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特開2022-187725次亜塩素酸濃度測定装置、次亜塩素酸濃度測定プログラム及び次亜塩素酸濃度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187725
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】次亜塩素酸濃度測定装置、次亜塩素酸濃度測定プログラム及び次亜塩素酸濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20221213BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20221213BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01N21/78 A
G01N31/00 Q
G01N31/22 121N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095870
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000223045
【氏名又は名称】東洋濾紙株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武内 義弥
(72)【発明者】
【氏名】間中 淳
(72)【発明者】
【氏名】袋布 昌幹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 慶之
【テーマコード(参考)】
2G042
2G054
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA04
2G042BA07
2G042BA10
2G042BB18
2G042BE03
2G042FA13
2G042FB07
2G042HA07
2G054AA02
2G054AB10
2G054CA03
2G054CA10
2G054CD04
2G054CE02
2G054EA05
2G054EB05
2G054FA12
2G054FA29
2G054FA33
2G054GA03
2G054GB10
2G054GE06
2G054GE07
2G054GE08
2G054JA01
2G054JA04
2G054JA05
2G054JA07
(57)【要約】
【課題】 簡易迅速かつ正確に液体中の次亜塩素酸濃度を測定可能な次亜塩素酸濃度測定装置、次亜塩素酸濃度測定プログラム及び次亜塩素酸濃度測定方法を提供する。
【解決手段】 液体中の次亜塩素酸濃度を測定するための次亜塩素酸濃度測定装置であって、液体中の成分に応じた呈色反応を示す試験紙の呈色反応領域を撮影する撮影部と、撮影部により撮影した試験紙の画像データに基づいて、液体の次亜塩素酸濃度を算出する算出部と、算出部により算出された次亜塩素酸濃度を表示する表示部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の次亜塩素酸濃度を測定するための次亜塩素酸濃度測定装置であって、
前記液体中の成分に応じた呈色反応を示す試験紙の呈色反応領域を撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影した前記試験紙の画像データに基づいて、前記液体の次亜塩素酸濃度を算出する算出部と、
前記算出部により算出された次亜塩素酸濃度を表示する表示部と
を備えることを特徴とする次亜塩素酸濃度測定装置。
【請求項2】
前記撮影部により撮影した前記試験紙の画像データに基づいて、前記液体のpH値と総残留塩素濃度とを測定する測定部を更に備え、
前記算出部は、前記測定部により測定したpH値と総残留塩素濃度とに基づいて、前記液体の次亜塩素酸濃度を算出するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の次亜塩素酸濃度測定装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記次亜塩素酸濃度と共に前記測定部により測定された前記pH値及び前記総残留塩素濃度を表示可能に構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の次亜塩素酸濃度測定装置。
【請求項4】
前記撮影部は、前記試験紙と共に、pH用カラーチャート及び総残留塩素濃度用カラーチャートを撮影可能に構成されており、
前記測定部は、前記試験紙の呈色反応領域から特定された色情報と、前記pH用カラーチャート及び前記総残留塩素濃度用カラーチャートから特定された色情報とを比較することにより、前記pH値及び前記総残留塩素濃度を測定するよう構成されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の次亜塩素酸濃度測定装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記次亜塩素酸濃度を数値として表示するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の次亜塩素酸濃度測定装置。
