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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187620
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】射出成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/44 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
B29C45/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095703
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 州
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AH24
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK33
4F202CK67
(57)【要約】
【課題】アンダーカット部を有する成形品を円滑に成形することが可能な射出成形用金型を提供する。
【解決手段】互いに近接離間される可動型10及び固定型50を備え、凹部3が設けられたアンダーカット部4を有する成形品であるバンパー1を成形する射出成形用金型100であって、可動型10に回転可能に設けられ、作動面48及びアンダーカット部4を成形する成形面31を備える回転コア20と、固定型50に設けられ、可動型10が離間する際に作動面48に係合して回転コア20を回転させて成形面31をバンパー1のアンダーカット部3から離間させる係合面63を有する作動部60と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに近接離間される一対の金型を備え、凹部及び凸部の少なくとも一方が設けられたアンダーカット部を有する成形品を成形する射出成形用金型であって、
一方の前記金型に回転可能に設けられ、作動面及び前記アンダーカット部を成形する成形面を備える回転コアと、
他方の金型に設けられ、前記金型同士が離間する際に前記作動面に係合して前記回転コアを回転させて前記成形面を前記成形品の前記アンダーカット部から離間させる係合面を有する作動部と、
を備える、
射出成型用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、成形面に凹形状又は穴状のアンダーカットを有する樹脂成形品を射出成形する際に、回転駒と、回転駒を内包する本体部と、本体部と回転駒との間に配置されて回転駒を回転付勢するバネ部材と、を備えた射出成形用金型を用いることが示されている。
【0003】
この射出成形用金型では、回転駒は、外周面の一部にアンダーカットの形状に対応する凸部が形成された第1の切り欠き部を有し、バネ部材は、凸部がアンダーカット部から外れる方向に回転駒を回転付勢するように配置されている。そして、この射出成形用金型によれば、回転駒がバネ部材によって、その凸部がアンダーカット部から外れる方向に常に回転付勢されているため、型締めを解除して上型を外す動作のみで凸部がアンダーカット部から外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-36988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の射出成形用金型のように、バネ部材による回転付勢力だけで回転駒を回転させる構造では、回転駒の外周の摺動面に強い摩擦力が生じた際に、回転駒に作動不良が発生してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、アンダーカット部を有する成形品を円滑に成形することが可能な射出成形用金型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の射出成形用金型は、
互いに近接離間される一対の金型を備え、凹部及び凸部の少なくとも一方が設けられたアンダーカット部を有する成形品を成形する射出成形用金型であって、
一方の前記金型に回転可能に設けられ、作動面及び前記アンダーカット部を成形する成形面を備える回転コアと、
他方の金型に設けられ、前記金型同士が離間する際に前記作動面に係合して前記回転コアを回転させて前記成形面を前記成形品の前記アンダーカット部から離間させる係合面を有する作動部と、
を備える。
【0008】
この構成の射出成形用金型によれば、一対の金型同士を離間させて成形品を脱型させる際に、一方の金型の回転コアの作動面に、他方の金型の作動部の係合面が係合して回転コアが回転され、回転コアの成形面がアンダーカット部から離間される。したがって、成形品の脱型時にバネ部材の回転付勢力で回転コアを回転させてアンダーカット部から成形面を離間させる構造と比べ、回転コアを円滑に回転させてアンダーカット部を有する成形品を円滑に成形することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の射出成形用金型によれば、アンダーカット部を有する成形品を円滑に成形することが可能な射出成形用金型を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る射出成形用金型によって成形するバンパーを示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)におけるA-A断面図である。
図2】バンパーの固定部を示す図であって、(a)は図1(b)におけるB部拡大図、(b)はアンダーカット部を裏面から視た斜視図である。
