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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187719
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】押出装置およびダイヘッド
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/345 20190101AFI20221213BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20221213BHJP
   B29C 48/68 20190101ALI20221213BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20221213BHJP
   B29K 105/06 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
B29C48/345
B29C48/395
B29C48/68
B29B9/06
B29K105:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095862
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 雅之
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F201AB11
4F201AB25
4F201AG14
4F201BA01
4F201BC02
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BL33
4F207AB11
4F207AB25
4F207AG14
4F207AJ08
4F207AM10
4F207AM32
4F207KL57
4F207KL64
4F207KM20
(57)【要約】
【課題】押出装置を用いて製造される樹脂製品の品質を向上させる。
【解決手段】押出装置1は、シリンダ2と、シリンダ2に取り付けられたダイヘッド6とを含んでいる。ダイヘッド6には、溶融樹脂を吐出するための複数の孔部21と、シリンダ2から供給される溶融樹脂を複数の孔部21に導くための樹脂流路部25とが設けられている。シリンダ2からダイヘッド6の樹脂流路部25に供給される溶融樹脂は、繊維状のフィラーを含有している。樹脂流路部25は、互いに区画された複数の流路部22a,22b,22cを含み、複数の流路部22a,22b,22cに複数の孔部21がそれぞれつながっている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む押出装置:
シリンダ;
前記シリンダに取り付けられたダイヘッド;
前記ダイヘッドに設けられ、溶融樹脂を吐出するための複数の孔部;および
前記ダイヘッドに設けられ、前記シリンダから供給される前記溶融樹脂を前記複数の孔部に導くための樹脂流路部、
ここで、前記溶融樹脂は、繊維状のフィラーを含有し、
前記樹脂流路部は、互いに区画された複数の流路部を含み、
前記複数の流路部に前記複数の孔部がそれぞれつながっている。
【請求項2】
請求項1記載の押出装置において、
前記複数の流路部の間には、隔壁部が配置されている、押出装置。
【請求項3】
請求項1記載の押出装置において、
前記複数の孔部の数と前記複数の流路部の数とは、同じである、押出装置。
【請求項4】
請求項1記載の押出装置において、
前記樹脂流路部は、前記シリンダから前記溶融樹脂が供給される樹脂供給部を含み、
前記複数の流路部は、前記樹脂供給部につながっており、
前記シリンダから前記樹脂供給部に供給された前記溶融樹脂は、前記複数の流路部を通って前記複数の孔部に流入する、押出装置。
【請求項5】
請求項1記載の押出装置において、
前記複数の流路部のそれぞれは、前記孔部に近づくに従って面積が徐々に小さくなる形状を有する、押出装置。
【請求項6】
請求項5記載の押出装置において、
前記複数の流路部のそれぞれは、内壁が前記シリンダの長軸方向に対して傾斜している、押出装置。
【請求項7】
請求項5記載の押出装置において、
前記複数の流路部のそれぞれは、円錐状の形状を有する、押出装置。
【請求項8】
以下を含む押出装置:
シリンダ;
前記シリンダに取り付けられたダイヘッド;
前記ダイヘッドに設けられ、溶融樹脂を吐出するための孔部;および
前記ダイヘッドに設けられ、前記シリンダから供給される前記溶融樹脂を前記孔部に導くための樹脂流路部、
ここで、前記溶融樹脂は、繊維状のフィラーを含有し、
前記樹脂流路部は、前記孔部に近づくに従って面積が徐々に小さくなる形状を有する流路部を含み、
前記流路部に前記孔部がつながっている。
【請求項9】
請求項8記載の押出装置において、
前記流路部の内壁は、前記シリンダの長軸方向に対して傾斜している、押出装置。
【請求項10】
請求項8記載の押出装置において、
前記流路部は、円錐状の形状を有する、押出装置。
【請求項11】
以下を含む、押出成形用のダイヘッド:
溶融樹脂を吐出するための複数の孔部;および
供給された前記溶融樹脂を前記複数の孔部に導くための樹脂流路部、
ここで、前記溶融樹脂は、繊維状のフィラーを含有し、
前記樹脂流路部は、互いに区画された複数の流路部を含み、
前記複数の流路部に前記複数の孔部がそれぞれつながっている。
【請求項12】
請求項11記載のダイヘッドにおいて、
前記複数の流路部の間には、隔壁部が配置されている、ダイヘッド。
【請求項13】
請求項11記載のダイヘッドにおいて、
前記複数の孔部の数と前記複数の流路部の数とは、同じである、ダイヘッド。
【請求項14】
請求項11記載のダイヘッドにおいて、
前記樹脂流路部は、前記溶融樹脂が供給される樹脂供給部を含み、
前記複数の流路部は、前記樹脂供給部につながっており、
前記樹脂供給部に供給された前記溶融樹脂は、前記複数の流路部を通って前記複数の孔部に流入する、ダイヘッド。
