(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187673
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】プリント基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
H05K3/34 505B
H05K3/34 507B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095784
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】安澤 貴志
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA02
5E319BB02
5E319BB05
5E319CC33
5E319CC46
5E319CD26
5E319GG03
(57)【要約】
【課題】接合部に応じてフラックス量を調節できるプリント基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の電気部品が接合されたプリント基板の製造方法は、プリント配線基板のスルーホール内に電気部品の端子を挿入する部品挿入工程と、上記スルーホールと電気部品とを接合するハンダ付け工程と、を備える。
そして、上記スルーホールの少なくとも1つが、そのランド上に溶融し凝固したハンダを有し、上記ハンダ付け工程が、上記ランド上のハンダを溶融させ、かつ糸ハンダを供給して、上記スルーホールと電気部品とを接合することとしたため、接合部の濡れ性に応じたフラックス量の調節が可能なプリント基板の製造方法を提供できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品が接合されたプリント基板の製造方法であって、
プリント配線基板のスルーホール内に電気部品の端子を挿入する部品挿入工程と、
上記スルーホールと電気部品とを接合するハンダ付け工程と、を備え、
上記スルーホールの少なくとも1つが、そのランド上に溶融し凝固したハンダを有し、
上記ハンダ付け工程が、上記ランド上のハンダを溶融させ、かつ糸ハンダを供給して、上記スルーホールと電気部品とを接合する処理を含むことを特徴とするプリント基板の製造方法。
【請求項2】
上記部品挿入工程前に、
上記スルーホールのランドにクリームハンダを付与するハンダ付与工程と、
上記クリームハンダを炉内で溶かすリフロー工程と、を有し、
上記ハンダ付与工程が、上記スルーホールを塞がずにランド上にクリームハンダを付与する処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板の製造方法。
【請求項3】
上記スルーホールのランドへのクリームハンダの付与量が、
上記糸ハンダに対するスルーホール及び/又は該スルーホールに接合する電気部品の端子の濡れ性に応じて異なることを特徴とする請求項2に記載のプリント基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の製造方法に係り、更に詳細には、リフローハンダ付けができない電気部品を接合できるプリント基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品が載っていないプリント基板に電気部品を実装するハンダ付けは、一般には、リフローソルダリング(以下、「リフロー」ということがある。)によって電気部品を実装した後に、フローソルダリング(以下、「フロー」ということがある。)や手付けによってリフローハンダ付けができない電気部品を実装することが多い。
【0003】
上記リフローは、基板表面の端子部分にクリームハンダを塗布し、その上に電気部品を載せ、高温の炉でクリームハンダを溶融させて、一度に複数の電気部品をプリント基板に接合するはんだ付け方法である。
【0004】
また、上記フローは、耐熱温度が低く、高温の炉に投入することができないリフローに非対応の電気部品を実装する工程であり、プリント基板を貫通する、金属メッキ端子が形成された貫通孔(以下、「スルーホール」ということがある。)に上記電気部品の端子を挿入し、糸ハンダを用いて上記電気部品の個々の端子についてハンダ付けを行って実装する方法である。
【0005】
特許文献1には、プリント基板のスルーホールに電気部品の端子を挿入して、このスルーホールをクリームハンダで塞ぎ、ここにレーザー光を照射すると共に糸ハンダを供給してハンダ付けを行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プリント基板のスルーホールと電気部品の端子とが接合する接合部は、それらの材質や形状によって表面に形成された酸化被膜の量、すなわち、ハンダに対する濡れ性が異なる。
【0008】
そして、接合部に形成されている酸化被膜を還元するのに必要な量以上のフラックスが付与されると、酸化被膜の還元に消費されずに余ったフラックスが飛散してプリント基板の品質が低下する。
【0009】
したがって、接合部のハンダに対する濡れ性に応じて、接合部ごとにフラックス量を調節することが望ましい。
【0010】
しかしながら、接合部ごとにフラックス量を調節するには、接合部ごとにフラックス含有量が異なる糸ハンダを用いる必要があり、ハンダ付け工程が煩雑になる。
【0011】
特許文献1には、クリームハンダと糸ハンダのフラックス含有量を変えることが開示されているが、電気部品にレーザー光が照射されるのを防ぐために、スルーホールをクリームハンダで塞ぐ必要がある。このため、濡れ性の良い接合部であってもクリームハンダを付与しなければならず、フラックスの飛散を防止することは困難である。
