(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187664
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】表面検査装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095769
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】相川 清史
(72)【発明者】
【氏名】桑田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】田崎 海渡
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB07
2G051AC04
2G051BA08
2G051BC01
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB01
2G051CC07
2G051CC20
2G051ED21
(57)【要約】
【課題】照明光の光量を可変した複数枚の画像の撮像と複数枚の画像を合成する処理とを必要とする場合とは異なり、対象とする物体の表面の情報を過不足なく含む画像を1回の撮像で取得できるようにする。
【解決手段】表面検査装置は、検査の対象とする物体の表面を照明する光源と、表面を撮像する撮像デバイスと、表面の反射光を撮像デバイスに導く光学系と、撮像デバイスで撮像された画像を処理するプロセッサとを有する。プロセッサは、光源の光量の調整後も画像に白飛び又は黒潰れが解消しない場合、ボケ量を増やす撮像の実行を指示する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査の対象とする物体の表面を照明する光源と、
前記表面を撮像する撮像デバイスと、
前記表面の反射光を前記撮像デバイスに導く光学系と、
前記撮像デバイスで撮像された画像を処理するプロセッサと、を有し、
前記プロセッサは、前記光源の光量の調整後も前記画像に白飛び又は黒潰れが解消しない場合、ボケ量を増やす撮像の実行を指示する、
表面検査装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記光学系の焦点距離を長くする方向に制御する、
請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、予め定めた条件を満たす輝度値の分布が検出されると、前記焦点距離の制御を停止する、
請求項2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記光学系の絞り値を小さくする、
請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、予め定めた条件を満たす輝度値の分布が検出されると、前記絞り値の制御を停止する、
請求項4に記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記光源の光量の調整により前記画像の白飛び及び黒潰れの両方が解消する場合でも、輝度値の分布幅が予め定めた範囲より狭くなると、ボケ量を減らす撮像の実行を指示する、
請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項7】
装置本体は、前記光源から出力された照明光と検査の対象である前記物体で反射された反射光とが入出力される開口部を更に有し、
前記プロセッサは、ボケ量を増やす撮像の実行を指示する場合、前記開口部と前記物体との距離を調整する付属部品の取り付けをユーザに指示する、
請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項8】
高さが異なる複数の前記付属部品が存在する場合、
前記プロセッサは、前記付属部品の交換をユーザに指示する、
請求項7に記載の表面検査装置。
【請求項9】
前記開口部と前記物体との距離の調整が、前記付属部品の回転により可能である場合、
前記プロセッサは、前記付属部品の回転をユーザに指示する、
請求項7に記載の表面検査装置。
【請求項10】
装置本体の携帯が可能であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の表面検査装置。
【請求項11】
撮像デバイスにより撮像された画像を処理するコンピュータに、
検査の対象である物体の表面を照明する光源の光量を調整する機能と、
前記光量の調整後も前記画像に白飛び又は黒潰れが解消しない場合、ボケ量を増やす撮像の実行を指示する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面検査装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、様々な製品において、合成樹脂を成形した部品(以下「成形品」という)が用いられている。一方で、成形品の表面には、視覚的に観察が可能な不良が現れることがある。この種の不良には、意図せず形成される凹みである「ヒケ」、溶融した樹脂が合流する部分に形成される「ウェルド」等がある。また、表面に意図的に凹凸を形成するシボ加工の場合にも、想定する質感との違いが現れることがある。質感には、色、光沢、凹凸の複合的な要因により変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物体の表面の品質を検査する装置(以下「表面検査装置」ともいう)においては、微細な不良を検査するために照明光の光量を高くし過ぎると、いわゆる「白飛び」が生じる。一方で、白飛びを避けるべく照明光の光量を低くし過ぎると、いわゆる「黒潰れ」が生じてしまう。そこで、撮像時の光量が異なる2枚の画像を合成することで、白飛びも黒潰れもない画像を生成する考えがある。
しかし、1枚目の画像と2枚目の画像の違いが光量だけとは限らない。例えば1枚目の撮像と2枚目の撮像の間で位置合わせに時間を要したり、撮像の向きが変わったりする可能性がある。また、2枚の画像を合成する処理は、表面検査装置の計算資源に負荷を与える。
【0005】
本発明は、照明光の光量を可変した複数枚の画像の撮像と複数枚の画像を合成する処理とを必要とする場合とは異なり、対象とする物体の表面の情報を過不足なく含む画像を1回の撮像で取得できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、検査の対象とする物体の表面を照明する光源と、前記表面を撮像する撮像デバイスと、前記表面の反射光を前記撮像デバイスに導く光学系と、前記撮像デバイスで撮像された画像を処理するプロセッサと、を有し、前記プロセッサは、前記光源の光量の調整後も前記画像に白飛び又は黒潰れが解消しない場合、ボケ量を増やす撮像の実行を指示する、表面検査装置である。
請求項2に記載の発明は、前記プロセッサは、前記光学系の焦点距離を長くする方向に制御する、請求項1に記載の表面検査装置である。
請求項3に記載の発明は、前記プロセッサは、予め定めた条件を満たす輝度値の分布が検出されると、前記焦点距離の制御を停止する、請求項2に記載の表面検査装置である。
請求項4に記載の発明は、前記プロセッサは、前記光学系の絞り値を小さくする、請求項1に記載の表面検査装置である。
請求項5に記載の発明は、前記プロセッサは、予め定めた条件を満たす輝度値の分布が検出されると、前記絞り値の制御を停止する、請求項4に記載の表面検査装置である。
