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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187722
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/19 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
E04B1/19 F
E04B1/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095865
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】網倉 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇秀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英幸
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 隆
(57)【要約】
【課題】建物を構成する架構を断面積の小さい部材で構成することができることを目的とする。
【解決手段】第1柱部材22Aと第1ヒンジ部26Aが設けられた第1梁部材20Aとを有して構成された第1ラーメン架構18Aと、第2柱部材22Bと第2ヒンジ部26Bが設けられた第2梁部材20Bとを有して構成され第1ラーメン架構18Aと斜めに交差して配置されると共に、第1ヒンジ部26Aが第2梁部材20Bの剛部32Bに接続され、第2ヒンジ部26Bが第1梁部材20Aの剛部32Aに接続された第2ラーメン架構18Bと、を有する建物10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン支持された第1柱部材と第1ヒンジ部が設けられた第1梁部材とを有して構成され桁行方向へ複数配置された第1ラーメン架構と、
ピン支持された第2柱部材と第2ヒンジ部が設けられた第2梁部材とを有して構成され前記桁行方向へ前記第1ラーメン架構と斜めに交差して複数配置されると共に、前記第1ヒンジ部が前記第2梁部材の剛部に接続され、前記第2ヒンジ部が前記第1梁部材の剛部に接続された第2ラーメン架構と、
を有する建物。
【請求項2】
前記第1梁部材及び前記第2梁部材は台形形状とされ、鉛直荷重に対する曲げモーメントが0となる前記第1梁部材の折れ曲り部に前記第1ヒンジ部が設けられ、鉛直荷重に対する曲げモーメントが0となる前記第2梁部材の折れ曲り部に前記第2ヒンジ部が設けられている請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記第1柱部材と前記第2柱部材とは、前記桁行方向に対して互いに反対方向へ傾いて交互に配置されてトラス構造を構成している請求項1又は2に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラーメン架構を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
平面視にて交差するようにして配置された複数の架構を有して構成された建物がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-165866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような建物の架構は、地震等により建物に作用する水平荷重に対して十分な水平耐力を有していなければならないので、断面積の小さい部材で架構を構成することが難しい。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、建物を構成する架構を断面積の小さい部材で構成することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る建物は、ピン支持された第1柱部材と第1ヒンジ部が設けられた第1梁部材とを有して構成され桁行方向へ複数配置された第1ラーメン架構と、ピン支持された第2柱部材と第2ヒンジ部が設けられた第2梁部材とを有して構成され前記桁行方向へ前記第1ラーメン架構と斜めに交差して複数配置されると共に、前記第1ヒンジ部が前記第2梁部材の剛部に接続され、前記第2ヒンジ部が前記第1梁部材の剛部に接続された第2ラーメン架構と、を有する。
【0007】
第1態様に係る建物によれば、第1柱部材がピン支持された第1ラーメン架構と第2柱部材がピン支持された第2ラーメン架構とを斜めに交差させ、第1ヒンジ部を第2梁部材の剛部に接続し、第2ヒンジ部を第1梁部材の剛部に接続することで、レシプロカル構造を構成する。
