(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187723
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】せん断パネル型ダンパ
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20221213BHJP
E04B 1/98 20060101ALI20221213BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20221213BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
E04H9/02 321B
E04B1/98 E
F16F15/02 Z
F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095866
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢也
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2E001DG01
2E001FA03
2E139AA01
2E139AC19
2E139AC33
2E139BA04
2E139BD22
3J048AA06
3J048BC09
3J048BE10
3J048EA38
3J066AA26
3J066BA03
3J066BB04
3J066BC03
3J066BD07
3J066BG05
(57)【要約】
【課題】鋼製パネルの降伏後におけるせん断パネル型ダンパの過大な耐力上昇を抑制することを目的とする。
【解決手段】せん断パネル型ダンパ30は、相対移動する一対の上側梁14及び下側梁16に連結されるとともに、一対の対角線DL上に複数の開口40がそれぞれ形成された矩形状の鋼製パネル32を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対移動する一対の連結部材に連結されるとともに、一対の対角線上に複数の開口がそれぞれ形成された矩形状の鋼製パネルを備える、
せん断パネル型ダンパ。
【請求項2】
前記複数の開口は、前記一対の対角線の交点を通る中心線に対して対称に配置される、
請求項1に記載のせん断パネル型ダンパ。
【請求項3】
前記複数の開口のうち1つの開口は、前記一対の対角線の交点上に配置される、
請求項1又は請求項2に記載のせん断パネル型ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、せん断パネル型ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
初期不整形状としての波形状部が、ウェブに形成されたせん断パネル型ダンパが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、開口がウェブに形成された振動エネルギー吸収デバイスが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-201893号公報
【特許文献2】特開2017-214746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、振動エネルギー吸収能力が求められるせん断パネル型ダンパでは、一般に、局部座屈による鋼製パネルの耐力劣化を避け、当該鋼製パネルを構成する鋼材が変形性能を十分に発揮し得るように設計される。
【0006】
この種のせん断パネル型ダンパでは、鋼製パネルの降伏後に、鋼製パネルに斜張力場が形成されるため、耐力が上昇する。
【0007】
しかしながら、せん断パネル型ダンパでは、構造設計の観点から、鋼製パネルの降伏後に過大な耐力上昇を示さず、降伏耐力を維持しながら鋼製パネルを安定的にせん断変形させ、振動エネルギーを吸収することが望ましい。
【0008】
本発明は、上記の事実を考慮し、鋼製パネルの降伏後におけるせん断パネル型ダンパの過大な耐力上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のせん断パネル型ダンパは、相対移動する一対の連結部材に連結されるとともに、一対の対角線上に複数の開口がそれぞれ形成された矩形状の鋼製パネルを備える。
【0010】
請求項1に係るせん断パネル型ダンパによれば、矩形状の鋼製パネルは、相対移動する一対の連結部材に連結される。これにより、一対の連結部材が相対移動すると、鋼製パネルがせん断変形する。このせん断変形に伴って鋼製パネルが降伏すると、振動エネルギーが吸収される。その後、鋼製パネルの変形量が大きくなると、鋼製パネルの一対の対角線に沿って斜張力場が発生する。この斜張力場によって、降伏後に鋼製パネルの耐力が上昇する。
