(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187641
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電力変換装置、電力変換装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20221213BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20221213BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M3/28 U
H02M3/155 U
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095727
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 能成
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS13
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB27
5H730BB86
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FG05
5H730FG26
5H770BA02
5H770CA01
5H770DA01
5H770DA43
5H770EA15
5H770GA19
5H770HA03W
5H770JA17W
(57)【要約】
【課題】電動車両における走行の特性に合致したバッテリの電力変換を好適にすることができる電力変換装置、電力変換装置の制御方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】少なくとも、第1のバッテリにより出力された第1バッテリ電力を、入力または設定された出力波形プロファイルに基づく第1電圧波形の第1出力電力に変換して出力する第1のコンバータと、第1バッテリ電力に基づく第2出力電力を生成して出力する第1の生成部と、を備え、第1出力電力と第2出力電力とを加算することで生成される交流の制御波形の第3出力電力を負荷に供給する、電力変換装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第1のバッテリにより出力された第1バッテリ電力を、入力または設定された出力波形プロファイルに基づく第1電圧波形の第1出力電力に変換して出力する第1のコンバータと、
前記第1バッテリ電力に基づく第2出力電力を生成して出力する第1の生成部と、
を備え、
前記第1出力電力と前記第2出力電力とを加算することで生成される交流の制御波形の第3出力電力を負荷に供給する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記第2出力電力の電圧波形は、矩形波形である、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1電圧波形は、前記制御波形から前記矩形波形を減算した電圧波形である、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1の生成部は、
前記第1出力電力と前記第2出力電力との加算を制御することで正弦波の半波を生成するスイッチング部と、
前記半波を反転させた前記第3出力電力を前記負荷に供給する反転部と、
を備える請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記スイッチング部は、
前記第2出力電力を前記負荷側に供給可能とする導通状態にするとともに、前記第1出力電力を前記第1のコンバータ側から前記第1の生成部側に供給不可能とする非導通状態にする第1のスイッチング素子である、
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1のコンバータに並列に接続され、前記第1バッテリ電力に基づく矩形波形の第4出力電力を生成して出力する第2の生成部、をさらに備え、
前記スイッチング部は、
前記第4出力電力を前記負荷側に供給可能とする導通状態にするとともに、前記第1出力電力を前記第1のコンバータ側から前記第2の生成部側に供給不可能とする非導通状態にする第2のスイッチング素子、をさらに備え、
前記第1出力電力と、前記第2出力電力と、前記第4出力電力とを加算することで生成される前記第3出力電力を前記負荷に供給する、
請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記スイッチング部は、
前記第1の生成部と前記第1のコンバータとの直列接続、あるいは並列接続を切り替える第3のスイッチング素子である、
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項8】
第2のバッテリにより出力された第2バッテリ電力に基づく矩形波形の第5出力電力を生成して出力する第3の生成部、をさらに備え、
前記スイッチング部は、
前記第1の生成部と前記第1のコンバータとの直列接続と、前記第3の生成部との直列接続、あるいは並列接続を切り替える第4のスイッチング素子、をさらに備え、
前記第1出力電力と、前記第2出力電力と、前記第5出力電力とを加算することで生成される前記第3出力電力を前記負荷に供給する、
請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記スイッチング部は、
前記第1出力電力を前記負荷側に供給可能とする導通状態にするとともに、前記第2出力電力を前記第1のコンバータ側に供給不可能とする非導通状態にする第5のスイッチング素子と、
前記第1の生成部と前記第1のコンバータとを接続、あるいは切断させる第6のスイッチング素子と、
を備える請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第1のコンバータおよび前記第1の生成部に並列に接続され、前記第1バッテリ電力に基づく第6出力電力を生成して出力する第4の生成部、をさらに備え、
前記スイッチング部は、
前記第6出力電力を前記負荷側に供給可能とする導通状態にするとともに、前記第1出力電力および前記第2出力電力を前記第4の生成部側に供給不可能とする非導通状態にする第7のスイッチング素子、をさらに備え、
前記第1出力電力と、前記第2出力電力と、前記第6出力電力とを加算することで生成される前記第3出力電力を前記負荷に供給する、
請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
少なくとも、第1のバッテリにより出力された第1バッテリ電力を、入力または設定された出力波形プロファイルに基づく第1電圧波形の第1出力電力に変換して出力する第1のコンバータと、前記第1バッテリ電力に基づく第2出力電力を生成して出力する第1の生成部と、を備える電力変換装置の制御方法であって、
コンピュータが、
前記第1出力電力と前記第2出力電力とを加算することで生成される交流の制御波形の第3出力電力を負荷に供給するように制御する、
電力変換装置の制御方法。
【請求項12】
少なくとも、第1のバッテリにより出力された第1バッテリ電力を、入力または設定された出力波形プロファイルに基づく第1電圧波形の第1出力電力に変換して出力する第1のコンバータと、前記第1バッテリ電力に基づく第2出力電力を生成して出力する第1の生成部と、を備える電力変換装置を制御させるプログラムであって、
コンピュータに、
前記第1出力電力と前記第2出力電力とを加算することで生成される交流の制御波形の第3出力電力を負荷に供給するように制御させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、電力変換装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、ハイブリッド電気自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)や、プラグインハイブリッド自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)など、少なくとも、バッテリ(二次電池)により供給される電力によって駆動される電動モータによって走行する電動車両の開発が進んでいる。これらの電動車両では、バッテリに蓄電された直流電力を、電動モータを駆動するための交流電力に変換することは行われている。
【0003】
これに関して、例えば、特許文献1や特許文献2には、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に関する技術が開示されている。特許文献1や2に開示された電力変換装置では、インバータを用いて、電力源であるバッテリのオン時間あるいはオフ時間をスイッチング制御することによって、直流電力を交流電力に変換している。インバータは、簡易な構成であり、交流電力や周波数を調整する電力変換装置として近年最も多く普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/004015号
【特許文献2】国際公開第2019/116785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動車両には、車両や電動モータの仕様によっても異なるが、例えば、数百[V]などの高電圧を出力するバッテリが搭載され、インバータは、バッテリの電圧を昇圧して電動モータに供給することもある。このため、インバータを構成するスイッチング素子などの構成要素(電気回路)には、高い電圧(例えば、2倍の電圧)に耐えることができるような高耐圧の部品を用いる必要がある。しかしながら、電気部品は、高耐圧になるほどオン抵抗が高くなるため、損失が大きくなるのが一般的である。このため、電動車両に用いられるインバータは、電力の変換効率が低下してしまう。さらに、インバータによる電力変換では、スイッチング制御による高調波が発生し、交流波形が歪んでしまったり、雑音や、トルクリップル、鉄損などの特性に影響を与えてしまったりする。
【0006】
ところで、電動車両における通常の走行では、常に高い電圧が要求されるとは限らず、むしろ、バッテリの電圧よりも低い電圧が要求されることが多い。つまり、電動車両の通常の走行時のインバータの動作は、バッテリの電圧を昇圧させるよりも、降圧させることの方が多くなる。しかしながら、電動車両に用いられるインバータは、電動車両が最大の走行能力で走行する場合を保証するために、バッテリの電圧を昇圧させる場合に合わせて構成せざるを得ない。つまり、電動車両に用いられる従来のインバータは、過剰に高い特性を持っているため、電動車両における走行の特性に合致した特性とはなっていない。
【0007】
このように、従来から電力変換装置として電動車両に用いられるインバータは、必ずしも電動車両における走行の特性に合致した電力変換を行うことができる好適な構成ではなかった。
【0008】
本発明は、上記の課題認識に基づいてなされたものであり、電動車両における走行の特性に合致したバッテリの電力変換を好適にすることができる電力変換装置、電力変換装置の制御方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る電力変換装置、電力変換装置の制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る電力変換装置は、少なくとも、第1のバッテリにより出力された第1バッテリ電力を、入力または設定された出力波形プロファイルに基づく第1電圧波形の第1出力電力に変換して出力する第1のコンバータと、前記第1バッテリ電力に基づく第2出力電力を生成して出力する第1の生成部と、を備え、前記第1出力電力と前記第2出力電力とを加算することで生成される交流の制御波形の第3出力電力を負荷に供給する、電力変換装置である。
【0010】
(2):上記(1)の態様において、前記第2出力電力の電圧波形は、矩形波形であるものである。
【0011】
(3):上記(2)の態様において、前記第1電圧波形は、前記制御波形から前記矩形波形を減算した電圧波形であるものである。
【0012】
(4):上記(3)の態様において、前記第1の生成部は、前記第1出力電力と前記第2出力電力との加算を制御することで正弦波の半波を生成するスイッチング部と、前記半波を反転させた前記第3出力電力を前記負荷に供給する反転部と、を備えるものである。
【0013】
(5):上記(4)の態様において、前記スイッチング部は、前記第2出力電力を前記負荷側に供給可能とする導通状態にするとともに、前記第1出力電力を前記第1のコンバータ側から前記第1の生成部側に供給不可能とする非導通状態にする第1のスイッチング素子であるものである。
【0014】
(6):上記(5)の態様において、電力変換装置は、前記第1のコンバータに並列に接続され、前記第1バッテリ電力に基づく矩形波形の第4出力電力を生成して出力する第2の生成部、をさらに備え、前記スイッチング部は、前記第4出力電力を前記負荷側に供給可能とする導通状態にするとともに、前記第1出力電力を前記第1のコンバータ側から前記第2の生成部側に供給不可能とする非導通状態にする第2のスイッチング素子、をさらに備え、前記第1出力電力と、前記第2出力電力と、前記第4出力電力とを加算することで生成される前記第3出力電力を前記負荷に供給するものである。
【0015】
(7):上記(4)の態様において、前記スイッチング部は、前記第1の生成部と前記第1のコンバータとの直列接続、あるいは並列接続を切り替える第3のスイッチング素子であるものである。
【0016】
(8):上記(7)の態様において、電力変換装置は、第2のバッテリにより出力された第2バッテリ電力に基づく矩形波形の第5出力電力を生成して出力する第3の生成部、をさらに備え、前記スイッチング部は、前記第1の生成部と前記第1のコンバータとの直列接続と、前記第3の生成部との直列接続、あるいは並列接続を切り替える第4のスイッチング素子、をさらに備え、前記第1出力電力と、前記第2出力電力と、前記第5出力電力とを加算することで生成される前記第3出力電力を前記負荷に供給するものである。
【0017】
(9):上記(4)の態様において、前記スイッチング部は、前記第1出力電力を前記負荷側に供給可能とする導通状態にするとともに、前記第2出力電力を前記第1のコンバータ側に供給不可能とする非導通状態にする第5のスイッチング素子と、前記第1の生成部と前記第1のコンバータとを接続、あるいは切断させる第6のスイッチング素子と、を備えるものである。
【0018】
(10):上記(9)の態様において、電力変換装置は、前記第1のコンバータおよび前記第1の生成部に並列に接続され、前記第1バッテリ電力に基づく第6出力電力を生成して出力する第4の生成部、をさらに備え、前記スイッチング部は、前記第6出力電力を前記負荷側に供給可能とする導通状態にするとともに、前記第1出力電力および前記第2出力電力を前記第4の生成部側に供給不可能とする非導通状態にする第7のスイッチング素子、をさらに備え、前記第1出力電力と、前記第2出力電力と、前記第6出力電力とを加算することで生成される前記第3出力電力を前記負荷に供給するものである。
【0019】
(11):この発明の一態様に係る電力変換装置の制御方法は、少なくとも、第1のバッテリにより出力された第1バッテリ電力を、入力または設定された出力波形プロファイルに基づく第1電圧波形の第1出力電力に変換して出力する第1のコンバータと、前記第1バッテリ電力に基づく第2出力電力を生成して出力する第1の生成部と、を備える電力変換装置の制御方法であって、コンピュータが、前記第1出力電力と前記第2出力電力とを加算することで生成される交流の制御波形の第3出力電力を負荷に供給するように制御する、電力変換装置の制御方法である。
【0020】
(12):この発明の一態様に係るプログラムは、少なくとも、第1のバッテリにより出力された第1バッテリ電力を、入力または設定された出力波形プロファイルに基づく第1電圧波形の第1出力電力に変換して出力する第1のコンバータと、前記第1バッテリ電力に基づく第2出力電力を生成して出力する第1の生成部と、を備える電力変換装置を制御させるプログラムであって、コンピュータに、前記第1出力電力と前記第2出力電力とを加算することで生成される交流の制御波形の第3出力電力を負荷に供給するように制御させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0021】
上述した(1)~(12)の態様によれば、電動車両における走行の特性に合致したバッテリの電力変換を好適にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る電力変換装置が採用された車両の構成の一例を示す図である。
【
図2】車両が備える電力変換装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】電力変換装置が備えるスイッチング素子の構成の一例を示す図である。
【
図5】電力変換装置において生成する電圧波形の一例を説明する図である。
【
図6】電力変換装置が備えるコンバータの構成の一例を示す図である。
【
図7】電力変換装置が備えるコンバータの構成の別の一例を示す図である。
【
図8】コンバータが備える制御部の機能構成の一例を示す図である。
【
図9】車両が備える制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図10】車両が備える制御装置において電力変換装置を制御する際に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】第1実施形態に係る電力変換装置の変形例の構成の一例を示す図である。
【
図12】変形例の電力変換装置において生成する電圧波形の一例を説明する図である。
【
図13】第2実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す図である。
【
図14】電力変換装置が備えるスイッチング素子の構成の一例を示す図である。
【
図15】車両が備える制御装置における電力変換装置の制御の一例を説明する図である。
【
図16】電力変換装置において生成する電圧波形の一例を説明する図である。