【請求項15】
請求項11記載のダイヘッドにおいて、
前記複数の流路部のそれぞれは、前記孔部に近づくに従って面積が徐々に小さくなる形状を有する、ダイヘッド。
【請求項16】
請求項15記載のダイヘッドにおいて、
前記複数の流路部のそれぞれは、円錐状の形状を有する、ダイヘッド。
【請求項17】
以下を含む、押出成形用のダイヘッド:
溶融樹脂を吐出するための孔部;および
供給された前記溶融樹脂を前記孔部に導くための樹脂流路部、
ここで、前記溶融樹脂は、繊維状のフィラーを含有し、
前記樹脂流路部は、前記孔部に近づくに従って面積が徐々に小さくなる形状を有する流路部を含み、
前記流路部に前記孔部がつながっている。
【請求項18】
請求項17記載のダイヘッドにおいて、
前記流路部は、円錐状の形状を有する、ダイヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出装置およびダイヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-7819号公報(特許文献1)には、押出機を備えるストランド製造装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-7819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押出装置から押し出される樹脂を用いて樹脂製品、例えば樹脂ペレットを製造することができる。この際、押出装置のシリンダ内に樹脂材料を供給し、シリンダに内蔵されているスクリュにより、その樹脂材料を混練、搬送し、シリンダの先端に取り付けられたダイヘッドの孔部から樹脂材料を押し出す。樹脂材料は、ガラスファイバなどの繊維状のフィラーを含有する場合がある。繊維状のフィラーを含有する樹脂材料を用いることにより、樹脂製品の性能、例えば機械的強度を向上させることができる。
【0005】
しかしながら、樹脂材料が繊維状のフィラーを含有している場合には、ダイヘッドの孔部から樹脂材料が押し出される際に、樹脂材料中の繊維状のフィラー同士が絡まっていたり、樹脂材料中の繊維状のフィラーの配向性が乱れていると、不具合が生じる場合がある。例えば、樹脂ペレットなどの樹脂製品において、形状が設計値からずれてしまう虞がある。また、樹脂ペレットなどの樹脂製品において、特性が変動してしまう虞もある。これは、押出装置を用いて製造される樹脂製品の品質の低下につながる。また、ダイヘッドの孔部において、絡まった繊維が付着してしまい、孔部の目詰まりが生じる虞もある。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によれば、押出装置のダイヘッドは、繊維状のフィラーを含有する溶融樹脂を吐出するための複数の孔部と、ダイヘッドに供給される前記溶融樹脂を前記複数の孔部に導くための樹脂流路部とを、有している。前記樹脂流路部は、互いに区画された複数の流路部を含み、前記複数の流路部に前記複数の孔部がそれぞれつながっている。
【0008】
一実施の形態によれば、押出装置のダイヘッドは、繊維状のフィラーを含有する溶融樹脂を吐出するための孔部と、ダイヘッドに供給される前記溶融樹脂を前記孔部に導くための樹脂流路部とを、有している。前記樹脂流路部は、前記孔部に近づくに従って面積が徐々に小さくなる形状を有する流路部を含み、前記流路部に前記孔部がつながっている。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態によれば、押出装置を用いて製造される樹脂製品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施の形態の押出装置を示す説明図である。
図2】一実施の形態の押出装置で用いられているダイヘッドの平面図である。
図3】一実施の形態の押出装置で用いられているダイヘッドの平面図である。
図4】一実施の形態の押出装置の要部断面図である。
図5】一実施の形態の押出装置の要部断面図である。
図6】一実施の形態の押出装置の要部断面図である。
図7】一実施の形態の押出装置の要部断面図である。
図8】検討例の押出装置で用いられているダイヘッドの平面図である。
図9】検討例の押出装置で用いられているダイヘッドの平面図である。
図10】検討例の押出装置の要部断面図である。
図11】検討例の押出装置の要部断面図である。
図12】他の実施の形態の押出装置で用いられているダイヘッドの平面図である。
図13】他の実施の形態の押出装置の要部断面図である。
図14】他の実施の形態の押出装置の要部断面図である。
図15】他の実施の形態の押出装置の要部断面図である。
図16】他の実施の形態の押出装置の要部断面図である。
図17】他の実施の形態の押出装置で用いられているダイヘッドの平面図である。
図18】他の実施の形態の押出装置で用いられているダイヘッドの平面図である。
図19】他の実施の形態の押出装置の要部断面図である。
図20】他の実施の形態の押出装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0012】
(実施の形態1)
<押出装置の構成例について>
図1は、本実施の形態の押出装置1を示す説明図(側面図)である。
【0013】
まず、図1を参照して、押出装置(押出機、樹脂押出機)1の概略構成について説明する。図1に示される押出装置1は、シリンダ(バレル)2と、シリンダ2内に回転可能に配置されたスクリュ3と、シリンダ2内のスクリュ3を回転させるための回転駆動機構4と、シリンダ2の上流側(後端側)に配置されたホッパ(樹脂材料投入部、樹脂材料供給部)5と、シリンダ2の下流側先端に取り付けられたダイヘッド(金型)6と、を有している。ホッパ5は、シリンダ2の上面に接続されており、ホッパ5を介してシリンダ2内に樹脂材料(原料樹脂)を供給できるようになっている。シリンダ2は、ヒータなどの図示しない温度調整手段(温度調節機構)によって、温度制御される。
【0014】
