(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018764
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ハードコート形成用硬化性組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C08J 7/046 20200101AFI20220120BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220120BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220120BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220120BHJP
C09D 175/14 20060101ALI20220120BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C08J7/046 A
C08F290/06
B32B27/30 A
B32B27/40
C09D175/14
C09D4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122097
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】内貴 英人
(72)【発明者】
【氏名】小野 真司
(72)【発明者】
【氏名】向 大輝
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4F006AA22
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4F100AK01C
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4J127CB372
4J127CC091
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】優れた硬度及び耐薬品性とともに、高い伸度を兼ね備えたハードコートを形成できる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】ハードコート形成用硬化性組成物が硬化してなるハードコートがアクリル系樹脂基材表面上に形成されている積層体であって、前記樹脂基材とハードコートとの層間に両層に由来する厚み0.3~20μmの拡散層が形成されていることを特徴とする積層体に係る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機樹脂基材上にハードコートを形成するための硬化性組成物であって、
(1)a)ラジカル重合性基当量が300g/mol以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物及びb)ラジカル重合性基当量が300g/mol以上の(メタ)アクリレート化合物(ただし、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を除く。)の少なくとも1種、
(2)ラジカル重合性基当量が160g/mol以下の(メタ)アクリレート化合物
(3)光重合開始剤及び
(4)有機溶剤
を含み、かつ、
前記有機溶剤が、ハンセンの三次元空間において、下記式(a):
6.5≧{4(δ1d-δ2d)2+(δ1p-δ2p)2+(δ1h-δ2h)2}1/2・・・(a)
(ただし、δ1dは有機樹脂基材の分散成分、δ2dは有機溶剤の分散成分、δ1pは有機樹脂基材の極性成分、δ2pは有機溶剤の極性成分、δ1hは有機樹脂基材の水素結合成分、δ2hは有機溶剤の水素結合成分を示す。)
を満たす、
ことを特徴とするハードコート形成用硬化性組成物。
【請求項2】
前記有機樹脂基材は、分散成分δ1dが10~30であり、極性成分δ1pが0~20であり、水素結合成分δ1hが0~20である、請求項1に記載のハードコート形成用硬化組成物。
【請求項3】
前記(2)の化合物の含有量が固形分中5~20重量%である、請求項1又は2に記載のハードコート形成用硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のハードコート形成用硬化性組成物が硬化してなるハードコートが有機樹脂基材表面上に形成されている積層体であって、前記有機樹脂基材とハードコートとの層間に両層に由来する厚み0.3~20μmの拡散層が形成されていることを特徴とする積層体。
【請求項5】
インサート成形又はインモールド成形に用いられる、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体を成形してなる成形品
【請求項7】
有機樹脂基材表面上にハードコートを有する積層体を製造する方法であって、
(1)有機樹脂基材表面に請求項1~3のいずれかに記載のハードコート形成用硬化性組成物による液膜を形成する工程、
(2)前記液膜又はその乾燥膜を熱処理した後、硬化処理を施すことによって、前記有機樹脂基材上にハードコートを形成する工程
を含む、
ことを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理温度が70~120℃である、請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なハードコート形成用硬化性組成物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)をはじめとするアクリル系樹脂は、透明性、耐衝撃性、加工性等に優れることから、各種の成形品として実用化されている。この場合、アクリル系樹脂成形品に対して硬度(耐擦傷性)、耐薬品性等を高めるために、成形品表面にハードーコート(表面保護層)が形成される。ハードコートの形成方法としては、既製の成形品にハードコート形成用塗工液を塗布することによってハードコートを形成する方法(ポストコート法)があるが、近年では成形とハードコートの形成とを同時に行うインサート成形又はインモールド成形によってハードコートを有する成形品を製造する方法も多用されている。
【0003】
例えば、インサート成形は、ハードコートを形成するためのシート状材料を金型のキャビティ内に装填した後、金型を閉じて加熱溶融した樹脂を射出注入してシート状材料と溶融樹脂とを一体化した成形品を作り出す方法である。この方法によれば、上記ポストコート法に比べて製造工程が簡略化できることに加え、形状が複雑な成形品にもハードコートを形成することができ、しかもハードコートを成形品に強固に一体化させることができるという利点がある。
【0004】
この場合、インサート成形等のように、シート状材料ごと成形に供されることとなる場合には、シート状材料には硬度、耐薬品性等のほかにもシート状材料自体の成形性も要求される。そして、高い成形性を得るためには、材料自体の伸び(伸度)が高いことも必要とされる。
【0005】
