(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187753
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】マネージャ、制御方法、制御プログラム、及び車両
(51)【国際特許分類】
B60W 30/045 20120101AFI20221213BHJP
B60W 30/18 20120101ALI20221213BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B60W30/045
B60W30/18
B62D6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095919
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳久
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
【Fターム(参考)】
3D232CC12
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA23
3D232DA33
3D232DA39
3D232DA46
3D232DA90
3D232DA99
3D232DB11
3D232DC01
3D232DC03
3D232DC08
3D232DD02
3D232DD08
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3D232EA01
3D232EB04
3D232EC23
3D232GG01
3D241BA01
3D241BA12
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3D241CE09
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB12Z
3D241DB18Z
3D241DB46Z
3D241DC43Z
(57)【要約】
【課題】車両の横方向の運動を表す情報を生成するために必要な情報をADASアプリケーションに対して出力するマネージャなどを提供する。
【解決手段】車両に搭載されたマネージャであって、複数のADASアプリケーションから、車両の横方向の運動を表す情報である第1情報を含む複数の行動計画を受け付ける受付部と、複数の行動計画を調停する調停部と、調停部による調停結果に基づいて運動要求を算出する算出部と、運動要求を複数のアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配する第1出力部と、第1情報を生成するために用いる第2情報を、複数のADASアプリケーションの少なくとも1つに出力する第2出力部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたマネージャであって、
複数のADASアプリケーションから、車両の横方向の運動を表す情報である第1情報を含む複数の行動計画を受け付ける受付部と、
前記複数の行動計画を調停する調停部と、
前記調停部による調停結果に基づく運動要求を、複数のアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配する第1出力部と、
前記第1情報を生成するために用いる第2情報を、前記複数のADASアプリケーションの少なくとも1つに出力する第2出力部と、を備える、マネージャ。
【請求項2】
前記第2情報は、車両の重心点から前輪までの距離、車両の重心点から後輪までの距離、タイヤから発生するコーナリングスティフネス、車両の質量、速度、横すべり角、及びヨーレートの1つ以上を含む、請求項1に記載のマネージャ。
【請求項3】
前記横方向の運動を表す前記第1情報が、舵角であり、
前記第2出力部は、前記第2情報として、車両の重心点から前輪までの距離、車両の重心点から後輪までの距離、前輪タイヤから発生するコーナリングスティフネス、後輪タイヤから発生するコーナリングスティフネス、車両の質量、速度、横すべり角、及びヨーレートを出力する、請求項2に記載のマネージャ。
【請求項4】
前記横方向の運動を表す前記第1情報が、曲率又は曲率半径であり、
前記第2出力部は、前記第2情報として、速度、横すべり角、及びヨーレートを出力する、請求項2に記載のマネージャ。
【請求項5】
プロセッサと、メモリと、記憶装置とを備え、車両に搭載されたマネージャのコンピューターが実行する制御方法であって、
複数のADASアプリケーションから、車両の横方向の運動を表す情報である第1情報を含む複数の行動計画を受け付けるステップと、
前記複数の行動計画を調停するステップと、
前記調停の結果に基づく運動要求を、複数のアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配するステップと、
