(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187760
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】時刻電波送信装置および時計システム
(51)【国際特許分類】
G04G 5/00 20130101AFI20221213BHJP
G04R 20/08 20130101ALI20221213BHJP
G04R 20/26 20130101ALI20221213BHJP
【FI】
G04G5/00 J
G04R20/08
G04R20/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095927
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 誠人
【テーマコード(参考)】
2F002
【Fターム(参考)】
2F002AA12
2F002AB06
2F002AD07
2F002AF00
2F002BB04
2F002FA16
2F002GA06
(57)【要約】
【課題】可搬性のある時計の時刻を低消費電力でより確実に修正すること
【解決手段】時刻電波送信装置は、所定の長波以外の電波を介して現在の時刻を取得し、前記所定の長波の電波であって時刻情報を含む電波を受信する可搬型の電波時計に向けて現在の時刻を示す時刻情報を含む長波の電波を送信する。前記時刻電波送信装置は前記可搬型の電波時計と連結部材を介して連結され、ともに人体に装着可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長波以外の電波を介して現在の時刻を取得する時刻取得部と、
前記所定の長波の電波であって時刻情報を含む電波を受信する可搬型の電波時計に向けて現在の時刻を示す時刻情報を含む長波の電波を送信する送信部と、
を含み、
前記可搬型の電波時計と連結部材を介して連結され、前記電波時計とともに人体に装着可能である、
時刻電波送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の時刻電波送信装置であって、
前記送信部は、時刻情報を含む標準電波を受信しかつ時刻を修正する電波時計に向けて現在の時刻を示す時刻情報を含む長波の電波を送信する、
時刻電波送信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の時刻電波送信装置であって、
前記電波時計が前記標準電波を受信する受信期間に応じた送信期間を取得する送信期間取得手段をさらに含み、
前記送信部は、前記取得された送信期間において前記時刻情報を含む標準電波を前記電波時計に向けて送信する、
時刻電波送信装置。
【請求項4】
請求項2に記載の時刻電波送信装置であって、
前記電波時計が時刻情報を含む長波の電波を受信する受信期間に応じた送信期間を取得する送信期間取得手段をさらに含み、
前記送信部は、前記取得された送信期間において前記時刻情報を含む長波の電波を前記電波時計に向けて送信する、
時刻電波送信装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の時刻電波送信装置であって、
前記送信期間は、前記受信期間を含み、かつ、当該受信期間より長い、
時刻電波送信装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の時刻電波送信装置であって、
加速度センサ、温度センサ、光センサのうちいずれかの出力に基づいて、人体に装着されていない状態を検出する検出手段をさらに含み、
前記送信部は、前記人体に装着されていないことが検出された場合に、前記長波の電波の送信をしない、
時刻電波送信装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の時刻電波送信装置であって、
非接触充電用コイル、モーターコイル、スピーカーコイル、表示装置のうち少なくとも1つをさらに含み、
前記非接触充電用コイル、前記モーターコイル、前記スピーカーコイル、前記表示装置のうちいずれかは前記送信部に接続され、前記長波の電波を出力する、
時刻電波送信装置。
【請求項8】
所定の長波の電波であって時刻情報を含む電波を受信する可搬型の電波時計と、
前記所定の長波以外の電波を介して現在の時刻を取得する時刻取得部、および、
前記可搬型の電波時計に向けて現在の時刻を示す時刻情報を含む前記所定の長波の電波を送信する送信部、
を含み、
前記電波時計と連結部材を介して連結され前記電波時計とともに人体に装着可能である、時刻電波送信装置と、
を含む時計システム。
【請求項9】
請求項8に記載の時計システムであって、
前記時刻電波送信装置は、前記電波時計の装着者の操作に基づいて前記時刻情報を含む長波の電波を送信期間に送信し、
前記電波時計は、前記装着者の操作に基づいて、受信期間において長波の電波を受信する、
時計システム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の時計システムであって、
前記時刻電波送信装置は、当該時刻電波送信装置が人体に装着されたか否かを検出する検出手段をさらに含み、
前記電波時計は、当該電波時計が人体に装着されたか否かを検出する検出手段をさらに含み、
前記送信部は、当該時刻電波送信装置が前記人体に装着されたことが検出された場合に、一定の送信期間、前記時刻情報を含む長波の電波を送信し、
前記電波時計は、当該電波時計が前記人体に装着されたことが検出された場合に、一定の受信期間、前記長波の電波を受信する、
時計システム。
【請求項11】
請求項8または9に記載の時計システムであって、
前記時刻電波送信装置は、当該時刻電波送信装置が人体に装着されたか否かを検出する検出手段をさらに含み、
前記電波時計は、当該電波時計が人体に装着されたか否かを検出し、
前記送信部は、当該時刻電波送信装置が前記人体に装着されていないことが検出されてから所定の送信待機期間が経過した後に、一定の送信期間、前記時刻情報を含む長波の電波を送信し、
前記電波時計は、当該電波時計が前記人体に装着されていないことが検出されてから所定の受信待機期間が経過した後に、一定の受信期間、前記長波の電波を受信する、
時計システム。
【請求項12】
請求項8から11のいずれかに記載の時計システムであって、
前記送信部は、毎時0分を含まない送信期間に前記長波の電波を送信し、
前記電波時計は、前記送信期間に含まれる受信期間に、前記長波の電波を受信する、
時計システム。
【請求項13】
請求項8から12のいずれかに記載の時計システムであって、
前記電波時計は、当該電波時計の状態を示す情報を、モーターコイルから出力される磁場、または、圧電素子から出力される音波により、前記時刻電波送信装置に向けて出力し、
前記時刻電波送信装置の前記送信部は、前記モーターコイルから出力される磁場、または、圧電素子から出力される音波から取得される、前記情報に基づいて、長波の電波を送信する、
