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特開2022-187754静電荷像現像用二成分現像剤、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置
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  • 特開-静電荷像現像用二成分現像剤、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187754
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】静電荷像現像用二成分現像剤、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20221213BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20221213BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20221213BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G03G9/097 371
G03G9/093
G03G9/113 351
G03G9/097 375
G03G9/087 331
G03G9/087 325
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095921
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 慎也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 育子
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA09
2H500AA11
2H500AB04
2H500CA03
2H500CA06
2H500CA34
2H500CB02
2H500CB05
2H500CB07
2H500CB12
2H500EA39B
2H500EA43E
2H500EA44B
2H500EA57E
2H500EA60A
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、高速印刷に対応したトナーの帯電立ち上がり性を向上し、更に環境変動下においても、トナーの帯電量が安定であり、連続印字の際に高画質な画像を安定に出力できる二成分現像剤、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置を提供することである。
【解決手段】本発明の静電荷像現像用二成分現像剤は、トナー母体粒子及び前記トナー母体粒子の表面に配置された外添剤を含むトナー粒子と、芯材粒子及び前記芯材粒子の表面に配置された被覆部を有するキャリア粒子と、を含有し、前記外添剤は、下記一般式(1)で表される表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子を含有し、かつ、前記キャリア粒子表面の鉄元素含有率(atomic%)の値が、下記式(1)を満たすことを特徴とする静電荷像現像用二成分現像剤。
一般式(1):(R4-n-Si-(X)
式(1) 4.0≦{AFe/(A+A+AFe)}×100≦15.0
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母体粒子及び前記トナー母体粒子の表面に配置された外添剤を含むトナー粒子と、芯材粒子及び前記芯材粒子の表面に配置された被覆部を有するキャリア粒子と、を含有する静電荷像現像用二成分現像剤であって、
前記外添剤は、下記一般式(1)で表される表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子を含有し、かつ、
前記キャリア粒子表面のX線光電子分光法(XPS)で測定される鉄元素含有率(atomic%)の値が、下記式(1)を満たすことを特徴とする静電荷像現像用二成分現像剤。
一般式(1):(R4-n-Si-(X)
〔Rは、置換基を有してもよい炭素数が1~4の直鎖アルキル基を表す。Xはハロゲノ基又はアルコキシ基であり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。nは、1から3の整数を表す。〕
式(1) 4.0≦{AFe/(A+A+AFe)}×100≦15.0
(ただし、AFe、A及びAは、それぞれ、キャリア粒子表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を表す。)
【請求項2】
前記外添剤が、シリカ粒子、アルミナ粒子、又はチタン酸化合物粒子であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用二成分現像剤。
【請求項3】
前記芯材粒子の形状係数(SF-1)が、115~150の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用二成分現像剤。
【請求項4】
前記トナー母体粒子が、コア・シェル構造であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用二成分現像剤。
【請求項5】
前記コア・シェル構造が、コア部分は非晶性ビニル樹脂が主成分であり、シェル部分は非晶性ポリエスル樹脂が主成分であることを特徴とする請求項4に記載の静電荷像現像用二成分現像剤。
【請求項6】
少なくとも、像保持体の帯電工程、静電荷像形成工程、静電荷像現像工程、トナー画像転写工程、トナー画像定着工程、及びクリーニング工程を有する電子写真画像形成方法であって、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用二成分現像剤を用いることを特徴とする電子写真画像形成方法。
【請求項7】
少なくとも、像保持体の帯電手段、静電荷像形成手段、静電荷像現像手段、トナー画像転写手段、トナー画像定着手段、及びクリーニング手段を備える電子写真画像形成装置であって、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用二成分現像剤を用いることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用二成分現像剤、それを用いた電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置に関する。より詳しくは、高速印刷に対応したトナーの帯電立ち上がり性を向上し、更に環境変動下においても、トナーの帯電量が安定であり、連続印字の際に高画質な画像を安定に出力できる静電荷像現像用二成分現像剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機及びプリンターが普及するにつれて、印刷に使用される静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)には、より高度な性能が求められている。近年では、製版工程がなく、直接印刷するプリントオンデマンド(POD)と呼ばれるデジタル印刷技術が注目されている。前記PODは、小ロット印刷と、1枚毎に印刷内容を変えたバリアブル印刷にも対応できることから、従来のオフセット印刷と比較して使い勝手に優れており、更に、高速印刷化や省エネルギー対応への要求が高まっている。
【0003】
高速印刷化や省エネルギー対応としては、ごく短時間の摩擦によって、所望のトナー帯電量を得るためにトナーの帯電立ち上がり性の向上が必要である。また、トナーの帯電に係る高信頼性への対応としては、現像部位におけるトナー帯電量が常にプロセスで許容された設定範囲内に入るように安定したトナーの帯電量制御が求められている。さらに、湿度の高い条件ではトナー帯電量が低下して、トナーが白地の部分を現像したり(「カブリの発生」ともいう。)、乾燥時は過剰帯電(「オーバーチャージ」ともいう。)によって画質濃度が低下するなどの不具合が発生するため、環境変動安定性への対応として、トナーの帯電量変動を低減することが求められている。トナー製造においては、このように帯電特性が高度に制御された高品質なトナーの開発が急務となっている。
【0004】
この問題を解決するために、炭素数が比較的長いアルキルアルコキシシランで処理されたシリカを使用する事で帯電量を安定化することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、炭素数が比較的長いアルキルアルコキシシランで処理されたシリカ粒子は容器等への付着性が高く、トナーに使用した場合はトナー流動性が低下する傾向がある。さらに帯電立ち上がりが遅いため、印字率の高い画像を連続印刷する場合には、所望の帯電量まで立ち上がらず、低い帯電状態となるため、画像品質が劣化しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-235046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高速印刷に対応したトナーの帯電立ち上がり性を向上し、更に環境変動下においても、トナーの帯電量が安定であり、連続印字の際に高画質な画像を安定に出力できる静電荷像現像用二成分現像剤、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、トナー母体粒子及び外添剤を含むトナー粒子と、被覆部を有する芯材粒子を含むキャリア粒子で構成され、前記外添剤が特定の表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子を含有し、かつ、前記キャリア粒子表面における前記芯材粒子由来の鉄元素含有率の値が特定の範囲内である静電荷像現像用二成分現像剤によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0009】
1.トナー母体粒子及び前記トナー母体粒子の表面に配置された外添剤を含むトナー粒子と、芯材粒子及び前記芯材粒子の表面に配置された被覆部を有するキャリア粒子と、を含有する静電荷像現像用二成分現像剤であって、
前記外添剤は、下記一般式(1)で表される表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子を含有し、かつ、
前記キャリア粒子表面のX線光電子分光法(XPS)で測定される鉄元素含有率(atomic%)の値が、下記式(1)を満たすことを特徴とする静電荷像現像用二成分現像剤。
一般式(1):(R4-n-Si-(X)
〔Rは、置換基を有してもよい炭素数が1~4の直鎖アルキル基を表す。Xはハロゲノ基又はアルコキシ基であり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。nは、1から3の整数を表す。〕
式(1) 4.0≦{AFe/(A+A+AFe)}×100≦15.0
(ただし、AFe、A及びAは、それぞれ、キャリア粒子表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を表す。)
【0010】
2.前記外添剤が、シリカ粒子、アルミナ粒子、又はチタン酸化合物粒子であることを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用二成分現像剤。
【0011】
3.前記芯材粒子の形状係数(SF-1)が、115~150の範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用二成分現像剤。
【0012】
4.前記トナー母体粒子が、コア・シェル構造であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用二成分現像剤。
【0013】
5.前記コア・シェル構造が、コア部分は非晶性ビニル樹脂が主成分であり、シェル部分は非晶性ポリエスル樹脂が主成分であることを特徴とする第4項に記載の静電荷像現像用二成分現像剤。
【0014】
6.少なくとも、像保持体の帯電工程、静電荷像形成工程、静電荷像現像工程、トナー画像転写工程、トナー画像定着工程、及びクリーニング工程を有する電子写真画像形成方法であって、
第1項から第5項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用二成分現像剤を用いることを特徴とする電子写真画像形成方法。
【0015】
7.少なくとも、像保持体の帯電手段、静電荷像形成手段、静電荷像現像手段、トナー画像転写手段、トナー画像定着手段、及びクリーニング手段を備える電子写真画像形成装置であって、
第1項から第5項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用二成分現像剤を用いることを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記手段により、高速印刷に対応したトナーの帯電立ち上がり性を向上し、更に環境変動下においても、トナーの帯電量が安定であり、連続印字の際に高画質な画像を安定に出力できる静電荷像現像用二成分現像剤、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置を提供することができる。
【0017】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0018】
本発明の静電荷像現像用二成分現像剤は、トナー母体粒子及び前記トナー母体粒子の表面に配置された外添剤を含むトナー粒子を含み、前記外添剤は、前記一般式(1)で表される、炭素数が1~4の直鎖アルキル基を有するアルキルアルコキシシラン系表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子を含有することを特徴とする。
【0019】
一般に用いられる表面修飾剤であるヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理等などは、付着力が低い為に、トナーの高流動化が可能となるが、トナー母粒子への付着力も弱い為に、キャリア汚染による帯電量低下を引き起こす問題がある。また、前記HMDSのような単鎖の処理剤では、未反応のOH基に水分子が接近しやすい為、電荷リークが発生し、特に高温高湿環境下で帯電量が低下する傾向にある。
【0020】
一方、トナー母体粒子への付着力をアルキルアルコキシシラン処理等で改善する場合は、帯電制御は、極性基などの電子の授受が発生しやすい状態を効率的に構築していく必要がある。しかしながら、長鎖のアルキル基を導入した場合は、水分子の接近を防ぐことができるが、OH基とキャリアが接触するよりも長鎖のアルキル基が直接摩擦帯電する為、特に低温低湿環境下で過剰帯電を引き起こしやすい傾向にある。
【0021】
したがって、水の影響を排除して、直接OH基がキャリアと接触する環境を構築していく必要があると考え検討した結果、炭素数が1~4の直鎖アルキル基を有するアルコキシシランやハロゲン化シランで外添剤の表面を処理することが帯電性に関して好ましいことを見出した。
【0022】
また、本発明の静電荷像現像用二成分現像剤は、前記トナー粒子と、芯材粒子及び前記芯材粒子の表面に配置された被覆部を有するキャリア粒子とを含有し、前記キャリア粒子表面のX線光電子分光法(XPS)で測定される前記芯材粒子由来の鉄元素含有率(atomic%)の値が、4.0~15.0の範囲内であることを特徴とする。
【0023】
キャリア粒子の最表面が樹脂で被覆されていると、接触した外添剤が過剰帯電し、結果としてトナーの帯電量も過剰帯電となりやすい。過剰帯電、すなわち飽和帯電量値が高い状態は、トナーとキャリア粒子が静電的に強く付着した状態となるため、トナーの入れ替わり性が悪くなり、トナーの帯電量分布が広がりやすくなる。それに伴い濃度変化が顕著に起きやすくなるという問題がある。
【0024】
一方、キャリア粒子表面に芯材粒子が露出している場合、摩擦帯電時において芯材粒子からの放電を通して電荷漏洩できる為に、上記過剰帯電を抑制することができるが、芯材粒子の露出面積が大きすぎると、低抵抗になり電荷漏洩しやすい。したがって、芯材粒子の露出面積を一定の範囲に制御することで、トナーの帯電立ち上がり性を向上することができることを見出した。本発明では、前記芯材粒子の露出面積を、前記式(1)で表される、キャリア粒子表面のX線光電子分光法(XPS)で測定される鉄元素含有率(atomic%)の値を調整することで制御することができる。
【0025】
上記式(1)は、キャリア粒子表面における鉄元素含有率の関係を表す。キャリア粒子表面における主たる原子は、炭素、酸素及び鉄である。炭素は、主に樹脂に由来する。本発明においては、芯材粒子としては、酸化鉄系材料を使用するため、鉄は、主に芯材に由来する。式(1)は、キャリア粒子表面における主たる原子(炭素、酸素及び鉄)のうち鉄の占める割合を表しており、この割合を特定の範囲内とすることにより、キャリアの表面に、芯材粒子が適度に露出するものである。
【0026】
以上から、炭素数が1~4の直鎖アルキル基を有するアルコキシシランやハロゲン化シランで外添剤の表面を処理し、かつ、被覆部を有するキャリア粒子における芯材粒子の露出面積を制御することで、帯電立ち上がり性の向上と、湿度等の環境変動下においても、トナーの帯電量を安定化できる静電荷像現像用二成分現像剤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の電子写真画像形成装置の構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の静電荷像現像用二成分現像剤は、トナー母体粒子及び前記トナー母体粒子の表面に配置された外添剤を含むトナー粒子と、芯材粒子及び前記芯材粒子の表面に配置された被覆部を有するキャリア粒子と、を含有する静電荷像現像用二成分現像剤であって、前記外添剤は、前記一般式(1)で表される表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子を含有し、かつ、前記キャリア粒子表面のX線光電子分光法(XPS)で測定される鉄元素含有率(atomic%)の値が、前記式(1)を満たすことを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0029】