このようなハードコートを形成するための技術としては、例えば、少なくとも(a-1)ポリイソシアネート、(a-2)ポリカーボネートポリオール、(a-3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、前記(a-2)ポリカーボネートポリオールのジオール構成単位が、1,4-ブタンジオールを含み、活性エネルギーを照射して硬化させた硬化膜の23℃における引張弾性率が100~1000MPaであることを特徴とする、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が知られている(特許文献1)。
【0006】
また例えば、重量平均分子量が3000~50000であり、側鎖ラジカル重合性基当量が1000g/mol以下であるポリウレタン化合物(A)と、重量平均分子量5000~ 50000であり、ラジカル重合性基当量が600~3500g/molであるアクリルポリマー化合物(B)と、重合開始剤(C)と、からなる硬化性組成物であって、該ポリウレタン化合物(A)が、以下の化合物:(a1)分子内に2個の水酸基と1個のラジカル重合性基とを有する化合物;(a2)分子内に1 個の水酸基と1 個以上のラジカル重合性基とを有する持つ化合物; および(a3)ジイソシアネート化合物の反応生成物である、前記硬化性組成物が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-196430号公報
【特許文献1】特開2018-172638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インサート成形等のように、シート状材料が成形加工に供される場合、支障なく所望の形状に成形できる成形性(加工容易性)が要求される。ところが、シート状材料を用いてハードコートとなった場合には、硬度、耐薬品性等が要求される。
【0009】
ところが、一般的には、成形性と、硬度及、耐薬品性とは互いに相反する特性となっており、成形性を高めると硬度又は耐薬品性が低下する一方で、硬度又は耐薬品性を高めると成形性が低下してしまう。この点において、従来技術の硬化性組成物においても、ある程度の成形性が得られるものの、硬度、耐薬品性等においてはなお十分なものとは言えず、さらなる改善が必要である。
【0010】
従って、本発明の主な目的は、高い硬度及び耐薬品性とともに、高い伸度を兼ね備えたハードコートを形成できる硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の組成からなる組成物を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記のハードコート形成用硬化性組成物及び積層体に係る。
1. 有機樹脂基材上にハードコートを形成するための硬化性組成物であって、
(1)a)ラジカル重合性基当量が300g/mol以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物及びb)ラジカル重合性基当量が300g/mol以上の(メタ)アクリレート化合物(ただし、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を除く。)の少なくとも1種、
(2)ラジカル重合性基当量が160g/mol以下の(メタ)アクリレート化合物
(3)光重合開始剤及び
(4)有機溶剤
を含み、かつ、
前記有機溶剤が、ハンセンの三次元空間において、下記式(a):
6.5≧{4(δ1d-δ2d)2+(δ1p-δ2p)2+(δ1h-δ2h)2}1/2・・・(a)
(ただし、δ1dは有機樹脂基材の分散成分、δ2dは有機溶剤の分散成分、δ1pは有機樹脂基材の極性成分、δ2pは有機溶剤の極性成分、δ1hは有機樹脂基材の水素結合成分、δ2hは有機溶剤の水素結合成分を示す。)
を満たす、
ことを特徴とするハードコート形成用硬化性組成物。
2. 前記有機樹脂基材は、分散成分δ1dが10~30であり、極性成分δ1pが0~20であり、水素結合成分δ1hが0~20である、前記項1に記載のハードコート形成用硬化組成物。
3. 前記(2)の化合物の含有量が固形分中5~20重量%である、前記項1又は2に記載のハードコート形成用硬化性組成物。
4. 前記項1~3のいずれかに記載のハードコート形成用硬化性組成物が硬化してなるハードコートが有機樹脂基材表面上に形成されている積層体であって、前記有機樹脂基材とハードコートとの層間に両層に由来する厚み0.3~20μmの拡散層が形成されていることを特徴とする積層体。
5. インサート成形又はインモールド成形に用いられる、前記項4に記載の積層体。
6. 前記項5に記載の積層体を成形してなる成形品
7. 有機樹脂基材表面上にハードコートを有する積層体を製造する方法であって、
(1)有機樹脂基材表面に前記項1~3のいずれかに記載のハードコート形成用硬化性組成物による液膜を形成する工程、
(2)前記液膜又はその乾燥膜を熱処理した後、硬化処理を施すことによって、前記有機樹脂基材上にハードコートを形成する工程
を含む、
ことを特徴とする積層体の製造方法。
8. 前記熱処理温度が70~120℃である、前記項7に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた硬度及び耐薬品性とともに、高い伸度を兼ね備えたハードコートを形成できる硬化性組成物を提供することができる。このため、インサート成形に用いられるシート状材料のハードコート(表面保護層)を形成するための材料として好適に用いることができる。本発明の硬化性組成物により形成されたハードコートを表面に有する積層体は、インサート成形等に供されても高い成形性を得ることができ、成形時に導入される溶融樹脂と一体的に成形された成形品を提供することができる。また同時に、そのような成形品の表面を覆うハードコートは、高い硬度、耐薬品性等をも達成することができる。
【0014】
このような特徴を有する本発明の硬化性組成物及びそれによるハードコートは、例えばカーナビゲーション、インパネ等の自動車内装材、サイドミラーカバー等の自動車外装材、携帯電話、タッチパネル、コンパクトディスク、オーディオ機器、その他電化機器等のように、製品の表面に高い硬度、耐薬品性等が要求される物品に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】ハンセンの三次元空間においてHSP距離を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.ハードコート形成用硬化性組成物
本発明のハードコート形成用硬化性組成物(本発明組成物)は、有機樹脂基材上にハードコートを形成するための硬化性組成物であって、
(1)a)ラジカル重合性基当量が300g/mol以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物(以下、単に「ウレタン(メタ)アクリレート化合物」ともいう。)及びb)ラジカル重合性基当量が300g/mol以上の(メタ)アクリレート化合物(ただし、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を除く。)(以下、単に「(メタ)アクリレート化合物」ともいう。)の少なくとも1種、