【請求項6】
スマートフォン又はタブレット端末である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の次亜塩素酸濃度測定装置。
【請求項7】
液体中の成分に応じた呈色反応を示す試験紙の画像データに基づいて、前記液体の次亜塩素酸濃度を算出する算出処理と、
算出された次亜塩素酸濃度を表示する表示処理と
を次亜塩素酸濃度測定装置に実行させる
ことを特徴とする次亜塩素酸濃度測定プログラム。
【請求項8】
液体中の次亜塩素酸濃度を測定するための次亜塩素酸濃度測定方法であって、
前記液体中の成分に応じた呈色反応を示す試験紙の呈色反応領域を撮影する撮影工程と、
前記撮影工程により撮影した前記試験紙の画像データに基づいて、前記液体の次亜塩素酸濃度を算出する算出工程と、
前記算出工程により算出された次亜塩素酸濃度を表示する表示工程と
を含むことを特徴とする次亜塩素酸濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸濃度測定装置、次亜塩素酸濃度測定プログラム及び次亜塩素酸濃度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、福祉、医療及び農業等の分野において使用される殺菌料として、次亜塩素酸水が広く使用されている。また、従来、測定対象となる次亜塩素酸水に含浸させるという極めて簡便な方法により、該次亜塩素酸水の総残留塩素濃度とpH値とを同時に測定することが可能なクロール試験紙が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】https://www.advantec.co.jp/uploads/service_support/download/catalog/16-03-6_CHLORINE%EF%BC%880-100ppm%20%E6%AC%A1%E4%BA%9C%E5%A1%A9%E7%B4%A0%E9%85%B8%E6%B0%B4%E7%94%A8%EF%BC%89_191200.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のクロール試験紙では、次亜塩素酸水中の総残留塩素濃度を測定することが可能であるものの、殺菌効果が高い次亜塩素酸の濃度を測定することができなかった。すなわち、総残留塩素には、殺菌効果の高い次亜塩素酸だけではなく、殺菌効果の低い次亜塩素酸イオンも含まれているため、総残留塩素濃度の測定のみでは、次亜塩素酸水の殺菌力を正確に把握することが困難である。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易迅速かつ正確に液体中の次亜塩素酸濃度を測定可能な次亜塩素酸濃度測定装置、次亜塩素酸濃度測定プログラム及び次亜塩素酸濃度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係る次亜塩素酸濃度測定装置は、液体中の次亜塩素酸濃度を測定するための次亜塩素酸濃度測定装置であって、前記液体中の成分に応じた呈色反応を示す試験紙の呈色反応領域を撮影する撮影部と、前記撮影部により撮影した前記試験紙の画像データに基づいて、前記液体の次亜塩素酸濃度を算出する算出部と、前記算出部により算出された次亜塩素酸濃度を表示する表示部とを備えることを特徴とする。
【0007】
前記撮影部により撮影した前記試験紙の画像データに基づいて、前記液体のpH値と総残留塩素濃度とを測定する測定部を更に備え、前記算出部は、前記測定部により測定したpH値と総残留塩素濃度とに基づいて、前記液体の次亜塩素酸濃度を算出するように構成されていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る次亜塩素酸濃度測定装置において、前記表示部は、前記次亜塩素酸濃度と共に前記測定部により測定された前記pH値及び前記総残留塩素濃度を表示可能に構成されていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る次亜塩素酸濃度測定装置において、前記撮影部は、前記試験紙と共に、pH用カラーチャート及び総残留塩素濃度用カラーチャートを撮影可能に構成されており、前記測定部は、前記試験紙の呈色反応領域から特定された色情報と、前記pH用カラーチャート及び前記総残留塩素濃度用カラーチャートから特定された色情報とを比較することにより、前記pH値及び前記総残留塩素濃度を測定するよう構成されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る次亜塩素酸濃度測定装置において、前記表示部は、前記次亜塩素酸濃度を数値として表示するように構成されてもよい。
【0011】
本発明に係る次亜塩素酸濃度測定装置は、スマートフォン又はタブレット端末であってもよい。
【0012】