本発明の実施態様としては、前記外添剤が、シリカ粒子、アルミナ粒子、又はチタン酸化合物粒子であることが、トナーの帯電立ち上がり性と環境変動下におけるトナーの帯電量の安定性及び流動性の向上の観点から、好ましい。
【0030】
また、前記芯材粒子の形状係数(SF-1)が、115~150の範囲内であることが、環境変動下におけるトナーの帯電量の安定性向上及び現像ニップ部へのトナーの搬送性の観点から、好ましい。
【0031】
前記トナー母体粒子が、コア・シェル構造を有し、前記コア・シェル構造が、コア部分は非晶性ビニル樹脂が主成分であり、シェル部分は非晶性ポリエスル樹脂が主成分であることが、トナーの低温定着性と環境変動下におけるトナーの帯電量の安定性向上の観点から、好ましい。
【0032】
本発明の電子写真画像形成方法(以下、「画像形成方法」ともいう。)は、少なくとも、像保持体の帯電工程、静電荷像形成工程、静電荷像現像工程、トナー画像転写工程及びトナー画像定着工程を有する電子写真画像形成方法であって、本発明の静電荷像現像用二成分現像剤を用いることを特徴とする。
【0033】
また、本発明の電子画像形成装置(以下、「画像形成装置」ともいう。)は、少なくとも、像保持体の帯電手段、静電荷像形成手段、静電荷像現像手段、トナー画像転写手段及びトナー画像定着手段を備える電子写真画像形成装置であって、本発明の静電荷像現像用二成分現像剤を用いることを特徴とする。
【0034】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0035】
≪本発明の静電荷像現像用二成分現像剤の概要≫
本発明の静電荷像現像用二成分現像剤(以下、単に「二成分現像剤」という場合がある。)は、トナー母体粒子及び前記トナー母体粒子の表面に配置された外添剤を含むトナー粒子と、芯材粒子及び前記芯材粒子の表面に配置された被覆部を有するキャリア粒子と、を含有する静電荷像現像用二成分現像剤であって、
前記外添剤は、下記一般式(1)で表される表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子を含有し、かつ、前記キャリア粒子表面のX線光電子分光法(XPS)で測定される鉄元素含有率(atomic%)の値が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
一般式(1):(R4-n-Si-(X)
〔Rは、置換基を有してもよい炭素数が1~4の直鎖アルキル基を表す。Xはハロゲノ基又はアルコキシ基であり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。nは、1から3の整数を表す。〕
式(1) 4.0≦{AFe/(A+A+AFe)}×100≦15.0
(ただし、AFe、A及びAは、それぞれ、キャリア粒子表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を表す。)
【0036】
本発明の静電荷像現像用二成分現像剤(以下、「トナー」ともいう。)は、トナー母体粒子と、トナー母体粒子表面に配置される外添剤とを備えるトナー粒子を含む。
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。本発明に係る「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂を含有するものであり、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。
【0037】
さらに、本発明の静電荷像現像用二成分現像剤は、前記トナー粒子に加えて、芯材粒子及び前記芯材粒子の表面に配置された被覆部を有するキャリア粒子とを含有し、二成分現像剤を構成する。
【0038】
まず、本発明の構成要素についてキャリア粒子から詳細に説明する。
〔1〕キャリア粒子
本発明の静電荷像現像用二成分現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子とを混合して2成分現像剤として使用する。キャリア粒子の例には、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子が含まれる。キャリア粒子の例には、磁性体からなる芯材粒子と、芯材粒子の表面を被覆する被覆材を被覆部とを有する被覆型キャリア粒子と、樹脂中に磁性体の微粉末が分散されてなる樹脂分散型のキャリア粒子とが含まれる。キャリア粒子は、感光体へのキャリア粒子の付着を抑制する観点から、被覆型キャリア粒子が好ましく、本発明に係るキャリア粒子は被覆型キャリア粒子である。
【0039】
芯材粒子は、例えば、磁場によってその方向に強く磁化する磁性体である。磁性体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。磁性体の例には、鉄、ニッケル及びコバルトなどの強磁性を示す金属、これらの金属を含む合金もしくは化合物及び熱処理することにより強磁性を示す合金が含まれる。
【0040】
強磁性を示す金属又はそれを含む化合物の例には、鉄と、下記式(a)で表わされるフェライトと、下記式(b)で表わされるマグネタイトとが含まれる。式(a)及び式(b)中のMは、例えば、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、リチウム(Li)等、から選ばれる1以上の1価又は2価の金属を表す。
【0041】
MO・Fe 式(a)
MFe 式(b)
【0042】
強磁性を示す合金の例には、マンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-錫などのホイスラー合金と、二酸化クロムとが含まれる。
【0043】
芯材粒子は、各種フェライトが好ましい。被覆型キャリア粒子の比重は、芯材粒子を構成する金属の比重よりも小さい。よって、各種フェライトは、現像器内における撹拌の衝撃力をより小さくできる。
【0044】
被覆部は、芯材粒子の表面に配置されている。被覆部は、被覆材を有する。被覆材は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。被覆材は、キャリア粒子における芯材粒子の被覆に利用される公知の樹脂を使用できる。被覆材として使用される樹脂の例には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニルなどのポリビニル樹脂及びポリビニリデン樹脂;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体やスチレン-アクリル酸共重合体などの共重合体樹脂;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂又はその変性樹脂;ポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリカーボネート樹脂;尿素-ホルムアルデヒド樹脂などのアミノ樹脂;エポキシ樹脂が含まれる。変性樹脂の例には、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなどによる変性樹脂が含まれる。
【0045】
被覆材として使用される樹脂は、キャリア粒子の水分吸着性を低減させる観点と、被覆部における芯材粒子との密着性を高める観点とから、シクロアルキル基を有する樹脂が好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基及びシクロデシル基が含まれる。シクロアルキル基は、シクロヘキシル基又はシクロペンチル基が好ましく、被覆部と芯材粒子との密着性の観点から、シクロへキシル基がさらに好ましい。
【0046】
シクロアルキル基を有する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~800000が好ましく、100000~750000がより好ましい。当該樹脂におけるシクロアルキル基を含む構成単位の含有量は、例えば10~90質量%である。当該樹脂中のシクロアルキル基の含有量は、例えば、P-GC/MSやH-NMRなどの公知の機器分析法により求めることができる。
【0047】
本発明に係るキャリア粒子は、芯材粒子が樹脂で被覆されていると、トナーが飛散せず、安定した画像濃度が得られる。しかし、芯材粒子が完全に樹脂で被覆されると、磁性を有する材料からなる芯材粒子が露出しないため、キャリア粒子の抵抗は高くなる。よって、キャリア粒子は、芯材粒子が適度に露出するように、初期に樹脂で被覆される必要がある。
【0048】
本発明に係るキャリア粒子表面における芯材粒子の露出面積(露出の程度)は、前記キャリア粒子表面のX線光電子分光法(XPS)で測定される鉄元素含有率(atomic%)の値を、下記式(1)を満たすように調整することで達成される。
式(1) 4.0≦{AFe/(A+A+AFe)}×100≦15.0
(ただし、AFe、A及びAは、それぞれ、キャリア粒子表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を表す。)
【0049】
ここで、「初期」とは、トナー粒子とキャリア粒子とを混合して静電荷像現像用二成分現像剤を作製した段階を意味する。前記鉄元素含有率の値が4.0atomic%未満の場合、キャリア粒子の抵抗値が高くなりすぎ、キャリア粒子とトナー粒子との静電付着力が高まり、トナー粒子の入れ替わり性が悪くなり、カブリや画質低下を引き起こす。一方、鉄元素含有率の値が15.0atomic%超の場合、キャリア粒子自体の抵抗値が低下することで、トナー粒子の帯電量が低くなり、画像品質の悪化を引き起こす。
【0050】
なお、芯材粒子の材料が酸化鉄系以外の場合についても同様に、芯材粒子の材料に含まれる主たる元素において、下記に示す元素含有率の値を特定の範囲内とすることにより、キャリアの表面に、芯材粒子が適度に露出し、同様の効果が得られると考えられる。
【0051】
以下に示す式(2)は、キャリア粒子表面における主たる元素(炭素、酸素及び鉄)のうち鉄の占める割合(「鉄元素含有率」ともいう。)を表しており、この割合を特定の範囲内とすることによって、キャリア粒子の表面に芯材粒子が適度に露出する。
【0052】
式(2) 鉄元素含有率(atomic%)=AFe/(A+A+AFe
(ただし、AFe、A及びAは、それぞれ、キャリア粒子表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を表す。)
【0053】
式(2)で表される鉄元素含有率は、以下の方法で測定できる。
X線光電子分光測定(XPS測定)による表面元素組成分析において、炭素についてはC1sスペクトルを、鉄についてはFe2p3/2スペクトルを、酸素についてはO1sスペクトルを測定する。これらの各々の元素のスペクトルに基づいて、それぞれ、「A」、「A」及び「AFe」と表されるキャリア表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を求め、式(2)より算出する。
【0054】
なお、XPS測定装置としては、サーモフィッシャーサイエンティフィック製、K-Alphaを使用し、測定は、X線源としてAlモノクロマチックX線を用い、加速電圧を7kV、エミッション電流を6mVに設定して行う。
【0055】
キャリア粒子の体積平均粒子径は、体積基準のメジアン径で20~100μmの範囲が好ましく、25~80μmの範囲がより好ましい。キャリア粒子の体積基準のメジアン径は、例えば、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置(HELOS;SYMPATEC社)や、後述するトナー粒子の体積基準のメジアン径の測定方法を用いて測定できる。
【0056】
芯材粒子の形状係数(SF-1)は、115以上150以下であることが好ましい。形状係数が115以上の場合、測定した粒子の形状が真球に近くならないため、キャリアの嵩密度(g/cc)が大きくなり過ぎず、現像ニップ部に静電荷像現像用二成分現像剤が過剰に搬送されることがなく、カブリやトナーの飛散などが発生しにくい利点がある。
【0057】
一方、形状係数が150以下の場合、芯材粒子表面の凹凸の起伏が適度であり、芯材粒子内部に空隙が発生しにくいため、芯材粒子が湿度に応じた水分の含有を抑制できる。したがって、当該水分による1粒子当たりの抵抗値が低下することによる帯電保持能の著しい低下がなく、カブリ現像等の不具合の発生を抑制できる。
【0058】
また、上記範囲内であることにより、芯材粒子の表面が適度に凹凸を有するため、樹脂を被覆させたキャリアにおいて、式(2)で表される鉄元素含有率の値を上記範囲内に調整することができる。なお、形状係数を大きくすることにより、芯材粒子の凹凸が大きくなるため芯材粒子が露出しやすくなり、式(2)で表される鉄元素含有率の値も大きくなる。
【0059】
芯材粒子の形状係数は、以下の方法で測定する。キャリア芯材を、走査型電子顕微鏡により、150倍にてランダムに100個以上の粒子の写真を撮影し、スキャナーにより取り込んだ写真画像を、画像処理解析装置LUZEX AP((株)ニレコ社製)を用いて、芯材粒子の最大長及び投影面積を測定する。「最大長」とは、粒子の像の最大差渡し長さのことをいう。なお、形状係数は、芯材粒子100個における、上記式によって算出される形状係数SF-1の平均値によって算出される値である。
式(3) SF-1=(粒子の最大長)/(粒子の投影面積)×(π/4)×100
【0060】
形状係数が115~150程度の芯材粒子の作製方法としては、焼成工程において、焼成温度を1300~1500℃と従来よりも高めに設定することなどが好ましい例として挙げられる。
【0061】
キャリア粒子の動的抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上1.0×1011Ω・cm以下が好ましい。キャリア粒子の動的抵抗率が1.0×10Ω・cm以上の場合、キャリア粒子自体の電荷保持能が低下することなく、トナー粒子の帯電量を維持することができる。一方、キャリア粒子の動的抵抗率が1.0×1011Ω・cm以下の場合、キャリア粒子上のトナー粒子と逆極の電荷が蓄積されることなく、トナー粒子とキャリア粒子との静電付着力が適度となり、トナー粒子の入れ替わり性が良くなる。そのため、カブリや画質低下を引き起こすことが抑制できる。
【0062】
キャリア粒子の動的抵抗率は、感光体ドラムと同寸法のアルミ製電極ドラムを感光体ドラムに置き換え、現像スリーブ上にキャリア粒子を供給して磁気ブラシを形成させ、この磁気ブラシを電極ドラムと摺擦させ、このスリーブと感光体ドラムとの間に電圧(500V)を印加して両者間に流れる電流を測定することにより、キャリア粒子の動的抵抗率は下記式(4)により求める。
【0063】
式(4) DVR(Ω・cm)=(V/I)×(N×L/Dsd)
【0064】
DVR:キャリア抵抗(Ω・cm)
V:現像スリーブとドラム間の電圧(V)
I:測定電流値(A)
N:現像ニップ幅(cm)
L:現像スリーブ長(cm)
DSD:現像スリーブと感光体ドラム間距離(cm)
【0065】
例えば、V=500V、N=1cm、L=6cm、Dsd=0.6mmとして測定することができる。
【0066】
芯材粒子及び被覆部を有する被覆型のキャリア粒子の製造方法の例には、湿式コート法、乾式コート法が含まれる。湿式コートの例には、流動層式スプレーコート法、浸漬式コート法、重合法が含まれる。
【0067】
「流動層式スプレーコート法」とは、被覆材として使用される樹脂を溶剤に溶解した塗布液を、流動層を用いて磁性体粒子の表面にスプレー塗布し、次いで乾燥して被覆部を作製する方法である。「浸漬式コート法」とは、被覆材として使用される樹脂を溶剤に溶解した塗布液中に、磁性体粒子を浸漬して塗布処理し、乾燥して被覆部を作製する方法である。「重合法」とは、反応性化合物を溶剤に溶解した塗布液中に、磁性体粒子を浸漬して塗布処理し、次いで熱等を加えて重合反応を行い、被覆部を作製する方法である。
【0068】
「乾式コート法」とは、芯材粒子の表面に被覆材として使用される樹脂を付着させ、その後機械的衝撃力を加えて、芯材粒子の表面に付着した樹脂を溶融又は軟化させて固着させ被覆部を作製する方法である。具体的には、芯材粒子と、被覆材として使用される樹脂と、低抵抗微粒子とを非加熱下、もしくは加熱下で機械的衝撃力が付与できる高速撹拌混合機を用い、高速撹拌して当該混合物に衝撃力を繰り返して付与し、磁性体粒子の表面に溶解あるいは軟化させて固着したキャリアを作製する。被覆の条件として、加熱する場合には、80~130℃が好ましく、衝撃力を起こす風速は、加熱中は10m/s以上が好ましく、冷却時はキャリア粒子同士の凝集を抑制する観点から5m/s以下が好ましい。衝撃力を付与する時間は、20~60分が好ましい。
【0069】
本発明に係るトナー粒子と、キャリア粒子とを混合することにより、二成分現像剤を得ることができる。混合の際に用いられる混合装置としては特に限定されない。混合装置の例には、ナウターミキサー、Wコーン、V型混合機が含まれる。静電荷像現像用二成分現像剤中のトナー粒子の含有量(トナー濃度)は、特に制限されないが、4.0~8.0質量%が好ましい。
【0070】
〔2〕トナー粒子
本発明の静電荷像現像用二成分現像剤は、トナー母体粒子と、トナー母体粒子表面に配置される外添剤とを含むトナー粒子を含有する。
【0071】
〔2.1〕外添剤
本発明に係る外添剤は、下記一般式(1)で表される表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子を含有する。
一般式(1):(R4-n-Si-(X)
〔Rは、置換基を有してもよい炭素数が1~4の直鎖アルキル基を表す。Xはハロゲノ基又はアルコキシ基であり、それぞれ同じでも異なっていてもよい。nは、1から3の整数を表す。〕
【0072】
帯電の立ち上がりは、電子の授受が起きやすい極性基を利用することが有効であるが、HMDS処理のような短鎖の表面修飾剤では、外添剤表面の未反応のOH基に水分子が接近しやすいため、帯電立ち上がりよりも帯電漏洩が優先的に発生してしまう。
【0073】
