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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187700
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20221213BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20221213BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20221213BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20221213BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20221213BHJP
   H02P 25/024 20160101ALI20221213BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20221213BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20221213BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20221213BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20221213BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
B60L7/14
H02P25/024
B60K6/48 ZHV
B60K6/26
B60W10/08 900
B60W20/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095832
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金石 純司
(72)【発明者】
【氏名】前川 耕太
(72)【発明者】
【氏名】大住 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】吉末 知弘
(72)【発明者】
【氏名】岡部 力也
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
5H505
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB00
3D202BB16
3D202DD24
3D202DD26
3D202DD45
3D202EE02
3D202FF07
3D202FF12
3D202FF13
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA02
5H125CB02
5H125EE01
5H125EE08
5H125EE09
5H125EE27
5H125EE42
5H125FF01
5H505AA16
5H505BB02
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE30
5H505EE41
5H505EE48
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL28
5H505LL33
5H505LL38
5H505LL41
5H505PP01
(57)【要約】
【課題】磁力の変更が可能な駆動モータを効果的に利用する。
【解決手段】磁力変更判定部21cは、駆動モータ3の運転状態に応じて、磁力可変磁石35の磁力を変更する磁化処理を行うか否かについての判定を行う。磁力変更判定部21cは、磁化処理を行わない場合に駆動モータ3で消費または発電される第1電力P1、磁化処理を行った場合に駆動モータ3で消費または発電される第2電力P2、および、磁化処理を行うことによって発生するエネルギーロスELを取得する。第1電力P1および第2電力P2を減算処理して得られる電力利得PGと、エネルギーロスELを換算処理して得られる電力損失PLとの間で大小関係を比較し、電力利得PGが電力損失PLよりも大きい場合に磁化処理を行うと判定し、電力利得PGが電力損失PL以下の場合に、磁化処理を行わないと判定する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力の変更が可能な磁力可変磁石でロータの磁極が構成されている駆動モータが備えられていて、電力を利用した走行が可能な電動車両の制御装置であって、
前記磁力可変磁石の磁力を変更する磁化処理を行う磁化処理部と、
前記駆動モータの運転状態に応じて前記磁化処理を行うか否かについての磁力変更判定を行う磁力変更判定部と、
を備え、
前記磁力変更判定部が、
前記磁化処理を行わない場合に前記駆動モータで消費または発電される第1電力、前記磁化処理を行った場合に前記駆動モータで消費または発電される第2電力、および、前記磁化処理を行うことによって発生するエネルギーロス、の各々を取得し、
前記第1電力および前記第2電力を減算処理して得られる電力利得と、前記エネルギーロスを換算処理して得られる電力損失と、の間で大小関係を比較し、
前記電力利得が前記電力損失よりも大きい場合に、前記磁化処理を行うと判定し、前記電力利得が前記電力損失以下の場合に、前記磁化処理を行わないと判定する、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記エネルギーロスが、前記磁力可変磁石の磁力を変更するために消費される第1エネルギーロスと、前記磁化処理時に前記駆動モータから出力されるトルク変動を低減するために発生する第2エネルギーロスと、を含む、制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置において、
前記磁力変更判定部が、前記電力利得と前記電力損失との大小関係を比較する時に、前記電力利得に所定の重み係数を乗算して前記電力損失と大小関係を比較する、制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置において、
前記電動車両は、更にエンジンを備えることによって燃料を利用した走行も可能に構成されていて、
前記電動車両が回生している時に前記磁力変更判定を行う場合は、前記電動車両が力行している時に前記磁力変更判定を行う場合よりも、大きい値の前記重み係数を用いる、制御装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の制御装置において、
前記電動車両は、前記駆動モータに入力される電力を供給するとともに、前記駆動モータで発電される電力を蓄電するバッテリを更に備え、
前記バッテリの電池残量が所定の閾値未満の低充電状態の時に前記磁力変更判定を行う場合は、前記バッテリの電池残量が前記閾値以上の高充電状態の時に前記磁力変更判定を行う場合よりも、大きい値の前記重み係数を用いる、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、電気自動車、ハイブリッド車など、電力を利用した走行が可能な電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、永久磁石同期型の駆動モータを搭載したハイブリッド車が開示されている。その駆動モータでは、ロータに設置する永久磁石に、磁力の大きさを大小に可変できる磁力可変マグネットが使用されている。