【
図17】車両が備える制御装置が電力変換装置を制御する詳細なタイミングの一例を説明する図である。
【
図18】車両が備える制御装置における電力変換装置の制御の一例を説明する図である。
【
図19】車両が備える制御装置において電力変換装置を制御する際に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図20】第2実施形態に係る電力変換装置の変形例の構成の一例を示す図である。
【
図21】変形例の電力変換装置において生成する電圧波形の一例を説明する図である。
【
図22】車両が備える制御装置における電力変換装置の制御の一例を説明する図である。
【
図23】車両が備える制御装置が電力変換装置を制御する詳細なタイミングの一例を説明する図である。
【
図24】第3実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す図である。
【
図25】車両が備える制御装置における電力変換装置の制御の一例を説明する図である。
【
図26】車両が備える制御装置が電力変換装置を制御する詳細なタイミングの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の電力変換装置、電力変換装置の制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0024】
[車両の構成]
図1は、実施形態に係る電力変換装置が採用された車両の構成の一例を示す図である。車両1は、走行用のバッテリ(二次電池)から供給される電力によって駆動される電動機(電動モータ)によって走行する電気自動車(EV:Electric Vehicle)(以下、単に、「車両」という)である。本発明が適用される車両は、例えば、四輪の車両のみならず、鞍乗り型の二輪の車両や、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)の車両、さらには、アシスト式の自転車など、走行用のバッテリから供給される電力によって駆動される電動モータによって走行する車両の全般であってもよい。車両1は、例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなど、燃料をエネルギー源とする内燃機関の稼働によって供給される電力をさらに組み合わせて走行するハイブリッド電気自動車(HEV)であってもよい。
【0025】
車両1は、例えば、走行用モータ10と、駆動輪12と、ブレーキ装置14と、減速機16と、バッテリ20と、バッテリセンサ22と、電力変換装置30と、電力センサ35と、運転操作子50と、車両センサ60と、外部接続装置80と、制御装置100と、を備える。
【0026】
走行用モータ10は、車両1の走行用の回転電機である。走行用モータ10は、例えば、三相交流電動機である。走行用モータ10の回転子(ロータ)は、減速機16に連結されている。走行用モータ10は、バッテリ20から電力変換装置30を介して供給される電力によって駆動(回転)される。走行用モータ10は、自身の回転動力を減速機16に伝達させる。走行用モータ10は、車両1の減速時の運動エネルギーを用いた回生ブレーキとして動作して発電してもよい。走行用モータ10は、特許請求の範囲における「負荷」の一例である。
【0027】
駆動輪12に配置されたブレーキ装置14は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、を備える。ブレーキ装置14は、ブレーキペダル(不図示)に対する車両1の利用者(運転者)による操作によって発生した油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてもよい。ブレーキ装置14は、上記説明した構成に限らず、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0028】
減速機16は、例えば、デファレンシャルギアである。減速機16は、駆動輪12が連結された車軸に、走行用モータ10が連結された軸の駆動力、つまり、走行用モータ10の回転動力を伝達させる。減速機16は、例えば、複数の歯車や軸が組み合わされ、変速比(ギア比)に応じて走行用モータ10の回転速度を変速して車軸に伝達させる変速機構、いわゆる、トランスミッション機構を含んでもよい。減速機16は、例えば、走行用モータ10の回転動力を車軸に直接的に連結または分離するクラッチ機構を含んでもよい。
【0029】
バッテリ20は、例えば、リチウムイオン電池などのように、充電と放電とを繰り返すことができる二次電池を蓄電部として備えるバッテリである。バッテリ20は、例えば、カセット式のバッテリパックなど、車両1に対して容易に着脱可能な構成であってもよいし、車両1に対する着脱が容易ではない据付式の構成であってもよい。バッテリ20が備える二次電池は、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ20が備える二次電池としては、例えば、鉛蓄電池、ニッケル・水素電池、ナトリウムイオン電池などの他、電気二重層キャパシタなどのキャパシタ、または二次電池とキャパシタとを組み合わせた複合電池なども考えられるが、二次電池の構成は、いかなるものであってもよい。バッテリ20は、車両1の外部の充電器(不図示)から導入される電力を蓄え(充電し)、蓄えた電力を、車両1を走行させるために放電する。バッテリ20は、電力変換装置30を介して供給された、回生ブレーキとして動作した走行用モータ10が発電した電力を蓄え(充電し)、蓄えた電力を車両1の走行(例えば、加速)のために放電する。バッテリ20は、特許請求の範囲における「第1のバッテリ」の一例であり、バッテリ20が放電する電力は、特許請求の範囲における「第1バッテリ電力」の一例である。
【0030】
バッテリ20には、バッテリセンサ22が接続されている。バッテリセンサ22は、バッテリ20の電圧や、電流、温度などの物理量を検出する。バッテリセンサ22は、例えば、電圧センサ、電流センサ、温度センサを備える。バッテリセンサ22は、電圧センサによってバッテリ20の電圧を検出し、電流センサによってバッテリ20の電流を検出し、温度センサによってバッテリ20の温度を検出する。バッテリセンサ22は、検出したバッテリ20の電圧値、電流値、温度などの情報(以下、「バッテリ情報」という)を制御装置100に出力する。
【0031】
電力変換装置30は、バッテリ20から供給(放電)された直流の電力(直流電力)を、走行用モータ10に電力を供給する際の電圧に昇圧あるいは降圧し、さらに、走行用モータ10を駆動するための交流の電力(交流電力)に変換して走行用モータ10に出力する。電力変換装置30は、回生ブレーキとして動作した走行用モータ10により発電された交流電力を直流電力に変換し、さらに、バッテリ20に充電させる際の電圧に昇圧あるいは降圧してバッテリ20に出力して蓄電させる。つまり、電力変換装置30は、例えば、DC―DCコンバータとAC―DCコンバータとを合わせたものと同様の機能、あるいはインバータと同様の機能を実現する。電力変換装置30は、バッテリ20から供給(放電)された直流電力を、例えば、緊急時などにおいて家庭用の電化製品を稼働させるためや、売電などで電力系統に供給するための交流電力に変換して外部接続装置80に出力することもできる。このとき、電力変換装置30は、電力の出力先に合わせて昇圧あるいは降圧してから出力することができる。
【0032】
[車両が備える電力変換装置の構成]
図2は、車両1が備える電力変換装置30の全体構成の一例を示す図である。
図2には、電力変換装置30に関連するバッテリ20および走行用モータ10も併せて示している。走行用モータ10が単相交流電動機である場合、一つの電力変換装置30が出力する交流電力で走行用モータ10を駆動することができるが、上述したように、走行用モータ10が三相交流電動機である場合、三相交流のそれぞれの相(U相、V相、W相)に交流電力を出力する必要がある。このため、車両1では、
図2に示したように、三つの電力変換装置30(電力変換装置30U、電力変換装置30V、および電力変換装置30W)のそれぞれが出力する交流電力で走行用モータ10を駆動する。電力変換装置30Uと、電力変換装置30Vと、電力変換装置30Wとのそれぞれは、同じ構成であってもよいし、一部の構成要素が共通化された構成であってもよい。電力変換装置30Uと、電力変換装置30Vと、電力変換装置30Wとのそれぞれは、同じ電圧波形の交流電力を出力する。このため、車両1では、例えば、それぞれの電力変換装置30が出力した交流電力を差動合成することによって、同じ電圧波形で位相が異なる(位相が120°ずれている)交流電力に変換してから、走行用モータ10に出力する。
【0033】
図1に戻り、電力変換装置30における走行用モータ10側の電力配線には、電力センサ35が取り付けられている。電力センサ35は、例えば、電力計や、電圧計、電流計などの計測器を備え、これらの計測器の計測値に基づいて、電力変換装置30が走行用モータ10に出力している電力(以下、「出力電力」という)を計測する。電力センサ35は、計測した電力変換装置30の出力電力の情報(以下、「出力電力情報」という)を制御装置100に出力する。
【0034】
運転操作子50は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステアリングホイール、ジョイスティック、その他の操作子を含む。運転操作子50には、車両1の利用者(運転者)によるそれぞれの操作子に対する操作の有無、あるいは操作量を検出するセンサが取り付けられている。運転操作子50は、センサの検出結果を、制御装置100に出力する。例えば、アクセルペダルには、アクセル開度センサが取り付けられ、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出し、検出した操作量をアクセル開度として制御装置100に出力する。例えば、ブレーキペダルには、ブレーキ踏量センサが取り付けられ、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出し、検出した操作量をブレーキ踏量として制御装置100に出力する。アクセル開度は、車両1の走行において運転者が、バッテリ20から走行用モータ10への電力の供給を制御装置100に指示(要求)するための情報である。言い換えれば、アクセル開度は、運転者によって要求された走行用モータ10に供給させる電力量を表す情報である。
【0035】
車両センサ60は、車両1の走行状態を検出する。車両センサ60は、例えば、車両1の速度を検出する車速センサや、車両1の加速度を検出する加速度センサを備える。車速センサは、車両1の速度を検出し、検出した車両1の車速の情報を制御装置100に出力する。車速センサは、例えば、車両1のそれぞれの駆動輪12に取り付けられた車輪速センサと速度計算機とを備え、車輪速センサにより検出された車輪速を統合することにより、車両1の速度(車速)を導出(検出)してもよい。加速度センサは、車両1の加速度を検出し、検出した車両1の加速度の情報を制御装置100に出力する。車両センサ60は、例えば、車両1の鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサや、車両1の向きを検出する方位センサなどを備えてもよい。この場合、それぞれのセンサは、検出した検出結果を制御装置100に出力する。
【0036】
外部接続装置80は、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子やアクセサリソケット(いわゆる、シガーソケット)などの電源供給用のコネクタ、家庭用の電化製品やパーソナルコンピュータを動作させるための商用電源のコンセント、売電を行う際に電力系統に接続するためのコネクタなどである。
【0037】
制御装置100は、運転操作子50が備えるそれぞれのセンサにより出力された検出結果、つまり、車両1の利用者(運転者)によるそれぞれの操作子に対する操作に応じて、電力変換装置30の稼働や動作を制御する。例えば、制御装置100は、アクセル開度センサが検出したアクセル開度に応じて、電力変換装置30の稼働や動作を制御する。このとき、制御装置100は、例えば、自身が制御している変速機構の変速比(ギア比)や、車両センサ60により出力された走行状態情報に含まれる車速なども考慮して、電力変換装置30の稼働や動作を制御する。言い換えれば、制御装置100は、走行用モータ10の駆動力を制御する。
【0038】
制御装置100は、例えば、バッテリ制御部や、VCU(Voltage Control Unit)制御部、PDU(Power Drive Unit)制御部、モータ制御部というような、それぞれ別体の制御装置で構成されてもよい。制御装置100は、例えば、バッテリECU(Electronic Control Unit)や、VCU-ECU、PDU-ECU、モータECUといった制御装置に置き換えられてもよい。
【0039】
制御装置100や、制御装置100を構成するバッテリ制御部と、VCU制御部と、PDU制御部と、モータ制御部とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。これらの構成要素の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予め車両1が備えるHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が車両1が備えるドライブ装置に装着されることで車両1が備えるHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0040】
制御装置100は、車両1が走行する際に、バッテリ20から走行用モータ10に供給させる交流電力の供給量や、供給する交流電力の周波数(つまり、電圧波形)を制御する。このため、制御装置100は、交流電力の供給量や電圧波形を変更するための情報を電力変換装置30に出力する。より具体的には、制御装置100は、交流電力の電圧値や、バッテリ20から直流電力を出力させるタイミング、交流の電圧波形を生成するための出力波形プロファイル、出力波形プロファイルの切り替えタイミングなどの情報を電力変換装置30に出力する。
【0041】
<第1実施形態>
[電力変換装置の構成]
図3は、第1実施形態に係る電力変換装置30の構成の一例を示す図である。
図3には、電力変換装置30に関連するバッテリ20および負荷LDも併せて示している。
図3に示した電力変換装置30は、車両1が備える走行用モータ10における三相交流のU相、V相、W相のいずれか一つの相に対応する電力変換装置30である。従って、負荷LDは、車両1が備える走行用モータ10におけるいずれかの相の誘導負荷(インダクティブロード)である。電力変換装置30は、例えば、電圧波形生成部30VGと、単相変換器30PCと、を備える。
【0042】
電圧波形生成部30VGは、バッテリ20から供給(放電)された直流電力に基づいて、正弦波の半波の電圧波形を生成する。単相変換器30PCは、電圧波形生成部30VGが生成した電圧波形の電力を負荷LDに供給する際に、偶数番目の半波を反転させることによって正弦波の電圧波形に変換する。電圧波形生成部30VGは、例えば、コンバータ300と、スイッチング素子S5と、を備える。単相変換器30PCは、例えば、四つのスイッチング素子(スイッチング素子S1~スイッチング素子S4)を備える。
図3では、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2とが、単相変換器30PCの構成要素であるものとして示しているが、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S2は、電圧波形生成部30VGに属する構成要素でもある。電圧波形生成部30VGおよび単相変換器30PCは、特許請求の範囲における「スイッチング部」の一例であり、単相変換器30PCは、特許請求の範囲における「第1の生成部」および「反転部」の一例である。
【0043】
コンバータ300は、入力または設定された出力波形プロファイルに基づいた電圧波形の出力電力を出力する。出力波形プロファイルは、例えば、制御装置100によって逐次入力あるいは設定される。出力波形プロファイルは、コンバータ300が備える制御部が逐次切り替えてもよい。コンバータ300の構成は、後述する。コンバータ300は、特許請求の範囲における「第1のコンバータ」の一例である。コンバータ300が出力する出力電力は、特許請求の範囲における「第1出力電力」の一例であり、コンバータ300が出力する出力電力の電圧波形は、特許請求の範囲における「第1電圧波形」の一例である。
【0044】
スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれは、半導体スイッチング素子である。スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれによって、負荷LDに電力を供給するスイッチング回路が構成されている。