時計システム。
【請求項14】
請求項8から13のうちいずれかに記載の時計システムであって、
前記電波時計は、UTC時刻が前記受信期間の内にある場合に前記長波の電波を受信し、
前記時刻電波送信装置の前記送信部は、UTC時刻が前記送信期間の内にある場合に前記所定の長波の電波を送信する、
時計システム。
【請求項15】
請求項8から14のうちいずれかに記載の時計システムであって、
前記電波時計は、当該電波時計が標準電波を受信する複数の受信期間の間隔より、前記時刻電波送信装置が送信する前記長波の電波を受信する複数の受信期間の間隔が短くなるように、前記長波の電波を受信する、
時計システム。
【請求項16】
請求項8から15のうちいずれかに記載の時計システムであって、
前記時刻電波送信装置の前記送信部が現在の時刻を示す時刻情報を含む長波の電波を送信する期間は、前記電波時計が標準電波において1つの時刻を送信する期間より短い、
時計システム。
【請求項17】
請求項8から16のうちいずれかに記載の時計システムであって、
前記時刻電波送信装置の前記送信部は、UTC時刻および時差情報と、サマータイム情報と、受信対象の機種と、誤り訂正符号と、のうち少なくとも一部を含む時刻情報を含む長波の電波を送信する、
時計システム。
【請求項18】
請求項8から17のうちいずれかに記載の時計システムであって、
前記時刻電波送信装置の前記送信部は、現在の位置に基づいて、複数の地域における標準電波のうち、現在の地域で送信されていない標準電波の周波数により時刻情報を含む電波を送信し、
前記電波時計は、現在の地域に基づいて、前記周波数により時刻情報を含む電波を受信する、
時計システム。
【請求項19】
請求項8から17のうちいずれかに記載の時計システムであって、
前記時刻電波送信装置の前記送信部は、現在の地域でいずれの標準電波も送信されていない場合に、時刻情報を含む電波を送信し、
前記電波時計は、現在の地域でいずれの標準電波も送信されていない場合に、前記時刻電波送信装置から送信される、時刻情報を含む電波を受信する、
時計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻電波送信装置および時計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国等の組織から送信され時刻を示す標準電波(標準周波数報時電波)を受信し、時刻を自動的に修正する電波時計がある。この時計は、時刻の修正に必要な消費電力が非常に低い一方で、標準電波の受信に困難が生じる場所では時刻を修正することができない。それに対処するため、例えば標準電波を受信することにより時刻を取得し、電波時計のための標準電波を送信する中継装置を屋内に設置することも行われている。
【0003】
特許文献1には、時刻コードを含む電波を受信し現時刻情報に基づく時刻コードを含む電波を送信する中継装置が開示されている。特許文献2には、標準電波のフォーマットに従った信号列の一部にコマンドを形成した電波を標準電波の周波数帯で送信する無線装置が開示されている。特許文献3には、標準電波を受信し、その周波数を少しずらした電波を屋内に設置される電波修正時計に送信する時刻信号中継装置が開示されている。特許文献4には、標準電波信号を受信し、標準電波信号を受信する時間帯と異なる時刻に電波修正時計に対して標準時刻電波信号を送信する時刻信号中継装置が開示されている。特許文献5には、標準電波以外で得られる正確な時刻情報を外部機器から受信し、時刻情報を疑似標準電波で発信する電波中継装置であって、電波時計と壁との間に配置される電波時計中継装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3835308号
【特許文献2】特開2005-202517号公報
【特許文献3】特開2000-147170号公報
【特許文献4】特開2000-75064号公報
【特許文献5】特開2017-49009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
標準電波を送信する中継装置を屋内に設置することにより、常に屋内に設置される時計の時刻をより確実に修正することができる。一方で、腕時計のような可搬性のある時計の時刻を確実に修正することは容易でなかった。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、可搬性のある時計の時刻を低消費電力でより確実に修正することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる技術は下記記載の構成を採用する。
【0008】
(1)所定の長波以外の電波を介して現在の時刻を取得する時刻取得部と、前記所定の長波の電波であって時刻情報を含む電波を受信する可搬型の電波時計に向けて現在の時刻を示す時刻情報を含む長波の電波を送信する送信部と、を含み、前記可搬型の電波時計と連結部材を介して連結され、前記電波時計とともに人体に装着可能である、時刻電波送信装置。
【0009】
(2)(1)において、前記送信部は、時刻情報を含む標準電波を受信しかつ時刻を修正する電波時計に向けて現在の時刻を示す時刻情報を含む長波の電波を送信する、時刻電波送信装置。
【0010】
(3)(2)において、前記電波時計が前記標準電波を受信する受信期間に応じた送信期間を取得する送信期間取得手段をさらに含み、前記送信部は、前記取得された送信期間において前記時刻情報を含む標準電波を前記電波時計に向けて送信する、時刻電波送信装置。
【0011】
(4)(2)において、前記電波時計が時刻情報を含む長波の電波を受信する受信期間に応じた送信期間を取得する送信期間取得手段をさらに含み、前記送信部は、前記取得された送信期間において前記時刻情報を含む長波の電波を前記電波時計に向けて送信する、時刻電波送信装置。
【0012】
(5)(3)または(4)において、前記送信期間は、前記受信期間を含み、かつ、当該受信期間より長い、時刻電波送信装置。
【0013】
(6)(1)から(5)のいずれかにおいて、加速度センサ、温度センサ、光センサのうちいずれかの出力に基づいて、人体に装着されていない状態を検出する検出手段をさらに含み、前記送信部は、前記人体に装着されていないことが検出された場合に、前記長波の電波の送信をしない、時刻電波送信装置。
【0014】
(7)(1)から(6)のいずれかにおいて、非接触充電用コイル、モーターコイル、スピーカーコイル、表示装置のうち少なくとも1つをさらに含み、前記非接触充電用コイル、前記モーターコイル、前記スピーカーコイル、前記表示装置のうちいずれかは前記送信部に接続され、前記長波の電波を出力する、時刻電波送信装置。
【0015】