一方で、長鎖のアルキル基(C6~)を導入した場合は、水分子の接近を防ぐことができるが、最表面に高抵抗のアルキル基が導入されるため、長鎖のアルキル基とキャリアが摩擦帯電する確率が高くなり、電子の授受が連鎖的に発生しにくく帯電立ち上がりは遅くなる。
【0074】
炭素数が1~4の範囲内の直鎖アルキル基を有するアルコキシシランやハロゲン化シランは、アルキル基、ハロゲノ基、アルコキシ基による立体構造による水分子の接近抑制や、アルコキシ基と未反応のOH基との水素結合ネットワーク形成などによるアルキル基から極性基への電子移動がスムーズになり帯電立ち上がり性が格段に向上する。
【0075】
また、キャリア粒子最表面の樹脂被覆部と接触した外添剤が静電的に付着することで、キャリア粒子の流動性が向上し、単位時間あたりのトナーや外添剤との摩擦帯電回数が増加し、帯電立ち上がり速度が速くなるが、飽和帯電量値が高くなりやすい。一方で、キャリア芯材粒子が露出することで、余剰の電荷を放電により電荷漏洩することができ、過剰帯電を抑制することができる。
【0076】
本発明に係る外添剤は、無機微粒子として、従来公知の金属酸化物粒子を使用することができ、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタン酸化合物粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、及び酸化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独でも又は2種以上を併用してもよい。
【0077】
中でも、シリカ粒子、アルミナ粒子、又はチタン酸化合物粒子であることが好ましい。シリカ粒子は、トナー流動性向上に効果的であり、そのため帯電立ち上がりが良好であり均一に帯電しやすい。一方で、チタニア粒子は低抵抗であるが故に、帯電立ち上がり性は良好であるが、高温高湿環境下で電荷保持が困難となり帯電量が低下してしまう問題がある。アルミナ粒子やチタン酸化合物粒子は、シリカ粒子よりも抵抗が十分低く、チタニア粒子よりも抵抗が高い特徴がある。そのためシリカ粒子に比べて電荷の授受が起きやすく、帯電立ち上がりが良好であり、チタニア粒子よりも抵抗が高いために、電荷漏洩も起きにくいため、トナー帯電量の均一化を実現することができる。
【0078】
(シリカ粒子)
シリカは、ゾル・ゲル法、気相法、溶融法等公知の方法で作製したものが使用できる。ゾル・ゲル法によるシリカの製造方法は、アルカリ触媒が含まれるアルコールの存在下に、原料であるテトラアルコキシシランと、触媒であるアルカリ触媒とをそれぞれ供給しつつ、テトラアルコキシシランを反応させて、シラン粒子を生成する方法である。粒度分布や形状を制御しやすいという特徴がある。
【0079】
気相法(ガス燃焼法)は、ケイ素塩化物を気化し高温の水素炎中において気相反応によってシリカを合成する。また、溶融法は、微粉砕されたケイ石シリカと金属シリコーン粉末や炭素粉末などの還元剤、またスラリー状にするための水とからなる混合原料を、還元雰囲気下の高温で熱処理してSiOガスを発生させ、それを速やかに酸素を含む雰囲気下で冷却して得られる。
【0080】
(アルミナ粒子)
アルミナとは、Alで表される酸化アルミニウムをさすものであり、α型、γ型、σ型、またその混合体等の形態が知られており、形状としてもその結晶系の制御によって立方形状のものから球状のものまである。アルミナは、公知の方法により作製することができる。アルミナを作製する方法としては、バイヤー法が一般的であるが、高純度かつナノサイズのアルミナを得るために、加水分解法、気相合成法、火炎加水分解法、水中火花放電法等が挙げられる。
【0081】
(チタン酸化合物粒子)
本発明に係るチタン酸化合物粒子に用いられるチタン酸化合物としては、たとえば、酸化チタン(IV)と他の金属酸化物又は金属炭酸塩から生成されるいわゆるメタチタン酸塩と呼ばれる下記一般式で表される化合物がその代表的なものである。
【0082】
一般式(2) MITiO又はMIITiO
(式中、MIは1価の金属原子、MIIは2価の金属原子を表すものである。)
【0083】
本発明に使用可能なチタン酸化合物は、MIITiOで表される2価の金属原子と結合した構造のチタン酸化合物が好ましい。2価の金属原子と結合したチタン酸化合物の具体例としては、たとえば、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸マグネシウム(MgTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)等が挙げられる。これらの2価の金属原子と結合したチタン酸化合物の中でも、環境への影響等の視点及び帯電量を長期にわたり一定レベルに維持させるという視点から、チタン酸カルシウム(CaTiO)が好ましい。
【0084】
本発明に使用可能なチタン酸化合物は、公知の方法により作製することが可能である。本発明に使用可能なチタン酸化合物の作製方法としては、たとえば、メタチタン酸と呼ばれる水和物の形態を有する酸化チタン(IV)化合物TiO・HOを経て作製する方法がある。この方法は、前記酸化チタン(IV)化合物を炭酸カルシウム等の炭酸金属塩あるいは金属酸化物と反応させた後、焼成処理によりチタン酸カルシウムに代表されるチタン酸化合物を生成する方法である。なお、メタチタン酸等の酸化チタンの加水分解物は、鉱酸解膠品とも呼ばれ、酸化チタン粒子が分散した液の形態を有するものである。この酸化チタン加水分解物よりなる鉱酸解膠品に水溶性の炭酸金属塩や金属酸化物を添加し、その混合液を50℃以上にしてアルカリ水溶液を添加しながら反応することによりチタン酸化合物が作製される。
【0085】
鉱酸解膠品の代表例の1つであるメタチタン酸は、亜硫酸SOの含有量が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下で、塩酸によりpH0.8~1.5に調整して解膠処理したものである。
【0086】
チタン酸化合物の作製に使用されるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液に代表される苛性アルカリ水溶液が好ましい。また、酸化チタンの加水分解物と反応させる化合物としては、ストロンチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ナトリウム等の硝酸化合物、炭酸化合物、塩化化合物等が挙げられる。
【0087】
チタン酸化合物粒子の製造工程では、酸化チタンの水和物や加水分解物と金属酸化物等の添加比率、反応時における酸化チタン水和物や加水分解物の濃度、アルカリ水溶液添加時の温度や添加速度等を調整して、チタン酸化合物粒子の粒径を制御することができる。また、反応工程で炭酸化合物の生成を防ぐために窒素ガス雰囲気下で反応を行うことが好ましい。
【0088】
アルカリ水溶液を添加する時の温度は、高いほど結晶性のものが得られるが、実用的には50℃以上101℃以下の範囲が適切である。また、アルカリ水溶液の添加速度は得られるチタン酸化合物粒子の粒子径に影響を与える傾向があり、添加速度が遅いほど粒子径の大きなチタン酸化合物粒子が得られ、添加速度が速いほど粒子径の小さなものが形成される傾向がある。アルカリ水溶液の添加速度は、仕込原料に対し0.001~1.0当量/時、好ましくは0.005~0.5当量/時で、所望の粒子径に応じて適宜調整することが可能である。アルカリ水溶液の添加速度は目的に応じて途中で変更することも可能である。
【0089】
本発明のトナーは、外添剤として公知の他の外添剤をさらに含んでもよい。また、これら無機微粒子は、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上等のために、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等によって、光沢処理、疎水化処理等が行われていてもよい。
【0090】
さらに、他の外添剤として、有機微粒子も用いられうる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。
【0091】
外添剤として滑材も用いられうる。滑材は、クリーニング性や転写性をさらに向上させる目的で使用されるものであって、具体的には、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0092】
(外添処理)
後述するトナー母体粒子に対する外添剤の外添混合処理は、機械式混合装置を用いることができる。機械式混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、タービュラーミキサー等が使用できる。これらの中で、ヘンシェルミキサーのように処理される粒子に剪断力を付与できる混合装置を用いて、混合時間を長くする又は撹拌羽根の回転周速を上げる等の混合処理を行えばよい。また、複数種類の外添剤を使用する場合、トナー粒子に対して全ての外添剤を一括で混合処理するか、あるいは外添剤に応じて複数回に分けて分割して混合処理してもよい。
【0093】
外添剤の混合方法は、上記機械式混合装置を用いて、混合強度、すなわち撹拌羽根の周速、混合時間、あるいは、混合温度等を制御することによって外添剤の解砕度合いや付着強度を制御することができる。
【0094】
これら外添剤の添加量の総量は、トナー母体粒子100質量部に対して、0.1~10質量%の範囲内が好ましく、1~5質量%の範囲内がより好ましい。
【0095】
〔2.2〕トナー母体粒子
本発明に係るトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂として、トナーの低温定着性と環境変動下におけるトナーの帯電量の安定性向上の観点から、非晶性樹脂としてビニル系樹脂を含有することが好ましい。すなわち、トナー母体粒子が、ビニル基を有する結着樹脂を含有することが好ましい。
【0096】
ビニル基を有する結着樹脂をトナー母体粒子に含有させるには、前記トナー母体粒子が、コア・シェル構造であり、前記コア・シェル構造が、コア部分は非晶性ビニル樹脂が主成分であり、シェル部分は非晶性ポリエスル樹脂が主成分である実施態様を好ましい例として挙げることができる。
【0097】
すなわち、前記トナー母体粒子は、コア・シェル構造を有することが好ましい。コア・シェル構造とすることで、コア・シェル間に界面が存在する為、非相溶度が高い場合は、トナー帯電時に発生した電荷が効率的にトラップされるために電荷漏洩を防ぐことができ、相溶度を高くすることで、電荷漏洩度合いを制御することができる。なお、シェル部は、コア粒子を完全に被覆するものに限られず、一部コア粒子表面が露出されていてもよい。コア・シェル構造は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて、トナーの断面の構造を観察することによって確認することができる。
【0098】
コア部を構成する樹脂としては、非晶性ビニル樹脂が主成分であり、シェル部を構成する樹脂は非晶性ポリエスル樹脂が主成分であることが好ましい。ここで、「主成分」とは、構成する樹脂総量に対して、55質量%以上含有することをいい、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有することである。
【0099】
また、コア部樹脂をスチレン・アクリル樹脂とし、シェル部樹脂をポリエステル樹脂とするといったようなコア部樹脂とシェル部樹脂の構成を変えるといった方法や、ポリエステル樹脂にスチレン・アクリル樹脂ユニットを導入したりする方法により、コア部形成樹脂とシェル部形成樹脂の相溶の程度をコントロールすることができる。
さらに、本発明に係るトナー母体粒子は、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。
【0100】
〔2.2.1〕結着樹脂
<非晶性樹脂>
(ビニル系樹脂)
本発明に係るビニル系樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
上記のビニル樹脂の中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂が好ましい。したがって、以下では、非晶性樹脂としてのスチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂(以下、「スチレン・(メタ)アクリル樹脂」とも称する。)について説明する。
【0102】
非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークが認められないものをいう。つまり、通常は融点(示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて測定されるDSC曲線において、明確な吸熱ピーク)を有さず、比較的高いガラス転移点(Tg)を有するものである。より具体的には、非晶性樹脂の示差走査熱量測定装置によるTgは、35~70℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50~65℃の範囲内である。非晶性樹脂のTgが35℃以上であることにより、トナーに十分な熱的強度を与えることができ、十分な耐熱保管性が得られる。また、非晶性樹脂のTgが70℃以下であることにより、十分な低温定着性が確実に得られる。
【0103】
非晶性樹脂のTgは、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418-82に規定された方法(DSC法)によって測定される。すなわち、測定試料(非晶性樹脂)4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、示差走査カロリメーター「DSC8500」(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度-10~120℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分にて、昇温-降温-昇温の温度制御を行い、その2回目の昇温におけるデータを基に解析を行う。第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間における最大傾斜を示す接線との交点の値をガラス転移点とする。
【0104】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。
【0105】
また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステルを含むものである。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」とを総称したものである。
【0106】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の一例を以下に示す。
【0107】
スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0108】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0109】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、40~90質量%の範囲内であることが好ましい。また、当該樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、10~60質量%の範囲内であることが好ましい。さらに、スチレン・(メタ)アクリル樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に加え、以下の単量体化合物を含んでいてもよい。このような単量体化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。これら単量体化合物は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0110】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂中の上記単量体化合物に由来する構成単位の含有率は、当該樹脂の全量に対し、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~100000の範囲内であることが好ましい。
【0111】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量分布から算出された重量平均分子量(Mw)であり、GPCによる分子量測定は、以下のように行う。
【0112】
すなわち、装置「HLC-8320」(東ソー社製)及びカラム「TSKgel guardcolumn SuperHZ-L」及び「TSKgel SuperHZM-M」(東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流す。測定試料(結晶性ポリエステル樹脂)を、室温において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターで処理して試料溶液を得る。この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。
【0113】
検量線測定用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical社製の分子量が6×10、2.1×10、4×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2×10、4.48×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を測定し、検量線を作成する。
【0114】
スチレン・(メタ)アクリル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。また、分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばn-オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0115】
(非晶性ポリエスル樹脂)
非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。