前記第1情報を生成するために用いる第2情報を、前記複数のADASアプリケーションの少なくとも1つに出力するステップと、を含む、制御方法。
【請求項6】
プロセッサと、メモリと、記憶装置とを備え、車両に搭載されたマネージャのコンピューターに実行させる制御プログラムであって、
複数のADASアプリケーションから、車両の横方向の運動を表す情報である第1情報を含む複数の行動計画を受け付けるステップと、
前記複数の行動計画を調停するステップと、
前記調停の結果に基づく運動要求を、複数のアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配するステップと、
前記第1情報を生成するために用いる第2情報を、前記複数のADASアプリケーションの少なくとも1つに出力するステップと、を含む、制御プログラム。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマネージャを搭載した、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されるマネージャなどに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転支援機能(自動運転、自動駐車、先進運転支援など)の機能を実現する複数のアプリケーションが車両に実装されている。複数のアプリケーションを実装する場合、車両に搭載された1つのアクチュエータシステム(例えばステアリング装置)に対して複数の要求が発生する場合がある。
【0003】
特許文献1や特許文献2には、複数のアプリケーションからアクチュエータシステムに対して出力される複数の要求を受け付けて、この受け付けた複数の要求を調停し、その調停結果に基づいてアクチュエータシステムを駆動するための要求を出力する、制御装置(マネージャ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-032894号公報
【特許文献2】特開2020-032893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先進運転支援の機能を実現するADAS(Advanced Driver Assistance System)アプリケーションがマネージャに対して出力する車両の運動を制御するための要求には、車両の横方向の運動を表す情報が含まれる。しかしながら、ADASアプリケーションにおいて車両の横方向の運動を表す情報をどのように生成するかについては、具体的に検討されていなかった。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、車両の横方向の運動を表す情報を生成するために必要な情報をADASアプリケーションに対して出力するマネージャなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両に搭載されたマネージャであって、複数のADASアプリケーションから、車両の横方向の運動を表す情報である第1情報を含む複数の行動計画を受け付ける受付部と、複数の行動計画を調停する調停部と、調停部による調停結果に基づいて運動要求を算出する算出部と、運動要求を複数のアクチュエータシステムの少なくとも1つに分配する第1出力部と、第1情報を生成するために用いる第2情報を、複数のADASアプリケーションの少なくとも1つに出力する第2出力部と、を備える、マネージャである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、マネージャが、車両の横方向の運動を表す第1情報を生成するために必要な第2情報をADASアプリケーションに出力するので、ADASアプリケーションは、この第2情報に基づいて車両の横方向の運動を表す第1情報を容易に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係るシステムの概略構成を示すブロック図
【
図3】二輪車モデルの運動方程式を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の車両システムでは、マネージャが、車両の横方向の運動を表す舵角や曲率などを生成するために必要な情報をADASアプリケーションに出力する。これにより、ADASアプリケーションは、マネージャから取得した情報に基づいて車両の横方向の運動を表す舵角や曲率などを容易に生成することができる。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る車両に搭載されるシステムの構成例を示す概略図である。
図1に例示した車両システム1は、マネージャ10と、運転支援システム20と、複数のアクチュエータシステム31~33と、を備えている。車両システム1が備える各構成は、CAN(Controller Area Network)やイーサネット(登録商標)などの車載ネットワークを介して通信可能に接続されている。