請求項6に記載の発明は、前記プロセッサは、前記光源の光量の調整により前記画像の白飛び及び黒潰れの両方が解消する場合でも、輝度値の分布幅が予め定めた範囲より狭くなると、ボケ量を減らす撮像の実行を指示する、請求項1に記載の表面検査装置である。
請求項7に記載の発明は、装置本体は、前記光源から出力された照明光と検査の対象である前記物体で反射された反射光とが入出力される開口部を更に有し、前記プロセッサは、ボケ量を増やす撮像の実行を指示する場合、前記開口部と前記物体との距離を調整する付属部品の取り付けをユーザに指示する、請求項1に記載の表面検査装置である。
請求項8に記載の発明は、高さが異なる複数の前記付属部品が存在する場合、前記プロセッサは、前記付属部品の交換をユーザに指示する、請求項7に記載の表面検査装置である。
請求項9に記載の発明は、前記開口部と前記物体との距離の調整が、前記付属部品の回転により可能である場合、前記プロセッサは、前記付属部品の回転をユーザに指示する、請求項7に記載の表面検査装置である。
請求項10に記載の発明は、装置本体の携帯が可能であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の表面検査装置である。
請求項11に記載の発明は、撮像デバイスにより撮像された画像を処理するコンピュータに、検査の対象である物体の表面を照明する光源の光量を調整する機能と、前記光量の調整後も前記画像に白飛び又は黒潰れが解消しない場合、ボケ量を増やす撮像の実行を指示する機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、照明光の光量を可変した複数枚の画像の撮像と複数枚の画像を合成する処理とを必要とする場合とは異なり、対象とする物体の表面の情報を過不足なく含む画像を1回の撮像で取得できる。
請求項2記載の発明によれば、ボケ量を増やすことで、輝度値の分布幅を確保しながら、高輝度と低輝度の画素数を低減できる。
請求項3記載の発明によれば、白飛びや黒潰れを解消しつつもボケ量を最小限に抑制できる。
請求項4記載の発明によれば、ボケ量を増やすことで、輝度値の分布幅を確保しながら、高輝度と低輝度の画素数を低減できる。
請求項5記載の発明によれば、白飛びや黒潰れを解消しつつもボケ量を最小限に抑制できる。
請求項6記載の発明によれば、階調情報が多い画像を撮像できる。
請求項7記載の発明によれば、ボケ量を増やすことで、輝度値の分布幅を確保しながら、高輝度と低輝度の画素数を低減できる。
請求項8記載の発明によれば、ボケ量の調整により、輝度値の分布幅を確保しながら、高輝度と低輝度の画素数を低減できる。
請求項9記載の発明によれば、ボケ量の調整により、輝度値の分布幅を確保しながら、高輝度と低輝度の画素数を低減できる。
請求項10記載の発明によれば、検査の対象とする物体の表面と表面検査装置が撮像する範囲が不定でも、表面の品質の検査の精度を高めることができる。
請求項11記載の発明によれば、照明光の光量を可変した複数枚の画像の撮像と複数枚の画像を合成する処理とを必要とする場合とは異なり、対象とする物体の表面の情報を過不足なく含む画像を1回の撮像で取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1で想定する表面検査装置の使用例を説明する図である。
【
図2】検査対象の表面に現れる欠陥の例を説明する図である。(A)はヒケの例を示し、(B)はウェルドの例を示す。
【
図3】実施の形態1で使用する表面検査装置のハードウェア構成の一例を説明する図である。
【
図4】実施の形態1における表面検査装置の光学系の構造例を説明する図である。(A)は表面検査装置1の筐体の内部構造を概略的に示し、(B)は検査の際に検査対象の表面に押し当てられる開口部の構造を示す。
【
図5】実施の形態1で使用するスペーサを説明する図である。(A)は表面検査装置の鍔部が装着される側からスペーサを見た平面図であり、(B)は
図5(A)における円形状のスペーサの中心点を通るVB-VB’線で破断する場合の断面図であり、(C)は表面検査装置へのスペーサの装着例を説明する断面図である。
【
図6】実施の形態1で使用する表面検査装置による検査動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図7】実施の形態1においてディスプレイに表示される操作画面の一例を説明する図である。
【
図8】実施の形態1におけるスコアの算出の原理を説明する図である。(A)は検査の対象として取得された画像例を示し、(B)はY軸と平行に形成された筋状の凹みをX軸方向から観察した断面を示し、(C)は画像の輝度プロファイルを示す。
【
図9】実施の形態1において白飛び又は黒潰れの発生が検知された場合に実行される処理動作例を説明するフローチャートである。
【
図10】実施の形態1においてスペーサの取り付け指示等に用いる操作画面の一例を説明する図である。
【
図11】実施の形態2で使用するスペーサを説明する図である。(A)は表面検査装置の鍔部が装着される側からスペーサを見た平面図であり、(B)は
図11(A)における円形状のスペーサの中心点を通るXIB-XIB’線で破断する場合の断面図であり、(C)は表面検査装置へのスペーサの装着例を説明する断面図である。
【
図12】実施の形態2において白飛び又は黒潰れの発生が検知された場合に実行される処理動作の他の例を説明するフローチャートである。
【
図13】実施の形態2においてスペーサの取り付け指示等に用いる操作画面の一例を説明する図である。
【
図14】実施の形態3で使用する表面検査装置のハードウェア構成の一例を説明する図である。
【
図15】実施の形態3における表面検査装置の光学系の構造例を説明する図である。
【
図16】実施の形態3において白飛び又は黒潰れの発生が検知された場合に実行される処理動作の他の例を説明するフローチャートである。
【
図17】実施の形態3において結像レンズの光軸方向への移動後に再撮像を作業者に促す場合に使用する操作画面の一例を説明する図である。
【
図18】実施の形態4で使用する表面検査装置のハードウェア構成の一例を説明する図である。
【
図19】実施の形態4における表面検査装置の光学系の構造例を説明する図である。
【
図20】実施の形態4において白飛び又は黒潰れの発生が検知された場合に実行される処理動作の他の例を説明するフローチャートである。
【
図21】実施の形態5で使用する表面検査装置による検査動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図22】実施の形態6における表面検査装置の光学系の構造例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
<実施の形態1>
<表面検査装置の使用例>
図1は、実施の形態1で想定する表面検査装置1の使用例を説明する図である。
実施の形態1で使用する表面検査装置1の撮像部は、いわゆるエリアカメラであり、撮像する範囲(以下「撮像範囲」という)が面で規定される。
【0010】
図1の場合、撮像範囲は、検査の対象とする物体(以下「検査対象」ともいう)10の全体を含んでいる。もっとも、撮像範囲は、検査対象10のうち注目する一部分のみを含んでもよい。本実施の形態における検査対象10には、成形品を想定する。
エリアカメラによる検査の場合、表面検査装置1と検査対象10による検査は、静止した状態で実行される。換言すると、表面検査装置1と検査対象10が相対的に移動しない状態で、検査対象10の表面の検査が実行される。
【0011】
図1の場合、検査対象10は板状であるが、検査対象10の形状は任意である。例えば検査対象10は、例えば多面体の他、球体や円柱等の曲面を有する形状でもよい。