図3】本実施形態に係る射出成形用金型を構成する可動型及び固定型の概略断面図及び要部拡大図である。
図4】バンパーを成形する際の回転コア及び作動部の動きを示す図であって、(a)~(d)は、それぞれ射出成形用金型の要部拡大図である。
図5】バンパーを成形する工程を示す図であって、(a)~(c)はそれぞれ可動型及び固定型の概略断面図である。
図6】参考例1に係る射出成形用金型の可動型及び固定型の概略断面図である。
図7】参考例2に係る射出成形用金型の可動型及び固定型の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る射出成形用金型によって成形するバンパーを示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)におけるA-A断面図である。図2は、バンパーの固定部を示す図であって、(a)は図1(b)におけるB部拡大図、(b)はアンダーカット部を裏面から視た斜視図である。
【0012】
図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施形態に係る射出成形用金型は、例えば、車両のバンパー1を成形する金型である。バンパー1は、射出成形によって樹脂から成形されている。
【0013】
図2(a)及び図2(b)に示すように、バンパー1は、車体への固定部2に、凹部3が設けられたアンダーカット部4を有している。このアンダーカット部4には、例えば、車体にバンパー1を組付ける際に、車体に設けられた係止爪(図示略)が凹部3に係止される。
【0014】
次に、上記のバンパー1を成形する際に用いられる本実施形態に係る射出成形用金型について説明する。
図3は、本実施形態に係る射出成形用金型を構成する可動型及び固定型の概略断面図及び要部拡大図である。
【0015】
図3に示すように、射出成形用金型100は、可動型10と、固定型50とを備えており、射出成型機(図示略)に組み込まれる。可動型10は、射出成型機の可動盤11に取り付けられ、固定型50は、射出成型機の固定盤51に取り付けられる。可動型10は、射出成型機の型締めユニット(図示略)によって固定型50に対して近接及び離間される。可動型10及び固定型50には、互いに対向する面に、成形面12,52が形成されている。
【0016】
射出成型機では、固定型50に対して可動型10が近接されて型締めされた状態で、可動型10及び固定型50の成形面12,52によって形成される射出空間に溶融樹脂が射出される。そして、樹脂の硬化後に、可動型10が固定型50から離間されて型開きされることにより、樹脂成形品であるバンパー1が取り出される。
【0017】
可動型10は、回転コア20を備えている。回転コア20は、可動型10に形成された収容凹部40に収容されており、回転軸21を中心として回転可能に支持されている。
【0018】
回転コア20は、円弧状に形成された摺動面22,23を有している。これらの摺動面22,23は、回転コア20が回転軸21を中心に回転することにより、収容凹部40に形成された摺動凹面42,43に対して摺動される。
【0019】
また、回転コア20は、受圧面24,25を有している。これらの受圧面24,25は、回転コア20が一方向の回転方向RAへ向かって回転した際に、収容凹部40に形成された回転規制面44,45に当接し、回転コア20の一方向の回転方向RAへの回転を規制する。
【0020】
さらに、回転コア20は、受圧面26,27を有している。これらの受圧面26,27は、回転コア20が他方向の回転方向RBへ向かって回転した際に、収容凹部40に形成された回転規制面46,47に当接し、回転コア20の他方向の回転方向RBへの回転を規制する。
【0021】
回転コア20は、受圧面24に、成形面31が形成されている。この成形面31は、アンダーカット部4を成形する成形面であり、凹部3に対応する位置に、凸部32が形成されている。また、回転コア20の受圧面26は、その外周側の一部が当接面33とされている。
【0022】
さらに、回転コア20は、作動面48を有している。この作動面48は、回転コア20の受圧面26,27が収容凹部40の回転規制面46,47に当接して回転コア20の他方向の回転方向RBへの回転が規制された状態で、可動型10の移動方向と平行となる。また、作動面45は、回転コア20の受圧面24,25が収容凹部40の回転規制面44,45に当接して回転コア20の一方向の回転方向RAへの回転が規制された状態で、可動型10の移動方向に対して、固定型50へ向かって回転軸21から離間する方向へ傾斜される。
【0023】
固定型50は、作動部60を備えている。作動部60は、ブロック状に形成されており、固定型50に形成された固定凹部70に嵌合されて取り付けられている。この作動部60は、その一部が、可動型10へ向かって突出されている。この作動部60は、押圧面61を有している。また、作動部60の先端には、突設片62が形成されており、この突設片62には、係合面63が形成されている。係合面63は、突設片62の突設方向へ向かって次第に押圧面61側へ傾斜されている。
【0024】
次に、上記の射出成形用金型100によって成形品であるバンパー1を成形する場合について説明する。
図4は、バンパーを成形する際の回転コア及び作動部の動きを示す図であって、(a)~(d)は、それぞれ射出成形用金型の要部拡大図である。図5は、バンパーを成形する工程を示す図であって、(a)~(c)はそれぞれ可動型及び固定型の概略断面図である。
【0025】
型締めユニットによって固定型50に対して可動型10が近接する方向へ移動される。すると、図4(a)に示すように、固定型50の作動部60に形成された押圧面61が可動型10の回転コア20に形成された当接面33に当接する。
【0026】
