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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187668
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】成形材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 97/00 20060101AFI20221213BHJP
   B29B 9/12 20060101ALI20221213BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20221213BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20221213BHJP
   C08L 3/00 20060101ALI20221213BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08L97/00
B29B9/12
C08J3/20 Z CEP
C08L1/02
C08L3/00
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095774
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】597114041
【氏名又は名称】株式会社ユニオン産業
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】森川 真彦
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AA03
4F070AA66
4F070FA01
4F070FA17
4F070FB07
4F070FC05
4F201AA01
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC03
4F201BC12
4F201BC19
4F201BL08
4F201BL43
4J002AA014
4J002AB013
4J002AB042
4J002AH001
4J002GA00
4J002GG01
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】よりカーボンニュートラルに近づけることができる成形材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】植物自体又はその加工材の粉末を70~80質量%と、コーンスターチの粉末を10~30質量%と、セルロース又は樹脂混合セルロースの粉末を0~10質量%と、を混合したものを、押出機に投入して加熱することで、コーンスターチをバインダーとして植物自体又はその加工材の粉末とセルロース又は樹脂混合セルロースの粉末とを混錬し、押出機から押し出された成形材をペレット状に形成してなる成形材及びその製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物自体又はその加工材の粉末と、セルロース又は樹脂混合セルロースの粉末を、コーンスターチをバインダーとして混合して加熱成形したことを特徴とする成形材。
【請求項2】
植物自体又はその加工材の粉末を、コーンスターチをバインダーとして混合して加熱成形したことを特徴とする成形材。
【請求項3】
前記植物自体又はその加工材の粉末の配合割合は、70~80質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形材。
【請求項4】
前記コーンスターチの配合割合は、10~30質量%であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の成形材。
【請求項5】
植物自体又はその加工材の粉末を70~80質量%と、
コーンスターチの粉末を10~30質量%と、
セルロース又は樹脂混合セルロースの粉末を0~10質量%と、
を混合したものを、押出機に投入して加熱することで前記コーンスターチをバインダーとして前記他の粉末を混錬し、
当該押出機から押し出された成形材をペレット状に形成することを特徴とする成形材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の成形材の製造方法であって、