(8)所定の長波の電波であって時刻情報を含む電波を受信する可搬型の電波時計と、前記所定の長波以外の電波を介して現在の時刻を取得する時刻取得部、および、前記可搬型の電波時計に向けて現在の時刻を示す時刻情報を含む前記所定の長波の電波を送信する送信部、を含み、前記電波時計と連結部材を介して連結され前記電波時計とともに人体に装着可能である、時刻電波送信装置と、を含む時計システム。
【0016】
(9)(8)において、前記時刻電波送信装置は、前記電波時計の装着者の操作に基づいて前記時刻情報を含む長波の電波を送信期間に送信し、前記電波時計は、前記装着者の操作に基づいて、受信期間において長波の電波を受信する、時計システム。
【0017】
(10)(8)または(9)において、前記時刻電波送信装置は、当該時刻電波送信装置が人体に装着されたか否かを検出する検出手段をさらに含み、前記電波時計は、当該電波時計が人体に装着されたか否かを検出する検出手段をさらに含み、前記送信部は、当該時刻電波送信装置が前記人体に装着されたことが検出された場合に、一定の送信期間、前記時刻情報を含む長波の電波を送信し、前記電波時計は、当該電波時計が前記人体に装着されたことが検出された場合に、一定の受信期間、前記長波の電波を受信する、時計システム。
【0018】
(11)(8)または(9)において、前記時刻電波送信装置は、当該時刻電波送信装置が人体に装着されたか否かを検出する検出手段をさらに含み、前記電波時計は、当該電波時計が人体に装着されたか否かを検出し、前記送信部は、当該時刻電波送信装置が前記人体に装着されていないことが検出されてから所定の送信待機期間が経過した後に、一定の送信期間、前記時刻情報を含む長波の電波を送信し、前記電波時計は、当該電波時計が前記人体に装着されていないことが検出されてから所定の受信待機期間が経過した後に、一定の受信期間、前記長波の電波を受信する、時計システム。
【0019】
(12)(8)から(11)のいずれかにおいて、前記送信部は、毎時0分を含まない送信期間に前記長波の電波を送信し、前記電波時計は、前記送信期間に含まれる受信期間に、前記長波の電波を受信する、時計システム。
【0020】
(13)(8)から(12)のいずれかにおいて、前記電波時計は、当該電波時計の状態を示す情報を、モーターコイルから出力される磁場、または、圧電素子から出力される音波により、前記時刻電波送信装置に向けて出力し、前記時刻電波送信装置の前記送信部は、前記モーターコイルから出力される磁場、または、圧電素子から出力される音波から取得される、前記情報に基づいて、長波の電波を送信する、時計システム。
【0021】
(14)(8)から(13)のいずれかにおいて、前記電波時計は、UTC時刻が前記受信期間の内にある場合に前記長波の電波を受信し、前記時刻電波送信装置の前記送信部は、UTC時刻が前記送信期間の内にある場合に前記所定の長波の電波を送信する、時計システム。
【0022】
(15)(8)から(14)のいずれかにおいて、前記電波時計は、当該電波時計が標準電波を受信する複数の受信期間の間隔より、前記時刻電波送信装置が送信する前記長波の電波を受信する複数の受信期間の間隔が短くなるように、前記長波の電波を受信する、時計システム。
【0023】
(16)(8)から(15)のいずれかにおいて、前記時刻電波送信装置の前記送信部が現在の時刻を示す時刻情報を含む長波の電波を送信する期間は、前記電波時計が標準電波において1つの時刻を送信する期間より短い、時計システム。
【0024】
(17)(8)から(16)のいずれかにおいて、前記時刻電波送信装置の前記送信部は、UTC時刻および時差情報と、サマータイム情報と、受信対象の機種と、誤り訂正符号と、のうち少なくとも一部を含む時刻情報を含む長波の電波を送信する、時計システム。
【0025】
(18)(8)から(17)のいずれかにおいて、前記時刻電波送信装置の前記送信部は、現在の位置に基づいて、複数の地域における標準電波のうち、現在の地域で送信されていない標準電波の周波数により時刻情報を含む電波を送信し、前記電波時計は、現在の地域に基づいて、前記周波数により時刻情報を含む電波を受信する、時計システム。
【0026】
(19)(8)から(17)のいずれかにおいて、前記時刻電波送信装置の前記送信部は、現在の地域でいずれの標準電波も送信されていない場合に、時刻情報を含む電波を送信し、前記電波時計は、現在の地域でいずれの標準電波も送信されていない場合に、前記時刻電波送信装置から送信される、時刻情報を含む電波を受信する、時計システム。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、可搬性のある電波時計の時刻を、低消費電力でより確実に修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態にかかる時計システムの一例を示す図である。
【
図2】時計システムの回路構成を概略的に示す図である。
【
図3】電波を出力する際に表示デバイスに出力される画像の一例を示す図である。
【
図4】バックルのマイコンにより実現される機能を示すブロック図である。
【
図5】電波時計のマイコンにより実現される機能を示すブロック図である。
【
図6】バックルの設定取得部の処理の一例を示すフロー図である。
【
図7】送信に関する設定の種類の一例を示す図である。
【
図8】バックルの時刻取得部の処理の一例を示すフロー図である。
【
図9】電波時計の設定取得部の処理の一例を示すフロー図である。
【
図10】バックルの長波送信制御部の処理の一例を示すフロー図である。
【
図11】電波時計の長波受信制御部および時刻修正部の処理の一例を示すフロー図である。
【
図12】装着の検出に応じた送信および受信のタイミングを説明する図である。
【
図14】非装着状態の検出に応じた送信および受信のタイミングを説明する図である。
【
図15】手動受信における送信および受信のタイミングを説明する図である。
【
図16】UTC時刻により設定された送信期間および受信期間の一例を示す図である。
【
図17】各地域で送信される標準電波と、バックル2から送信する他の地域の標準電波を説明する図である。
【
図18】独自の送信データのフォーマットの一例を示す図である。
【
図19】第2の実施形態にかかるバックルの長波送信制御部の処理の一例を示すフロー図である。(送信条件が手動と時刻になるだけ)
【
図20】標準電波を送受信する場合の送信期間および受信期間の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、図面とともに本発明の実施の形態について詳述する。
【0030】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態にかかる時計システムの一例を示す図である。時計システムは、可搬型であり、電波時計1と、バックル2と、電波時計1とバックル2とを連結する連結部材であるバンド3とを含む。電波時計1はいわゆる腕時計の形状を有し、その腕時計の本体に相当する。
図1に示される電波時計1はいわゆるアナログ表示方式の電子時計であり、時刻情報を含む長波を受信することにより内部時刻を修正することができる。