【0003】
その駆動モータの出力範囲は、4つの磁化領域に区画されていて、これら磁化領域の各々に、最適な磁力の値(磁力最適値)が設定されている。そして、駆動モータの出力が、これら磁化領域の各々の間を移行する時には、磁力可変マグネットの磁力が、移行先の磁力最適値に変更されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-027615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したハイブリッド車のように、駆動モータの出力に応じて磁力可変マグネットの磁力を変更すれば、モータ効率が向上するので、駆動モータのエネルギーロスを低減できる。また、駆動モータの出力も向上するので、電力を利用して走行できる距離も長くなる。
【0006】
しかし、磁力可変マグネットの磁力を変更するときには、駆動モータのコイルに、着磁用の大きな電流(いわゆるd軸電流)を印加する必要がある。従って、磁力可変マグネットの磁力を変更すると、電力を大きく消費する。磁力可変マグネットの磁力の変更により、新たにエネルギーロスが発生する。
【0007】
また、駆動モータに着磁用の大きな電流を印加すると、駆動用の電流(いわゆるq軸電流)と干渉し、駆動モータから出力されるトルクが変動する。そのトルク変動が駆動輪に伝わると、走行中の車両にトルクショックが発生する。それに対し、トルクが高くなるトルク変動については、駆動モータと駆動輪との間に設置されているクラッチをスリップさせれば、トルクショックを抑制できる。
【0008】
しかし、クラッチをスリップさせると、その分、駆動モータの出力が無駄になる。磁力可変マグネットの磁力の変更に伴って発生するトルクショックの抑制によっても、新たなエネルギーロスが発生する。
【0009】
それに対し、上述したハイブリッド車では、磁力が最適となるように予め4つに区画された磁化領域の各々の間を移行することで、磁力可変マグネットの磁力が変更される。従って、モータ効率については考慮されているが、このようなエネルギーロスについては、十分に考慮されていない。トルクショックについても考慮されていない。また、駆動モータは、回生時には発電機としても利用されるが、それについても十分に考慮されていない。従って、改善の余地がある。
【0010】
開示する技術では、磁力の変更が可能な駆動モータを効果的に利用することで、より効率よく走行できる電動車両を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する技術は、磁力の変更が可能な磁力可変磁石でロータの磁極が構成されている駆動モータが備えられていて、電力を利用した走行が可能な電動車両の制御装置に関する。
【0012】
前記制御装置は、前記磁力可変磁石の磁力を変更する磁化処理を行う磁化処理部と、前記駆動モータの運転状態に応じて前記磁化処理を行うか否かについての磁力変更判定を行う磁力変更判定部と、を備える。
【0013】
そして、前記磁力変更判定部が、前記磁化処理を行わない場合に前記駆動モータで消費または発電される第1電力、前記磁化処理を行った場合に前記駆動モータで消費または発電される第2電力、および、前記磁化処理を行うことによって発生するエネルギーロス、の各々を取得する。
【0014】
そうして、前記第1電力および前記第2電力を減算処理して得られる電力利得と、前記エネルギーロスを換算処理して得られる電力損失との間で大小関係を比較し、前記電力利得が前記電力損失よりも大きい場合に、前記磁化処理を行うと判定し、前記電力利得が前記電力損失以下の場合に、前記磁化処理を行わないと判定する。
【0015】
すなわち、この制御装置は、電気自動車、ハイブリッド車など、電力を利用した走行が可能な電動車両を制御対象としており、装備している駆動モータのロータの磁極が、磁力の変更が可能な磁力可変磁石で構成されている。
【0016】
そして、その制御装置には磁化処理部が備えられており、磁化処理部が磁化処理を行うことにより、磁力可変磁石の磁力が変更される。それにより、駆動モータはロータの磁力を変更できるので、モータ効率を向上できる。
【0017】
更にその制御装置には磁力変更判定部も備えられており、磁力変更判定部が磁力変更判定を行うことにより、駆動モータの運転状態に応じて磁化処理を行うか否かが判定される。例えば、磁力変更判定部は、駆動モータの運転状態が変化する時に、磁化処理を行う場合と行わない場合とで、駆動モータが力行時に消費または回生時に発電する第1電力および第2電力と、磁化処理を行うことによって発生するエネルギーロスとに基づいて、所定の電力利得と電力損失とを取得する。そして、これらの大小関係を比較して磁化処理を行うか行わないかを判定する。
【0018】
すなわち、磁力変更判定部は、駆動モータの運転状態に応じて、磁化処理を行う場合と行わない場合とで、いずれの場合がエネルギーの得失の観点からみて適切かを判定する。磁力可変磁石の磁力の変更に伴って発生するエネルギーの得失に関するプラス要素とマイナス要素とを考慮して、磁化処理を行うか行わないかを判定するので、エネルギーロスを抑制できる。磁力の変更が可能な駆動モータの性能を、効果的に利用することができるので、燃費の向上など、より効率よく走行できる電動車両を実現できる。
【0019】
前記制御装置はまた、前記エネルギーロスが、前記磁力可変磁石の磁力を変更するために消費される第1エネルギーロスと、前記磁化処理時に前記駆動モータから出力されるトルク変動を低減するために発生する第2エネルギーロスとを含む、としてもよい。
【0020】
上述したように、磁力可変マグネットの磁力を変更すると、電力を大きく消費する。この制御装置では、このエネルギーロスを第1エネルギーロスとして考慮する。更に、磁力可変マグネットの磁力の変更する時、トルクショックを与え得るトルク変動が、駆動モータから出力される。そのトルク変動を低減するためにエネルギーロスが発生する。この制御装置では、このエネルギーロスを第2エネルギーロスとして考慮する。
【0021】
すなわち、この制御装置によれば、磁力可変マグネットの磁力変更に伴って発生する主なエネルギーロスが考慮されるので、磁力変更判定を精度高く行える。
【0022】
前記制御装置はまた、前記磁力変更判定部が、前記電力利得と前記電力損失との大小関係を比較する時に、前記電力利得に所定の重み係数を乗算して前記電力損失と大小関係を比較する、としてもよい。
【0023】
エネルギーの得失の判定に影響を与える様々な外的な要素が存在する。例えば、電動車両によっては、スポーツモード、エコモードなど、運転モードの切り替えができる車種がある。このような車種の場合、その運転モードは、エネルギーの得失に影響を与える。エコモードは、スポーツモードよりもエネルギーの得失に対する重要度は高くなる。
【0024】
従って、電力利得と電力損失との大小関係を比較する時に、電力利得に所定の重み係数を乗算して電力損失と大小関係を比較することで、このような外的な要素も考慮して磁力変更判定が行える。電動車両の利便性が向上する。
【0025】
前記電動車両が、更にエンジンを備えることによって燃料を利用した走行も可能に構成されている場合、つまりハイブリッド車である場合には、前記電動車両が回生している時に前記磁力変更判定を行う場合は、前記電動車両が力行している時に前記磁力変更判定を行う場合よりも、大きい値の前記重み係数を用いる、としてもよい。