具体的な非晶性ポリエステル樹脂については特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性ポリエステル樹脂が用いられ得る。
【0116】
非晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法は、特に限られるものではなく、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を製造することができる。
【0117】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、5000~100000の範囲内であることが好ましく、5000~50000の範囲内であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が5000以上であると、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、100000以下であると、低温定着性をより向上させることができる。
【0118】
非晶性ポリエステル樹脂の調製に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの例としては、特に制限されないが、以下が挙げられる。
【0119】
《多価カルボン酸》
テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。
これらの多価カルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
これら多価カルボン酸の中、芳香族カルボン酸を使用することが好ましく、また、より良好な定着性を確保するために架橋構造又は分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、11,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
《多価アルコール》
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
これら多価アルコールの中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また、より良好な定着性を確保するため、架橋構造又は分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
【0123】
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、及び/又はモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシ基、及び/又はカルボキシ基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整してもよい。
【0124】
モノカルボン酸としては酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等を挙げることができ、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどを挙げることができる。
【0125】
本発明に用いられる非晶性ポリエステル樹脂としては、スチレン・アクリル系重合体等から構成されるビニル系重合セグメントと、非晶性ポリエステル樹脂から構成されるポリエステル系重合セグメントとが、両反応性単量体を介して結合したハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を用いることもできる。
【0126】
ビニル系重合セグメントの含有比率は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の総質量に対して、5~30質量%の範囲内であることが好ましく、10~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0127】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂が、5~30質量%の範囲内でビニル系重合セグメントを含有することで、電荷保持と電荷漏洩のバランスをコントロールすることが可能となる。
【0128】
<結晶性樹脂>
(結晶性ポリエステル樹脂)
【0129】
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂として、結晶性樹脂を含有することが低温定着性の観点から好ましい。
【0130】
結晶性樹脂は、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
【0131】
結晶性樹脂としては、上記特性を有するものであれば特に制限はなく、本技術分野における従来公知の結晶性樹脂を用いることができる。その具体例としては、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂等が挙げられる。結晶性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0132】
なかでも結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ここで、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)およびその誘導体と、2価以上のアルコール(多価アルコール)およびその誘導体との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、上記吸熱特性を満たす樹脂である。
【0133】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、55~90℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは60~85℃の範囲内である。結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記範囲であることにより、十分な低温定着性及び優れた画像保存性が得られる。なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。ここに、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、上述の結晶性ポリエステル樹脂単独の示差走査熱量測定によって得られたDSC曲線において、2回目の昇温過程における融解ピークのピークトップ温度である。なお、当該DSC曲線において融解ピークが複数存在する場合は、一番吸熱量の大きい融解ピークのピークトップ温度を融点とする。
【0134】
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸成分とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1~3のアルキルエステルなどが挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸成分としては、飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0135】
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール成分とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、上述の多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒下で反応させる一般的なポリエステルの重合法を用いて製造することができ、例えば直接重縮合やエステル交換法を、単量体の種類によって使い分けて製造することが好ましい。
【0137】
また、直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸を、前記多価カルボン酸及び/又は多価アルコールと組み合わせて用いることができる。結晶性ポリエステル樹脂を形成するための直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、5-ヒドロキシペンタン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、7-ヒドロキシペンタン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、9-ヒドロキシノナン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、14-ヒドロキシテトラデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸:及びこれらのヒドロキシカルボン酸が環化したラクトン化合物、又は炭素数1~3のアルコールとのアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
また、結晶性ポリエステル樹脂を形成する際に、多価カルボン酸と多価アルコール成分とを用いることで反応を制御することが容易になり、目的の分子量の樹脂を得ることができるため好ましい。
【0139】
結晶性ポリエステル樹脂の製造に使用することのできる触媒としては、例えばチタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどのチタン触媒や、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドなどのスズ触媒などが挙げられる。
【0140】
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1~1/1.5、さらに好ましくは1.2/1~1/1.2の範囲内である。
【0141】
結晶性ポリエステル樹脂は、その酸価が5~30mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~25mgKOH/g、さらに好ましくは15~25mgKOH/gの範囲内である。この酸価は、1gの試料に含まれる酸の中和に必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmg単位で表したものである。樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に準じて下記手順により測定される。
【0142】
(試薬の準備)
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶解し、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を調製する。JIS特級水酸化カリウム7gをイオン交換水5mLに溶解し、エチルアルコール(95体積%)を加えて1リットルとする。炭酸ガスに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を調製する。標定はJIS K0070-1992の記載に従う。
【0143】
(本試験)
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として調製したフェノールフタレイン溶液を数滴加えて、調製した水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は指示薬の薄い紅色が約30秒間続いた時とする。
【0144】
(空試験)
試料を用いない(すなわち、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液のみとする。)こと以外は、上記本試験と同様の操作を行う。
【0145】
本試験と空試験の滴定結果を下記式(a)に代入して酸価を算出する。
【0146】
式(a) A=〔(C-B)×f×5.6〕/S
A:酸価(mgKOH/g)
B:空試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
C:本試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
f:0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
【0147】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性および優れた長期耐熱保管安定性を確実に両立して得るという観点から、3000~100000であると好ましく、4000~50000であるとより好ましく、5000~20000であると特に好ましい。上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシル基の当量[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシル基の当量[COOH]との比[OH]/[COOH]が、1.5/1~1/1.5であると好ましく、1.2/1~1/1.2であるとより好ましい。
【0148】
結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、5~20質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~10質量%の範囲内である。結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が5質量%以上であることにより、十分な低温定着性を確実に得ることができる。また、結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が20質量%以下であることにより、トナーの製造においてトナーに結晶性ポリエステル樹脂を確実に導入することができる。
【0149】
また、結晶性ポリエステル樹脂としては、スチレン・アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合してなるスチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を用いてもよい。
【0150】
「スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂」とは、結晶性のポリエステル分子鎖(結晶性ポリエステル重合セグメント)に、スチレン・アクリル共重合体分子鎖(スチレン・アクリル重合セグメント)を化学結合させた、ブロック共重合体構造のポリエステル分子から構成される樹脂のことである。
【0151】
結晶性ポリエステル重合セグメントの形成方法は、特に制限されない。当該重合セグメントの形成に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの具体的な種類ならびにこれらの単量体の重縮合条件は、上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0152】
一方、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を構成するスチレン・アクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。用いられるスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体は、特に制限されないが、例えば、下記のものから選択される1種又は2種以上が用いられうる。
【0153】
(1)スチレン単量体
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン及びこれらの誘導体など;
【0154】
(2)(メタ)アクリル酸エステル単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル(n-ブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体など;
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸双方を包含する。
【0155】
スチレン・アクリル重合セグメントは、上記の単量体に加え、以下の単量体をさらに用いて形成されていてもよい。
【0156】
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど;
【0157】
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど;
【0158】
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど;
【0159】
(6)N-ビニル化合物類
N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドンなど;
【0160】
(7)その他の単量体
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体など。
【0161】
スチレン・アクリル重合セグメントの形成方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。
【0162】
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントの含有割合は、特に制限されないが、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂100質量%に対して、60~99質量%の範囲内であることが好ましく、70~98質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0163】
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂におけるスチレン・アクリル重合セグメントの含有割合(以下、「スチレン・アクリル変性量」ともいう。)は、特に制限されないが、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂100質量%に対して、1~40質量%の範囲内であることが好ましく、2~30質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0164】