実際の検査対象10には、穴、切り欠き、突起、段差等が存在することがある。
また、検査対象10の表面の仕上げの種類には、無処理、鏡面仕上げ、準鏡面仕上げ、シボ加工等がある。
【0012】
表面検査装置1は、検査対象10の表面の欠陥や質感を検査する。
欠陥には、例えばヒケ、ウェルドがある。ヒケは、肉厚部分やリブ部に発生する表面の凹みであり、ウェルドは、溶融した樹脂の先端が金型内で合流する部分に発生する筋をいう。なお、欠陥には、物がぶつかることで生じる傷や打痕も含まれる。ヒケやウェルドは、一次元的なパターンの一例である。
質感は、視覚や触覚の印象であり、物体の表面の色、光沢、凹凸が影響する。表面の凹凸には、金型を切削する際に生じた筋も含まれる。この種の筋は、欠陥とは異なる。
【0013】
図2は、検査対象10の表面に現れる欠陥の例を説明する図である。(A)はヒケの例を示し、(B)はウェルドの例を示す。
図2(A)及び
図2(B)では、欠陥の箇所を破線で囲んで示している。
図2(A)には4つのヒケがある。
本実施の形態における表面検査装置1は、欠陥と質感の検査に限らず、表面の汚れの検査にも使用される。
【0014】
表面検査装置1は、検査対象10の表面の欠陥や質感を評価した結果を定量化して出力する。
ここでの欠陥は、本来は平坦であるべきに部分に出現している凹凸や筋、すなわちヒケやウェルドである。質感は、数値(以下「スコア」ともいう)により評価される。スコアは、検査対象10の表面の品質を表す数値の一例である。
【0015】
スコアの算出には、例えば多変量解析を使用する。多変量解析では、例えば輝度分布に現れる特徴が解析される。特徴の例には、例えばヒケの方向に沿って延びる筋状のパターンがある。
この他、スコアの算出には、人工知能を用いる方法もある。例えば欠陥を撮像した画像とスコアの関係を深層機械学習等した学習モデルにカメラで撮像された画像を与えることで、検査範囲内の部分領域のスコアが算出される。
【0016】
図1に示す検査対象10は、X軸とY軸で規定される面に対して平行に設置されている。この場合、検査対象10の表面の法線はZ軸と平行になる。
一方、表面検査装置1は、検査対象10の鉛直上方に配置される。換言すると、表面検査装置1が検査対象10の撮像に使用する光学系の光軸は、検査対象10の表面の法線に対して概略平行に設定される。以下、この光軸について要求される条件を「撮像条件」ともいう。
【0017】
このとき、表面検査装置1は、撮像条件を満たす位置に設置される。表面検査装置1の設置は、特定の部材への固定により行ってもよいし、特定の部材に対して取り外し可能に行われてもよい。
もっとも、表面検査装置1は、携帯型の装置でもよい。携帯が可能である場合、作業者は、例えば手に表面検査装置1を持ち、受光面を検査対象10に向けることで、任意の表面を検査する。
図1では、表面検査装置1と検査対象10の位置関係の説明を目的とするため、表面検査装置1の外観を簡略化して略直方体として表している。
【0018】
<表面検査装置の構成>
図3は、実施の形態1で使用する表面検査装置1のハードウェア構成の一例を説明する図である。
図3に示す表面検査装置1は、装置全体の動作を制御するプロセッサ101と、BIOS(=Basic Input Output System)等が記憶されたROM(=Read Only Memory)102と、プロセッサ101のワークエリアとして用いられるRAM(=Random Access Memory)103と、プログラムや画像データを記憶する補助記憶装置104と、検査対象10の表面を撮像した画像や操作に関する情報が表示されるディスプレイ105と、作業者の操作を受け付ける操作受付装置106と、検査対象10の表面を撮像するカメラ107と、検査対象10の表面を照明する光源108と、外部との通信に用いられる通信IF(=InterFace)109と、を有している。なお、プロセッサ101と各部は、バス等の信号線110を通じて接続されている。
【0019】
プロセッサ101と、ROM102と、RAM103は、いわゆるコンピュータとして機能する。
プロセッサ101は、プログラムの実行を通じて各種の機能を実現する。例えばプロセッサ101は、プログラムの実行を通じ、撮像された検査対象10の表面の質感を評価したスコアの算出等を実行する。
【0020】
検査対象10の表面を撮像した画像データは、補助記憶装置104に記憶される。補助記憶装置104には、例えば半導体メモリ、ハードディスク装置を使用する。補助記憶装置104には、ファームウェアやアプリケーションプログラムも記憶される。以下では、ファームウェアやアプリケーションプログラムを総称して「プログラム」という。
なお、本実施の形態及び後述する他の実施の形態等で説明する機能を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CDROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0021】
ディスプレイ105は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、検査対象10の全体や検査対象10の特定の部位の画像等を表示する。ディスプレイ105は、検査対象10に対する撮像範囲の位置決めにも使用される。
本実施の形態の場合、ディスプレイ105は、装置本体に一体的に設けられているが、通信IF109を通じて接続される外部の装置でもよいし、通信IF109を通じて接続される他の装置の一部でもよい。例えばディスプレイ105は、通信IF109を通じて接続された他のコンピュータのディスプレイでもよい。
【0022】
操作受付装置106は、ディスプレイ105に配置されるタッチセンサや筐体に配置される物理的なスイッチ、ボタン等で構成される。
本実施の形態の場合、物理的なボタンの一例として電源ボタンや撮像ボタンが設けられている。電源ボタンが操作されると、例えば光源108が点灯し、カメラ107による撮像が開始される。また、撮像ボタンが操作されると、操作時にカメラ107が撮像していた特定の画像が、検査用の画像として取得される。
【0023】
ディスプレイ105と操作受付装置106を一体化したデバイスは、タッチパネルと呼ばれる。タッチパネルは、ソフトウェア的に表示されたキー(以下「ソフトキー」とも呼ぶ)に対するユーザの操作の受け付けに使用される。
【0024】
本実施の形態の場合、カメラ107には、カラーカメラを使用する。カメラ107の撮像素子には、例えばCCD(=Charge Coupled Device)イメージングセンサ素子やCMOS(=Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージング素子を使用する。
カメラ107としてカラーカメラを使用するので、検査対象10の表面の輝度だけでなく色調の観察も原理的には可能である。カメラ107は、撮像デバイスの一例である。
【0025】
本実施の形態の場合、光源108には白色光源を使用する。白色光源は、可視光帯域の光が均等に混在された光を発生する。
本実施の形態の場合、光源108には平行光源を使用する。また、カメラ107の光軸上にテレセントリックレンズを配置する。
【0026】
本実施の形態における光源108は、検査対象10の表面で鏡面反射された光成分が主にカメラ107に入射する角度に配置される。
通信IF109は、有線や無線による通信規格に準拠したモジュールで構成される。通信IF109には、例えばイーサネット(登録商標)モジュール、USB(=Universal Serial Bus)、無線LANその他を使用する。
【0027】
<光学系の構造>
