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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187680
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】基板用コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/55 20110101AFI20221213BHJP
【FI】
H01R12/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095799
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏目 貴史
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB45
5E223AB76
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223CB24
5E223CB31
5E223CD01
5E223DB09
5E223DB11
5E223EA13
(57)【要約】
【課題】端子金具と回路基板の接触不良を抑制することができる。
【解決手段】基板用コネクタ10は、端子金具40と、端子金具40が組み付けられるハウジング30と、を備え、回路基板20に固定される。端子金具40は、ハウジング30の外部において回路基板20に接続される基板接続部44を有している。基板接続部44には、基板接続部44よりも線膨張係数の大きな膨張部材71,72が取り付けられている。膨張部材71,72の膨張に伴って、基板接続部44が回路基板20側に変位可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具と、前記端子金具が組み付けられるハウジングと、を備え、回路基板に固定される基板用コネクタであって、
前記端子金具は、前記ハウジングの外部において前記回路基板に接続される基板接続部を有し、
前記基板接続部には、前記基板接続部よりも線膨張係数の大きな膨張部材が取り付けられており、
前記膨張部材の膨張に伴って、前記基板接続部が前記回路基板側に変位可能である基板用コネクタ。
【請求項2】
前記基板接続部は、弾性変形可能なばね機能部を有し、弾性変形した前記ばね機能部の復元力に基づいて前記回路基板に押し付けられる請求項1に記載の基板用コネクタ。
【請求項3】
前記ばね機能部は、屈曲部を具備し、
前記膨張部材は、前記基板接続部における前記屈曲部を挟む両側部分のうちの少なくとも一方に設けられている請求項2に記載の基板用コネクタ。
【請求項4】
前記端子金具は、金属製であり、
前記膨張部材は、樹脂製である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の基板用コネクタ。
【請求項5】
前記基板接続部には、前記膨張部材の両端面を受ける一対の受け部が設けられている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の基板用コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板実装型のコネクタにおいて、リード端子と回路基板の導電路との接続がリフロー処理等のはんだ付けによって行われていた。例えば、特許文献1に開示されるコネクタは、コネクタモジュールと、コネクタモジュールに組み付けられるリードと、を備えている。リードは、一方端がコネクタモジュールから露出し、回路基板のパッド(ランド)に半田付けにより電気的に接続されている。特許文献2に開示されるコネクタも、同様の構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-160310号公報
【特許文献2】特開2016-58459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示されるコネクタでは、リードと回路基板との半田付けがリフロー処理によって行われる。そのため、リフロー処理に伴い回路基板等に熱膨張による反りが発生し、リードと回路基板とが離れて、接触不良が生じるおそれがある。
【0005】
本開示は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子金具と回路基板の接触不良を抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の基板用コネクタは、
端子金具と、前記端子金具が組み付けられるハウジングと、を備え、回路基板に固定される基板用コネクタであって、
前記端子金具は、前記ハウジングの外部において前記回路基板に接続される基板接続部を有し、