図3では、スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれが、電界効果トランジスタ(FET:Field effect transistor)である場合の一例を示している。スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれは、例えば、制御装置100による導通状態と非導通状態との制御に応じて、負荷LDに供給される電力の方向(負荷LDを流れる電流の方向)を切り替える。制御装置100は、負荷LDの第1端a側に接続されているスイッチング素子S1と負荷LDの第2端b側に接続されているスイッチング素子S4とを同じ組として制御し、負荷LDの第1端a側に接続されているスイッチング素子S2と負荷LDの第2端b側に接続されているスイッチング素子S3とを同じ組として制御する。これにより、制御装置100が、スイッチング素子S1とスイッチング素子S4とを導通状態にし、スイッチング素子S2とスイッチング素子S3とを非導通状態にした場合、負荷LDには、第1端a側から第2端b側に電流が流れる。逆に、制御装置100が、スイッチング素子S2とスイッチング素子S3とを導通状態にし、スイッチング素子S1とスイッチング素子S4とを非導通状態にした場合、負荷LDには、第2端b側から第1端a側に電流が流れる。これにより、コンバータ300から出力電力が出力されていない場合には、スイッチング回路により出力された電力の電圧波形(以下、「スイッチング波形」という)が負荷LDに供給される。スイッチング回路により出力されるスイッチング波形は、スイッチング期間中に電圧波形が変動(電圧値が変動)するが、仮にスイッチング期間中の変動がないものとする(一定の電圧値とする)と、その電力の電圧波形は、矩形波形に相当するものである。以下の説明においては、矩形波形に相当するスイッチング波形を、「矩形スイッチング波形」という。このとき、例えば、制御装置100は、スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれを導通状態と非導通状態とに制御するタイミングを、三相交流の他の相に対応する電力変換装置30が備えるスイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれを導通状態と非導通状態とに制御するタイミングとずらすことによって、負荷LDに供給される矩形スイッチング波形の電力の位相を異ならせる(位相が120°ずらす)ようにしてもよい。スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれの構成は、特許請求の範囲における「第1の生成部」の一例であり、スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれの構成により負荷LDに供給される電圧波形が矩形波形の電力は、特許請求の範囲における「第2出力電力」の一例である。さらに、スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のそれぞれの構成は、特許請求の範囲における「反転部」の一例でもある。
【0045】
スイッチング素子S5は、コンバータ300から出力される出力電力が供給される方向を制限する。
図3では、スイッチング素子S5が、ダイオードとスイッチとで構成されている場合の一例を示している。スイッチング素子S5は、例えば、制御装置100による制御に応じて、コンバータ300から出力される出力電力が供給される方向を制限する。制御装置100は、車両1の走行のために走行用モータ10を駆動させる場合、スイッチング素子S5が備えるスイッチを非導通状態に制御する。これにより、スイッチング素子S5は、コンバータ300から出力される出力電力が負荷LD側(つまり、走行用モータ10)に供給されるのを許容し、コンバータ300から出力される出力電力がバッテリ20の正極側に供給されるのを阻止する。一方、制御装置100は、走行用モータ10が回生ブレーキとして動作して発電した電力をバッテリ20に充電させる場合、スイッチング素子S5が備えるスイッチを導通状態に制御する。これにより、スイッチング素子S5は、負荷LDから出力される出力電力がバッテリ20の正極側に供給されるのを許容する。
【0046】
スイッチング素子S5の構成は、
図3に示した構成に限らない。
図4は、電力変換装置30が備えるスイッチング素子S5の構成の一例を示す図である。
図4の(a)に示したスイッチング素子S5aは、
図3に示したダイオードDとスイッチSWとの構成である。
図4の(b)に示したスイッチング素子S5bは、電界効果トランジスタFETで構成されている場合の一例である。
図4の(c)に示したスイッチング素子S5cは、ダイオードDと絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)とで構成されている場合の一例である。
図4の(b)に示したスイッチング素子S5bが備える電界効果トランジスタFET、および
図4の(c)に示したスイッチング素子S5cが備える絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTのオン状態およびオフ状態は、
図4の(a)に示したスイッチング素子S5aが備えるスイッチSWと同様に、例えば、制御装置100によって制御される。スイッチング素子S5は、特許請求の範囲における「スイッチング部」および「第1のスイッチング素子」の一例である。
【0047】
[電力変換装置が生成する電圧波形]
図5は、電力変換装置30において生成する電圧波形の一例を説明する図である。
図5には、スイッチング素子S5が電界効果トランジスタFETで構成されている場合(
図4の(b)参照)の電力変換装置30の一例を示している。
図5には、関連するバッテリ20および負荷LDも併せて示した電力変換装置30の構成図に、それぞれの箇所での電圧波形の一例を示している。
【0048】
電力変換装置30では、制御装置100によるスイッチング回路(スイッチング素子S1~スイッチング素子S4)の制御に従って、
図5の(a)に示したような電圧波形が矩形スイッチング波形の電力E1を生成する。つまり、電力変換装置30においてスイッチング回路は、制御装置100からの制御に従って、負荷LDである走行用モータ10を駆動させる周波数の矩形スイッチング波形の電力E1を生成して出力する。より具体的には、制御装置100による所定の周期での制御に従って、オン保持期間Phにおいてバッテリ20が放電する直流電力の電圧値(
図5の(a)では200[V])を保持し、スイッチング期間Ps1およびスイッチング期間Ps2において電圧値が0[V]と200[V]との間で変動するような矩形スイッチング波形の電力E1を生成する。
図5の(a)に示した矩形スイッチング波形の電力E1は、コンバータ300から出力電力が出力されていない、つまり、制御装置100が電力変換装置30の動作を停止させている場合にスイッチング回路が生成する電圧波形である。
図5の(a)に示した電力E1の電圧波形は、車両1を走行させる場合において負荷LDに電力を供給する際に、電流経路P1を通って負荷LDに電力が供給される場合の一例である。電流経路P2を通って負荷LDに電力が供給される場合の電力E1の電圧波形は、
図5の(a)に示した電力E1の電圧波形を反転させたものと等価である。
【0049】
電力変換装置30では、制御装置100によりコンバータ300の動作が開始されると、コンバータ300は、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルに基づいて、
図5の(b)に示したような電圧波形の出力電力E2を生成して出力する。制御装置100が入力または設定する出力波形プロファイルは、走行用モータ10を駆動させる周波数の正弦波の半波から、スイッチング回路が出力する電力E1の電圧波形を減算した電圧波形を生成するためのものである。より具体的には、出力波形プロファイルは、第1~第3の三つの出力波形プロファイルにより構成される。第1出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値が、バッテリ20が放電する直流電力の電圧値(以下、「直流電圧値」という)よりも低いスイッチング期間Ps1の期間において、出力電力E2の電圧値をゼロの状態にさせるプロファイルである。第2出力波形プロファイルは、オン保持期間Phの期間において、出力電力E2の電圧値がゼロの状態から正弦波の半波と同様に上昇させ、出力電力E2の電圧値と直流電圧値とが等しくなったときから正弦波の半波と同様に下降させるプロファイルである。第3出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値がゼロになったときに、スイッチング期間Ps2の期間において、出力電力E2の電圧値をゼロの状態を維持させるプロファイルである。制御装置100は、スイッチング回路を制御するタイミングに合わせて、これらの三つの出力波形プロファイルをコンバータ300に順次入力または設定することにより、
図5の(b)に示したような電圧波形の出力電力E2をコンバータ300から出力させる。
【0050】
電力変換装置30では、スイッチング素子S5の負荷LD側で、電力E1とコンバータ300が出力した出力電力E2とが合わされる。つまり、電力変換装置30では、スイッチング素子S5の負荷LD側で、電力E1の電圧波形と出力電力E2の電圧波形とが波形合成される。これにより、
図5の(c)に示したように、バッテリ20が放電する直流電圧値の2倍の電圧値(
図5の(c)では400[V])であり、電圧波形が、スイッチング期間Ps1およびスイッチング期間Ps2の期間では、矩形スイッチング波形であり、オン保持期間Phの期間では、矩形スイッチング波形(電圧値=200[V])を基準として正弦波の半波が波形合成された合成波形の電力が負荷LDの端子に供給される。より具体的には、電流経路P1で負荷LDに電力を供給する場合には第2端b側に、電流経路P2で負荷LDに電力を供給する場合には第1端a側に、直流電圧値の2倍の電圧値の電力が供給される。
【0051】
ところで、電力変換装置30では、
図5の(a)に示したような矩形スイッチング波形の電力E1を生成するために、制御装置100がスイッチング回路を制御している。このため、負荷LDに流れる電流の方向は、電流経路P1で負荷LDに電力を供給する場合と、電流経路P2で負荷LDに電力を供給する場合とで逆向きになる。これにより、負荷LDには、
図5の(d)に示したように、電圧波形が走行用モータ10を駆動させる周波数の正弦波(全波)の電力が供給される。これにより、走行用モータ10は、供給された正弦波の電力によって駆動(回転)する。正弦波(全波)の電力は、特許請求の範囲における「第3出力電力」の一例であり、正弦波(全波)の電圧波形は、特許請求の範囲における「制御波形」の一例である。
【0052】
[コンバータの構成]
図6および
図7は、電力変換装置30が備えるコンバータ300の構成の一例を示す図である。
図6に示したコンバータ300は、例えば、DC―DCコンバータ302と、制御部304と、を備える。
図6には、昇降圧チョッパ390がDC―DCコンバータ302に接続されている構成を示している。
図7に示した別の構成のコンバータ300(以下、「コンバータ300a」という)は、例えば、DC―DCコンバータ302aと、制御部304と、を備える。
図7には、バック・ブースト・コンバータ392がDC―DCコンバータ302aに接続されている構成を示している。
【0053】
DC―DCコンバータ302は、それぞれ四つの電界効果トランジスタFETがブリッジ接続された1次側フルブリッジ回路と2次側フルブリッジ回路との間にトランスTが接続された、ブリッジタイプの双方向絶縁型DC―DCコンバータである。DC―DCコンバータ302aは、それぞれ二つ電界効果トランジスタFETが直列接続された1次側回路と2次側回路との間にトランスTが接続された、プッシュプルタイプの双方向絶縁型DC―DCコンバータである。DC―DCコンバータ302およびDC―DCコンバータ302aの構成や動作は、既存の双方向絶縁型DC―DCコンバータの構成や動作と等価であるため、詳細な説明は省略する。
【0054】
昇降圧チョッパ390と、バック・ブースト・コンバータ392とのそれぞれは、走行用モータ10が回生ブレーキとして動作したときに、走行用モータ10が発電した電力をバッテリ20に充電させる際の電圧に昇圧あるいは降圧させるための構成の一例である。
図6に示したコンバータ300において、昇降圧チョッパ390の代わりにバック・ブースト・コンバータ392がDC―DCコンバータ302に接続されてもよい。
図7に示したコンバータ300aにおいて、バック・ブースト・コンバータ392の代わりに昇降圧チョッパ390がDC―DCコンバータ302aに接続されてもよい。走行用モータ10が発電した電力をバッテリ20に充電させる際の電圧に昇圧あるいは降圧させる構成は、昇降圧チョッパ390やバック・ブースト・コンバータ392に限らない。昇降圧チョッパ390およびバック・ブースト・コンバータ392の構成や動作は、既存の昇降圧回路の構成や動作と等価であるため、詳細な説明は省略する。
【0055】
制御部304は、制御装置100からの制御に応じて、DC―DCコンバータ302やDC―DCコンバータ302aが備えるそれぞれの電界効果トランジスタFETのオン状態およびオフ状態を制御する。さらに、制御部304は、制御装置100からの制御に応じて、昇降圧チョッパ390やバック・ブースト・コンバータ392が備えるそれぞれの電界効果トランジスタFETのオン状態およびオフ状態を制御する。制御部304は、それぞれの電界効果トランジスタFETのゲートを駆動するためのゲート駆動信号を生成する。
図6および
図7では、制御部304が、昇降圧チョッパ390やバック・ブースト・コンバータ392が備える電界効果トランジスタFETを制御する構成を示しているが、昇降圧チョッパ390やバック・ブースト・コンバータ392が備える電界効果トランジスタFETは、制御部304と連系して動作する他の制御部(不図示)が制御してもよい。
【0056】
[制御部の構成]
図8は、コンバータ300が備える制御部304の機能構成の一例を示す図である。以下の説明においては、
図8に示した制御部304が、コンバータ300が備える制御部304であるものとする。
図8には、制御部304におけるDC―DCコンバータ302の制御機能に関する構成を示している。制御部304は、例えば、乗算器3042と、フィードバック部3044と、比較部3046と、ゲート駆動信号生成部3048と、を備える。
【0057】
乗算器3042は、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルの指令値と、制御装置100により入力された振幅係数指令値とを乗算して、DC―DCコンバータ302から出力させる電圧値を求める。
図8には、(a)~(f)に出力波形プロファイルの一例を示している。乗算器3042は、
図8の(a)~(f)に示したような出力波形プロファイルに応じた電圧波形となるような出力波形プロファイルの指令値と、サンプリングタイミングごとの振幅係数指令値とを乗算して、DC―DCコンバータ302から出力させる電圧値を求める。振幅係数指令値は、コンバータ300に出力させる出力電力の目標値である。
【0058】
フィードバック部3044は、制御装置100により入力された電圧フィードバック情報に基づいてフィードバック制御を行う。フィードバック部3044は、フィードバック制御によって、DC―DCコンバータ302から出力されている現在の電圧値を、乗算器3042が求めた電圧値に近づけるための電圧制御パルスを生成する。フィードバック部3044におけるフィードバック制御は、例えば、P(比例:Proportional)、I(積分:Integral)、D(微分:Differential)のそれぞれの制御を組み合わせたPID制御である。フィードバック部3044におけるフィードバック制御は、PID制御に限らず、他のフィードバック制御の方法であってもよい。
【0059】
比較部3046は、制御装置100により入力された変調波生成情報に応じた変調アルゴリズムで、フィードバック部3044が生成した電圧制御パルスを変調する。比較部3046は、例えば、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)や、パルス密度変調(PDM:Pulse Density Modulation)、Δ-Σ変調などの変調アルゴリズムで、電圧制御パルスを変調する。変調波生成情報は、これらの変調アルゴリズムを指定する情報である。比較部3046は、電圧制御パルスを変調した変調信号を出力する。
【0060】
ゲート駆動信号生成部3048は、比較部3046が変調した変調信号に基づいて、DC―DCコンバータ302が備えるそれぞれの電界効果トランジスタFETのゲート端子に入力するゲート駆動信号を生成する。これにより、電力変換装置30が備えるそれぞれの電界効果トランジスタFETは、入力されたゲート駆動信号に応じてオン状態またはオフ状態になり、DC―DCコンバータ302から、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルに応じた、走行用モータ10を駆動させる周波数に対応する電圧波形(
図5の(b)参照)の出力電力が出力される。
【0061】
[制御装置の構成]
ここで、車両1が備える制御装置100の構成の一例について説明する。
図9は、車両1が備える制御装置100の構成の一例を示す図である。
図9には、電力変換装置30に関連する制御装置100の構成を示している。制御装置100は、例えば、出力決定部102と、出力波形プロファイル決定部104と、コンバータ制御部106と、スイッチング制御部108と、を備える。
【0062】
出力決定部102は、バッテリセンサ22により出力されたバッテリ情報と、電力センサ35により出力された出力電力情報と、運転操作子50により出力されたアクセル開度とに基づいて、走行用モータ10に出力する電力を決定する。
【0063】
出力波形プロファイル決定部104は、出力決定部102が決定した走行用モータ10に出力する電力に基づいて、コンバータ300に設定する出力波形プロファイルを決定する。
【0064】
コンバータ制御部106は、出力決定部102が決定した走行用モータ10に出力する電力と、出力波形プロファイル決定部104が決定した出力波形プロファイルとに基づいて、コンバータ300を制御する。つまり、コンバータ制御部106は、コンバータ300が備える制御部304に、それぞれの指令値や情報を出力する。
図9には、コンバータ制御部106が制御部304に出力する指令値や情報を、コンバータ制御信号として示している。
【0065】
スイッチング制御部108は、出力決定部102が決定した走行用モータ10に出力する電力に基づいて、電力変換装置30が備えるそれぞれのスイッチング素子を制御する。つまり、スイッチング制御部108は、スイッチング素子S1~スイッチング素子S4、およびスイッチング素子S5のそれぞれに、導通状態と非導通状態とを制御するための駆動信号を出力する。
図9には、スイッチング制御部108がスイッチング素子S1に出力するS1駆動信号、スイッチング素子S2に出力するS2駆動信号、スイッチング素子S3に出力するS3駆動信号、スイッチング素子S4に出力するS4駆動信号、およびスイッチング素子S5に出力するS5駆動信号のそれぞれを示している。
【0066】
[制御装置の処理]