押出装置1は、更に、フィラー供給部7を有しており、フィラー供給部7からシリンダ2内に、フィラーを供給できるようになっている。図1の場合は、フィラー供給部7はシリンダ2の上面側に設けられているが、これに限定されず、例えばシリンダ2の側面側にフィラー供給部7を設けることもできる。また、フィラー供給部7として、フィラー供給装置を用いることもでき、その場合は、シリンダ2に接続されたフィラー供給装置からシリンダ2内にフィラーを供給することができる。シリンダ2において、フィラー供給部7が接続された位置は、ホッパ5が接続された位置よりも、下流側に位置していることが好ましい。
【0015】
本実施の形態では、フィラー供給部7からシリンダ2内に供給されるフィラーとしては、繊維状のフィラーを用いる。繊維状のフィラーとしては、ガラスファイバ(ガラス繊維)やカーボンファイバ(炭素繊維)などの無機繊維、セルロース繊維などの有機繊維、あるいは、アラミド繊維などの樹脂繊維が例示される。
【0016】
なお、押出装置1に関して「下流側」および「上流側」と称する場合、「下流側」とは、押出装置1における樹脂の流れの下流側を意味し、「上流側」とは、押出装置1における樹脂の流れの上流側を意味する。このため、押出装置1において、ダイヘッド6の後述する孔部21に近い側が下流側であり、ダイヘッド6の孔部21から遠い側、すなわちホッパ5に近い側が上流側である。
【0017】
シリンダ2の内部には、2本のスクリュ3が回転可能に挿入されて内蔵されている。このため、押出装置1は、二軸押出装置とみなすこともできる。シリンダ2内において、2本のスクリュ3は、互いに噛み合うように配置されて回転する。シリンダ2の長軸方向と、シリンダ2内のスクリュ3の長軸方向とは、同じであり、ここではY方向である。なお、シリンダ2の長軸方向とは、シリンダ2の長辺方向または長手方向のことであり、筒状のシリンダ2は、シリンダ2の長軸方向であるY方向に延びている。また、スクリュ3の長軸方向は、スクリュ3の回転軸の軸方向に対応している。シリンダ2内において、樹脂材料は、回転するスクリュ3により、長軸方向であるY方向に上流側から下流側に向かって搬送される。
【0018】
また、各図面には、X方向、Y方向およびZ方向が必要に応じて示されている。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに交差する方向であり、より特定的には互いに直交する方向である。このため、X方向とY方向とは互いに直交し、また、Z方向は、X方向およびY方向に直交している。X方向およびY方向は、水平方向に対応し、Z方向は上下方向(高さ方向)に対応している。Y方向は、シリンダ2の長軸方向であり、従って、シリンダ2内のスクリュ3の長軸方向でもある。
【0019】
また、本実施の形態では、シリンダ2内のスクリュ3の数が2本の場合について説明しているが、他の形態として、シリンダ2内のスクリュ3の数を1本とすることもできる。しかしながら、シリンダ2内のスクリュ3の数を2本とした場合には、空間容積を大きくとれるため、同一スクリュ口径の場合、単軸(スクリュ3が1本)よりも二軸(スクリュ3が2本)の方が原料の供給能力を高くすることができる。
【0020】
ダイヘッド6は、押出装置1のシリンダ2から押し出されてくる溶融樹脂を、所定の断面形状(ここでは紐状)に成形して吐出するように機能することができる。このため、ダイヘッド6は、押出成形用のダイヘッドであり、押出成形用の金型として機能することができる。
【0021】
なお、本願において、「溶融」とは、熱で溶かす場合に限定されず、溶剤などで溶かす場合も含むものとする。このため、加熱により樹脂を溶かした場合だけでなく、溶剤で樹脂を溶かした場合や、マイクロ波により樹脂を溶かした場合なども、「溶融樹脂」に含まれ得る。また、液状樹脂も、「溶融樹脂」に含まれ得る。
【0022】
次に、図1に示される押出装置1の動作の概略について説明する。
【0023】
ホッパ5からシリンダ2内に樹脂材料(原料樹脂、熱可塑性樹脂)が供給され、フィラー供給部7からシリンダ2内に繊維状のフィラーが供給される。ホッパ5からシリンダ2内に供給された樹脂材料は、シリンダ2内でスクリュ3の回転により前方へ送られながら溶融される。そして、フィラー供給部7からシリンダ2内に繊維状のフィラーが供給されるため、樹脂材料(溶融樹脂)とフィラー供給部7から供給された繊維状のフィラーとが、スクリュ3の回転により混練されながらシリンダ2内を更に前方に送られる。これにより、シリンダ2内を搬送される溶融樹脂は、繊維状のフィラーを含有した状態になる。繊維状のフィラーを含有する溶融樹脂、すなわち、溶融樹脂と繊維状のフィラーとの混練物は、シリンダ2の先端に取り付けられたダイヘッド6(より具体的にはダイヘッド6の後述する孔部21)から押し出される。
【0024】
ダイヘッド6から押し出された樹脂材料により、樹脂製品が製造される。例えば、繊維状のフィラーを含有する溶融樹脂は、ダイヘッド6で紐状に成形されてダイヘッド6から樹脂ストランドとして押し出され、切断装置(カッタ)で切断されることにより、樹脂製品として樹脂ペレットが製造される。この場合、製造された樹脂ペレットは、繊維状のフィラーを含有している。
【0025】
このため、押出装置1を用いて樹脂製品を製造する工程は、ホッパ5からシリンダ2内に樹脂材料を供給する工程と、フィラー供給部7からシリンダ2内に繊維状のフィラーを供給する工程と、繊維状のフィラーを供給する工程の後にシリンダ2内のスクリュ3によって樹脂材料と繊維状のフィラーとを混練する工程と、混練工程の後にシリンダ2の先端に取り付けたダイヘッド6から繊維状のフィラーを含有する樹脂材料を押し出す工程と、を有する。
【0026】
<ダイヘッドの構成について>
次に、本実施の形態の押出装置1の先端部付近の構成、特にダイヘッド6の構成について、図2図7を参照して説明する。
【0027】
