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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187731
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】浮上汚泥処理機及び沈殿池
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/00 20060101AFI20221213BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20221213BHJP
   C02F 1/40 20060101ALI20221213BHJP
   B01D 21/18 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B01D21/00 G
B01D21/24 V
C02F1/40 F
B01D21/00 D
B01D21/18 G
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095879
(22)【出願日】2021-06-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】504036291
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏治
【テーマコード(参考)】
4D051
【Fターム(参考)】
4D051AA04
4D051AB03
4D051CA11
(57)【要約】
【課題】下水処理場に設けられる最終沈殿池の水面に浮かぶ汚泥に対して遺漏なく圧力水を噴射して、汚泥に付着している気泡を破壊し、汚泥を沈降させるようにする。
【解決手段】最終沈殿池10に設けられる浮上汚泥処理機Aであって、その最終沈殿池10の水面Wの上方で、その水面Wと平行に延びるパイプ部1と、そのパイプ部1の長手方向で、かつ、前記水面W側に互いに所定の間隔を保って設けられた複数の噴出口と、前記パイプ部1の長手方向の一か所を回転自在に支持するとともに、そのパイプ部1に圧力水を供給するロータリージョイント2と、そのロータリージョイント2を中心にして前記パイプ材1を回転させる回転手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を受け入れて沈殿処理する沈殿池に設けられる浮上汚泥処理機であって、
複数の噴出口が長手方向に互いに所定の間隔を保って設けられたパイプ部と、
前記噴出口を下方に向けて水平旋回させるように前記パイプ部の長手方向の一か所を該パイプ部の長手方向に直交する軸心を中心に回転自在に支持するロータリージョイントと、
該ロータリージョイントを介して前記パイプ部に圧力水を供給する圧力水供給管と、
前記ロータリージョイントの前記軸心を中心にして前記パイプ部を回転させる回転手段と、
を備えることを特徴とする浮上汚泥処理機。
【請求項2】
前記ロータリージョイントの前記パイプ部の支持箇所は、そのパイプ部の長手方向の中央部であることを特徴とする請求項1に記載の浮上汚泥処理機。
【請求項3】
前記回転手段は、前記パイプ部から噴出される圧力水の反動によって回転力を得るものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の浮上汚泥処理機。
【請求項4】
前記パイプ部の前記噴出口には、噴出される圧力水を拡散させるノズルが設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかにに記載の浮上汚泥処理機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の浮上汚泥処理機を複数備えた沈殿池であり、前記パイプ部は、前記沈殿池の水面の上方に該水面に平行に設けられるとともに、各パイプ部の回転面積の総和がその沈殿池の水面の面積にほぼ等しくなるように設けられることを特徴とする沈殿池。
【請求項6】