【0012】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接合部に応じてフラックス量を調節できるプリント基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、フラックスが除かれたハンダが接合部に付与されたプリント基板を用い、このプリント基板に糸ハンダを供給して電気部品を接合することで、接合に必要なハンダ量を確保しつつ、使用する糸ハンダの量を減らし、フラックスの飛散を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明の電気部品が接合されたプリント基板の製造方法は、プリント配線基板のスルーホールに電気部品の端子を挿入する部品挿入工程と、上記スルーホールと電気部品とを接合するハンダ付け工程と、を備える。
そして、上記スルーホールの少なくとも1つが、そのランド上に溶融し凝固したハンダを有し、上記ハンダ付け工程が、上記ランド上のハンダを溶融させ、かつ糸ハンダを供給して、上記スルーホールと電気部品とを接合する処理を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プリント基板に固着したフラックスが除かれたハンダを溶融させ、ここに糸ハンダを供給して上記スルーホールと電気部品とを接合することとしたため、接合部の濡れ性に応じて、フラックス量を調節可能なプリント基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】クリームハンダを付与した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の電気部品が接合されたプリント基板の製造方法について詳細に説明する。
上記プリント基板の製造方法は、部品挿入工程とハンダ付け工程とを備える。
【0018】
上記部品挿入工程は、
図1に示すように、プリント基板のスルーホールに電気部品の端子を挿入する工程であり、電気部品の端子をハンダ付けするスルーホールの基板表面の端子部分(以下、「ランド」ということがある。)には、予めハンダが付与されている。
このハンダは、一度、溶融し凝固することでランドに固着したハンダであり、溶融によりフラックスが気化し除去されている。
【0019】
上記ハンダ付け工程は、
図2に示すように、スルーホール内の電気部品の端子とスルーホールとを接合する工程である。
【0020】
本発明においては、上記のように、フラックスが除去されたハンダがランドに固着しているので、このランド上のハンダを溶融させると共に、ここに糸ハンダを供給して電気部品をハンダ付けする。
【0021】
したがって、糸ハンダのみで接合する場合に比し、糸ハンダの使用量が少なくなるので、スルーホールや端子など、接合部の還元にフラックスが使用されずに余ることがないので、フラックスの飛散が防止される。
【0022】
また、接合部に固着したハンダは、クリームハンダと異なりフラックスに包まれていないので、はんだごての熱が直接伝わり、素早く溶融するためサイクルタイムが延びることがない。
【0023】
上記ハンダが付与されたプリント基板は、部品が載っていないプリント基板、所謂、生基板であっても、リフローによって電気部品が表面実装されたプリント基板であってもよい。
【0024】
電気部品が表面実装されたプリント基板であると、この電気部品をハンダ付けする際に、該電気部品を接合するランドだけでなく、リフローに非対応の電気部品をハンダ付けするランドにもクリームハンダを付与することができる。
【0025】
したがって、クリームハンダを高温の炉で溶融し、凝固させて電気部品を接合する一連の製造工程内で、新たな工程を加えずに、上記リフローに非対応の電気部品を接合するランドにもハンダを付与することができるので、サイクルタイムが延びることがない。
【0026】
また、リフローに非対応の電気部品を接合するスルーホールにハンダを付与するために、塗布装置を新たに設ける必要もないので、製造コストが増加することがない。
【0027】
本発明のプリント基板の作製方法は、必要に応じて、上記ハンダが付与されたプリント基板を作製する工程を有することができる。
【0028】
ハンダによるスルーホールと電気部品との接合完了状態は、
図3に示すように、スルーホール内を通ってプリント基板の表面側と裏面側とでハンダが連続していなければならない。
【0029】
したがって、リフローにおいては、スルーホール内にもハンダが十分供給されるように、ランド上だけでなくスルーホールを塞ぐようにクリームハンダを山盛りに付与する。
【0030】
しかし、クリームハンダでスルーホールを塞ぐと、クリームハンダが溶融したときにスルーホール内に侵入し、凝固してスルーホールを閉塞し、電気部品の端子を挿入できなくなるので、本発明においては、
図4に示すように、スルーホールを塞がずにランド上にのみクリームハンダを付与する。
【0031】
ランドに付与するクリームハンダの量は、接合部のスルーホールや電気部品の端子の糸ハンダに対する濡れ性に応じて変えることが好ましい。
【0032】
具体的には、糸ハンダに対する濡れ性がよい接合部にはクリームハンダを多く付与し、濡れ性が悪い接合部にはクリームハンダの付与量を少なくすることで、接合に使用する糸ハンダの量が変わるので、接合部に供給するフラックスの量を調節することができる。
【0033】
クリームハンダは、すべてのスルーホールに付与する必要はなく、最も濡れ性が悪いスルーホールにはクリームハンダを付与する必要はない。
【0034】
そして、最も濡れ性が悪い接合部に合わせた、フラックス量が多い糸ハンダを使用することで、糸ハンダに対する濡れ性が異なる個々の接合部に対して適切なフラックスを供給することが可能であり、良好なハンダ接合とフラックス飛散とを防止することができる。
【0035】
接合部のハンダに対する濡れ性は、端子の材質や形状によって知ることができるが、プリント基板を作製し接合不良の有無を検査することによっても知ることができる。
【0036】
クリームハンダの付与は、従来公知の塗布装置や印刷装置を用いて行うことができ、付与するクリームハンダの量は、マスク面積などによって調節が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 プリント基板
11 スルーホール
12 ランド
2 電気部品
21 端子
3 溶融後凝固したハンダ
4 糸ハンダ
41 糸ハンダ供給機
5 クリームハンダ
6 こて