前記基板接続部には、前記基板接続部よりも線膨張係数の大きな膨張部材が取り付けられており、
前記膨張部材の膨張に伴って、前記基板接続部が前記回路基板側に変位可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、端子金具と回路基板の接触不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1において回路基板に固定された基板用コネクタの左側から見た断面図である。
図2図2は、リフロー処理時における回路基板及び基板用コネクタを示す図1相当図である。
図3図3は、端子金具の後側から見た斜視図である。
図4図4は、端子金具の左側から見た側面図である。
図5図5は、実施例2において回路基板に固定された基板用コネクタの左側から見た断面図である。
図6図6は、リフロー処理時における回路基板及び基板用コネクタを示す図5相当図である。
図7図7は、実施例3において回路基板に固定された基板用コネクタの左側から見た断面図である。
図8図8は、リフロー処理時における回路基板及び基板用コネクタを示す図7相当図である。
図9図9は、他の実施例に関わる膨張部材の保持構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示の基板用コネクタは、
(1)端子金具と、前記端子金具が組み付けられるハウジングと、を備え、回路基板に固定される基板用コネクタであって、
前記端子金具は、前記ハウジングの外部において前記回路基板に接続される基板接続部を有し、
前記基板接続部には、前記基板接続部よりも線膨張係数の大きな膨張部材が取り付けられており、
前記膨張部材の膨張に伴って、前記基板接続部が前記回路基板側に変位可能である。
本開示の構成によれば、熱膨張等により回路基板が変形して基板接続部から離れようとする場合等に、膨張部材の膨張に伴って基板接続部が回路基板側に変位させることができる。そのため、基板接続部と回路基板の接触不良を抑制することができる。
(2)前記基板接続部は、弾性変形可能なばね機能部を有し、弾性変形した前記ばね機能部の復元力に基づいて前記回路基板に押し付けられることが好ましい。
この構成によれば、基板接続部を回路基板に接続した後、基板接続部に生じる応力をばね機能部の弾性変形によって緩和させることができる。
(3)前記ばね機能部は、屈曲部を具備し、前記膨張部材は、前記基板接続部における前記屈曲部を挟む両側部分のうちの少なくとも一方に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、屈曲部の屈曲によってばね機能部の弾性変形の機能を実現できる。その上で、屈曲部を挟む両側部分のうちの少なくとも一方に膨張部材を設けることで、ばね機能部の弾性変形動作を阻害せず、膨張部材の膨張に伴う基板接続部の変位を実現できる。
(4)前記端子金具は、金属製であり、前記膨張部材は、樹脂製であることが好ましい。
この構成によれば、端子金具の線膨張係数よりも膨張部材の線膨張係数を大きくするための膨張部材の材質の選択の自由度が大きくなる。
(5)前記基板接続部には、前記膨張部材の両端面を受ける一対の受け部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、膨張部材の熱膨張時に、膨張部材の両端面が一対の受け部に対して突っ張った状態で押圧することで、基板接続部の変位をより一層生じさせ易くなる。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示の基板用コネクタを具体化した実施例1を、図1図4を参照して説明する。本実施例1において、上下の方向については、図1図4にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。前後の方向については、図1図4にあらわれる右方、左方を、それぞれ前方、後方と定義する。左右の方向は、図1図4にあらわれる奥方向、手前方向を、それぞれ右方、左方と定義する。
【0011】
(コネクタの構成)
本実施例1の基板用コネクタ10(以下、単にコネクタ10ともいう)は、図1図2に示すように、回路基板20の板面(表面)上に設置されている。コネクタ10は、ハウジング30と、端子金具40と、を備えている。ハウジング30は、例えば複数の端子金具40が組み付けられている。ハウジング30は、相手側ハウジング(図示略)に嵌合可能である。ハウジング30は、例えば図示しない固定部材を介して回路基板20に固定されている。
【0012】
(ハウジングの構成)
ハウジング30は、例えば合成樹脂製である。ハウジング30は、図1図2に示すように、保持部31と、フード32と、を有している。保持部31は、端子金具40を保持する。保持部31は、前後方向(ハウジング30と相手ハウジングとの嵌合方向)に直交する壁部である。保持部31には、孔33が前後に貫通して設けられている。図示は省略するが、複数の孔33が保持部31に設けられている。複数の孔33は、例えば前後方向から見て保持部31の中央領域において、左右方向に並列して設けられている。端子金具40は、各孔33に圧入して装着される。