図2および図3は、本実施の形態の押出装置1で用いられているダイヘッド6の平面図である。図2には、シリンダ2の先端に取り付けられたダイヘッド6を、図1に示される矢印8の向きから見た場合が示されている。また、図3には、図1の矢印8とは逆側からダイヘッド6を見た場合、すなわち、シリンダ2側からシリンダ2を透視してダイヘッド6を見た場合が示されている。このため、図2図3とは、互いに逆の方向からダイヘッド6を見ていることになる。図4図7は、本実施の形態の押出装置1の要部断面図である。図4は、図2および図3に示されるA1-A1線の位置での断面図にほぼ対応し、図5は、図2および図3に示されるA2-A2線の位置での断面図にほぼ対応し、図6は、図2および図3に示されるA3-A3線の位置での断面図にほぼ対応し、図7は、図2および図3に示されるA4-A4線の位置での断面図にほぼ対応している。なお、図2図7では、簡略化のために、各部材を固定するための固定部材(ネジなど)については、図示を省略してある。
【0028】
なお、図2図7および後述の各図には、X方向、Y方向およびZ方向が示されている。上述のように、Y方向は、シリンダ2の長軸方向であり、また、ダイヘッド6の樹脂流路部25内を溶融樹脂が主として流れる方向でもある。
【0029】
ダイヘッド6は、繊維状のフィラーを含有する溶融樹脂を吐出するための複数の孔部(吐出口、ノズル部、開口部)21と、シリンダ2から供給された溶融樹脂を複数の孔部21へ導く樹脂流路部25と、を有している。すなわち、ダイヘッド6内に樹脂流路部25と複数の孔部21とが形成されている。
【0030】
本実施の形態では、ダイヘッド6に複数の孔部21が設けられているが、一例として、図2図7には、ダイヘッド6に設けられた孔部21の数が3つの場合が示されている。他の形態として、ダイヘッド6に設けられた孔部21の数を3つ以外の任意の数(但し2つ以上)とすることもできる。
【0031】
樹脂流路部25は、シリンダ2のフランジ部2aの開口部26から複数の孔部21に至る流路方向(ここではY方向)に延びている。ダイヘッド6において、複数の孔部21は互いに離間しており、図2の場合は、X方向に離間して並んでいる。また、図4図7の場合は、各孔部21の軸方向はY方向であり、各孔部21はY方向に延びている。
【0032】
ダイヘッド6は、互いに反対側に位置する面である注入面(上流面)27aと押出面(下流面)27bとを有しており、ダイヘッド6の注入面27aが、シリンダ2の先端部であるフランジ部2aに接続されている。孔部21は、ダイヘッド6の押出面27bに到達し、ダイヘッド6の押出面27bで開口している。ダイヘッド6の押出面27bの孔部21から、繊維状のフィラーを含有する溶融樹脂が押し出される。図2は、押出面27b側からダイヘッド6を見た場合に対応し、図3は、注入面27a側からダイヘッド6を見た場合に対応している。孔部21の開口径、より特定的には、孔部21の押出面27bにおける開口径は、かなり小さく、例えば2~6mm程度である。
【0033】
各孔部21は、樹脂流路部25に連通している。すなわち、各孔部21は、樹脂流路部25と空間的につながっている。具体的には、樹脂流路部25を構成する複数の流路部22a,22b,22cのそれぞれに、各孔部21がつながっている。樹脂流路部25および複数の孔部21は、シリンダ2からダイヘッド6に供給された溶融樹脂が流動可能な空間である。樹脂流路部25および複数の孔部21は、ダイヘッド6を構成する金属材料が存在しない空洞部であり、樹脂流路部25および複数の孔部21の周囲は、ダイヘッド6を構成する金属材料によって囲まれている。
【0034】
複数の孔部21は、ダイヘッド6から押し出される溶融樹脂の断面形状を所定の形状に成形するように機能する。すなわち、溶融樹脂が複数の孔部21を通過してダイヘッド6の外部に吐出されるため、溶融樹脂は孔部21によって所定の断面形状に成形されて孔部21からダイヘッド6の外部に吐出される。例えば、孔部21の断面形状(孔部21の軸方向に略垂直な断面形状)が円形状の場合は、孔部21から吐出される溶融樹脂の断面形状(溶融樹脂の吐出方向に略垂直な断面形状)も円形状となる。また、孔部21の直径により、孔部21から吐出される溶融樹脂の直径を制御することもできる。但し、孔部21から吐出される際の溶融樹脂の流速によっても、孔部21から吐出される溶融樹脂の直径は変化する。樹脂流路部25は、シリンダ2からダイヘッド6に供給される溶融樹脂を、複数の孔部21に導くための樹脂流路として機能する。
【0035】
ダイヘッド6は、押出装置1のシリンダ2の先端のフランジ部2aに取り付けられて保持されている。ダイヘッド6は、好ましくは金属材料からなる。ダイヘッド6は、例えば、ネジまたはボルトなどの固定用部材(図示せず)によりシリンダ2のフランジ部2aに取り付けることができる。ダイヘッド6は、一体的な一つの部材により構成することもできるが、複数の部材により構成することも可能である。例えば、孔部21などが形成されたダイスと、そのダイスを保持するダイホルダ部とにより、ダイヘッド6を構成することもできる。ダイヘッド6を複数の部材により構成する場合は、それら複数の部材を溶接などによって互いに接合してもよいし、あるいは、それら複数の部材をネジまたはボルトなどの固定部材により固定してもよい。
【0036】
ダイヘッド6は、シリンダ2の先端のフランジ部2aの開口部26とダイヘッド6の樹脂流路部25とが連通するように、シリンダ2のフランジ部2aに取り付けられている。開口部26は、シリンダ2からの溶融樹脂の出口である。このため、シリンダ2内をスクリュ3により混練しながら搬送された溶融樹脂は、シリンダ2の先端のフランジ部2aの開口部26から押し出されて、ダイヘッド6の樹脂流路部25に供給され、樹脂流路部25を通って複数の孔部21に流入し、複数の孔部21からダイヘッド6の外部に吐出される。
【0037】