【0031】
図2は、時計システムの回路構成を概略的に示す図である。電波時計1は、マイコン11と、長波受信回路13と、長波受信アンテナ131と、表示部材14と、運針モーター141と、操作部材15と、圧電素子16と、温度センサ171と、電池19と、ソーラーセル191とを含む。
【0032】
マイコン11はプロセッサ、メモリ、リアルタイムクロック111を含み、メモリに格納されたプログラムを実行し、操作部材15、温度センサ171等から情報を入力し、運針モーター141や長波受信回路13などを制御する。リアルタイムクロック111は内部時刻を計時する。表示部材14は指針であり、輪列を介して運針モーター141により駆動される。表示部材14は液晶などの表示パネルであってもよい。操作部材15は、ボタンを含む。圧電素子16はマイコン11の制御に基づいて音を出力する。電池19はソーラーセル191に光が当たることにより発生する電力を蓄え、マイコン11および長波受信回路13を含む各部品に電力を供給する。電波時計1の電池19は主にソーラーセル191からの電力により充電される。
【0033】
バックル2は、マイコン21と、振動モーターコイル231と、近距離無線通信アンテナコイル232と、スピーカーコイル233と、受電コイル234と、表示部材24と、操作部材25と、マイク26と、温度センサ271と、加速度センサ272と、衛星受信部275と、外部通信部276と、電池29とを含む。バックル2は、電波時計1とともに人体に装着可能な時刻電波送信装置の一種である。
【0034】
マイコン21はプロセッサ、メモリ、リアルタイムクロック211を含み、メモリに格納されたプログラムを実行し、操作部材25などから情報を取得し、表示部材24、衛星受信部275、外部通信部276、各種コイルなどを制御する。リアルタイムクロック211は内部時刻を計時する。表示部材24は例えば有機発光ダイオード(OLED)を用いた表示デバイスであり、表示デバイスは液晶ディスプレイであってもよい。操作部材25はボタンを含み、マイク26は音声を電気信号に変換する。
【0035】
外部通信部276は、アンテナおよび送受信回路を含み、例えばBluetooth Low Energy(登録商標)のようなギガヘルツ帯の無線通信方式により、スマートフォン4と通信する。衛星受信部275はアンテナおよび受信回路を含み、例えばGPSを構成する衛星から時刻情報を含む信号を受信する。電池29は受電コイル234などを介して外部から供給された電力を蓄え、マイコン11を含む各部品に電量を供給する。なお、バックル2と電波時計1とは有線では接続されておらず、バックル2から電波時計1へ電源を供給すること、またはその逆はできない。
【0036】
本実施形態では、バックル2から電波時計1へ時刻情報を含む長波の電波の信号が送信される。電波時計1の長波受信回路13は長波受信アンテナ131を介して、その長波の電波を受信する。長波受信回路13はいわゆる標準電波を受信してもよいし、バックル2との間で独自のフォーマットおよび周波数の電波を受信してもよい。
【0037】
ここで、振動モーターコイル231、近距離無線通信アンテナコイル232、スピーカーコイル233、受電コイル234、および、表示部材24は、マイコン21の制御により長波の電波を送信することが可能である。スピーカコイルは、例えば13.3kHzの信号であって3次高調波を含むゆがんだ信号が印加されると40kHzの長波の電波を送信できる。表示部材24は、画像を出力するための信号を変化させる周期を調整することにより、長波の電波を送信できる。
【0038】
図3は、電波を出力する際に表示デバイスに出力される画像の一例を示す図である。ON-OFF変調の場合、OFFの場合に黒い画像、ONの場合には縞状の画像が表示される。表示装置では行ごとに走査されるため、長波の周期に応じた行数ごとに明るい、暗い画像を繰り返すことにより、長波の電波を送信することが可能になる。以下では振動モーターコイル231、近距離無線通信アンテナコイル232、スピーカーコイル233、受電コイル234、および、表示部材24のうち長波の電波の送信に用いられるものを長波送信アンテナとも記載する。
【0039】
以下では、バックル2と電波時計1との通信についてさらに説明する。
図4は、バックル2のマイコン21により実現される機能を示すブロック図であり、
図5は電波時計1のマイコン11により実現される機能を示すブロック図である。
【0040】
バックル2のマイコン21は、機能的に、設定取得部215、時刻取得部216、装着検出部217、長波送信制御部219を含む。これらの機能は、マイコン21内のメモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサが各部を制御することにより実現される。電波時計1のマイコン11は、機能的に、設定取得部115、時刻修正部116、装着検出部117、長波受信制御部119を含む。これらの機能は、マイコン11内のメモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサが各部を制御することにより実現される。
【0041】
バックル2の設定取得部215は、バックル2からの長波の送信に関する設定を取得する。設定取得部215は、電波時計1が例えば標準電波のような長波の電波を受信する受信期間に応じた送信期間を取得してもよいし、送信する長波の電波の信号のフォーマットを取得してもよいし、その他の送受信に関する設定を取得してもよい。またマイク26等を介して電波時計1からその送信期間等を示す情報を取得してもよい。
【0042】
図6は、バックル2の設定取得部215の処理の一例を示すフロー図である。はじめに設定取得部215は、時計から情報を受信する設定がされているか判定する(ステップS211)。この設定は出荷時にメモリに記載されていてもよいし、何らかの操作により設定されていてもよい。時計から情報を受信する設定がされている場合には(ステップS211のY)、電波時計1から電波時計1の受信期間を含む設定を示す情報をマイク26を介して受信する(ステップS212)。また時計から情報を受信する設定がされていない場合、言い換えるとスマートフォン4から受信する設定がされている場合には(ステップS211のN)、スマートフォン4から電波時計1の受信期間およびその他の設定を示す情報を取得する(ステップS213)。なお、設定取得部215は、ステップS211を行わず、予めステップS212,S213のうち一方だけ実行するものであってもよい。
【0043】
そして設定取得部215は現在位置を示す情報を取得する(ステップS214)。設定取得部215は、外部通信部276を介してスマートフォン4から現在位置を示す情報を受信してもよいし、衛星受信部275から取得した現在時刻と衛星の位置とに基づいて現在位置を決定してもよい。現在位置を示す情報は、緯度経度であってもよいし、国であってもよい。
【0044】