可動型10が固定型50へさらに近接されて可動型10と固定型50とが型締めされると、回転コア20の当接面33が作動部60の押圧面61によって押し込まれ、図4(b)に示すように、回転コア20は、一方向の回転方向RAへ回転され、回転コア20の受圧面24,25が収容凹部40の回転規制面44,45に当接される。これにより、回転コア20の回転が規制されるとともに、受圧面24に形成された成形面31と回転規制面44との間に、アンダーカット部4を成形するための射出空間Suが形成される。
【0027】
そして、図5(a)に示すように、可動型10と固定型50とを型締めすることによって形成された射出空間に樹脂が充填されて硬化されることにより、バンパー1が成形される。このとき、図4(c)に示すように、受圧面24の成形面31と回転規制面44との間の射出空間Suにも樹脂が充填され、バンパー1のアンダーカット部4が成形される。
【0028】
樹脂の硬化後、型締めユニットによって固定型50に対して可動型10が離間する方向へ移動される。すると、図4(d)に示すように、固定型50の作動部60に形成された係合面63が可動型10の回転コア20に形成された作動面48に係合しながら移動する。これにより、回転コア20は、他方向の回転方向RBへ回転され、受圧面24に形成された成形面31が、成形されたアンダーカット部4から離間する。また、回転コア20は、その受圧面26,27が収容凹部40の回転規制面46,47に当接されて回転が規制され、初期位置に戻される。
【0029】
そして、図5(b)に示すように、固定型50から可動型10が離間した型開き状態となると、図5(c)に示すように、成形されたバンパー1が可動盤11に設けられたイジェクトピン(図示略)によって押し出されて脱型される。
【0030】
ここで、参考例について説明する。
図6は、参考例1に係る射出成形用金型の可動型及び固定型の概略断面図である。図7は、参考例2に係る射出成形用金型の可動型及び固定型の概略断面図である。
【0031】
図6に示すように、参考例1に係る射出成形用金型100Aは、アンダーカット部4を成形する成形面81を有する傾斜コア82と、この傾斜コア82に連結されたロッド83と、ロッド83を押し込むことにより、傾斜コア82を可動型10から押し出す押出板84とを有している。この射出成形用金型100Aでは、型開き時に、押出板84によってロッド83を押し込むことにより、バンパー1とともに傾斜コア82を可動型10から押し出す。これにより、アンダーカット部4を有するバンパー1が脱型される。
【0032】
図7に示すように、参考例2に係る射出成形用金型100Bは、アンダーカット部4を成形する成形面91を有するスライドピン92と、このスライドピン92を進退させるシリンダ93とを有している。この射出成形用金型100Bでは、バンパー1の脱型時に、シリンダ93によってスライドピン92を引き込む。これにより、アンダーカット部4を有するバンパー1が脱型される。
【0033】
これらの射出成形用金型100A,100Bでは、可動型10と固定型50とを開閉させる動力源とは別に、傾斜コア82を移動させる動力源やスライドピン92を進退させるシリンダ93を必要とする。そして、これらの駆動源やシリンダ93による傾斜コア82及びスライドピン92の作動時間によって射出成形のサイクルタイムが嵩み、生産性が低下してしまう。また、傾斜コア82を移動させる機構やスライドピン92を進退させる機構を備えるため、部品点数の増加によるコストアップを招き、さらに、これらの機構を設けることにより可動型10のスペースが占有されてしまい、成形品の形状に制約が生じてしまう。
【0034】
これに対して、本実施形態に係る射出成形用金型100によれば、固定型50から可動型10を離間させて成形品であるバンパー1を脱型させる際に、可動型10の回転コア20の作動面48に、固定型50の作動部60の係合面63が係合して回転コア20が回転され、回転コア20の成形面31がアンダーカット部4から離間される。
【0035】
したがって、傾斜コア82やスライドピン92を移動させる別個の動力源を不要にでき、部品点数の増加によるコストアップを抑えることができる。また、動力源によって駆動させる機構が不要であるので、金型におけるスペースの占有を抑制し、成形品の形状の制約を抑えることができる。
【0036】
また、脱型時にバネ部材の回転付勢力で回転駒を回転させてアンダーカット部から成形面を離間させる構造と比べ、回転駒を円滑に回転させてアンダーカット部4を有する成形品を円滑に成形することができる。
【0037】
なお、射出成形によって成形するアンダーカット部4は、凹部に限らず凸部を有する場合もあり、また、凹部及び凸部の両方の場合もある。アンダーカット部4に凸部を成形する場合、回転コア20の成形面31には、凹部を設け、アンダーカット部4に凹部及び凸部を設ける場合、回転コア20の成形面31には、凸部及び凹部を設けることとなる。
【0038】
また、上記実施形態では、回転コア20を可動型10に設け、作動部60を固定型50に設けたが、回転コア20を固定型50に設け、作動部60を可動型10に設けてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、バンパー1を成形する場合を例示したが、本発明は、バンパー1に限らず、ダッシュボードなどのアンダーカット部を有する各種の樹脂成形品を製造する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 バンパー(成形品)
3 凹部
4 アンダーカット部
10 可動型(金型)
20 回転コア
31 成形面
48 作動面
50 固定型(金型)
60 作動部
63 係合面
100 射出成形用金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7