(2)ラジカル重合性基当量が160g/mol以下の(メタ)アクリレート化合物(以下、単に「拡散成分」ともいう。)
(3)光重合開始剤及び
(4)有機溶剤
を含み、かつ、
前記有機溶剤が、ハンセンの三次元空間において、下記式(a):
6.5≧{4(δ1d-δ2d)2+(δ1p-δ2p)2+(δ1h-δ2h)2}1/2・・・(a)
(ただし、δ1dは有機樹脂基材の分散成分、δ2dは有機溶剤の分散成分、δ1pは有機樹脂基材の極性成分、δ2pは有機溶剤の極性成分、δ1hは有機樹脂基材の水素結合成分、δ2hは有機溶剤の水素結合成分を示す。)
を満たす、
ことを特徴とする。
【0017】
本発明においては、特にことわりのない限り、アクリロイル基又はメタクリロイル基を「(メタ)アクリロイル基」と総称する。アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を「(メタ)アクリロイルオキシ基」と総称する。また、アクリレート又はメタクリレートを「(メタ)アクリレート」と総称し、アクリル酸又はメタクリル酸を「(メタ)アクリル酸」と総称する。
【0018】
また、本発明における「ラジカル重合性基当量」とは、ラジカル重合性基1モル当たりの分子量を示すものである。ラジカル重合性としては、ラジカル重合し得る官能基であれば限定されず、例えばビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。特に、高いUV硬化性等を発現できるという見地より、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の少なくとも1種が望ましい。
【0019】
ラジカル重合性基当量は、公知の測定方法により測定することが可能である。例えば1H-NMRによる二重結合プロトンとプロトン全体のピーク比のほか、ヨウ素価滴定等により算出することができる。
【0020】
(1)ウレタン(メタ)アクリレート化合物又は(メタ)アクリレート化合物
本発明組成物では、上記(1)の成分として、a)ラジカル重合性基当量が300g/mol以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物及びb)ラジカル重合性基当量が300g/mol以上の(メタ)アクリレート化合物(ただし、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を除く。)の少なくとも1種を用いる。
【0021】
これらの化合物は、ラジカル重合性基当量が300g/mol以上(好ましくは350g/mol以上)のものを用いる。これにより、高い伸度とともに、高い硬度、高い耐薬品性等を有するハードコートを形成することができる。なお、ラジカル重合性基当量の上限値は、特に限定されないが、例えば10000g/mol程度とすることができる。
【0022】
本発明では、上記ウレタン(メタ)アクリレート化合物又は(メタ)アクリレート化合物として、ラジカル重合性基当量が300g/mol以上のものであり、かつ、紫外線硬化性の化合物を好適に使用することができ、例えば下記(1-1)(1-2)に示すものを使用することができる。
【0023】
(1-1)ウレタン(メタ)アクリレート化合物
ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイル基とウレタン結合部を有する化合物であり、公知又は市販のものを使用することができる。また、公知の製法によって合成されたものを使用することもできる。例えば、水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物と多価イソシアネート化合物と、場合によりポリオール化合物とを反応させて得られる化合物を好適に用いることができる。以下、原料となる各化合物について説明する。
【0024】
水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物
水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物として、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1~16(好ましくは1~12)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を1個有する化合物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイル-オキシプロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を2個有する化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を3個以上有する化合物を挙げることができる。
【0025】
多価イソシアネート化合物
多価イソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ポリイソシアネートのほか、イソシアネートの3量体又は多量体(アダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体、アロファネート体)が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0026】
ポリオール化合物
ポリオール化合物としては、例えば脂肪族ポリオール(A)、脂環式ポリオール(B)、ポリエーテル系ポリオール(C)、ポリエステル系ポリオール(D)、ポリカーボネート系ポリオール(E)、ポリオレフィン系ポリオール(F)、ポリブタジエン系ポリオール(G)、(メタ)アクリル系ポリオール(H)、ポリシロキサン系ポリオール(I)等を挙げることができる。
【0027】
脂肪族ポリオール(A)としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ジメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、2、2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の2個の水酸基を含有する脂肪族アルコール類、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3個以上の水酸基を含有する脂肪族アルコール類等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0028】
脂環式ポリオール(B)としては、例えば1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール等のシクロヘキサンジオール類、水添ビスフェノールA等の水添ビスフェノール類、トリシクロデカンジメタノール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用して用いることができる。