図10は、車両1が備える制御装置100において電力変換装置30を制御する際に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、車両1が走行している間、繰り返し実行される。
【0067】
出力決定部102は、運転操作子50により出力されたアクセル開度を取得する(ステップS100)。出力決定部102は、バッテリセンサ22により出力されたバッテリ情報を取得する(ステップS110)。出力決定部102は、電力センサ35により出力された出力電力情報を取得する(ステップS120)。そして、出力決定部102は、取得したそれぞれの情報に基づいて、走行用モータ10に出力する電力を決定する(ステップS130)。
【0068】
出力波形プロファイル決定部104は、出力決定部102が決定した走行用モータ10に出力する電力に基づいて、出力波形プロファイルを決定する(ステップS140)。
【0069】
コンバータ制御部106は、出力波形プロファイル決定部104が決定した出力波形プロファイルを、コンバータ300に設定する(ステップS150)。より具体的には、コンバータ制御部106は、出力波形プロファイルの指令値を制御部304に出力する。コンバータ制御部106は、出力決定部102が決定した走行用モータ10に出力する電力に基づいて振幅係数指令値を決定し、決定した振幅係数指令値を制御部304に出力する(ステップS160)。コンバータ制御部106は、出力決定部102は取得した出力電力情報に基づいて、電力変換装置30が走行用モータ10に出力している電力を調整するための調整値を求め、求めた調整値を表す電圧フィードバック情報を制御部304に出力する(ステップS170)。コンバータ制御部106は、コンバータ300が備えるそれぞれの電界効果トランジスタFETに出力するゲート駆動信号を変調するための変調方法(変調アルゴリズム)を決定し、決定した変調方法を表す変調波生成情報を制御部304に出力する(ステップS180)。
【0070】
スイッチング制御部108は、出力決定部102が決定した走行用モータ10に出力する電力に基づいて、電力変換装置30が備えるそれぞれのスイッチング素子を制御するための駆動信号を生成し、生成した駆動信号を対応するそれぞれのスイッチング素子Sに出力する(ステップS190)。そして、制御装置100は、今回の処理を終了し、再度、ステップS100から処理を繰り返す。
【0071】
このような処理の流れによって、制御装置100は、アクセル開度、バッテリ情報、および出力電力情報に基づいて走行用モータ10に出力する電力を決定し、決定した電力が走行用モータ10に供給されるように、電力変換装置30を制御する。これにより、電力変換装置30は、制御装置100が出力したそれぞれの指令値や情報に従った動作をして、走行用モータ10に電力を供給する。これにより、車両1は、走行用モータ10の駆動力(回転動力)によって走行する。
【0072】
このような構成によって、電力変換装置30は、制御装置100による制御に応じて、バッテリ20から供給(放電)された直流電力を、走行用モータ10を駆動するための交流電力に変換して走行用モータ10に出力する。しかも、電力変換装置30は、バッテリ20からの直流電力を昇圧して走行用モータ10に出力する際に、
図5に示したようにバッテリ20が放電した直流電力に基づく電圧波形が矩形スイッチング波形の電力E1に、バッテリ20が放電した直流電力から出力波形プロファイルに基づいて生成した電圧波形の出力電力E2を波形合成した電力を、走行用モータ10に出力する。言い換えれば、従来のインバータを用いた電力変換装置では、インバータの後段に昇圧チョッパなどを設ける必要があった、つまり、コンバータを2段で構成する必要があったことを、電力変換装置30では、コンバータ300を備える、つまり、1段のコンバータを備えるのみで実現することができる。このため、電力変換装置30では、仮に従来のインバータとコンバータ300とにおける電力の変換効率の低下率が同じであったとしても、2段のコンバータで構成する従来の構成よりも、電力の変換効率の低下を抑えることができる。より具体的には、例えば、インバータとコンバータ300とにおける電力の変換効率がともに98%であった場合、従来のインバータを用いた電力変換装置では、全体の変換効率は98%となる。従来の電力変換装置において2段のコンバータを用いた場合には、全体の変換効率がさらに低下して96%となる。これに対して電力変換装置30では、バッテリ20の直流電力を単純にスイッチングしたのみであるため、変換効率はほぼ100%ということができる電力E1と、コンバータ300が出力する変換効率が98%の出力電力E2とを合わせる。このため、電力変換装置30では、電力E1と出力電力E2との割合が半分ずつであるとすると、全体の変換効率は99%となる。このように、電力変換装置30では、インバータを用いた、インバータに昇圧チョッパを直列に接続した従来の電力変換装置よりも、全体の変換効率は高くなる、つまり、電力の変換効率の低下を抑えることができる。
【0073】
電力変換装置30では、
図5に示したように、波形合成をすることによって、バッテリ20が放電する直流電圧値の2倍の電圧値の電力を走行用モータ10に供給することができる。例えば、従来のインバータを用いた電力変換装置では、走行用モータ10に供給する電圧値が400[V]である場合には、同じ電圧値の電力を放電するバッテリに対応するために、例えば2倍の高耐圧の部品を用いてインバータを構成する必要があったが、電力変換装置30では、200[V]の電圧値(1/2の電圧値)の電力を放電するバッテリに対応する構成にすればよく、従来よりも耐圧が低い部品を用いて構成することができる。このため、電力変換装置30では、高耐圧の部品を用いることによる損失の増大も抑えることができる。そして、電力変換装置30では、構成するそれぞれの部品に印加する電圧が従来よりも低くなるため、例えば、絶縁部材やトランスの巻線などのそれぞれの部品の劣化も抑えることができる。
【0074】
さらに、電力変換装置30では、コンバータ300が、出力波形プロファイルに基づいて、正弦波(正弦波の半波)を再現するための電圧波形の出力電力E2(
図5の(b)参照)を生成するため、従来のインバータにおける電力変換のように高調波が発生してしまうことがない。このため、電力変換装置30では、走行用モータ10に供給する交流電力の交流波形が歪むことなく、雑音や、トルクリップル、鉄損などの特性に影響を与えてしまうことがない。
【0075】
従来のインバータを用いた電力変換装置においても、インバータの後段に設けた昇圧チョッパのさらに後段に、例えば、LCフィルタなどのような平滑フィルタを設けることにより、高調波の発生を抑える構成にすることもできる。しかしながら、LCフィルタは、定数を可変にする構成を実現することが困難であり、電圧波形が低周波数である場合や電力容量が大きい場合には、物理的なサイズが大型化してしまう。このため、従来のインバータを用いた電力変換装置において発生する高調波の対策のためにLCフィルタを設ける構成は、定電圧定周波(CVCF:Constant Voltage Constant Frequency)電源などのように一定の状態に電力を変換するシステムへの適用に向いている構成であり、車両1のように、走行用モータ10を駆動(回転)させる際に供給する正弦波の電力の周波数の範囲が広い、可変電圧可変周波数(VVVF:Variable Voltage Variable Frequency)電源のシステムへの適用には向いていない。これは、車両1では、停止している状態から発進する場合には、走行用モータ10の回転数がゼロの状態から高いトルクを発生させ、最高速度で走行させる場合には、走行用モータ10を高い回転数で駆動させるため、走行用モータ10を駆動させる電力の電圧波形を低周波数から高周波数までの広い範囲で変更可能とする必要があるからである。LCフィルタを設けた従来のインバータを、電力変換装置として車両1に適用することもできるが、この場合には、上述したように、走行用モータ10に供給する必要がある電力の周波数の範囲が広いため、LCフィルタの物理的なサイズを大きくせざるを得なくなる。さらに、バッテリ20から供給(放電)された直流電力を、例えば、緊急時などにおいて家庭用の電化製品を稼働させるためや、売電などで電力系統に供給するための交流電力に変換することを含めて考えると、従来のインバータを用いた電力変換装置のようにLCフィルタを設ける必要がなく、直接的に電力を供給することができる電力変換装置30の構成は、より有効な構成であるといえる。
【0076】
このように、電力変換装置30では、従来のインバータを用いた電力変換装置よりも効率よく、電力変換をすることができる。
【0077】
電力変換装置30では、スイッチング素子S1~スイッチング素子S4で構成されるスイッチング回路が、バッテリ20が放電した直流電力に基づいて、負荷LDである走行用モータ10を駆動させる周波数の矩形スイッチング波形の電力E1を生成する構成であるものとして説明した。しかし、電力変換装置30を、例えば、スイッチング素子S1~スイッチング素子S4で構成されるスイッチング回路とは異なる他のスイッチング回路を備える構成とし、この不図示のスイッチング回路が、バッテリ20が放電した直流電力に基づく矩形スイッチング波形の電力E1を生成するようにしてもよい。
【0078】
[第1実施形態の変形例]
上述した電力変換装置30では、一つのコンバータ300を備える電力変換装置30の構成について説明した。このため、上述した電力変換装置30は、バッテリ20から供給(放電)された直流電圧値の2倍の電圧値の電力を走行用モータ10に供給することができる構成であった。しかし、走行用モータ10に供給する必要がある電力の電圧値は、さらに高い場合も考えられる。この場合、電力変換装置30は、コンバータ300をさらに備える構成にすることによって、より高い電圧値の電力を走行用モータ10に供給する構成にすることもできる。以下に、この場合の一例について説明する。
【0079】
[電力変換装置の構成の変形例]
図11は、第1実施形態に係る電力変換装置30の変形例の構成の一例を示す図である。
図11に示した変形例の電力変換装置30も、車両1が備える走行用モータ10における三相交流のU相、V相、W相のいずれか一つの相に対応する電力変換装置30である。
図11には、変形例の電力変換装置30(以下、「電力変換装置30a」という)に関連するバッテリ20および負荷LDも併せて示している。電力変換装置30aは、例えば、電圧波形生成部30aVGと、単相変換器30PCと、を備える。
図11でも、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2とが、単相変換器30PCの構成要素であるものとして示しているが、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S2は、電圧波形生成部30aVGに属する構成要素でもある。
【0080】
電圧波形生成部30aVGは、電圧波形生成部30VGと同様に、バッテリ20から供給(放電)された直流電力に基づいて、正弦波の半波の電圧波形を生成する。電圧波形生成部30aVGは、例えば、二つのコンバータ300(コンバータ300およびコンバータ300-2)と、二つのスイッチング素子S(スイッチング素子S5およびスイッチング素子S6)と、を備える。電圧波形生成部30aVGは、電圧波形生成部30VGにコンバータ300-2とスイッチング素子S6とが追加された構成である。
【0081】
コンバータ300-2は、コンバータ300と同じ構成のコンバータである。ただし、コンバータ300-2には、コンバータ300と異なる出力波形プロファイルが制御装置100により入力または設定される。コンバータ300-2は、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルに基づいて、電圧波形が、単相変換器30PC(スイッチング素子S1~スイッチング素子S4)が生成する矩形スイッチング波形における矩形波形に相当する部分とは波形が変化するタイミングが異なり(つまり、矩形波形における電圧値が0[V]である期間と200[V]である期間、いわゆる、デューティ比が異なり)、スイッチング期間に電圧値を0[V]で保持する電圧波形の出力電力(矩形波形の出力電力)を出力する。コンバータ300-2は、特許請求の範囲における「第2の生成部」の一例であり、コンバータ300-2が出力する出力電力は、特許請求の範囲における「第4出力電力」の一例である。
【0082】
スイッチング素子S6は、例えば、制御装置100による制御に応じて、コンバータ300-2から出力される出力電力が供給される方向を制限する。スイッチング素子S6は、スイッチング素子S5と同じ構成のスイッチング素子Sである。制御装置100によりスイッチが非導通状態に制御されると、スイッチング素子S6は、コンバータ300-2から出力される出力電力が負荷LD側に供給されるのを許容し、コンバータ300-2から出力される出力電力がバッテリ20の正極側に供給されるのを阻止する。一方、制御装置100によりスイッチが導通状態に制御されると、スイッチング素子S6は、負荷LDから出力される出力電力がバッテリ20の負極側に供給されるのを許容する。
図11では、スイッチング素子S6が、ダイオードとスイッチとで構成されている場合の一例を示しているが、スイッチング素子S5と同様に、電界効果トランジスタFETや、ダイオードDと絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTとで構成されてもよい(
図4参照)。スイッチング素子S6は、特許請求の範囲における「スイッチング部」および「第2のスイッチング素子」の一例である。
【0083】
[変形例の電力変換装置が生成する電圧波形]
図12は、変形例の電力変換装置30aにおいて生成する電圧波形の一例を説明する図である。
図12には、バッテリ20から供給(放電)された直流電圧値が200[V]である場合において、制御装置100による制御に従って、電力変換装置30aが備えるスイッチング回路(スイッチング素子S1~スイッチング素子S4)、コンバータ300、およびコンバータ300-2のそれぞれが出力する電力の電圧波形を波形合成する様子の一例を模式的に示している。
【0084】
電力変換装置30aにおいてスイッチング回路は、制御装置100からの制御に従って、
図12の(a)に示したような、負荷LDである走行用モータ10を駆動させる周波数の矩形スイッチング波形の電力E1を生成して出力する。より具体的には、スイッチング回路は、スイッチング期間Ps1およびスイッチング期間Ps2において電圧波形が変動(電圧値が変動)し、オン保持期間Phにおいてバッテリ20が放電する直流電圧値を保持するような矩形スイッチング波形の電力E1を生成する。
【0085】
電力変換装置30aでは、制御装置100によりコンバータ300-2の動作が開始されると、コンバータ300-2は、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルに基づいて、
図12の(b)に示したような電圧波形の出力電力E3を生成して出力する。制御装置100がコンバータ300-2に入力または設定する出力波形プロファイル(以下、「出力波形プロファイル-2」という)は、直流電圧値を保持する期間が、スイッチング回路が出力する電力E1において直流電圧値を保持するオン保持期間Phよりも短いオン保持期間Ph2となる矩形波形の電圧波形を生成するためのものである。より具体的には、出力波形プロファイル-2は、第1~第3の三つの出力波形プロファイル-2により構成される。第1出力波形プロファイル-2は、スイッチング期間Ps1およびスイッチング期間Ps3の期間において、出力電力E3の電圧値が0[V]となるプロファイルである。第2出力波形プロファイル-2は、オン保持期間Ph2の期間において、出力電力E3の電圧値が直流電圧値(200[V])と等しくなるプロファイルである。第3出力波形プロファイル-2は、スイッチング期間Ps4およびスイッチング期間Ps2の期間において、出力電力E3の電圧値が0[V]となるプロファイルである。制御装置100は、スイッチング回路を制御するタイミングに合わせて、これらの三つの出力波形プロファイル-2をコンバータ300-2に順次入力または設定することにより、
図12の(b)に示したような電圧波形の出力電力E3をコンバータ300-2から出力させる。
【0086】
電力変換装置30aでは、制御装置100によりコンバータ300の動作が開始されると、コンバータ300は、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルに基づいて、
図12の(c)に示したような電圧波形の出力電力E2を生成して出力する。制御装置100がコンバータ300に入力または設定する出力波形プロファイルは、走行用モータ10を駆動させる周波数の正弦波の半波から、スイッチング回路が出力する電力E1の電圧波形と、コンバータ300-2が出力する出力電力E3の電圧波形とを減算した電圧波形を生成するためのものである。より具体的には、出力波形プロファイルは、第1~第7の七つの出力波形プロファイルにより構成される。第1出力波形プロファイルは、スイッチング期間Ps1の期間において、出力電力E2の電圧値をゼロの状態にさせるプロファイルである。第2出力波形プロファイルは、スイッチング期間Ps3の期間において、正弦波の半波に沿って出力電力E2の電圧値をゼロの状態から上昇させるプロファイルである。第3出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値と直流電圧値とが等しくなったときに、出力電力E2の電圧値をゼロにさせるプロファイルである。第4出力波形プロファイルは、オン保持期間Ph2の期間において、出力電力E2の電圧値がゼロの状態から正弦波の半波と同様に上昇させ、出力電力E2の電圧値と直流電圧値とが等しくなったときから正弦波の半波と同様に下降させるプロファイルである。第5出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値がゼロになったときに、出力電力E2の電圧値を直流電圧値と等しくさせるプロファイルである。第6出力波形プロファイルは、スイッチング期間Ps4の期間において、出力電力E2の電圧値が直流電圧値と等しい状態から正弦波の半波に沿って出力電力E2の電圧値をゼロの状態まで下降させるプロファイルである。第7出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値がゼロになったときに、スイッチング期間Ps2の期間において、出力電力E2の電圧値をゼロの状態を維持させるプロファイルである。制御装置100は、スイッチング回路を制御するタイミングに合わせて、これらの七つの出力波形プロファイルをコンバータ300に順次入力または設定することにより、