【0026】
電動車両がハイブリッド車である場合、力行している時よりも回生している時の方が、磁力可変磁石の磁力変更によって得られるモータ効率の向上効果が大きいことが判っている。そこで、この制御装置では、回生時は力行時よりも大きい値の重み係数を用いることにより、モータ効率が更に向上できるようにしている。それにより、エネルギーの損失をよりいっそう抑制できるので、電動車両の燃費を効果的に抑制できる。
【0027】
前記制御装置はまた、前記電動車両は、前記駆動モータに入力される電力を供給するとともに、前記駆動モータで発電される電力を蓄電するバッテリを更に備え、前記バッテリの電池残量が所定の閾値未満の低充電状態の時に前記磁力変更判定を行う場合は、前記バッテリの電池残量が前記閾値以上の高充電状態の時に前記磁力変更判定を行う場合よりも、大きい値の前記重み係数を用いる、としてもよい。
【0028】
この制御装置の場合、駆動モータは、バッテリから入力される電力で駆動する。そのため、バッテリの電池残量が少なくなると、駆動モータの運転は制限を受ける。従って、バッテリ電池残量が低い時(低充電状態)は、バッテリの電池残量が高い時(高充電状態)よりも、バッテリの電力は貴重である。そこで、この制御装置では、低充電状態の時は高充電状態の時よりも大きい値の重み係数を用いることにより、バッテリの電力消費を抑制できるようにしている。それにより、バッテリと共に駆動モータを、より効果的に利用することができる。
【発明の効果】
【0029】
開示する技術によれば、磁力の変更が可能な駆動モータをより効果的に利用することができる。その結果、電動車両は、より効率よく走行できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】開示する技術を適用した自動車の主な構成を示す概略図である。
図2】駆動モータの構成を示す概略断面図である。
図3】MCUおよびこれに関連する主な入出力装置を示すブロック図である。
図4】TCUおよびこれに関連する主な入出力装置を示すブロック図である。
図5】駆動モータの運転領域を例示する図である。
図6】トルクショックの発生とその抑制を説明するための図である。
図7】磁力変更判定部の主な構成を示すブロック図である。
図8】磁力変更判定の主な処理の流れを示すフローチャートである。
図9】磁力変更の有無に関して、力行時および回生時の各々で得られたモータ効率(平均値)を比較したグラフである。
図10】応用例1の制御装置において、磁力変更判定の主な処理の流れを示すフローチャートである。
図11】応用例2の制御装置において、磁力変更判定の主な処理の流れを示すフローチャートである。
図12】応用例3の制御装置において、磁力変更判定の主な処理の流れを示すフローチャートである。
図13】第1~第4の重み係数の大小関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、開示する技術について説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0032】
<電動車両>
図1に、開示する技術を適用した自動車1(電動車両の一例)を示す。この自動車1は、燃料を利用した走行、電力を利用した走行、および、これらを組み合わせた走行が可能なハイブリッド車である。自動車1の駆動源には、エンジン2および駆動モータ3が搭載されている。これらが協働して、4つの車輪4F,4F,4R,4Rのうち、左右対称状に位置する2輪(駆動輪4R)を駆動する。それにより、自動車1は走行する。なお、自動車1は、駆動モータ3のみを搭載した電気自動車であってもよい。自動車1はまた、4輪駆動であってもよい。
【0033】
この自動車1の場合、エンジン2は車体の前側に配置されており、駆動輪4Rは車体の後側に配置されている。すなわち、この自動車1は、いわゆるFR車である。更にこの自動車1の場合、駆動源としては、駆動モータ3よりもエンジン2が主体となっており、駆動モータ3は、エンジン2の駆動をアシストする形で利用される(いわゆるマイルドハイブリット)。駆動モータ3はまた、駆動源としてだけでなく、自動車1が回生する時には発電機としても利用される。
【0034】
自動車1には、エンジン2、駆動モータ3の他、駆動系の装置として、第1の中継クラッチ5、インバータ6、第2の中継クラッチ7、変速機8、デファレンシャルギア9、バッテリ10などが備えられている。自動車1にはまた、制御系の装置として、エンジンコントロールユニット(ECU)20、モータコントロールユニット(MCU)21、変速機コントロールユニット(TCU)22、ブレーキコントロールユニット(BCU)23、総合コントロールユニット(GCU)24などが備えられている。
【0035】
エンジン回転センサ50、モータ回転センサ51、電流センサ52、磁力センサ53、アクセルセンサ54、変速機センサ55なども、制御系の装置に付随して自動車1に設置されている。エンジン回転センサ50は、エンジン2に取り付けられており、エンジン2の回転数を検出してECU20に出力する。
【0036】
モータ回転センサ51は、駆動モータ3に取り付けられており、駆動モータ3の回転数や回転位置を検出してMCU21に出力する。電流センサ52は接続ケーブル36aに取り付けられており、各コイル36に通電される電流値を検出してMCU21に出力する。磁力センサ53は、駆動モータ3に取り付けられており、磁力可変磁石35の磁力を検出してMCU21に出力する。
【0037】
アクセルセンサ54は、運転者が自動車1を駆動する時に踏み込むアクセルのペダル(アクセルペダル15)に取り付けられており、自動車1の駆動に要求される出力に相当するアクセル開度を検出してECU20に出力する。変速機センサ55は、各変速機クラッチ83の回転数および締結トルク、出力軸81の回転数などを検出してTCU22に出力する。
【0038】
(駆動系の装置)
エンジン2は、例えばガソリンを燃料に使用して燃焼を行う内燃機関である。エンジン2はまた、吸気、圧縮、膨張、排気の各サイクルを繰り返すことで回転動力を発生させる、いわゆる4サイクルエンジンである。エンジン2には、ディーゼルエンジン等、様々な種類や形態があるが、開示する技術では、特にエンジンの種類や形態は限定しない。
【0039】
この自動車1では、エンジン2は、回転動力を出力する出力軸を、車体の前後方向に向けた状態で、車幅方向の略中央部に配置されている。自動車1には、吸気システム、排気システム、燃量供給システムなど、エンジン2に付随した様々な装置や機構が設置されているが、これらの図示および説明は省略する。
【0040】
駆動モータ3は、第1の中継クラッチ5を介してエンジン2の後方に直列に配置されている。駆動モータ3は、三相の交流によって駆動する永久磁石型の同期モータである。図2に簡略化して示すように、駆動モータ3は、大略、モータケース31、シャフト32、ロータ33、ステータ34などで構成されている。
【0041】
モータケース31は、その内部に、前端面および後端面が封止された円筒状のスペースを有する容器からなり、自動車1の車体に固定されている。ロータ33およびステータ34は、モータケース31に収容されている。シャフト32は、その前端部および後端部の各々をモータケース31から突出させた状態で、モータケース31に回転自在に軸支されている。
【0042】
シャフト32の前端部と、エンジン2の出力軸との間に介在するように、第1の中継クラッチ5が設置されている。第1の中継クラッチ5は、出力軸とシャフト32とが連結された状態(締結状態)と、出力軸とシャフト32とが分離した状態(非締結状態)とに切り替え可能に構成されている。