また、本発明に係る次亜塩素酸濃度測定プログラムは、液体中の成分に応じた呈色反応を示す試験紙の画像データに基づいて、前記液体の次亜塩素酸濃度を算出する算出処理と、算出された次亜塩素酸濃度を表示する表示処理とを次亜塩素酸濃度測定装置に実行させることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明に係る次亜塩素酸濃度測定方法は、液体中の次亜塩素酸濃度を測定するための次亜塩素酸濃度測定方法であって、前記液体中の成分に応じた呈色反応を示す試験紙の呈色反応領域を撮影する撮影工程と、前記撮影工程により撮影した前記試験紙の画像データに基づいて、前記液体の次亜塩素酸濃度を算出する算出工程と、前記算出工程により算出された次亜塩素酸濃度を表示する表示工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易迅速かつ正確に液体中の次亜塩素酸濃度を測定可能な次亜塩素酸濃度測定装置、次亜塩素酸濃度測定プログラム及び次亜塩素酸濃度測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置を示す図である。
図2】本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置の記憶部の構成を示す図である。
図3】本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置の制御部の構成を示す図である。
図4】次亜塩素酸の存在比率とpHとの関係を表す相関グラフである。
図5】本実施形態に係る試験紙をカラーチャート台紙に載置させた状態を示す図である。
図6】本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置が試験紙及びカラーチャート台紙を撮影する状態を示す図である。
図7】本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置による測定の測定結果を表示した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本実施形態においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0017】
[次亜塩素酸濃度測定装置の全体構成]
本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1は、次亜塩素酸濃度を測定する測定者が所持するスマートフォンやタブレット端末等のモバイルデバイスであり、液体中の成分に応じた呈色反応を示す試験紙を用いて液体中の次亜塩素酸濃度を測定するように構成されている。具体的には、液体のpH値及び総残留塩素に応じた呈色反応を示す試験紙2を用いて、液体中の次亜塩素酸濃度を測定するように構成されている。
【0018】
ここで、「総残留塩素」とは、殺菌力の高い遊離残留塩素と殺菌力の低い結合塩素との総称をいうものとし、「遊離残留塩素」とは、塩素ガス(Cl)、次亜塩素酸(HOCl)及び次亜塩素酸イオン(ClO)で構成されたものをいう。また、「次亜塩素酸」とは、遊離残留塩素のうち、HOClとして存在するものであり、遊離残留塩素に存在する次亜塩素酸イオンに比べて高い殺菌力を有する成分である。
【0019】
また、図4に示すように、遊離残留塩素に存在する塩素ガス、次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンは、液体のpHに応じてその存在比率が変化する。具体的には、pH4以下では塩素ガスと次亜塩素酸、pH4~5ではほぼ次亜塩素酸、pH5~10では次亜塩素酸と次亜塩素酸イオン、pH10以上ではほぼ次亜塩素酸イオンとして存在している。
【0020】
本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1に用いられる試験紙2としては、図5に示すように、液体中のpHに反応して呈色するpH呈色反応領域2aと、液体中の総残留塩素に反応して呈色する塩素呈色反応領域2bとを備えるクロール試験紙を好適に用いることが可能である。ただし、これに限定されず、例えば、pH測定用の試験紙と、総残留塩素測定用の試験紙とをそれぞれ用いても良い。また、pH呈色反応領域2aの測定範囲は、例えばpH4~8に設定することができ、塩素呈色反応領域2bの測定範囲は、0~100mg/L(ppm)に設定することができるが、これに限定されるものではない。なお、試験紙2は、種々の公知の構成を備えるものを任意に用いることが可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0021】
また、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1において測定対象となる液体は、例えば、次亜塩素酸水(酸性電解水)が挙げられる。次亜塩素酸水は、塩酸(HCl)又は塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を電気分解することにより得られる次亜塩素酸(HClO)を主成分とする水溶液である。また、次亜塩素酸水は、pHが2.7以下かつ総残留塩素濃度が20~60ppmである場合には強酸性電解水に分類され、pHが2.7~5.0かつ総残留塩素濃度が10~60ppmである場合には弱酸性電解水に分類され、pHが5.0~6.5かつ総残留塩素濃度が10~80ppmである場合には微酸性電解水に分類される。