図12の(c)に示したような電圧波形の出力電力E2をコンバータ300から出力させる。
【0087】
電力変換装置30aでは、スイッチング素子S5およびスイッチング素子S6の負荷LD側で、電力E1の電圧波形と、出力電力E2の電圧波形と、出力電力E3の電圧波形とが波形合成される。これにより、
図12の(d)に示したように、バッテリ20が放電する直流電圧値の3倍の電圧値(
図12の(d)では600[V])であり、電圧波形が、スイッチング期間Ps1およびスイッチング期間Ps2の期間では、矩形スイッチング波形であり、スイッチング期間Ps3、オン保持期間Ph2、およびスイッチング期間Ps4の期間では、矩形スイッチング波形(電圧値=200[V])を基準として正弦波の半波が波形合成された合成波形の電力が負荷LDの端子に供給される。そして、電力変換装置30aでも、スイッチング回路の動作(スイッチング動作)によって、負荷LDに流れる電流の方向が、例えば、負荷LDに供給された電力の電圧波形が偶数番目の半波のときに反転され、負荷LDには、
図12の(e)に示したような、走行用モータ10を駆動させる周波数の正弦波(全波)の電圧波形の電力が供給される。これにより、走行用モータ10は、供給された正弦波の電力によって駆動(回転)する。
【0088】
このような構成によって、電力変換装置30aは、制御装置100による制御に応じて、バッテリ20から供給(放電)された直流電力の電圧を3倍に昇圧した交流電力に変換して、走行用モータ10に供給することができる。この場合も、電力変換装置30aは、電力変換装置30と同様に、従来のインバータを用いた電力変換装置よりも、電力の変換効率の低下や、高耐圧の部品を用いることによる損失の増大、部品の劣化を抑えた電力変換をすることができる。
【0089】
上述した第1実施形態の変形例では、コンバータ300-2およびスイッチング素子S6をコンバータ300に追加する、言い換えれば、コンバータ300-2を積み上げる構成によって、バッテリ20の直流電力の電圧を3倍に昇圧する場合について説明した。電力変換装置30では、同様に、コンバータ300およびスイッチング素子Sを積み上げることによって、さらにバッテリ20の直流電力の電圧を昇圧する倍数を増やす(4倍以上にする)こともできる。この場合における電力変換装置30の構成、動作、および処理などは、上述した電力変換装置30aの構成、動作、および処理と等価なものになるようにすればよい。
【0090】
<第2実施形態>
[電力変換装置の構成]
図13は、第2実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す図である。
図13に示した第2実施形態の電力変換装置(以下、「電力変換装置31」という)も、第1実施形態の電力変換装置30と同様に、車両1が備える走行用モータ10における三相交流のU相、V相、W相のいずれか一つの相に対応する電力変換装置である。
図13には、電力変換装置31に関連するバッテリ20も併せて示し、第1実施形態において示した負荷LD(スイッチング素子S1~スイッチング素子S4も含む)は省略して示している。つまり、
図13には、第1実施形態の電力変換装置30における電圧波形生成部30VGに相当する構成を示している。電圧波形生成部31VGは、第1実施形態の電力変換装置30と同様に、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S2が構成要素として属する構成であってもよい。
【0091】
電力変換装置31も、バッテリ20から供給(放電)された直流電力に基づいて、正弦波の半波の電圧波形を生成する。電力変換装置31は、例えば、コンバータ300と、四つのスイッチング素子(スイッチング素子S11~スイッチング素子S14)を備える。
【0092】
スイッチング素子S11は、例えば、制御装置100による制御に応じて、コンバータ300から出力される出力電力が供給される方向を制限する。
図13では、スイッチング素子S11が、ダイオードとスイッチとで構成されている場合の一例を示している。制御装置100が、スイッチング素子S11が備えるスイッチを非導通状態に制御すると、スイッチング素子S11は、コンバータ300から出力される出力電力が負荷LD側(つまり、走行用モータ10)に供給されるのを許容する。一方、制御装置100が、スイッチング素子S11が備えるスイッチを導通状態に制御すると、スイッチング素子S11は、負荷LDから出力される出力電力がコンバータ300側に供給されるのを許容する。
【0093】
スイッチング素子S12は、例えば、制御装置100による制御に応じて、コンバータ300から出力される出力電力が供給される方向を制限する。
図13では、スイッチング素子S12が、ダイオードとスイッチとで構成されている場合の一例を示している。制御装置100が、スイッチング素子S12が備えるスイッチを非導通状態に制御すると、スイッチング素子S12は、コンバータ300から出力される出力電力がバッテリ20の負極側に供給されるのを阻止する。一方、制御装置100が、スイッチング素子S12が備えるスイッチを導通状態に制御すると、スイッチング素子S12は、コンバータ300から出力される出力電力がバッテリ20の負極側に供給されるのを許容する。
【0094】
スイッチング素子S13は、バッテリ20の正極側と負荷LD側との接続を切り替える。
図13では、スイッチング素子S13が、スイッチで構成されている場合の一例を示している。制御装置100が、スイッチング素子S13が備えるスイッチを非導通状態に制御すると、スイッチング素子S13は、バッテリ20の正極側と負荷LD側とを接続させる。一方、制御装置100が、スイッチング素子S13が備えるスイッチを導通状態に制御すると、スイッチング素子S13は、バッテリ20の正極側と負荷LD側とを切断させる。つまり、制御装置100が、スイッチング素子S13を導通状態と非導通状態とに交互に制御することによって、電力変換装置31では、バッテリ20が放電した直流電力に基づく電圧波形が矩形の電力(電力E1)を負荷LD側に供給することができる。このため、電力変換装置31では、第1実施形態の電力変換装置30において矩形スイッチング波形の電力(電力E1)を出力するスイッチング回路がスイッチング期間中に電圧波形を変動(電圧値を変動)させる機能を省略することができる。第1実施形態の電力変換装置30において、例えば、スイッチング素子S1~スイッチング素子S4で構成されるスイッチング回路とは異なる他のスイッチング回路(不図示)が矩形スイッチング波形の電力E1を生成する構成である場合には、この不図示のスイッチング回路を省略することができる。
【0095】
スイッチング素子S14は、例えば、制御装置100による制御に応じて、バッテリ20の負極側に供給される電力の方向を制限する。
図13では、スイッチング素子S14が、ダイオードとスイッチとで構成されている場合の一例を示している。制御装置100が、スイッチング素子S14が備えるスイッチを非導通状態に制御すると、スイッチング素子S14は、負荷LDから出力される出力電力がバッテリ20の負極側に供給されるのを許容する。一方、制御装置100が、スイッチング素子S14が備えるスイッチを導通状態に制御すると、スイッチング素子S14は、バッテリ20の負極側から出力される出力電力が負荷LD側に供給されるのを許容する。
【0096】
図13では、スイッチング素子S11、スイッチング素子S12、およびスイッチング素子S14が、ダイオードとスイッチとで構成されている場合の一例を示しているが、第1実施形態の電力変換装置30が備えるスイッチング素子S5と同様に、電界効果トランジスタFETや、ダイオードDと絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTとで構成されてもよい(
図4参照)。さらに、スイッチング素子S13の構成は、
図13に示した構成に限らない。
図14は、電力変換装置31が備えるスイッチング素子S13の構成の一例を示す図である。
図14の(a)に示したスイッチング素子S13aは、
図13に示したスイッチSWの構成である。
図14の(b)に示したスイッチング素子S13bは、二つの電界効果トランジスタFETが直列接続されている場合の一例である。スイッチング素子S13bでは、電界効果トランジスタFET-1と電界効果トランジスタFET-2とが、互いに逆向きで直列接続されている。
図14の(c)に示したスイッチング素子S13cは、ダイオードDと絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTとで構成されている二つのスイッチング素子が直列接続されている場合の一例である。スイッチング素子S13cでは、それぞれのスイッチング素子が、互いに逆向きで直列接続されている。
図14の(b)に示したスイッチング素子S13bが備える電界効果トランジスタFET、および
図14の(c)に示したスイッチング素子S13cが備える絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTのオン状態およびオフ状態は、
図14の(a)に示したスイッチング素子S13aが備えるスイッチSWと同様に、例えば、制御装置100によって制御される。
【0097】
電力変換装置31では、スイッチング素子S11、スイッチング素子S12、スイッチング素子S13、およびスイッチング素子S14の構成によって、バッテリ20とコンバータ300との接続を、直列接続あるいは並列接続に切り替える。スイッチング素子S11、スイッチング素子S12、スイッチング素子S13、およびスイッチング素子S14の構成は、特許請求の範囲における「スイッチング部」および「第3のスイッチング素子」の一例である。
【0098】
図13に示した電力変換装置31の構成は、第1実施形態の電力変換装置30と同様に、バッテリ20が放電する直流電圧値の2倍の電圧値Voutで、電圧波形が正弦波の半波の電力を負荷LD側に供給する構成である。電力変換装置31も、第1実施形態の変形例の電力変換装置30aと同様に、スイッチング素子S11~スイッチング素子S14、およびバッテリ20(ただし、異なるバッテリ)で構成される電圧波形生成部31VGと同様の構成を積み上げることによって、直流電圧値の3倍以上の電圧値Voutで、電圧波形が正弦波の半波の電力を負荷LD側に供給する構成にすることもできる。この場合の電力変換装置31の構成は、後述する。
【0099】
[電力変換装置の動作]
ここで、制御装置100による電力変換装置31の制御と電力変換装置31の動作の一例について説明する。
図15は、車両1が備える制御装置100における電力変換装置31の制御の一例を説明する図である。
図16は、電力変換装置31において生成する電圧波形の一例を説明する図である。
図17は、車両1が備える制御装置100が電力変換装置31を制御する詳細なタイミングの一例を説明する図である。
図15~
図17は、車両1の走行のために走行用モータ10を駆動させる場合の一例である。
図15の(a)には、
図13に示した電力変換装置31に接続される負荷LD(スイッチング素子S1~スイッチング素子S4も含む)も併せて示し、電力を供給する際に負荷LDに流れる電流の経路(電流経路)を示している。
図15の(b)には、それぞれの電流経路で電流を流す際に制御装置100が制御するスイッチング素子Sの状態を示している。
図15の(b)において「ON」はスイッチング素子Sを導通状態に制御することを表し、「OFF」は、スイッチング素子Sを非導通状態に制御することを表し、“↑:上向きの矢印”はスイッチング素子Sの制御を変更していないことを表し、“():括弧”内の記載は、スイッチング素子Sを流れる構成要素を表している。
図15の(c)には、電力変換装置31が波形合成して出力する電圧波形を示している。
図16には、バッテリ20から供給(放電)された直流電圧値が200[V]である場合において、制御装置100による制御に応じて、それぞれの電流経路を通って負荷LDに供給される電力の電圧波形の一例、および電圧波形を波形合成する様子の一例を模式的に示している。
図17には、負荷LDに供給される電力の電圧波形を波形合成する際に、バッテリ20とコンバータ300との接続を、直列接続あるいは並列接続に切り替えるタイミングにおける電圧波形の変化の様子の一例を示している。以下の説明においては、
図15~
図17を適宜参照して、電力変換装置31の動作を説明する。
【0100】
制御装置100は、
図15の(c)に示した時刻t0(=時刻t3、時刻t6)において、つまり、電圧値Voutが、バッテリ20から供給可能な直流電圧値の電力E1よりも低い状態のときに、
図15の(b)に示した制御C1の段のようにそれぞれのスイッチング素子Sを制御する。これにより、電力変換装置31では、コンバータ300が出力する出力電力E2が、
図15の(a)に示した電流経路P1(スイッチング素子S11ではダイオードD)を通って負荷LD側に供給される。より具体的には、コンバータ300が生成した
図16の(b)に示したような電圧波形の出力電力E2の内、
図16の(c)に示したような電圧波形の出力電力E2が、電流経路P1を通って負荷LD側に供給される。これにより、負荷LDに供給される電力の電圧値Voutは、出力電力E2の電圧値となる。
【0101】
その後、制御装置100は、
図15の(c)に示した時刻t1(=時刻t4)において、つまり、電圧値Voutが、バッテリ20から供給可能な直流電圧値に等しい電圧値まで上昇したときに、
図15の(b)に示した制御C2の段のようにそれぞれのスイッチング素子Sを制御する。これにより、電力変換装置31では、バッテリ20の直流電力に基づく電力E1が、
図15の(a)に示した電流経路P2(スイッチング素子S14ではダイオードD)を通って負荷LD側に供給される。より具体的には、バッテリ20の直流電力に基づく
図16の(a)に示したような電圧波形が矩形の電力E1が、電流経路P2を通って負荷LD側に供給される。これにより、負荷LDに供給される電力の電圧値Voutは、電流経路P1により供給される出力電力E2の電圧値と、電流経路P2により供給される電力E1の電圧値の合計となる。制御C2の状態では、電力変換装置31においてバッテリ20とコンバータ300とが並列接続されている状態であるため、電圧値Voutは、出力電力E2および電力E1の電圧値(200[V])となる。
【0102】
引き続き、制御装置100は、
図15の(c)に示した時刻t1(=時刻t4)において、
図15の(b)に示した制御C3の段のようにそれぞれのスイッチング素子Sを制御する。これにより、電力変換装置31では、電流経路P1を通って負荷LD側に供給されていた出力電力E2が、
図15の(a)に示した電流経路P3(スイッチング素子S12ではスイッチSW)を通ってバッテリ20の負極側に供給される。より具体的には、コンバータ300が生成した
図16の(b)に示したような電圧波形の出力電力E2の内、
図16の(d)に示したような電圧波形の出力電力E2が、電流経路P3を通ってバッテリ20の負極側に供給される。これにより、スイッチング素子S14が備えるダイオードDには逆バイアスが印加されることとなり、スイッチング素子S14はOFF(非導通状態)となる。制御C3の状態では、電力変換装置31においてコンバータ300がバッテリ20に直列接続された状態である。このため、負荷LDに供給される電力の電圧値Voutは、
図16の(e)に示したように、電流経路P2により供給される電力E1の電圧値と、電流経路P3により供給される出力電力E2の電圧値との合計となる。
【0103】
このようにして制御装置100は、時刻t1において、バッテリ20とコンバータ300とを並列接続させ、その後にバッテリ20とコンバータ300とを直列接続に切り替える。ここで、時刻t1においてバッテリ20とコンバータ300との接続を切り替える詳細なタイミングについて、
図17を用いて説明する。
【0104】
制御装置100は、出力電力E2の電圧値が、バッテリ20から供給可能な直流電圧値に等しい電圧値になろうとしている直前の時刻t1-1のタイミングで、スイッチング素子Sを制御C1から制御C2に切り替える。直前の時刻t1-1のタイミングは、コンバータ300が出力する出力電力E2の電圧波形が、電圧値=200[V]となるときに、バッテリ20が出力する電力E1の電圧波形が電圧値=200[V]となるタイミングである。これにより、バッテリ20から、直流電力に基づく電力E1の出力が開始される。その後、制御装置100は、出力電力E2の電圧値がゼロになる時刻t1-2のタイミングで、スイッチング素子Sを制御C2から制御C3に切り替える。
【0105】
このようにして制御装置100は、出力電力E2の電圧波形と電力E1の電圧波形とを僅かな期間だけ重複(オーバーラップ)させて、バッテリ20とコンバータ300との接続を、並列接続から直列接続に切り替える。制御装置100が時刻t1-2のタイミングでスイッチング素子Sを制御C2から制御C3に切り替えた後は、出力電力E2の電圧波形が正弦波の半波と同様に上昇するのに伴って、出力電力E2が電力E1に加算される(
図16の(e)参照)。
【0106】
その後、制御装置100は、
図15の(c)に示した時刻t2(=時刻t5)において、つまり、電圧値Voutが、バッテリ20から供給可能な直流電圧値に等しい電圧値まで下降したときに、それぞれのスイッチング素子Sの制御を制御C2にする。これにより、電力変換装置31では、バッテリ20の負極側への電流経路P3経由での出力電力E2の供給が停止され、バッテリ20の電力E1のみが、電流経路P2を通って負荷LD側に供給される。
【0107】
引き続き、制御装置100は、
図15の(c)に示した時刻t2(=時刻t5)において、それぞれのスイッチング素子Sの制御を制御C1にする。これにより、電力変換装置31では、負荷LD側への電流経路P2経由での電力E1の供給が停止され、
図16の(c)に示したような電圧波形の出力電力E2のみが、電流経路P1を通って負荷LD側に供給される。
