(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187765
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】孔壁形状特定システムと孔壁形状特定方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20221213BHJP
G01B 17/06 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G01C15/00 104B
G01B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095934
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 一弥
【テーマコード(参考)】
2F068
【Fターム(参考)】
2F068AA38
2F068BB08
2F068CC11
2F068FF03
2F068FF14
2F068FF18
2F068JJ14
2F068KK04
2F068KK12
2F068LL02
(57)【要約】
【課題】超音波測定器等を回動等させるアクチュエータの供回りを抑制しながら、孔壁の三次元形状を精度よく、効率的に特定できる、孔壁形状特定システムと孔壁形状特定方法を提供する。
【解決手段】掘削孔Hの孔壁形状を特定する、孔壁形状特定システム100であり、地上から伸びるワイヤ25によって掘削孔Hの内部にある泥水D内に垂下される回動駆動手段60と、ワイヤ25を介して回動駆動手段60を昇降させ、回動駆動手段60の駆動と異なるタイミングで駆動する昇降手段20と、回動駆動手段60の備える回動軸62に対して回動自在に取り付けられている超音波距離検出器80と、昇降手段20の昇降量を検出する昇降量検出器21と、回動駆動手段60の回動角度を検出する回動角度検出器64とを有し、回動駆動手段60の回動反力を泥水Dに取る回動反力取得翼55が回動駆動手段60の側面に対して直接的もしくは間接的に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に造成された掘削孔の孔壁形状を特定する、孔壁形状特定システムであって、
地上から伸びるワイヤによって前記掘削孔の内部にある泥水内に垂下される、回動駆動手段と、
前記ワイヤを介して前記回動駆動手段を昇降させ、該回動駆動手段の駆動と異なるタイミングで駆動する、昇降手段と、
前記回動駆動手段の備える回動軸に対して回動自在に取り付けられている、超音波距離検出器と、
前記昇降手段の昇降量を検出する、昇降量検出器と、
前記回動駆動手段の回動角度を検出する、回動角度検出器と、を有し、
前記回動駆動手段の回動反力を前記泥水に取る回動反力取得翼が、前記回動駆動手段の側面に対して直接的もしくは間接的に設けられていることを特徴とする、孔壁形状特定システム。
【請求項2】
前記ワイヤに垂下されている筐体の内部に前記回動駆動手段が収容され、
前記筐体の底板から前記回動軸が下方へ回動自在に突出し、
前記筐体の側面に単数もしくは複数の前記回動反力取得翼が取り付けられ、前記底板から下方へ突出している前記回動軸に対して前記超音波距離検出器が取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の孔壁形状特定システム。
【請求項3】
前記回動軸の下方には、側方に延設するブラケットと前記超音波距離検出器が取り付けられており、
前記ブラケットには、前記泥水の表面上に突出しながら前記回動軸の回動に同期して該回動軸の周囲を公転し、該回動軸の回動状態を地上から確認自在とする回動状態確認用ポールが取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の孔壁形状特定システム。
【請求項4】
前記超音波距離検出器が、前記回動軸に直交する方向において、180度間隔の二方向に超音波を照射するように二つ設けられている、もしくは、120度間隔の三方向に超音波を照射するように三つ設けられている、もしくは、90度間隔の四方向に超音波を照射するように四つ設けられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の孔壁形状特定システム。
【請求項5】
前記回動駆動手段がステッピングモータにより形成され、
前記昇降手段により、前記掘削孔の所定の深度レベルに前記超音波距離検出器が位置決めされ、前記ステッピングモータにより単数もしくは複数の該超音波距離検出器が回動することにより、該所定の深度レベルにおける該掘削孔の内壁全周の孔壁形状が特定され、
前記昇降手段により、前記超音波距離検出器が昇降されて別の深度レベルに位置決めされ、同様に該別の深度レベルにおける該掘削孔の内壁全周の孔壁形状が特定されるようになっていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の孔壁形状特定システム。
【請求項6】
表示装置をさらに備え、
前記表示装置では、特定された各深度レベルにおける孔壁全周の孔壁形状を、前記掘削孔の深度方向に合成することにより、該掘削孔の全域の孔壁形状図面を作成し、表示することを特徴とする、請求項5に記載の孔壁形状特定システム。
【請求項7】
地盤に造成された掘削孔の孔壁形状を特定する、孔壁形状特定方法であって、
回動軸に対して回動自在に超音波距離検出器を備えた回動駆動手段を、地上から伸びるワイヤによって前記掘削孔の内部にある泥水内に垂下させ、
前記泥水中の所定の深度レベルにおいて、前記回動駆動手段を回動させて、前記超音波距離検出器にて孔壁までの距離を測定して孔壁全周の孔壁形状を特定し、該回動駆動手段を昇降させて別の深度レベルに位置決めし、前記回動駆動手段を回動させて同様に該別の深度レベルにおける孔壁全周の孔壁形状を特定する方法において、