【0022】
次亜塩素酸水は、水中で殺菌作用を起こしたり、汚染物と反応したりすることにより、時の経過と共に次亜塩素酸濃度が減少するため、次亜塩素酸水の殺菌能力又は消毒液の基準等への適合を定期的に確認する必要がある。本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1は、測定対象となる液体に残存する次亜塩素酸の濃度を測定し、これを表示することで、測定対象となる液体の殺菌能力や消毒液の基準への適合性等を測定者に認識させることができる装置である。以下、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1の構成について、詳述する。
【0023】
次亜塩素酸濃度測定装置1は、図1に示すように、試験紙2の呈色反応領域2a,2bを撮影するための撮影部10と、次亜塩素酸濃度測定プログラム及び各種データを格納する記憶部11と、次亜塩素酸濃度測定装置1の制御を実行する制御部12と、次亜塩素酸濃度の測定結果を表示する表示部13とを備えている。
【0024】
撮影部10は、図6に示すように、測定対象となる液体に浸漬させることで呈色させた試験紙2の呈色反応領域2a,2bをカラーで撮影可能に構成されている。撮影部10は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等のモバイルデバイスが有するカメラ機能を転用することが可能である。本実施形態において、撮影部10は、種々の公知の技術を採用することができるため、その詳細な説明を省略する。
【0025】
また、撮影部10は、図6に示すように、試験紙2と共に、該試験紙2を保持したカラーチャート台紙3(比色表)を同時に撮影可能に構成されている。カラーチャート台紙3は、図5に示すように、pH測定用の色見本が複数配されたpH用カラーチャート3aと、総残留塩素濃度用の色見本が複数配された総残留塩素濃度用カラーチャート3bとを備えている。pH用カラーチャート3aは、本実施形態では、pH4の色見本、pH5の色見本、pH6の色見本、pH6.5の色見本、pH7の色見本、pH7.5の色見本及びpH8の色見本が一列に整列されて設けられている。また、総残留塩素濃度用カラーチャート3bは、本実施形態では、0ppmの色見本、10ppmの色見本、20ppmの色見本、30ppmの色見本、40ppmの色見本、60ppmの色見本及び100ppmの色見本が一列に整列されて設けられている。これらpH用カラーチャート3a及び総残留塩素濃度用カラーチャート3bは、試験紙2を載置可能な間隔をおいて離間して配されており、これにより、これらpH用カラーチャート3aと総残留塩素濃度用カラーチャート3bとの間に試験紙2を載置させた状態で、pH用カラーチャート3a及び総残留塩素濃度用カラーチャート3bと試験紙2の呈色反応領域2a,2bとを撮影部10により同時に撮影可能に構成されている。
【0026】
また、カラーチャート台紙3の四隅近傍には、図5に示すように、撮影部10による撮影を補助するための補助マーカ3cが示されている。具体的には、該補助マーカ3cは、略四角形状に印字された点であり、撮影部10により撮影される範囲を規定するように構成されている。このような補助マーカ3cにより、図6に示すように、pH用カラーチャート3a及び総残留塩素濃度用カラーチャート3bが撮影部10の画角内に収まっていることや、pH用カラーチャート3a及び総残留塩素濃度用カラーチャート3bが水平であること等を視覚的に確認することができる。また、撮影部10は、例えば、全ての補助マーカ3cが画角内に収まった際にのみ撮影が有効化されるよう構成されても良いし、四隅の補助マーカ3cを用いて撮影画像を水平にする画像処理等を実行可能に構成されても良い。
【0027】
記憶部11は、図2に示すように、制御部12が実行する次亜塩素酸濃度測定プログラムを格納するプログラム格納エリア11aと、プログラムの実行に必要となる各種データを格納するデータ格納エリア11bとを備えている。
【0028】
プログラム格納エリア11aには、液体中の次亜塩素酸濃度を測定するための次亜塩素酸濃度測定プログラムが格納されている。具体的には、次亜塩素酸濃度測定プログラムは、次亜塩素酸濃度測定装置1内にインストールされたアプリケーションであり、撮影部10で撮影された試験紙2の画像データを読み込むための読込処理と、液体のpH値及び総残留塩素に応じた呈色反応を示す試験紙2の画像データに基づいて、液体のpH値と総残留塩素濃度とを測定する測定処理と、測定したpH値と総残留塩素濃度とに基づいて、液体の次亜塩素酸濃度を算出する算出処理と、算出された次亜塩素酸濃度を表示する表示処理とを次亜塩素酸濃度測定装置1に実行させるように構成されている。
【0029】
データ格納エリア11bには、pH値及び総残留塩素濃度の色値データが予め格納されている。ここで、pH値の色値データとは、試験紙2のpH呈色反応領域2aが呈色しうる全ての色彩の色彩ごとに定められたpH値を示すデータであり、総残留塩素濃度の色値データとは、試験紙2の塩素呈色反応領域2bが呈色しうる全ての色彩の色彩ごとに定められた総残留塩素濃度を示すデータである。
【0030】