現在位置を示す情報が取得されると、設定取得部215は、電波時計1の設定および現在位置に基づいて、長波の電波の送信期間、送信周波数、およびフォーマットを決定する(ステップS215)。ステップS214,S215の処理は、定期的に行われてもよい。
【0045】
図7は、送信に関する設定の種類の一例を示す図である。
図7に示される表の1行が1つの設定に相当する。送信期間は、通常、UTC対応、毎時30分などの種類がある。一般的な電波時計1は長波の電波を常に受信することはなく、通常の受信期間は例えば深夜の20分程度であり、通常の送信期間として、その通常の受信期間を含む時間帯が設定される。受信期間および送信期間の詳細については後述する。
【0046】
フォーマットについては、現在の位置で受信できる標準電波のフォーマットおよび周波数とするもの、現在の位置を含む地域と異なる地域(他地域)で受信できる標準電波のフォーマットおよび周波数にするもの、独自のフォーマットおよび周波数にするものがある。実際には他の組み合わせがあってもよく、例えば独自のフォーマットで他地域の周波数で送信する設定があってもよい。独自のフォーマットについては後述する。その他の設定として、装着検出時に送信するか、非装着時に送信するかといった設定もある。これらについての詳細は後述する。
【0047】
時刻取得部216は、長波以外の電波を介して現在の時刻を取得する。より具体的には、スマートフォン4から送信され外部通信部276を介して受信した時刻情報から現在の時刻を取得する。また時刻取得部216は、衛星受信部275を介して衛星から送信される時刻情報を取得し、現在時刻を取得してもよい。
【0048】
図8は、バックル2の時刻取得部216の処理の一例を示すフロー図である。
図8に示される処理は定期的に実行されてよい。はじめに時刻取得部216は、外部通信部276を介してスマートフォン4から受信した情報、または、衛星受信部275を介してGPSから受信した情報から、現在時刻を取得する(ステップS221)。そして時刻取得部216は、取得された現在時刻に基づいてリアルタイムクロック211の内部時刻を修正する(ステップS222)。これにより、バックル2の内部時刻と実際の時刻とのずれは、常に最小に抑えられる。
【0049】
装着検出部217は、加速度センサ272、温度センサ271、および図示しない光センサのうちいずれかの出力に基づいて、人体に装着されていない状態と人体に装着された状態のうちいずれであるかを検出する。なお、装着検出部217は、上記の複数のセンサのうち複数の出力に基づいて、人体に装着された状態と装着されていない状態とを検出してもよい。
【0050】
長波送信制御部219は、長波送信アンテナが、送信条件を満たす場合に時刻情報を含む長波の電波を電波時計1に向けて送信するように制御する。送信条件は、現在時刻が送信期間内にあることであってもよいし、人体に装着された状態が検出されたことであってもよいし、人体に装着されていないことが検出されてから一定期間経過したことであってもよいし、操作部材25を介して手動送信の指示がされたことであってもよい。長波の電波は標準電波であってもよいし、独自の周波数またはフォーマットの電波であってもよい。また、長波送信制御部219は、バックル2が標準電波を送信しない指示の操作がされた場合には、送信条件を満たしても標準電波を送信しなくてよい。なお、長波送信制御部219の機能を実行するマイコン11は一種の送信回路を構成し、このマイコン11と長波送信アンテナとの組み合わせは、一種の送信部を構成する。長波送信制御部219の処理および具体例については後述する。
【0051】
電波時計1の設定取得部115は、操作部材15からの入力に基づいて長波の電波の受信に関する設定を取得する。設定は、周波数、フォーマット、受信期間を含む。なお、設定取得部115は、あらかじめメモリに格納された設定を取得してもよい。
【0052】
図9は、電波時計1の設定取得部115の処理の一例を示すフロー図である。
図9に示される処理は、電波時計1において操作部材15のボタンに対して操作がされ、電波時計1が時刻を表示する都市の設定(都市設定)がされた際に開始される。都市設定としては、あらかじめ定められた複数の都市と、「AUTO」とが存在する。複数の都市は、例えば「TYO」(東京)、LON(ロンドン)等を含む。
【0053】
はじめに、設定取得部115は都市設定が「AUTO」(自動)であるか確認する(ステップS111)。都市設定がAUTOである場合には(ステップS111のY)、バックル2から時刻情報を含む長波の電波を受信するよう受信期間およびフォーマットを設定する(ステップS112)。都市設定が「自動」の場合の受信期間およびフォーマットについては、電波時計1の機種に応じて出荷時に定められていてよい。例えば
図7のいずれかの行に対応する受信期間、受信周波数およびフォーマットが定められていてよい。
【0054】
都市設定がAUTOである場合、本実施形態では、時刻情報をバックル2から取得する。それにより、現在の位置にかかわらず時刻の修正が可能になる。またバックル2がその現在の位置における時刻を送信し、電波時計1がその時刻を受信する場合には、時差等にも自動的に対応できる。
【0055】
都市設定として、自動が設定されず、あらかじめ定められた複数の都市のうちいずれかが設定された場合には(ステップS111のN)、その設定された都市において受信可能な標準電波が存在するか判定する(ステップS113)。標準電波の種類としては、主に欧州で受信可能なDCF77、主に日本で受信可能なJJY40,JJY60、主に中国で受信可能なBPC68、主にUSで受信可能なWWVB60などがある。
【0056】
設定された都市において受信可能な標準電波がない場合には(ステップS113のN)、設定取得部115はバックル2から時刻情報を含む長波の電波を受信するよう受信期間およびフォーマットを設定する(ステップS112)。例えばオーストラリアではいずれの標準電波も受信できないため、都市設定において「SYD」シドニーが指定された場合には、バックル2から受信するよう設定される。一方、設定された都市において受信可能な標準電波がある場合には(ステップS113のY)、設定取得部115はその地域で送信される標準電波を受信するように受信期間およびフォーマットを設定する(ステップS114)。
【0057】
なお、都市設定において、標準電波の受信が可能な都市に設定されている場合であっても、設定取得部115はバックル2から時刻情報を含む長波の電波を受信するように設定してもよい(例えば
図7の番号6の設定)。この場合、設定取得部115は、受信周波数として、遠隔地にあり現在の都市で受信できない標準電波の周波数を設定してよい。
【0058】
送受信する長波の電波を、他地域の標準電波とする場合についてさらに説明する。
図17は、各地域で送信される標準電波と、バックル2から送信する他の地域の標準電波を説明する図である。