スチレン・アクリル変性量は、具体的には、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量、すなわち、結晶性ポリエステル重合セグメントとなる未変性の結晶性ポリエステル樹脂を合成するための単量体と、スチレン・アクリル重合セグメントとなるスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体と、これらを結合させるための両反応性単量体を合計した全質量に対する、スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の合計の質量の割合をいう。
【0165】
ここで、「両反応性単量体」とは、スチレン・アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとを結合する単量体で、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択される基と、スチレン・アクリル重合セグメントを形成するエチレン性不飽和基と、の双方を分子内に有する単量体である。
【0166】
両反応性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素数1~3個)のエステルであってもよいが、反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸が好ましい。この両反応性単量体を介してスチレン・アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合される。
【0167】
両反応性単量体の使用量は、低温定着性を向上させる観点から、スチレン・アクリル重合セグメントを構成する単量体の総量を100質量%として1~20質量%の範囲内が好ましい。
【0168】
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントとスチレン・アクリル重合セグメントとを化学結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0169】
(A)結晶性ポリエステル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該結晶性ポリエステル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、スチレン・アクリル重合セグメントを形成するためのスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させることにより、スチレン・アクリル重合セグメントを形成する方法;
【0170】
(B)スチレン・アクリル重合セグメントをあらかじめ重合しておき、当該スチレン・アクリル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸及び多価アルコールを反応させることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する方法;
【0171】
(C)結晶性ポリエステル重合セグメント及びスチレン・アクリル重合セグメントをそれぞれあらかじめ重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる形成方法。
【0172】
上記(A)~(C)の形成方法の中でも、(A)の方法は、生産工程を簡素化できる等の観点から好ましい。
【0173】
〔2.2.2〕その他の成分
(着色剤)
着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、又はランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、又はコバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、又はマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などを用いることができる。
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などを用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同15:4、又は同60などを用いることができ、これらの混合物も用いることができる。
【0174】
白色用の着色剤としては、無機顔料(例えば、チタンホワイト、ジンクホワイト、チタンストロンチウムホワイト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノケイ酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト等)、又は有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子等)が挙げられる。
【0175】
トナー母体粒子中における上記着色剤の含有量は、適宜に、そして独立して決めることができ、例えば画像の色再現性を確保する観点から、1~30質量%の範囲内であることが好ましく、2~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0176】
また、着色剤の粒子の大きさは、体積平均粒子径で、例えば10~1000nmの範囲内であることが好ましく、50~500nmの範囲内であることがより好ましく、80~300nmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0177】
当該体積平均粒子径は、カタログ値であってもよく、また、例えば着色剤の体積平均粒子径(体積基準のメジアン径)は、「UPA-150」(マイクロトラック・ベル株式会社製)によって測定することができる。
【0178】
(離型剤)
本発明に係るトナーは、離型剤(「ワックス」ともいう。)を含有し得る。離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
【0179】
具体的には、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0180】
離型剤としては、結着樹脂を構成する樹脂と相溶するなどの相互作用を有さないものを用いることが好ましい。
【0181】
これらのうちでも、低温定着時の離型性の観点から、融点の低いもの、具体的には、融点が60~100℃の範囲内のものを用いることが好ましい。また、離型剤としては、結着樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂の融点Mp1に対して、(Mp1-10)℃~(Mp1+20)℃程度の融点を有するものを用いることが好ましい。
【0182】
離型剤の含有割合は、トナー中に1~20質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~20質量%の範囲内である。トナーにおける離型剤の含有割合が上記範囲であることにより、分離性及び定着性が確実に両立して得られる。
【0183】
離型剤のトナーへの導入方法としては、後述のトナーの製造方法の凝集、融着工程において、離型剤のみよりなる粒子を非晶性樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子などとともに水系媒体中で凝集、融着する方法が挙げられる。離型剤粒子は、離型剤を水系媒体に分散させた分散液として得ることができる。離型剤粒子の分散液は、界面活性剤を含有する水系媒体を離型剤の融点より高い温度に加熱し、溶融した離型剤溶液を加えて機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、冷却することによって調製することができる。
【0184】
また、非晶性樹脂が例えばスチレン・アクリル樹脂である場合には、凝集、融着工程に供される非晶性樹脂粒子(スチレン・アクリル樹脂粒子)に離型剤をあらかじめ混合させておくことによって、当該離型剤をトナーへ導入することもできる。
【0185】
具体的には、スチレン・アクリル樹脂を形成するための重合性単量体の溶液に離型剤を溶解させる。この溶液を、界面活性剤を含有する水系媒体中に加え、上記と同様に機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、重合開始剤を加えて所望の重合温度で重合を行う、いわゆるミニエマルション重合法によって、離型剤を含有する非晶性樹脂粒子の分散液を調製することができる。
【0186】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。その例には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、及び、サリチル酸金属塩、が含まれる。
【0187】
本発明のトナーにおける荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して通常0.1~10質量部の範囲内であり、好ましくは0.5~5質量%の範囲内である。
【0188】
また、荷電制御剤の粒子の大きさは、数平均一次粒径で例えば10~1000nmの範囲内であり、好ましくは50~500nmの範囲内であり、より好ましくは80~300nmの範囲内である。
【0189】
本発明に係るトナー粒子においては、結着樹脂及び着色剤を含有するコア粒子と、該コア粒子の表面に被覆されるシェル層とを含むコア・シェル構造を有することが好ましい。なお、シェル層は、コア粒子を完全に被覆するものに限られず、一部コア粒子表面が露出されていてもよい。トナーがコア・シェル構造であることにより、帯電安定性や耐熱保管性を得ることができる。シェル層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、非晶性のポリエステル樹脂や非晶性ビニル樹脂などを用いることが好ましい。
【0190】
コア・シェル構造は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて、トナーの断面の構造を観察することによって確認することができる。
【0191】
〔2.2.3〕トナー粒子の製造方法
本発明のトナー粒子を製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。これらの中でも、粒径の均一性、形状の制御性観点からは、乳化凝集法を採用することが好ましい。
【0192】
本発明に係るトナー粒子は、具体的に以下の手順を含む製造方法によって製造することができる。ただし、ここでは一例を開示することに過ぎず、本発明は、以下の製造方法の例に制限されることがない。
【0193】
本発明に係るトナー粒子は、水系媒体中で作製される湿式法によって製造されることが好ましく、例えば乳化凝集法などによって製造することができる。
【0194】
乳化凝集法は、結着樹脂を構成する樹脂粒子の水性分散液を必要に応じてその他のトナー構成成分の粒子の水性分散液と混合し、pH調整による粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナーを製造する方法である。
【0195】
本発明に係るトナー粒子の好ましい製造方法として、乳化凝集法を用いてコア・シェル構造を有するトナー粒子を得る場合の一例を以下に示す。
(1)水系媒体中に着色剤粒子が分散されてなる着色剤粒子分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる樹脂粒子分散液(コア用/シェル用樹脂粒子分散液)を調製する工程
(3)着色剤粒子分散液とコア用樹脂粒子分散液とを混合して凝集用樹脂粒子分散液を得て、凝集剤の存在下で着色剤粒子及び結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子としての凝集粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
(4)コア粒子を含む分散液中に、シェル用の結着樹脂粒子を含むシェル用樹脂粒子分散液を添加して、コア粒子表面にシェル用の粒子を凝集、融着させてコア・シェル構造のトナー母体粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
(5)トナー母体粒子の分散液(トナー母体粒子分散液)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程(濾別、洗浄工程)
(6)トナー母体粒子を乾燥する工程(乾燥工程)
(7)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程(外添剤処理工程)
コア・シェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア粒子用の結着樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル用の結着樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。しかしながら、例えば、上記(4)の工程において、シェル用樹脂粒子分散液を添加せずに、単層の粒子から形成されるトナー粒子も同様に製造することができる。
【0196】
本発明において、「水系媒体」とは、水50~100質量%と、水溶性の有機溶媒0~50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒を使用することが好ましい。
【0197】
(1)着色剤粒子分散液調製工程
着色剤粒子分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、公知の種々の分散機を用いることができる。
【0198】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
【0199】
この着色剤粒子分散液調製工程において調製される着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の分散径は、体積基準のメジアン径で10~300nmの範囲内とされることが好ましい。この着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800(大塚電子社製)」で測定されるものである。
【0200】
着色剤は、後述の非晶性樹脂粒子分散液調製工程においてミニエマルション法を用いてあらかじめ非晶性樹脂を形成するための単量体溶液に溶解又は分散させることによってトナー中に導入してもよい。
【0201】
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる樹脂粒子分散液(コア用/シェル用樹脂粒子分散液)を調製する工程
結着樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、結着樹脂を界面活性剤が添加された水系媒体中に超音波分散法やビーズミル分散法などにより分散させる水系直接分散法、結着樹脂を溶剤中に溶解させ、これを水系媒体中に分散させて乳化粒子(油滴)を形成した後、溶剤を除去する溶解乳化脱溶法、転相乳化法などが挙げられる。
【0202】
この結着樹脂粒子分散液調製工程において得られる結着樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50~500nmの範囲にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA-EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
【0203】
結着樹脂が非晶性ビニル樹脂である場合、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、非晶性ビニル樹脂を形成するための重合性単量体に対して、必要に応じて離型剤や荷電制御剤などのトナー構成成分を溶解又は分散させた液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで、水溶性のラジカル重合開始剤を添加して、液滴中において重合反応を進行させることにより、非晶性樹脂粒子分散液を調製することもできる。なお、前記液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。このような非晶性樹脂粒子分散液調製工程においては、機械的エネルギーを付与して乳化(液滴の形成)する処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
【0204】
この結着樹脂粒子分散液調製工程において形成させる結着樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成のものとすることもでき、この場合、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合、第3段重合)する方法を採用することができる。
【0205】
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
【0206】
(重合開始剤)
使用される重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤を使用することができる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化-tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ヒドロペルオキシド、過ギ酸-tert-ブチル、過酢酸-tert-ブチル、過安息香酸-tert-ブチル、過フェニル酢酸-tert-ブチル、過メトキシ酢酸-tert-ブチル、過N-(3-トルイル)パルミチン酸-tert-ブチルなどの過酸化物類;2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス-(2-アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、4,4′-アゾビス-4-シアノ吉草酸、ポリ(テトラエチレングリコール-2,2′-アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらの中でも、水溶性重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス-(2-アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、4,4′-アゾビス-4-シアノ吉草酸を好ましく用いることができる。