【0013】
フード32は、図1図2に示すように、保持部31から前方に突出している。フード32は、前方に開放された筒状である。フード32は、相手側ハウジング(図示略)に嵌合可能である。
【0014】
(端子金具の構成)
端子金具40は、例えば、図3図4に示すように、雄型の端子金具として構成されている。端子金具40は、導電金属製であって、タブ状に細長く延出する形態になっている。端子金具40は、タブ部41と、支持受部42と、中間部43と、基板接続部44と、を有している。タブ部41は、前後方向に延びている。タブ部41は、ハウジング30と相手側ハウジング(図示略)の嵌合時に、相手側ハウジングに保持された相手端子金具(雌型の端子金具)に電気的に接続される。
【0015】
支持受部42は、タブ部41の後端につながっている。支持受部42は、ハウジング30の孔33に圧入され、ハウジング30に支持される。支持受部42には、左右方向両側に張り出す爪状の係止片45,46が設けられている。係止片45,46は、保持部31の孔33の内面に食い込むようにして係止する。中間部43は、支持受部42の後端につながっている。中間部43は、端子金具40のその他の部分よりも幅広である。
【0016】
基板接続部44は、ハウジング30の外部において回路基板20の導電路(図示略)に接続される。基板接続部44は、図3に示すように、中間部43の右側下端から一旦下方に延出し、さらに後方側にS字状に延出している。基板接続部44は、中間部43に対して一段低い段差状に設けられている。基板接続部44は、ばね機能部51と、接続部52と、を具備している。
【0017】
ばね機能部51は、弾性変形可能である。ばね機能部51は、図3図4に示すように、第1直線部61と、第2直線部62と、第1屈曲部63と、第2屈曲部64と、を含んでいる。中間部43側から、第1直線部61、第1屈曲部63、第2直線部62、第2屈曲部64の順に並んでいる。第1直線部61及び第2直線部62は、直線状に延びる部分である。第1直線部61の一端(前端)は、中間部43に連なっている。第1直線部61の他端(後端)は、第1屈曲部63の一端(上端)に連なっている。第1屈曲部63は、本開示の「屈曲部」に相当する。第1屈曲部63は、左右方向から見て円弧状であり、後方に凸となるように屈曲している。第1屈曲部63の他端(下端)は、第2直線部62の一端(後端)に連なっている。第2直線部62の他端(前端)は、第2屈曲部64の一端(上端)に連なっている。第2屈曲部64は、左右方向から見て円弧状であり、前方に凸となるように屈曲している。第2屈曲部64の他端(下端)は、接続部52の一端(前端)に連なっている。
【0018】
ばね機能部51には、凹部65,66が設けられている。凹部65,66には、後述する膨張部材71,72がそれぞれ取り付けられる。凹部65は、第1直線部61の上面から下方に凹むように設けられている。凹部65は、第1直線部61の延び方向に沿って、中間部43の近傍から第1屈曲部63の近傍まで長手状に設けられている。凹部65の深さは、例えば第1直線部61の厚さの半分程度である。凹部65の前後両端の壁部は、それぞれ受け部65A,65Bを構成している。受け部65A,65Bは、それぞれ膨張部材71の前端面71A及び後端面71Bを受ける。
【0019】
凹部66は、第2直線部62の上面から下方に凹むように設けられている。凹部66は、第2直線部62の延び方向に沿って、第1屈曲部63の近傍から第2屈曲部64の近傍まで長手状に設けられている。凹部66の深さは、例えば第2直線部62の厚さの半分程度である。凹部66の前後両端の壁部は、それぞれ受け部66A,66Bを構成している。受け部66A,66Bは、それぞれ膨張部材72の前端面72A及び後端面72Bを受ける。
【0020】
基板接続部44には、図3図4に示すように、細長い形状の膨張部材71,72が取り付けられている。膨張部材71,72の線膨張係数は、基板接続部44の線膨張係数よりも大きい。膨張部材71,72は、例えば樹脂製である。端子金具40が金属製であるとともに膨張部材71,72が樹脂製であるため、端子金具40の線膨張係数よりも膨張部材71,72の線膨張係数を大きくするための膨張部材71,72の材質選択の自由度が大きくなる。膨張部材71,72は、例えばエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等の材料によって構成されている。膨張部材71,72は、基板接続部44における第1屈曲部63を挟む両側部分(第1直線部61及び第2直線部62)にそれぞれ取り付けられている。