図17には世界地図上に標準電波の送信所がプロットされている。また世界は破線により囲まれる3つのエリアに分割されている。3つのエリアは、主にヨーロッパおよびアフリカを含む第1のエリア、主にアジア・オセアニアを含む第2のエリア、および、主に南北アメリカを含む第3のエリアである。
図17の例では、第1,3のエリアでは、バックル2から送信し電波時計1が受信する電波の周波数およびフォーマットをJJY40にしている。また第2のエリアでは、バックル2から送信し電波時計1が受信する電波の周波数およびフォーマットをDCF77にしている。このようにすると、電波時計1における既存の標準電波の受信機能を活かし回路規模の増大を抑えつつ、その地域で送信所から送信される標準電波との混信を防ぐことができる。
【0059】
なお、
図9には記載されていないが、設定取得部115は、電波時計1の状態を示す情報が符号化された信号を圧電素子16を介して送信してよい。電波時計1の状態を示す情報は、長波の電波の受信期間、受信する周波数およびフォーマットのうち少なくとも1つを示す情報を含んでよい。この信号は音波として送信されてよい。
【0060】
装着検出部117は、温度センサ171、および光センサのうちいずれかの出力に基づいて、人体に装着されていない状態と人体に装着された状態のうちいずれであるかを検出する。例えば、装着検出部117は温度センサ171が検出した温度が閾値より高い場合に装着された状態を検出する。また光センサとして、ソーラーセル191が発生する電力が閾値を超えるか判定するコンパレータを用いてよい。装着検出部117は光センサにより閾値を超える光量が検出された場合に、人体に装着されたことを検出してもよい。
【0061】
長波受信制御部119は、長波受信回路13が、長波の電波であって時刻情報を含む電波を受信するよう制御する。より具体的には、長波受信制御部119は、現在時刻が受信期間に含まれる場合、人体に装着された状態が検出された場合、人体に装着されていないことが検出されてから一定期間経過した場合、または、操作部材15を介して手動受信の指示がされた場合に長波受信回路13が設定に応じた電波を受信するよう制御してよい。また、長波受信制御部119は、長波受信回路13が受信した長波の電波に基づいて、時刻情報を取得する。
【0062】
時刻修正部116は、受信された長波の電波から取得された時刻情報に基づいて、リアルタイムクロック111の内部時刻を修正する。
【0063】
以下では、長波の電波の送受信についてさらに詳細に説明する。
図10は、バックル2の長波送信制御部219の処理の一例を示すフロー図である。
【0064】
はじめに長波送信制御部219は、現在、パワーセーブモードであるか判定する(ステップS231)。パワーセーブモードは、電池29に蓄えられた電力の消費を抑えるモードであり、電力消費を抑えるため、表示部材24への画像出力の抑止や、近距離無線通信アンテナコイル232を介した受信、衛星受信部275の受信のうち少なくとも一部が制限されるモードである。ほかの部材の動作が制限されてもよい。パワーセーブモードへの移行は、装着検出部217による、加速度センサ272、温度センサ271、および図示しない光センサのうちいずれかの出力に基づく、人体に装着されていない状態の検出に基づいて行われてよい。例えば、人体に装着されていない状態が一定の期間(例えば数時間)検出された場合に、パワーセーブモードに移行してよい。
【0065】
パワーセーブモードである場合には(ステップS231のY)、長波の送信を行わずに処理を終了する。一方、パワーセーブモードでない場合には(ステップS231のN)、長波送信制御部219は、現在時刻が送信期間内であるか、または、他の送信条件を満たすか判定する(ステップS232)。送信条件は、現在時刻が送信期間内であること、手動送信の指示がされていること、装着検出時に送信する設定がされかつ装着を検出したこと、非装着時に送信する設定がされかつ非装着を検出してから一定期間経過したこと、を含み、長波送信制御部219は、いずれかの条件が満たされた場合に送信条件を満たすと判定してよい。
【0066】
現在時刻が送信期間内でなく、他の送信条件も満たさない場合には(ステップS232のN)、一定期間(例えば1分)待機したのちにステップS232の処理を繰り返す。一方、現在時刻が送信期間内である、または、他の送信条件を満たす場合には(ステップS232のY)、長波送信制御部219は現在時刻および設定されたフォーマットに応じた時刻情報を生成し、生成された時刻情報を設定された周波数で送信する(ステップS233)。
【0067】
図11は、電波時計1の長波受信制御部119および時刻修正部116の処理の一例を示すフロー図である。
【0068】
はじめに長波受信制御部119は、現在、パワーセーブモードであるか判定する(ステップS131)。パワーセーブモードは、電池19に蓄えられた電力の消費を抑えるモードであり、パワーセーブモードでは、電力消費を抑えるため、運針モーター141の停止や、長波受信回路13の停止が行われる。ほかの部材の動作が制限されてもよい。パワーセーブモードへの移行は、装着検出部117による、温度センサ171、および光センサのうちいずれかの出力に基づく、人体に装着されていない状態の検出に基づいて行われてよい。例えば、人体に装着されていない状態が一定の期間(例えば数時間)検出された場合に、パワーセーブモードに移行してよい。なお、加速度センサの出力に基づいてパワーセーブモードへの移行が行われてもよい。
【0069】
パワーセーブモードである場合には(ステップS131のY)、長波の受信を行わずに処理を終了する。一方、パワーセーブモードでない場合には(ステップS131のN)、長波受信制御部119は、現在時刻が受信期間内であるか、または、他の受信条件を満たすか判定する(ステップS132)。受信条件は、現在時刻が受信期間内であること、手動受信の指示がされていること、装着検出時に受信する設定がされかつ装着を検出したこと、非装着時に受信する設定がされかつ非装着を検出してから一定期間経過したこと、を含む。長波受信制御部119は、いずれかの条件が満たされた場合に受信条件を満たすと判定してよい。
【0070】
現在時刻が受信期間内でなく、他の受信条件も満たさない場合には(ステップS132のN)、一定期間(例えば1分)待機したのちにステップS132の処理を繰り返す。一方、現在時刻が受信期間内である、または、他の受信条件を満たす場合には(ステップS132のY)、長波受信制御部119は時刻情報を含む長波の電波の信号を受信し、その信号を復号してから時刻情報を取得する(ステップS133)。そして、時刻修正部116は取得された時刻情報に基づいて内部時刻を修正する(ステップS134)。
【0071】
具体的な例についてさらに説明する。
図12は、装着の検出に応じた送信および受信のタイミングを説明する図である。
図12は、電波時計1の受信期間が一般的な電波時計と同じでありさらに電波時計1が装着検出時に受信する機能を有し、バックル2がそれに合わせて送信するよう設定される場合(