【0108】
このようにして制御装置100は、時刻t2において、バッテリ20とコンバータ300との直列接続を並列接続に切り替え、その後にバッテリ20を切り離す。この時刻t2におけるバッテリ20とコンバータ300との接続切り替えの詳細なタイミングは、
図17を用いて説明したバッテリ20とコンバータ300との接続切り替えのタイミングを逆にした場合と等価なものになるようにすればよい。従って、詳細な説明は省略する。
【0109】
制御装置100によるこのような制御によって、電力変換装置31では、
図16の(f)に示したような、バッテリ20の直流電圧値の2倍の電圧値で、電圧波形が、電圧値=0[V]を基準とした正弦波の半波の電力の電圧値Voutを、負荷LDに供給する。
【0110】
制御装置100は、走行用モータ10が回生ブレーキとして動作して発電した電力をバッテリ20に充電させる場合も、同様に制御する。
図18は、車両1が備える制御装置100における電力変換装置31の制御の一例を説明する図である。
図18には、電力をバッテリ20に充電させるためにそれぞれの電流経路で電流を流す際に制御装置100が制御するスイッチング素子Sの状態を示している。
図18において、制御C1’、制御C2’、および制御C3’は、
図15の(b)に示した制御C1、制御C2、および制御C3によって対応する電流経路Pを流れる電流の向きを逆向きにさせるためのスイッチング素子Sの制御である。従って、制御装置100が走行用モータ10によって発電された電力をバッテリ20に充電させる場合の電力変換装置31の動作は、
図15~
図17を用いて説明した、車両1の走行のために走行用モータ10を駆動させる場合の動作を逆にした場合と等価なものになるようにすればよい。従って、詳細な説明は省略する。
【0111】
[制御装置の処理]
図19は、車両1が備える制御装置100において電力変換装置31を制御する際に実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、車両1が走行している間、繰り返し実行される。以下の説明においては、制御装置100が備えるスイッチング制御部108の処理、つまり、スイッチング制御部108がスイッチング素子に駆動信号を出力する処理(
図10に示したステップS190)に着目し、制御装置100が備える他の構成要素の処理は、制御装置100が行うものとして、
図15の(c)に示した時刻t1までの処理について説明する。
【0112】
制御装置100は、今回の制御が走行用モータ10の駆動であるか否かを判定する(ステップS200)。つまり、制御装置100は、今回の制御が、車両1の走行のために走行用モータ10を駆動させる制御であるか、走行用モータ10によって発電された電力をバッテリ20に充電させる制御であるかを判定する。ステップS200において、今回の制御が走行用モータ10の駆動であると判定した場合、制御装置100は、車両1の走行のために走行用モータ10を駆動させる制御を開始する。
【0113】
車両1の走行のために走行用モータ10を駆動させる制御において、制御装置100は、電圧値Voutが、バッテリ20から供給可能な直流電圧値の電力E1よりも低い電圧値(0<E1)であるか否かを確認する(ステップS210)。ステップS210において、電圧値Voutが(0<E1)の電圧値ではないと判定した場合、制御装置100は、処理をステップS212に進める。
【0114】
一方、ステップS210において、電圧値Voutが(0<E1)の電圧値であると判定した場合、スイッチング制御部108は、スイッチング素子S11をOFF(非導通状態)にし、スイッチング素子S12をOFFにし、スイッチング素子S13をOFFにし、スイッチング素子S14をOFFにするためのそれぞれの駆動信号を生成する(ステップS211)。つまり、スイッチング制御部108は、制御C1の状態(
図15の(b)参照)にする。
【0115】
制御装置100は、電圧値Voutが、バッテリ20から供給可能な直流電圧値に等しい電圧値(E1=E2)であるか否かを確認する(ステップS212)。ステップS212において、電圧値Voutが(E1=E2)の電圧値ではないと判定した場合、制御装置100は、処理をステップS214に進める。
【0116】
一方、ステップS212において、電圧値Voutが(E1=E2)の電圧値であると判定した場合、スイッチング制御部108は、スイッチング素子S11をOFFにし、スイッチング素子S12をOFFにし、スイッチング素子S13をON(導通状態)にし、スイッチング素子S14をOFFにするためのそれぞれの駆動信号を生成する(ステップS213)。つまり、スイッチング制御部108は、制御C2の状態(
図15の(b)参照)にする。
【0117】
制御装置100は、電圧値Voutが、バッテリ20から供給可能な直流電圧値以上の電圧値(Vout≧E1)であるか否かを確認する(ステップS214)。ステップS214において、電圧値Voutが(Vout≧E1)の電圧値ではないと判定した場合、制御装置100は、処理をステップS230に進める。
【0118】
一方、ステップS214において、電圧値Voutが(Vout≧E1)の電圧値であると判定した場合、スイッチング制御部108は、スイッチング素子S11をOFFにし、スイッチング素子S12をONにし、スイッチング素子S13をONにし、スイッチング素子S14をOFFにするためのそれぞれの駆動信号を生成する(ステップS215)。つまり、スイッチング制御部108は、制御C3の状態(
図15の(b)参照)にする。
【0119】
一方、ステップS200において、今回の制御が走行用モータ10の駆動ではないと判定した場合、制御装置100は、走行用モータ10によって発電された電力をバッテリ20に充電させる制御を開始する。
【0120】
車両1の走行のために走行用モータ10を駆動させる制御において、制御装置100は、電圧値Voutが、バッテリ20から供給可能な直流電圧値の電力E1よりも低い電圧値(0<E1)であるか否かを確認する(ステップS220)。ステップS220において、電圧値Voutが(0<E1)の電圧値ではないと判定した場合、制御装置100は、処理をステップS222に進める。
【0121】
一方、ステップS220において、電圧値Voutが(0<E1)の電圧値であると判定した場合、スイッチング制御部108は、スイッチング素子S11をON(導通状態)にし、スイッチング素子S12をOFF(非導通状態)にし、スイッチング素子S13をOFFにし、スイッチング素子S14をOFFにするためのそれぞれの駆動信号を生成する(ステップS221)。つまり、スイッチング制御部108は、制御C1’の状態(
図18参照)にする。
【0122】
制御装置100は、電圧値Voutが、バッテリ20から供給可能な直流電圧値に等しい電圧値(E1=E2)であるか否かを確認する(ステップS222)。ステップS222において、電圧値Voutが(E1=E2)の電圧値ではないと判定した場合、制御装置100は、処理をステップS224に進める。
【0123】
一方、ステップS222において、電圧値Voutが(E1=E2)の電圧値であると判定した場合、スイッチング制御部108は、スイッチング素子S11をONにし、スイッチング素子S12をOFFにし、スイッチング素子S13をONにし、スイッチング素子S14をONにするためのそれぞれの駆動信号を生成する(ステップS223)。つまり、スイッチング制御部108は、制御C2’の状態(
図18参照)にする。
【0124】
制御装置100は、電圧値Voutが、バッテリ20から供給可能な直流電圧値以上の電圧値(Vout≧E1)であるか否かを確認する(ステップS224)。ステップS224において、電圧値Voutが(Vout≧E1)の電圧値ではないと判定した場合、制御装置100は、処理をステップS230に進める。
【0125】
一方、ステップS224において、電圧値Voutが(Vout≧E1)の電圧値であると判定した場合、スイッチング制御部108は、スイッチング素子S11をOFFにし、スイッチング素子S12をOFFにし、スイッチング素子S13をONにし、スイッチング素子S14をOFFにするためのそれぞれの駆動信号を生成する(ステップS225)。つまり、スイッチング制御部108は、制御C3’の状態(
図18参照)にする。
【0126】
スイッチング制御部108は、生成したそれぞれの駆動信号を、対応するそれぞれのスイッチング素子Sに出力する(ステップS230)。そして、制御装置100は、今回の処理を終了し、再度、
図10に示したステップS100から処理を繰り返す。
【0127】
このような処理の流れによって、制御装置100は、電圧値Voutの電圧値に基づいて、それぞれのスイッチング素子SをON(導通状態)、またはOFF(非導通状態)にするための駆動信号を生成して出力する。これにより、電力変換装置31は、制御装置100による制御に従った動作をして、車両1の走行のための電力を走行用モータ10に供給、あるいは、走行用モータ10によって発電された電力をバッテリ20に充電させる。
【0128】
[第2実施形態の変形例]
電圧波形生成部31VGと同様の構成を積み上げることによって、直流電圧値の3倍以上の電圧値Voutで、電圧波形が正弦波の半波の電力を負荷LD側に供給する構成について説明する。
【0129】
図20は、第2実施形態に係る電力変換装置31の変形例の構成の一例を示す図である。
図20に示した変形例の電力変換装置31も、車両1が備える走行用モータ10における三相交流のU相、V相、W相のいずれか一つの相に対応する電力変換装置31である。変形例の電力変換装置31(以下、「電力変換装置31a」という)は、例えば、コンバータ300と、八つのスイッチング素子(スイッチング素子S11~スイッチング素子S18)を備える。電力変換装置31aにおいて、スイッチング素子S11~スイッチング素子S14の四つのスイッチング素子Sは、バッテリ20に対応する電圧波形生成部31VGであり、スイッチング素子S15~スイッチング素子S18の四つのスイッチング素子Sは、バッテリ20と異なるバッテリ20(以下、「バッテリ21」という)に対応する電圧波形生成部31VGである。
図20には、電力変換装置31aに関連するバッテリ20および負荷LD(スイッチング素子S1~スイッチング素子S4も含む)も併せて示している。さらに、
図20には、制御装置100によるスイッチング素子Sの制御に従って電力変換装置31aが電力を供給する際に負荷LDに流れる電流経路Pを示している。制御装置100による制御と電流経路Pについては後述する。
【0130】
バッテリ21は、バッテリ20と同様のバッテリである。バッテリ21は、バッテリ20と同じ直流電圧値の直流電力を放電(供給)または充電する。バッテリ21は、特許請求の範囲における「第2のバッテリ」の一例であり、バッテリ21が放電する電力は、特許請求の範囲における「第2バッテリ電力」の一例である。
【0131】
スイッチング素子S15は、スイッチング素子S11と同様の機能のスイッチング素子Sである。スイッチング素子S14は、例えば、制御装置100による制御に応じて、コンバータ300および/またはバッテリ20から出力される電力が供給される方向を制限する。
【0132】
スイッチング素子S16は、スイッチング素子S12と同様の機能のスイッチング素子Sである。スイッチング素子S16は、例えば、制御装置100による制御に応じて、コンバータ300および/またはバッテリ20から出力される出力電力が供給される方向を制限する。
【0133】
スイッチング素子S17は、スイッチング素子S13と同様の機能のスイッチング素子Sである。スイッチング素子S17は、バッテリ21の正極側と負荷LD側との接続を切り替える。制御装置100が、スイッチング素子S17を導通状態と非導通状態とに交互に制御することによって、電力変換装置31aでは、バッテリ21が放電した直流電力に基づく電圧波形が矩形の電力(出力電力E3)を負荷LD側に供給することができる。スイッチング素子S17は、特許請求の範囲における「第3の生成部」の一例であり、スイッチング素子S17が出力する出力電力E3は、特許請求の範囲における「第5出力電力」の一例である。
【0134】
スイッチング素子S18は、スイッチング素子S14と同様の機能のスイッチング素子Sである。スイッチング素子S18は、例えば、制御装置100による制御に応じて、バッテリ20の負極側に供給される電力の方向を制限する。
【0135】
図20では、スイッチング素子S11、スイッチング素子S12、スイッチング素子S14、スイッチング素子S15、スイッチング素子S16、およびスイッチング素子S18が、ダイオードとスイッチとで構成されている場合の一例を示しているが、第1実施形態の電力変換装置30が備えるスイッチング素子S5と同様に、電界効果トランジスタFETや、ダイオードDと絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTとで構成されてもよい(
図4参照)。さらに、
図20では、スイッチング素子S13およびスイッチング素子S17が、スイッチで構成されている場合の一例を示しているが、電力変換装置31と同様に、二つの電界効果トランジスタFETが直列接続されている構成や、ダイオードDと絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTとで構成されている二つのスイッチング素子が直列接続されている構成であってもよい(
図14参照)。
【0136】
電力変換装置31aでは、スイッチング素子S11、スイッチング素子S12、スイッチング素子S13、およびスイッチング素子S14の構成によって、バッテリ20とコンバータ300との接続を、直列接続あるいは並列接続に切り替える。さらに、電力変換装置31aでは、スイッチング素子S15、スイッチング素子S16、スイッチング素子S17、およびスイッチング素子S18の構成によって、バッテリ21と、コンバータ300および/またはバッテリ20との接続を、直列接続あるいは並列接続に切り替える。スイッチング素子S15、スイッチング素子S16、スイッチング素子S17、およびスイッチング素子S18の構成は、特許請求の範囲における「第4のスイッチング素子」の一例である。
【0137】
[変形例の電力変換装置が生成する電圧波形]
図21は、変形例の電力変換装置31aにおいて生成する電圧波形の一例を説明する図である。
図21には、バッテリ20から供給(放電)された直流電圧値が200[V]である場合において、制御装置100による制御に応じて、電力変換装置31aが出力する電力の電圧波形を波形合成する様子の一例を模式的に示している。
【0138】
電力変換装置31aは、制御装置100からの制御に応じて、
図21の(a)に示したような、負荷LDである走行用モータ10を駆動させる周波数の矩形波形の電力E1を生成する。より具体的には、制御装置100は、時刻t0~時刻t1までの期間において電圧値が0[V]となり、時刻t1~時刻t4までの期間においてバッテリ20が放電する直流電圧値を保持し、時刻t4~時刻t5までの期間において電圧値が0[V]となるような矩形波形の電力E1を生成するように、それぞれのスイッチング素子Sを制御する。
【0139】
電力変換装置31aは、制御装置100からの制御に応じて、
図21の(b)に示したような、走行用モータ10を駆動させる周波数で位相が異なる矩形波形の出力電力E3を生成する。より具体的には、制御装置100は、時刻t0~時刻t2までの期間において電圧値が0[V]となり、時刻t2~時刻t3までの期間においてバッテリ20が放電する直流電圧値を保持し、時刻t3~時刻t5までの期間において電圧値が0[V]となるような矩形波形の出力電力E3を生成するように、それぞれのスイッチング素子Sを制御する。
【0140】
電力変換装置31aでは、制御装置100によりコンバータ300の動作が開始されると、コンバータ300は、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルに基づいて、
図21の(c)に示したような電圧波形の出力電力E2を生成して出力する。制御装置100がコンバータ300に入力または設定する出力波形プロファイルは、走行用モータ10を駆動させる周波数の正弦波の半波から、電力E1の電圧波形と、出力電力E3の電圧波形とを減算した電圧波形を生成するためのものである。より具体的には、出力波形プロファイルは、第1~第9の九つの出力波形プロファイルにより構成される。第1出力波形プロファイルは、時刻t0~時刻t1までの期間において、正弦波の半波に沿って出力電力E2の電圧値をゼロの状態から上昇させるプロファイルである。第2出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値と直流電圧値とが等しくなった時刻t1のときに、出力電力E2の電圧値をゼロにさせるプロファイルである。第3出力波形プロファイルは、時刻t1~時刻t2までの期間において、正弦波の半波に沿って出力電力E2の電圧値をゼロの状態から上昇させるプロファイルである。第4出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値と直流電圧値とが等しくなった時刻t2のときに、出力電力E2の電圧値をゼロにさせるプロファイルである。第5出力波形プロファイルは、時刻t2~時刻t3までの期間において、出力電力E2の電圧値がゼロの状態から正弦波の半波と同様に上昇させ、出力電力E2の電圧値と直流電圧値とが等しくなったときから正弦波の半波と同様に下降させるプロファイルである。第6出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値がゼロになった時刻t3のときに、出力電力E2の電圧値を直流電圧値と等しくさせるプロファイルである。第7出力波形プロファイルは、時刻t3~時刻t4までの期間において、出力電力E2の電圧値が直流電圧値と等しい状態から正弦波の半波に沿って出力電力E2の電圧値をゼロの状態まで下降させるプロファイルである。第8出力波形プロファイルは、出力電力E2の電圧値がゼロになった時刻t4のときに、出力電力E2の電圧値を直流電圧値と等しくさせるプロファイルである。第9出力波形プロファイルは、時刻t4~時刻t5までの期間において、出力電力E2の電圧値が直流電圧値と等しい状態から正弦波の半波に沿って出力電力E2の電圧値をゼロの状態まで下降させるプロファイルである。制御装置100は、電力E1および出力電力E2を生成するためにそれぞれのスイッチング素子Sを制御するタイミングに合わせて、これらの九つの出力波形プロファイルをコンバータ300に順次入力または設定することにより、