前記沈殿池は、下水処理場の最終沈殿池であることを特徴とする請求項5に記載の沈殿池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浮上汚泥処理機及び沈殿池に係り、特に、下水処理場の最終沈殿池に用いて好適な浮上汚泥処理機、及び該浮上汚泥処理機を設置した沈殿池に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場には、いわゆる「終沈」あるいは「第二沈殿池」と称されることもある最終沈殿池が設けられている。この最終沈殿池では、生物処理された原水を受け入れ、その原水中に含まれている活性汚泥を沈降分離するとともに、上澄水を処理水として取り出して放流するようにしている。
【0003】
最終沈殿池内の活性汚泥は、生物処理時の溶存酸素に起因する気泡の付着により、あるいは、最終沈殿池内の嫌気性発酵に起因する気泡(メタンガス)の付着等により汚泥が浮上することがある。浮上した汚泥は、上澄水とともに放流されると処理水の悪化を招くので、浮上した汚泥が放流されないように対策をとる必要がある。
【0004】
特許文献1には、上記対策の一案が提案されている。この特許文献1では、最終沈殿池の水面に浮上した汚泥に対してスプレーノズルから水噴射を行うようにしている。スプレーノズルから汚泥に水噴射が行われると、汚泥に付着していた気泡が破壊されて汚泥が沈降し、処理水中に汚泥が混入するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭52-119570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示される浮上汚泥処理機は、沈殿池の水面の上方に固定して設けられたスプレーノズルから浮上汚泥に圧力水を噴射するようにしているので、噴射の行きわたらない箇所が存在し、その箇所の汚泥が上澄水とともに放流されて処理水の悪化を招いていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、沈殿池の水面に浮遊する汚泥に対して遺漏なく圧力水を噴射できる浮上汚泥処理機、及び該浮上汚泥処理機を設置した沈殿池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る浮上汚泥処理機は、上記目的を達成するために、原水を受け入れて沈殿処理する沈殿池に設けられる浮上汚泥処理機であって、複数の噴出口が長手方向に互いに所定の間隔を保って設けられたパイプ部と、前記噴出口を下方に向けて水平旋回させるように前記パイプ部の長手方向の一か所を該パイプ部の長手方向に直交する軸心を中心に回転自在に支持するロータリージョイントと、該ロータリージョイントを介して前記パイプ部に圧力水を供給する圧力水供給管と、前記ロータリージョイントの前記軸心を中心にして前記パイプ部を回転させる回転手段と、を備える。
【0009】
本発明の浮上汚泥処理機において、前記ロータリージョイントの前記パイプ部の支持箇所は、そのパイプ部の長手方向の中央部であるとよい。
【0010】
本発明の浮上汚泥処理機において、前記回転手段は、前記パイプ部から噴出される圧力水の反動によって回転力を得るものであるとよい。
【0011】
本発明の浮上汚泥処理機において、前記パイプ部の前記噴出口には、噴出される圧力水を拡散させるノズルが設けられているとよい。
【0012】
本発明の沈殿池は、前記浮上汚泥処理機を複数備えた沈殿池であり、前記パイプ部は、前記沈殿池の水面の上方に該水面に平行に設けられるとともに、各パイプ部の回転面積の総和がその沈殿池の水面の面積にほぼ等しくなるように設けられるとよい。
【0013】
本発明の沈殿池は、下水処理場の最終沈殿池であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、複数の噴出口を備えたパイプ部がロータリージョイントの軸心を中心にして回転するので、沈殿池の水面に浮かぶ汚泥に対して遺漏なく圧力水を噴射して、汚泥に付着している気泡を破壊でき、汚泥を沈降させることができる。このため、汚泥が処理水に混入するのを防止することができ、処理水水質の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態に係る浮上汚泥処理機を備えた最終沈殿池の縦断面図ある。
図2】本発明の一実施の形態に係る浮上汚泥処理機を備えた最終沈殿池の平面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る浮上汚泥処理機の拡大図である。