【0029】
ポリエーテル系ポリオール(C)としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールのほか、これらポリアルキレングリコールのランダム又はブロック共重合体が挙げられる。
【0030】
ポリエステル系ポリオール(D)としては、例えば多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。
【0031】
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4-シクロヘキサンジオール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)、糖アルコール類(キシリトール、ソルビトール等)等を挙げることができる。
【0032】
多価カルボン酸としては、例えばマロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0033】
環状エステルとしては、例えばプロピオラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0034】
ポリカーボネート系ポリオール(E)としては、例えば多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であれば良く、カーボネート結合とともにエステル結合を有していても良い。
【0035】
ポリオレフィン系ポリオール(F)としては、飽和炭化水素骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン等のホモポリマー又はコポリマーを有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0036】
ポリブタジエン系ポリオール(G)としては、炭化水素骨格としてブタジエンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0037】
ポリブタジエン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部又は一部が水素化された水添化ポリブタジエンポリオールであっても良い。
【0038】
(メタ)アクリル系ポリオール(H)としては、(メタ)アクリル酸エステルを重合体又は共重合体の分子内にヒドロキシル基を少なくとも2つ有しているものが挙げられ、かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0039】
ポリシロキサン系ポリオール(I)としては、例えばジメチルポリシロキサンポリオール、メチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0040】
これらポリオール化合物の中でも、樹脂組成物を硬化させて塗膜となった際のべたつきを抑制するために、脂肪族ポリオール又は脂環式ポリオールが好ましく用いられる。一方、塗膜の柔軟性を付与する観点からは、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール又はポリカーボネート系ポリオールが好ましく用いられる。また、ポリオール化合物としては、2官能(水酸基数が2個)のポリオールを用いることが好ましく、さらに3官能のポリオールを併用しても良い。
【0041】
上記のように、水酸基を含有する(メタ)アクリレート化合物と、多価イソシアネート化合物と、場合によりポリオール化合物とを、適切な触媒の存在下、適切な温度で反応させることにより、特に好適な実施形態で用いるウレタン(メタ)アクリレート化合物を得ることができる。また、ポリオール化合物とイソシアネート基を含有する(メタ)アクリレート化合物を適切な触媒の存在下において適切な温度で反応させることによっても、実施形態で用いるウレタン(メタ)アクリレート化合物を得ることができる。
【0042】
このようなウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を用いることもできる。例えば、日本合成化学株式会社製の紫光シリーズ(「UV-7000B」、「UV-6640B」等)、ダイセル・オルネクス株式会社製のエベクリルシリーズ(「EBECRYL9260」等)、DIC株式会社製のユニディックシリーズ等が例示される。これらは、単独又は2種以上を混合して使用しても良い。必要に応じて、これらのウレタン(メタ)アクリレート化合物を適宜選択又は組合せることにより所望の硬度と伸度とを兼ね備えた積層体を得ることも可能である。
【0043】
(1-2)(メタ)アクリレート化合物
(メタ)アクリレート化合物は、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外のものであって、少なくともアクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を有する化合物であれば良く、特に限定されない。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0044】
特に、本発明では、アクリル主鎖の少なくとも側鎖又は末端に(メタ)アクリロイル基を有する化合物(重合体)を好適に用いることができる。
【0045】
前記アクリル主鎖としては、(メタ)アクリル酸又はそのエステルをモノマーとして含む重合体又は共重合体からなる構造を採用することができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のほか、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
このような(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を使用することもできる。例えば、共栄社化学株式会社製UV硬化型アクリルポリマー(「SMP-360A」、「SMP-550A」)、根上工業株式会社製ART CUREシリーズ(「OAP-2531」、「OAP-5000」、「MAP-2801」、「MAP-4050」、「MAP-7000」)、ダイセル・オルネクス株式会社製エポキシアクリレート(「EBECRYL3701」、「EBECRYL3708」)等が挙げられる。これらの他にも、紫外線硬化型の化合物として市販されている(メタ)アクリレート化合物を使用することもできる。
【0047】
本発明組成物中における上記(1)の化合物の含有量(固形分割合)は、限定的ではなく、通常は50~95重量%程度とすれば良いが、特に70~90重量%とすることが好ましい。この数値範囲内に設定することにより、より高い伸度とともに、より優れた硬度、耐薬品性等を確保することができる。
【0048】
(2)拡散成分としての(メタ)アクリレート化合物