【0043】
シャフト32の後端部と、変速機8の入力軸との間に介在するように、第2の中継クラッチ7が設置されている。第2の中継クラッチ7は、シャフト32と変速機8の入力軸とが連結された状態(締結状態)と、シャフト32と変速機8の入力軸とが分離した状態(非締結状態)とに切り替え可能に構成されている。
【0044】
ロータ33は、中心に軸孔を有する複数の金属板を積層して構成された円柱状の部材からなる。ロータ33の軸孔にシャフト32の中間部分を固定することで、ロータ33はシャフト32と一体化されている。
【0045】
ロータ33の外周部分には、全周にわたってマグネット35が設置されている。マグネット35は、周方向に異なる磁極、すなわちS極とN極とが等間隔で交互に並ぶように構成されている。マグネット35は、複数の磁極を有する1つの円筒状の磁石で構成してもよいし、各磁極を構成する複数の弧状の磁石で構成してもよい。
【0046】
この駆動モータ3では、更に、マグネット35が、磁力の大きさを大小に可変できるように構成されている(磁力可変磁石35)。通常、この種の駆動モータ3には、保磁力(抗磁力)が大きく、磁力が長期にわたって保持できる磁石(永久磁石)が使用される。この駆動モータ3では、磁力を比較的容易に変更できるように、保持力の小さい永久磁石が磁力可変磁石35として使用される。磁力可変磁石35の種類や素材は、仕様に応じて選択可能であり、特に限定されない。
【0047】
ロータ33の周囲には、僅かな隙間(ギャップ)を隔てて円筒状のステータ34が設置されている(インナーロータ型)。ステータ34は、複数の金属板を積層して構成されたステータコア34aと、そのステータコア34aに電線を巻回して構成された複数のコイル36とを有している。
【0048】
ステータコア34aには、内側に放射状に張り出す複数のティース34bが設けられていて、これらティース34bに電線を所定の順序で巻き掛けることで複数のコイル36が形成されている。これらコイル36は、U相、V相、およびW相からなる三相のコイル群を構成している。これらコイル36に通電するため、モータケース31の外側に、各相のコイル群の各々から接続ケーブル36aが導出されている。
【0049】
これら接続ケーブル36aは、インバータ6を介して、駆動電源として車載されているバッテリ10と接続されている。この自動車1の場合、バッテリ10は、定格電圧が50V以下、具体的には48Vの直流バッテリが用いられている。
【0050】
バッテリ10は、自動車1が駆動モータ3の駆動を利用して走行する時(力行時)には、インバータ6に直流電力を供給する。インバータ6は、その直流電力を3相の交流に変換して駆動モータ3に通電する。それにより、ロータ33が回転駆動され、シャフト32および第2の中継クラッチ7を介して、変速機8に駆動モータ3のパワー(回転動力)が出力される。
【0051】
バッテリ10はまた、自動車1が駆動モータ3を発電機として利用する時(回生時)には、駆動モータ3で発電される電力を蓄電する。なお、「力行」は、駆動モータ3の駆動を利用しないで自動車1が走行する時も含み得るが、上述したように、この実施形態での力行は、エンジン2の駆動のみで自動車1が走行する時は含まないものとする。
【0052】
この自動車1の場合、変速機8は、多段式自動変速機(いわゆるAT)である。図1に示すように、変速機8はその一方の端部に入力軸80を有し、その入力軸80が第2の中継クラッチ7と連結されている。変速機8の他方の端部には、入力軸80から独立した状態で回転する出力軸81を有している。これら入力軸80と出力軸81との間には、複数の遊星歯車機構82および複数の変速機クラッチ83(ブレーキを含む)などからなる変速機構が組み込まれている。
【0053】
これら変速機構を切り替えることにより、前進または後進の切り替えや、変速機8の入力軸80と出力軸81との間で異なる回転数に変更、つまり変速比の切り替えができるように構成されている。
【0054】
例えば、各変速機クラッチ83の入力側83aは、入力軸80と連結可能に構成されている。各変速機クラッチ83の出力側83bは、対応した遊星歯車機構82を介して出力軸81と連結されている。そして、特定の変速機クラッチ83が選択されてその変速機クラッチ83が締結されると、その変速機クラッチ83およびそれに対応した遊星歯車機構82を介して、変速機の入力軸80と出力軸81とが連結される。それにより、変速比等が切り替わる。
【0055】
出力軸81は、車体の前後方向に延びて出力軸81と同軸に配置されているプロペラシャフト11を介してデファレンシャルギア9に連結されている。デファレンシャルギア9には、車幅方向に延びて、左右の駆動輪4R,4Rに連結された一対の駆動シャフト13,13が連結されている。プロペラシャフト11を通じて出力される回転動力は、デファレンシャルギア9で振り分けられた後、これら一対の駆動シャフト13,13を通じて各駆動輪4Rに伝達される。各車輪4F,4F,4R,4Rには、その回転を制動するために、ブレーキ14が取り付けられている。
【0056】
(制御系の装置)
自動車1には、運転者の操作に応じて、その走行をコントロールするために、上述した、ECU20、MCU21、TCU22、BCU23、およびGCU24の各ユニットが設置されている。これらユニットの各々は、プロセッサ、メモリ、インターフェースなどのハードウエアと、データベースや制御プログラムなどのソフトウエアとで構成されている。
【0057】
ECU20は、エンジン2の作動を主に制御するユニットである。MCU21は、駆動モータ3の作動を主に制御するユニットである。TCU22は、変速機8の作動を主に制御するユニットである。BCU23、ブレーキ14の作動を主に制御するユニットである。GCU24は、これらECU20、MCU21、TCU22、BCU23と電気的に接続されていて、これらを総合的に制御する上位ユニットである。
【0058】
開示する技術における「制御装置」は、これらユニットによって構成されている。特に、駆動モータ3の作動を主に制御するMCU21、および、変速機8の作動を主に制御するTCU22が、その制御装置の主体を構成している。これらユニットが互いに協働することによって、後述する様々な処理が実行される。
【0059】
図3に、MCU21およびこれに関連する主な入出力装置を示す。MCU21には、機能的な構成として、モータ出力制御部21a、磁化処理部21b、および、磁力変更判定部21cが、そのハードウエアとソフトウエアとによって設けられている。モータ出力制御部21aは、駆動モータ3の駆動を制御する機能を有し、コイル36に流れる駆動電流を制御することにより、駆動モータ3に要求されたパワーを出力させる。
【0060】
磁化処理部21bは、駆動モータ3の力率を高める機能を有し、コイル36に流れる磁化電流を制御することにより、磁力可変磁石35の磁力を変更する処理(磁化処理)を行う。磁化電流は、磁力可変磁石35の保磁力よりも大きな電磁力を発生させるパルス状の電流である。磁化処理により、ロータ33とステータ34との間の磁界が変化する。それにより、磁力可変磁石35の磁力の大きさが変更される。
【0061】
磁力変更判定部21cは、エネルギー得失の観点から磁力変更の実行およびそのタイミングを判定する機能を有し、駆動モータの運転状態に応じて磁化処理を行うか否かについての判定(磁力変更判定)を行う。例えば、磁力の変更に伴うエネルギーの収支において損失が発生するような場合には、磁化処理は行わない。従って、駆動モータ3を駆動するシステム全体としての効率を向上できる(磁力変更判定部21c、磁力変更判定の詳細は後述)。