図7の番号1)の例である。送受信の対象となる長波の電波は、現在設定された都市において受信可能な標準電波と同じ周波数およびフォーマットである。
【0072】
図12の例では、電波時計1の通常の受信期間として、0時から0時20分、1時から1時20分、2時から2時20分が設定されている。なお、1時から1時20分の期間については、長波受信制御部119は、当日の前の受信期間(0時から0時20分)に時刻情報を受信できなかった場合に長波受信回路13に受信させる。同様に後続の2時から2時20分の受信期間についても当日の前の受信期間で受信できなかった場合に受信される。
【0073】
一方、バックル2の設定取得部215は、送信期間は、電波時計1の受信期間を含みかつ受信期間より長くなるように設定し、長波送信制御部219は、その送信期間に時刻情報を含む長波の電波を長波送信アンテナを介して送信する。これにより、電波時計1において受信期間に確実に時刻情報を取得することが可能になり、受信期間を延ばす必要がなくなる。それにより電波時計1の消費電力の増大を防ぐことが可能になる。
【0074】
また電波時計1の装着検出部117により電波時計1の人体への装着が検出されると、長波受信制御部119は一定の期間(例えば20分)、長波受信回路13に長波の電波を受信させる。バックル2の装着検出部217によりバックル2の人体への装着が検出されると、長波送信制御部219は一定の期間(例えば40分)、時刻情報を含む長波の電波を送信する。装着が検出されたタイミングで時刻情報を含む長波の電波の送受信が行われることにより、電波時計1の使用を開始してすぐに時刻が修正され、電波時計1の使用者が参照する際の時刻の精度を高く保つことが可能になる。ここで、電波時計1の装着検出部117の人体への装着の検出の感度を、バックル2の装着検出部217の装着の検出の感度より下げてよい。これにより、バックル2の方が先に装着を検出して送信を先に開始し、受信期間に有効に長波の電波を受信する蓋然性を高めることができる。また長波受信制御部119は、装着検出部117により電波時計1の人体への装着が検出されてから待機期間を経過したのちに受信を開始させてもよい。この場合、待機期間は、(送信期間の長さ)-(受信期間の長さ)より短い。
【0075】
なお、ここでは送信期間、周波数およびフォーマットは一般的な電波時計1における標準電波の受信に合わせているが、これらが異なる設定になっている場合にも装着の検出時の送受信の構成を適用することができる。その場合に送受信する際の周波数およびフォーマットは、それ以外で送受信する、時刻情報を含む長波の電波に合わせてもよいし、異ならせてもよい。例えば、装着の検出時のみ、他地域の標準電波または独自の周波数およびフォーマットで長波の電波を送信してもよい。
【0076】
図12の例では装着の際に送受信していたが、あえて非装着のタイミングに送受信が行われてもよい。
図13は、非装着状態の一例を示す図である。非装着状態では、バックル2と電波時計1とが近接する可能性が高く、また、バックル2と電波時計1との間に人体が存在しない。このことからわかるように、非装着状態では長波の送受信環境がよい蓋然性が高く、長波の電波の送受信が成功する確率も高くなる。
【0077】
図14は、非装着状態の検出に応じた送信および受信のタイミングを説明する図である。この送受信は、例えば
図7における番号2および番号4の送信の設定に対応している。
この例では、送受信の対象となる長波の電波は、現在設定された都市において受信可能な標準電波と同じ周波数およびフォーマットである。
【0078】
バックル2の装着検出部217により人体に装着されていない状態が検出されると、長波送信制御部219は、待機期間WUだけ待機する処理を開始する。そして、その待機期間WUが経過しても非装着の状態であった場合に装着検出部217は時刻情報を含む長波の電波の送信を開始する。また長波送信制御部219は、その後一定の期間(例えば40分)送信を続ける。また電波時計1の装着検出部117により人体に装着されていない状態が検出されると、長波受信制御部119は、待機期間WUだけ待機する処理を開始し、その待機期間WUが経過しても非装着の状態であった場合に長波受信回路13に長波の電波の受信を開始させ、その受信を一定の期間(例えば20分)続けさせる。待機期間WUがあるのは、一時的な着脱などによる誤検出を避けるためである。なお、電波時計1における待機期間WUをバックル2における待機期間より長くしてもよい。また非装着の際に送受信する際の周波数およびフォーマットは、それ以外の送信期間・受信期間において送受信される長波の電波と同じでもよいし、異ならせてもよい。
【0079】
図15は、手動受信における送信および受信のタイミングを説明する図である。バックル2の長波送信制御部219は、操作部材25を介して手動送信の指示がされた場合に、時刻情報を含む長波の電波の送信を開始する。また長波送信制御部219は、その後期間PHBの間(例えば30分)送信を続ける。さらに電波時計1において、操作部材15を介して手動受信の指示がされた場合に、長波受信制御部119は、長波受信回路13に時刻情報を含む長波の電波の受信を開始させる。また長波受信制御部119は、その後期間PHHの間(例えば10分)受信を続けさせる。このように手動で送信、受信することを可能にすることで、常に長波の送信を行わなくても、任意のタイミングで時刻の修正をすることが可能になる。なお、この送受信は設定取得部215でどの送信の設定がされたかにかかわらず有効としてよい。また手動による送受信の際の長波の電波の周波数およびフォーマットは、他の送信期間・受信期間に送受信される長波の電波と同じであってもよいし、異っていてもよい。周波数およびフォーマットは電波時計1とバックル2との間であらかじめ同じになるように設定されていればよい。
【0080】
次に、送受信のタイミングを現地時刻ではなくUTC時刻で行う場合の例(
図7の番号3,4に対応)について説明する。
図16は、UTC時刻により設定された送信期間および受信期間の一例を示す図である。UTC時刻によって送信期間および受信期間が設定され、長波送信制御部219が現在のUTC時刻が送信期間内にある場合に長波の電波を送信し、長波受信制御部119が現在のUTC時刻が受信期間内にある場合に長波の電波を受信させる。
図16に示されるように、UTC時刻に基づいて送受信をする場合には、一定周期(
図16では6時間ごと)で送受信が行われるとよい。深夜帯のみに送受信することは難しいからである。
【0081】
また送受信の頻度をより多くすると、例えば飛行機による移動によりタイムゾーンが変わった場合に、その時刻のずれが使用者により視認される確率を下げることができる。ここで、周期を大幅に増やし、1時間ごとに受信期間を開始させてもよい(
図7の番号5から7に対応)。この場合にはUTC時刻の代わりに現地時刻を用いてもよい。また送信期間を、通常の電波時計における受信期間と重ならないようにしてよい。例えば、通常の受信期間は毎時0分を含むので、送信期間が毎時0分を含まない(例えば毎時30分に開始する)ようにしてよい。これにより、バックル2が、現在の地域で送信所から送信される標準電波と同じ電波を出力する場合でも、時計システムに含まれない電波時計への混信を防ぐことができる。
