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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187734
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ブレーキパッド
(51)【国際特許分類】
   F16D 69/00 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
F16D69/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095889
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】紀陸 達男
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA66
3J058BA42
3J058BA73
3J058CA75
3J058GA92
(57)【要約】
【課題】ブレーキパッドにおいて、摩耗粉を効率的に排出する技術が必要とされている。
【解決手段】ブレーキパッドは、ディスクロータの摩擦面に対向する摩擦材、を備えており、前記摩擦材は、前記ディスクロータの半径方向の内周側に位置する第1側面と、前記ディスクロータの半径方向の外周側に位置する第2側面と、前記ディスクロータの前記摩擦面に対向する面において、前記第1側面と前記第2側面の間を伸びているスリットと、を有しており、前記ディスクロータの周方向に沿って測定される前記スリットの幅が、前記ディスクロータの半径方向の内周側から外周側に向けて増加する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキパッドであって、
ディスクロータの摩擦面に対向する摩擦材、を備えており、
前記摩擦材は、
前記ディスクロータの半径方向の内周側に位置する第1側面と、
前記ディスクロータの半径方向の外周側に位置する第2側面と、
前記ディスクロータの前記摩擦面に対向する面において、前記第1側面と前記第2側面の間を伸びているスリットと、を有しており、
前記ディスクロータの周方向に沿って測定される前記スリットの幅が、前記ディスクロータの半径方向の内周側から外周側に向けて増加する、ブレーキパッド。
【請求項2】
前記摩擦材は、
前記スリットを画定するとともに前記ディスクロータの周方向に対向する一対のスリット側面、をさらに有しており、
前記一対のスリット側面の各々は、前記ディスクロータの半径方向に平行である、請求項1に記載のブレーキパッド。
【請求項3】
前記摩擦材は、
前記ディスクロータの周方向の一方の端部に位置する第3側面と、
前記ディスクロータの周方向の他方の端部に位置する第4側面と、をさらに有しており、
前記第3側面と前記第4側面はいずれも、前記ディスクロータの半径方向に平行である、請求項2に記載のブレーキパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、ディスクブレーキ装置に用いられるブレーキパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ディスクブレーキ装置に用いられるブレーキパッドの一例を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-202040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディスクブレーキ装置は、回転するブレーキロータにブレーキパッドの摩擦材を押し付けることで制動力を発生させる。このため、ブレーキロータと摩擦材の間の摩擦によって摩擦材から摩耗粉が発生する。このような摩耗粉がブレーキロータと摩擦材の間に残存すると、摩擦特性の低下及び偏摩耗の原因となり得る。したがって、このようなブレーキパッドにおいては、摩耗粉を効率的に排出する技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するブレーキパッドは、ディスクロータの摩擦面に対向する摩擦材を備えていてもよい。前記摩擦材は、前記ディスクロータの半径方向の内周側に位置する第1側面と、前記ディスクロータの半径方向の外周側に位置する第2側面と、前記ディスクロータの前記摩擦面と対向する面において、前記第1側面と前記第2側面の間を伸びているスリットと、を有してもよい。前記ディスクロータの周方向に沿って測定される前記スリットの幅が、前記ディスクロータの半径方向の内周側から外周側に向けて増加してもよい。
【0006】
前記摩擦材に前記スリットが設けられていると、摩耗粉が前記スリットを介して効率的に排出される。特に、前記スリットは、前記ディスクロータの周方向に沿って測定される幅が前記ディスクロータの半径方向の内周側から外周側に向けて増加するように構成されている。このため、前記スリットに入ってきた摩耗粉は、前記ディスクロータの回転によって生じる遠心力によって前記スリットから効率的に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ディスクブレーキ装置の構成を概略的に示す断面図である。
図2】ブレーキパッドの斜視図を模式的に示す図である。
図3】ディスクロータの摩擦面に垂直な方向から見た要部を示す図であり、ディスクロータと摩擦材の位置関係を示す図である。