【0062】
図4に、TCU22およびこれに関連する主な入出力装置を示す。TCU22には、機能的な構成として、中継クラッチ制御部22aと変速機クラッチ制御部22bとが、そのハードウエアおよびソフトウエアによって設けられている。中継クラッチ制御部22aは、第1の中継クラッチ5および第2の中継クラッチ7の各々の作動を制御する。変速機クラッチ制御部22bは、変速機クラッチ83の各々の作動を制御する。
【0063】
例えば、自動車1がエンジン2の駆動力で走行する時には、アクセルセンサ54およびエンジン回転センサ50の検出値に基づいて、ECU20がエンジン2の運転を制御する。そして、TCU22は、第1の中継クラッチ5および第2の中継クラッチ7が締結状態になるように制御する。
【0064】
そして、駆動モータ3で発電する回生時には、TCU22は、第1の中継クラッチ5は非締結状態ないし部分締結状態となるように制御し、第2の中継クラッチ7は締結状態となるように制御する。それにより、駆動モータ3で発電される電力は、バッテリ10に蓄電される。
【0065】
<駆動モータの運転>
MCU21は、必要に応じてエンジン2の出力をアシストする状態で、駆動モータ3が出力するパワーを使用して自動車1が走行するように制御する。
【0066】
具体的には、アクセルセンサ54、エンジン回転センサ50等の検出値に基づいて、ECU20が、エンジン2で出力するトルクを設定する。それに伴って、予め設定されたエンジン2と駆動モータ3との間での出力の分配比率に従って、GCU24が、駆動モータ3に対するトルクの要求量(要求トルク)を設定する。MCU21は、その要求トルクが出力されるように駆動モータ3を制御する(いわゆるトルク制御)。それにより、駆動モータ3は、自動車1の走行中に、所定の運転領域において、エンジン2をアシストしながら運転する。
【0067】
(駆動モータの運転領域)
図5に、駆動モータ3の運転領域を例示する。駆動モータ3の運転領域は、駆動モータ3の運転状態量である回転数とトルク(負荷)とによって画定されている。そして、この駆動モータ3では、この運転領域が、磁力可変磁石35の磁力変更の基準となる第1~第4の4つの磁化領域Rm1~Rm4に区画されている。これら磁化領域Rm1~Rm4の各々には、力率が向上するように、異なる値の所定の磁力値(磁力基準値)が設定されている。
【0068】
MCU21には、このような運転領域を画定するマップやテーブルなどのデータが予め設定されている。モータ出力制御部21aは、そのデータを参照することにより、この運転領域の範囲内で駆動モータ3を制御する。それにより、自動車1は走行する(いわゆる力行)。また、自動車1の回生時には、この運転領域の範囲内で駆動モータ3は発電する。
【0069】
自動車1の走行中、磁力変更判定部21cは、駆動モータ3の運転状態に応じて、エネルギー得失の観点から、磁力変更を行うか否かについての判定を行う。そして、磁力変更判定部21cが磁力変更を行わないと判定した場合は、磁化処理部21bは、そのタイミングで磁化処理を行わない。駆動モータ3は、通常のトルク制御に従って運転状態を変化させる。
【0070】
一方、磁力変更判定部21cが磁力変更を行うと判定した場合には、トルク制御が中断される。そして、磁化処理部21bは、磁化処理を行う。
【0071】
(磁化処理とそれに伴うクラッチのスリップ)
自動車1の走行中に磁化処理を行うと、トルク変動が生じて、走行している自動車1にトルクショックが発生し得る。トルクショックが発生すると、ドライバーに違和感を与える懸念がある。
【0072】
図6の上図に、磁化処理時に駆動モータ3が出力するトルクTmの経時変化を例示する。この例示では、時間t1からt1’の期間に磁化処理が実行されている。t1’からt2の期間は、磁力の変更を確認するとともに、駆動用の電流値(q軸電流の値)が、変更後の磁力に対応するように学習させる制御(学習制御)を実行し、モータトルクTmを要求トルクに一致させる期間である。学習制御は、増磁制御に伴う制御であり、増磁制御に含まれる。Taは要求トルクである。自動車1の走行中、駆動モータ3はトルク制御されているため、磁化処理の実行前のモータトルクTmは、要求トルクTaと一致している。
【0073】
Ttは、変速機8におけるクラッチ締結トルクである。クラッチ締結トルクTtは、変速機8の入力軸80と出力軸81とを連結している変速機クラッチ83の締結トルクであり、その変速機クラッチ83がその出力側83bに伝達可能なトルクに相当する。モータトルクTmを確実に駆動輪に伝達させるため、通常、クラッチ締結トルクTtは、要求トルクTaより高い値となるように制御(第1クラッチ制御)されている。
【0074】
磁化処理では、上述したように、コイル36にパルス状の大きい着磁用の電流(いわゆるd軸電流)が通電される。それにより、駆動モータ3に、駆動電圧を大きく上回る高電圧が印加される。そのため、図6の上図に示すように、磁化処理時には、要求トルクTaを大きく上回るピーク状の高いモータトルクTmが、駆動モータ3から出力される。その結果、走行している自動車1にトルクショックが発生し、ドライバーに違和感を与える懸念がある。
【0075】
そこで、このようなトルク変動を抑制するため、この自動車1では、MCU21がTCU22と協働して、磁化処理時に、変速機クラッチ83をスリップさせる。変速機クラッチ制御部22bは、GCU24から磁化処理の実行に関する情報を取得すると、それに応じて、使用している変速機クラッチ83の作動を制御してスリップさせる。
【0076】
具体的には、変速機クラッチ制御部22bは、図6の下図に示すように、磁化処理の実行前(時間t0)に、第1クラッチ制御から第2クラッチ制御に変更し、磁化処理が終了するまで、クラッチ締結トルクTtが要求トルクTaと一致するように制御する。それにより、磁化処理の期間中、クラッチ締結トルクTtを低下させ、変速機クラッチ83をスリップさせる。その結果、駆動モータ3から高いモータトルクTmが出力されても、低減された状態で変速機クラッチ83に伝達される。従って、トルクショックを抑制できる。
【0077】
<駆動モータの磁力変更判定>
駆動モータ3の運転中、磁化領域Rm1~Rm4の各々の間を移行する時に、磁力可変磁石35の磁力を移行先の磁力基準値に変更すれば、駆動モータ3の力率を高めることができる。従って、モータ効率が向上する。モータ効率が向上すれば、駆動モータ3のエネルギーロスを低減できる。また、駆動モータ3の出力も向上するので、自動車1が電力を利用して走行できる距離も長くなる。
【0078】
一方、磁力可変磁石35の磁力を変更するときには、コイル36に大きな電流を通電して、着磁用の高電圧を印加する必要がある。従って、磁力可変磁石35の磁力を変更する場合は、電力を大きく消費する。従って、通常の駆動モータ3の運転であれば発生しない、新たなエネルギーロスが発生する。
【0079】
また、上述したように、トルク変動を抑制するために第2クラッチ制御を行うと、変速機クラッチ83のスリップによって駆動モータ3の回転動力が消費されるので、その分、駆動モータ3の出力が無駄になる。変速機クラッチ83のスリップによっても、新たなエネルギーロスが発生する。
【0080】
