(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187690
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ストッパーおよびそれを用いた内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/018 20060101AFI20221213BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20221213BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
A61B1/018 515
A61B1/00 650
A61B17/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095815
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】関根 雅
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
【Fターム(参考)】
4C160NN21
4C161AA01
4C161CC06
4C161FF43
4C161GG11
4C161GG15
4C161GG22
4C161HH21
4C161LL02
(57)【要約】
【課題】内視鏡からの処置具の過度な突出により誤って体壁等を傷つけることを防止したり、慎重になり過ぎて処置具の挿入に時間がかかるのを抑制することが可能なストッパーの提供を目的とする。
【解決手段】ストッパーS1は、内視鏡5に設けられた導入口51aから導入され内視鏡5の内腔51を介して体内に挿入される長手形状の処置具3、に取り付けられるストッパーであって、導入口51aよりも基端側における処置具3の部位に着脱自在に固定され、処置具3の先端部が内腔51の先端開口51bから所定長さLを超えて突出しないように、導入口51aへの当接により処置具3が内視鏡5の内腔51へ進入する度合いを制限するものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡に設けられた導入口から導入され前記内視鏡の内腔を介して体内に挿入される長手形状の処置具、に取り付けられるストッパーであって、
前記導入口よりも基端側における前記処置具の部位に着脱自在に固定され、前記処置具の先端部が前記内腔の先端開口から所定長さを超えて突出しないように、前記導入口への当接により前記処置具が前記内視鏡の内腔へ進入する度合いを制限することを特徴とするストッパー。
【請求項2】
ストッパー本体を備え、
前記ストッパー本体は、処置具を挟み込むように固定する請求項1に記載のストッパー。
【請求項3】
ストッパー本体に連結されたシャフト部材を備え、
前記シャフト部材は、長軸方向に沿って内部に処置具を保持するための貫通路を有し、
前記シャフト部材の少なくとも一部は、導入口を介して内視鏡の内腔に進入可能である請求項2に記載のストッパー。
【請求項4】
ストッパー本体とシャフト部材とが分離可能である請求項3に記載のストッパー。
【請求項5】
長手形状の処置具と、
前記処置具を挿通する内腔が設けられた内視鏡と、
前記処置具に取り付けられるストッパーであって、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のストッパーと、を備えている内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストッパーおよびそれを用いた内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
消化管などを検査したり、組織の採取や切除を行う医療器具として、例えば、鉗子などの処置具が併設された内視鏡が知られている。
【0003】
このような内視鏡は、例えば、術野を撮影するための対物レンズが先端に取り付けられたカメラを備えていると共に、各種の処置具を挿通するための内腔が内視鏡の長軸に沿って設けられている。
【0004】