樹脂流路部25は、フランジ部2aの開口部26から押し出された溶融樹脂が供給される樹脂供給部(樹脂流入部)23と、隔壁部24により互いに区画された複数の流路部22a,22b,22cと、を有している。複数の流路部22a,22b,22cの間には、隔壁部24が存在している。樹脂供給部23は、フランジ部2aの開口部26の下流側に位置して、フランジ部2aの開口部26と連通している。樹脂供給部23は、フランジ部2aの開口部26と同形状の開口形状を有していることが好ましい。複数の流路部22a,22b,22cは、樹脂供給部23の下流側に位置して、樹脂供給部23と連通している。複数の流路部22a,22b,22cは、平面視において、樹脂供給部23に内包されている。ここで、平面視とは、孔部21に近づく方向(ここではY方向)に略垂直な平面で見た場合に対応している。複数の孔部21は、複数の流路部22a,22b,22cの下流側に位置して、複数の流路部22a,22b,22cとそれぞれ連通している。シリンダ2のフランジ部2aの開口部26から押し出されてダイヘッド6の樹脂供給部23に供給された溶融樹脂は、複数の流路部22a,22b,22cを通って複数の孔部21に流入し、複数の孔部21からダイヘッド6の外部に吐出される。
【0038】
隔壁部24によって区画された複数の流路部22a,22b,22cの数は、ダイヘッド6が有する孔部21の数と一致し、区画された複数の流路部22a,22b,22cのそれぞれに、1つの孔部21が連通していることが好ましい。例えば、図2図7の場合は、ダイヘッド6が有する孔部21の数が3つであるが、その場合は、樹脂流路部25は、隔壁部24によって区画された3つの流路部22a,22b,22cを有し、その3つの流路部22a,22b,22cのそれぞれに、1つの孔部21が連通している。流路部22aに連通する孔部21を、孔部21aと称し、流路部22bに連通する孔部21を、孔部21bと称し、流路部22cに連通する孔部21を、孔部21cと称することとする。
【0039】
複数の流路部22a,22b,22c同士は、孔部21に近づく方向(ここではY方向)に略垂直な面で見たときに、隔壁部24を介して隣り合っている。図3の場合は、流路部22aと流路部22bとは、隔壁部24を介してX方向に隣り合っており、流路部22bと流路部22cとは、隔壁部24を介してX方向に隣り合っており、流路部22aと流路部22cとの間に、流路部22bが配置されている。流路部22aと流路部22bとの間には、流路部22aと流路部22bとを区画する隔壁部24が存在し、流路部22bと流路部22cとの間には、流路部22bと流路部22cとを区画する隔壁部24が存在している。
【0040】
孔部21の数を変更した場合は、それに合わせて隔壁部24によって区画される流路部の数を変更することができる。例えば、孔部21の数が2つの場合は、隔壁部24によって区画される流路部の数は2つとすることができ、その2つの流路部のそれぞれに1つの孔部21が連通する。また、孔部21の数が4つの場合は、隔壁部24によって区画される流路部の数は4つとすることができ、その4つの流路部のそれぞれに1つの孔部21が連通する。
【0041】
互いに区画された複数の流路部22a,22b,22cは、共通の樹脂供給部23につながり、その樹脂供給部23は、シリンダ2のフランジ部2aの開口部26とつながっている。このため、シリンダ2内をスクリュ3により混練しながら搬送された溶融樹脂は、シリンダ2の先端のフランジ部2aの開口部26から押し出されて、ダイヘッド6の樹脂供給部23に供給され、樹脂供給部23から複数の流路部22a,22b,22cに流入することになる。樹脂供給部23から流路部22aに流入した溶融樹脂は、流路部22aを通って孔部21aに流入し、孔部21aからダイヘッド6の外部に吐出される。樹脂供給部23から流路部22bに流入した溶融樹脂は、流路部22bを通って孔部21bに流入し、孔部21bからダイヘッド6の外部に吐出される。樹脂供給部23から流路部22cに流入した溶融樹脂は、流路部22cを通って孔部21cに流入し、孔部21cからダイヘッド6の外部に吐出される。
【0042】
流路部22a,22b,22cは、隔壁部24によって分けられているため、隔壁部24を越えて溶融樹脂が流路部22a,22b,22c間で移動するのを防止することができる。このため、樹脂供給部23から流路部22aに流入した溶融樹脂は、ほとんどが孔部21aに流入して孔部21aからダイヘッド6の外部に吐出されることになり、樹脂供給部23から流路部22aに流入した溶融樹脂が孔部21b,21cに流入するのを防止することができる。また、樹脂供給部23から流路部22bに流入した溶融樹脂は、ほとんどが孔部21bに流入して孔部21bからダイヘッド6の外部に吐出されることになり、樹脂供給部23から流路部22bに流入した溶融樹脂が孔部21a,21cに流入するのを防止することができる。また、樹脂供給部23から流路部22cに流入した溶融樹脂は、ほとんどが孔部21cに流入して孔部21cからダイヘッド6の外部に吐出されることになり、樹脂供給部23から流路部22cに流入した溶融樹脂が孔部21a,21bに流入するのを防止することができる。つまり、孔部21aから吐出される溶融樹脂は、流路部22aを通った溶融樹脂に制限され、孔部21bから吐出される溶融樹脂は、流路部22bを通った溶融樹脂に制限され、孔部21cから吐出される溶融樹脂は、流路部22cを通った溶融樹脂に制限される。
【0043】
複数の流路部22a,22b,22cのそれぞれの先端面において、孔部21が開口している。ここで、流路部22a,22b,22cの先端面とは、下流側の端面であり、具体的には、Y方向の端面である。本実施の形態では、複数の流路部22a,22b,22cのそれぞれにおいて、内壁はY方向に略平行である。このため、複数の流路部22a,22b,22cのそれぞれは、孔部21に近づいても、面積(Y方向に略垂直な断面における面積)はほぼ一定となっている。
【0044】
<検討例について>
図8および図9は、本発明者が検討した検討例の押出装置101で用いられているダイヘッド106の平面図であり、上記図2および図3にそれぞれに相当するものである。図10および図11は、検討例の押出装置101の要部断面図である。図10は、図8および図9に示されるB1-B1線の位置での断面図にほぼ対応し、図11は、図8および図9に示されるB2-B2線の位置での断面図にほぼ対応している。
【0045】