図4図3のX-X線の拡大断面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る浮上汚泥処理機を備えた円形沈殿池の縦断面図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る浮上汚泥処理機を備えた円形沈殿池の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る浮上汚泥処理機及びこの浮上汚泥処理機を備えた沈殿池を説明する。
まず、一実施形態の浮上汚泥処理機Aを備えた最終沈殿池(沈殿池)10について、図1及び図2を用いて説明する。
【0017】
この最終沈殿池10は、図1に示されるように、池底11は、一端側(図示の例では左端側)が深く、他端側が浅くなった傾斜面に形成されている。この一端側の側壁部10aの内側には、図示しない曝気槽で生物処理された活性汚泥を含む原水が流入される。そして、その一端側の最も深い池底11の箇所には、さらに深い底を備えた汚泥ピット12が設けられている。また、この最終沈殿池10の他端側の側壁部10bの内側には、その他端の水面位置よりも低い上面となるように形成された溢流壁13と他端側の側壁部10bとで区画された処理水排出樋14が設けられている。
【0018】
この最終沈殿池10の平面形状は、図2に示されるように、長水路15を呈するように構成されている。なお、実際の下水処理場では、この長水路15が多数併設されて最終沈殿池群を形成している。
【0019】
長水路15を形成する最終沈殿池10内には、汚泥掻寄機16が設けられている。この汚泥掻寄機16は、最終沈殿池に設けられている周知の汚泥掻寄機と同様に、最終沈殿池10の一端側の水面近くに設けられたスプロケットホイール17、その一端側の池底11近くに設けられたスプロケットホイール18及び最終沈殿池10の他端側の池底11近くに設けられたスプロケットホイール19と、これらスプロケットホイール17,18,19に掛け渡された無端チェーン20と、この無端チェーン20に所定の間隔を保って設けられている掻寄板(フライト)21とで構成されている。スプロケットホイール17には、図示しないが回転駆動装置が設けられていて、池底11上の掻寄板21が汚泥ピット12に向けて移動するように無端チェーン20が回転するように構成されている。
【0020】
上記構成の最終沈殿池10において、一端側から、すなわち長水路15の一端側から生物処理された原水が流入されると、その原水は長水路15の他端側に向けて流れ、その間に、原水中に含まれている活性汚泥及び微細な砂等の沈降性物質(以下、これらを含めて単に「汚泥」という。)は池底11に沈降する。汚泥を沈降分離した原水は処理水となり、その上澄水が溢流壁13を超えて処理水排出樋14に排出される。つまり長水路15内の上澄水は溢流壁13を超えて処理水排出樋14に排出される。このように、溢流壁13の高さが長水路15内の水面Wの水位を決定している。処理水排出樋14内の処理水は河川等に放流される。
【0021】
最終沈殿池10の池底11に沈降して堆積した汚泥は、汚泥掻寄機16によって最終沈殿池10の一端側に設けられている汚泥ピット12に集められる。汚泥ピット12に集められた汚泥は、定期的に取り出されて脱水処理等の汚泥処理が行われる。
【0022】
次に、最終沈殿池10に設置される浮上汚泥処理機Aについて説明する。図3及び図4に浮上汚泥処理機A詳細に示している。
この浮上汚泥処理機Aは、最終沈殿池10の長水路15の水面Wより少し上に位置するように設けられ、一つの最終沈殿池10(一つの長水路15)に対して複数個(図示の例では6個)長水路15の長手方向に並んで設けられるが、各浮上汚泥処理機Aは同一構成であるので、その一つを図3及び図4を用いて説明する。
【0023】
浮上汚泥処理機Aは、パイプ部1とロータリージョイント2と圧力水供給管8とを備えている。
【0024】
パイプ部1は、2本のパイプ3a,3bと、ネジ込み式チーズ継手からなる管継手4とで構成されている。これらパイプ3a,3b及び管継手4はSUSや合成樹脂等の周知の材質で構成されている。各パイプ3a,3bの長さは、最終沈殿池10の長水路15の幅の半分よりも少し短くなるように決められている。そして、両パイプ3a,3bの長さ及び管継手4の貫通方向の長さの合計長さ(管継手4の両側にパイプ3a,3bを接続したときのパイプ3a,3bの両端間の距離)が長水路15の幅よりも少し短くなるように決められている。このパイプ3a,3bは、管継手4を長水路15の幅方向のほぼ中心位置に配置した状態で、長水路15の水面Wと平行に延びるように設けられる。