図21の(c)に示したような電圧波形の出力電力E2をコンバータ300から出力させる。
【0141】
制御装置100は、出力電力E2の電圧波形が同じ形になる出力波形プロファイルを共通のもとしてもよい。より具体的には、第1出力波形プロファイルと第3出力波形プロファイルとを共通のもとし、第2出力波形プロファイルと第4出力波形プロファイルとを共通のもとし、第6出力波形プロファイルと第8出力波形プロファイルとを共通のもとし、第7出力波形プロファイルと第9出力波形プロファイルとを共通のもとしてもよい。この場合、制御装置100は、共通の出力波形プロファイルを、2回ずつコンバータ300に入力または設定することにより、
図21の(c)に示したような電圧波形の出力電力E2をコンバータ300から出力させる。
【0142】
電力変換装置31aは、電力E1の電圧波形と、出力電力E2の電圧波形と、出力電力E3の電圧波形とが波形合成され、
図21の(d)に示したように、バッテリ20が放電する直流電圧値の3倍の電圧値(
図21の(d)では600[V])であり、電圧波形が正弦波の半波である電力の電圧値Voutを、負荷LDに供給する。これにより、電力変換装置31aでも、スイッチング回路の動作(スイッチング素子S1~スイッチング素子S4のスイッチング動作)によって、負荷LDに流れる電流の方向が、例えば、負荷LDに供給された電圧値Voutの電力の電圧波形が偶数番目の半波のときに反転され、負荷LDには、
図21の(e)に示したような、走行用モータ10を駆動させる周波数の正弦波(全波)の電圧波形の電力が供給される。これにより、走行用モータ10は、供給された正弦波の電力によって駆動(回転)する。
【0143】
[電力変換装置の動作]
図22は、車両1が備える制御装置100における電力変換装置31aの制御の一例を説明する図である。
図22の(a)には、車両1の走行のために走行用モータ10を駆動させる場合のスイッチング素子Sの制御を示し、
図22の(b)には、走行用モータ10によって発電された電力をバッテリ20およびバッテリ21に充電させる場合のスイッチング素子Sの制御を示している。
図22に示したそれぞれの制御Cは、
図20に示したそれぞれの電流経路Pに対応している。ただし、
図22の(b)に示したそれぞれの制御は、
図20に示したそれぞれの電流経路Pとは逆向きで電流を流させるためのスイッチング素子Sの制御である。
【0144】
電力変換装置31aは、電力E1の電圧波形、出力電力E2の電圧波形、および出力電力E3の電圧波形を波形合成させることによって、バッテリ20が放電する直流電圧値の3倍の電圧値であり、電圧波形が、電圧値=0[V]を基準とした正弦波の半波である電力が負荷LDの端子に供給される(
図21の(d)参照)。
【0145】
電力変換装置31aでも、制御装置100が、バッテリ20とコンバータ300と接続を切り替えるタイミングは、電力変換装置30と同様である。つまり、電力変換装置31aでも、制御装置100が制御C1から制御C2に切り替えるタイミングと、制御C2から制御C3に切り替えるタイミングとは、電力変換装置30と同様である。そして、電力変換装置31aにおいて、バッテリ20とコンバータ300との直列接続と、バッテリ21との接続を切り替えるタイミングも、電力変換装置30と同様である。より具体的には、電力変換装置31aにおいて、制御装置100が、制御C3から制御C4に切り替えるタイミングと、制御C4から制御C5に切り替えるタイミングとも、電力変換装置30と同様である。しかし、電力変換装置31aでは、制御装置100が、制御C3から制御C4に切り替えるタイミングと、制御C4から制御C5に切り替えるタイミングとを、電力変換装置30と異なるタイミングにしてもよい。
【0146】
図23は、車両1が備える制御装置100が電力変換装置31aを制御する詳細なタイミングの一例を説明する図である。
図23には、負荷LDに供給される電力の電圧波形を波形合成する際に、バッテリ20とコンバータ300との直列接続と、バッテリ21との接続を、並列接続から直列接続に切り替えるタイミング(
図21の時刻t2)における電圧波形の変化の様子の一例を示している。
【0147】
制御装置100は、出力電力E2の電圧値が、バッテリ20から供給可能な直流電圧値に等しい電圧値になった時刻t2-1のタイミングで、スイッチング素子Sを制御C3から制御C4に切り替える。これにより、バッテリ21から、直流電力に基づく出力電力E3の出力が開始される。その後、制御装置100は、出力電力E2の電圧値がゼロになる時刻t2-2のタイミングで、スイッチング素子Sを制御C4から制御C5に切り替える。
【0148】
このようにして制御装置100は、出力電力E2の電圧波形と出力電力E3の電圧波形とを、
図17に示したように僅かな期間だけ重複(オーバーラップ)させることなく、バッテリ20とコンバータ300との直列接続と、バッテリ21との接続を、並列接続から直列接続に切り替える。これにより、制御装置100が時刻t2-2のタイミングでスイッチング素子Sを制御C4から制御C5に切り替えた後は、出力電力E2の電圧波形が正弦波の半波と同様に上昇するのに伴って、電力E1と出力電力E2とが加算された電力に、出力電力E3がさらに加算される(
図21の(d)参照)。
【0149】
制御装置100は、
図23に示した制御タイミングを、制御C1から制御C2への切り替え、および制御C2から制御C3への切り替えを行う際の制御タイミングとしてもよい。
【0150】
電力変換装置31aにおけるその他の動作は、
図15~
図19を用いて説明した電力変換装置31の動作と等価なものになるようにすればよい。このため、電力変換装置31aの動作に関する詳細な説明は省略する。
【0151】
このような構成および制御によって、電力変換装置31(電力変換装置31aを含む)は、第1実施形態の電力変換装置30(電力変換装置30aを含む)と同様に、制御装置100による制御に応じて、バッテリ20から供給(放電)された直流電力の電圧を2倍(電力変換装置31aでは3倍)に昇圧した交流電力に変換して、走行用モータ10に供給することができる。この場合も、電力変換装置31(電力変換装置31aを含む)は、第1実施形態の電力変換装置30(電力変換装置30aを含む)と同様に、従来のインバータを用いた電力変換装置よりも、電力の変換効率の低下や、高耐圧の部品を用いることによる損失の増大、部品の劣化を抑えた電力変換をすることができる。つまり、電力変換装置31(電力変換装置31aを含む)でも、従来のインバータを用いた電力変換装置よりも効率よく、電力変換をすることができる。
【0152】
上述した第2実施形態の変形例では、バッテリ21を含む電圧波形生成部31VGを追加する(積み上げる)構成によって、バッテリ20の直流電力の電圧を3倍に昇圧する場合について説明した。電力変換装置31では、同様に、バッテリ20およびバッテリ21とは異なるバッテリを含む電圧波形生成部31VGを積み上げることによって、さらにバッテリ20の直流電力の電圧を昇圧する倍数を増やす(4倍以上にする)こともできる。この場合における電力変換装置31の構成、動作、および処理などは、上述した電力変換装置31aの構成、動作、および処理と等価なものになるようにすればよい。
【0153】
<第3実施形態>
[電力変換装置の構成]
図24は、第3実施形態に係る電力変換装置の構成の一例を示す図である。
図24に示した第3実施形態の電力変換装置(以下、「電力変換装置32」という)も、第1実施形態の電力変換装置30や、第2実施形態の電力変換装置31と同様に、車両1が備える走行用モータ10における三相交流のU相、V相、W相のいずれか一つの相に対応する電力変換装置である。
図24には、電力変換装置32に関連するバッテリ20および負荷LDも併せて示している。
図24に示したスイッチング素子S1~スイッチング素子S4は、第1実施形態の電力変換装置30における単相変換器30PCに相当する構成である。
図24では、スイッチング素子S1とスイッチング素子S2とが、第1実施形態の電力変換装置30における単相変換器30PCに相当する構成の構成要素であるものとして示しているが、スイッチング素子S1およびスイッチング素子S2は、電力変換装置32に属する構成要素でもある。
【0154】
電力変換装置32も、バッテリ20から供給(放電)された直流電力に基づいて、正弦波の半波の電圧波形を生成する。
図24に示した電力変換装置32の構成は、バッテリ20が放電する直流電圧値の3倍の電圧値で、電圧波形が正弦波の半波の電力を負荷LD側に供給する構成である。電力変換装置32は、例えば、電圧波形生成部32VGと、矩形電圧生成部32SVG-1と、矩形電圧生成部32SVG-2と、を備える。電圧波形生成部32VGは、例えば、コンバータ300と、スイッチング素子S21と、スイッチング素子S21Rと、を備える。矩形電圧生成部32SVG-1は、例えば、コンバータ310-1と、スイッチング素子S22と、を備える。矩形電圧生成部32SVG-2は、例えば、コンバータ310-2を備える。
【0155】
電圧波形生成部32VGは、バッテリ20から供給(放電)された直流電力に基づいて、正弦波の半波の電圧波形を生成する。電圧波形生成部32VGは、第1実施形態の電力変換装置30における電圧波形生成部30VGや、第2実施形態の電力変換装置31における電圧波形生成部31VGに相当する構成である。
【0156】
スイッチング素子S21は、例えば、制御装置100による制御に応じて、コンバータ300から出力される出力電力が供給される方向を制限する。スイッチング素子S21は、第1実施形態の電力変換装置30が備えるスイッチング素子S5、あるいは第2実施形態の電力変換装置31が備えるスイッチング素子S11に相当するものである。スイッチング素子S21は、特許請求の範囲における「スイッチング部」および「第5のスイッチング素子」の一例である。
【0157】
スイッチング素子S21Rは、コンバータ300と、コンバータ310-1および/またはコンバータ310-2との接続を切り替える。
図24では、スイッチング素子S21Rが、ダイオードとスイッチとで構成されている場合の一例を示している。制御装置100が、スイッチング素子S21Rが備えるスイッチを非導通状態に制御すると、スイッチング素子S21Rは、コンバータ300と、コンバータ310-1および/またはコンバータ310-2とを接続(直列接続)させる。一方、制御装置100が、スイッチング素子S21Rが備えるスイッチを導通状態に制御すると、スイッチング素子S21Rは、コンバータ300と、コンバータ310-1および/またはコンバータ310-2とを切断させる。スイッチング素子S21Rは、特許請求の範囲における「スイッチング部」および「第6のスイッチング素子」の一例である。
【0158】
矩形電圧生成部32SVG-1および矩形電圧生成部32SVG-2は、バッテリ20から供給(放電)された直流電力に基づいて、矩形波形の電圧波形を生成する。矩形電圧生成部32SVG-1と矩形電圧生成部32SVG-2とのそれぞれは、波形が変化するタイミングが異なる矩形波形を生成する。矩形電圧生成部32SVG-1は、例えば、第2実施形態における電力E1の電圧波形に相当する矩形波形を生成する。矩形電圧生成部32SVG-2は、例えば、第2実施形態における出力電力E3の電圧波形に相当する矩形波形を生成する。
【0159】
コンバータ310-1とコンバータ310-2とは、コンバータ300と同じ構成のコンバータである。ただし、コンバータ310-1とコンバータ310-2とのそれぞれには、コンバータ300と異なる出力波形プロファイルが制御装置100により入力または設定される。より具体的には、コンバータ310-1には、電力E1の電圧波形に相当する矩形波形を生成するための出力波形プロファイルが制御装置100により入力または設定され、コンバータ310-2には、出力電力E3の電圧波形に相当する矩形波形を生成するための出力波形プロファイルが制御装置100により入力または設定される。コンバータ310-1とコンバータ310-2とのそれぞれは、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルに基づいて、バッテリ20から供給(放電)された直流電力から、対応する矩形波形の出力電力を生成して出力する。コンバータ310-1とコンバータ310-2とのそれぞれは、特許請求の範囲における「第4の生成部」の一例であり、コンバータ310-1とコンバータ310-2とのそれぞれが出力する矩形波形の出力電力は、特許請求の範囲における「第6出力電力」の一例である。コンバータ310-1は、特許請求の範囲における「第1の生成部」の一例であり、コンバータ310-1が出力する矩形波形の出力電力は、特許請求の範囲における「第2出力電力」の一例であってもよい。この場合、コンバータ310-2は、特許請求の範囲における「第4の生成部」の一例であり、コンバータ310-2が出力する矩形波形の出力電力は、特許請求の範囲における「第6出力電力」の一例であってもよい。
【0160】
コンバータ310-1とコンバータ310-2とのそれぞれは、コンバータ300と同じ構成のコンバータに限らない。つまり、コンバータ310-1とコンバータ310-2とのそれぞれは、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルに基づく電圧波形の出力電力する構成でなくても、電力E1あるいは出力電力E3の電圧波形に相当する矩形波形の出力電力を出力することができる構成であれば、いかなる構成であってもよい。例えば、コンバータ310-1とコンバータ310-2とのそれぞれは、出力する出力電力の電圧波形が、電力E1あるいは出力電力E3の電圧波形に相当する矩形波形となるように予め構成されている、ブリッジタイプやプッシュプルタイプの双方向絶縁型DC―DCコンバータであってもよい。例えば、コンバータ310-1とコンバータ310-2とのそれぞれは、バッテリ20から供給(放電)された直流電力を、出力する出力電力の電圧波形が、電力E1あるいは出力電力E3の電圧波形に相当する矩形波形となるようにスイッチング動作をするスイッチング回路であってもよい。この場合、コンバータ310-1とコンバータ310-2とのそれぞれは、バッテリ20と同じ直流電圧値の直流電力を放電(供給)または充電する、バッテリ20と同様の他のバッテリを備え、これらのバッテリ20から供給(放電)された直流電力に対してスイッチング動作をする構成であってもよい。この場合の構成は、第2実施形態の電力変換装置31(電力変換装置31aであってもよい)におけるバッテリ20とスイッチング素子S13との構成、あるいはバッテリ21とスイッチング素子S17との構成に相当するものであってもよい。
【0161】
スイッチング素子S22は、例えば、制御装置100による制御に応じて、コンバータ310-1から出力される出力電力が供給される方向を制限する。スイッチング素子S22は、第1実施形態の電力変換装置30が備えるスイッチング素子S5、第1実施形態の変形例の電力変換装置30aが備えるスイッチング素子S6、第2実施形態の電力変換装置31が備えるスイッチング素子S11、あるいは第2実施形態の変形例の電力変換装置31aが備えるスイッチング素子S15に相当するものである。スイッチング素子S22は、特許請求の範囲における「スイッチング部」および「第7のスイッチング素子」の一例である。
【0162】
図24では、スイッチング素子S21、スイッチング素子S21R、およびスイッチング素子S22が、ダイオードとスイッチとで構成されている場合の一例を示しているが、第1実施形態の電力変換装置30が備えるスイッチング素子S5や、第2実施形態の電力変換装置31が備えるスイッチング素子S11などと同様に、電界効果トランジスタFETや、ダイオードDと絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTとで構成されてもよい(
図4参照)。
【0163】
図24においては、電圧波形生成部32VGと、矩形電圧生成部32SVG-1と、矩形電圧生成部32SVG-2とのそれぞれが異なる構成である場合を示している。つまり、電圧波形生成部32VGには、スイッチング素子S21とスイッチング素子S21Rを備え、矩形電圧生成部32SVG-1には、スイッチング素子S22を備え、矩形電圧生成部32SVG-2には、いずれのスイッチング素子も備えない構成を示している。しかし、例えば、コンバータ300、コンバータ310-1、およびコンバータ310-2が共に、制御装置100により入力または設定された出力波形プロファイルに基づく電圧波形の出力電力する構成である場合には、電圧波形生成部32VGと、矩形電圧生成部32SVG-1と、矩形電圧生成部32SVG-2とのそれぞれは、同じ構成であってもよい。この場合、スイッチング素子S21とスイッチング素子S21Rとのそれぞれを使用するか否かを切り替えることができる構成であればよい。例えば、コンバータ310-1とコンバータ310-2とが共に同じ構成(スイッチング回路、あるいはバッテリ20とは異なるバッテリを備える構成)である場合には、矩形電圧生成部32SVG-1と矩形電圧生成部32SVG-2とのそれぞれは、同じ構成であってもよい。この場合、スイッチング素子S22を使用するか否かを切り替えることができる構成であればよい。それぞれのスイッチング素子Sを使用するか否かを切り替えることができる構成は、例えば、使用しないスイッチング素子Sをバイパスさせるための機械的な構成であってもよいし、電気的な構成であってもよい。
【0164】
[電力変換装置の動作]
ここで、制御装置100による電力変換装置32の制御と電力変換装置32の動作の一例について説明する。
図25は、車両1が備える制御装置100における電力変換装置32の制御の一例を説明する図である。
図25の(a)には、車両1の走行のために走行用モータ10を駆動させる場合のコンバータ300、コンバータ310-1、コンバータ310-2、およびスイッチング素子Sの制御Cを示し、
図25の(b)には、走行用モータ10によって発電された電力をバッテリ20およびバッテリ21に充電させる場合のコンバータ300、コンバータ310-1、コンバータ310-2、およびスイッチング素子Sの制御C’を示している。