【0012】
運転支援システム20は、実装される1つ以上のアプリケーション21~23を実行することにより、少なくとも車両の駆動制御及び制動制御を含む車両の運転を支援するための様々な機能を実現するための構成である。運転支援システム20が実装するアプリケーション21~23としては、自動運転の機能を実現する自動運転アプリケーション、自動駐車の機能を実現する自動駐車アプリケーション、及び先進運転支援の機能を実現するADASアプリケーションなどを例示できる。ADASアプリケーションには、衝突回避支援(PCSなど)の機能を実現するアプリケーション、前走車との車間距離を一定に保ちながら走行する前車追従走行(ACCなど)の機能を実現するアプリケーション、走行する車線の維持を行う車線維持支援(LKA、LTAなど)の機能を実現するアプリケーション、衝突の被害を軽減させるために自動的に制動をかける衝突被害軽減ブレーキ(AEBなど)の機能を実現するアプリケーション、車両の走行車線の逸脱を警告する車線逸脱警報(LDW、LDAなど)の機能を実現するアプリケーションなど、がある。
【0013】
運転支援システム20の各アプリケーション21~23は、図示しない各種センサなどから取得(入力)する車両の情報(認識センサ情報など)に基づいて、アプリケーションの要求として、アプリケーション単独での機能性(商品性)を担保した行動計画の要求を、マネージャ10にそれぞれ出力する。この行動計画には、車両の前後方向(縦方向)の運動を表す情報として、前後加速度や減速度などの要求が含まれる。また、行動計画には、車両の横方向の運動を表す情報(以下「第1情報」という)として、舵角や曲率(又は曲率半径)などの要求が含まれる。また、各アプリケーション21~23は、行動計画と共に、自身のアプリケーションを一意に特定することができる識別情報(アプリID)を、マネージャ10にそれぞれ出力することができる。このアプリIDは、アプリケーションごとに予めユニークに定められている。
【0014】
この運転支援システム20は、CPUなどのプロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスを有する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)などのコンピューターによって実現される。なお、運転支援システム20を構成するECUの数や、ECUが実装するアプリケーションの数は、特に限定されない。また、運転支援システム20として、アプリケーションごとにそれぞれのECUが設けられてもよい。例えば、自動運転アプリケーションが実装された自動運転ECU、自動駐車アプリケーションが実装された自動駐車ECU、及び先進運転支援アプリケーションが実装されたADAS-ECUによって、運転支援システム20が構成されてもよい。また、ACC機能を実現するADASアプリケーションが実装されたECU、LKA機能を実現するADASアプリケーションが実装されたECU、及びAEB機能を実現するADASアプリケーションが実装されたECUのように、複数のADASアプリケーションが複数のECUに実装されてもよい。
【0015】
複数のアクチュエータシステム31~33は、運転支援システム20の各アプリケーション21~23が出力する行動計画の要求を実現するための実現システムの1つである。アクチュエータシステム31~33の一例としては、ステアリングシャフトにステアリングホイールの操舵を補助するトルクを発生させることが可能なステアリングアクチュエータ(EPSモータなど)を含み、このステアリングアクチュエータの動作を制御することによって行動計画の要求の一部又は全部を実現させる電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)システムがある。また、アクチュエータシステム31~33の一例としては、車両に制動力を発生させることが可能なブレーキアクチュエータ(油圧ブレーキなど)を含み、このブレーキアクチュエータの動作を制御することによって行動計画の要求の一部又は全部を実現させる電動ブレーキシステム(EBS:Electronic Brake System)がある。また、アクチュエータシステム31~33の一例としては、車両に制駆動力を発生させることが可能なパワートレインアクチュエータ(エンジンやトランスミッションなど)を含み、パワートレインアクチュエータの動作を制御することによって行動計画の要求の一部又は全部を実現させるパワートレインシステムがある。なお、車両に搭載されるアクチュエータシステムの数は、図示した3つに限定されない。
【0016】
マネージャ10は、運転支援システム20の複数のアプリケーション21~23から受け付ける行動計画の要求に基づいて、車両の運動に関する制御内容を決定し、この決定した制御内容に基づいて複数のアクチュエータシステム31~33の少なくとも1つに対して必要な要求を出力する。換言すると、マネージャ10は、アクチュエータシステム31~33のうちの1つ又は複数に対して運動要求の分配を行う。