すなわち、磁力可変磁石35の磁力変更には、エネルギー得失の観点からみると、プラスになる要素と、マイナスになる要素とが存在する。従って、これら要素を踏まえて、磁力変更の実行およびそのタイミングを決めないと、磁力変更を行っても、最終的にエネルギーの損失が発生するおそれがある。
【0081】
例えば、駆動モータ3が、図5に示す運転点P2で運転(力行)している状態を想定する。その運転点P2から運転点P1に、駆動モータ3の運転状態が変化したとする。この場合、磁化領域Rm2から磁化領域Rm1に移行するので、駆動モータ3の力率向上の観点に基づけば、増磁する方向に磁化処理を行う必要がある。
【0082】
増磁する方向に磁化処理を行うと、高いモータトルクTmに起因してトルク変動が発生する。そのトルク変動を抑制するために、変速機クラッチ83のスリップさせることで、エネルギーロスが発生する。
【0083】
減磁する方向に磁化処理する場合も同様である。運転点P2から運転点P3に、駆動モータ3の運転状態が変化した場合、磁化領域Rm2から磁化領域Rm3に移行するので、減磁する方向に磁化処理を行う必要がある。減磁する方向に磁化処理を行っても、低いモータトルクTmに起因してトルク変動が発生する。
【0084】
そのトルク変動を抑制するために、新たなエネルギーロスが発生する。領域を移行する時のトルクが高いほど、トルク変動は大きくなる。そして、トルク変動が大きくなるほど、それを抑制するために要するエネルギーロスも大きくなる。
【0085】
このように駆動モータ3の運転状態が変化して、異なる磁化領域Rmに移行する場合、その運転状態の変化に応じて、磁力変更の実行およびそのタイミングを決めないと、磁力変更を行っても、最終的にはエネルギーの損失が発生するおそれがある。
【0086】
そこで、この制御装置では、磁化処理を行う場合に、その磁化処理によるエネルギーの収支において損失が発生しないように、TCU22に、磁力変更判定部21cが設けられている。
【0087】
(磁力変更判定部21c)
図7に、磁力変更判定部21cの主な構成を表したブロック図を示す。磁力変更判定部21cには、磁化処理に伴って発生するエネルギーの得失に関連した4つのマップが設けられている(第1~第4のマップ)。なお、これらのマップは、同等の機能を有するモデル、テーブル、ロジック、演算式などであってもよい。
【0088】
第1マップは、駆動モータ3の運転状態量(回転数、トルクなど)を入力することにより、その運転状態量で運転する駆動モータ3で磁化処理を行わない場合に駆動モータ3で消費または発電される電力(第1電力)、の出力を可能にする機能を有している。第2マップは、駆動モータ3の運転状態量を入力することにより、その運転状態量で運転する駆動モータ3で磁化処理を行った場合に駆動モータ3で消費または発電される電力(第2電力)、の出力を可能にする機能を有している。
【0089】
第3マップは、駆動モータ3の運転状態量と、所定の外部因子とを入力することにより、第1電力および第2電力の収支に対する重み係数α、の出力を可能にする機能を有している。外部因子は、駆動モータ3の運転状態量とは異なる磁力変更判定の要素であり、エネルギーの得失の判定に影響を与える要素である。
【0090】
そのような外部因子の一例として、自動車1の運転モードが挙げられる。例えば、燃費よりも走行性を優先するスポーツモード、走行性よりも燃費を優先するエコモードなど、自動車1の運転性能を切り替えることができる運転モードが自動車1に装備されている場合がある。自動車1がそのような運転モードを装備している場合、その運転モードは、エネルギーの得失の判定に影響を与える。エコモードは、スポーツモードよりも、エネルギーの得失に対する重要度は高くなる。
【0091】
また、別の外部因子として、自動車1の運転状態(力行または回生)、バッテリの充電状態などが挙げられる。これらについては、応用例として後述する。
【0092】
第4マップは、駆動モータ3の運転状態量を入力することにより、その運転状態量で運転する駆動モータ3で磁化処理を行うことによって発生するエネルギーロス、の出力を可能にする機能を有している。
【0093】
そして、磁力変更判定部21cは、これら第1から第4のマップに、駆動モータ3の運転状態量および外部因子が入力されることによって出力される、エネルギーの利得とエネルギーの損失とから、磁化処理によるエネルギーの収支を算出し、それに基づいて磁力変更判定を行う。
【0094】
図8に、磁力変更判定部21cが行う具体的な磁力変更判定の処理の流れを示す。磁力変更判定部21cは、駆動モータ3の運転状態量(回転数、トルクなど)に基づいて、磁力変更判定の対象となる運転点を決定する(ステップS1)。運転点が決定すると、磁力変更判定部21cは、その運転点において磁化処理行った場合に発生するエネルギーの利得(電力利得)に関する算出処理C1、および、エネルギーの損失(電力損失)に関する算出処理C2の各々を並行して行う。なお、これら算出処理C1,C2を並行して行うことは、処理時間の短縮に有効であるが、必須ではない。
【0095】
エネルギーの利得に関する算出処理C1において、磁力変更判定部21cは、第1マップおよび第2マップを利用して、磁化処理を行わない場合におけるモータ電力(第1電力P1)、および、磁化処理を行う場合におけるモータ電力(第2電力P2)を算出する(ステップS2、S3)。これら第1電力P1および第2電力P2の各々は、磁力変更判定の対象となる運転点において駆動モータ3を運転した場合に駆動モータ3で消費または発電される電力である。
【0096】
駆動モータ3で消費される電力は、力行時に、駆動モータ3に入力されて回転動力に変換される電力である。駆動モータ3で発電される電力は、回生時に、駆動モータ3に入力される回転動力を電気に変換することによって得られる電力である。この算出では、駆動モータ3で消費される電力は正の値として扱い(P1,P2>0)、駆動モータ3で発電される電力は負の値として扱う(P1,P2<0)。
【0097】
磁力変更判定部21cは、第1電力P1および第2電力P2を算出すると、これら第1電力および第2電力を減算処理して、電力利得PGを算出する(ステップS4)。具体的には、第1電力から第2電力を減算して、電力利得PGを算出する。
【0098】
一方、エネルギーの損失に関する算出処理C2において、磁力変更判定部21cは、第4マップを利用して、磁力可変磁石35の磁力を変更するために消費されるエネルギーロス(第1エネルギーロス)、および、磁化処理時に駆動モータ3から出力される高いトルクに起因したトルク変動を低減するために発生するエネルギーロス(第2エネルギーロス)を算出する(ステップS5、S6)。
【0099】
第1エネルギーロスは、磁化処理時に出力される電気エネルギーEc、つまり磁化電流の通電に必要になるエネルギーである。第2エネルギーロスは、上述した変速機クラッチ83のスリップによって失われるエネルギーEtである。この算出では、これらエネルギーEc,Etは正の値として扱う(Ec,Et>0)。
【0100】
磁力変更判定部21cは、これら第1エネルギーロスおよび第2エネルギーロスを加算処理して、エネルギーロスELを算出する(ステップS7)。磁力変更判定部21cは、このエネルギーロスELを、電力利得PGと比較可能な電力相当値に換算処理することにより、電力損失PLを取得する(ステップS8)。
【0101】
そして、磁力変更判定部21cは、得られた電力利得PGと電力損失PLとの間で大小関係を比較する。具体的には、磁力変更判定部21cは、電力利得PGから電力損失PLを減算処理して電力の収支バランス値PBを取得する(ステップS9)。そして、この収支バランス値PBが0よりも大きいか否かを判定する(ステップS10)。収支バランス値PBを取得するとき、磁力変更判定部21cは、必要に応じて第3マップを利用することにより、電力利得PGに、所定の重み係数αを乗算する処理(重み付け処理)を行う。