また、データ格納エリア11bには、撮影部10より取得した試験紙2及びカラーチャート台紙3の画像データと、後述する測定部12aで測定したpH値及び総残留塩素濃度のデータと、後述する算出部12bで算出した次亜塩素酸濃度のデータとが格納されている。
【0031】
制御部12は、ハードウェアプロセッサであるCPU、RAM、ROM等を含み、記憶部11に格納された次亜塩素酸濃度測定プログラムをRAMに展開し、これをCPUにより解釈及び実行することにより、以下で説明する測定部12a及び算出部12bの各機能を実現するように構成されている。
【0032】
具体的には、制御部12は、図3に示すように、撮影部10により撮影した試験紙2の画像データに基づいて、液体のpH値と総残留塩素濃度を測定する測定部12aと、測定部12aにより測定したpH値と総残留塩素濃度とに基づいて、液体の次亜塩素酸濃度を算出する算出部12bとを備えている。
【0033】
測定部12aは、撮影部10より撮影した試験紙2の画像データから、試験紙2の呈色反応領域2a,2bの呈色反応後の色彩を測定するとともに、該色彩に基づいて、液体のpH値と総残留塩素濃度を測定するように構成されている。具体的には、測定部12aは、試験紙2の呈色反応領域2a,2bから特定された色情報と、pH用カラーチャート3a及び総残留塩素濃度用カラーチャート3bから特定された色情報とを比較することにより、pH値及び総残留塩素濃度を測定するよう構成されている。また、測定部12aは、pH用カラーチャート3a及び総残留塩素濃度用カラーチャート3bの中に一致する色彩が存在しない場合には、データ格納エリア11bに格納された色値データを用いてpH値及び総残留塩素濃度を測定するように構成されている。この際、測定部12aは、カラーチャート台紙3に示された色彩のうち、該試験紙2の色彩と最も近似する色彩を特定し、該特定したカラーチャート台紙3の色彩とデータ格納エリア11bに格納された色値データとを用いて、pH値及び総残留塩素濃度を測定するように構成されても良い。
【0034】
算出部12bは、撮影部10により撮影した試験紙2の画像データに基づいて、液体の次亜塩素酸濃度を算出するように構成されている。具体的には、算出部12bは、測定部12aより取得したpH値と総残留塩素濃度に基づいて、液体の次亜塩素酸濃度を算出するように構成されている。
【0035】
より具体的には、算出部12bは、測定部12aにより取得され、記憶部11のデータ格納エリア11bに格納された総残留塩素濃度に基づいて、液体の遊離残留塩素濃度を算出するとともに、データ格納エリア11bに格納された液体のpH値に基づいて、次亜塩素酸の存在比率を算出し、該算出した遊離残留塩素濃度と次亜塩素酸の存在比率とに基づいて、液体の次亜塩素酸濃度を算出するように構成されている。
【0036】
ここで、例えば、次亜塩素酸水等の電解水は、その液体に残存する総残留塩素のほとんどが遊離残留塩素で構成されているため、総残留塩素濃度の値をそのまま遊離残留塩素濃度の値として適用することができる。すなわち、測定部12aにより測定された総残留塩素濃度の値がそのまま遊離残留塩素濃度の値として算出される。
【0037】
また、次亜塩素酸の存在比率とは、遊離残留塩素に存在する塩素ガス、次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンのうち、遊離残留塩素に残存する次亜塩素の比率を表したものである。具体的には、図4に示すように、次亜塩素酸の存在比率は、液体のpH値によって変化し、例えば、pH値が5のときに次亜塩素酸の存在比率が最大となる。
【0038】
このように、総残留塩素濃度と遊離残留塩素濃度との間には相関があり、pH値及び遊離残留塩素濃度と、次亜塩素酸濃度との間には相関があるため、pH値と総残留塩素濃度とを特定することにより、次亜塩素酸濃度を特定することが可能である。
【0039】
表示部13は、図7に示すように、算出部12bにより算出された次亜塩素酸濃度を表示するよう構成されている。また、表示部13は、次亜塩素酸濃度と共に、測定部12aにより測定されたpH値及び総残留塩素濃度を表示するように構成されている。具体的には、表示部13は、pH値、総残留塩素濃度及び次亜塩素酸濃度を数値として表示するように構成されている。表示部13としては、タッチ操作をすることが可能なタッチパネルを採用可能であるが、これに限定されず、液晶画面等の種々の公知を採用可能である。なお、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1において、表示部13は、スマートフォンやタブレット端末等のモバイルデバイスが有する種々の公知の技術を採用することができるため、その詳細な説明を省略する。
【0040】
[本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置の使用方法]