【0008】
このレシプロカル構造により、第1ラーメン架構及び第2ラーメン架構に作用する水平荷重に対して応力状態を均質化することができる。これにより、第1ラーメン架構及び第2ラーメン架構を断面積の小さい部材で構成することができる。
【0009】
また、このレシプロカル構造は、点対称性を有さないものなので、広がりに制約が少ない大きな建物空間を構築することができる。
【0010】
第2態様に係る建物は、第1態様に係る建物において、前記第1梁部材及び前記第2梁部材は台形形状とされ、鉛直荷重に対する曲げモーメントが0となる前記第1梁部材の折れ曲り部に前記第1ヒンジ部が設けられ、鉛直荷重に対する曲げモーメントが0となる前記第2梁部材の折れ曲り部に前記第2ヒンジ部が設けられている。
【0011】
第2態様に係る建物によれば、第1梁部材及び第2梁部材を台形形状とし、鉛直荷重に対する曲げモーメントが0となる第1梁部材の折れ曲り部に第1ヒンジ部を設け、鉛直荷重に対する曲げモーメントが0となる第2梁部材の折れ曲り部に第2ヒンジ部を設けることによって、第1梁部材及び第2梁部材を軸力材として扱うことができ、第1梁部材及び第2梁部材を断面積の小さい部材で構成することができる。
【0012】
第3態様に係る建物は、第1又は第2態様に係る建物において、前記第1柱部材と前記第2柱部材とは、前記桁行方向に対して互いに反対方向へ傾いて交互に配置されてトラス構造を構成している。
【0013】
第3態様に係る建物によれば、第1柱部材と第2柱部材とでトラス構造を構成することで、第1柱部材と第2柱部材との間にブレース部材を設けなくても、水平耐力の高い建物側壁部を構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記構成としたので、建物を構成する架構を断面積の小さい部材で構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る建物を示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る建物を示す側面図である。
図3図2の3-3線断面図である。
図4】一実施形態に係るラーメン架構を示す斜視図である。
図5】一実施形態に係る柱部材の支持構造を示す側面図である。
図6】一実施形態に係る柱部材の上端部の接合構造を示す側面図である。
図7】一実施形態に係る梁部材の端部の接合構造を示す平面図である。
図8】一実施形態に係る梁部材のヒンジ部が梁部材の剛部に接続された接続構造を示す平面図である。
図9図8の9-9線断面図である。
図10図8の10-10線断面図である。
図11】一実施形態に係る梁部材のヒンジ部が梁部材の剛部に接続された接続構造を示す平面図である。
図12】一実施形態に係る屋根構造物の梁間方向中央部において梁部材同士が接合された接合構造を示す平面図である。
図13】一実施形態に係る屋根構造物の梁間方向中央部において梁部材同士が接合された接合構造を示す平面図である。
図14】一実施形態に係る数値解析のモデルを示す斜視図である。
図15】一実施形態に係るラーメン架構に生じる曲げ応力分布を示す斜視図である。
図16】一実施形態に係るラーメン架構に生じる曲げ応力分布を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る建物について説明する。なお、各図に示される矢印Xは、建物10の梁間方向(以下、「梁間方向X」とする)を示し、矢印Yは、平面視にて矢印Xと直交する建物10の桁行方向(以下、「桁行方向Y」とする)を示し、矢印Zは、建物10の高さ方向(以下、「高さ方向Z」とする)を示している。
【0017】
(建物)
図1の斜視図、図2の側面図、及び図2の3-3線断面図である図3には、本実施形態に係る建物10が示されている。建物10は、基礎12上に構築されて1階を構成する鉄筋コンクリート造の下部構造物14と、下部構造物14上に構築されて2階を構成する鉄骨造の屋根構造物16とを有して構成されている。
【0018】
屋根構造物16は、平面視にて桁行方向Yに対して斜めになるようにして桁行方向Yへ1スパンずつずらして複数配置された第1ラーメン架構としての鉄骨造のラーメン架構18Aと、平面視にてラーメン架構18Aと斜めに交差するようにして桁行方向Yへ1スパンずつずらして複数配置された第2ラーメン架構としての鉄骨造のラーメン架構18Bとを有して構成されており、内部に無柱空間を形成している。
【0019】