前記押出機における前記加熱温度は、180℃~190℃であることを特徴とする成形材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の材料によって構成される成形材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素の放出と吸収が相殺されるカーボンニュートラルという環境保護の観点などから、石油系合成樹脂に植物由来の粉末(例えばコーヒー粕やふすまや大豆皮の粉末)を混合した各種成形品の開発が行われている(例えば特許文献1~3など参照)。
【0003】
このように構成すれば、成形品中の合成樹脂の使用量を減少でき、その分環境保護を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-224665号公報
【特許文献2】特開2016-050210号公報
【特許文献3】特開2020-059830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記成形品においては、合成樹脂を使用するので、カーボンニュートラルに限界があった。
【0006】
また合成樹脂として、でんぷんなどを原料としたバイオマスプラスチックも開発されてはいるが、当該バイオマスプラスチックをでんぷんなどから製造する工程が煩雑であり、コストも高くなってしまう。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、よりカーボンニュートラルに近づけることができる成形材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、合成樹脂(バイオマスプラスチックを含む)をバインダーとして使用せず、できるだけ植物由来の材料だけで成形材を作成することを目的として各種実験を繰り返し、その結果、コーンスターチを直接合成樹脂の代替品(バインダー)として使用し、その加熱温度などを制御することで、成形材が構成できることを発明した。
即ち従来、コーンスターチなどと合成樹脂とを混錬し、当該合成樹脂をバインダーとして成形材を作成する技術は知られているが、本発明においては、合成樹脂を使わず、コーンスターチ自体をバインダーとして成形材を作成したものである。
【0009】
即ち本発明にかかる成形材は、植物自体又はその加工材の粉末と、セルロース又は樹脂混合セルロースの粉末を、コーンスターチをバインダーとして混合して加熱成形したことを特徴としている。
植物自体又はその加工材としては、例えば、麦のフスマ、竹、コーヒー粕、米ぬかなど、各種のものがある。混合する植物自体又はその加工材の種類は、1種類でも良いし複数種類でも良い。
本発明によれば、植物の加工品である安価なコーンスターチをバインダーとして、当該コーンスターチと植物自体又はその加工材の粉末と、セルロース又は樹脂混合セルロースの粉末とによって成形材を構成したので、合成樹脂(バイオマスプラスチックを含む)を使用することなく(樹脂混合セルロースを用いる場合はほとんど合成樹脂を使用することなく)、100%(樹脂混合セルロースを用いる場合はほぼ100%)植物由来の成形材を安価に得ることができる。
なお樹脂混合セルロースを用いた場合は少量の合成樹脂が混合されることになるが、その量は少なく、当該合成樹脂がバインダーとして機能することはほとんどない。
また本発明によれば、食物繊維であるセルロースを混錬したので、100%植物由来(樹脂混合セルロースを用いた場合はほとんど100%植物由来)の成形材の強度を効果的に高めることができる。
【0010】
また本発明は、植物自体又はその加工材の粉末を、コーンスターチをバインダーとして混合して加熱成形したことを特徴としている。
本発明によれば、植物の加工品である安価なコーンスターチをバインダーとして、当該コーンスターチと植物自体又はその加工材の粉末とによって成形材を構成したので、合成樹脂(バイオマスプラスチックを含む)を使用することなく、100%植物由来の成形材を安価に得ることができる。
【0011】
また本発明は、上記特徴に加え、前記植物自体又はその加工材の粉末の配合割合は、70~80質量%であることを特徴としている。
本発明によれば、成形材に含めることができる植物自体又はその加工材の粉末の配合割合を高くすることができる。これによって、より効果的な環境保護を図ることができる。
【0012】
また本発明は、上記特徴に加え、前記コーンスターチの配合割合は、10~30質量%であることを特徴としている。
本発明によれば、成形材に含めるコーンスターチの配合割合が低く、これによって植物自体又はその加工材の粉末の配合割合を向上することができ、より効果的な環境保護を図ることができる。
【0013】