拡散成分である(メタ)アクリレート化合物は、ラジカル重合性基当量が160g/mol以下(好ましくは100g/mol以下)のものを用いる。これにより、所望の拡散層を形成することが可能となる。この場合のラジカル重合性基当量の下限値は、特に制限されないが、例えば80g/mol程度とすることができる。
【0049】
また、本発明では、拡散成分としての(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量(以下、単に「分子量」という。)は、限定的ではないが、通常は600以下であることが好ましく、その中でも550以下であることがより好ましい。これにより、より確実に拡散層を形成することができる。なお、分子量の下限値は、特に限定されず、例えば100程度とすることができる。
【0050】
拡散成分としての(メタ)アクリレート化合物として、例えばビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のエチレン性不飽和基を分子内にもつ化合物を用いることができる。但し、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物は除かれる。ここに、(メタ)アクリレート化合物は、単官能又は多官能のいずれであっても良い。また、これらを併用することもできる。
【0051】
拡散成分としての(メタ)アクリレート化合物としては、少なくとも上記のようなラジカル重合性基当量を有するものであれば制限されない。例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(ラジカル重合性基当量99g/mol、分子量298)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(ラジカル重合性基当量88g/mol、分子量352)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(ラジカル重合性基当量113g/mol、分子量226)、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(ラジカル重合性基当量141g/mol、分子量423)、トリメチロールプロパントリアクリレート(ラジカル重合性基当量98g/mol、分子量296)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ラジカル重合性基当量96g/mol、分子量578)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(ラジカル重合性基当量130g/mol、分子量130)、アクリロイルモルフォリン(ラジカル重合性基当量141g/mol、分子量141)等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0052】
本発明組成物中における拡散成分の含有量(固形分割合)は、通常5~20重量%程度とすれば良いが、特に10~20重量%とすることが好ましい。この数値範囲内に設定することにより、より優れた硬度、耐薬品性等を確保するとともに、拡散層の形成の促進によって、高い伸度をより確実に得ることができる。
【0053】
(3)光重合開始剤
光重合開始剤として、例えばa)光の照射によりラジカル活性種を発生する光ラジカル重合開始剤(例えばアセチルベンゼン、ジメトキシベンジル、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、クロロチオキサトン、エチルアントラキノン等)、b)カチオン活性種を発生する光カチオン重合開始剤(例えばビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-フルオロフェニル)ヨードニウムトリフラート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-1,3,5-トリアジン、4-ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート等)、c)アニオン活性種を発生される光アニオン重合開始剤(アセトフェノン-O-ベンゾイルオキシム、シクロヘキシルカルバミン酸1,2-ビス(4-メトキシフェニル)-2-オキソエチル、ニフェジピン等)等を用いることができる。これらは、単独又は2種以上を混合して使用しても良い。
【0054】
このような光重合開始剤としては、市販品を用いることもできる。例えば、イルガキュアシリーズ(BASFジャパン)等の市販品を用いることができる。より具体的には「イルガキュア907」(2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン)、「イルガキュアTPO」(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド)等を使用することができる。
【0055】
本発明組成物中における光重合開始剤の含有量(固形分割合)は、用いる重合開始剤の種類等に応じて適宜設定することができるが、通常は2~8重量%程度とすれば良く、特に3~5重量%とすることが好ましい。この数値範囲内に設定することにより、硬度、耐薬品性とともに伸度に優れた塗膜を得ることができる。
【0056】
(4)有機溶剤
有機溶剤は、ハンセンの三次元空間において、下記式(a):
6.5≧{4(δ1d-δ2d)2+(δ1p-δ2p)2+(δ1h-δ2h)2}1/2・・・(a)
(ただし、δ1dは有機樹脂基材の分散成分、δ2dは有機溶剤の分散成分、δ1pは有機樹脂基材の極性成分、δ2pは有機溶剤の極性成分、δ1hは有機樹脂基材の水素結合成分、δ2hは有機溶剤の水素結合成分を示す。)
を満たすものを用いる。このような有機溶剤を用いることによって、拡散成分の作用も相まって、より確実に所望の拡散層を形成することができる。
【0057】
図2に示すようなハンセンの三次元空間において、有機樹脂基材及び有機溶剤のそれぞれの分散成分(δ
d)、極性成分(δ
p)及び水素結合成分(δ
h)をプロットすることによって有機樹脂基材のベクトルA、有機溶剤のベクトルBを示すことができる。これら各ベクトルの長さL
A,L
Bが有機樹脂基材及び有機溶剤及びにおけるHildebrandの溶解度パラメータとなる。上記式(a)は、両ベクトルA,Bの先端(矢印部)どうしの距離D(以下「HSP距離」ともいう。)であり、その距離Dが短いほど一般に溶解性が高くなる。本発明では、そのようなHSP距離を6.5以下(好ましくは6以下)に制御することによって、所定の拡散層を積層体中に効果的に形成することができる。
【0058】
HSP距離の下限値は、特に限定されず、通常は0とすることができるが、例えば積層体に高い透明性等が要求される場合は0.5程度とすることが好ましく、特に1程度とすることがより好ましい。
【0059】
一般的に市場に出回っている有機樹脂基材は、分散成分10~30程度、極性成分0~20程度及び水素結合成分0~27程度であるので、用いる有機樹脂基材(少なくとも拡散層を形成する面を構成する樹脂)に応じてHSP距離が6.5以下となるような有機溶剤を適宜選択することができる。従って、本発明では、例えば分散成分が10~30(好ましくは15~30)であり、極性成分が0~20(好ましくは3~17)であり、水素結合成分が0~20(好ましくは1~18)である有機樹脂基材も好適に用いることができる。