次に、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1を用いて行う次亜塩素酸濃度測定方法について、図5から図7を用いて説明する。図5は、本実施形態に係る試験紙2をカラーチャート台紙3に載置させた状態を示す図であり、図6は、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1により試験紙2及びカラーチャート台紙3を撮影する状態を示す図である。また、図7は、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1による測定の測定結果を表示した状態を示す図である。
【0041】
本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定方法は、液体のpH値及び総残留塩素に応じた呈色反応を示す試験紙2を用いて、該液体中の次亜塩素酸濃度を測定する方法であり、概略的には、試験紙2の呈色反応領域2a,2bを撮影する撮影工程と、撮影工程により撮影した試験紙2の画像データに基づいて、液体のpH値と総残留塩素濃度とを測定する測定工程と、測定工程より測定したpH値と総残留塩素濃度とに基づいて、液体の次亜塩素酸濃度を算出する算出工程と、算出工程により算出された次亜塩素酸濃度を表示する表示工程とを含んでいる。以下、このような次亜塩素酸濃度測定方法について、詳述する。
【0042】
まず、試験紙2の呈色反応領域2a,2bを測定対象となる液体に浸漬させ、試験紙2の呈色反応領域2a,2bが呈色反応を起こした後、図5に示すように、試験紙2の呈色反応領域2a,2bをカラーチャート台紙3上に載置する。
【0043】
次に、図6に示すように、撮影部10を用いて試験紙2と、該試験紙2を保持するカラーチャート台紙3とを同時に撮影する(撮影工程)。この際、撮影部10は、カラーチャート台紙3の補助マーカ3cを撮影範囲に含めて撮影する。該撮影が終了すると試験紙2及びカラーチャート台紙3の画像データが記憶部11のデータ格納エリア11bに格納される。
【0044】
次に、次亜塩素酸濃度測定装置1内にインストールされたアプリケーションを起動させ、データ格納エリア11bに格納された試験紙2とカラーチャート台紙3の画像データを読み込むための読込工程を開始する。
【0045】
該読込工程が終了すると測定工程が開催される。測定工程では、データ格納エリア11bから該画像データを取得し、上述した測定部12aの機能により、該画像データから試験紙2の呈色反応領域2a,2bの呈色反応後の色彩を測定すると共に、該色彩に基づいて、液体のpH値と総残留塩素濃度を測定する(測定工程)。具体的には、試験紙2の呈色反応領域2a,2bの呈色反応後の色彩を測定すると共に、カラーチャート台紙3に示された色彩うち、該試験紙2の色彩と一致又は近似する色彩を測定する。また、該測定により取得したカラーチャート台紙3の色彩とデータ格納エリア11bに格納された色値データとを用いて、試験紙2の呈色反応領域2a,2bの色彩が示すpH値及び総残留塩素濃度を測定する。そして、該測定されたpH値及び総残留塩素濃度を、液体のpH値及び総残留塩素濃度としてデータ格納エリア11bに格納する。
【0046】
該測定工程が終了すると算出工程が開始される。算出工程では、データ格納エリア11bからpH値及び総残留塩素濃度の測定値を取得し、上述した算出部12bの機能より、該取得したpH値及び総残留塩素濃度から測定対象となる液体の次亜塩素酸濃度を算出する(算出工程)。そして、該算出された次亜塩素酸濃度のデータを、データ格納エリア11bに格納する。
【0047】
該算出工程が終了すると、データ格納エリア11bに格納されたpH値、総残留塩素濃度及び次亜塩素酸濃度を読み出し、これらを数値として表示部13に表示する(表示工程)。以上の工程により、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定方法の一連の工程が終了する。なお、データ格納エリア11bに格納されたpH値、総残留塩素濃度及び次亜塩素酸濃度は、その後、任意のタイミングで読み出し、再度表示させることが可能である。
【0048】
[本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置の利点]
以上説明したとおり、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1は、液体中の成分に応じた呈色反応を示す試験紙2の呈色反応領域2a,2bを撮影する撮影部10と、撮影部10により撮影した試験紙2の画像データに基づいて、液体の次亜塩素酸濃度を算出する算出部12bと、算出部12bにより算出された次亜塩素酸濃度を表示する表示部13とを備えている。
【0049】
このような構成を備える次亜塩素酸濃度測定装置1によれば、液体に浸漬させて呈色させた試験紙2を撮影するという極めて簡単な作業を行うだけで、従来の試験紙2のみでは測定できなかった次亜塩素酸濃度を容易に測定することが可能となる。このため、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1によれば、簡易迅速かつ正確に液体中の次亜塩素酸濃度を測定することができ、次亜塩素酸濃度測定の利便性が飛躍的に向上する。
【0050】
