の一例)
95 止水蓋(液体規制部の一例)
95b ケーブル設置部
96 副止水蓋
M 開口
S 内部
Sa 先端領域
Sb 基端領域
Sc 中間領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6