【0102】
通常、エネルギーの得失に関して重要度に差がない場合、重み係数αは1とされる。一方、上述したように、自動車1に運転モードが装備されている場合など、エネルギーの得失に関して重要度に差が有る場合、その内容に応じた重み係数αが適宜選択されて重み付け処理に用いられる。
【0103】
電力利得PGと電力損失PLとの間で大小関係を比較した結果、電力利得PGが電力損失PLよりも大きい場合(収支バランス値PB>0)には、磁力変更判定部21cは磁化処理を行うと判定する(ステップS11)。一方、電力利得PGが電力損失PL以下の場合(収支バランス値PB≦0)には、磁力変更判定部21cは磁化処理を行わないと判定する(ステップS12)。
【0104】
このように、この自動車1の制御装置では、駆動モータ3の運転中、予め設定された磁化領域Rm1~Rm4の各々の間を移行する時に、画一的に磁化処理を行うのではなく、磁化処理に伴って発生するエネルギーの得失も考慮して、磁化処理の実行およびそのタイミングを決める。それにより、エネルギーロスの発生を抑制できるので、駆動モータ3をより効果的に利用することができる。その結果、自動車1は、より効率よく走行できるようになる。
【0105】
<応用例1>
応用例1の制御装置では、自動車1の力行時(駆動モータ3が電力を消費して駆動している状態)および回生時(駆動モータ3が発電している状態)の各々で、磁力変更判定の判断基準を変更する。応用例1は、電力を消費する場合と発電する場合とでは、駆動モータ3の運転状態が同じでも、エネルギーの得失は異なるという知見に基づく。
【0106】
図9に、磁力変更の有無に関して、自動車1の力行時および回生時の各々で得られたモータ効率(平均値)を比較したグラフを簡略化して示す。力行時および回生時のいずれにおいても、磁力変更が有る場合の方が、磁力変更が無い場合よりも、モータ効率の向上効果が認められる。しかし、そのモータ効率の向上効果ΔMEは、力行時よりも回生時の方が大きい。
【0107】
力行は、駆動モータ3がエンジン2と協働して動力を出力している運転状態であり、駆動モータ3の運転点の自由度は比較的高い。一方、回生は、自動車1の制動時に駆動モータ3がブレーキと協働して減速している運転状態であり、駆動モータ3の運転点の自由度は比較的低い。そのため、回生時は、力行時に比べてモータ効率は悪くなる傾向がある。
【0108】
それに対し、磁力変更を行うと、モータ効率の高い領域を拡張する効果が得られる。その効果により、モータ効率の低い回生時の方が、モータ効率の高い力行時よりも、磁力変更によって受ける影響が大きいことから、モータ効率の向上効果が大きくなる。そこで、この応用例1の磁力変更判定部21cでは、回生時に磁力変更判定を行う場合は、力行時に磁力変更判定を行う場合よりも、大きい値の重み係数αを用いるように構成されている。
【0109】
図10に、応用例1の磁力変更判定部21cが行う具体的な磁力変更判定の処理の流れを示す。基本的な処理の流れは、上述した実施形態と同じである(図8参照)。同じ内容の処理には、同じ符号を用い、その説明は省略または簡略化する。
【0110】
磁力変更判定部21cは、磁力変更判定の対象となる運転点を決定すると(ステップS1)、その運転点における電力利得PGに関する算出処理C1および電力損失PLに関する算出処理C2の各々と共に、自動車1の運転状態が力行であるか回生であるかの判定処理も並行して行う(ステップS31)。なお、これら算出処理C1,C2および判定処理を並行して行うことは、処理時間の短縮に有効であるが、必須ではない。
【0111】
磁力変更判定部21cは、自動車1が力行していると判定すると、重み係数αとして、所定の重み係数αAを採用する(ステップS32)。一方、自動車1が回生していると判定すると、磁力変更判定部21cは、重み係数αとして、所定の重み係数αBを採用する(ステップS33)。これら重み係数αA,αBは、いずれも第3マップに基づいて設定される。
【0112】
上述したように、磁力可変磁石35の磁力変更によって得られるモータ効率の向上効果ΔMEは、力行時よりも回生時の方が大きい。それにより、回生用の重み係数αBは、通常、1より大きく、力行用の重み係数αAよりも大きい値となるように設定されている(αB>1,αB>αA)。このようにすることで、モータ効率の更なる向上効果が期待でき、エネルギーの損失を抑制できる。自動車1の燃費を効果的に抑制できる。
【0113】
磁力変更判定部21cは、このような判定処理に基づいて設定される重み係数αを用いて電力利得PGの重み付け処理を行った後、その電力利得PGから電力損失PLを減算処理して電力の収支バランス値を取得する(ステップS9)。そして、この収支バランス値が0よりも大きいか否かを判定する(ステップS10)。そうして、電力利得PGが電力損失PLよりも大きい場合(収支バランス値PB>0)には、磁力変更判定部21cは磁化処理を行うと判定する(ステップS11)。一方、電力利得PGが電力損失PL以下の場合(収支バランス値PB≦0)には、磁力変更判定部21cは磁化処理を行わないと判定する(ステップS12)。
【0114】
<応用例2>
応用例2の制御装置では、バッテリ10の充電状態(SOC:State Of Charge)に応じて、磁力変更判定の判断基準を変更する。なお、SOCは、電池残量を表す指標である。SOCは、満充電の状態を100%とする百分率の値である。
【0115】
駆動モータ3は、バッテリ10から入力される電力で駆動する。そのため、バッテリ10の電池残量が少なくなると、駆動モータ3の運転は制限を受ける。また、短時間でバッテリ10を充電するのは困難であり、バッテリ10を充電できる機会も限られる。例えば、電気自動車であれば、走行中にバッテリ10を充電できるのは、回生時のみである。ハイブリッド車であれば、エンジンの動力を利用して回生時以外にもバッテリ10を充電できるが、燃費が悪化する。
【0116】
従って、バッテリ10のSOCが低い時(低充電状態)は、バッテリ10のSOCが高い時(高充電状態)よりも、バッテリ10の電力は貴重である。そこで、この応用例2の磁力変更判定部21cでは、低充電状態の時に磁力変更判定を行う場合は、高充電状態の時に磁力変更判定を行う場合よりも、大きい値の重み係数αを用いるように構成されている。
【0117】
図11に、応用例2の磁力変更判定部21cが行う具体的な磁力変更判定の処理の流れを示す。基本的な処理の流れは、上述した実施形態と同じである(図8参照)。同じ内容の処理には、同じ符号を用い、その説明は省略または簡略化する。
【0118】
磁力変更判定部21cは、磁力変更判定の対象となる運転点を決定すると(ステップS1)、その運転点における電力利得PGに関する算出処理C1および電力損失PLに関する算出処理C2の各々と共に、バッテリ10のSOCが所定の閾値X(%)以上か否かの判定処理も並行して行う(ステップS41)。閾値Xは、バッテリ10の電池残量に関して重み付けの判断基準となる値であり、磁力変更判定部21cに設定されている。なお、これら算出処理C1,C2および判定処理を並行して行うことは、処理時間の短縮に有効であるが、必須ではない。
【0119】