【0017】
このマネージャ10は、いわゆる車両の運動に関わるADAS-MGRやVehicle-MGRなどとして、あるいはADAS-MGRやVehicle-MGRの一部として機能し、車両の動きを制御する。
図2に、マネージャ10の機能ブロック図の一例を示す。
図2に示すマネージャ10は、受付部11と、調停部12と、第1出力部13と、第2出力部14、記憶部15と、を含む。
【0018】
受付部11は、運転支援システム20のアプリケーション21~23が出力する1つ又は複数の行動計画の要求を受け付ける。本実施形態における行動計画には、ADASアプリケーションが出力する車両の横方向の運動を表す第1情報として舵角もしくは曲率(又は曲率半径)が含まれる。受付部11が受け付けた行動計画の要求は、調停部12に出力される。
【0019】
調停部12は、受付部11が運転支援システム20のアプリケーション21~23から受け付けた1つ又は複数の行動計画の要求を調停する。この調停の処理としては、所定の選択基準(例えば、Min選択)に基づいて複数の行動計画の中から1つの行動計画を選択することが例示できる。また、他の調停処理として、複数の行動計画に基づいて新たな行動計画を設定することもできる。行動計画の要求が1つである場合には、その行動計画が調停結果として採用される。
【0020】
第1出力部13は、調停部12における行動計画の要求の調停結果に基づく運動要求を、アクチュエータシステム31~33の少なくとも1つに対して出力する。この運動要求は、調停された行動計画を実現させるための車両の動きを要求する物理量であり、出力先のアクチュエータシステムに好適な物理量である。この物理量は、必要に応じて変換される。例えば、出力先のアクチュエータシステムがEPSシステムである場合には、運動要求として車輪の舵角(ステアリングの操舵角)が出力される。
【0021】
第2出力部14は、運転支援システム20のアプリケーション21~23が行動計画に含める車両の横方向の運動を表す第1情報を生成するために用いる情報やデータ(以下「第2情報」という)を、複数のアプリケーション21~23の少なくとも1つに出力する。第2情報には、一例として、車両の諸元(定数)に関する情報である車両の重心点から前輪までの距離、車両の重心点から後輪までの距離、前輪タイヤから発生するコーナリングスティフネス、及び後輪タイヤから発生するコーナリングスティフネスや、車両の状態量(変数)に関する情報である車両の質量、車両の走行速度、車両の重心点の横すべり角(又は車体スリップ角)、及びヨーレートの、1つ以上が含まれる。車両の諸元(定数)に関する情報は、後述する記憶部15に記憶されている。車両の状態量(変数)に関する情報は、図示しない種々の車載機器から取得することができる。
【0022】
より具体的には、第2出力部14は、受付部11がアプリケーション21~23から受け付ける第1情報が舵角である場合、車両の重心点から前後輪までの距離、前後輪タイヤから発生するコーナリングスティフネス、車両の質量、速度、横すべり角、及びヨーレートを、第1情報を生成するアプリケーションに対して第2情報として出力する。また、第2出力部14は、第2出力部14は、受付部11がアプリケーション21~23から受け付ける第1情報が曲率又は曲率半径である場合、車両の速度、横すべり角、及びヨーレートを、第1情報を生成するアプリケーションに対して第2情報として出力する。
【0023】
記憶部15は、第2出力部14がアプリケーション21~23に対して出力する第2情報である、車両の重心点から前輪までの距離、車両の重心点から後輪までの距離、前輪タイヤから発生するコーナリングスティフネス、及び後輪タイヤから発生するコーナリングスティフネスなどの、車両の諸元(定数)に関する情報を記憶する。
【0024】
なお、以上説明した、車両に搭載されたマネージャ10、運転支援システム20、及び複数のアクチュエータシステム31~33の構成は一例であって、適宜、追加、置換、変更、省略などが可能である。また、各機器の機能は適宜1つの機器に統合したり複数の機器に分散したりして実装することが可能である。
【0025】
[第1情報の生成手法]
図3及び
図4をさらに参照して、アプリケーション21~23において行われる、第2情報に基づく第1情報の生成手法を説明する。
【0026】
(1)第1例
第1例は、第1情報として舵角を生成する手法を説明する。
図3は、二輪車モデルの運動方程式を説明するための図である。
【0027】
車両の運動方程式は、コーナリングフォースがy軸方向に作用すると仮定すると、質量mの車両が一定の速度Vで走行する場合には、車両の重心点の横すべり角(又は車体スリップ角)βと車両のヨーレートγとに関して、次の式[1]のように求められる。ここで、Iは、慣性モーメントである。lfは、車両の重心点から前輪までの距離である。lrは、車両の重心点から後輪までの距離である。CFfは、前輪のコーナリングフォースである。CFrは、後輪のコーナリングフォースである。