また本発明にかかる成形材の製造方法は、植物自体又はその加工材の粉末を70~80質量%と、コーンスターチの粉末を10~30質量%と、セルロース又は樹脂混合セルロースの粉末を0~10質量%と、を混合したものを、押出機に投入して加熱することで前記コーンスターチをバインダーとして前記他の粉末を混錬し、当該押出機から押し出された成形材をペレット状に形成することを特徴としている。
本発明によれば、合成樹脂(バイオマスプラスチックを含む)を使用することなく(樹脂混合セルロースを用いる場合はほとんど合成樹脂を使用することなく)、100%(樹脂混合セルロースを用いる場合はほぼ100%)植物由来の成形材を安価に製造することができる。
【0014】
また本発明は、上記特徴に加え、前記押出機における前記加熱温度は、180℃~190℃であることを特徴としている。
コーンスターチの加熱溶融温度をこの温度範囲に設定することで、コーンスターチが所望の流動性(植物自体又はその加工材の粉末と、セルロース又は樹脂混合セルロースの粉末とを均等に混錬するのに好適な流動性)を有するように溶融させることができ、且つ植物自体又はその加工材の粉末などが焦げ付くこともなく、良好な成形材を得ることができる。
【0015】
また本発明に係る成形材を用いて成形される成形品(最終製品)の製造方法としては、前記ペレット状に形成された成形材を加熱溶融して金型のキャビティー内に充填し、その後固化した成形品を金型から取り出し、これによって前記加熱溶融時の溶融材の流れに応じて当該成形品の表面に現れる、前記植物自体又はその加工材の粉末と、前記セルロース又は前記樹脂混合セルロースの粉末と、前記コーンスターチとによる模様をそのまま成形品の表面模様とすることが成形品表面の模様として好ましい。
この製造方法によれば、植物自体又はその加工材の粉末と、セルロース又は樹脂混合セルロースの粉末と、コーンスターチとによって生じる成形品の表面模様を、各成形品によって異ならせることができ、これによって成形品毎に特徴(個性)のあるデザインを付することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、全く又はほとんど合成樹脂を使用することなく、100%又はほぼ100%植物由来で、カーボンニュートラルに近づけることができる成形材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1A実施例にかかる成形材の製造工程フロー図である。
図2】成形材の製造装置を示す概略構成図である。
図3】第1A実施例にかかる成形材の原料の配合比率を示す図である。
図4】第1B実施例にかかる成形材の原料の配合比率を示す図である。
図5】第1C実施例にかかる成形材の製造工程フロー図である。
図6】第2実施例にかかる成形材の製造工程フロー図である。
図7】第3実施例にかかる成形材の製造工程フロー図である。
図8】第3実施例にかかる成形材の原料の配合比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
第1実施形態にかかる成形材は、植物自体又はその加工材の粉末と、樹脂混合セルロースの粉末と、コーンスターチの粉末とを混合し、この混合物を前記コーンスターチをバインダーとして加熱溶融してペレット状に成形することで構成される。
【0019】
植物自体の粉末としては、例えば麦のフスマの粉末や、竹の粉末など、各種植物自体の粉末が考えられる。また植物の加工材の粉末としては、米ぬかなどが考えられる。何れの材料についてもこれを乾燥させ、その粒径を150μm以下にすることが、以下の混合工程や成形工程において好ましい。
【0020】
樹脂混合セルロースは、植物繊維であるセルロース(例えば40重量%)と、ポリプロピレン(例えば60重量%)を混合した粉末である。この樹脂混合セルロースの粒径は100μm以下にすることが、以下の混合工程や成形工程において好ましい。
【0021】
コーンスターチはトウモロコシを原料とする粉末状のでん粉であり、その粒径を50μm以下にすることが、以下の混合工程や成形工程において好ましい。
【0022】
そしてこれら各粉末を混合したものを押出機に投入して加熱混錬溶融し、ペレット状の成形材を取り出す。
【0023】
上記成形材は、合成樹脂(バイオマスプラスチックを含む)を使用せず(但し樹脂混合セルロースを用いた場合は少量の合成樹脂を含む)、全て植物由来の材料で構成されるので、ほぼ完全な生分解性があり、またバイオマスプラスチックのような高価な材料を使用する必要もなく、安価に製造でき、ほぼ完全なカーボンニュートラルを得ることができる。
【0024】
またこの実施形態においては、植物繊維であるセルロースを含ませるので、この成形材を用いて製造される成形品の機械的強度を向上させることができる。
【0025】
(第1A実施例)