【0060】
本発明における有機溶剤及び有機樹脂基材の分散成分(δd)、極性成分(δp)及び水素結合成分(δh)は、文献値又は実測値のいずれであっても良いが、両者が有意に異なる場合は実測値を採用することが望ましい。実測値は、公知の方法に従って実施することができる。例えば、市販のHSP計算ソフトのデータベースからデータを取り出す方法、あるいは有機樹脂基材の溶解性試験から溶解球を求め、中心座標を求める方法等のいずれでも採用することができる。なお、各数値で誤差が生じる場合は、最も小さい値を採用すれば良い。
【0061】
使用可能な有機溶剤としては、上記の条件を満たす限りは限定されず、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチエルエーテル等のアルコール系溶剤等の各種の有機溶剤から1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0062】
なお、2種類以上の有機溶剤を混合した場合の分散成分、極性成分及び水素結合成分は、各有機溶剤の分散成分、極性成分及び水素結合成分のそれぞれに体積分率を掛け合わせて得られた値の合計値を当該混合溶剤の分散成分、極性成分及び水素結合成分とする。
【0063】
有機溶剤を用いる場合、その使用量は限定的ではなく、例えば本発明組成物の固形分含有量が5~90重量%程度の範囲内となるように、用いる成分等の種類、所望の粘度等に応じて適宜設定すれば良い。例えば、本発明組成物をペースト状として使用する場合は、固形分含有量を多めに設定すれば良い。
【0064】
(5)本発明組成物の形態等
本発明組成物の形態は、通常は液状である。この場合の粘度(20℃)は、所望のハードコートの厚み等に応じて適宜設定で、例えば1~500mPa・s程度とすることができるが、これに限定されない。
【0065】
(6)本発明組成物の製造
本発明組成物は、前記のような各成分を均一に混合することによって調製することができる。混合する際の混合順序等は特に限定されず、任意の順序を採用することができる。混合は、例えばミキサー、ニーダー等の公知又は市販の装置を用いて実施することができる。混合する雰囲気も、特に限定されることなく、通常は常温・常圧下で各成分を混合すれば良い。
【0066】
本発明組成物においては、本発明組成物を構成する成分の一部又は全部が有機溶剤に溶解していても良いし、溶解せずに分散していても良い。特に、本発明では、少なくとも有機成分が有機溶剤に溶解した溶液であることが望ましい。
【0067】
(7)本発明組成物の使用
本発明組成物の塗膜を硬化させることによって所望の硬化膜からなるハードコートを形成することができる。特に、下地として有機樹脂基材を用い、これに本発明組成物を塗布し、硬化させることによって拡散層を含む積層体を製造することができる。その詳細については、下記「2.積層体及びその製造方法」において説明する。
【0068】
2.積層体及びその製造方法
(A)積層体
本発明は、請求項1~3のいずれかに記載のハードコート形成用硬化性組成物が硬化してなるハードコートが有機樹脂基材表面上に形成されている積層体であって、前記有機樹脂基材とハードコートとの層間に両層に由来する厚み0.3~20μmの拡散層が形成されていることを特徴とする積層体(本発明積層体)を包含する。
【0069】
本発明積層体の層構成例を
図1に示す。本発明積層体10は、有機樹脂基材11の表面上(上方)にハードコート12が形成されている。すなわち、ハードコート12が積層体の最表面に露出するように形成されている。そして、両者の中間層として、両層に由来する拡散層13が形成されている。ここに「両層に由来する」とは、有機樹脂基材11に含まれる成分と、ハードコート12に含まれる成分とが拡散することによって混在していることを意味する。例えば、有機樹脂基材11とその基材上に直に塗布された本発明組成物との界面で生じる拡散によって形成された層を例示することができる。
【0070】
有機樹脂基材は、特に限定されず、例えばアクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂(塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等)、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の基材ほか、これらの混合物からなる基材を挙げることができる。特に、本発明の積層体に透明性が要求される場合は、透明性の有機樹脂基材を用いることが好ましい。なお、透明性の程度は、積層体の用途等に応じて適宜設定することができる。
【0071】
本発明では、例えばアクリル系樹脂基材を好適に用いることができる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸及びその誘導体の少なくとも1種をモノマーユニットとして含む重合体であれば限定されない。前記誘導体としては、例えばエステル、アルカリ塩、ニトリル、アミド等が挙げられる。エステルとしては、(メタ)アクリル酸のCOORのRがメチル基、エチル基、ブチル基、グリシジル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、エチルヘキシル基等のエステルが挙げられる。アルカリ塩としては、(メタ)アクリル酸のカリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる。ニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリルロニトリル等が挙げられる。アミドとしては、(メタ)アクリル酸アミドが挙げられる。これらのモノマーか構成されるアクリル系樹脂の具体例としては、例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が挙げられる。
【0072】
また、アクリル系樹脂は、本発明の効果を妨げない限り、樹脂成分としてアクリル系樹脂を主成分(通常はアクリル系樹脂基材中の含有量50重量%以上、特に80重量%以上)とするものであれば良く、その限りにおいて他の樹脂成分との混合樹脂、ポリマーアロイ等であっても良い。他の樹脂成分としては、特に限定されず、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル等の各種の樹脂成分が挙げられる。このような樹脂としては、例えばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)等が挙げられる。
【0073】
さらに、有機樹脂基材においては、本発明の効果を妨げない範囲内で他の添加剤が含まれていても良い。添加剤としては、例えば可塑剤、充填材、着色材(染料、顔料)、防腐剤、つや消し剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防汚剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0074】