【0025】
そして、管継手4の残りの端部にロータリージョイント2が接続されており、そのロータリージョイント2の軸心Cがパイプ部1の長手方向に直交するように配置されているので、パイプ部1は、ロータリージョイント2により管継手4を中心にして回転したときに、長水路15内で回転(水平旋回)することができる(図2参照)。なお、パイプ3a,3bの口径は、最終沈殿池10内に発生する浮上汚泥Sに付着している気泡を破壊するのに十分な圧力水を噴出することができるように決められる。浮上汚泥Sの性質は各下水処理場によって異なるので、パイプ3a,3bの口径、後述の噴出口5の口径や噴出口5の数、圧力水の圧力やその水量等は、入念な実験により求められる。
【0026】
各パイプ3a,3bの左右両端部(管継手4との接続端部とは反対側の端部)は、図示しないが閉止部材により閉止されている。そして、各パイプ3a,3bの長手方向で、かつ、水面W側に向く側部には、長手方向に互いに所定の間隔を保って複数の噴出口5が設けられている。この噴出口5は下方に向けられているが、その噴出方向が水面Wに対して垂直方向ではなく、例えば45°程度の角度が付されている(図4参照)。したがって、噴出口5から圧力水が噴出したときは、その噴出方向が斜め下向きであるので、各パイプ3a,3bにその噴射に伴う反動力が図4に矢印で示したようにパイプ3a,3bを旋回する方向に発生し、各パイプ3a,3bは、管継手4を中心にした回転力が発生する。しかも、この管継手4は、ロータリージョイント2に回転自在に支持されているので、各パイプ3a,3b(パイプ部1)は自然にロータリージョイント2の軸心Cを中心として水平旋回することができる(図3の回転矢印参照)。なお、噴射口5の噴射方向は、垂直に近いほど、浮上汚泥Sに付着している気泡に対する破壊力が高まるので、反動力が得られる限り垂直に近い方がよい。
【0027】
各パイプ3a,3bにはノズル6が設けられている。このノズル6は、パイプ3a,3bの長手方向に直交する方向(パイプ3a,3bの側方)から視た平面形状が扇形で、噴出口5に取り付けられる側と反対側の口形は水面Wと平行(パイプ3a,3bの長手方向と平行)するスリットに形成されている。つまり、ノズル6のスリットはパイプ3a,3bの長手方向に沿って配置され、圧力水がパイプ3a,3bの長手方向に広がるように噴出される。したがって、噴出口5から供給された圧力水を水面Wの広い範囲にわたって噴射することができる。もちろん、ノズル6を用いることなく噴出口5から直接、圧力水を噴出させることもできるが、ノズル6を用いた方がより広い範囲にわたって効率よく噴射させることができる。
【0028】
ロータリージョイント2は、周知のロータリージョイントからなり、例えば、特開2007-120694号に示されているようなロータリージョイントを利用することができる。
【0029】
このロータリージョイント2は、ケーシング7の上端側に圧力水を供給する圧力水供給管8が接続されている。そして、このケーシング7内には、ケーシング7の下端側から一部分が突出したロータ9が設けられている。このロータ9はパイプにより構成されていて、ケーシング7内でロータ9の軸心(ロータリージョイント2の軸心)Cを中心に回転自在に支持されている。また、このケーシング7外に突出したロータ9の先端部分は、パイプ部1の管継手4に接続されている。つまり、ロータ9は、パイプ部1の長手方向に直交する方向に配置されており、パイプ部1は、水面Wと平行に設けられているので、ロータ9の軸心Cを中心に水面Wの上方で水平回転(旋回)させられる。
【0030】
圧力水供給管8からケーシング7内に供給された圧力水は、ロータ9内を通過してケーシング7外に送り出され、管継手4を介して各パイプ3a,3b(パイプ部1)に供給される。なお、ケーシング7に圧力水を供給する圧力水供給管8の接続位置は、ケーシング7の上面側部とすることもできる。また、図示しないが、供給管8は最終沈殿池10の上方に設けられている架台に固定され、浮上汚泥処理機Aのロータリージョイント2のケーシング7を固定するように構成されている。
【0031】
上記の構成からなる浮上汚泥処理機Aが最終沈殿池10に設置されたときの浮上した汚泥(スラッジ)の処理について説明する。先ず、浮上汚泥処理機Aを設置した最終沈殿池10に生物処理された原水が流入してきて沈殿処理が行われているとする(図1参照)。