すなわち、第1屈曲部63及び第2屈曲部64には、膨張部材71,72が設けられていない。そのため、膨張部材71,72を基板接続部44に取り付けても、第1屈曲部63及び第2屈曲部64の弾性変形動作、即ちばね機能部51の弾性変形動作が阻害されることはない。膨張部材71は、第1直線部61に沿うように凹部65内に収容され、凹部65の各壁面(受け部65A,65B、底面65C)に例えば超音波溶接等を用いて固着されている。膨張部材72は、第2直線部62に沿うように凹部66内に収容され、凹部66の各壁面(受け部66A,66B、底面66C)に例えば超音波溶接等を用いて固着されている。図3図4に示すように、膨張部材71,72は、それぞれ凹部65,66から突出していない構成であるが、凹部65,66よりも外側に突出する構成であってもよい。
【0021】
接続部52は、基板接続部44の先端部分を構成している。接続部52は、図1に示すように、回路基板20の導電部(図示略)に電気的に接続されている。接続部52は、回路基板20の導電部(図示略)に、リフロー処理等によりはんだ付けされている。図1に示すように、接続部52と回路基板20との間にはんだSが存在している。
【0022】
(端子金具と回路基板の接続構造)
はんだ付けの際のリフロー処理に伴って、図2に示すように、回路基板20に熱膨張による反りが発生する場合がある。例えば、回路基板20は、左右方向から見て、ハウジング30が配置される領域よりも後方側の部分において、下方側に反る場合が考えられる。しかしながら、基板接続部44は、図2に示すように、膨張部材71,72の膨張に伴って、回路基板20側に変位可能である。具体的には、膨張部材71が長手方向に膨張することで、前端面71Aによって受け部65Aが前方に押され、後端面71Bによって受け部65Bが後方に押される。膨張部材71の線膨張率は端子金具40の線膨張率よりも大きいので、第1直線部61が膨張部材71と一体となって上方に凸となるように湾曲するため、第1屈曲部63が下方に下がる。また、膨張部材72が長手方向に膨張することで、前端面72Aによって受け部66Aが前方に押され、後端面72Bによって受け部66Bが後方に押される。膨張部材72の線膨張率は端子金具40の線膨張率よりも大きいので、第2直線部62が膨張部材72と一体となって上方に凸となるように湾曲するため、第2屈曲部64が下方に下がる。以上のようにして、基板接続部44は、膨張部材71,72の膨張に伴って、回路基板20側(下方側)に変位する。そのため、リフロー処理中に基板接続部44が回路基板20の変形に合わせて下がることで、基板接続部44が回路基板20に対して離れにくくなる。これにより、基板接続部44と回路基板20の間のはんだ付け状態が維持され、接触不良が抑制される。
【0023】
上述したように、膨張部材71が膨張する際に、前端面71Aが受け部65Aを押し、後端面71Bが受け部65Bを押す。これにより、膨張部材71は、凹部65内で両端面71A,71Bに対して突っ張る状態になる。そのため、第1直線部61の変形(上方に凸となる反り)がより一層生じ易くなる。膨張部材72も同様に、膨張する際に、前端面72Aが受け部66Aを押し、後端面72Bが受け部66Bを押す。これにより、膨張部材72は、凹部66内で両端面72A,72Bに対して突っ張る状態になる。そのため、第2直線部62の変形(上方に凸となる反り)がより一層生じ易くなる。したがって、基板接続部44の下方側への変位がより一層生じ易くなる。
【0024】
第1直線部61に凹部65を設けることで、第1直線部61の厚みが小さくなる。そのため、第1直線部61が撓み変形し易くなり、膨張部材71の熱膨張に伴う第1直線部61の変形(上方に凸となる反り)がより一層生じ易くなる。膨張部材72と第2直線部62との関係も同様である。
【0025】
基板接続部44は、弾性変形したばね機能部51の復元力に基づいて回路基板20に押し付けられている。すなわち、リフロー処理後、回路基板20の反り状態が戻り、回路基板20によって基板接続部44が上方側に押される。これにより、ばね機能部51は、上下方向で折り畳まれるように弾性変形した状態となる。例えば、第1屈曲部63及び第2屈曲部64の屈曲によって、ばね機能部51が弾性変形した状態となる。したがって、基板接続部44を回路基板20に接続した後、基板接続部44に生じる応力をばね機能部51の弾性変形によって緩和させることができる。
【0026】
コネクタ10には、複数の端子金具40が設けられており、接続部52と回路基板20の表面との間の高さのばらつき(いわゆるコプラナリティ)を管理する必要がある。そこで、基板接続部44が弾性変形したばね機能部51の復元力に基づいて回路基板20に押し付けられる構成であるため、各端子金具40間において接続部52と回路基板20の表面との間の高さのばらつきに関わらず、各接続部52と回路基板20との接続状態を確保することができる。
【0027】