図4】変形例のブレーキパッドの斜視図を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示するブレーキパッドの一実施形態は、ディスクロータの摩擦面に対向する摩擦材を備えていてもよい。前記摩擦材は、前記ディスクロータの半径方向の内周側に位置する第1側面と、前記ディスクロータの半径方向の外周側に位置する第2側面と、前記ディスクロータの前記摩擦面に対向する面において、前記第1側面と前記第2側面の間を伸びているスリットと、を有してもよい。このように、前記スリットは前記ディスクロータの半径方向に沿って伸びていてもよい。前記ディスクロータの周方向に沿って測定される前記スリットの幅が、前記ディスクロータの半径方向の内周側から外周側に向けて増加してもよい。前記スリットの幅は、前記ディスクロータの半径方向の内周側から外周側に向けて単調増加すればよく、例えば連続的に増加してもよく、一定幅の部分が含まれるように増加してもよい。
【0009】
上記実施形態の前記摩擦材は、前記スリットを画定するとともに前記ディスクロータの周方向に対向する一対のスリット側面をさらに有していてもよい。前記一対のスリット側面の各々は、前記ディスクロータの半径方向に平行であってもよい。この例では、前記スリットの幅が、前記ディスクロータの半径方向の内周側から外周側に向けて連続的に増加することとなる。このため、前記スリットに入ってきた摩耗粉は、前記スリットから効率的に排出される。
【0010】
前記一対のスリット側面の各々が前記ディスクロータの半径方向と平行な場合、前記摩擦材は、前記ディスクロータの周方向の一方の端部に位置する第3側面と、前記ディスクロータの周方向の他方の端部に位置する第4側面と、をさらに有していてもよい。前記第3側面と前記第4側面はいずれも、前記ディスクロータの半径方向に平行であってもよい。この例では、前記ディスクロータの周方向に沿って測定される前記摩擦材の幅が、前記ディスクロータの半径方向の内周側から外周側に向けて連続的に増加することとなる。これにより、前記摩擦材に作用する摩擦力の面内分布が均一化され、偏摩耗が抑えられる。
【実施例0011】
以下、対向キャリパ型のディスクブレーキ装置を参照し、本明細書が開示する技術について説明する。しかしながら、本明細書が開示する技術は、他の種類のディスクブレーキ装置にも有用である。
【0012】
図1に示されるように、ディスクブレーキ装置1は、車両に搭載して用いられるものであり、車両に回転可能に支持された車輪に制動力を付与するように構成されている。ディスクブレーキ装置1は、ディスクロータ2と、キャリパ3と、一対のピストン4,6と、一対のブレーキパッド10,20と、を備えている。
【0013】
ディスクロータ2は、車輪に連結されており、車輪と一体的に回転するように構成されている。ディスクロータ2の形状は円盤状であり、一対の主面が摩擦面として機能する。
【0014】
キャリパ3は、ディスクロータ2の一対の摩擦面の一部を挟み込むように、ディスクロータ2の外周縁を跨いで配置されている。キャリパ3は、一対のブレーキパッド10,20の各々がディスクロータ2の一対の摩擦面のうちの対応する摩擦面に対向するように、一対のブレーキパッド10,20を保持するように構成されている。
【0015】
一対のピストン4,6の各々は、キャリパ3に形成された一対のシリンダボア8,9のうちの対応するシリンダボア8,9内に配置されている。ピストン4は、シリンダボア8内においてディスクロータ2の回転軸方向に沿って摺動可能となるように設けられている。ピストン4は、供給される油圧に応じてブレーキパッド10をディスクロータ2の摩擦面に向けて押し付けるように構成されている。ピストン6は、シリンダボア9内においてディスクロータ2の回転軸方向に沿って摺動可能となるように設けられている。ピストン6は、供給される油圧に応じてブレーキパッド20をディスクロータ2の摩擦面に向けて押し付けるように構成されている。なお、この例では、ディスクロータ2の一対の摩擦面の各々に対応して1つのピストンが配置されているが、一対の摩擦面の各々に対応して複数のピストンが配置されていてもよい。
【0016】
一対のブレーキパッド10,20の各々は、ディスクロータ2の一対の摩擦面のうちの対応する摩擦面に対向するように設けられる摩擦部材であり、摩擦材10a,20aと、裏板10b,10bと、を有している。ブレーキパッド10はディスクロータ2の車両内側の摩擦面に対向するインナーパッドであり、ブレーキパッド20はディスクロータ2の車両外側の摩擦面に対向するアウターパッドである。本実施形態では、インナーパッドであるブレーキパッド10とアウターパッドであるブレーキパッド20は同一形状である。この例に代えて、ブレーキパッド10とブレーキパッド20の形状は、所望する摩擦性能が発揮されるように適宜調整されてもよい。以下、ブレーキパッド10について説明し、ブレーキパッド20の説明を省略する。
【0017】
摩擦材10aは、ディスクロータ2の摩擦面に対向する側に配置されており、摩擦面に接触したときに制動力を付与するための部材である。裏板10bは、摩擦材10aを支持しており、ピストン4からの押圧力が作用する板状の部材である。
【0018】