このような内視鏡を用いた手技においては、内腔に導入された処置具は、その先端部を内視鏡の先端開口から突出することで体内に挿入され、カメラにより術野を観ながら処置具を用いて各種の処置(組織の採取や切除など)が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような内視鏡を用いた手技は、通常、消化管の内部のような体腔内の狭い術野で行われる。このため、処置具が突出する内視鏡の先端開口から体壁までの距離が短く、勢いよく処置具を挿入すると、上記開口から急に処置具が突出して体壁を負傷する虞がある。一方、ゆっくり処置具を挿入すると、内腔に導入した処置具が開口から突出するまでに長い時間を要し、手技に時間を要することで患者への負担が増加することが懸念される。
【0006】
なお、処置具にその先端部の位置情報を示すようなマーキングを施すことも考えられる。しかしながら、目的に応じて長さが異なる種々の内視鏡が存在する。このため、処置具に統一的にマーキングを設けることも難しい。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、内視鏡からの処置具の過度な突出により誤って体壁等を傷つけることを防止したり、慎重になり過ぎて処置具の挿入に時間がかかるのを抑制することが可能なストッパー、およびそれを用いた内視鏡システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のいくつかの態様は、
(1)内視鏡に設けられた導入口から導入され前記内視鏡の内腔を介して体内に挿入される長手形状の処置具、に取り付けられるストッパーであって、
前記導入口よりも基端側における前記処置具の部位に着脱自在に固定され、前記処置具の先端部が前記内腔の先端開口から所定長さを超えて突出しないように、前記導入口への当接により前記処置具が前記内視鏡の内腔へ進入する度合いを制限することを特徴とするストッパー、
(2)ストッパー本体を備え、
前記ストッパー本体は、処置具を挟み込むように固定する前記(1)に記載のストッパー、
(3)ストッパー本体に連結されたシャフト部材を備え、
前記シャフト部材は、長軸方向に沿って内部に処置具を保持するための貫通路を有し、
前記シャフト部材の少なくとも一部は、導入口を介して内視鏡の内腔に進入可能である前記(2)に記載のストッパー、
(4)ストッパー本体とシャフト部材とが分離可能である前記(3)に記載のストッパー、および
(5)長手形状の処置具と、
前記処置具を挿通する内腔が設けられた内視鏡と、
前記処置具に取り付けられるストッパーであって、前記(1)から(4)のいずれか1項に記載のストッパーと、を備えている内視鏡システム、である。
【0009】
なお、本明細書において、「先端側」とは、内視鏡の長軸方向に沿う方向であって、体内により深く進行する方向を意味する。「基端側」とは、内視鏡の長軸方向に沿う方向であって、先端側と反対の方向を意味する。「先端」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ示す。「長軸方向」とは、内視鏡または処置具の長手方向に沿う方向を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、内視鏡からの処置具の過度な突出により誤って体壁等を傷つけることを防止したり、慎重になり過ぎて処置具の挿入に時間がかかるのを抑制することが可能なストッパー、およびそれを用いた内視鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】第1の実施形態の開状態での概略的斜視図である。
【
図1B】第1の実施形態の閉状態での概略的斜視図である。
【
図2】
図1A,1Bのストッパーが処置具に固定された状態を示す概略的斜視図である。
【
図3A】第1の実施形態の使用状態を示す概略的側面図である。
【
図3B】第1の実施形態の使用状態を示す概略的側面図である。
【
図3C】第1の実施形態の使用状態を示す概略的側面図である。。
【
図3D】第1の実施形態の使用状態を示す概略的側面図である。
【
図4A】第2の実施形態の開状態での概略的斜視図である。
【
図4B】第2の実施形態の閉状態での概略的斜視図である。
【
図5】
図4A,4Bのストッパーが処置具に固定された状態を示す概略的斜視図である。
【
図6A】第2の実施形態の使用状態を示す概略的側面図である。
【
図6B】第2の実施形態の使用状態を示す概略的側面図である。
【
図6C】第2の実施形態の使用状態を示す概略的側面図である。
【
図6D】第2の実施形態の使用状態を示す概略的側面図である。
【