図4は、実施の形態1における表面検査装置1の光学系の構造例を説明する図である。(A)は表面検査装置1の筐体100の内部構造を概略的に示し、(B)は検査の際に検査対象10の表面に押し当てられる開口部111の構造を示す。
開口部111には、検査対象10の表面を照明する照明光と検査対象10の表面で反射した反射光が入出力される開口111Aと、その外縁を取り囲む鍔部111Bとが設けられている。
【0028】
図4の場合、開口111Aと鍔部111Bは、いずれも円形状である。鍔部111Bの外径はΦ1である。また、開口111Aを規定する鍔部111Bの内径はΦ2である。換言すると、開口111Aの外縁は、鍔部111Bの内壁により規定される。
もっとも、開口111Aと鍔部111Bは、他の形状でもよい。例えば矩形でもよい。
なお、開口111Aと鍔部111Bは相似形状である必要はなく、開口111Aは円形状で、鍔部111Bは矩形でもよい。
【0029】
鍔部111Bは、検査対象10の表面に対する表面検査装置1の撮像方向の位置決めに使用される。換言すると、鍔部111Bは、検査の対象である表面に対するカメラ107と光源108の位置決めに用いられる。鍔部111Bには、開口111Aへの外光又は環境光の入射を防止する又は低減する役割もある。
【0030】
図4(A)に示す筐体100は、概略筒状の2つの部材を結合した構造を有し、一方の部材側に光源108が取り付けられ、他方の部材側にカメラ107やプロセッサ101が取り付けられている。
また、カメラ107が取り付けられている側の筐体100の側面には、ディスプレイ105と操作受付装置106が取り付けられている。
【0031】
なお、
図4(A)に示すカメラ107の光軸上には、結像レンズ107Aが配置されている。本実施の形態における結像レンズ107Aはテレセントリックレンズであり、筐体100に固定されている。一方、光源108の光軸上には、光源108から出力された照明光を平行光線に変換する光学レンズ108Aが配置されている。
本実施の形態で使用する結像レンズ107Aや光学レンズ108Aは、鍔部111Bが検査対象10の表面に密着される状態での撮像を前提に設計されている。
【0032】
図4(A)の場合、平板状の検査対象10のうち検査対象10の表面の法線をN0で示す。また、
図4(A)では、光源108から出力される照明光の光軸をL1で示し、検査対象10の表面で鏡面反射された反射光の光軸をL2で示す。ここでの光軸L2は、カメラ107の光軸と一致する。
【0033】
なお、現実の検査対象10の表面は、構造上又はデザイン上の凹凸、曲面、段差、つなぎ目、成形の過程等で形成された微細な凹凸等を有している。
従って、検査対象10の法線N0として、検査対象10のうち注目する領域ARの法線N0の平均値や注目する特定の位置Pの法線N0を使用してもよい。
【0034】
また、検査対象10の法線N0として、検査対象10の平均的な仮想の表面や代表的な部分の法線N0を使用してもよい。
図4(A)の場合、光源108から出力される照明光の光軸L1とカメラ107の光軸L2は、いずれも法線N0に対して角度θで取り付けられる。角度θには、例えば概略30°や概略45°を使用する。
【0035】
<検査動作の前提>
本実施の形態で使用する表面検査装置1(
図1参照)は、ヒケ等の欠陥部とその周辺部を同じ撮像回に撮像した1枚の画像をスコアの算出に使用する。
ここで、「同じ撮像回に撮像した1枚の画像」とは、異なる撮像回に撮像された複数枚の画像の合成により撮像された画像を除く意味である。なお、スコアの算出に使用する1枚の画像の撮像の回数は、1回に限らず、複数回でもよい。例えばスコアの算出に良好な画像が確定するまでに、何度も画像を撮り直すこともある。
【0036】
ところで、ヒケ等の欠陥とその周辺部との差異の確認には、欠陥部の撮像に使用する正反射成分だけでなく、拡散反射成分も必要である。人は、両方の反射成分を分離することなく観察することで表面の状態を知覚するためである。
ただし、正反射成分の強度は、拡散反射成分の強度の10倍以上である。このため、正反射成分と拡散反射成分を1つの視野内で同時に取得するには、ダイナミックレンジの広いカメラ107(
図4参照)が必要になる。しかし、表面検査装置1に設けるカメラ107のダイナミックレンジには限界がある。
【0037】
そのため、例えば正反射成分の撮像に合わせて照明光の光量を調整すると、拡散反射成分に対応する部分の画像が黒潰れすることがある。他方、拡散反射成分の撮像条件に合わせて照明光の光量を調整すると、正反射成分に対応する部分の画像が白飛びすることがある。
そこで、照明光の光量が異なる複数枚の画像からスコアの算出に使用する1枚の画像を合成する手法が考えられる。
【0038】
しかし、撮像回毎に撮像の向きが微妙に変わる可能性や撮像される領域にズレが生じる可能性がある。この場合、各撮像回の画像の位置合わせに時間を要する可能性がある。また、複数枚の画像の合成は、表面検査装置1の計算資源に与える負荷が大きい。
加えて、リアルタイムで観察と位置の調整が必要になる検査対象10(
図1参照)の場合、複数回の撮像を前提とする検査手法の採用が難しいことがある。
【0039】
そこで、以下に説明する検査動作では、光学的なボケを意図的に作り出すことにより、正反射成分と拡散反射成分が平均化された画像を1回の撮像により取得可能にする。
ここで、「光学的なボケ」とは、検査の対象である検査対象10の表面が被写界深度を外れた状態をいう。また、ボケの度合いを「ボケ量」という。ボケ量は、カメラ107の撮像面上に結像しない状態で届く光成分の幅をいう。この幅が大きいほどボケ量が大きい。
本実施の形態では、撮像光学系の焦点距離の変更に、装着によって撮像光学系の被写界深度を外すことが可能なスペーサを使用する。ここでのスペーサは、付属部品の一例である。
【0040】
図5は、実施の形態1で使用するスペーサ112を説明する図である。(A)は表面検査装置1の鍔部111Bが装着される側からスペーサ112を見た平面図であり、(B)は
図5(A)における円形状のスペーサ112の中心点を通るVB-VB’線で破断する場合の断面図であり、(C)は表面検査装置1へのスペーサ112の装着例を説明する断面図である。
本実施の形態で使用するスペーサ112は、両端が開口である概略筒形状である。
【0041】
スペーサ112のうち検査対象10と接触する面は平坦である。
スペーサ112のうち表面検査装置1の鍔部111Bと装着される側は、上段部112Aと、上段部112Aよりも一段低い下段部112Bとで構成されている。
換言すると、スペーサ112は、外径Φ3が鍔部111Bの外径Φ1より大きく、内径Φ4が鍔部111Bの内径Φ2以上である円筒形状の第1の部材の上面に、外径がΦ3で内径がΦ1である円筒形状の第2部材を重ねた構造を有している。
【0042】
なお、スペーサ112の上段部112Aの内径は、鍔部111Bの外径Φ1よりもわずかに大きく形成され、鍔部111Bの着脱が可能である。
ここでの第1の部材の高さHが、カメラ107の被写界深度を外れる大きさに設定されている。例えば4mmに設定されている。
本実施の形態の場合、スペーサ112は1種類であるが、高さHが異なる複数種類のスペーサ112を用意することが望ましい。例えば高さHが、8mm、12mm等のスペーサ112を用意する。
【0043】
なお、スペーサ112を鍔部111Bに取り付けると、照明光が照明する範囲もカメラ107が撮影する範囲も、スペーサ112を取り付けない場合の位置からズレる。
そこで、開口111Aは、ズレ量が最大の場合にも、筐体100(
図5参照)の内壁が映り込まない大きさに設計される。また、照明光の光束の面積も、ズレ量が最大の場合にも、非照射領域が生じない大きさに設計される。