図2及び図3に示すように、摩擦材10aは、ディスクロータ2の摩擦面に対向する前面18と、前面18と反対側の面であって裏板10bに接触する背面19と、を有している。摩擦材10aはさらに、前面18と背面19の間を延びている第1側面11、第2側面12、第3側面13及び第4側面14を有している。第1側面11は、ディスクロータ2の半径方向の内周側に位置する面であり、ディスクロータ2の周方向に沿って湾曲して延びている。第2側面12は、ディスクロータ2の半径方向の外周側に位置する面であり、ディスクロータ2の周方向に沿って湾曲して延びている。第3側面13は、ディスクロータ2の周方向の一方の端部に位置する面であり、ディスクロータ2の半径方向と平行に延びている。第4側面14は、ディスクロータ2の周方向の他方の端部に位置する面であり、ディスクロータ2の半径方向と平行に延びている。ここで、ディスクロータ2の半径方向は、ディスクロータ2の回転軸線RAに対して垂直な任意の方向である。
【0019】
摩擦材10aの前面18には、スリット15が設けられている。スリット15は、摩擦材10aの前面18を2つに分割するように、第1側面11と第2側面12の間を伸びている。この例では、スリット15は、摩擦材10aのうちの薄肉部分によって構成されている。この例に代えて、スリット15が摩擦材10aを貫通するように構成されていてもよい(図4参照)。なお、これらの例では、1つのスリット15のみが設けられているが、複数のスリットが設けられていてもよい。
【0020】
摩擦材10aはさらに、スリット15を画定するとともにディスクロータ2の周方向に対向する一対のスリット側面16,17を有している。第1スリット側面16は、ディスクロータ2の半径方向と平行に延びている。同様に、第2スリット側面17も、ディスクロータ2の半径方向と平行に延びている。
【0021】
ディスクロータ2の周方向に沿って測定されるスリット15の幅W1は、ディスクロータ2の半径方向の内周側から外周側に向けて増加するように構成されている。この例では、一対のスリット側面16,17の各々が、ディスクロータ2の半径方向と平行に延びていることから、スリット15の幅W1は、ディスクロータ2の半径方向の内周側から外周側に向けて連続的に増加するように構成されている。このため、スリット15の幅W1は、第1側面11において最小幅であり、第2側面12において最大幅である。
【0022】
次に、図3を参照してブレーキパッド10の摩擦材10aの特徴について説明する。ディスクブレーキ装置1は、摩擦材10aをディスクロータ2の摩擦面に押し付けることで制動力を発生させる。例えばディスクロータ2が時計回りに回転している場合、スリット15よりも図示右側に存在する摩擦材10aとディスクロータ2の間の摩擦によって発生した摩耗粉は、ディスクロータ2の回転に伴ってスリット15に入り込む。同様に、例えばディスクロータ2が反時計回りに回転している場合、スリット15よりも図示左側に存在する摩擦材10aとディスクロータ2の間の摩擦によって発生した摩耗粉は、ディスクロータ2の回転に伴ってスリット15に入り込む。さらに、スリット15は、第1側面11と第2側面12の間を伸びており、外部に連通している。このため、スリット15に入った摩耗粉は、スリット15から外部に排出される。特に、スリット15の幅W1がディスクロータ2の半径方向の内周側から外周側に向けて連続的に増加するように構成されているので、スリット15に入った摩耗粉は、遠心力によってスリット15から外部に効率的に排出される。このように、摩擦材10aにスリット15が設けられていると、摩耗粉がディスクロータ2と摩擦材10aの間に残存することが抑えられ、摩擦特性の低下及び偏摩耗が抑えられる。
【0023】
また、摩擦材10aでは、第3側面13と第4側面14と一対のスリット側面16,17の各々が、ディスクロータ2の半径方向と平行に延びている。このため、ディスクロータ2の周方向に沿って測定される摩擦材10aの幅W2が、ディスクロータ2の半径方向の内周側から外周側に向けて連続的に増加するように構成されている。なお、摩擦材10aの幅W2としてスリット15よりも図示右側の部分のみを示しているが、スリット15よりも図示左側の部分も対称構造であることから、摩擦材10aの全体の幅もまた、ディスクロータ2の半径方向の内周側から外周側に向けて連続的に増加するように構成されている。ここでいう摩擦材10aの幅とは、ディスクロータ2の直接的に接触する部分で測定される幅である。
【0024】
ここで、ディスクロータ2の摩擦面内の周速度は、半径方向の内周側よりも外周側で速い。上記したように、摩擦材10aの幅W2がディスクロータ2の半径方向の内周側から外周側に向けて連続的に増加するように構成されている。即ち、摩擦材10aは、ディスクロータ2の摩擦面内の周速度に応じてその幅W2が増加するような形状であり、より具体的には、幅W2がディスクロータ2の摩擦面内の周速度を独立変数とする一次関数で表されるような形状である。これにより、摩擦材10aに作用する摩擦力の面内分布が均一化され、摩擦材10aの任意の位置の摩耗量が均一化される。この結果、摩擦材10aの偏摩耗が抑えられる。
【0025】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0026】
1:ディスクブレーキ装置、 2:ディスクロータ、 3:キャリパ、 4、6:ピストン、 10、20:ブレーキパッド、 10a、20a:摩擦材、 10b、20b:裏板、 11:第1側面、 12:第2側面、 13:第3側面、 14:第4側面、 15:スリット、 16:第1スリット側面、 17:第2スリット側面、 18:前面、 19:背面、 20:ブレーキパッド、 20a:摩擦材
図1
図2
図3
図4