図7A】第3の実施形態を示す概略的斜視図であって、ストッパー本体とシャフト部材とが合体したときの開状態での図である。
【
図7B】第3の実施形態を示す概略的斜視図であって、ストッパー本体とシャフト部材とが分離したときの開状態での図である。
【
図8A】第3の実施形態の使用状態を示す概略的側面図である。
【
図8B】第3の実施形態の使用状態を示す概略的側面図である。
【
図8C】第3の実施形態の使用状態を示す概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。また、各図面に示した寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、必ずしも実際の寸法に対応するものではない。
図3A~
図3D,
図6A~
図6D,
図8A~
図8Cにおいて、図示左側が先端側(遠位)、右側が基端側(近位、手元側)をそれぞれ示している。
【0013】
<ストッパー>
本開示のストッパーは、内視鏡に設けられた導入口から導入され上記内視鏡の内腔を介して体内に挿入される長手形状の処置具、に取り付けられるストッパーであって、上記導入口よりも基端側における上記処置具の部位に着脱自在に固定され、上記処置具の先端部が上記内腔の先端開口から所定長さを超えて突出しないように、上記導入口への当接により上記処置具が上記内視鏡の内腔へ進入する度合いを制限するものである。
【0014】
本開示のストッパーが適用される処置具は、体内に挿入される長手形状の医療器具である。処置具としては、例えば、体壁の組織を掴んで採取する鉗子(例えば、
図3Aの鉗子31参照)、体壁に生じたポリープなどを切除するスネア(不図示)、組織に薬剤を注入する注射器(不図示)等が挙げられる。
【0015】
本開示のストッパーが適用される内視鏡は、体内に挿入される長手形状の医療器具である。内視鏡は、基端部に位置する導入口と、先端に位置する先端開口と、導入口から先端開口に亘って設けられかつ処置具を挿通可能な内腔と、を有している(例えば、
図3Aの内視鏡5参照)。
【0016】
[第1の実施形態]
図1A,
図1Bは、第1の実施形態を示す概略的斜視図である。ストッパーS1は、
図3Cに示すように、内視鏡5に設けられた導入口51aから導入され内視鏡5の内腔51を介して体内に挿入される長手形状の処置具31(3)、に取り付けられる器具である。ストッパーS1は、
図1A,
図1Bに示すように、概略的に、ストッパー本体11により構成されている。なお、
図1AはストッパーS1が開状態(処置具に固定されていないときの状態、以下同じ)での図を、
図1BはストッパーS1が閉状態(処置具に固定されているときの状態、以下同じ)での図をそれぞれ示している。
【0017】
ストッパー本体11は、ストッパーS1を導入口51aよりも基端側における処置具3の部位に着脱自在に固定される部材である。ストッパー本体11は、
図2に示すように、例えば、処置具31(3)を挟み込むように固定する。具体的には、ストッパー本体11は、処置具3の外周に接する第1片111と、処置具3を挟んで第1片111に対向するように配置され、処置具3の外周に接する第2片112とにより構成することができる。第1片111と第2片112とは、例えば、これらの一端部に設けられた蝶番113により開閉できるように接続される。このようなストッパー本体11においては、第1片111と第2片112とを閉じ合わせることで固定孔11hが形成され、この固定孔11hに処置具3を挟んで挟持する。例えば、第1片111および第2片112には、それぞれ係合部111aおよび被係合部112aなどを設けることができ、これら係合部111aと被係合部112aとを係合することでストッパーS1が処置具3に固定される。
【0018】
ストッパー本体11は、
図3Cに示すように、処置具3の先端部が内腔51の先端開口51bから所定長さLmaxを超えて突出しないように、導入口51aへの当接により処置具3が内視鏡5の内腔51へ進入する度合いを制限する。ストッパー本体11は、具体的には、内視鏡5の導入口51a(被当接部)に当接する当接部11aを有している。この当接部11aが内視鏡5の導入口51aに当接することで、内腔51への処置具3の更なる進入が阻止され、処置具3が所定長さLmaxを超えて内視鏡5の先端開口51bから突出するのを防止することができる。
【0019】