図25において「OP」は、コンバータ300、コンバータ310-1、またはコンバータ310-2を動作状態に制御することを表し、「NOP」は、コンバータ300、コンバータ310-1、またはコンバータ310-2を非動作状態に制御することを表している。そして、
図25において、コンバータ300の「OP」における“():括弧”内の記載は、「UP」が、コンバータ300が出力する出力電力E2の電圧値が上昇するように変化している状態(途中の状態も含む)であることを表し、「Max」が、コンバータ300が出力する出力電力E2の電圧値が最大値になっている状態であることを表し、「0V」が、コンバータ300が出力する出力電力E2の電圧値がゼロになっている状態であることを表している。一方、
図25においては、コンバータ300が
図21の(c)に示したような電圧波形の出力電力を生成するのに対して、コンバータ310-1、およびコンバータ310-2は、
図21の(a)や
図21の(b)に示したような矩形の電圧波形の出力電力を生成して出力するため、電圧値が最大値の電力を出力する動作状態を「OP」とし、電圧値がゼロの電力を出力する非動作状態を「NOP」として表している。
図25において「ON」は、スイッチング素子Sを導通状態に制御することを表し、「OFF」は、スイッチング素子Sを非導通状態に制御することを表し、“↑:上向きの矢印”は、スイッチング素子Sの制御を変更していないことを表し、“():括弧”内の記載は、スイッチング素子Sを流れる構成要素を表している。
【0165】
電力変換装置32において生成する電圧波形の一例、および電圧波形を波形合成する様子の一例は、
図21に示した第2実施形態の変形例の電力変換装置31aにおいて生成する電圧波形の一例、および電圧波形を波形合成する様子の一例と同様である。より具体的には、電力変換装置32では、コンバータ300が、バッテリ20から供給(放電)された直流電力(以下、「直流電力E」という)から、
図21の(c)に示したような電圧波形の出力電力E2を生成して出力し、コンバータ300-1が、
図21の(a)に示したような電圧波形の電力E1を生成して出力し、コンバータ300-2が、
図21の(b)に示したような電圧波形の出力電力E3を生成して出力する。
【0166】
図26は、車両1が備える制御装置100が電力変換装置32を制御する詳細なタイミングの一例を説明する図である。
図26には、負荷LDに供給される電力の電圧波形を波形合成する際に、コンバータ300と、コンバータ310-1および/またはコンバータ310-2との接続を切り替えるタイミングにおける電圧波形の変化の様子の一例を示している。
図26の(a)には、コンバータ300が出力する出力電力E2の電圧波形と、コンバータ310-1が出力する電力E1の電圧波形とを波形合成する際の電圧波形の変化の様子の一例を示し、
図26の(b)には、さらにコンバータ310-2が出力する出力電力E3の電圧波形を波形合成する際の電圧波形の変化の様子の一例を示している。以下の説明においては、
図25の(a)および
図26に加えて、
図21を適宜参照して、電力変換装置32が負荷LD側に電力を供給する場合の動作を説明する。
【0167】
制御装置100は、
図21に示した時刻t0において、つまり、負荷LDに供給される電力の電圧値Voutが、バッテリ20から供給された直流電力Eの直流電圧値よりも低い状態のときに、
図25の(a)に示した制御C1の段のように、電力変換装置32が備えるそれぞれの構成要素を制御する。これにより、電力変換装置32では、時刻t0~時刻t1までの期間において、コンバータ300が出力する正弦波の半波に沿って上昇する出力電力E2が、スイッチング素子S21のダイオードDを通って負荷LD側に供給される(
図21の(d)参照)。これにより、負荷LDに供給される電力の電圧値Voutは、出力電力E2の電圧値となる。
【0168】
その後、制御装置100は、
図21に示した時刻t1において、コンバータ300が出力する出力電力E2の電圧値が最大値まで上昇したとき、つまり、電圧値Voutが直流電力Eの直流電圧値に等しい電圧値まで上昇したときに、
図25の(a)に示した制御C2の段のように、電力変換装置32が備えるそれぞれの構成要素を制御する。つまり、制御装置100は、コンバータ310-1を動作させる。これにより、電力変換装置32では、コンバータ310-1が出力する矩形波形の電力E1が、スイッチング素子S22が備えるダイオードDを通って出力され、電力E1の電圧波形と出力電力E2の電圧波形とを波形合成した電力が負荷LD側に供給される(
図21の(d)参照)。
【0169】
ここで、電力E1の電圧波形と出力電力E2の電圧波形とを波形合成する際の詳細なタイミングについて、
図26の(a)を用いて説明する。制御装置100は、出力電力E2の電圧値が、直流電力Eの直流電圧値に等しい電圧値になった時刻t1-1のタイミングで、コンバータ310-1を動作させる。これにより、コンバータ310-1から、直流電力Eに基づく電力E1の出力が開始される。時刻t1-1から時刻t1-2までの間、スイッチング素子S21RのダイオードDを通って電流が流れ、出力電力E2の電圧値が電力E1の電圧値よりも低くなると、スイッチング素子S21が備えるダイオードDには逆バイアスが印加されることとなり、スイッチング素子S21はOFF(非導通状態)となる。そして、電力変換装置32では、電力E1の電圧波形と出力電力E2の電圧波形とが波形合成され、出力電力E2の電圧値がゼロになる時刻t1-2のタイミングから、電力E1と出力電力E2とを合わせた電力の負荷LD側への供給が開始される。このようにして電力変換装置32では、出力電力E2の電圧波形と電力E1の電圧波形とが波形合成される。そして、電力変換装置32では、時刻t1~時刻t2までの期間において、コンバータ310-1が出力する電力E1に、コンバータ300が出力する正弦波の半波に沿って上昇する出力電力E2が合わされて、負荷LD側に供給される。これにより、負荷LDに供給される電力の電圧値Voutは、バッテリ20の直流電圧値の2倍の電圧値まで上昇する。
【0170】
その後、制御装置100は、
図21に示した時刻t2において、コンバータ300が出力する出力電力E2の電圧値が最大値まで上昇したとき、つまり、電圧値Voutが直流電力Eの2倍の直流電圧値に等しい電圧値まで上昇したときに、
図25の(a)に示した制御C3の段のように、電力変換装置32が備えるそれぞれの構成要素を制御する。つまり、制御装置100は、コンバータ310-2を動作させる。これにより、電力変換装置32では、コンバータ310-2から矩形波形の出力電力E3が出力され、電力E1の電圧波形と出力電力E2の電圧波形との合成波形に、さらに出力電力E3の電圧波形を波形合成した電力が負荷LD側に供給される(
図21の(d)参照)。
【0171】
ここで、電力E1の電圧波形と出力電力E2の電圧波形との合成波形に、さらに出力電力E3の電圧波形を波形合成する際の詳細なタイミングについて、
図26の(b)を用いて説明する。制御装置100は、出力電力E2の電圧値が、直流電力Eの直流電圧値に再度等しい電圧値になった時刻t2-1のタイミングで、コンバータ310-2を動作させる。これにより、コンバータ310-2から、直流電力Eに基づく出力電力E3の出力が開始される。時刻t2-1から時刻t2-2までの間、スイッチング素子S21RのダイオードDを通って電流が流れ、出力電力E2の電圧値が電力E1の電圧値よりも低くなると、スイッチング素子S21が備えるダイオードDには逆バイアスが印加されることとなり、スイッチング素子S21はOFF(非導通状態)となる。さらに、スイッチング素子S22が備えるダイオードDにも逆バイアスが印加されることとなり、スイッチング素子S22もOFF(非導通状態)となる。そして、電力変換装置32では、電力E1の電圧波形と出力電力E2の電圧波形との合成波形に、さらに出力電力E3の電圧波形が波形合成され、出力電力E2の電圧値がゼロになる時刻t2-2のタイミングから、電力E1と出力電力E2と出力電力E3とを合わせた電力の負荷LD側への供給が開始される。このようにして電力変換装置32では、電力E1の電圧波形と出力電力E2の電圧波形との合成波形に、さらに出力電力E3の電圧波形が波形合成される。そして、電力変換装置32では、時刻t2~時刻t3までの期間において、コンバータ310-1が出力する電力E1とコンバータ310-2が出力する出力電力E3とを合わせた電力に、コンバータ300が出力する正弦波の半波に沿って上昇する出力電力E2が合わされて、負荷LD側に供給される。これにより、負荷LDに供給される電力の電圧値Voutは、バッテリ20の直流電圧値の3倍の電圧値まで上昇し、その後、下降する。
【0172】
その後、制御装置100は、
図21に示した時刻t3において、コンバータ310-2の動作を停止させ、
図21に示した時刻t4において、コンバータ310-2の動作を停止させる。これにより、負荷LD側に供給される電力は、コンバータ300が出力する正弦波の半波に沿って下降する。この場合の電力変換装置32の動作は、
図25および
図26を用いて説明した電力変換装置32の動作を逆にした場合と等価なものになるようにすればよい。従って、詳細な説明は省略する。そして、
図21に示した時刻t5、つまり、次の時刻t0から、同様の制御を繰り返す。
【0173】
制御装置100によるこのような制御によって、電力変換装置32では、
図21の(d)に示したような、バッテリ20の直流電圧値の3倍の電圧値で、電圧波形が、電圧値=0[V]を基準とした正弦波の半波の電力を、負荷LDに供給する。
【0174】
制御装置100は、走行用モータ10が回生ブレーキとして動作して発電した電力をバッテリ20に充電させる場合も、同様に制御する。この場合の電力変換装置32の動作は、
図25および
図26を用いて説明した車両1の走行のために走行用モータ10を駆動させる場合の動作を逆にした場合と等価なものになるようにすればよい。従って、詳細な説明は省略する。
【0175】
このような構成および制御によって、電力変換装置32は、第1実施形態の電力変換装置30(より具体的には、電力変換装置30a)や、第2実施形態の電力変換装置31(より具体的には、電力変換装置31a)と同様に、制御装置100による制御に応じて、バッテリ20から供給(放電)された直流電力の電圧を3倍に昇圧した交流電力に変換して、走行用モータ10に供給することができる。この場合も、電力変換装置32は、第1実施形態の電力変換装置30(電力変換装置30aを含む)や、第2実施形態の電力変換装置31(電力変換装置31aを含む)と同様に、従来のインバータを用いた電力変換装置よりも、電力の変換効率の低下や、高耐圧の部品を用いることによる損失の増大、部品の劣化を抑えた電力変換をすることができる。つまり、電力変換装置32でも、従来のインバータを用いた電力変換装置よりも効率よく、電力変換をすることができる。
【0176】
[第3実施形態の変形例]
上述した電力変換装置32では、バッテリ20が放電する直流電圧値の3倍の電圧値で、電圧波形が正弦波の半波の電力を負荷LD側、つまり、走行用モータ10に供給する構成について説明した。より具体的には、電力変換装置32では、電圧波形生成部32VGと、矩形電圧生成部32SVG-1と、矩形電圧生成部32SVG-2とを積み上げる構成によって、バッテリ20の直流電力Eの電圧を3倍に昇圧する場合について説明した。しかし、電力変換装置32でも、走行用モータ10に供給する電力を、直流電力Eの2倍、あるいは4倍以上にする構成も実現することができる。この場合、例えば、電力変換装置32を、走行用モータ10に供給する電力を直流電力Eの2倍に昇圧する構成にする場合には、矩形電圧生成部32SVG-1を省略し、矩形電圧生成部32SVG-2が備えるコンバータ310-2に、
図16の(a)に示したような電圧波形の電力E1を出力させるようにすればよい。そして、電圧波形生成部32VGに、
図16の(b)に示したような電圧波形の出力電力E2を出力させるようにすればよい。例えば、電力変換装置32を、走行用モータ10に供給する電力を直流電力Eの4倍に昇圧する構成にする場合には、矩形電圧生成部32SVG-1と同様の構成の矩形電圧生成部32SVGを矩形電圧生成部32SVG-2との間に追加して、電圧波形生成部32VG、およびそれぞれの矩形電圧生成部32SVGに、必要な電圧波形の出力電力を出力させるようにすればよい。電力変換装置32では、同様に、矩形電圧生成部32SVG-1と同様の構成の矩形電圧生成部32SVGを積み上げることによって、さらにバッテリ20の直流電力の電圧を昇圧する倍数を増やす(5倍以上にする)こともできる。これらの場合における電力変換装置32の動作、および処理などは、上述した電力変換装置32の動作、および処理と等価なものになるようにすればよい。
【0177】
上記に述べたとおり、各実施形態の電力変換装置によれば、バッテリ20により出力された直流電力に基づく、走行用モータ10を駆動させる周波数の矩形波形の電力E1を生成し、走行用モータ10を駆動させる周波数の正弦波の半波から電力E1の電圧波形を減算した電圧波形の出力電力E2を生成する。そして、各実施形態の電力変換装置では、電力E1の電圧波形と出力電力E2の電圧波形とを波形合成して、走行用モータ10を駆動させる周波数の、電圧値=0[V]を基準とした正弦波の半波の電力を生成する。その後、各実施形態の電力変換装置では、生成した正弦波の半波の偶数番目を反転させることにより、走行用モータ10を駆動させる周波数の正弦波の全波の交流電力に変換して、走行用モータ10に供給する。これにより、各実施形態の電力変換装置では、従来のインバータを用いた電力変換装置よりも、電力の変換効率の低下や、高耐圧の部品を用いることによる損失の増大、部品の劣化を抑えた、効率のよい電力変換をすることができる。
【0178】
以上説明した各実施形態の電力変換装置によれば、少なくとも、バッテリ20により出力された直流電力を、入力または設定された出力波形プロファイルに基づく電圧波形(走行用モータ10を駆動させる周波数の正弦波の半波から、スイッチング回路が出力する電力E1の電圧波形を減算した電圧波形)の出力電力E2に変換して出力するコンバータ300と、直流電力に基づく電力E1を生成して出力するスイッチング回路(スイッチング素子S1~スイッチング素子S4)と、を備え、出力電力E2と電力E1とを加算することで生成される交流の制御波形である正弦波(全波)の交流電力を負荷LDである走行用モータ10に供給することにより、車両1における走行の特性に合致したバッテリ20の電力変換を好適にすることができる。これにより、各実施形態の電力変換装置では、直流電力を交流電力に変換する際の変換効率の低下や、高耐圧の部品を用いることによる損失の増大、部品の劣化を、従来のインバータを用いた電力変換装置よりも抑え、効率よく、電力変換をすることができる。このことにより、各実施形態の電力変換装置を搭載した車両1では、走行可能距離の長距離化や、耐久性の向上などができ、車両1の商品性を高めることができる。
【0179】
上述したそれぞれの実施形態では、電力変換装置の動作を、車両1が備える制御装置100が制御する構成を説明した。つまり、上述したそれぞれの実施形態では、電力変換装置の動作を制御する制御装置が、車両1が備える制御装置100内に構成されている場合を説明した。しかし、電力変換装置の動作を制御する制御装置は、電力変換装置が備える構成要素であってもよい。この場合、電力変換装置が備える制御装置は、車両1が備える制御装置100から、例えば、バッテリセンサ22により出力されたバッテリ情報と、電力センサ35により出力された出力電力情報と、制御装置100が求めた走行用モータ10に供給する交流電力の情報や指令値(電圧値や周波数など)を取得することにより、上述したそれぞれの実施形態の電力変換装置の動作を制御することができる。この場合における電力変換装置や制御装置の構成、動作、および処理などは、上述したそれぞれの実施形態の電力変換装置や制御装置100の構成、動作、および処理と等価なものになるようにすればよい。
【0180】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
少なくとも、第1のバッテリにより出力された第1バッテリ電力を、入力または設定された出力波形プロファイルに基づく第1電圧波形の第1出力電力に変換して出力する第1のコンバータと、前記第1バッテリ電力に基づく第2出力電力を生成して出力する第1の生成部と、を備える電力変換装置を制御する制御装置が、
ハードウェアプロセッサと、
プログラムを記憶した記憶装置と、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、
前記第1出力電力と前記第2出力電力とを加算することで生成される交流の制御波形の第3出力電力を負荷に供給するように制御する、
ように構成されている、電力変換装置。
【0181】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0182】
1・・・車両
10・・・走行用モータ
12・・・駆動輪
14・・・ブレーキ装置
16・・・減速機
20,21・・・バッテリ
22・・・バッテリセンサ
30,30U,30V,30W、30a,31,31a・・・電力変換装置
30VG,30aVG,31VG,32VG・・・電圧波形生成部
30PC・・・単相変換器
300,300a、300-2・・・コンバータ
302,302a・・・DC―DCコンバータ
304・・・制御部
3042・・・乗算器
3044・・・フィードバック部
3046・・・比較部
3048・・・ゲート駆動信号生成部
32SVG-1・・・矩形電圧生成部
32SVG-2・・・矩形電圧生成部
35・・・電力センサ
390・・・昇降圧チョッパ
392・・・バック・ブースト・コンバータ
50・・・運転操作子
60・・・車両センサ
80・・・外部接続装置
100・・・制御装置
102・・・出力決定部
104・・・出力波形プロファイル決定部
106・・・コンバータ制御部
108・・・スイッチング制御部
S1,S2,S3,S4・・・スイッチング素子
S5,S5a,S5b,S5c,S6・・・スイッチング素子
S11,S12,S14,S15,S16,S18・・・スイッチング素子
S13,S13a,S13b,S13c,S17・・・スイッチング素子
S21・・・スイッチング素子
S21R・・・スイッチング素子
S22・・・スイッチング素子
LD・・・負荷