また、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1は、試験紙2の画像データに基づいて液体のpH値と総残留塩素濃度とを測定する測定部12aを更に備え、かつ、測定部12aにより測定されたpH値及び総残留塩素濃度を次亜塩素酸濃度と共に表示可能に構成されているため、試験紙2を目視するだけでは得られない正確なpH値及び総残留塩素濃度を把握することが可能となり、これにより、測定のばらつきを軽減することが可能となる。このような利点は、pH値、総残留塩素濃度及び次亜塩素酸濃度等の結果を数値として表示する場合において、特に顕著となる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1は、撮影部10が、試験紙2と共に、pH用カラーチャート3a及び総残留塩素濃度用カラーチャート3bを撮影可能に構成されており、測定部12aが、試験紙2の呈色反応領域2a,2bから特定された色情報と、pH用カラーチャート3a及び総残留塩素濃度用カラーチャート3bから特定された色情報とを比較することにより、pH値及び総残留塩素濃度を測定するよう構成されている。このような構成を備える次亜塩素酸濃度測定装置1によれば、pH用カラーチャート3a及び総残留塩素濃度用カラーチャート3bの色情報を基準として試験紙2の呈色反応領域2a,2bの色彩を特定(較正)することが可能となり、撮影環境による光の影響等を最小限に抑えることが可能となるため、pH値、総残留塩素濃度及び次亜塩素酸濃度をより正確に測定することができる。
【0052】
さらに、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1は、スマートフォン又はタブレット端末等のモバイルデバイスであるため、上述した次亜塩素酸濃度測定プログラム(アプリケーション)をインストールするのみで実現することができ、汎用性及び利便性が極めて高いという利点がある。また、本実施形態に係る次亜塩素酸濃度測定装置1は、容易に持ち運ぶことができるため、測定機器のない場所でも簡単に次亜塩素酸濃度の測定を行うことができる。
【0053】
[変形例]
本発明に係る次亜塩素酸濃度測定装置1は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において種々の改変を行なうことができる。
【0054】
例えば、上述した実施形態では、表示部13は、次亜塩素酸濃度と共にpH値及び総残留塩素濃度を表示するものとして説明したが、これに限定されず、次亜塩素酸濃度のみを表示する構成であっても良い。また、表示部13は、pH値、総残留塩素濃度及び次亜塩素酸濃度を数値として表示するものとして説明したが、これに限定されず、例えば、グラフ等を用いて表示する態様としてもよいし、「高」、「中」、「低」や「〇」、「△」、「×」等の段階的な表示態様としても良い。
【0055】
また、表示部13は、消毒液の基準等へ適合するか否かの結果(例えば「合」又は「否」等)を表示する態様としても良い。具体的には、pHが2.7~5.0かつ次亜塩素酸濃度が10~60ppmである場合、又は、pHが5.0~6.5かつ次亜塩素酸濃度が10~80ppmである場合に、液体が消毒液としての基準に適合すると判定し、その結果が表示部13に表示される構成としても良い。
【0056】
さらに、算出部12bは、上述した処理に加え、測定部12aで取得したpH値に基づいて、液体中の塩素ガス、次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンの存在比率を算出し、人体に対する有害性の有無や、殺菌能力の有無等を判定する処理を実行可能に構成されても良く、表示部13は、該算出部12bの判定結果を表示可能に構成されても良い。
【0057】
上述した実施形態では、試験紙2と共にpH用カラーチャート3a及び総残留塩素濃度用カラーチャート3bを撮影し、これらの色情報を比較することによりpH値及び総残留塩素濃度を測定するよう構成されるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、試験紙2のみを撮影し、試験紙2の色情報と予め定めた色値データとに基づいてpH値及び総残留塩素濃度を測定する構成としても良い。
【0058】
上述した実施形態では、次亜塩素酸濃度測定装置1がスマートフォン又はタブレット端末等のモバイルデバイスであるものとして説明したが、これに限定されず、種々の任意のハードウェアを採用することが可能である。
【0059】
上述した実施形態では、試験紙2の画像データに基づいて液体のpH値と総残留塩素濃度とを測定し、該測定したpH値と総残留塩素濃度とに基づいて次亜塩素酸濃度を算出するものとして説明したが、これに限定されるものではない。
【0060】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0061】
1 :次亜塩素酸濃度測定装置
2 :試験紙
2a :pH呈色反応領域
2b :塩素呈色反応領域
3 :カラーチャート台紙
3a :pH用カラーチャート
3b :総残留塩素濃度用カラーチャート
3c :補助マーカ
10 :撮影部
11 :記憶部
11a :プログラム格納エリア
11b :データ格納エリア
12 :制御部
12a :測定部
12b :算出部
13 :表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7