【0044】
<検査動作>
図6は、実施の形態1で使用する表面検査装置1による検査動作の一例を説明するフローチャートである。図中に示す記号のSは、ステップを意味する。
図6に示す処理は、プロセッサ101(
図4参照)によるプログラムの実行を通じて実現される。
本実施の形態における表面検査装置1は、電源ボタンの操作により光源108(
図4参照)が点灯し、カメラ107(
図4参照)による撮像が開始される。撮像された画像はディスプレイ105(
図4参照)に表示される。
【0045】
図7は、実施の形態1においてディスプレイ105に表示される操作画面120の一例を説明する図である。
図7に示す操作画面120には、カメラ107(
図4参照)で撮像された画像の表示欄(以下「撮像画像欄」という)121と、スコア欄122と、凡例123とが配置されている。
撮像画像欄121には、輝度値の分布、すなわちグレースケール画像が表示される。
図7の場合、スコアの計算に使用する検査範囲の外縁を与える基準線121Aが表示されている。
【0046】
図7の例では4本の基準線121Aで囲まれた範囲が検査範囲である。検査範囲内の画像について、表面の品質を表すスコアが算出される。
なお、撮像画像欄121の右隣には、凡例123が示されている。
図7の場合、撮像画像欄121の濃淡は、階調値の「206」から「255」に対応する。
図7に示す操作画面120の場合、スコアの算出前であるので、スコア欄122は空白である。
【0047】
図6の説明に戻る。
本実施の形態では、ディスプレイ105に表示されている画像を確認している作業者が撮像ボタンを操作すると、表面の品質の評価に使用する画像が確定される。
そこで、電源ボタンの操作により検査動作を開始したプロセッサ101は、撮像ボタンの操作を受け付けたか否かを判定する(ステップ1)。撮像ボタンの操作は、検査の開始を指示する操作の一例である。
ステップ1で否定結果が得られている間、プロセッサ101は、ステップ1の判定を繰り返す。
【0048】
ステップ1で肯定結果が得られると、プロセッサ101は、検査に使用する画像を取得する(ステップ2)。具体的には、撮像ボタンが操作された時点にディスプレイ105に表示されていた画像が取得される。
本実施の形態の場合、撮像ボタンが操作されると、カメラ107による撮像が継続していても、撮像画像欄121(
図7参照)に表示される画像の更新は停止される。
次に、プロセッサ101は、画像内の最大輝度値と最小輝度値を抽出する(ステップ3)。なお、輝度値のヒストグラムを取得してもよい。
【0049】
続いて、プロセッサ101は、最大輝度値と最小輝度値を用い、白飛び又は黒潰れがあるか否かを判定する(ステップ4)。例えば最大輝度値が予め定めた上限値を超える場合、プロセッサ101は、白飛びが発生していると判定する。ここで、上限値を超えるとは、最大輝度値が上限値より大きいことを意味する。
また例えば最小輝度値が予め定めた下限値を超える場合、プロセッサ101は、黒潰れが発生していると判定する。ここで、下限値を超えるとは、最小輝度値が下限値より小さいことを意味する。
【0050】
この他、ヒストグラムの最大値側で波形が途中で途切れた形状になる場合、プロセッサ101は、白飛びが発生していると判定してもよい。また、一方、ヒストグラムの最小値側で波形が途切れた形状になる場合、プロセッサ101は、黒潰れが発生していると判定してもよい。
本実施の形態では、ヒストグラムの算出負荷を考慮して最大輝度値と最小輝度値を使用することにより、白飛びと黒潰れを簡易に判定する。
【0051】
白飛びの発生も黒潰れの発生も確認されない場合、ステップ4の判定で否定結果が得られる。ステップ4で否定結果が得られると、プロセッサ101は、検査範囲内の輝度プロファイルSを用いてスコアを算出する(ステップ5)。すなわち、撮像画像欄121に表示された4本の基準線121Aで囲まれた範囲内の画像を対象に、スコアが算出される。
図8は、実施の形態1におけるスコアの算出の原理を説明する図である。(A)は検査の対象として取得された画像例を示し、(B)はY軸と平行に形成された筋状の凹みをX軸方向から観察した断面を示し、(C)は画像の輝度プロファイルSを示す。
【0052】
図8(B)に示す凹みは、例えばヒケを表している。
図8(B)では、説明上の都合により、断面の形状が二等辺三角形の場合を表しているが、勿論、この形状は一例である。
この例の場合、
図8(C)に示す輝度プロファイルSは、X軸方向の各座標を代表する輝度値(以下「代表輝度値」という)の変化として与えられる。
ここでの代表輝度値は、X座標が同じ各画素の輝度値の積分値で与えられる。輝度プロファイルSの凸波形は周囲に比べて明るい領域を示し、凹波形は周囲に比べて暗い領域を示す。
【0053】
スコアは、例えば輝度プロファイルSの最大値と最小値の差として算出される。
スコアは、表面に形成された凹凸の幅、高さ、深さ、数等に依存する。例えば凸部の高さや凹部の深さが同じでも、より長い幅を有する凸部や凹部が形成されている部分領域のスコアが高くなる。
また、凸部や凹部の幅が同じでも、より高い凸部やより深い凹部が形成されている部分領域のスコアが高くなる。本実施の形態の場合、スコアが高いことは、品質が悪いことを意味する。
【0054】
図6の説明に戻る。
スコアが算出されると、プロセッサ101は、対応するスコアを操作画面120に表示して処理を終了する(ステップ6)。具体的には、スコア欄122(
図7参照)に算出されたスコアが表示される。
一方、白飛び又は黒潰れの発生が確認された場合、ステップ4の判定で肯定結果が得られる。ステップ4で肯定結果が得られた場合、プロセッサ101は、ステップ11(
図9参照)に進む。
【0055】
図9は、実施の形態1において白飛び又は黒潰れの発生が検知された場合に実行される処理動作例を説明するフローチャートである。
まず、プロセッサ101は、「白飛びがあるが黒潰れはない」か否かを判定する(ステップ11)。
ステップ11で肯定結果が得られた場合、プロセッサ101は、照明光の光量を下げて画像を再取得する(ステップ12)。本実施の形態の場合、プロセッサ101は、作業者の指示によらず画像を再取得するが、作業者に対して検査の対象とする領域部分の撮像を求めてもよい。
【0056】
画像の再取得が終わると、プロセッサ101は、白飛びが解消しない、又は、黒潰れが新たに発生したか否かを判定する(ステップ13)。白飛びが解消しない場合は、照明光の光量が依然として明るすぎることを意味する。また、黒潰れが新たに発生する場合は、照明光が暗くなりすぎたことを意味する。
なお、白飛びが解消し、かつ、黒潰れも発生しない場合、プロセッサ101は、ステップ13で否定結果を得る。この場合、プロセッサ101は、ステップ5(
図6参照)に進み、検査範囲内の輝度プロファイルSを用いてスコアを算出する。
【0057】
一方、ステップ13で肯定結果が得られた場合、プロセッサ101は、ボケ量を増やすスペーサ112(
図5参照)の取り付け又は交換と、検査対象10(
図1参照)の再撮像とを作業者に指示する(ステップ14)。
図10は、実施の形態1においてスペーサ112の取り付け指示等に用いる操作画面120の一例を説明する図である。
図10には、
図7との対応部分に対応する符号を付して示している。
図10の場合、操作画面120には、ダイアログボックス124がポップアップ形式で表示されている。
【0058】
図10に示すダイアログボックス124には、作業者に求める作業を記載した文と、作業の完了を確認する文が含まれている。具体的には、「スペーサを装着し、又は、より高さの高いスペーサへの交換後に、画像を撮像してください。」との文と、「装着等は完了?」との文が含まれている。なお、ダイアログボックス124は、装着等の完了の入力用に「はい」ボタン124Aも含んでいる。