【0207】
また、重合開始剤としては、過硫酸塩とメタ重亜硫酸塩、過酸化水素とアスコルビン酸のようなレドックス重合開始剤を用いることもできる。
【0208】
(連鎖移動剤)
結着樹脂(特には非晶性ビニル樹脂)粒子分散液調製工程においては、非晶性樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0209】
この結着樹脂粒子分散液調製工程において得られる非晶性ビニル樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50~500nmの範囲内にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA-EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
【0210】
(3)着色剤粒子分散液とコア用樹脂粒子分散液とを混合して凝集用樹脂粒子分散液を得て、凝集剤の存在下で着色剤粒子及び結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子としての凝集粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
【0211】
この工程は、上記の工程で形成した分散液に含まれる着色剤粒子と結着樹脂粒子を、水系媒体中で凝集、融着させるものである。この工程では、水系媒体中に結着樹脂粒子分散液及び着色剤粒子分散液を添加して、これらの粒子を凝集、融着させる。
【0212】
着色剤粒子分散液及び結着樹脂粒子分散液を凝集、融着する具体的な方法としては、水系媒体中に凝集剤を臨界凝集濃度以上となるよう添加し、次いで、結着樹脂粒子のガラス転移点以上であって、かつ、離型剤の融解ピーク温度以上の温度に加熱することによって、着色剤粒子、結着樹脂粒子の塩析を進行させると同時に融着を並行して進め、所望の粒径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するために加熱を継続して行う方法である。
【0213】
この方法においては、凝集剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くして速やかに結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱することが好ましい。この理由は明確ではないが、塩析した後の放置時間によっては粒子の凝集状態が変動して粒径分布が不安定になったり、融着させた粒子の表面性が変動したりする問題が発生することが懸念されるためである。この昇温までの時間としては通常30分以内であることが好ましく、10分以内であることがより好ましい。
【0214】
また、昇温速度としては1℃/分以上であることが好ましい。昇温速度の上限は特に規定されるものではないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から、15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、反応系がガラス転移点以上の温度に到達した後、当該反応系の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、トナーの成長と、融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナーの耐久性を向上させることができる。
【0215】
(凝集剤)
使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、少量で凝集を進めることが可能であり、凝集性の制御も容易であることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0216】
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
【0217】
(4)コア粒子を含む分散液中に、シェル用の結着樹脂粒子を含むシェル用樹脂粒子分散液を添加して、コア粒子表面にシェル用の粒子を凝集、融着させてコア・シェル構造のトナー母体粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
当該工程は、(3)の凝集剤の存在下で着色剤粒子及び結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子としての凝集粒子を形成する工程(凝集・融着工程)と同様に、コア粒子表面にシェル用の粒子を凝集、融着させてコア・シェル構造のトナー母体粒子を形成する。
【0218】
(5)トナー母体粒子の分散液(トナー母体粒子分散液)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程(濾別、洗浄工程)
(6)トナー母体粒子を乾燥する工程(乾燥工程)
濾別、洗浄工程及び乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。
【0219】
(7)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程(外添剤処理工程)。
この外添処理工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に、本発明に係る外添剤を添加、混合する工程である。
【0220】
外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に粉体状の外添剤を添加して混合する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を用いることができる。
【0221】
〔2.2.4〕トナー粒子の物性
<トナー粒子の平均粒子径>
本発明に係るトナー粒子においては、平均粒子径が、例えば体積基準のメジアン径で3~8μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~8μmの範囲内である。
【0222】
この平均粒子径は、例えば後述する乳化凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成などによって制御することができる。体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0223】
トナーの体積基準のメジアン径は、例えば、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出できる。
【0224】
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2~60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメジアン径とされる。
【0225】
<トナー粒子の平均円形度>
本発明に係るトナー粒子においては、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.930~1.000の範囲内であることが好ましく、0.950~0.995の範囲内であることがより好ましい。平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。
【0226】
本発明において、トナー粒子の平均円形度は、「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用いて測定されるものである。
【0227】
具体的には、試料(トナー粒子)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA-3000」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出される。
【0228】
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0229】
<トナー粒子の軟化点>
トナー粒子の軟化点は、当該トナーに低温定着性を得る観点から、80~120℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは90~110℃の範囲内である。
【0230】
トナー粒子の軟化点は、下記に示すフローテスターによって測定されるものである。
【0231】
具体的には、まず、20℃、50%RHの環境下において、試料(トナー)1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP-10A」(島津製作所社製)によって3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製し、次いで、この成型サンプルを、24℃、50%RHの環境下において、フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、軟化点とされる。
【0232】
〔3〕電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置
本発明の電子写真画像形成方法は、少なくとも、像保持体の帯電工程、静電荷像形成工程、静電荷像現像工程、トナー画像転写工程、トナー画像定着工程及びクリーニング工程を有する電子写真画像形成方法であって、少なくとも本発明の静電荷像現像用二成分現像剤を用いることを特徴とする。
【0233】
詳細には、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、少なくとも4色の本発明の静電荷像現像用二成分現像剤を用いて、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、前記像保持体表面のクリーニング工程とを有する。
【0234】
(帯電する工程)
本工程では、電子写真感光体を帯電させる。帯電させる方法は、特に限定されず、例えば、帯電ローラーによって電子写真感光体の帯電が行われる帯電ローラー方式など、公知の方法でよい。
【0235】
(静電荷像を形成する工程)
本工程では、電子写真感光体(静電荷像担持体)上に静電荷像を形成する。
【0236】
電子写真感光体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリシラン又はフタロポリメチンなどの有機感光体よりなるドラム状のものが挙げられる。
【0237】
静電荷像の形成は、例えば、電子写真感光体の表面を帯電手段により一様に帯電させ、露光手段により電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行われる。なお、静電荷像とは、このような帯電手段によって電子写真感光体の表面に形成される像である。
【0238】
帯電手段及び露光手段としては、特に限定されず、電子写真方式において一般的に使用されているものを用いることができる。
【0239】
(現像する工程)
現像する工程は、静電荷像を、トナー(一般的には、トナーを含む乾式現像剤)により現像してトナー像を形成する工程である。
【0240】
トナー像の形成は、例えば、トナーを含む乾式現像剤を用いて、トナーを摩擦撹拌させて帯電させる撹拌器と、回転可能なマグネットローラーとからなる現像手段を用いて行われる。
【0241】
具体的には、現像手段においては、例えば、トナーとキャリアとが混合撹拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラーの表面に保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラーは、電子写真感光体近傍に配置されているため、マグネットローラーの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって電子写真感光体の表面に移動する。その結果、静電荷像がトナーにより現像されて電子写真感光体の表面にトナー像が形成される。
【0242】
(転写する工程)
本工程では、記録媒体へのトナー像の転写をする。
【0243】
トナー像の記録媒体への転写は、トナー像を記録媒体に剥離帯電することにより行われる。
【0244】
転写手段としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラーなどを用いることができる。
【0245】
また、転写する工程は、例えば、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、このトナー像を記録媒体上に二次転写する態様の他、電子写真感光体上に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する態様などによって行うこともできる。
【0246】
(定着する工程)
本発明に係る定着工程では、トナーを用いて形成された未定着画像(トナー像)が転写された記録材を、加熱された定着ベルト又は定着ローラーと、加圧部材との間を通過させることにより、当該未定着画像を当該記録材に定着させる工程を有する。用いられる定着ベルト又は定着ローラーが、本発明に係る定着部材であるときに、画像形成装置の紙出力速度が高速化(複写速度70cpm以上、いわゆるSeg.5以上の画像形成装置を使用)しても、高い定着分離性能を発揮し、かつ画像ムラを起こさない効果を得ることができる。
【0247】
定着工程の方式としては、具体的には、例えば、定着回転体としての定着ベルト又は定着ローラーと、当該定着ベルト又は定着ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧部材としての加圧ローラーとにより構成されてなるベルト定着方式又はローラー定着方式のものが挙げられる。
【0248】
(クリーニングする工程)
本工程では、感光体、中間転写体などの現像剤担持体上には、画像形成に使用されなかった又は転写されずに残った現像剤を現像剤担持体上から除去する。
【0249】
クリーニングの方法は、特に限定されないが、先端が感光体等のクリーニング対象に当
接して設けられた、感光体表面を擦過するブレードが用いられる方法であることが好ましい。
【0250】
本発明の電子写真画像形成方法において、有彩色又は黒色トナーの画像は、最終的には記録媒体上に転写され形成される。
【0251】
記録媒体としては、特に制限されず、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙又はコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙等の紙類;ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の樹脂製フィルム;布などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、記録媒体の色は特に限定されず、種々の色の記録媒体を使用することができる。
【0252】
また、本発明の電子写真画像形成装置は、少なくとも、像保持体の帯電手段、静電荷像形成手段、静電荷像現像手段、トナー画像転写手段、トナー画像定着手段及びクリーニング手段を備える電子写真画像形成装置であって、本発明の静電荷像現像用二成分現像剤を用いることを特徴とする。
【0253】
詳細には、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と。本発明の静電荷像現像用トナーセットを用いて、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、クリーニング手段、とを備える。
【0254】
本発明の電子写真画像形成装置は、例えば、図1に示すような画像形成装置を用いることができ、図1はその一例における構成を示す断面概要図である。
この画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、垂直方向に縦列配置された4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C及び10Bkと、中間転写体ユニット7と、給紙手段21及び定着手段24とを有する。画像形成装置100の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0255】
中間転写体ユニット7は、ローラー71、72、73及び74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとからなる。
【0256】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkは、それぞれ、ドラム状の感光体1Y、1M、1C及び1Bkを中心に有し、その周囲に配置された帯電手段2Y、2M、2C及び2Bkと、露光手段3Y、3M、3C及び3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C及び4Bkと、感光体1Y、1M、1C及び1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C及び6Bkを有する。
画像形成装置100は、感光体1Y、1M、1C及び1Bkとして、上記の本発明に係る感光体を備える。
【0257】
画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkは、それぞれ、イエロー色、マゼンタ色、シアン色及び黒色のトナー像を形成する。