ストッパー本体11を構成する材料は、処置具3に確実に固定することができ、かつ内視鏡5の被当接部51aに当接して処置具3の進入を制限することができるような剛性を有していることが好ましい。上記材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーンゴムなどの樹脂材料、ステンレス鋼などの金属材料等が挙げられる。
【0020】
なお、第1片111および第2片112それぞれの処置具3を挟持する部位は、柔軟性を有しかつ滑動し難い構造となるようにしてもよい。具体的には、例えば、第1片111および第2片112それぞれの表面上に、上記特性を有しかつ処置具3に直接接触するパッド(不図示)を設けるようにしてもよい。これにより、ストッパーS1や処置具3が傷つくのを防止すると共に、処置具3に対するストッパーS1の位置ズレを防止することができ、ストッパーS1を処置具3に確実に固定することができる。また、ストッパーS1や処置具3に傷が付かない分、これらを再利用することができる。
【0021】
パッドを形成する材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーンゴムなどの樹脂材料等が挙げられる。
【0022】
次に、ストッパーS1の使用態様について説明する。ここでは、口腔を介して胃の内部に内視鏡5を挿入し、処置具3を用いて胃壁に生じた病変部の組織を採取する手技を説明する。処置具3としては、
図2,
図3Aに示すように、先端に配置され組織を掴んで採取する鉗子本体311と、鉗子本体311を動かすワイヤ312と、内部にワイヤ312を収納するチューブ313と、手元側に配置され、ワイヤ312を介して鉗子本体311を動かす操作部314と備えた鉗子31を例示する。内視鏡5としては、
図3Aに示すように、導入口51aから先端開口51bに亘って鉗子31を挿通するための内腔51が設けられていると共に、先端に術野に臨む対物レンズ52が取り付けられたものを例示する。対物レンズ52を介して得られた術野の像は、例えば、図示していないイメージセンサ等を経て体外のモニターに映し出すことができる。
【0023】
[処置具へのストッパーの装着]
まず、内視鏡5を体内に挿入するのに先立ち、ストッパーS1を処置具3に装着する。具体的には、
図3Aに示すように、例えば、手技に用いる内視鏡5および鉗子31それぞれをまっすぐに延ばし、内視鏡5の先端開口51b(鉗子31の先端部が突出する開口)の位置と鉗子本体311の先端の位置とが揃うように平行に並べる。
【0024】
次に、
図2,
図3Bに示すように、ストッパー本体11の第1片111と第2片112とにより鉗子31のチューブ313を挟み込みながら、ストッパー本体11の当接部11aが導入口51a(被当接部)から基端側に向かって所定の距離L1となるように配置する。次いで、ストッパー本体11の位置を保持しながら、ストッパー本体11の係合部111aを被係合部112aに係合することで、形成された固定孔11h内に鉗子31を固定する。なお、所定の距離L1は、例えば、術野のサイズに応じ、先端開口51bからの鉗子31の突出が許容される最大の長さ(所定長さLmax)と同じ長さに設定することができる。
【0025】
[体内への処置具の挿入]
次に、ストッパーS1が装着された処置具3を内視鏡5の内腔(体内)に挿入する。具体的には、まず、鉗子本体311を導入口51aに差し入れた後、操作部314を把持しながら押し込むことで鉗子31を内腔51に導入する。次いで、鉗子31を更に押し込むと、
図3Cに示すように、内視鏡5の先端開口51bから鉗子本体311が突出し、鉗子31が体内に挿入される。この際、鉗子31を内腔51に素早く押し込むことで鉗子本体311が先端開口51bから急に突出したとしても、ストッパー本体11の当接部11aが内視鏡5の導入口51a(被当接部)に当接するため、鉗子本体311が先端開口51bから所定長さLmaxを超えて突出することはない。
【0026】
[処置具の操作]
次に、処置具3を操作する。具体的には、
図3Dに示すように、鉗子31の操作部314の操作によりワイヤ312を長軸方向に動かすことで鉗子本体311を開いた後、操作部314により更にワイヤを操作することで病変部Bを掴みながらその組織を採取する。
【0027】
[体外への処置具の抜去]
次に、処置具3を内視鏡5の外部(体外)に抜去する。具体的には、鉗子本体311により採取した組織を掴んだ状態で、操作部314を把持しながら鉗子31を後退させて内腔51から引き抜く。これにより鉗子31が内視鏡5から抜去され、鉗子31を用いた手技が完了する。