【0011】
この対策として本発明では、鋼製パネルに複数の開口が形成される。複数の開口は、鋼製パネルの一対の対角線上に配置される。これらの開口によって、鋼製パネルの降伏後に、鋼製パネルの一対の対角線に沿った斜張力場が発生し難くなる。つまり、鋼製パネルの降伏後に、鋼製パネルの一対の対角線に沿った斜張力場の発生を遅らせることができる。したがって、鋼製パネルの降伏後におけるせん断パネル型ダンパの過大な耐力上昇を抑制することができる。
【0012】
また、本発明では、鋼製パネルの一対の対角線上に複数の開口を形成することにより、鋼製パネルに高性能鋼を使用せずに、鋼製パネルの降伏後におけるせん断パネル型ダンパの過大な耐力上昇を抑制することができる。したがって、鋼製パネルの材料コストを削減することができる。
【0013】
このように本発明では、鋼製パネルの材料コストを削減しつつ、鋼製パネルの降伏後におけるせん断パネル型ダンパの過大な耐力上昇を抑制することができる。
【0014】
請求項2に記載のせん断パネル型ダンパは、請求項1に記載のせん断パネル型ダンパにおいて、前記複数の開口は、前記一対の対角線の交点を通る中心線に対して対称に配置される。
【0015】
請求項2に係るせん断パネル型ダンパによれば、複数の開口は、一対の対角線の交点を通る中心線に対して対称に配置される。これにより、一対の連結部材が相対移動した場合に、鋼製パネルを安定的にせん断変形させることができる。したがって、鋼製パネルの降伏後におけるせん断パネル型ダンパの過大な耐力上昇を抑制しつつ、鋼製パネルの変形性能(エネルギー吸収性能)を高めることができる。
【0016】
請求項3に記載のせん断パネル型ダンパは、請求項1又は請求項2に記載のせん断パネル型ダンパにおいて、前記複数の開口のうち1つの開口は、前記一対の対角線の交点上に配置される。
【0017】
請求項3に係るせん断パネル型ダンパによれば、複数の開口のうち1つの開口は、一対の対角線の交点上に配置される。この開口は、一対の対角線の各々に沿った斜張力場の発生を遅らせることができる。
【0018】
このように本発明では、一対の対角線の交点上に開口を配置することにより、鋼製パネルに形成する開口の数を低減しつつ、一対の対角線に沿った斜張力場の発生を遅らせることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、鋼製パネルの降伏後におけるせん断パネル型ダンパの過大な耐力上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係るせん断パネル型ダンパが設置された架構を示す立面図である。
【
図2】
図1に示されるせん断パネル型ダンパを示す拡大立面図、及び上面図である。
【
図3】比較例に係るせん断パネル型ダンパを示す
図2に対応する拡大立面図、及び上面図である。
【
図4】一実施形態、及び比較例に係るせん断パネル型ダンパの荷重変形関係を示すグラフである。
【
図5】応力解析に用いたせん断パネル型ダンパの基本解析モデルを示す斜視図である。
【
図6】(A)~(C)は、応力解析に用いたせん断パネル型ダンパの解析モデルを示す立面図である。
【
図7】(A)、(B)は、応力解析に用いたせん断パネル型ダンパの解析モデルを示す立面図である。
【
図8】(A)~(C)は、各解析モデルに対応する解析結果(荷重変形関係)を示すグラフである。
【
図9】(A)、(B)は、各解析モデルに対応する解析結果(荷重変形関係)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るせん断パネル型ダンパについて説明する。
【0022】
(制振間柱)
図1には、一例として、本実施形態に係るせん断パネル型ダンパ30を備える制振間柱20が示されている。制振間柱20は、架構10の構面内に設置されている。架構10は、一対の柱12と、一対の柱に架設された上側梁14及び下側梁16とを有している。
【0023】
ここで、架構10は、地震時にせん断変形(層間変形)する。この架構10のせん断変形に伴って、上側梁14及び下側梁16が水平方向に相対移動する。このように地震時に相対移動する上側梁14及び下側梁16に、制振間柱20が連結されている。
【0024】
制振間柱20は、上側連結部材22、下側連結部材24、及びせん断パネル型ダンパ30を備えている。上側連結部材22、及び下側連結部材24は、例えば、H形鋼によって形成されており、材軸方向を上下方向として配置されている。
【0025】
上側連結部材22は、その上端部(一端部)が上側梁14の材軸方向の中央部の下面に接合されており、当該中央部から下方へ延出している。この上側連結部材22は、地震時に、上側梁14と一体に水平方向へ移動する。
【0026】