図1は第1A実施例にかかる成形材の製造工程フロー図である。また図2は第1A実施例にかかる成形材の製造装置を示す概略構成図である。
【0026】
成形材を製造するには、図1に示すように、麦のフスマの粉末(粒径100~150μm)と、コーンスターチの粉末(粒径50μm)と、樹脂混合セルロースの粉末(粒径100μm)とを用意する(ステップ1-1,1-2,1-3)。この実施例での各原料の配合比率は、図3に示す配合比率、即ち、フスマ70質量%、樹脂混合セルロース10質量%、コーンスターチ20質量%、とする。何れの材料も十分乾燥した粉末を用いる。
【0027】
次に、上記配合比率のフスマとコーンスターチと樹脂混合セルロースとを図2に示す攪拌混合機10に投入し、攪拌部材11によって混合攪拌する(ステップ2)。
【0028】
次に、混合攪拌機10において混合された混合物を、押出機20に導入して螺旋状の突条23を設けたスクリュー25をシリンダ21内で回転しながらヒータ27で加熱することで、前記混合物中のコーンスターチを溶融しながら、当該溶融したコーンスターチに対してフスマと樹脂混合セルロースを均等に混錬する(ステップ3)。このときの加熱温度は、前記コーンスターチが所望の流動性(フスマと樹脂混合セルロースを均等に混錬するのに好適な流動性)を有するように溶融させる温度として、180℃~190℃が好適であることを各種実験によって求めた。即ち、本願発明者による各種実験によれば、前記溶融温度を180℃以下にすると、十分な溶解が行われず、成形後の樹脂がペレット状にならず、崩れた状態になってしまう。また前記溶融温度を190℃以上にすると、当該コーンスターチやフスマが焦げてしまい、良好なペレットが得られない。
【0029】
ところで図2に示す押出機20では、スクリュー25が1本の1軸型の押出機を示しているが、スクリュー2本を並列にかみ合うように設置した構成の2軸型の押出機を用いれば、さらに効果的に、溶融したコーンスターチに対してフスマと樹脂混合セルロースを均等に混錬することができる(下記の各実施例においても同様)。
【0030】
そして、前記押出機20の押出側の端部近傍に設けた図示しないノズルから細棒状に成形された成形材を吐出させ、図示しないカッターで短い長さにカットした後に硬化させることで、ペレット状の成形材を得ることができる(ステップ4)。以上の各工程によって、第1実施例に係るペレット状の成形材30が完成する。
【0031】
以上のようにして製造された成形材(ペレット)30は、例えば射出成型機に投入されて加熱溶融され、当該射出成型機に接続した金型のキャビティー内に射出され、その後冷却して固化することで、各種製品の形状(最終形状)に成形された成形品が取り出される。
【0032】
なおこの実施例においては、前記金型のキャビティー内に射出された溶融材の流れに応じて成形された成形品の表面に現れる、前記フスマの粉末と、前記樹脂混合セルロースの粉末と、前記コーンスターチとによる模様をそのまま成形品の表面模様としている。これによって、フスマの粉末と、樹脂混合セルロースの粉末と、コーンスターチとによって生じる成形品の表面模様を、各成形品によって異ならせることができ、成形品毎に特徴(個性)のあるデザインを付することができる(下記の各実施例においても同様)。
【0033】
(第1B実施例)
第1B実施例にかかる成形材は、第1A実施例にかかる成形材を構成する各原料の配合割合を変更したのみの成形材であり、その成形方法は、第1A実施例の場合と同一であるので、その説明は省略する。
【0034】
図4は、第1B実施例に用いるフスマの粉末(粒径100~150μm)と、樹脂混合セルロースの粉末(粒径100μm)と、コーンスターチの粉末(粒径50μm)の配合割合を示す図である。同図に示すように、第1B実施例における各原料の配合割合は、フスマ70質量%、樹脂混合セルロース20質量%、コーンスターチ10質量%、としている。何れの材料も、十分乾燥した粉末を用いる。
【0035】
この実施例の場合は、第1A実施例に比べて、バインダーとなるコーンスターチの配合割合を20%から10%に減らしているが、本願発明者の実験によって、コーンスターチはその配合割合が10%以上であれば、バインダーとしての効果が十分発揮されることを確認した。当該配合割合以下の場合は、バインダーとしての効果が減少し、製造したペレットを用いて作成した成形品は良好なものとならなかった。一方コーンスターチの配合割合を30%にした場合は、良好な成形品が得られた。従って、コーンスターチの配合割合は10%以上であることが好ましく、さらに10%~30%の範囲が好適であることを、実際に成形品を製造することで確認できた。なおコーンスターチの配合割合を30%以上にしても良好な成形品が得られるものと考えられるが、必要以上にコーンスターチを配合するとフスマの粉末の配合割合が減少し、フスマの有効活用を図るという目的などのためには好ましくない。