本発明の画像形成システムにおける、帯電工程、露光工程及び現像工程は、感光体上にトナー像を形成する工程であって、画像形成装置100においては、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkで、本発明に係る感光体1Y、1M、1C及び1Bk及び本発明に係るトナーを用いて、以下のとおり行われる。
なお、トナーは上記のようにキャリアともに混合されて二成分現像剤として用いることができる。
【0258】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0259】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを配置し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
【0260】
帯電手段2Yは、感光体1Yに対して一様な電位を与える手段である。本発明においては、帯電手段としては、接触又は非接触のローラー帯電方式のもの等が挙げられるが、接触のローラー帯電方式のものであることが本発明の効果がより有効となる点で好ましい。
【0261】
露光手段3Yは、帯電手段2Yによって一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電荷像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、又は、レーザー光学系等が用いられる。
【0262】
現像手段4Yは、例えばマグネットを内蔵し、二成分現像剤を保持して回転する現像スリーブ及び感光体1Yとこの現像スリーブとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
【0263】
クリーニング手段6Yは、先端が感光体1Yの表面に当接するよう設けられたクリーニングブレードと、このクリーニングブレードより上流側に設けられた、感光体1Yの表面に接触するブラシローラーとにより構成される。
クリーニングブレードは、感光体1Yに付着した残留トナーを除去する機能とともに、感光体1Yの表面を擦過する機能を有する。
【0264】
ブラシローラーは、感光体1Yに付着した残留トナーの除去、クリーニングブレードで除去された残留トナーの回収機能とともに、感光体1Y表面を擦過する機能を有する。すなわち、ブラシローラーは、感光体1Y表面と接触し、その接触部においては、感光体1Yと進行方向が同方向に回転し、感光体1Y上の残留トナーや紙粉を除去するとともに、クリーニングブレードで除去された残留トナーを搬送し回収する。
【0265】
ここで、本発明に係る感光体は、当該感光体が有する感光層中に電荷輸送物質(1)又は(2)を含有することで、メモリー性能が担保されている。
また、本発明に係るトナーは、外添剤としてランタンドープチタン酸化合物粒子を含有することで、トナーの帯電量が制御され、感光体へのトナーの付着力を弱めてクリーニング時のふき取り性を確保しており、クリーニング性能に優れた画像形成システムが提供される。
これにより、感光体への直接のダメージが軽減されるとともに、感光体上への付着力低下によるフィルミング発生が抑制される。このようにして、本発明の画像形成システムにおいては、感光体がクリーニング性能とメモリー性能を両立しつつ、高い耐久性を維持できることで、長期使用においても高画質の画像を安定して供給できる。
【0266】
画像形成装置100を用いた画像形成システムにおいて、上記感光体上に形成されたトナー像を転写材に転写する転写工程は、以下に説明するとおり、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、このトナー像を転写材上に2次転写する態様である。
【0267】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色のトナー像は、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkにより、中間転写体ユニット7が有する回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
無端ベルト状中間転写体70は、複数のローラー71、72、73及び74により巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体である。
【0268】
無端ベルト状中間転写体70上で合成されたカラー画像は、次いで、転写材(定着された最終画像を担持する画像支持体:例えば普通紙、透明シート等)Pに転写される。
具体的には、給紙カセット20内に収容された転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、レジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5bに搬送される。
そして、二次転写ローラー5bにて、無端ベルト状中間転写体70から転写材P上にカラー画像が一括転写(二次転写)される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0269】
定着手段24は、例えば、内部に加熱源を備えた加熱ローラーと、この加熱ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラーとにより構成されてなる熱ローラー定着方式のものが挙げられる。
【0270】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラー5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0271】
画像形成処理中、一次転写ローラー5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラー5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。二次転写ローラー5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0272】
また、画像形成装置100においては、装置本体Aから、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、中間転写体ユニット7とからなる筐体8を、支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0273】
なお、図1に示す画像形成装置100を用いて、カラーのレーザープリンターにおける画像形成システムを説明したが、本発明の画像形成システムは、モノクローのレーザープリンターやコピー機にも同様に適用可能である。また、露光光源もレーザー以外の光源、例えばLED光源を用いてもよい。
【実施例0274】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0275】
<外添剤の作製>
<外添剤1~12の作製>
個数平均一次粒子径が30nmの気相法により作製されたシリカ粒子に、窒素雰囲気下、撹拌しながら、純水3.0質量部を噴霧した。これに表面修飾剤であるジメチルジクロロシラン15質量部、ジエチルアミン1.0質量部を噴霧し、180℃で1時間熱撹拌し、その後冷却し、減圧下で乾燥を実施し外添剤1を得た。
同様に外添剤2~12の作製は、個数表面修飾剤を表Iに記載の材料に変更して同様の処理を行った。
【0276】
外添剤12は、個数平均一次粒子径が表Iに記載の、気相法により作製されたシリカ粒子を使用し、外添剤1と同様の処理を行った。
【0277】
<外添剤13~15の作製>
特開2012-224542号公報の記載内容を参考にして作製を行った個数平均一次粒子径が30nmのアルミナ粒子に、窒素雰囲気下、撹拌しながら、純水3.0質量部を噴霧した。これに表面修飾剤であるエチルトリメトキシシラン20質量部、ジエチルアミン1.0質量部を噴霧し、180℃で1時間熱撹拌し、その後冷却し、減圧下で乾燥を実施し外添剤14を得た。個数平均一次粒子径は30nmであった。
【0278】
外添剤14、15の作製は、表面修飾剤を表Iに記載の材料に変更して同様の処理を行った。
【0279】
<外添剤16~20の作製>
撹拌機と、滴下ロートと、温度計とを備えた1L反応器にメタノール500質量部を撹拌させ、チタンイソプロポキシドを10質量部滴下し、10分間撹拌を継続した。その後、生じた酸化チタン微粒子を遠心分離機にかけて分離及び回収後、減圧乾燥を経て個数平均一次粒径が30nmのメタチタン酸を得た。メタチタン酸を窒素雰囲気下、撹拌しながら、純水3.0質量部を噴霧した。これに表面修飾剤であるエチルトリメトキシシラン20質量部、ジエチルアミン1.0質量部を噴霧し、180℃で1時間熱撹拌し、その後冷却し、減圧下で乾燥を実施し外添剤16を得た。同様に外添剤17、18の作製は、表面修飾剤を表に記載の材料に変更して同様の処理を行った。
【0280】
また、得られたメタチタン酸を、大気中、800℃で5時間、高温電気炉にて加熱し、酸化チタン微粒子を得た。得られた酸化チタン粒子を窒素雰囲気下、撹拌しながら、純水3.0質量部を噴霧した。これに表面修飾剤であるエチルトリメトキシシラン20質量部、ジエチルアミン1.0質量部を噴霧し、180℃で1時間熱撹拌し、その後冷却し、減圧下で乾燥を実施し外添剤19を得た。同様に外添剤20の作製は、表面修飾剤を表Iに記載の材料に変更して同様の処理を行った。酸化チタン微粒子の個数平均一次粒子径は、30nmであった。
【0281】
<外添剤21、22の作製>
メタチタン酸分散液に、4.0モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液によりpHを9.0に調整して脱硫処理を行った後、6.0モル/リットルの塩酸水溶液を添加してpHを5.5に調整して中和処理した。その後、メタチタン酸分散液をろ過、水洗処理して作製したメタチタン酸のケーキ物に水を加え、酸化チタンTiO換算で1.25モル/リットルに相当する分散液に調製した後、6.0モル/リットルの塩酸水溶液でpH1.2に調整した。そして、分散液の温度を35℃に調整して、この温度下で1時間撹拌を行ってメタチタン酸分散液を解膠処理した。
【0282】
上記解膠処理を行ったメタチタン酸分散液より、酸化チタンTiO換算で0.156モルに相当するメタチタン酸を採取して反応容器に投入し、続いて、炭酸カルシウムCaCO水溶液を反応容器に投入した。このとき、酸化チタン濃度が0.156モル/リットルとなる様に反応系を調製した。また、炭酸カルシウムCaCOは、酸化チタンに対しモル比で1.15となる様(CaCO/TiO=1.15/1.00)に添加した。上記反応容器内に窒素ガスを供給して、20分間放置することにより反応容器内を窒素ガス雰囲気下にした後、メタチタン酸、炭酸カルシウム、からなる混合溶液を90℃に加温した。続いて、水酸化ナトリウム水溶液を5時間かけてpHが8.0になるまで添加し、その後、90℃で1時間撹拌を続けて反応を終了させた。反応終了後、反応容器内を40℃まで冷却し、窒素雰囲気下で上澄み液を除去した後、純水2500質量部を反応容器内に投入してデカンテーションを繰り返し2回行った。デカンテーション実施後、反応系をヌッチェでろ過処理してケーキ物を形成し、得られたケーキ物を110℃に加熱して大気中で8時間の乾燥処理を行った。得られたチタン酸カルシウムの乾燥物をアルミナ性るつぼに投入し、930℃で脱水するとともに焼成処理した。焼成処理後、チタン酸カルシウムを水中に投入し、サンドグラインダで湿式粉砕処理を行い分散液とした後、6.0モル/リットルの塩酸水溶液を添加してpHを2.0に調整して、過剰分の炭酸カルシウムを除去した。
【0283】
過剰分の炭酸カルシウムを除去処理した後、エチルトリメトキシシラン又はイソブチルトリメトキシシランの希釈液(イソブチルシラン10質量部/エタノール90質量部)を準備し表面修飾処理をおこなった。窒素雰囲気化でヘンシェルミキサーにて,30分間撹拌することで表面修飾処理をした。その際チタン酸カルシウム固形分100質量部に対してイソブチルトリメトキシシランを5.0質量部添加して、処理を行った。前記湿式の表面処理を行った後、4.0モル/リットル水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを6.5に調整して中和処理を行い、その後、ろ過、洗浄を行い、150℃で乾燥処理した。さらに、機械式粉砕装置を用いて60分間解砕処理を行ってチタン酸カルシウムを用いた外添剤21を作製した。個数平均一次粒子径は30nmであった。外添剤22の作製は、表面修飾処理剤を表Iに記載の材料に変更して同様の処理を行った。
【0284】
<個数平均一次粒子径の測定>
個数平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)EM-2100)を用いて3万倍視野で、200個以上500個以下の一次粒子を挟む一定方向の2本の平行線の間隔にある一定方向径を測定し、上位5%及び下位5%の数値を除去して、残り90%の平均値を求め、その値を用いた。
【0285】
【表1】
【0286】
<キャリア粒子用芯材粒子の作製>
MnO換算で19.0モル%、MgO換算で2.8モル%、SrO換算で1.5モル%、Fe換算で75.0モル%になるように各原材料を適量配合し、水を加え、湿式ボールミルで10時間粉砕、混合し、乾燥させ、950℃で4時間保持した後、湿式ボールミルで24時間粉砕を行ったスラリーを造粒乾燥し、撹拌装置を内蔵した焼成炉内に容積の5割量を添加して、周速10m/s、1400℃にて4時間保持した後、解砕し、粒径32mmに粒度調整を行い、キャリア粒子用芯材粒子1を得た。キャリア粒子用芯材粒子1の形状係数(SF-1)は140であった。
【0287】
同様に焼成温度を表IIに示した条件にて変化させ、キャリア粒子用芯材粒子2~6を作製した。
【0288】
<形状係数の測定方法>
形状係数は、走査型電子顕微鏡により、150倍にてランダムに100個以上の粒子の写真を撮影し、スキャナーにより取り込んだ写真画像を、画像処理解析装置(LUZEX AP:株式会社ニレコ))を用いて測定した。芯材粒子の形状係数(SF-1)は、以下の式(1)により求められる。
式(1) SF-1=(粒子の最大長)/(粒子の投影面積)×(π/4)×100
形状係数は、測定する芯材粒子の凹凸度合いを示しており、表面の凹凸の起伏が激しくなると値が大きくなる。
【0289】
【表2】
【0290】
<芯材被覆用樹脂(被覆材1)の作製>
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、メタクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸メチルを1:1のモル比で添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行った。得られた分散液中の樹脂粒子を当該分散液のスプレードライによって乾燥することで、芯材被覆用樹脂である被覆材1を作製した。得られた被覆材1の重量平均分子量(Mw)は50万であった。被覆材1の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。
【0291】
<キャリア粒子3の作製>
体積平均粒子径が32μm、形状係数SF-1が140であるMn-Mg系のフェライト粒子100質量部を水平撹拌羽根付き高速撹拌混合機に、被覆材1の3.2質量部を投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した。その後、120℃で50分間混合して、機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用で上記芯材粒子の表面に被覆材1を被覆させて、キャリア粒子3を作製した。キャリア粒子3の体積分布基準のメジアン径は33μmであった。芯材粒子の露出面積の程度を表す鉄元素含有率の値は8.2%であった。
【0292】
<キャリア粒子の体積平均粒子径の測定>
上記キャリア粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日本レーザー株式会社製、HELOS KA)を用いて、湿式法にて測定して得られた値である。具体的には、まず、焦点位置200mmの光学系を選択し、測定時間を5秒に設定した。そして、測定用のキャリア芯材を0.2質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に加え、超音波洗浄機(asone社製、US-1)を用いて3分間分散させて測定用試料分散液を作製し、これを上記レーザー回折式粒度分布測定装置に数滴供給し、試料濃度ゲージが測定可能領域に達した時点で測定を開始した。得られた粒度分布を粒度範囲(チャンネル)に対して、小径側から累積分布を作成し、これをもとに体積平均粒子径を算出した。
【0293】
<キャリア粒子表面における鉄元素含有率>
鉄元素含有率(atomic%)は、以下の方法により算出した。サーモフィッシャーサイエンティフィック製、K-Alpha(測定は、X線源としてAlモノクロマチックX線を用い、加速電圧を7kV、エミッション電流を6mVに設定して行った。)を用いて、XPS測定(X線光電子分光測定)により、炭素についてはC1sスペクトルを、鉄についてはFe2p3/2スペクトルを、酸素についてはO1sスペクトルを測定した。そして、これらの各々の原子のスペクトルに基づいて、それぞれ、「AC」、「AO」及び「AFe」と表されるキャリア粒子表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を求め、下記式(2)より算出した。
【0294】
式(2) 鉄元素含有率(atomic%)=AFe/(A+A+AFe
(ただし、AFe、A及びAは、それぞれ、キャリア粒子表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を表す。)
【0295】
同様に、キャリア粒子1、2、4~11は下記表IIIのように芯材粒子の種類、及び被覆用樹脂量の量を変えキャリア粒子を作製した。
【0296】
【表3】
【0297】
<トナー母体粒子の作製>
<ブラック着色剤微粒子の分散液BKの調製>
n-ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製、pH2(室温25℃))420質量部を徐々に添加した。