(本実施例の効果)
以上のように、本開示の基板用コネクタ10によれば、膨張部材71,72の膨張に伴って、基板接続部44が回路基板20側に変位可能である。これにより、熱膨張等により回路基板20が変形して基板接続部44から離れようとする場合等に、膨張部材71,72の膨張に伴って基板接続部44が回路基板20側に変位させることができる。そのため、基板接続部44と回路基板20の接触不良を抑制することができる。
【0028】
本開示の基板用コネクタ10によれば、基板接続部44は、弾性変形可能なばね機能部51を有し、弾性変形したばね機能部51の復元力に基づいて回路基板20に押し付けられる。これにより、基板接続部44を回路基板20に接続した後、基板接続部44に生じる応力をばね機能部51の弾性変形によって緩和させることができる。
【0029】
本開示の基板用コネクタ10によれば、ばね機能部51は、第1屈曲部63を具備している。膨張部材71,72は、基板接続部44における第1屈曲部63を挟む両側部分(第1直線部61及び第2直線部62)にそれぞれ取り付けられている。これにより、第1屈曲部63の屈曲によってばね機能部51の弾性変形の機能を実現できる。その上で、第1屈曲部63を挟む両側部分(第1直線部61及び第2直線部62)にそれぞれ膨張部材71,72を設けることで、ばね機能部51の弾性変形動作を阻害せず、膨張部材71,72の膨張に伴う基板接続部44の変位を実現できる。
【0030】
本開示の基板用コネクタ10によれば、端子金具40は、金属製である。膨張部材71,72は、樹脂製である。これにより、端子金具40の線膨張係数よりも膨張部材71,72の線膨張係数を大きくするための膨張部材71,72の材質の選択の自由度が大きくなる。
【0031】
本開示の基板用コネクタ10によれば、基板接続部44には、膨張部材71の長さ方向の両端面71A,71Bを受ける一対の受け部65A,65Bが設けられている。これにより、膨張部材71の熱膨張時に、膨張部材71の両端面71A,71Bが受け部65A,65Bに突っ張ることで、基板接続部44の変位をより一層生じさせ易くなる。同様に、基板接続部44には、膨張部材72の長さ方向の両端面72A,72Bを受ける一対の受け部66A,66Bが設けられている。これにより、膨張部材72の熱膨張時に、膨張部材72の両端面72A,72Bが一対の受け部66A,66Bに対して突っ張った状態で押圧することで、基板接続部44の変位をより一層生じさせ易くなる。
【0032】
[実施例2]
図5図6は、実施例2の基板用コネクタを説明する図面である。実施例2は、端子金具40に膨張部材71が設けられていない点が実施例1と異なっている。それ以外の構成は、実施例1と同じであり、詳しい説明を省略する。
【0033】
本開示の基板用コネクタを具体化した実施例2のコネクタ210を、図5図6を参照して説明する。本実施例2において、上下の方向については、図5図6にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。前後の方向については、図5図6にあらわれる右方、左方を、それぞれ前方、後方と定義する。左右の方向は、図5図6にあらわれる奥方向、手前方向を、それぞれ右方、左方と定義する。
【0034】
基板接続部44には、図5図6に示すように、実施例1と同様の構成の膨張部材72が取り付けられている。膨張部材72は、基板接続部44における第1屈曲部63を挟む両側部分(第1直線部61及び第2直線部62)の一方側部分(第2直線部62)のみに取り付けられている。すなわち、第1屈曲部63及び第2屈曲部64には、膨張部材が設けられていない。そのため、膨張部材を基板接続部44に取り付けても、第1屈曲部63及び第2屈曲部64の弾性変形動作、即ちばね機能部51の弾性変形動作が阻害されない。
【0035】
はんだ付けの際のリフロー処理に伴って、図6に示すように、回路基板20に熱膨張による反りが発生する場合がある。例えば、回路基板20は、左右方向から見て、ハウジング30が配置される領域よりも後方側の部分において、下方側に反る場合が考えられる。しかしながら、基板接続部44は、図6に示すように、膨張部材72の膨張に伴って、回路基板20側に変位可能である。具体的には、膨張部材72が長手方向に膨張することで、前端面72Aによって受け部66Aが前方に押され、後端面72Bによって受け部66Bが後方に押される。膨張部材72の線膨張率は端子金具40の線膨張率よりも大きいので、第2直線部62が膨張部材72と一体となって上方に凸となるように湾曲するため、第2屈曲部64が下方に下がる。このようにして、基板接続部44は、膨張部材72の膨張に伴って、回路基板20側(下方側)に変位する。そのため、リフロー処理中に基板接続部44が回路基板20の変形に合わせて下がることで、基板接続部44が回路基板20に対して離れにくくなる。これにより、基板接続部44と回路基板20の間のはんだ付け状態が維持され、接触不良が抑制される。