一方、下側連結部材24は、その下端部(一端部)が下側梁16の材軸方向の中央部の上面に接合されており、当該中央部から上方へ延出している。この下側連結部材24は、地震時に、下側梁16と一体に水平方向に移動する。この上側連結部材22の下端部(他端部)と、下側連結部材24の上端部(他端部)とが、せん断パネル型ダンパ30を介して連結されている。
【0027】
なお、上側連結部材22、及び下側連結部材24は、一対の連結部材の一例である。
【0028】
(せん断パネル型ダンパ)
せん断パネル型ダンパ30は、鋼製パネル32と、一対の縦スチフナ34と、一対の横スチフナ36とを有している。鋼製パネル32は、矩形状の鋼板によって形成されており、架構10の構面に沿って配置されている。また、鋼製パネル32は、例えば、普通鋼によって形成されている。
【0029】
鋼製パネル32の上端部は、上側連結部材22の下端部に連結されている。また、鋼製パネル32の下端部は、下側連結部材24の上端部に連結されている。これにより、地震時に、上側梁14と下側梁16とが水平方向に相対移動すると、上側連結部材22及び下側連結部材24を介して鋼製パネル32にせん断力が入力され、当該鋼製パネル32がせん断変形する。
【0030】
一対の縦スチフナ34は、鋼製パネル32の横幅方向(左右方向)の両端部に沿って設けられている。また、一対の横スチフナ36は、鋼製パネル32の縦幅方向(上下方向)の両端部に沿って設けられている。これらの縦スチフナ34及び横スチフナ36によって、地震時における鋼製パネル32の座屈が抑制されている。
【0031】
なお、一対の縦スチフナ34、及び一対の横スチフナ36は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0032】
図2に示されるように、鋼製パネル32には、複数の開口40が形成されている。複数の開口40は、鋼製パネル32を厚み方向に貫通する円形状(真円状)の貫通孔とされている。これらの開口40は、鋼製パネル32の一対の対角線DL上に形成されている。これにより、鋼製パネル32の降伏後に、鋼製パネル32に斜張力場R(
図3参照)が発生し難くなっている。
【0033】
より具体的には、複数の開口40は、各対角線DL上に間隔を空けて配列されている。また、複数の開口40は、その中心Cが各対角線DL上に位置するように配置されている。さらに、複数の開口40は、一対の対角線DLの交点Pを通る中心線CLに対して対称(線対称)に配置されている。
【0034】
なお、各開口40の中心Cは、必ずしも対角線DL上に位置する必要はなく、開口40が対角線DLを横切っていれば良い。また、開口40は、真円状に限らず、楕円形状や多角形状等であっても良い。
【0035】
複数の開口40のうち1つの開口40Aは、一対の対角線DLの交点P上に配置されている。この開口40Aは、他の複数の開口40よりも大きくされている。より具体的には、開口40Aの開口面積(直径)は、他の複数の開口40の開口面積(直径)よりも大きくされている。
【0036】
なお、他の複数の開口40の大きさは、同様とされている。また、複数の開口40の大きさや数、配置は、適宜変更可能である。
【0037】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0038】
先ず、比較例に係るせん断パネル型ダンパの荷重変形関係について説明する。
図3に示されるように、比較例に係るせん断パネル型ダンパ100は、鋼製パネル32に開口が形成されていない点で、本実施形態に係るせん断パネル型ダンパ30と相違し、その他の構成は、本実施形態に係るせん断パネル型ダンパ30と同じである。
【0039】
図4には、比較例に係るせん断パネル型ダンパ100の荷重変形関係を示すグラフG100が示されている。このグラフG100から分かるように、比較例に係るせん断パネル型ダンパ100では、鋼製パネル32の降伏後(せん断降伏後)、すなわち鋼製パネル32に作用する荷重(せん断力)が降伏せん断力Q
yに達した後、せん断パネル型ダンパ100の変形角(変形量)が大きくなるに従って、せん断パネル型ダンパ100の耐力(荷重)が上昇している。この場合、せん断パネル型ダンパ100の周辺部材の構造設計において、せん断パネル型ダンパ100の耐力上昇を見込んだ断面設計が必要となる。
【0040】
そのため、構造設計の観点から、鋼製パネル32の降伏後は、せん断パネル型ダンパ100の過大な耐力上昇を抑制することが望ましい。特に、鋼製パネル32の降伏後は、せん断パネル型ダンパ100の耐力を一定に維持することが望ましい。
【0041】
ここで、鋼製パネル32の降伏後に、せん断パネル型ダンパ100の変形角が大きくなると、
図3に示されるように、鋼製パネル32の対角線DL上に斜張力場Rが形成される。この斜張力場Rによって、せん断パネル型ダンパ100の耐力が上昇すると考えられる。なお、
図3では、理解を容易にするために、斜張力場Rを模式的に示している。