【0036】
(第1C実施例)
図5は第1C実施例にかかる成形材の製造工程フロー図である。この実施例においても、用いる成形材の製造装置は、図2に示す製造装置と同じである。
【0037】
この実施例において、上記第1A,第1B実施例と相違する点は、植物自体の粉末であるフスマの代わりに、植物の加工材の粉末である米ぬかを用いた点である。そして成形材を製造するには、米ぬかの粉末(粒径100~150μm)と、樹脂混合セルロースの粉末(粒径100μm)と、コーンスターチの粉末(粒径50μm)とを用意する(ステップ1-1,1-2,1-3)。この実施例での各原料の配合割合は、米ぬか70質量%、樹脂混合セルロース10質量%、コーンスターチ20質量%、とする。何れの材料も十分乾燥した粉末を用いる。
【0038】
次に、上記配合割合の米ぬかと樹脂混合セルロースとコーンスターチとを図2に示す攪拌混合機10に投入し、攪拌部材11によって混合攪拌する(ステップ2)。
【0039】
次に、混合攪拌機10において混合された混合物を、押出機20に導入して上記第1A実施例の場合と同様に、前記混合物中のコーンスターチを溶融しながら、当該溶融したコーンスターチに対して米ぬかと樹脂混合セルロースを均等に混錬する(ステップ3)。このときの加熱温度は、前記コーンスターチが所望の流動性(米ぬかと樹脂混合セルロースを均等に混錬するのに好適な流動性)を有するように溶融させる温度として、180℃~190℃が好適であることは前述のとおりである。また図2に示す押出機20は、1軸型であるが、2軸型の押出機を用いれば、さらに効果的に、溶融したコーンスターチに対して米ぬかと樹脂混合セルロースを均等に混錬することができることも前述のとおりである。
【0040】
そして、前記押出機20から前述のように細棒状に成形された成形材を吐出させてカットし、ペレット状の成形材を取り出す(ステップ4)。以上の各工程によって、第1C実施例に係るペレット状の成形材30が完成する。
【0041】
以上のようにして製造された成形材(ペレット)30も、前述のように、例えば射出成型機を用いて成形品に成形される。
【0042】
〔第2実施形態〕
第2実施形態にかかる成形材は、植物自体又はその加工材の粉末と、セルロースの粉末と、コーンスターチの粉末とを混合し、この混合物を前記コーンスターチをバインダーとして加熱溶融してペレット状に成形することで構成される。
【0043】
本実施形態においては、前記第1実施形態において用いた樹脂混合セルロースの粉末の代わりに、セルロースの粉末を用いている。セルロースの粉末であっても植物繊維なので、成形品の強度を向上させる効果があり、これを混合することは有効である。
【0044】
第1実施形態と同様、何れの材料についてもこれを乾燥させ、その粒径を150μm以下にすることが、混合工程や成形工程において好ましい。具体的な粒径は、第1実施形態の場合と同様の粒径であり、セルロースの粉末も樹脂混合セルロースの粉末と同様の粒径(100μm以下)とする。
【0045】
そしてこれら各粉末を混合したものを押出機に投入して加熱混錬溶融し、ペレット状の成形材を取り出す。
【0046】
このようにして成形される成形材は、合成樹脂(バイオマスプラスチックを含む)を使用せず、全て植物由来の材料だけで構成されるので、完全な生分解性があり、またバイオマスプラスチックのような高価な材料を使用する必要もなく、安価に製造でき、また完全なカーボンニュートラルを得ることができる。
【0047】
またこの実施形態においては、植物繊維であるセルロースを含ませるので、この成形材を用いて製造される成形品の機械的強度を向上することができる。
【0048】
(第2実施例)
図6は第2実施例にかかる成形材の製造工程フロー図である。この実施例の場合、フスマの粉末(粒径100~150μm)と、セルロースの粉末(粒径100μm)と、コーンスターチの粉末(粒径50μm)とを用意する(ステップ1-1,1-2,1-3)。この実施例での各原料の配合割合は、フスマ70質量%、セルロース10質量%、コーンスターチ20質量%、またはフスマ70質量%、セルロース20質量%、コーンスターチ10質量%とする。何れの材料も十分乾燥した粉末を用いる。
【0049】
次に、上記配合割合のフスマとセルロースとコーンスターチとを図2に示す攪拌混合機10に投入し、攪拌部材11によって混合攪拌し(ステップ2)、混合攪拌された混合物を、押出機20に導入して上記と同様に前記混合物中のコーンスターチを溶融しながら、当該溶融したコーンスターチに対してフスマとセルロースを均等に混錬する(ステップ3)。このときの加熱温度は、上記第1実施例の場合と同様、180℃~190℃が好適である。