磁力変更判定部21cは、バッテリ10のSOCが閾値X以上と判定すると、重み係数αとして、所定の重み係数αCを採用する(ステップS42)。一方、バッテリ10のSOCが閾値X未満と判定すると、磁力変更判定部21cは、重み係数αとして、所定の重み係数αDを採用する(ステップS43)。これら重み係数αC,αDは、いずれも第3マップに基づいて設定される。
【0120】
上述したように、バッテリ10のSOCが低い時(低充電状態)は、バッテリ10のSOCが高い時(高充電状態)よりも、バッテリ10の電力は貴重である。それにより、低充電状態の重み係数αDは、通常、1より大きく、高充電状態の重み係数αCよりも大きい値となるように設定されている(1<αD,αC<αD)。このようにすることで、低充電状態は高充電状態よりもバッテリ10の電力消費を抑制することができ、バッテリ10と共に駆動モータ3をより効果的に利用することができる。
【0121】
磁力変更判定部21cは、このような判定処理に基づいて設定される重み係数αを用いて電力利得PGの重み付け処理を行った後、その電力利得PGから電力損失PLを減算処理して電力の収支バランス値を取得する(ステップS9)。そして、この収支バランス値が0よりも大きいか否かを判定する(ステップS10)。そうして、電力利得PGが電力損失PLよりも大きい場合(収支バランス値PB>0)には、磁力変更判定部21cは磁化処理を行うと判定する(ステップS11)。一方、電力利得PGが電力損失PL以下の場合(収支バランス値PB≦0)には、磁力変更判定部21cは磁化処理を行わないと判定する(ステップS12)。
【0122】
<応用例3>
応用例3の制御装置では、自動車1が力行時か回生時かの判定、および、バッテリ10が低充電状態か高充電状態かの判定の双方を考慮して、磁力変更判定の判断基準を変更する。すなわち、この応用例3の制御装置は、応用例1および応用例2の双方の内容を含んで構成されている。
【0123】
図12に、応用例3の磁力変更判定部21cが行う具体的な磁力変更判定の処理の流れを示す。基本的な処理の流れは、上述した実施形態と同じである(図8参照)。同じ内容の処理には、同じ符号を用い、その説明は省略または簡略化する。
【0124】
磁力変更判定部21cは、磁力変更判定の対象となる運転点を決定すると(ステップS1)、その運転点における電力利得PGに関する算出処理C1および電力損失PLに関する算出処理C2の各々と共に、自動車1の運転状態が力行であるか回生であるかの判定処理も並行して行う(ステップS51)。なお、これら算出処理C1,C2および判定処理を並行して行うことは、処理時間の短縮に有効であるが、必須ではない。
【0125】
磁力変更判定部21cは、自動車1が力行していると判定すると、バッテリ10のSOCが所定の閾値X(%)以上か否かの判定処理を行う(ステップS52)。そして、磁力変更判定部21cは、バッテリ10のSOCが閾値X以上と判定すると、重み係数αとして、第1の重み係数α1を採用する(ステップS53)。バッテリ10のSOCが閾値X未満と判定すると、磁力変更判定部21cは、重み係数αとして、第2の重み係数α2を採用する(ステップS54)。
【0126】
一方、自動車1が回生していると判定すると、バッテリ10のSOCが所定の閾値X(%)以上か否かの判定処理を行う(ステップS55)。そして、磁力変更判定部21cは、バッテリ10のSOCが閾値X以上と判定すると、重み係数αとして、第3の重み係数α3を採用する(ステップS56)。バッテリ10のSOCが閾値X未満と判定すると、磁力変更判定部21cは、重み係数αとして、第4の重み係数α4を採用する(ステップS57)。
【0127】
これら第1~第4の重み係数α1,α2,α3,α4は、いずれも第3マップに基づいて設定される。図13に、これら第1~第4の重み係数α1,α2,α3,α4の大小関係を示す。これら第1~第4の重み係数α1,α2,α3,α4の大小関係は、矢印で示す方向に向かうほど大きくなるように設定される。
【0128】
すなわち、力行時かつ高充電状態の場合に用いられる第1の重み係数α1は、相対的に小さい値となるように設定される。回生時かつ低充電状態の場合に用いられる第4の重み係数α4は、相対的に大きい値となるように設定される。そして、力行時かつ低充電状態の場合に用いられる第2の重み係数α2、および、回生時かつ高充電状態の場合に用いられる第3の重み係数α3の各々は、第1および第4の重み係数α1,α4と較べて、概ねこれらの中程度の値となるように設定される。
【0129】
このように、応用例3の制御装置では、自動車1が力行時か回生時かの判定、および、バッテリ10が低充電状態か高充電状態かの判定の双方を考慮して、磁力変更判定の判断基準を変更する。その結果、駆動モータ3の運転状態の違いに基づいたエネルギーの損失の抑制と、バッテリ10の充電状態に基づいた電力消費の抑制とを、バランスよく実現できる。
【0130】
磁力変更判定部21cは、このような判定処理に基づいて設定される重み係数αを用いて電力利得PGの重み付け処理を行った後、その電力利得PGから電力損失PLを減算処理して電力の収支バランス値を取得する(ステップS9)。そして、この収支バランス値が0よりも大きいか否かを判定する(ステップS10)。そうして、電力利得PGが電力損失PLよりも大きい場合(収支バランス値PB>0)には、磁力変更判定部21cは磁化処理を行うと判定する(ステップS11)。一方、電力利得PGが電力損失PL以下の場合(収支バランス値PB≦0)には、磁力変更判定部21cは磁化処理を行わないと判定する(ステップS12)。
【0131】
以上説明したように、この自動車1の制御装置によれば、所定の磁化領域Rmの間を移行するタイミングで画一的に磁化処理を行うのではなく、駆動モータ3を駆動するシステム全体でのエネルギーの収支のバランスを考慮して磁化処理を行う。それにより、エネルギーの損失を抑制できる。従って、駆動モータ3をより効果的に利用することができるので、自動車1は、より効率よく走行できるようになり、燃費も向上できる。
【0132】
なお、開示する技術は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。すなわち、実施形態で示した自動車1、駆動モータ3などの構成は一例に過ぎない。これらの構成は、仕様に応じて適宜変更できる。例えば、自動車1がハイブリッド車の場合、ストロングハイブリッド車であってもよい。
【0133】
また、上述した実施形態では、磁化処理時に発生するトルク変動を低減するために発生する第2エネルギーロスを、増磁時に発生する高いトルクをスリップさせた場合のエネルギーロスとして説明した。しかし、それに限らず、第2エネルギーロスは、例えば、減磁時に発生する低いトルクを、駆動モータ3とは異なる駆動源、例えば第2のモータのトルクで補うことによって発生するエネルギーロスとしてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1 自動車(電動車両)
2 エンジン
3 駆動モータ
10 バッテリ
20 エンジンコントロールユニット(ECU)
21 モータコントロールユニット(MCU)
21a モータ出力制御部
21b 磁化処理部
21c 磁力変更判定部
22 変速機コントロールユニット(TCU)
22a 中継クラッチ制御部
22b 変速機クラッチ制御部
23 ブレーキコントロールユニット(BCU)
24 総合コントロールユニット(GCU)
35 マグネット(磁力可変磁石)
83 変速機クラッチ
図1
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図13