【0082】
図16に示されるように、送信期間および受信期間の長さをより短くしてよい。各国の送信所から送信される標準電波より長波の電波の受信環境が良いと考えると、送信期間および受信期間の長さを短くしても標準電波に比べて問題が生じにくく、一方で消費電力を削減することが可能になる。送信期間、受信期間が存在する周期が短いほど消費電力の削減の効果を得やすい。
【0083】
送受信される長波の電波を独自のフォーマットにする場合(
図7の番号7の設定に対応)について説明する。
図18は、独自の送信データのフォーマットの一例を示す図である。
図18に示されるフォーマットでは、時刻情報として、UTC時刻と、UTC時差分と、閏秒予告と、DST情報と、CRCとを含む。UTC時差分は、UTC時刻と現在時刻との時差を示す情報である。DST情報は、いわゆるサマータイム情報であり、サマータイムにより何時間進むかを示す情報である。サマータイム情報は、サマータイムの開始終了日を示す情報を含んでもよい。CRCは誤り訂正符号であり、受信したデータに誤りがあるかを発見し、その誤りが軽微な場合に修正を可能にするための情報である。UTC時刻と時差を含む時刻情報を長波受信回路13が受信した場合、時刻修正部116は、内部時刻としてリアルタイムクロック111がUTC時刻を計時する場合には、時刻情報にある現在のUTC時刻に基づいて、内部時刻を修正し、内部で管理される時差情報も修正する。内部時刻としてリアルタイムクロック111が現地時刻を計時する場合には、時刻修正部116はUTC時刻および時差から現地時刻を算出し、その現地時刻に基づいて内部時刻を修正してよい。
【0084】
また、独自フォーマットでは、標準電波より情報の転送速度が速い方がよい。一般的な標準電波では1bpsであるが、
図18の例では4bpsである。これにより、1つの時刻を示す時刻情報が送信される周期を、標準電波より短くすることができる。1つの時刻情報が送信される周期は、標準電波では1分である一方、
図18の例では8秒である。
図18では、さらに時刻情報を確定させるまでに受信する時刻情報の数を減らしている。これらのフォーマットの変更により、実質的な受信期間を短くし、消費電力を低減することができる。なお、時刻情報の数および周期の一方だけ変更されてもよい。
【0085】
なお、独自のフォーマットにおける時刻情報に、受信対象の機種を示す情報、タイムゾーン、現在の位置情報、現在の都市、バックル2の電池残量、アラームの設定情報、時計用の更新版ファームウェア、時計をモード変更させるためのコマンドが含まれてもよい。例えば、電波時計1の長波受信制御部119は、受信された時刻情報に含まれる受信対象の機種を示す情報が自分の機種を含まない場合に、時刻の修正を行わなくてよい。これにより、隣接して他の時計が配置されている場合の誤動作を防ぐことができる。
【0086】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、時計システムに含まれる電波時計1はバックル2とセットで用いることを前提にしていなくてよい。以下では主に第1の実施形態との相違点について説明する。
【0087】
第2の実施形態では、設定取得部215により設定される送信の設定は、通常の送信期間、現在の地域における標準電波の周波数およびフォーマットの1種類のみである。さらに、人体への装着が検出された場合に時刻情報を含む長波の電波を送信する設定がされてもよい。
【0088】
図19は、第2の実施形態にかかるバックル2の長波送信制御部219の処理の一例を示すフロー図である。本図は、第1の実施形態における
図10に対応する図である。
【0089】
はじめに長波送信制御部219は、現在、パワーセーブモードであるか判定する(ステップS251)。パワーセーブモードである場合には(ステップS251のY)、長波の送信を行わずに処理を終了する。一方、パワーセーブモードでない場合には(ステップS251のN)、長波送信制御部219は、現在時刻が送信期間内であるか、または、手動送信の操作がされたかを判定する(ステップS252)。これらは送信条件の一種である。
【0090】
現在時刻が送信期間内でなく、手動送信の操作もされていない場合には(ステップS252のN)、一定期間(例えば1分)待機したのちにステップS232の処理を繰り返す。一方、現在時刻が送信期間内である、または、手動送信の操作がされている場合には(ステップS252のY)、長波送信制御部219は現在時刻および現在の地域に応じた標準電波のタイムコードを生成し、そのタイムコードを標準電波の周波数で送信する(ステップS253)。
【0091】
図20は、標準電波を送受信する場合の送信期間および受信期間の一例を示す図である。
【0092】
図20の例では、電波時計1の、0時から0時20分、1時から1時20分、2時から2時20分の受信期間に対応して、23時55分から0時25分、0時55分から1時25分、1時55分から2時25分のバックル2の送信期間が設定されている。
【0093】
本実施形態では、電波時計1がバックル2とセットで動作することを考慮されていなくても、その電波時計1の受信タイミングにあわせて標準電波を送信することにより、バックル2の消費電力を抑えつつ、可搬型の電波時計1の時刻修正をより確実に行うことが可能になる。また手動の送信も可能にすることにより、電波時計1の手動受信の機能を用いつつ時刻を適切に修正することが可能になる。
【0094】
なお、単体の電波時計1が、人体への装着が検出された場合に時刻情報を含む長波の電波を受信する機能を有している場合も考えらえる。そこで、長波送信制御部219は、装着検出部217により人体への装着が検出された場合に、標準電波を送信してもよい。また長波送信制御部219は、バックル2が標準電波を送信しない設定の操作がされた場合には、現在時刻が送信期間内であっても標準電波を送信しなくてもよい。
【0095】
なお、本発明の各実施形態で示した構成図、回路図等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 電波時計、2 バックル、3 バンド、4 スマートフォン、11,21 マイコン、111,211 リアルタイムクロック、13 長波受信回路、131 長波受信アンテナ、14,24 表示部材、141 運針モータ、15,25 操作部材、16 圧電素子、171,271 温度センサ、19,29 電池、191 ソーラーセル、115,215 設定取得部、116 時刻修正部、216 時刻取得部、117,217 装着検出部、119 長波受信制御部、219 長波送信制御部、231 振動モーターコイル、232 近距離無線通信アンテナコイル、233 スピーカーコイル、234 受電コイル、26 マイク、272 加速度センサ、275 衛星受信部、276 外部通信部。