【0042】
そこで、本実施形態では、
図2に示されるように、鋼製パネル32に複数の開口40を形成している。複数の開口40は、鋼製パネル32の一対の対角線DL上に配置されている。
【0043】
これにより、鋼製パネル32の降伏後に、鋼製パネル32の一対の対角線DLに沿った斜張力場R(
図3参照)が発生し難くなる。つまり、鋼製パネル32の降伏後に、鋼製パネル32の一対の対角線DLに沿った斜張力場Rの発生を遅らせることができる。この結果、例えば、
図4に示されるグラフG30のように、鋼製パネル32の降伏後におけるせん断パネル型ダンパ30の過大な耐力上昇を抑制することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、鋼製パネル32の降伏後に、せん断パネル型ダンパ30の耐力(荷重)が、降伏せん断力Qyの周辺で維持されるように、開口40の大きさ及び数が設定されている。つまり、本実施形態では、鋼製パネル32の降伏後に、せん断パネル型ダンパ30の耐力が、降伏せん断力Qyの周辺で維持されるように、目標とするせん断パネル型ダンパ30の荷重変形関係が設定されている。ここでいう降伏せん断力Qy(目標せん断力)の周辺とは、例えば、降伏せん断力Qyの±20%の範囲を意味する。
【0045】
なお、降伏せん断力Qyは、目標せん断力(目標せん断耐力)の一例であり、せん断パネル型ダンパ30が目標とする荷重変形関係(目標荷重変形関係)は、要求請求に応じて適宜変更可能である。
【0046】
また、本実施形態では、鋼製パネル32の一対の対角線DL上に複数の開口40を形成することにより、鋼製パネル32に高性能鋼を使用せずに、鋼製パネル32の降伏後におけるせん断パネル型ダンパ30の過大な耐力上昇を抑制することができる。したがって、鋼製パネル32の材料コストを削減することができる。
【0047】
このように本実施形態では、鋼製パネル32の材料コストを削減しつつ、鋼製パネル32の降伏後におけるせん断パネル型ダンパ30の過大な耐力上昇を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、鋼製パネル32の一対の対角線DL上にのみ複数の開口40が形成されている。換言すると、本実施形態では、鋼製パネル32における一対の対角線DL上から外れた部位には、開口が形成されていない。
【0049】
ここで、鋼製パネル32における一対の対角線DL上から外れた部位に開口を形成すると、鋼製パネル32の初期剛性や降伏耐力が低下し、目標とする荷重変形関係が得られない可能性がある。
【0050】
これに対して本実施形態では、前述したように、鋼製パネル32の一対の対角線DL上にのみ複数の開口40が形成されている。これにより、鋼製パネル32の初期剛性や降伏耐力の低下が抑制される。したがって、鋼製パネル32の降伏後におけるせん断パネル型ダンパ30の過大な耐力上昇を抑制しつつ、鋼製パネル32の荷重変形関係を、目標とする荷重変形関係に近づけることができる。
【0051】
また、本実施形態では、複数の開口40が、一対の対角線DLの交点を通る中心線CLに対して対称に配置されている。これにより、地震時に、上側梁14及び下側梁16が水平方向に相対移動した場合に、鋼製パネル32を安定的にせん断変形させることができる。したがって、鋼製パネル32の降伏後におけるせん断パネル型ダンパ30の過大な耐力上昇を抑制しつつ、鋼製パネル32の変形性能(エネルギー吸収性能)を高めることができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、複数の開口40の中心Cが、一対の対角線DL上に配置されている。これにより、地震時に、上側梁14及び下側梁16が水平方向に相対移動した場合に、鋼製パネル32をさらに安定的にせん断変形させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、複数の開口40のうち1つの開口40Aが、一対の対角線DLの交点P上に配置されている。この開口40Aは、一対の対角線DLの各々に沿った斜張力場Rの発生を遅らせることができる。
【0054】
したがって、一対の対角線DLの交点P上に開口40Aを配置することにより、鋼製パネル32に形成する開口40の数を低減しつつ、一対の対角線DLに沿った斜張力場Rの発生を遅らせることができる。
【0055】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0056】
上記実施形態では、鋼製パネル32が、一対の連結部材としての制振間柱20の上側連結部材22及び下側連結部材24に連結されている。しかし、鋼製パネル32は、地震時に、相対移動する一対の連結部材に連結され、この一対の連結部材の相対移動に伴ってせん断変形可能であれば良い。
【0057】