【0028】
なお、上述した鉗子31による手技の後、必要に応じ、他の処置具を用いて他の手技を行ってもよい。その際、他の処置具においても、同一または異なるストッパーおよび内視鏡を用い、同様な手法で他の手技を行ってもよい。
【0029】
以上のように、ストッパーS1は、導入口51aへの当接により処置具3が内視鏡5の内腔51へ進入する度合いを制限するので、簡便な手法で内視鏡5からの処置具3の最大の突出長さを所定長さLmaxに制限することができ、内視鏡5からの処置具3の過度な突出により誤って体壁等を傷つけることを防止することができる。また、処置具3を内腔51に素早く押し込むことができる分、慎重になり過ぎて処置具3の挿入に時間がかかるのを抑制することができ、その結果、手技の時間短縮により患者への負担を低減することができる。
【0030】
また、本実施形態のストッパーS1は、ストッパー本体11が処置具3を挟み込むように固定する。このため、ストッパーS1を簡易な構成にすることができると共に、ストッパーS1を迅速かつ確実に処置具3に固定することができる。
【0031】
[第2の実施形態]
図4A,
図4Bは、第2の実施形態を示す概略的斜視図である。ストッパーS2は、
図4A,
図4Bに示すように、概略的に、ストッパー本体12と、シャフト部材22とにより構成されている。ストッパーS2は、ストッパー本体12およびシャフト部材22を備えている点で、第1の実施形態と異なっている。本実施形態においては、以下に示すストッパー本体12の構成以外のストッパー本体12の構成は、第1の実施形態と同様である。なお、
図4AはストッパーS2が開状態での図を、
図4BはストッパーS2が閉状態での図をそれぞれ示している。
【0032】
ストッパー本体12は、ストッパーS2を導入口51aよりも基端側における処置具3の部位に着脱自在に固定される部材である。ストッパー本体12は、
図5に示すように、処置具3を挟み込むように固定する。本実施形態のストッパー本体12は、処置具3の外周に接する第1片121と、処置具3を挟んで第1片121に対向するように配置され、処置具3の外周に接する第2片122とにより構成されている。また、第1片121と第2片122とは、これらの一端部に設けられた蝶番123により開閉できるように接続され、第1片121に設けられた係合部121aと第2片122に設けられた被係合部122aとを係合することでストッパーS2が処置具3に固定される。
【0033】
シャフト部材22は、ストッパー本体12に連結された部材である。シャフト部材22は、長軸方向に沿って内部に処置具3を保持するための貫通した孔状の貫通路22hを有している。貫通路22hは、例えば、第1片121と第2片122とにより形成される固定孔12hに連続するように設けることができる。シャフト部材22の長軸方向の長さは、特に限定されず、例えば、所定長さLmaxよりも長くなるように形成してもよい。
【0034】
ストッパー本体12とシャフト部材22とは、一体的に形成されていてもよく、分離可能となるように別体として形成されていてもよい。本実施形態では、ストッパー本体12とシャフト部材22とが一体的に形成されている。
【0035】
シャフト部材22の少なくとも一部は、導入口51aを介して内視鏡5の内腔51に進入することができるよう、内腔51に進入する部位のシャフト部材22の外径が内腔51の内径よりも小さくなるように形成されている。内腔51の導入口51aの内周には、例えば、口ゴム53を設けてもよい(
図6A参照)。口ゴム53にシャフト部材22の外周面を密着させることで、内腔51を液密または気密に保ちながらシャフト部材22が内腔51を移動するのが許容される。
【0036】
シャフト部材22を形成する材料は、内視鏡5の動きを妨げずに内腔51に進入できるような柔軟性を有していることが好ましい。また、シャフト部材22を形成する材料は、内腔51を容易に移動できるように、滑りやすい材料で形成されていることも好ましい。なお、ストッパー本体12を構成する材料とシャフト部材22を形成する材料とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0037】