図4の斜視図に示すように、ラーメン架構18Aは、第1梁部材としての梁部材20Aと、梁部材20Aの両端部に上端部が接合された第1柱部材としての一対の柱部材22Aとを有して構成されている。梁部材20A及び柱部材22Aは、H形鋼により形成されている。
【0020】
柱部材22Aは、脚部24Aが下部構造物14上にピン支持されている。また、梁部材20Aの一方の柱部材22A側に偏った位置には第1ヒンジ部としてのヒンジ部26Aが設けられている。具体的には、梁部材20Aは台形形状とされ、梁部材20Aに鉛直荷重が作用したときに曲げモーメントが0となる梁部材20Aの折れ曲り部30Aにヒンジ部26Aが設けられている。これらにより、ラーメン架構18Aは、偏心3ヒンジフレームを構成している。
【0021】
ラーメン架構18Bは、第2梁部材としての梁部材20Bと、梁部材20Bの両端部に上端部が接合された第2柱部材としての一対の柱部材22Bとを有して構成されている。梁部材20B及び柱部材22Bは、H形鋼により形成されている。
【0022】
柱部材22Bは、脚部24Bが下部構造物14上にピン支持されている。また、梁部材20Bの一方の柱部材22B側に偏った位置には第2ヒンジ部としてのヒンジ部26Bが設けられている。具体的には、梁部材20Bは台形形状とされ、梁部材20Bに鉛直荷重が作用したときに曲げモーメントが0となる梁部材20Bの折れ曲り部28Bにヒンジ部26Bが設けられている。これらにより、ラーメン架構18Bは、偏心3ヒンジフレームを構成している。
【0023】
図1に示すように、ラーメン架構18Aを構成する梁部材20Aのヒンジ部26Aは、ラーメン架構18Bを構成する梁部材20Bの剛部32Bに変位拘束されてレシプロカル的に接続され、ラーメン架構18Bを構成する梁部材20Bのヒンジ部26Bは、ラーメン架構18Aを構成する梁部材20Aの剛部32Aに変位拘束されてレシプロカル的に接続されている。ここで、剛部32A、32Bとは、梁部材20A、20Bにおいて、ヒンジ部が設けられていない部分を意味する。
【0024】
すなわち、柱部材22Aの脚部24Aがピン支持されたラーメン架構18Aと、柱部材22Bの脚部24Bがピン支持されたラーメン架構18Bとを平面視にて斜めに交差させ、ラーメン架構18Aを構成する梁部材20Aのヒンジ部26Aを、ラーメン架構18Bを構成する梁部材20Bの剛部32Bに接続し、ラーメン架構18Bを構成する梁部材20Bのヒンジ部26Bを、ラーメン架構18Aを構成する梁部材20Aの剛部32Aに接続することで、屋根構造物16はレシプロカル構造を構成している。
【0025】
図2に示すように、柱部材22Aと柱部材22Bとは、桁行方向Yに対して互いに反対方向へ傾いて交互に配置されてトラス構造を構成している。
【0026】
図5の側面図に示すように、柱部材22A、22Aは、下部構造物14を構成する大梁34の上フランジ36に脚部24A、24Bが接合されてピン支持されている。大梁34は、H形鋼により構成されている。
【0027】
柱部材22A、22Bの脚部24A、24Bの下面にはベースプレート38が設けられており、このベースプレート38の下面には接合プレート40、42が取り付けられている。また、大梁34の上フランジ36の上面には、接合プレート44、46が取り付けられている。そして、接合プレート40と接合プレート44、及び接合プレート42と接合プレート46をボルト及びナットで接合することにより、柱部材22A、22Aは大梁34に接合されてピン支持されている。
【0028】
図6の側面図、及び図6の7-7線断面図である図7に示すように、ラーメン架構18A、18Bの梁部材20A、20Bの端部は、ラーメン架構18A、18Bの柱部材22A、22Bの上端部に剛接合されている。
【0029】
柱部材22A、22Bの上端部の上面は、接合部材48の下面に設けられたベースプレート50の下面に、溶接接合されて剛接合されている。また、梁部材20A、20Bの端部は、上フランジ及び下フランジの端面を接合部材に溶接接合し、接合部材48にウェブ52をスプライスプレート54によりボルト及びナットで接合することにより、接合部材48に剛接合されている。これらにより、梁部材20A、20Bの端部は、柱部材22A、22Bの上端部に剛接合されている。また、接合部材48には、小梁56の端部がボルト及びナットによりピン接合されている。小梁56は、H形鋼により構成されている。
【0030】
図8の平面図、図8の9-9線断面図である図9、及び図8の10-10線断面図である図10に示すように、ラーメン架構18Aを構成する梁部材20Aのヒンジ部26Aは、ラーメン架構18Bを構成する梁部材20Bの剛部32Bに変位拘束されてレシプロカル的に接続されている。
【0031】