【0032】
沈殿処理が行われている間、浮上汚泥処理機Aのケーシング7の圧力水供給管8には、最終沈殿池10の処理水を原水とする圧力水が供給される。これにより、各浮上汚泥処理機Aのパイプ部1が回転しながらノズル6から水面Wに向けて圧力水が噴射される。この浮上汚泥処理機Aは、図2に示されるように、最終沈殿池10の長水路15のほぼ全面を覆うように複数機設けられているので、すなわち、パイプ部1の回転によって形成される円の面積(回転面積)の総和が最終沈殿池10の長水路15の表面面積とほぼ等しくなるように設けられているので、長水路15の水面Wのほぼ全面に圧力水が噴射される。なお、圧力水供給管8に供給される原水は、工業用水等の他の水を原水としてもよい。
【0033】
最終沈殿池10の長水路15の水面W上には、生物処理の過曝気に伴う溶存酸素により、あるいは最終沈殿池10の池底11に堆積した汚泥の嫌気性発酵に伴うメタンガス等により、汚泥に気泡が付着して沈殿せずに水面付近に浮遊し、これが集合して浮上汚泥Sが発生する。この発生した浮上汚泥Sに対してパイプ部1のノズル6から圧力水が噴射されると、浮上汚泥Sに付着していた気泡が破壊され浮上汚泥Sを形成していた汚泥から離脱し、汚泥の沈降が促進される。しかも、浮上汚泥Sへの圧力水の噴射は、浮上汚泥処理機Aのパイプ部1が回転することに加えて、浮上汚泥処理機Aが長水路15の表面全部を覆うような形で設けられているので、長水路15に発生した全ての浮上汚泥Sに対して遺漏なく圧力水を噴射でき、浮上汚泥Sが溢流壁13を超えて処理水に混入するのを効果的に防止することができる。したがって、最終沈殿池10の処理水水質の悪化を防止することができ、処理水水質の向上を図ることができる。なお、最終沈殿池10に浮上汚泥Sが発生しない時季や時間帯が存在するときは、その間、圧力水供給管8への圧力水の供給を停止することもできる。
【0034】
図5及び図6を用いて浮上汚泥処理機Aを円形沈殿池30に適用した例を説明する。
【0035】
この円形沈殿池30は、周知の円形沈殿池と同様に、円筒状の側壁部31と、その側壁部31の下端部と接続し中心部に行くにしたがって深くなる池底32と、その池底32の最も深いところ、つまり池底32の中心部に設けられ、その池底32よりも深く設けられている汚泥ピット33とを有している。また、側壁部31の上端側の内側には、その上端位置よりも低い上面位置を有する溢流壁34が設けられ、この溢流壁34と側壁部31とで区画された処理水排出樋35が周方向に沿って設けられている。
【0036】
円形沈殿池30内の中心部には、原水を沈殿池内に均一に供給するための整水筒36が設けられている。また、円形沈殿池30内の中心部には、池底32に堆積した汚泥を汚泥ピット33に掻き集める掻寄板37と、この掻寄板37を回転駆動させるための、減速機付きモータや回転シャフト等で構成される駆動装置38とが設けられている。なお、掻寄板37の駆動機構は、このようなセンター駆動型ではなく、駆動源が側壁部31の上面に敷設されたレール上を周回する周回駆動型とすることもできる。
【0037】
円形沈殿池30の水面Wの上方には、図6に示されるように複数(図示の例では4個)の浮上汚泥処理機Aが設けられている。すなわち、この円形沈殿池30にも、上述した平面形状が矩形の最終沈殿池10と同様に、浮上汚泥処理機Aのパイプ部1の回転によって形成される回転面積の総和が円形沈殿池30の水面Wのほぼ全面を覆うように浮上汚泥処理機Aが設けられている。
【0038】
上記構成からなる円形沈殿池30は、上述した最終沈殿池10に流入すると同様の原水が整水筒36内に供給されて沈殿処理される。その沈殿処理によって得られた上澄水は、溢流壁34を超えて処理水排出樋35に集められて放流される。他方、汚泥ピット33に集められた汚泥は、脱水機等の汚泥処理施設に送られて処理される。
【0039】
上記構成からなる円形沈殿池30において、沈殿処理中、水面W上に生成された浮上汚泥Sには、浮上汚泥処理機Aから圧力水が噴射される。この圧力水が浮上汚泥Sに噴射されると、浮上汚泥Sに付着していた気泡が破壊され、汚泥の沈降が促進される。したがって、浮上汚泥Sが溢流壁34を超えて処理水に混入するのを効果的に防止することができ、処理水の水質悪化を防止することができる。
【0040】
なお、上述の実施例では、パイプ部1の回転力は、噴出口5から圧力水が噴出したときの反動力で行ったが、これをケーシング7内に設けた小型モータで行うようにしてもよい。この場合は、噴出口5の噴出方向を水面Wに対して垂直に配置することができ、浮上汚泥Sに付着している気泡の破壊力を高めることができる。