有機樹脂基材は、透明、半透明又は不透明のいずれであっても良い。例えば、透明又は半透明である場合は、下地に印刷層が積層されることによってその印刷層を視認可能となる。
【0075】
有機樹脂基材は、その形状は限定的ではないが、一般的には成形に適した形状という点からシート状(板状)であることが望ましい。この場合、シート状の有機樹脂基材において本発明組成物が適用される面の反対側の面には他の層が含まれていても良い。他の層としては、例えば樹脂層、金属層等のいずれでも良いが、成形性(例えばインサート成形又はインモールド成形における成形性)の観点より、熱可塑性樹脂層の1層又は2層以上を好適に採用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。このように、特定の有機樹脂層とそれ以外の樹脂層とが積層されてなる積層体も有機樹脂基材として用いることができる。
【0076】
有機樹脂基材の厚みは、所望の成形性等が確保できれば良く、例えば0.05~1mm程度とすることができるが、これに限定されない。特に、上記のような積層体を有機樹脂基材として用いる場合、本発明組成物が塗布されるアクリル系樹脂層の厚みは、限定的ではないが、より確実に所望の拡散層を形成させるという観点から0.1~0.5mm程度とすることが望ましい。
【0077】
拡散層は、有機樹脂基材とハードコートとの層間に形成されている。拡散層は、有機樹脂基板とハードコートに由来するものであり、両層の中間緩衝層として存在する。拡散層は、有機樹脂基材に本発明組成物が塗布された際の両者の界面に形成されるものであり、有機樹脂基材の成分と本発明組成物の成分の両者を含む領域として形成される。このような拡散層を形成させることによって、有機樹基材とハードコートとが一体的な構成となり、優れた伸びを積層体に与えることができる結果、優れた成形性を発揮することができる。これにより成形時に生じ得るクラック等を未然に抑制ないしは防止することができる。
【0078】
拡散層の厚みは、通常0.3~20μm程度であり、好ましくは1~10μmとする。厚みが0.3μm未満の場合は緩衝効果が低く、伸度も低くなる。一方、厚みが20μmを超えると、硬度、耐薬品性等の塗膜性能が低下するおそれがある。
【0079】
なお、拡散層の厚みは、市販の膜厚計を用いて一定波長をもつ光の反射率スぺクトラムから厚みを計測することができるが、その他にも走査型電子顕微鏡等の分析方法によっても測定することができる。
【0080】
ハードコート層は、本発明組成物の硬化体によって形成されるものである。
図1に示すように、積層体の最表面に露出するものであり、積層体の保護層として機能する。
【0081】
ハードコート層は、透明、半透明又は不透明のいずれであっても良い。例えば、ハードコート層が透明又は半透明である場合は、下地に印刷層が積層されることによってその印刷層を視認可能となる。
【0082】
ハードコート層の厚みは、所望の硬度、成形性等に応じて適宜設定することができるが、通常は2~20μmとし、特に2.5~10μmとすることが好ましい。2μm未満では酸素阻害による硬化不良が発生し、20μmを超えると塗膜深部の硬化不良が発生することがある。
【0083】
(B)積層体の製造方法
本発明積層体は、例えば以下の製造方法によって好適に作製することができる。すなわち、有機樹脂基材表面上にハードコートを有する積層体を製造する方法であって、
(1)有機樹脂基材表面に本発明組成物による液膜を形成する工程(塗布工程)、
(2)前記液膜又はその乾燥膜を熱処理した後、硬化処理を施すことによって、前記樹脂基材上にハードコートを形成する工程(ハードコート形成工程)
を含む、
ことを特徴とする方法によって、本発明積層体を製造することができる。
【0084】
塗布工程
塗布工程では、有機樹脂基材表面に本発明組成物による液膜を形成する。本発明組成物に含まれる有機溶剤が有機樹脂基材を溶解しやすい性質を有するため、液膜の形成により有機樹脂基材の表面を膨潤させることで拡散層の形成を促進させることができる。
【0085】
液膜の形成方法は、特に限定されず、例えばドクターブレード法、バーコート法、ディッピング法、エアスプレー法、ローラーブラシ法、ローラーコーター法等の公知のコーティング方法により適宜行うことができる。
【0086】
液膜の付与量は、例えば所望の硬化膜の厚みとなるような量とすれば良く、通常は得られる硬化膜の厚みが1~50μm程度の範囲内(好ましくは3~15μmの範囲内)で適宜設定することができる。
【0087】
液膜は、有機樹脂基材の表面が膨潤するのに十分な時間を保持すれば良く、例えば5~30分程度の範囲内で設定することもできるが、これに限定されない。この場合の保持温度は、常温(特に10~35℃程度)とすれば良い。
【0088】
ハードコート形成工程
ハードコート形成工程では、前記液膜又はその乾燥膜を熱処理した後、硬化処理を施すことによって、前記樹脂基材上にハードコートを形成する。
【0089】
熱処理の対象は、通常は本発明組成物の液膜であるが、自然乾燥又は50℃以下の温度で乾燥した乾燥膜であっても良い。製造効率等の点においては、液膜を熱処理に供することが望ましい。
【0090】
熱処理では、液膜の乾燥とともに拡散層の形成の促進を行うことができる。熱処理温度(オーブン温度)は、本発明組成物に含まれる有機溶剤の沸点等に応じて70~120℃程度の範囲内で適宜設定することができる。70℃を下回ると、塗膜成分の拡散不足あるいは有機溶剤の乾燥不足が生じやすく、120℃を超えると有機樹脂基材の軟化によりフィルム外観が悪化するおそれがある。特に、本発明では、熱処理温度は、用いる本発明組成物に含まれる有機溶剤の沸点よりも低い温度に設定することが好ましい。上記熱処理温度を基準とすれば、沸点が75~200℃(好ましくは100~160℃)の範囲にある有機溶剤を使用することが好ましい。
【0091】
熱処理した後、塗膜を硬化させる。これによって、有機樹脂基材とハードコートとの層間に形成された拡散層を固定させることができる。
【0092】
塗膜を硬化させる方法は、特に制限されないが、特に放射線(活性エネルギー線)による硬化方法を好適に採用することができる。放射線は、光重合開始剤が開裂するのに充分なエネルギーレベルを有するものであればいかなるものを用いても良い。放射線として、電磁放射線又は粒子放射線が挙げられ、特に紫外光、赤外光、可視光、遠赤外光等を用いることが好ましい。
【0093】
本発明では、特に比較的簡易に硬化を実施できるという点で紫外線を好適に用いることができる。また、紫外線を照射する場合、その光源も限定的でなく、例えば高圧水銀ランプ、鉄ドープのメタルハライドランプ、ガリウムランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザ、LED等が挙げられる。従って、これらを備えた公知又は市販の装置を用いて硬化させることができる。
【0094】