検討例の押出装置101において、シリンダ102の先端のフランジ部102aにダイヘッド106が取り付けられている。ダイヘッド106は、上記ダイヘッド6に相当するものであるが、検討例の押出装置101に用いられているダイヘッド106においては、上記隔壁部24に相当するものは形成されていない。このため、検討例のダイヘッド106においては、上記流路部22a,22b,22cを合わせたもの全体が、1つの流路部122となっており、流路部122内で溶融樹脂の移動は制限されない。従って、検討例のダイヘッド106においては、1つの流路部122に対して、複数の孔部121が連通した状態になっている。
【0046】
検討例の押出装置101において、シリンダ102内をスクリュにより混練しながら搬送された溶融樹脂は、シリンダ102の先端のフランジ部102aの開口部126から押し出されて、ダイヘッド106の樹脂供給部123に供給され、流路部122を通って複数の孔部121に流入し、複数の孔部121からダイヘッド106の外部に吐出される。
【0047】
しかしながら、シリンダ102からダイヘッド106に供給される溶融樹脂が、繊維状のフィラーを含有している場合には、次のような不具合が生じる虞があることが、本発明者の検討により分かった。
【0048】
すなわち、シリンダ102からダイヘッド106の樹脂供給部123に供給された溶融樹脂は、流路部122内を主として複数の孔部121に向かって流れて、複数の孔部121に流入するが、流路部122内で溶融樹脂の流れが乱れると、溶融樹脂に含まれる繊維状のフィラー同士が絡まりやすくなる。流路部122内で溶融樹脂に含まれる繊維状のフィラー同士が絡まってしまうと、複数の孔部121から吐出される溶融樹脂中でも、繊維状のフィラー同士が絡まった状態になってしまい、複数の孔部121から吐出される溶融樹脂を用いて製造される樹脂製品(例えば樹脂ペレット)の品質が低下する虞がある。例えば、樹脂ペレットなどの樹脂製品において、形状が設計値(目標形状)からずれてしまう虞がある。また、樹脂ペレットなどの樹脂製品において、特性が変動してしまう虞もある。また、ダイヘッド106の複数の孔部121において、絡まった繊維が付着してしまい、孔部121の目詰まりが生じる虞もある。このため、シリンダ102からダイヘッド106に供給される溶融樹脂が、繊維状のフィラーを含有している場合には、流路部122内における溶融樹脂の流れの乱れを抑制または防止することが望まれる。
【0049】
<主要な特徴と効果について>
本実施の形態の押出装置1は、シリンダ2と、シリンダ2に取り付けられたダイヘッド6とを含んでいる。ダイヘッド6には、シリンダ2から供給される溶融樹脂を複数の孔部21に導くための樹脂流路部25と、溶融樹脂を吐出するための複数の孔部21とが、設けられている。
【0050】
本実施の形態の主要な特徴のうちの一つは、シリンダ2からダイヘッド6の樹脂流路部25に供給される溶融樹脂が、繊維状のフィラーを含有していることである。本実施の形態の主要な特徴のうちの他の一つは、ダイヘッド6の樹脂流路部25は、互いに区画された複数の流路部22a,22b,22cを含んでおり、それら複数の流路部22a,22b,22cに複数の孔部21がそれぞれつながっていることである。
【0051】
本実施の形態では、ダイヘッド6の樹脂流路部25が、互いに区画された複数の流路部22a,22b,22cを含み、それら複数の流路部22a,22b,22cに複数の孔部21がそれぞれつながっていることにより、複数の流路部22a,22b,22c内における溶融樹脂の流れの乱れを抑制することができる。
【0052】
すなわち、上記図8図11に示される検討例の場合は、シリンダ102からダイヘッド106に供給された溶融樹脂は、流路部122全体を制限なく流れることができるため、流路部122において溶融樹脂の流れに乱れが生じやすい。それに対して、本実施の形態の場合は、シリンダ2からダイヘッド6の樹脂流路部25に供給された溶融樹脂は、互いに区画された複数の流路部22a,22b,22cを通ってそれら複数の流路部22a,22b,22cにつながる複数の孔部21a,21b,21cに流入するため、溶融樹脂が流路部22a,22b,22c間で移動するのを抑制または防止することができる。
【0053】
このため、本実施の形態では、シリンダ2から流路部22aに供給された溶融樹脂は、移動範囲が流路部22a内に制限され、ほとんどが孔部21aに流入することになる。同様に、シリンダ2から流路部22bに供給された溶融樹脂は、移動範囲が流路部22b内に制限され、ほとんどが孔部21bに流入することになる。同様に、シリンダ2から流路部22cに供給された溶融樹脂は、移動範囲が流路部22c内に制限され、ほとんどが孔部21cに流入することになる。これにより、ダイヘッド6の流路部22a,22b,22cにおいて、各孔部21a,21b,21cへ向かう溶融樹脂の流れが乱れにくくなる。流路部22a,22b,22cの間の隔壁部24は、隔壁部24を越えるような溶融樹脂の流れを防ぎ、ダイヘッド6の流路部22a,22b,22cにおける溶融樹脂の流れを整える整流板として機能することができる。
【0054】
このため、上記検討例に比べて、本実施の形態の場合は、ダイヘッド6の流路部22a,22b,22c内において溶融樹脂の流れが乱れるのを抑制または防止することができ、溶融樹脂に含まれる繊維状のフィラー同士が絡まるのを抑制または防止することができる。従って、ダイヘッド6の複数の孔部21から吐出される溶融樹脂中で、繊維状のフィラー同士が絡まった状態になるのを抑制または防止することができるため、ダイヘッド6の複数の孔部21から吐出される溶融樹脂を用いて製造される樹脂製品(例えば樹脂ペレット)の品質を向上させることができる。例えば、樹脂ペレットなどの樹脂製品において、形状が設計値(目標形状)からずれてしまうのを抑制または防止することができる。また、樹脂ペレットなどの樹脂製品において、特性が変動してしまうのを抑制または防止することができる。また、ダイヘッド6の複数の孔部21において、絡まった繊維の付着に起因して孔部21の目詰まりが生じるのを、抑制または防止することができる。このため、押出装置を管理しやすくなる。
【0055】
(実施の形態2)