【0050】
そして、前記押出機20から吐き出させた細棒状の成形材をペレット状にカットして硬化させ、取り出す(ステップ4)。以上の各工程によって、第2実施例に係るペレット状の成形材30が完成する。以上のようにして製造された成形材(ペレット)30は、例えば射出成型機によって、各種製品の形状(最終形状)の成形品に成形される。
【0051】
〔第3実施形態〕
第3実施形態にかかる成形材は、植物自体又はその加工材の粉末と、コーンスターチの粉末とを混合し、この混合物を前記コーンスターチをバインダーとして加熱溶融してペレット状に成形することで構成される。植物自体又はその加工材の粉末とコーンスターチの粉末は、何れも上記第1実施形態のものと同じものである。
【0052】
この成形材は、合成樹脂(バイオマスプラスチックを含む)を使用せず、植物の加工品である安価なコーンスターチをバインダーとして、当該コーンスターチと植物自体又はその加工材の粉末とによって成形材を構成したので、100%植物由来の成形材を得ることができる。また100%植物由来の材料だけで構成されるので、完全な生分解性があり、またバイオマスプラスチックのような高価な材料を使用する必要もなく、安価に製造でき、また完全なカーボンニュートラルを得ることができる。この成形材においては、上記第1,第2実施形態と相違し、樹脂混合セルロースやセルロースを使用しないので、植物繊維による補強が行われないが、大きな強度を必要としない、または厚みなどを設けることで強度が保てる形状の成形品であれば、この実施形態のように樹脂混合セルロースやセルロースの使用を省くことができる。これによって、より多くの植物自体又はその加工材の有効活用ができる。
【0053】
(第3実施例)
図7は第3実施例にかかる成形材の製造工程フロー図である。成形材を製造するには、図7に示すように、フスマの粉末(粒径100~150μm)と、コーンスターチの粉末(粒径50μm)とを用意する(ステップ1-1,1-2)。この実施例での各原料の配合割合は、図8に示す配合割合、即ち、フスマ80質量%、コーンスターチ20質量%とする。何れの材料も十分乾燥した粉末を用いる。
【0054】
次に、上記配合割合のフスマとコーンスターチとを前記図2に示す攪拌混合機10に投入し、攪拌部材11によって混合攪拌する(ステップ2)。次に、混合攪拌機10において混合された混合物を、押出機20に導入して上記と同様に前記混合物中のコーンスターチを溶融しながら、当該溶融したコーンスターチに対してフスマを均等に混錬する(ステップ3)。このときの加熱温度は、前記第1A実施例の場合と同様である。
【0055】
そして、前記押出機20から細棒状に成形された成形材を吐出させてカットすることで、ペレット状の成形材が得られ、これを硬化させて取り出す(ステップ4)。以上の各工程によって、第3実施例に係るペレット状の成形材30が完成する。以上のようにして製造された成形材(ペレット)30は、例えば射出成型機によって、各種製品の形状(最終形状)の成形品に成形される。
【0056】
上記各実施例(第1A~第3実施例)によれば、植物自体又はその加工材の粉末の配合割合を70~80質量%とすることができたので、成形材に含めることができる植物自体又はその加工材の粉末の配合割合を高くすることができる。
【0057】
また上記各実施例(第1A~第3実施例)によれば、コーンスターチの配合割合を10~30質量%とすることができたので、成形材に含めるコーンスターチの配合割合を低くすることができる。
【0058】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記成形材はこれを発泡させても良い。また上記例では押出機20から押し出した混合溶融物をペレット状の成形材とし、その後射出成型機にこのペレットを投入して所望の成形品を成形したが、前記押出機20から押し出した混合溶融物を直接所望の成形品に成形しても良い。
【0059】
また、上記記載及び各図で示した実施形態及び実施例は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態及び実施例になり得るものであり、本発明の実施形態及び実施例は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態及び実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0060】
10 混合撹拌機
20 押出機
30 ペレット(成形材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8