【数1】
【0028】
上述した式[1]は、次の式[2]で示すコーナリングフォースの線形モデルを代入すると、下記の式「3」によって表現することができる。Kfは、前輪タイヤから発生するコーナリングスティフネスである。Krは、後輪タイヤから発生するコーナリングスティフネスである。
【数2】
【数3】
【0029】
さらに、上述した式[3]は、次の式[4]で示すタイヤの横すべり角の関係を代入すると、下記の式「5」のように表現することができる。ここで、βfは、前輪タイヤの横すべり角であり、βrは、後輪タイヤの横すべり角である。また、δは、前輪の舵角である。
【数4】
【数5】
【0030】
上述した式[5]を前輪の舵角δに着目して整理すると、次の式[6]のように表すことができる。
【数6】
【0031】
このように、アプリケーション21~23は、第2情報としてマネージャ10から取得する車両の重心点から前輪までの距離lf、車両の重心点から後輪までの距離lr、前輪タイヤから発生するコーナリングスティフネスKf、後輪タイヤから発生するコーナリングスティフネスKr、車両の質量m、速度V、横すべり角β、及びヨーレートγに基づいて、前輪の舵角δ(第1情報)を容易に生成することができる。
【0032】
(2)第2例
第2例は、第2情報として曲率を生成する手法を説明する。
図4は、曲率と加速度との関係を説明するための図である。
【0033】
図4において、接線の速度Vは、曲率半径ρ及び角速度ωに基づいて、次の式[7]で表せる。
【数7】
【0034】
上述した式[7]は、次の式[8]のように変形することができ、曲率半径ρ及びその曲率半径の逆数である曲率1/ρは、車両の速度V、重心点の横すべり角(又は車体スリップ角)β、及び車両のヨーレートγを用いて表現することができる。
【数8】
【0035】
従って、法線方向の加速度は、次の式[9]で求めることができる。
【数9】
【0036】
このように、アプリケーション21~23は、第2情報としてマネージャ10から取得する車両の速度V、横すべり角β、及びヨーレートγに基づいて、曲率1/ρ又は曲率半径ρ(第1情報)を容易に生成することができる。
【0037】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係る車両システムによれば、マネージャが、車両の横方向の運動を表す情報(第1情報)を生成するために必要な情報(第2情報)を、ADASアプリケーションの少なくとも1つに出力する。これにより、第2情報を取得するADASアプリケーションは、マネージャからフィードバック取得した第2情報としての車両の諸元や状態量などに基づいて、取得時における車両の横方向の運動を表す情報(舵角や曲率など)を算出し、この算出した値に基づいて要求する行動計画を適宜補正することができる。
【0038】
また、本開示の一実施形態に係る車両システムでは、車両の横方向の運動を表す情報(第1情報)を生成するために必要な情報(第2情報)は、マネージャが保持又は生成する。これにより、第2情報の精度を向上させることができる。また、ADASアプリケーションは、車両の諸元などの情報を予め設定及び保持する必要がなくなり、アプリケーションの仕様を簡略化することができる。
【0039】
また、本開示の一実施形態に係る車両システムでは、車両の横方向の運動を表す情報(第1情報)として曲率又は曲率半径を用いる場合、その算出に必要な情報(データ)が少なくて済むため、ADASアプリケーションを実装した電子制御ユニット(ECU)の処理負荷の軽減、及びマネージャとADASアプリケーション間の通信負荷の軽減を、実現することが可能となる。
【0040】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、車両に搭載されるマネージャだけでなく、電子制御ユニット、電子制御ユニットとマネージャとを含むシステム、プロセッサとメモリと記憶装置とを備えたマネージャが実行する制御方法、制御プログラム、制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記憶媒体、あるいはマネージャを備えた車両など、として捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示は、車両などに搭載されるマネージャなどに有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 車両システム
10 マネージャ
11 受付部
12 調停部
13 第1出力部
14 第2出力部
15 記憶部
20 運転支援システム
21~23 アプリケーション
31~33 アクチュエータシステム