【0036】
上述したように、膨張部材72が膨張する際に、前端面72Aが受け部66Aを押し、後端面72Bが受け部66Bを押す。これにより、膨張部材72は、凹部66内で両端面72A,72Bに対して突っ張った状態で押圧する状態になる。そのため、第2直線部62の変形(上方に凸となる反り)がより一層生じ易くなる。したがって、基板接続部44の下方側への変位がより一層生じ易くなる。
【0037】
実施例1と同様に、基板接続部44は、弾性変形したばね機能部51の復元力に基づいて回路基板20に押し付けられている。すなわち、リフロー処理後、回路基板20の反り状態が戻り、回路基板20によって基板接続部44が上方側に押される。これにより、ばね機能部51は、上下方向で折り畳まれるように弾性変形した状態となる。例えば、第1屈曲部63及び第2屈曲部64の屈曲によって、ばね機能部51が弾性変形した状態となる。したがって、基板接続部44を回路基板20に接続した後、基板接続部44に生じる応力をばね機能部51の弾性変形によって緩和させることができる。
【0038】
[実施例3]
図7図8は、実施例2の基板用コネクタを説明する図面である。実施例3は、基板接続部の構成が実施例1と異なっている。それ以外の構成は、実施例1と同じであり、詳しい説明を省略する。
【0039】
本開示の基板用コネクタを具体化した実施例3のコネクタ310を、図7図8を参照して説明する。本実施例3において、上下の方向については、図7図8にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。前後の方向については、図7図8にあらわれる右方、左方を、それぞれ前方、後方と定義する。左右の方向は、図7図8にあらわれる奥方向、手前方向を、それぞれ右方、左方と定義する。
【0040】
(基板用コネクタの構成)
端子金具40は、図7図8に示すように、タブ部41と、支持受部42と、中間部43と、基板接続部344と、を有している。基板接続部344は、ハウジング30の外部において回路基板20の導電路(図示略)に接続される。基板接続部344は、図7に示すように、中間部43の右側下端から一旦下方に延出し、さらに後方側にクランク状に延出している。基板接続部344は、支持受部42に対して一段低い段差状に設けられている。基板接続部344は、ばね機能部351と、接続部352と、を具備している。
【0041】
ばね機能部351は、弾性変形可能である。ばね機能部351は、図7に示すように、第1直線部361と、第2直線部362と、を含んでいる。中間部43側から、第1直線部361、第2直線部362の順に並んでいる。第1直線部361及び第2直線部362は、直線状に延びる部分である。第1直線部361の一端(前端)は、中間部43に連なっている。第1直線部361の他端(後端)は、第2直線部362の一端(上端)に連なっている。第2直線部362の他端(下端)は、接続部352の一端(前端)に連なっている。
【0042】
ばね機能部351には、図7に示すように、凹部365が設けられている。凹部365には、後述する膨張部材71がそれぞれ取り付けられる。凹部365は、第1直線部361の上面から下方に凹むように設けられている。凹部365は、第1直線部361の延び方向に沿って、中間部43の近傍から第2直線部362の一端(上端)の近傍まで長手状に設けられている。凹部365の深さは、例えば第1直線部361の厚さの半分程度である。凹部365の前後両端の壁部は、それぞれ受け部365A,365Bを構成している。受け部365A,365Bは、それぞれ膨張部材71の前端面71A及び後端面71Bを受ける。
【0043】
基板接続部344には、図7に示すように、細長い形状の膨張部材71が取り付けられている。膨張部材71の線膨張係数は、基板接続部344の線膨張係数よりも大きい。膨張部材71は、例えば樹脂製である。端子金具40が金属製であるとともに膨張部材71が樹脂製であるため、端子金具40の線膨張係数よりも膨張部材71の線膨張係数を大きくするための膨張部材71の材質選択の自由度が大きくなる。膨張部材71は、例えばエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等の材料によって構成されている。膨張部材71は、凹部365の各壁面(受け部365A,365B、底面365C)に例えば超音波溶接等を用いて付着されている。図7に示すように、膨張部材71は、凹部365から突出していない構成であるが、凹部365よりも外側に突出する構成であってもよい。
【0044】
接続部352は、基板接続部344の先端部分を構成している。接続部352は、図7に示すように、回路基板20の導電部(図示略)に電気的に接続されている。接続部352は、回路基板20の導電部(図示略)に、リフロー処理等によりはんだ付けされている。図7に示すように、接続部352と回路基板20との間にはんだSが存在している。