【0041】
また、上述の実施例では、パイプ部1は2本のパイプ3a,3bを直線状に設けているが、1本のパイプとしてもよい。この場合は、管継手4はエルボ継手となり、その2つの端部の一方にロータリージョイント、他方にパイプが接続される。さらには、パイプ部1は3本以上、4本の十字型にしてもよい。この場合は、使用本数に合わせた管継手が採用される。
【0042】
以上、本発明に係る浮上汚泥処理機について図面を参照して説明したが、具体的な構成は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において設計変更等が可能である。
【0043】
特に、上記実施の形態では、原水を下水としたが、原水に浮上性汚泥を含むものであればその性状は問わない。例えば、各種工場排水を生物処理した原水を沈降処理する沈殿池に設けられる浮上汚泥処理機であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
A……浮上汚泥処理機
1……パイプ部
2……ロータリージョイント
3a,3b……パイプ
4……管継手
5……噴出口
6……ノズル
8……圧力水供給管
10……最終沈殿池(沈殿池)
10a,10b……側壁部
11……池底
12……汚泥ピット
13……溢流壁
14……処理水排出樋
15……長水路
16……汚泥掻寄機
17, 18, 19……スプロケットホイール
20……無端チェーン
21……掻寄板
30……円形沈殿池
31……側壁部
32……池底
33……汚泥ピット
34……溢流壁
35……処理水排出樋
36……整水筒
37……掻寄板
38……駆動装置
W……水面
S……浮上汚泥
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を受け入れて沈殿処理する沈殿池に設けられる浮上汚泥処理機であって、
複数の噴出口が長手方向に互いに所定の間隔を保って設けられたパイプ部と、
前記噴出口を下方に向けて水平旋回させるように前記パイプ部の長手方向の一か所を該パイプ部の長手方向に直交する軸心を中心に回転自在に支持するロータリージョイントと、該ロータリージョイントを介して前記パイプ部に圧力水を供給する圧力水供給管と、
前記ロータリージョイントの前記軸心を中心にして前記パイプ部を回転させる回転手段と、
を備えており、
前記回転手段は、前記パイプ部から噴出される圧力水の反動によって回転力を得るものであることを特徴とする浮上汚泥処理機。
【請求項2】
前記ロータリージョイントの前記パイプ部の支持箇所は、そのパイプ部の長手方向の中央部であることを特徴とする請求項1に記載の浮上汚泥処理機。
【請求項3】
前記パイプ部の前記噴出口には、噴出される圧力水を拡散させるノズルが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の浮上汚泥処理機。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の浮上汚泥処理機を複数備えた沈殿池であり、前記パイプ部は、前記沈殿池の水面の上方に該水面に平行に設けられるとともに、各パイプ部の回転面積の総和がその沈殿池の水面の面積にほぼ等しくなるように設けられることを特徴とする沈殿池。
【請求項5】
前記沈殿池は、下水処理場の最終沈殿池であることを特徴とする請求項に記載の沈殿池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明に係る浮上汚泥処理機は、原水を受け入れて沈殿処理する沈殿池に設けられる浮上汚泥処理機であって、複数の噴出口が長手方向に互いに所定の間隔を保って設けられたパイプ部と、前記噴出口を下方に向けて水平旋回させるように前記パイプ部の長手方向の一か所を該パイプ部の長手方向に直交する軸心を中心に回転自在に支持するロータリージョイントと、該ロータリージョイントを介して前記パイプ部に圧力水を供給する圧力水供給管と、前記ロータリージョイントの前記軸心を中心にして前記パイプ部を回転させる回転手段と、を備えており、前記回転手段は、前記パイプ部から噴出される圧力水の反動によって回転力を得るものである
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】