したがって、せん断パネル型ダンパは、例えば、一対の連結部材としての上側梁14及び下側梁16に鋼製パネルが連結される鋼製耐震壁であっても良い。また、せん断パネル型ダンパは、一対の連結部材のとしての一対の境界梁に鋼製パネルが連結される制振ダンパであっても良い。
【0058】
また、目標とする鋼製パネル32の荷重変形関係は、適宜変更可能である。
【0059】
(応力解析)
次に、せん断パネル型ダンパの応力解析について説明する。
【0060】
本応力解析では、せん断パネル型ダンパの解析モデルに、逆対称曲げせん断力を作用させ、荷重変形関係を算出した。
【0061】
(解析モデル)
図5には、実施例に係るせん断パネル型ダンパ30の基本解析モデルM0が示されている。この基本解析モデルM0には、普通鋼(SS400)を想定した機械的性質が設定されている。また、基本解析モデルM0では、鋼製パネル32及び一対の縦スチフナ34の座屈に先行して、鋼製パネル32が降伏するように設定されている。なお、基本解析モデルM0では、一対の横スチフナ36(
図1参照)が省略されている。
【0062】
本応力解析では、基本解析モデルM0の鋼製パネル32に形成される開口の数及び配置が異なる解析モデルM1~M5を用いた。
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)、
図7(A)、及び
図7(B)には、解析モデルM1~M5が示されている。なお、解析モデルM1は、上記実施形態に係るせん断パネル型ダンパ30(
図2参照)をモデル化したものである。
【0063】
(解析条件)
図5に示されるように、基本解析モデルM0の一端(一方の縦スチフナ34)を全固定とし、他端(他方の縦スチフナ34)の下端に設定された載荷点Fから矢印Y方向に強制変位を与え、鋼製パネル32に逆対称曲げせん断力を作用させた。この際、基本解析モデルM0の他端は、載荷点Fから載荷方向(矢印Y方向)、及び上下方向(矢印X方向)の並進変位のみを許容し、鋼製パネル32の面外方向(矢印Z方向)の変位を拘束した。また、基本解析モデルM0を構成する鋼材の非線形特性は、移動硬化型バイリニアとした。
【0064】
(解析結果)
図8(A)、
図8(B)、
図8(C)、
図9(A)、及び
図9(B)には、各解析モデルM1~M5の荷重変形関係を示すグラフG1~G5、及び目標とする荷重変形関係を示すグラフGTが示されている。各グラフG1~G5,GTの横軸は、解析モデルM1~M5の変形角(rad)であり、縦軸は、降伏せん断力
wQ
pに対する載荷せん断力Q(=Q/
wQ
p)である。
【0065】
なお、目標とするグラフGTは、適宜変更可能であるが、本解析では、鋼製パネル32の降伏後に、せん断パネル型ダンパが降伏せん断力
wQ
p(
図4の降伏せん断力Q
yに相当)を維持するように設定されている。
【0066】
図8(A)、
図8(B)、
図8(C)、
図9(A)、及び
図9(B)に示されるように、各解析モデルM1~M5では、変形角が0.1[rad]までの範囲では、鋼製パネル32の降伏後の過大な耐力上昇が抑制されたことが分かる。
【0067】
次に、
図8(A)に示されるように、解析モデルM1では、鋼製パネル32の降伏後の耐力が略一定となり、かつ、目標とするグラフGTに近似した。
【0068】
次に、
図8(B)に示されるように、解析モデルM1の外周側に4つの開口40を追加した解析モデルM2では、鋼製パネル32の降伏後の耐力が、目標とするグラフGTよりも若干低下したが、略一定となった。
【0069】
次に、
図8(C)に示されるように、解析モデルM1の外周側から4つの開口40を削除した解析モデルM3では、鋼製パネル32の降伏後の耐力が、目標とするグラフGTよりも若干上昇したが、略一定となった。
【0070】
次に、
図9(A)に示されるように、解析モデルM1の中央側から4つの開口40の削除した解析モデルM4では、鋼製パネル32の降伏後の耐力が、目標とするグラフGTよりも上昇したが、その上昇率は20%以下となった。
【0071】
次に、
図9(B)に示されるように、解析モデルM1から中央部から開口40Aの削除した解析モデルM5では、鋼製パネル32の降伏後の耐力が、目標とするグラフGTよりも上昇したが、その上昇率は20%以下となった。また、解析モデルM5は、解析モデルM4と同様に荷重変形関係を示した。
【0072】
以上の解析結果から、鋼製パネル32の一対の対角線DL上に複数の開口40を配置することにより、鋼製パネル32の降伏後におけるせん断パネル型ダンパの過大な耐力上昇が抑制されることが分かる。
【0073】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
22 上側連結部材(連結部材)
24 下側連結部材(連結部材)
30 せん断パネル型ダンパ
32 鋼製パネル
40 開口
40A 開口
CL 中心線
DL 対角線