図12は、本実施の形態2の押出装置1で用いられているダイヘッド6の平面図であり、上記図3に相当し、シリンダ2側からシリンダ2を透視してダイヘッド6を見た場合が示されている。シリンダ2の先端に取り付けられたダイヘッド6を、上記図1に示される矢印8の向きから見た場合の平面図は、本実施の形態2の場合も、上記図2と同様となる。図13図17は、本実施の形態2の押出装置1の要部断面図であり、上記図4図7にそれぞれ相当している。図13は、図12に示されるA1-A1線の位置での断面図にほぼ対応し、図14は、図12に示されるA2-A2線の位置での断面図にほぼ対応し、図15は、図12に示されるA3-A3線の位置での断面図にほぼ対応し、図16は、図12に示されるA4-A4線の位置での断面図にほぼ対応している。なお、上記図2図7と同様に、図12図17でも、簡略化のために、各部材を固定するための固定部材(ネジなど)については、図示を省略してある。
【0056】
以下では、本実施の形態2の押出装置1を、符号1aを付して押出装置1aと称し、本実施の形態2の押出装置1aに用いられているダイヘッド6を、符号6aを付してダイヘッド6aと称することとする。
【0057】
本実施の形態2の押出装置1aが上記実施の形態1の押出装置1と相違しているのは、ダイヘッド6aの構造である。以下では、主として上記実施の形態1との相違点について説明する。
【0058】
本実施の形態2においても、ダイヘッド6aの樹脂流路部25が、互いに区画された複数の流路部22a,22b,22cを有し、それら複数の流路部22a,22b,22cに複数の孔部21がそれぞれつながっている点は、上記実施の形態1と同じであるが、本実施の形態2では、複数の流路部22a,22b,22cの形状が、上記実施の形態1と相違している。
【0059】
すなわち、本実施の形態2では、複数の流路部22a,22b,22cは、それぞれ、孔部21に近づくに従って、面積が徐々に小さくなる形状を有している。ここでいう「面積」とは、孔部21に近づく方向(ここではY方向)に略垂直な断面における面積に対応している。このため、流路部22aは、孔部21aに近づくに従って、面積が徐々に小さくなる形状を有し、また、流路部22bは、孔部21bに近づくに従って、面積が徐々に小さくなる形状を有し、また、流路部22cは、孔部21cに近づくに従って、面積が徐々に小さくなる形状を有している。
【0060】
つまり、本実施の形態2では、複数の流路部22a,22b,22cは、先細りの形状を有している。言い換えると、各流路部22a,22b,22cは、テーパ形状を有している。このため、本実施の形態2では、各流路部22a,22b,22cは、内壁がY方向に対して傾斜している。図12図16の場合は、各流路部22a,22b,22cは、略円錐状の形状を有しており、その円錐形状の頂点(下流側先端)に孔部21が接続されている。また、図12図16の場合は、各流路部22a,22b,22cを構成する円錐形状の軸方向(回転軸方向)は、Y方向となっている。
【0061】
各流路部22a,22b,22cの入口(上流側端部)の平面寸法(平面積)、すなわち、各流路部22a,22b,22cを構成する円錐形状の底面の平面寸法は、孔部21の開口面積よりも大きい。各流路部22a,22b,22cの入口は、例えば直径20~40mm程度の円形状とすることができる。また、各流路部22a,22b,22cのY方向の寸法は、例えば40~80mm程度とすることができる。各流路部22a,22b,22cにつながる各孔部21の直径は、例えば2~6mm程度とすることができる。
【0062】
本実施の形態2のダイヘッド6aおよびそれを用いた押出装置1aの他の構成は、上記実施の形態1と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0063】
本実施の形態2では、複数の流路部22a,22b,22cは、孔部21に近づくに従って、面積が徐々に小さくなる形状を有している。つまり、複数の流路部22a,22b,22cは、先細りの形状を有している。このため、シリンダ2から流路部22a,22b,22cに供給された溶融樹脂の流れは、流路部22a,22b,22cのそれぞれ内において、孔部21に向かって収束する。これにより、溶融樹脂中に含まれる繊維状のフィラーは、孔部21に向かう方向に配向した状態で、流路部22a,22b,22cから孔部21に流入することができる。このため、孔部21に入る繊維状のフィラーは、一方向に揃い、曲がらずに伸びた状態で孔部21を通過することができる。従って、本実施の形態2の場合は、上記実施の形態1よりも、溶融樹脂に含まれる繊維状のフィラー同士が絡まるのを更に的確に抑制または防止することができる。
【0064】
このため、本実施の形態2では、ダイヘッド6aの複数の孔部21から吐出される溶融樹脂中で、繊維状のフィラー同士が絡まった状態になるのを、より的確に抑制または防止することができるため、ダイヘッド6aの複数の孔部21から吐出される溶融樹脂を用いて製造される樹脂製品(例えば樹脂ペレット)の品質を更に向上させることができる。また、ダイヘッド6aの複数の孔部21において、絡まった繊維の付着に起因して孔部21の目詰まりが生じるのを、更に的確に抑制または防止することができる。このため、押出装置を更に管理しやすくなる。
【0065】
また、流路部22a,22b,22cは、孔部21に近づくに従って、面積が徐々に小さくなる形状を有しており、多角錐状(例えば四角錐状)の形状とすることもできるが、円錐状の形状を有していれば、より好ましい。流路部22a,22b,22cが円錐状の形状を有している場合は、流路部22a,22b,22cのそれぞれ内における溶融樹脂の流れは、孔部21に向かって効率的に収束し、溶融樹脂中に含まれる繊維状のフィラーが、孔部21に向かう方向により的確に配向した状態で、流路部22a,22b,22cから孔部21に流入することができる。このため、孔部21に入る繊維状のフィラーは、一方向に的確に揃い、曲がらずに伸びた状態で孔部21を通過することができる。従って、流路部22a,22b,22cが円錐状の形状を有していれば、溶融樹脂に含まれる繊維状のフィラー同士が絡まるのを抑制または防止する効果を、より的確に得ることができる。これについては、後述の実施の形態3の流路部22についても同様である。