紫外線を照射する場合は、例えば100~400nm程度の波長領域であって、照度80~1000mW/cm2、積算光量100~5000mJ/cm2のエネルギーを有する紫外線を照射することができるが、これに限定されない。紫外線照射は、公知又は市販のUV照射装置を用いて実施することができる。
【0095】
なお、紫外線照射する場合の温度条件は、特に限定されないが、通常は100℃以下の範囲内とすれば良い。従って、例えば室温付近(10~40℃程度)でも好適に実施することができる。
【0096】
(C)積層体の使用
本発明積層体は、成形品表面を保護するためのハードコート(表面保護層)を有する成形品を成形するための成形用材料として好適に用いることができる。
【0097】
成形方法は、特に限定されないが、通常は本発明積層体がシート状物であるため、シート状物の成形・加工に適した方法を好適に採用することができる。すなわち、シート状の積層体を金型に密着させることによって成形する方法を採用することが好ましい。特に、インサート成形又はインモールド成形において金型に装填されるシート状材料として好適に用いることができる。これによって、本発明積層体のハードコートが最表面層として配置された成形品を製造することができる。
【0098】
このような成形品は、本発明積層体によるハードコートが表面保護層として表面に有しているため、高い硬度(耐擦傷性)、耐薬品性等を発揮することができる。また、本発明積層体が優れた成形性(高い伸度)を有するため、成形加工された後もハードコート表面にクラック等の欠陥が発生することを効果的に抑制できる結果、良好な外観を与えることができる。
【実施例0099】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0100】
実施例1
表1に示す各成分を均一に混合することによって硬化性組成物(塗工液)を調製した。次いで、有機樹脂基材としてポリカーボネート(PC)/ポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる複層フィルム(厚み約0.3mm)のPMMA面に塗工液をバーコート(バーコーターNo.8)で塗布した。これをオーブンに入れて80℃で3分間熱処理して有機溶剤を除去して乾燥塗膜を得た。その後、前記塗膜に紫外線(照度:500mW/cm2,積算光量:500mJ/cm2)を照射することによりUV硬化させた。このようにしてアクリル系樹脂基材上にハードコートが形成された積層体を得た。なお、表1中の各成分の含有量の単位は「重量%」である。また、表1中の樹脂の含有量は有効成分の含有量を表している。
【0101】
実施例2~3、実施例6及び比較例1~2、比較例4
塗工液として表1に示す組成を採用したほかは、実施例1と同様にして塗工液を調製し、さらに積層体を作製した。
【0102】
実施例4
熱処理条件を90℃で30分としたほかは、実施例1と同様にして塗工液を調製し、さらに積層体を作製した。
【0103】
実施例5
熱処理条件を100℃で30分としたほかは、実施例1と同様にして塗工液を調製し、さらに積層体を作製した。
【0104】
比較例3
バーコーターNo.8をバーコーターNo.3に代えたほかは、実施例1と同様にして塗工液を調製し、さらに積層体を作製した。
【0105】
試験例1
各実施例及び比較例で得られた積層体について以下の事項について調べた。その結果も併せて表1に示す。また、有機樹脂基材及び有機溶剤の分散成分(D成分)、極性成分(P成分)及び水素結合成分(H成分)の数値とともに、有機樹脂基材及び有機溶剤のHSP距離を表2に示す。
【0106】
(1)塗膜厚み及び拡散層厚み
膜厚測定システム「F20」(FILMETRICS株式会社)を用いて、一定波長をもつ光の反射率スぺクトラムから厚みを計測した。ここで「塗膜厚み」は、
図1におけるハードコート12の厚みをいう。
【0107】
(2)外観
目視で塗膜に異常がないか確認した。ゆず肌のような表面に凹凸が生じた場合あるいはハジキが生じた場合を「異常あり」とし、そのような異常が認められなかった場合を「異常なし」とした。
【0108】
(3)伸度
130℃の温度下で引張試験を行い、目視にてハードコート表面にクラックが認められるまでの伸長率を計測した。各積層体から5mm×100mmの試験片を切り出し、チャック間距離50mm、引張速度600mm/分で試験を行った。
【0109】
(4)鉛筆硬度
ハードコート表面(塗工液による塗膜)の硬度を日本産業規格JIS-6500-5-4に準拠して測定した。
【0110】
(5)耐薬品性
市販の日焼け止めクリーム(製品名「ニュートロジーナ」ジョンソン・エンド・ジョンソン社製、SPF100)をハードコート表面に塗布し、温度80℃で30分静置後、日焼け止めクリームを乾いた布で拭き取った後のハードコート表面が透明から白化している程度を目視にて確認した。変化が認められないもの(ハードコートが透明のままであるもの)を「○」とし、一部に白化が認められるものを「△」とし、全体にわたって白化が認められたものを「×」とした。
【0111】
【0112】
【0113】
なお、表1及び表2中の略号の意味は、以下の通りである:
a)UV-7000B:製品名「紫光UV-7000B」三菱ケミカル株式会社、ウレタンアクリレート(アクリレート官能基数2~3)、ラジカル重合性基当量:1400g/mol
b)SMP-360AP:製品名「SMP-360AP」共栄社化学株式会社、アクリルポリマー、ラジカル重合性基当量:360g/mol、固形分50%(希釈溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル)
c)M-306:製品名「アロニックスM-306」東亜合成株式会社、ペンタエリスリトールトリアクリレート(アクリレート官能基数3、ラジカル重合性基当量:99)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(アクリレート官能基数4、ラジカル重合性基当量:88)との混合物
d)Irgacure907:製品名「Irgacure907」BASFジャパン株式会社、光重合開始剤
e)DMF:N,Nジメチルホルムアミド(沸点153.0℃)、デュポン株式会社
f)AcOBu:酢酸ブチル(沸点126.3℃)、株式会社ゴードー
g)MEK:メチルエチルケトン(沸点79.53℃)、関東化学株式会社
h)PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)
【0114】
表1の結果からも明らかなように、各実施例では、特に一定の拡散層厚みを有することから、高い硬度とともに高い伸度が得られることがわかる。
これに対し、比較例1は、拡散層の厚みが不十分であるため、伸度が不足していた。比較例2は、塗膜成分に柔軟性有する樹脂成分を含んでいないため、伸度が大きく不足した。比較例3は、塗膜層が2μmを下回るため、硬化不良が発生し、鉛筆硬度や耐薬品性が不足した。比較例4は、拡散成分が配合されていないため、塗膜/基材界面での相互拡散が発生せず、所望の拡散層が形成されないため、伸度が不足していた。