図9に示すように、梁部材20Aは、水平に配置されたH形鋼からなる横部材58Aと、斜めへ下がるように配置されたH形鋼からなる斜め部材60Aと、横部材58Aと斜め部材60AとをつなぐH形鋼からなる連結部材62Aとを有して構成されている。
【0032】
連結部材62Aの端部は、横部材58Aのウェブの端部に連結部材62Aのウェブの端部をスプライスプレート64によりボルト及びナットで接合することによって、横部材58Aの端部にピン接合されている。また、斜め部材60Aの端部は、連結部材62Aのウェブの端部に斜め部材60Aのウェブの端部をスプライスプレート64によりボルト及びナットで接合することによって、連結部材62Aの端部にピン接合されている。これらにより、連結部材62Aは、ヒンジ部26Aとなっている。すなわち、ヒンジ部26Aは、横部材58Aの端部と斜め部材60Aの端部とがピン接合された、台形形状の梁部材20Aの折れ曲り部30Aに形成されている。
【0033】
図10に示すように、梁部材20Bは、水平に配置されたH形鋼からなる横部材58Bと、斜めへ下がるように配置されたH形鋼からなる斜め部材60Bとを有して構成されている。
【0034】
斜め部材60Bの端部は、斜め部材60Bのウェブ及び上下フランジの端面を横部材58Bのウェブ及び上下フランジの端面に溶接接合することによって、横部材58Bの端部に剛接合されている。これにより、横部材58Bの端部と斜め部材60Bの端部とが剛接合された、台形形状の梁部材20Bの折れ曲り部30Bが剛部32Bとなっている。
【0035】
そして、図8に示すように、連結部材62Aのウェブ及び上下フランジの端面が、梁部材20Bの剛部32Bのウェブ及び上下フランジの側面に溶接接合されることにより、ラーメン架構18Aを構成する梁部材20Aのヒンジ部26Aは、ラーメン架構18Bを構成する梁部材20Bの剛部32Bに変位拘束されてレシプロカル的に接続されている。また、梁部材20Bの剛部32Bには、小梁56の端部がボルト及びナットによりピン接合されている。
【0036】
図11の平面図に示すように、ラーメン架構18Bを構成する梁部材20Bのヒンジ部26Bは、ラーメン架構18Aを構成する梁部材20Aの剛部32Aに変位拘束されてレシプロカル的に接続されている。
【0037】
梁部材20Bは、水平に配置されたH形鋼からなる横部材58Bと、斜めへ下がるように配置されたH形鋼からなる斜め部材60Bと、横部材58Bと斜め部材60BとをつなぐH形鋼からなる連結部材62Bとを有して構成されている。
【0038】
連結部材62Bの端部は、横部材58Bのウェブの端部に連結部材62Bのウェブの端部をスプライスプレート64によりボルト及びナットで接合することによって、横部材58Bの端部にピン接合されている。また、斜め部材60Bの端部は、連結部材62Bのウェブの端部に斜め部材60Bのウェブの端部をスプライスプレート64によりボルト及びナットで接合することによって、連結部材62Bの端部にピン接合されている。これらにより、連結部材62Bは、ヒンジ部26Bとなっている。すなわち、ヒンジ部26Bは、横部材58Bの端部と斜め部材60Bの端部とがピン接合された、台形形状の梁部材20Bの折れ曲り部28Bに形成されている。
【0039】
梁部材20Aは、水平に配置されたH形鋼からなる横部材58Aと、斜めへ下がるように配置されたH形鋼からなる斜め部材60Aとを有して構成されている。
【0040】
斜め部材60Aの端部は、横部材58Aのウェブ及び上下フランジの端面に斜め部材60Aのウェブ及び上下フランジの端面を溶接接合することによって、横部材58Aの端部に剛接合されている。これにより、横部材58Aの端部と斜め部材60Aの端部とが剛接合された、台形形状の梁部材20Aの折れ曲り部28Aが剛部32Aとなっている。
【0041】
そして、連結部材62Bのウェブ及び上下フランジの端面が、梁部材20Aの剛部32Aのウェブ及び上下フランジの側面に溶接接合されることにより、ラーメン架構18Bを構成する梁部材20Bのヒンジ部26Bは、ラーメン架構18Aを構成する梁部材20Aの剛部32Aに変位拘束されてレシプロカル的に接続されている。また、梁部材20Aの剛部32Aには、小梁56の端部がボルト及びナットによりピン接合されている。
【0042】
図12の平面図、及び図13の平面図に示すように、屋根構造物16の梁間方向X中央部において、ラーメン架構18A、18Bを構成する梁部材20A、20Bは、ラーメン架構18B、18Aを構成する梁部材20B、20Aに剛接合されている。また、梁部材20A、20Bには、小梁56の端部がボルト及びナットによりピン接合されている。
【0043】
(効果)