図9の説明に戻る。
【0059】
本実施の形態の場合、「はい」ボタン124A(
図10参照)が検知されると、プロセッサ101は、ステップ1(
図6参照)に移行し、撮像ボタンの操作を待ち受ける状態になる。
その後、プロセッサ101は、再取得された画像について前述した処理動作を繰り返す。
一方、ステップ11で否定結果が得られた場合、プロセッサ101は、ステップ15に進む。ステップ11で否定結果が得られる場合には、白飛びと黒潰れの両方がある場合と黒潰れがあるが白飛びはない場合がある。
【0060】
ステップ15に進んだプロセッサ101は、「黒潰れがあるが白飛びはない」か否かを判定する。
本実施の形態の場合、ステップ15で否定結果が得られると、照明光の光量を変化させることなく、ステップ14に進む。この場合は、白飛びと黒潰れの両方がある場合であるので、照明光の光量を上げても白飛びは解消しないためである。
【0061】
ステップ15で肯定結果が得られた場合、プロセッサ101は、照明光の光量を上げて画像を再取得する(ステップ16)。この場合も、プロセッサ101は、作業者の指示によらず画像を再取得するが、作業者に対して検査の対象とする領域部分の撮像を求めてもよい。
画像の再取得が終わると、プロセッサ101は、黒潰れが解消しない、又は、白飛びが新たに発生したか否かを判定する(ステップ17)。黒潰れが解消しない場合は、照明光の光量が依然として暗すぎることを意味する。また、白飛びが新たに発生する場合は、照明光が明るくなりすぎたことを意味する。
【0062】
黒潰れが解消し、かつ、白飛びも発生しない場合、プロセッサ101は、ステップ17で否定結果を得る。この場合、プロセッサ101は、ステップ5(
図6参照)に進み、検査範囲内の輝度プロファイルSを用いてスコアを算出する。
一方、ステップ17で肯定結果が得られた場合、プロセッサ101は、ステップ14に進み、ボケ量を増やすスペーサ112(
図5参照)の取り付け又は交換と、検査対象の再撮像とを作業者に指示する。
【0063】
スペーサ112(
図5参照)を装着すると、検査対象10(
図1参照)の表面は、表面検査装置1(
図1参照)の設計上の被写界深度を外れた状態になる。このため、カメラ107(
図4参照)により撮像される画像にはボケが生じる。換言すると、いわゆるボケ画像が撮像される。ボケ画像は、焦点が合った状態で撮像された画像よりも輝度値が平均化される。結果的に、高輝度領域の輝度値は下がり、低輝度領域の輝度値は上がる。このため、1回の撮像により、正反射成分と拡散反射成分の両方が含まれる1枚の画像の取得が可能になる。すなわち、検査対象10の表面の情報を過不足なく含む画像を1回の撮像で取得することが可能になる。
【0064】
<実施の形態2>
<装置構成>
続いて、実施の形態2で使用する表面検査装置1について説明する。本実施の形態における表面検査装置1の外観構成等や処理動作は、実施の形態1で説明した表面検査装置1と基本的に同じである。
【0065】
図11は、実施の形態2で使用するスペーサ113を説明する図である。(A)は表面検査装置1の鍔部111Bが装着される側からスペーサ113を見た平面図であり、(B)は
図11(A)における円形状のスペーサ113の中心点を通るXIB-XIB’線で破断する場合の断面図であり、(C)は表面検査装置1へのスペーサ113の装着例を説明する断面図である。
本実施の形態で使用するスペーサ113も、両端が開口である概略筒形状である。
【0066】
図11に示すスペーサ113は、検査対象10と接触する面だけでなく、表面検査装置1(
図1参照)の鍔部111Bに装着される側も平坦である。
スペーサ113の内径Φ5は、鍔部111Bの外径Φ1と概略同じであり、スペーサ113内壁面にはネジ溝113Aが形成されている。このネジ溝113Aは、表面検査装置1の鍔部111Bの外周面に形成されている凸部と対をなす。この凸部を、ネジ溝113Aとの関係でネジ山ともいう。例えば鍔部111Bをボルトとみなす場合、スペーサ113はナットに相当する。なお、スペーサ113の外径はΦ6(>Φ5)である。
【0067】
鍔部111Bに取り付けた状態でスペーサ113を回転すると、スペーサ113は軸方向に移動する。このスペーサ113の軸方向への移動により、鍔部111Bと検査対象10との高さの調整が可能になる。
因みに、鍔部111Bがスペーサ113の上端面に位置する場合、鍔部111Bと検査対象10との距離Lは最大になる。この位置は、ボケ量の最大値を与える。
一方、鍔部111Bがスペーサ113の下端面に位置する場合、鍔部111Bと検査対象10との距離Lは最小になる。この位置は、ボケ量の最小値を与える。換言すると、鍔部111Bがスペーサ113の下端面に位置する状態は、スペーサ113を用いない場合と同じである。
【0068】
本実施の形態で使用するスペーサ113の上端面には、回転量の確認用に記号113Bが90°間隔で4つ配置されている。記号113Bは、印刷でもよいし、打刻されていてもよい。なお、記号113Bの数や形状は任意である。
本実施の形態の場合、鍔部111Bに装着されたスペーサ113を45°回転させる毎に、鍔部111Bと検査対象10の表面との距離Lは0.5mmだけ変化する。この場合、スペーサ113を半回転すると距離Lは1mm変化し、1回転すると距離Lは2mm変化する。なお、回転角と軸方向の移動距離の関係は一例である。
【0069】
<検査動作>
本実施の形態の場合も、検査動作の基本部分は
図6に示すフローチャートに基づいて実行される。ただし、本実施の形態における検査動作は、ステップ4(
図6参照)で肯定結果が得られた場合の動作が実施の形態1と異なっている。
図12は、白飛び又は黒潰れの発生が検知された場合に実行される処理動作の他の例を説明するフローチャートである。
図12には、
図9との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0070】
本実施の形態の場合、ステップ14(
図9参照)に代えてステップ21が実行される。
すなわち、照明光の光量を増減等しても白飛びや黒潰れが解消しない場合、プロセッサ101は、ボケ量を増やす方向へのスペーサ113(
図11参照)の回転と、検査対象10(
図1参照)の再撮像とを作業者に指示する(ステップ21)。
図13は、実施の形態2においてスペーサ113の取り付け指示等に用いる操作画面120の一例を説明する図である。
図13には、
図7との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0071】
図13の場合、操作画面120には、ダイアログボックス125がポップアップ形式で表示されている。
図13に示すダイアログボックス125には、作業者に求める作業を記載した文と、作業の完了を確認する文が含まれている。具体的には、「スペーサの回転による高さの調整後、画像を撮像してください。」との文と、「調整完了?」との文が含まれている。なお、ダイアログボックス125は、調整の完了の入力用に「はい」ボタン125Aも含んでいる。
【0072】
図12の説明に戻る。
本実施の形態の場合、「はい」ボタン125A(
図13参照)が検知されると、プロセッサ101は、ステップ1(
図6参照)に移行し、撮像ボタンの操作を待ち受ける状態になる。
その後の処理動作は、実施の形態1と同じである。
本実施の形態の場合、ネジ式のスペーサ113を用いるので、ボケ量を連続的に調整することが可能である。すなわち、ボケ量の無段階の調整が可能となり、作業者による微妙な調整が可能になる。