シャフト部材22の外周面には、長軸方向に沿って目盛りが付されていてもよい。上記目盛りは、例えば、ストッパー本体12の当接部12aからの距離を表した指標であってもよく、当接部12aと反対側のシャフト部材22の端部からの距離を表した指標であってもよい。これにより、処置具3が先端開口51bからどの程度突出しているか(現在の突出長さL)を容易かつ正確に把握することができ、より精度の高い手技を行うことができる。
【0038】
また、シャフト部材22の外周面は、凹凸に形成されていてもよい。凹凸形状としては、例えば、長軸方向に沿って設けられた連続または断続した直線状の突部または溝部、円周方向に設けられた環状または弧状の突部または溝部等が挙げられる。上記突部および溝部は、シャフト部材の所定の部位(所定の一箇所または複数箇所)に設けることができる。これにより、術者は、突部および溝部を手掛かりとして、ストッパーを目視することなく手技を行うことができる。
【0039】
次に、ストッパーS2の使用態様について説明する。なお、[処置具の操作]および[体外への処置具の抜去]については、第1の実施形態と同様であるため、ここでは、[処置具へのストッパーの装着]および[体内への処置具の挿入]についてのみ説明する。
【0040】
[処置具へのストッパーの装着]
処置具3へのストッパーS2の装着は、以下のように行うことができる。すなわち、
図6Aに示すように、例えば、手技に用いる内視鏡5および鉗子31それぞれをまっすぐに延ばし、内視鏡5の先端開口51b(鉗子31の先端部が突出する開口)の位置と鉗子本体311の先端の位置とが揃うように平行に並べる。
【0041】
次に、
図6Bに示すように、シャフト部材22の貫通路22hに鉗子31のチューブ313を通し、ストッパー本体12の第1片121と第2片122とにより鉗子31のチューブ313を挟み込みながら、ストッパー本体12の当接部12aが導入口51a(被当接部)から基端側に向かって所定の距離L1(例えば、所定長さLmax)となるように配置する。次いで、ストッパー本体12の位置を保持しながら、ストッパー本体12の係合部121aを被係合部122aに係合することで、形成された固定孔12h内に鉗子31を固定する。
【0042】
[体内への処置具の挿入]
ストッパーS2が装着された処置具3の体内への挿入は、以下のように行うことができる。すなわち、まず、鉗子31の先端を導入口51aに差し入れた後、操作部314を把持しながら押し込むことで鉗子31を内腔51に導入する。次いで、鉗子31を更に押し込むと、
図6Cに示すように、内視鏡5の先端開口51bから鉗子本体311が突出し、鉗子31が体内に挿入される。この際、シャフト部材22の先端側の部位も導入口51aから内腔51に進入するため、例えば、導入口51a(被当接部)の位置におけるシャフト部材22の目盛りを読み取ることで鉗子31の先端の先端開口51bからの現在の突出長さLを把握することできる。また、
図6Dに示すように、ストッパー本体12の当接部12aが内視鏡5の導入口51a(被当接部)に当接するまで押し込むと、それ以上に鉗子31が内腔51に進入できなくなる。そのため、鉗子本体311が先端開口51bから所定長さLmaxを超えて突出することはない。
【0043】
以上のように、ストッパーS2は、上記構成であるので、簡便な手法で内視鏡5からの処置具3の最大の突出長さを所定長さLmaxに制限することができる。また、ストッパーS2は、シャフト部材22を備えているので、導入口51aの外部に露出したシャフト部材22の長さから、現在の突出長さLを容易に把握することができる。すなわち、処置具3を体内に導入する際、シャフト部材22に触れたときの手の感触のみで手元を見なくても処置具3の先端が内視鏡5の先端開口51bから突出するタイミングを察知することができ、例えば、手がシャフト部材22に触れるまでは、スピーディーに処置具3を内視鏡5へ送り込み、手がシャフト部材22に触れた段階で送り込むスピードを緩めて、鉗子31の先端を内視鏡5の先端開口51bから慎重に突出させることができる。
【0044】
[第3の実施形態]
図7A,
図7Bは、第3の実施形態を示す概略的斜視図である。ストッパーS3は、
図7A,
図7Bに示すように、概略的に、ストッパー本体13と、シャフト部材23とにより構成されている。本実施形態のストッパーS3は、ストッパー本体13とシャフト部材23とが分離できるように構成されている点で、第2の実施形態と異なっている。本実施形態においては、以下に示すストッパー本体13およびシャフト部材23の構成以外のストッパー本体13およびシャフト部材23の構成は、第2の実施形態と同様である。なお、