【0066】
(実施の形態3)
図17は、本実施の形態3の押出装置1で用いられているダイヘッド6の平面図であり、上記図2に相当し、シリンダ2の先端に取り付けられたダイヘッド6を、上記図1に示される矢印8の向きから見た場合が示されている。図18は、本実施の形態3の押出装置1で用いられているダイヘッド6の平面図であり、上記図3に相当し、シリンダ2側からシリンダ2を透視してダイヘッド6を見た場合が示されている。図19および図20は、本実施の形態3の押出装置1の要部断面図であり、上記図4および図6にそれぞれ相当している。図19は、図17および図18に示されるC1-C1線の位置での断面図にほぼ対応し、図20は、図17および図18に示されるC2-C2線の位置での断面図にほぼ対応している。なお、上記図2図7と同様に、図17図20でも、簡略化のために、各部材を固定するための固定部材(ネジなど)については、図示を省略してある。
【0067】
以下では、本実施の形態3の押出装置1を、符号1bを付して押出装置1bと称し、本実施の形態3の押出装置1bに用いられているダイヘッド6を、符号6bを付してダイヘッド6bと称することとする。
【0068】
本実施の形態2の押出装置1bが上記実施の形態2の押出装置1aと相違しているのは、ダイヘッド6bの構造である。以下では、主として上記実施の形態2との相違点について説明する。
【0069】
上記実施の形態2では、ダイヘッド6aが有する孔部21の数は、複数であったが、本実施の形態3では、ダイヘッド6bが有する孔部21の数は、1つである。このため、上記実施の形態2では、孔部21に近づくに従って面積が徐々に小さくなる形状を有する流路部22a,22b,22cは複数設けられていたが、本実施の形態3では、孔部21に近づくに従って面積が徐々に小さくなる形状を有する流路部22は、1つだけ設けられており、その1つの流路部22に1つの孔部21がつながっている。つまり、上記実施の形態2のダイヘッド6aにおいて、複数の流路部22a,22b,22cを、1つの流路部22に変更し、孔部21の数も1つに変更したものが、本実施の形態3のダイヘッド6bに対応している。
【0070】
このため、本実施の形態3のダイヘッド6bは、シリンダ2から供給される溶融樹脂を孔部21に導くための樹脂流路部25と、溶融樹脂を吐出するための孔部21とを有しているが、孔部21の数は1つである。そして、樹脂流路部25は、フランジ部2aの開口部26から押し出された溶融樹脂が供給される樹脂供給部23と、孔部21に近づくに従って面積が徐々に小さくなる形状を有する流路部22とを有しており、その流路部22に孔部21がつながっている。
【0071】
上記実施の形態2の流路部22a,22b,22cと同様に、本実施の形態3の流路部22も、孔部21に近づくに従って面積が徐々に小さくなる形状を有しているため、先細りの形状(テーパ形状)を有しており、流路部22の内壁は、Y方向に対して傾斜している。
【0072】
上記実施の形態2の流路部22a,22b,22cと同様に、本実施の形態3の流路部22も、多角錐状(例えば四角錐状)の形状とすることもできるが、円錐状の形状を有していれば、より好ましい。図17図20の場合は、流路部22は、略円錐状の形状を有しており、その円錐形状の先端部(頂点部)に孔部21が接続されている。
【0073】
流路部22は、樹脂供給部23につながり、その樹脂供給部23は、シリンダ2のフランジ部2aの開口部26とつながっている。シリンダ2内をスクリュ3により混練しながら搬送された溶融樹脂は、シリンダ2の先端のフランジ部2aの開口部26から押し出されて、ダイヘッド6の樹脂供給部23に供給され、樹脂供給部23から流路部22に流入する。流路部22に流入した溶融樹脂は、流路部22を通って孔部21に流入し、孔部21からダイヘッド6の外部に吐出される。
【0074】
本実施の形態3のダイヘッド6bおよびそれを用いた押出装置1bの他の構成は、上記実施の形態2と同様であるので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0075】
本実施の形態3では、流路部22は、孔部21に近づくに従って、面積が徐々に小さくなる形状を有している。つまり、流路部22は、先細りの形状を有している。このため、シリンダ2から流路部22に供給された溶融樹脂の流れは、流路部22内において、孔部21に向かって収束する。これにより、溶融樹脂中に含まれる繊維状のフィラーは、孔部21に向かう方向に配向した状態で、流路部22から孔部21に流入することができる。このため、孔部21に入る繊維状のフィラーは、一方向に揃い、曲がらずに伸びた状態で孔部21を通過することができる。従って、溶融樹脂に含まれる繊維状のフィラー同士が絡まるのを抑制または防止することができる。
【0076】
このため、本実施の形態3では、ダイヘッド6bの孔部21から吐出される溶融樹脂中で、繊維状のフィラー同士が絡まった状態になるのを、抑制または防止することができるため、ダイヘッド6bの孔部21から吐出される溶融樹脂を用いて製造される樹脂製品(例えば樹脂ペレット)の品質を向上させることができる。また、ダイヘッド6bの孔部21において、絡まった繊維の付着に起因して孔部21の目詰まりが生じるのを、抑制または防止することができる。このため、押出装置を管理しやすくなる。
【0077】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1,1a,1b 押出装置
2 シリンダ
2a フランジ部
3 スクリュ
4 回転駆動機構
5 ホッパ
6 ダイヘッド
7 フィラー供給部
21,21a,21b,21c 孔部
22a,22b,22c 流路部
23 樹脂供給部
24 隔壁部
25 樹脂流路部
26 開口部
101 押出装置
102 シリンダ
102a フランジ部
106 ダイヘッド
121 孔部
122 流路部
123 樹脂供給部
126 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20