【0073】
<実施の形態3>
<装置構成>
続いて、実施の形態3で使用する表面検査装置1について説明する。本実施の形態では、焦点位置のズレを結像レンズ107A(
図4参照)の軸方向の移動により実現する場合について説明する。
本実施の形態における表面検査装置1の外観構成は、実施の形態1で説明した表面検査装置1と基本的に同じである。
図14は、実施の形態3で使用する表面検査装置1のハードウェア構成の一例を説明する図である。
図14には、
図3との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0074】
図14に示す表面検査装置1には、結像レンズ107A(
図4参照)を筐体100の軸方向に移動させるレンズ駆動装置110Aが設けられる点で、実施の形態1で説明した表面検査装置1と異なっている。なお、前提として、結像レンズ107Aは、不図示のガイドに沿って軸方向に移動可能に筐体100に取り付けられている。
プロセッサ101は、照明光の光量を増減しても白飛びや黒潰れが解消しない場合、レンズ駆動装置110Aの制御を通じ、結像レンズ107Aの取り付け位置を変更する。
【0075】
図15は、実施の形態3における表面検査装置1の光学系の構造例を説明する図である。
図15には、
図4との対応部分に対応する符号を付して示している。
レンズ駆動装置110Aは、結像レンズ107Aが収容されている概略筒状の部材内に配置され、プロセッサ101から与えられる制御信号に基づいて、結像レンズ107Aを軸方向に移動させる。結像レンズ107Aをカメラ107に近づける場合も、カメラ107から遠ざける場合も、焦点位置が初期位置からズレる。その結果、カメラ107で撮像される画像にはボケが生じる。ここでの初期位置は、実施の形態1における結像レンズ107Aの取り付け位置である。
【0076】
<検査動作>
本実施の形態の場合も、検査動作の基本部分は
図6に示すフローチャートに基づいて実行される。ただし、本実施の形態における検査動作は、ステップ4(
図6参照)で肯定結果が得られた場合の動作が実施の形態1と異なっている。
図16は、実施の形態3において白飛び又は黒潰れの発生が検知された場合に実行される処理動作の他の例を説明するフローチャートである。
図16には、
図9との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0077】
本実施の形態の場合、ステップ14(
図9参照)に代えてステップ31が実行される。
すなわち、照明光の光量を増減等しても白飛びや黒潰れが解消しない場合、プロセッサ101は、レンズ駆動装置110Aの制御を通じて結像レンズ107Aを軸方向に移動し、検査対象の再撮像を作業者に指示する(ステップ31)。
ここでの結像レンズ107Aの移動量は、結像レンズの移動後の再撮像によっても白飛びや黒潰れが解消しない場合、ステップ31の実行の都度、段階的に又は連続的に増加させてもよい。
【0078】
図17は、実施の形態3において結像レンズ107Aの光軸方向への移動後に再撮像を作業者に促す場合に使用する操作画面120の一例を説明する図である。
図17には、
図7との対応部分に対応する符号を付して示している。
図17の場合、操作画面120には、ダイアログボックス126がポップアップ形式で表示されている。
図17に示すダイアログボックス126には、作業者に求める作業を記載した文が含まれている。具体的には、「撮像ボタンを押して、画像を撮り直してください。」との文が含まれている。
【0079】
図16の説明に戻る。
本実施の形態の場合、ステップ31の実行後、プロセッサ101は、ステップ1(
図6参照)に移行し、撮像ボタンの操作を待ち受ける状態になる。
その後の処理動作は、実施の形態1と同じである。
本実施の形態の場合、スペーサ112(
図5参照)やスペーサ113(
図11参照)を表面検査装置1の鍔部111Bに取り付ける等の作業が不要になる。
【0080】
<実施の形態4>
<装置構成>
続いて、実施の形態4で使用する表面検査装置1について説明する。本実施の形態では、焦点位置のズレを絞り値の変更により実現する場合について説明する。
本実施の形態における表面検査装置1の外観構成は、実施の形態1で説明した表面検査装置1と基本的に同じである。
図18は、実施の形態4で使用する表面検査装置1のハードウェア構成の一例を説明する図である。
図18には、
図3との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0081】
図18に示す表面検査装置1には、結像レンズ107Aを通過してカメラ107に入射する反射光の光量を調整する絞り駆動装置110Bが設けられる点で、実施の形態1で説明した表面検査装置1と異なっている。
なお、前提として、結像レンズ107Aと開口111Aとの間の空間には、絞り機構110C(
図19参照)が配置されている。絞り機構110Cは、絞り羽と呼ばれる複数枚の板状の部品により構成される。
プロセッサ101は、照明光の光量を増減しても白飛びや黒潰れが解消しない場合、絞り駆動装置110Bの制御を通じ、カメラ107に入射する光量を変更する。換言すると、光束の径を調整する。
【0082】
図19は、実施の形態4における表面検査装置1の光学系の構造例を説明する図である。
図19には、
図4との対応部分に対応する符号を付して示している。
絞り駆動装置110Bは、カメラ107が収容されている概略筒状の部材内に配置され、プロセッサ101から与えられる制御信号に基づいて、絞り機構110Cの絞り値を変更する。ここでの絞り値は、F値とも呼ばれる。
絞り値が大きいほど、絞り機構110Cを通過する光束の径は小さくなり、カメラ107で撮像される画像は暗くなる。ただし、ボケ量は小さくなる。
【0083】
一方、絞り値が小さいほど、絞り機構110Cを通過する光束の径は大きくなり、カメラ107で撮像される画像は明るくなる。一方で、ボケ量は大きくなる。
本実施の形態では、白飛びや黒潰れが解消しない場合、絞り値が小さくなる方向に制御し、ボケ量を大きくする。
【0084】
<検査動作>
本実施の形態の場合も、検査動作の基本部分は
図6に示すフローチャートに基づいて実行される。ただし、本実施の形態における検査動作は、ステップ4(
図6参照)で肯定結果が得られた場合の動作が実施の形態1と異なっている。
図20は、実施の形態4において白飛び又は黒潰れの発生が検知された場合に実行される処理動作の他の例を説明するフローチャートである。
図20には、
図9との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0085】
本実施の形態の場合、ステップ14(
図9参照)に代えてステップ41が実行される。
すなわち、照明光の光量を増減等しても白飛びや黒潰れが解消しない場合、プロセッサ101は、絞り駆動装置110Bの制御を通じて絞り値を小さくし、検査対象の再撮像を作業者に指示する(ステップ41)。
絞り値は、絞り値の調整後の再撮像によっても白飛びや黒潰れが解消しない場合、ステップ41の実行の都度、段階的に又は連続的に小さくしてもよい。
【0086】
本実施の形態の場合、ステップ41の実行時に、
図17に例示したダイアログボックス126を操作画面120に表示する。
本実施の形態の場合、ステップ41の実行後、プロセッサ101は、ステップ1(
図6参照)に移行し、撮像ボタンの操作を待ち受ける状態になる。
その後の処理動作は、実施の形態1と同じである。
本実施の形態の場合も、スペーサ112(
図5参照)やスペーサ113(