【0298】
次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、カーボンブラック粒子が分散されてなるブラック着色剤微粒子の分散液BKを調製した。この分散液におけるブラック着色剤微粒子の粒径を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA-150」(日機装社製)を用いて測定したところ、体積基準のメジアン径で77nmであった。
【0299】
(結晶性ポリエステル樹脂c1の合成)
撹拌装置、窒素ガス導入管、温度センサー及び精留塔を備えた反応容器に、ドデカン二酸200質量部、及び1,6-ヘキサンジオール102質量部を仕込み、反応系の温度を1時間かけて190℃に上昇させ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した。その後、触媒としてのチタンテトラブトキサイドを0.3質量部投入した。さらに、生成された水を留去しながら、反応系の温度を6時間かけて190℃から240℃に上昇させた。さらに、240℃に維持した状態で6時間脱水縮合反応を継続させて重合反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂c1を得た。
【0300】
得られた結晶性ポリエステル樹脂は、重量平均分子量が14500であり、融点が70℃であった。
【0301】
(重量平均分子量測定)
GPC装置「HLC-8220」(東ソー社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー社製)を用いて、カラム温度を40℃に保持しながらキャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流し、試料溶液10μLを上記装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布を、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出することにより求めた。
【0302】
(結晶性樹脂の融点測定)
結晶性樹脂の融点は、示差走査熱量測定装置「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて、試料3.0mgをアルミニウム製パンに封入してホルダーにセットし、リファレンスとして空のアルミニウム製パンをセットし、昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/minで200℃から0℃まで冷却する冷却過程、及び昇降速度10℃/minで0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってDSC曲線を得た。そして、このDSC曲線に基づいて、第1昇温過程における結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークトップ温度を、融点とした。
【0303】
<結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C1の調製>
上記で得られた結晶性ポリエステル樹脂c1を100質量部、400質量部の酢酸エチルに溶解させ、あらかじめ調製しておいた0.26質量%濃度のドデシル硫酸ナトリウム水溶液638質量部と混合させた。得られた混合液を撹拌しながら、超音波ホモジナイザーUS-150T(株式会社日本精機製作所製)によりV-LEVEL 300μAで30分間の超音波分散処理を行った。
【0304】
その後、50℃に加温した状態で、ダイヤフラム真空ポンプV-700(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去し、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C1を調製した。当該分散液中の結晶性ポリエステル樹脂粒子は、体積基準のメジアン径が148nmであった。
【0305】
<コア用スチレン・アクリル樹脂粒子分散液S1の調製>
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素ガス導入装置を備えた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム4質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃にして、下記単量体の混合液を2時間かけて滴下した。
【0306】
スチレン(St) 570.0質量部
n-ブチルアクリレート(BA) 165.0質量部
メタクリル酸(MAA) 68.0質量部
上記混合液の滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、コア用スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1-aを調製した。
【0307】
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水1210質量部に溶解させた溶液を仕込み80℃に加熱した。加熱後、上記第1段重合により調製した非晶性ビニル樹脂粒子分散液1-aを固形分換算で60質量部と、下記単量体、連鎖移動剤及び離型剤を80℃にて溶解させた混合液と、を添加した。
【0308】
スチレン(St) 245.0質量部
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA) 97.0質量部
メタクリル酸(MAA) 30.0質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 4.0質量部
マイクロクリスタリンワックス「HNP-0190」(日本精蝋社製)
170.0質量部
【0309】
循環経路を有する機械式分散機CLEARMIX(登録商標)(エム・テクニック株式会社製)により、1時間の混合分散処理を行い、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。この分散液に、過硫酸カリウム5.2質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤の溶液、及びイオン交換水1000質量部を添加し、この系を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行って、コア用スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1-bを調製した。
【0310】
(第3段重合)
上記第2段重合により得られたコア用スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1-bに、過硫酸カリウム7質量部をイオン交換水130質量部に溶解させた溶液を添加した。さらに、82℃の温度条件下で、下記単量体及び連鎖移動剤の混合液を1時間かけて滴下した。
【0311】
スチレン(St) 350質量部
メタクリル酸メチル(MMA) 50質量部
n-ブチルアクリレート(BA) 170質量部
メタクリル酸(MAA) 35質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8.0質量部
【0312】
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、コア用スチレン・アクリル樹脂粒子分散液S1を調製した。当該分散液中のスチレン・アクリル樹脂粒子は、体積基準のメジアン径が145nmであった。また、得られたスチレン・アクリル樹脂の重量平均分子量は35000であり、ガラス転移温度(Tg)は37℃であった。
【0313】
(ガラス転移温度の測定)
ガラス転移点は、ASTM(米国材料試験協会規格)D3418-82に規定された方法(DSC法)によって測定された値である。
【0314】
具体的には、試料4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、示差走査カロリメーター「DSC8500」(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットした。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度-0~120℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分にて、Heat-Cool-Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行った。第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間における最大傾斜を示す接線との交点の値をガラス転移温度とする。
【0315】
<非晶性ポリエステル樹脂の合成>
(スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂A1の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した容量10リットルの四つ口フラスコに、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 117質量部
フマル酸 82質量部
エステル化触媒(オクチル酸スズ) 2質量部
を入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、冷却し非晶性ポリエステル樹脂A1を得た。
【0316】
(スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂B1の合成)
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した容量10リットルの四つ口フラスコに、
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500質量部
テレフタル酸 117質量部
フマル酸 82質量部
エステル化触媒(オクチル酸スズ) 2質量部
を入れ、230℃で8時間縮重合反応させ、さらに、8kPaで1時間反応させ、160℃まで冷却した後、
アクリル酸 10質量部
スチレン 15質量部
ブチルアクリレート 4質量部
重合開始剤(ジ-t-ブチルパーオキサイド) 10質量部
の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下し、滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を継続させた後、200℃に昇温し、10kPaで1時間保持した後、アクリル酸、スチレン、ブチルアクリレートを除去することにより、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂B1を得た。
【0317】
(スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂B2~B5の合成)
スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂B2からB5は、下表IVのモノマー量に変更して作製した(表中、Stはスチレン、Acはアクリルを表す。)。
【0318】
【表4】
【0319】
<ポリエステル樹脂粒子分散液D1の調製>
上記で得られた非晶性ポリエステル樹脂A1 100質量部を、400質量部の酢酸エチルに溶解させ、あらかじめ調製しておいた0.26質量%濃度のドデシル硫酸ナトリウム水溶液638質量部と混合させた。得られた混合液を撹拌しながら、超音波ホモジナイザーUS-150T(株式会社日本精機製作所製)によりV-LEVEL 300μAで30分間の超音波分散処理を行った。
【0320】
その後、50℃に加温した状態で、ダイヤフラム真空ポンプV-700(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去し、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液D1を調製した。当該分散液中の非晶性ポリエステル樹脂粒子は、体積基準のメジアン径が180nmであった。
【0321】
<トナー母体粒子1の作製(凝集・融着工程)>
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、コア用樹脂微粒子S1の分散液405g(固形分換算)と、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液C1 45g(固形分換算)、イオン交換水1100gと、着色剤微粒子の分散液BKの50gとを仕込み、得られた分散液の温度を30℃に調整した後、当該分散液に5Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えて当該分散液のpHを10に調整した。次いで、塩化マグネシウム60gをイオン交換水60gに溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて上記分散液に添加した。添加後、分散液を30℃に3分間保持した後に昇温を開始し、上記分散液を60分間かけて85℃まで昇温し、当該分散液の温度を85℃に保持したまま粒子成長反応を継続し、プレコア粒子(1)の分散液を調製した。そこにシェル用樹脂微粒子D1の50g(固形分換算)を添加し、80℃にて1時間にわたって撹拌を継続し、コア粒子(1)の表面にシェル用樹脂微粒子D1を融着させてシェル層を形成させて樹脂粒子1を得た。ここで、得られた分散液に、塩化ナトリウム150gをイオン交換水600gに溶解した水溶液を添加し、液温80℃にて熟成処理を行い、樹脂粒子1の平均円形度が0.970になった時点で30℃に冷却した。冷却後のトナー母体粒子1の個数基準のメジアン径が5.5μmであった。
トナー母体粒子2から6は、下表Vの通りシェル部樹脂を変更して作製した。
【0322】
【表5】
【0323】
<トナー粒子1の作製(外添剤処理工程)>
トナー母体粒子3に下記の外添剤を添加し、ヘンシェルミキサー型式「FM20C/I」(日本コークス工業株式会社製)に添加し、羽根先端周速が40m/sとなるようにして撹拌翼の回転数を設定して15分間撹拌し、トナー粒子1を作製した。
【0324】
外添剤1 1.5質量部
【0325】
なお、上記外添剤のトナー粒子1への混合時の温度は40℃±1℃となるように設定した。当該温度が41℃になった場合は、ヘンシェルミキサーの外浴に冷却水を5L/分の流量で冷却水を流し、39℃になった場合は、当該冷却水の流量が1L/分となるように冷却水を流すことで、ヘンシェルミキサー内部の温度を制御した。
【0326】
<トナー粒子2~29の作製(外添剤処理工程)>
トナー粒子1の作製と同様にして、表VIに示す外添剤処理を行い、トナー粒子2~29を作製した。
【0327】
【表6】
【0328】
<二成分現像剤1の作製>
トナー粒子1及びキャリア粒子3を、二成分現像剤におけるトナーの含有量(トナー濃度)が6質量%となるようにして、V型混合機にて30分混合して二成分現像剤1を得た。
【0329】
<二成分現像剤2~40の作製>
二成分現像剤1の作製と同様にして、表VII及び表VIII記載の構成で二成分現像剤2~40作製した。
【0330】
<評価>
作製した二成分現像剤1~40を用いて以下の評価を行った。
【0331】
評価装置として、市販のデジタルフルカラー複合機「bizhub PRESS 1070」(コニカミノルタ株式会社製、「bizhub」は同社の登録商標)を用いた。製造した二成分現像剤をそれぞれ装填し、下記の評価を実施した。本評価装置では、帯電工程、露光工程、現像工程及び転写工程を有する電子写真画像形成方法によって印刷を行った。
【0332】
(カブリの評価)
30℃・85%RHの環境下で、印字率40%のベタ帯チャートを10万枚印刷した後に、白紙をプリントし、白紙濃度で評価した。A4判において20か所の濃度を測定し、その平均値を白紙濃度とする。濃度測定はX-Rite938(X-Rite社)により測定し用いて行った。以下の判定基準において、「◎」又は「○」を合格とした。
◎:白紙濃度が0.005未満
○:白紙濃度が0.005以上0.02未満
×:白紙濃度が0.02以上
【0333】
(画像濃度変動の評価)
10℃、10%RHの環境下で、印字率40%のベタ帯チャートを10万枚印刷した後に、2cm角のベタパッチが現像スリーブ1周分置きに並んでいる画像パターンを出力し、スリーブ1周分(a)と2周後(b)の濃度差を、X-Rite938(X-Rite社)により測定し、以下の判定基準において、「◎」又は「○」を合格とした。
◎:濃度差Δが0.005未満
○:濃度差Δが0.005以上0.02未満
×:濃度差Δが0.02以上
【0334】
【表7】
【0335】
【表8】
【0336】
表VII及び表VIIIから、本発明の静電荷像現像用二成分現像剤である実施例1~31は、比較例1~9に対して、帯電立ち上がり性が向上しカブリの発生が抑制され、環境変動下においても、トナーの帯電量が安定であり、画像濃度変動耐性に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0337】
101 導電性支持体
102 中間層
103 感光層
103a 電荷発生層
103b 電荷輸送層
103c 表面保護層
100 画像形成装置
1A、1B、1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
5Y、5M、5C、5Bk 一次転写ローラー
5b 二次転写ローラー
6Y、6M、6C、6Bk、6b クリーニング手段
7 中間転写体ユニット
8 筐体
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
21 給紙手段
20 給紙カセット
22A、22B、22C、22D 中間ローラー
23 レジストローラー
24 定着手段
25 排紙ローラー
26 排紙トレイ
70 無端ベルト状中間転写体
71、72、73、74 ローラー
82L、82R 支持レール
P 転写材
図1