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0044】
本実施形態の建物10によれば、図1及び図4に示すように、柱部材22Aの脚部24Aがピン支持されたラーメン架構18Aと柱部材22Bの脚部24Bがピン支持されたラーメン架構18Bとを平面視にて斜めに交差させ、梁部材20Aのヒンジ部26Aを梁部材20Bの剛部32Bに接続し、梁部材20Bのヒンジ部26Bを梁部材20Aの剛部32Aに接続することで、レシプロカル構造を構成する。
【0045】
このレシプロカル構造により、ラーメン架構18A及びラーメン架構18Bに作用する水平荷重に対して応力状態を均質化することができる。これにより、ラーメン架構18A及びラーメン架構18Bを断面積の小さい部材で構成することができる。
【0046】
また、このレシプロカル構造は、点対称性を有さないものなので、広がりに制約が少ない大きな建物空間を構築することができる。
【0047】
図15の斜視図、及び図16の斜視図は、本実施形態の建物10の効果を確認するために実施したモデル66に対する数値解析の結果を示したものである。
【0048】
図14の斜視図に示すように、モデル66は、柱部材22Aの脚部24Aがピン支持されて偏心3ヒンジフレームを構成するラーメン架構18Aと、柱部材22Bの脚部24Bがピン支持されて偏心3ヒンジフレームを構成するラーメン架構18Bとを対向して配置し、ラーメン架構18Aを構成する梁部材20Aのヒンジ部26Aを、接続部材68によりラーメン架構18Bを構成する梁部材20Bの剛部32Bに変位拘束してレシプロカル的に接続するとともに、ラーメン架構18Bを構成する梁部材20Bのヒンジ部26Bを、接続部材70によりラーメン架構18Aを構成する梁部材20Aの剛部32Aに変位拘束してレシプロカル的に接続したものである。
【0049】
図15に示すように、ラーメン架構18A、18Bの梁部材20A、20Bの全長に渡って等分布の鉛直荷重(長期荷重)が作用した場合、ラーメン架構18A、18Bを2ヒンジフレームとしたときに曲げモーメントが0になる梁部材20A、20Bの位置にヒンジ部26A、26Bが設けられているので、曲げ応力72の分布は、ラーメン架構18A、18Bを2ヒンジフレームとしたときと略同じになる。
【0050】
図16に示すように、ラーメン架構18A、18Bの左側の柱部材22A、22Bの全長に渡って等分布の水平荷重が作用した場合、梁部材20A、20Bのヒンジ部26A、26Bは接続部材68、70により梁部材20B、20Aの剛部32B、32Aに変位拘束してレシプロカル的に接続されているので、ヒンジ部26A、26Bから剛部32B、32Aへせん断力が移行し、これによって梁部材20A、20Bに生じる曲げ応力74の最大値は、ラーメン架構18A、18Bを2ヒンジフレームとしたときと略同じになる。
【0051】
また、本実施形態の建物10によれば、図4に示すように、梁部材20A及び梁部材20Bを台形形状とし、鉛直荷重に対する曲げモーメントが0となる梁部材20Aの折れ曲り部30Aにヒンジ部26Aを設け、鉛直荷重に対する曲げモーメントが0となる梁部材20Bの折れ曲り部28Bにヒンジ部26Bを設けることによって、梁部材20A及び梁部材20Bを軸力材として扱うことができ、梁部材20A及び梁部材20Bを断面積の小さい部材で構成することができる。
【0052】
さらに、本実施形態の建物10によれば、図9に示すように、梁部材20A、20Bの折れ曲がり部30A、28Bにヒンジ部26A、26Bが設けられているので、この部分の横部材58A、58Bと斜め部材60A、60Bとを連結部材62A、62Bにピン接合すればよいので、現場での溶接作業が低減され、施工性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態の建物10によれば、図2に示すように、柱部材22Aと柱部材22Bとでトラス構造を構成することで、柱部材22Aと柱部材22Bとの間にブレース部材を設けなくても、水平耐力の高い建物側壁部を構成することができる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
10 建物
18A ラーメン架構(第1ラーメン架構)
18B ラーメン架構(第2ラーメン架構)
20A 梁部材(第1梁部材)
20B 梁部材(第2梁部材)
22A 柱部材(第1柱部材)
22B 柱部材(第2柱部材)
26A ヒンジ部(第1ヒンジ部)
26B ヒンジ部(第2ヒンジ部)
28B、30A 折れ曲り部
32A、32B 剛部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16