図11参照)を表面検査装置1の鍔部111Bに取り付ける等の作業が不要になる。
【0087】
<実施の形態5>
<装置構成>
続いて、実施の形態5で使用する表面検査装置1について説明する。本実施の形態では、白飛びや黒潰れが発生していなくても、最大輝度値と最小輝度値の差が小さすぎる場合には、ボケ量を再調整する仕組みを採用する場合について説明する。
本実施の形態における表面検査装置1の外観構成は、実施の形態1で説明した表面検査装置1と基本的に同じである。
【0088】
<検査動作>
本実施の形態の仕組みは、前述した実施の形態1~4のいずれとも組み合わせることが可能であるが、以下では、実施の形態1と組み合わせる場合について説明する。
図21は、実施の形態5で使用する表面検査装置1による検査動作の一例を説明するフローチャートである。
図21には、
図6との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0089】
図21に示す検査動作と
図6に示す検査動作との違いは、ステップ4で否定結果が得られた場合に、ステップ5に移行する前に、ステップ51が実行される点である。
具体的には、プロセッサ101は、最大輝度値と最小輝度値の差が閾値以下か否かを判定する(ステップ51)。白飛びや黒潰れがなくても、撮像された画像の階調の幅が狭い場合には、スコアの信頼性が低くなる可能性があるためである。
【0090】
なお、最大輝度値と最小輝度値の差が閾値より大きく、スコアの算出に支障がない場合、プロセッサ101は、ステップ51で否定結果を得る。この場合、プロセッサ101は、ステップ5に進み、検査範囲の輝度プロファイルSを用いてスコアを算出する。
一方、最大輝度値と最小輝度値の差が閾値以下の場合、プロセッサ101は、ステップ
51で肯定結果を得る。
この場合、プロセッサ101は、照明光の光量を調整することなく、ボケ量を小さくする処理を実行する。
【0091】
本実施の形態では、実施の形態1で説明したスペーサ112(
図5参照)の装着を前提とするため、プロセッサ101は、ボケ量を減らすスペーサ112の取り付け又は交換と、検査対象の再撮像とを作業者に指示する(ステップ52)。
なお、交換後のスペーサ112には、2つの条件が求められる。
条件の1つは、交換前のスペーサ112に比して高さH(
図5参照)が低いことである。
他の条件は、交換後のスペーサ112の高さHは、被写界深度よりも高いことである。
【0092】
この2つの条件を満たすことで、スペーサ112の交換前に比して、ボケ量が低減された画像の撮像が可能になる。
ボケ量が低減することで、カメラ107で撮像される画像の輝度値の分布幅が広がる。その結果、階調情報が増加し、より正確な品質の評価が可能になる。
【0093】
<実施の形態6>
本実施の形態では、検査範囲の変更用の物理的な操作子を筐体100(
図4参照)に配置する例について説明する。
図22は、実施の形態6における表面検査装置1の光学系の構造例を説明する図である。
図22には、
図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
本実施の形態で使用する表面検査装置1Aは、いわゆるラインカメラを使用する。このため、撮像範囲は線状である。
【0094】
本実施の形態の場合、検査の際、検査対象10は、1軸ステージ20の上に設置された状態で矢印の方向に移動される。1軸ステージ20が一方向に移動することにより、検査対象10の全体が撮像される。
なお、カメラ107(
図4参照)としてラインカメラを用いる以外、カメラ107(
図4参照)と光源108(
図4参照)の位置関係等は、実施の形態1と同じである。
【0095】
<他の実施の形態>
(1)以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は前述した実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0096】
(2)前述の実施の形態においては、カメラ107(
図4参照)としてカラーカメラを用いたが、モノクロカメラを用いてもよい。また、カラーカメラのうち緑(G)成分だけを使用して、検査対象10(
図1参照)の表面を検査してもよい。
【0097】
(3)前述の実施の形態においては、光源108(
図4参照)として白色光源を使用したが、照明光の色は任意でよい。
また、照明光は、可視光に限らず、赤外光や紫外光等でもよい。
【0098】
(4)前述の実施の形態では、光源108(
図4参照)を1つ使用する表面検査装置1(
図1参照)について説明したが、複数の光源を用いて検査対象10の表面を照明してもよい。
例えば2つの光源を使用してもよい。その場合、一方の光源は鏡面反射された光成分が主にカメラ107(
図4参照)に入射する角度に配置し、他方の光源は拡散反射された光成分が主にカメラ107に入射する角度に配置してもよい。この場合、2つの光源は、カメラ107の光軸を挟んで両側に配置してもよいし、カメラ107の光軸に対して一方の側に並べて配置してもよい。
【0099】
(5)前述の実施の形態では、光源108(
図4参照)として平行光源を使用したが、非平行光源である点光源や面光源を使用してもよい。また、カメラ107(
図4参照)の光軸上に非テレセントリックレンズを使用してもよい。テレセントリックレンズや平行光を使用しない場合、実施の形態で説明した表面検査装置1(
図1参照)に比して装置の小型化が可能になり、コストも安価に済む。
【0100】
(6)前述の実施の形態では、検査対象10(
図1参照)を撮像する表面検査装置1(
図1参照)のプロセッサ101(
図3参照)が、1回の撮像で取得される1枚の画像内に正反射成分と拡散反射成分の両方が過不足なく含まれるように光量やボケ量を調整する制御する機能を実現しているが、表面検査装置1から画像データを取得する外部のコンピュータやサーバのプロセッサにより同等の機能を実現してもよい。
【0101】
(7)前述した各実施の形態におけるプロセッサは、広義的な意味でのプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU等)の他、専用的なプロセッサ(例えばGPU(=Graphical Processing Unit)、ASIC(=Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(=Field Programmable Gate Array)、プログラム論理デバイス等)を含む。
また、前述した各実施の形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサが単独で実行してもよいが、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して実行してもよい。また、プロセッサにおける各動作の実行の順番は、前述した各実施の形態に記載した順番のみに限定されるものでなく、個別に変更してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1、1A…表面検査装置、10…検査対象、20…1軸ステージ、101…プロセッサ、102…ROM、103…RAM、104…補助記憶装置、105…ディスプレイ、106…操作受付装置、107…カメラ、107A…結像レンズ、108…光源、110…信号線、110A…レンズ駆動装置、110B…絞り駆動装置、110C…絞り機構、111…開口部、111A…開口、111B…鍔部、112、113…スペーサ、120…操作画面、121A…基準線、122…スコア欄、123…凡例、124、125、126…ダイアログボックス