図7Aはストッパー本体13とシャフト部材23とが合体したときの開状態での図を、
図7Bはストッパー本体13とシャフト部材23とが分離したときの開状態での図をそれぞれ示している。
【0045】
ストッパー本体13は、ストッパーS3を導入口51aよりも基端側における処置具3の部位に着脱自在に固定する。ストッパー本体13は、処置具3を挟み込むように固定する。本実施形態のストッパー本体13は、処置具3の外周に接する第1片131と、処置具3を挟んで第1片131に対向するように配置され、処置具3の外周に接する第2片132とにより構成されている。また、第1片131と第2片132とは、これらの一端部に設けられた蝶番133により開閉できるように接続され、第1片131に設けられた係合部131aと第2片132に設けられた被係合部132aとを係合することでストッパーS3が処置具3に固定される。
【0046】
シャフト部材23は、ストッパー本体13に連結された部位である。シャフト部材23は、長軸方向に沿って内部に処置具3を保持するための貫通した孔状の貫通路23hを有している。シャフト部材23の少なくとも一部は、導入口51aを介して内視鏡5の内腔51に進入することができる。
【0047】
本実施形態では、ストッパー本体13とシャフト部材23とが分離可能となるように別体として形成されている。両者を分離する構造は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。本実施形態では、ストッパー本体13とシャフト部材23とを合体したり分離できるように、シャフト部材23の一端に設けられた接続部23bが、ストッパー本体13に設けられた被接続部13bに嵌脱可能に装着される。なお、ストッパー本体13とシャフト部材23とが合体した状態では、貫通路23hは、第1片131と第2片132とにより形成される固定孔に連続するように形成されている。
【0048】
次に、ストッパーS3の使用態様について説明する。なお、[体内への処置具の挿入]については第2の実施形態と同様であり、[処置具の操作]および[体外への処置具の抜去]については第1の実施形態と同様である。そのため、ここでは、[処置具へのストッパーの装着]についてのみ説明する。
【0049】
[処置具へのストッパーの装着]
処置具3へのストッパーS3の装着は、以下のように行うことができる。すなわち、
図8Aに示すように、例えば、手技に用いる内視鏡5および鉗子31それぞれをまっすぐに延ばし、内視鏡5の先端開口51b(鉗子31の先端部が突出する開口)の位置と鉗子本体311の先端の位置とが揃うように平行に並べる。
【0050】
次に、ストッパー本体13とシャフト部材23とが分離している状態で、これらを処置具3へ装着する。まず、
図8Bに示すように、シャフト部材23の貫通路23hに鉗子31のチューブ313を挿通する。次いで、
図8Cに示すように、ストッパー本体13の第1片131と第2片132とにより鉗子31のチューブ313を挟み込みながら、ストッパー本体13の当接部13aが導入口51a(被当接部)から基端側に向かって所定の距離L1(例えば、所定長さLmax)となるように配置する。次いで、ストッパー本体13の位置を保持しながら、その被接続部13bにシャフト部材23の接続部23bを接続することで両者を合体した後、ストッパー本体13の係合部131aを被係合部132aに係合することで、形成された固定孔内に鉗子31を固定する。
【0051】
以上のように、ストッパーS3は、上記構成であるので、簡便な手法で内視鏡5からの処置具3の最大の突出長さを所定長さLmaxに制限することができる。また、ストッパーS3は、ストッパー本体13とシャフト部材23とが分離できるように構成されているので、手技に応じ、シャフト部材23が連結したストッパーS3として用いたり、ストッパー本体13を単独で用いることができる。
【0052】
<内視鏡システム>
本開示の内視鏡システムは、長手形状の処置具と、上記処置具を挿通する内腔が設けられた内視鏡と、上記処置具に取り付けられる本開示のストッパーとを備えている。
【0053】
[第4の実施形態]
図9は、第4の実施形態を示す概略的側面図である。内視鏡システムC1は、