【0045】
(端子金具と回路基板の接続構造)
はんだ付けの際のリフロー処理に伴って、図8に示すように、回路基板20に熱膨張による反りが発生する場合がある。例えば、回路基板20は、左右方向から見て、ハウジング30が配置される領域よりも後方側の部分において、下方側に反る場合が考えられる。しかしながら、基板接続部344は、図8に示すように、膨張部材71の膨張に伴って、回路基板20側に変位可能である。具体的には、膨張部材71が長手方向に膨張することで、前端面71Aによって受け部365Aが前方に押され、後端面71Bによって受け部365Bが後方に押される。これにより、第1直線部361が膨張部材71とともに上方に凸となるように湾曲するため、第2直線部362及び接続部352が下方に下がる。このようにして、基板接続部344は、膨張部材71の膨張に伴って、回路基板20側(下方側)に変位する。そのため、リフロー処理中に基板接続部344が回路基板20の変形に合わせて下がることで、基板接続部344が回路基板20に対して離れにくくなる。これにより、基板接続部344と回路基板20の間のはんだ付け状態が維持され、接触不良が抑制される。
【0046】
上述したように、膨張部材71が膨張する際に、前端面71Aが受け部365Aを押し、後端面71Bが受け部365Bを押す。これにより、膨張部材71は、凹部365内で両端面71A,71Bに対して突っ張った状態で押圧する状態になる。そのため、第1直線部361の変形(上方に凸となる反り)がより一層生じ易くなる。したがって、基板接続部344の下方側への変位がより一層生じ易くなる。
【0047】
第1直線部361に凹部365を設けることで、第1直線部361の厚みが小さくなる。そのため、第1直線部361が撓み変形し易くなり、膨張部材71の熱膨張に伴う第1直線部361の変形(上方に凸となる反り)がより一層生じ易くなる。
【0048】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例1では、膨張部材71が、第1直線部61に設けられた凹部65内に配される構成であったが、図9に示すように、突出部461A,461B間に配される構成であってもよい。具体的には、第1直線部61の上面において、前後両端付近にそれぞれ上方に突出する突出部461A,461Bが設けられている。膨張部材71は、突出部461Aの後面、突出部461Bの後面、及び第1直線部61の上面における突出部461A,461B間の部分に例えば超音波溶接等を用いて付着されている。このような構成によっても、熱膨張時に膨張部材71を突出部461A,461Bに対して突っ張らせることができ、第1直線部61の変形(上方に凸となる反り)がより一層生じ易くなる。実施例2,3についても同様である。
上記実施例1では、基板接続部44に膨張部材71,72が設けられていたが、膨張部材71のみが設けられる構成であってもよい。
上記実施例1,2では、基板接続部44がS字状であったが、弾性変形したばね機能部51の復元力に基づいて回路基板20に押し付けられる構成であれば、その他の形状であってもよい。例えば、ばね機能部51に設けられる直線部の数及び屈曲部の数は、特に限定されない。
上記実施例1では、膨張部材71が第1直線部61の上面のほぼ全体に設けられていたが、熱膨張時に基板接続部44が下方側へ変位する構成であれば、膨張部材71が設けられる部位は特に限定されない。膨張部材72についても同様である。
上記実施例3では、膨張部材71が第1直線部361の上面に設けられていたが、熱膨張時に基板接続部44が下方側へ変位する構成であれば、膨張部材71が設けられる部位は特に限定されない。
上記実施例1~3では、膨張部材が基板接続部に超音波溶接を用いて付着される構成を例示したが、接着剤を用いた接着等、その他の方法で取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…基板用コネクタ
20…回路基板
30…ハウジング
31…保持部
32…フード
33…孔
40…端子金具
41…タブ部
42…支持受部
43…中間部
44…基板接続部
45,46…係止片
51…ばね機能部
52…接続部
61…第1直線部
62…第2直線部
63…第1屈曲部
64…第2屈曲部
65…凹部
65A,65B…受け部
65C…底面
66…凹部
66A,66B…受け部
66C…底面
71…膨張部材
71A…前端面
71B…後端面
72…膨張部材
72A…前端面
72B…後端面
210…コネクタ
310…コネクタ
344…基板接続部
351…ばね機能部
352…接続部
361…第1直線部
362…第2直線部
365…凹部
365A,365B…受け部
365C…底面
461A,461B…突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9