図9に示すように、概略的に、処置具3と、内視鏡5と、ストッパーS1とにより構成されている。本実施形態においては、処置具3、内視鏡5、およびストッパーS1の構成は、第1の実施形態で説明したものと同じ構成である。なお、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、内視鏡システムC1の使用態様は、第1の実施形態で説明したストッパーS1、処置具3、内視鏡5の使用態様と同様である。
【0054】
処置具3は、内視鏡5に設けられた導入口51aから導入され、内視鏡5の内腔51を介して体内に挿入される長手形状の医療器具である。処置具3は、例えば、体内の組織(病変部など)に対し、採取、切除、投薬などの処置を施す。処置具3としては、例えば、体壁の組織を掴んで採取する鉗子、体壁に生じたポリープなどを切除するスネア、組織に薬剤を注入する注射器等が挙げられる。本実施形態では、鉗子31が例示されている。
【0055】
内視鏡5は、体内に挿入される医療器具である。内視鏡5は、基端部に位置する導入口51aと、先端に位置する先端開口51bと、導入口51aから先端開口51bに亘って処置具3を挿通する内腔51とが設けられている。内視鏡5の先端には、例えば、術野を撮影するための対物レンズ52が設けられており、対物レンズ52から取り込んだ術野の像をイメージセンサ53により電気信号に変換し、この電気信号を電気ケーブル54を通して体外のモニター(不図示)に送信する。内視鏡5は、その先端に術野を照らす照明器具(不図示)を有していてもよい。
【0056】
ストッパーS1は、処置具3に取り付けられる器具である。ストッパーS1は、導入口51aよりも基端側における処置具3の部位に着脱自在に固定され、処置具3の先端部が内腔51の先端開口51bから所定長さLmaxを超えて突出しないように、導入口51aへの当接により処置具3が内視鏡5の内腔51へ進入する度合いを制限する。
【0057】
以上のように、内視鏡システムC1は、上記構成であるので、簡便な手法で内視鏡5からの処置具3の最大の突出長さを所定長さLmaxに制限することができ、内視鏡5からの処置具3の過度な突出により誤って体壁等を傷つけることを防止することができる。また、処置具3を内腔51に素早く押し込むことができる分、慎重になり過ぎて処置具3の挿入に時間がかかるのを抑制することができ、その結果、手技の時間短縮により患者への負担を低減することができる。
【0058】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。上述した実施形態の構成のうちの一部を削除したり、他の構成に置換してもよく、上述した実施形態の構成に他の構成を追加等してもよい。
【0059】
例えば、上述した実施形態では、処置具3を挟み込むように固定するストッパー本体11,12,13を備えたストッパーS1,S2,S3について説明した。しかしながら、導入口(被当接部)への当接により処置具が内視鏡の内腔へ進入する度合いを制限することができれば、いずれの構成のストッパーであってもよい。例えば、処置具の外周に巻くように固定するバンド等をストッパーとして採用してもよい。このようなストッパーでは、巻かれたバンドの端部を内視鏡の導入口に当接することで処置具の内腔への進入度合いを制限することができる。
【0060】
また、上述した第2および第3の実施形態では、長軸方向に沿って内部に処置具3を保持するための貫通した孔状の貫通路22h,23hを有しているシャフト部材22,23を備えたストッパーS2,S3について説明した。しかしながら、シャフト部材は処置具を保持することができればよく、例えば、シャフト部材やストッパー本体の外周側から処置具を装着することができるように、シャフト部材および/またはストッパー本体の外周にストッパーの長軸方向に沿って連続した切れ目を設けるようにしてもよい。これにより、上記切れ目を通して処置具のチューブをシャフト部材の貫通路やストッパー本体の固定孔に装着することができる。
【0061】
また、上述した実施形態では、ストッパーS1を備えている内視鏡システムC1について説明した。しかしながら、内視鏡システムは、本開示のいずれのストッパーを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
ストッパーS1,S2,S3
ストッパー本体 11,12,13
シャフト部材 22,23
貫通路 22h,23h
処置具 3
内視鏡 5
内腔51
導入口 51a
先端開口 51b
内視鏡システム C1