前記回動駆動手段の回動の際に、前記回動駆動手段の側面に直接的もしくは間接的に設けられている回動反力取得翼にて、該回動駆動手段の回動反力を前記泥水に取ることを特徴とする、孔壁形状特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔壁形状特定システムと孔壁形状特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中連続壁の掘削溝や場所打ち杭等の掘削孔の造成においては、造成時における孔壁の崩壊を防止するべく、安定液にて孔壁に泥膜を形成しながら地盤の掘削が行われるのが一般的である。そして、造成された掘削孔の出来形の特定は、超音波測定器を用いて、掘削孔の水平面(X-Y平面)内における中心から、X方向とY方向のそれぞれにどの程度変位しているかを測定することにより行われている。最終的には、掘削孔の中心から孔壁までの内空が許容誤差範囲内である出来形を備えた状態で、掘削孔が造成される必要がある。
しかしながら、例えば均等係数の小さな砂層や礫層等のように、比較的崩壊性の高い地盤を掘削する場合には、掘削中に安定液の泥膜にて孔壁を十分に保持できないことに依拠して、孔壁の局所的な崩壊が生じ得る。このような局所的な崩壊箇所の形状を確認するには、例えば超音波測定による多点測定を要することになる。一般的な超音波測定器は、測定用センサを二箇所もしくは四箇所備えているに過ぎず、従って一回の測定で計測できる点は限定されることになるため、他の点を測定するために、地上にて超音波測定器本体を何度も据替えなければならなくなる。そのため、上記する多点測定においては、地上における超音波測定器の多数回の据替えが必要になる。
掘削孔の孔壁を超音波測定器にて測定する場合、一般には1分/m程度の速度で計測していくことになるが、掘削孔の深度が50m以上に及ぶ場合は、一回の測定に1時間程度を要してしまうことになり、従って上記するように多点を測定する場合は非常に長時間を要することになる。
【0003】
そこで、例えば、掘削孔の安定液を含む泥水内において超音波測定器を回転させ、巻き上げながら孔壁を測定する方法が考えられるが、この測定方向では、螺旋状の測定になることから、深度によっては測定できない孔壁箇所が発生してしまう。この課題を解消するべく、掘削孔の泥水内において超音波測定器を回転させるのみで測定する方法も考えられるが、この方法では、孔壁のどの深度におけるどの平面位置(すなわち、三次元位置)を測定しているのかが明確にならないといった別の課題が生じ得る。
また、このように、掘削孔の泥水内において超音波測定器を回転させながら孔壁の出来形を測定する場合、例えばモータ等のアクチュエータにて超音波測定器を回転させることになるが、超音波測定器の回転に応じてモータが供回りする可能性が高く、モータの供回りに起因して超音波測定器による孔壁の測定位置が不明確になるといった課題もある。
以上のことから、掘削孔の泥水内において、超音波測定器が回動もしくは回転しながら昇降して孔壁形状を特定するに当たり、超音波測定器を回動等させるアクチュエータの供回りを抑制しながら、掘削孔の孔壁の三次元形状を精度よく、効率的に特定できるシステムと方法が望まれる。
【0004】
ここで、特許文献1には、ウインチによって掘削孔内に昇降自在に吊り下げられる超音波距離検出器と、超音波距離検出器を掘削孔内において鉛直軸の廻りに回転させるモータと、超音波距離検出器のモータによる回転角度を検出する回転角検出器と、超音波距離検出器のウインチによる昇降量を検出する昇降量検出器と、超音波距離検出器と回転角検出器と昇降量検出器による各検出出力に基づいて、掘削孔の孔壁全周の設計基準に対する孔壁形状を演算により求めるコンピュータと、コンピュータの演算により得られた孔壁形状を表示するディスプレイと、孔壁形状を印刷するプリンタとを備えた、掘削孔の孔壁形状測定装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の孔壁形状測定装置によれば、掘削孔の孔壁形状を全周かつ全長に亘って、連続的かつ正確、容易に把握できるとしている。しかしながら、超音波距離検出器がモータにて鉛直軸廻りに回転されながらウインチにて掘削孔内を昇降される構成であることから、上記するように螺旋状の測定とならざるを得ず、深度によって測定できない孔壁箇所が発生してしまうといった課題を解消することはできない。
また、この孔壁形状測定装置においても、泥水中における超音波距離検出器の回転時のモータの供回りの課題が依然として存在する。
【0007】
本発明は、掘削孔の泥水内において、超音波測定器が回動もしくは回転しながら昇降して孔壁形状を特定するに当たり、超音波測定器等を回動等させるアクチュエータの供回りを抑制しながら、孔壁の三次元形状を精度よく、効率的に特定できる、孔壁形状特定システムと孔壁形状特定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による孔壁形状特定システムの一態様は、
地盤に造成された掘削孔の孔壁形状を特定する、孔壁形状特定システムであって、
地上から伸びるワイヤによって前記掘削孔の内部にある泥水内に垂下される、回動駆動手段と、
前記ワイヤを介して前記回動駆動手段を昇降させ、該回動駆動手段の駆動と異なるタイミングで駆動する、昇降手段と、
前記回動駆動手段の備える回動軸に対して回動自在に取り付けられている、超音波距離検出器と、
前記昇降手段の昇降量を検出する、昇降量検出器と、
前記回動駆動手段の回動角度を検出する、回動角度検出器と、を有し、
前記回動駆動手段の回動反力を前記泥水に取る回動反力取得翼が、前記回動駆動手段の側面に対して直接的もしくは間接的に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、掘削孔の泥水内を昇降手段にて昇降される回動駆動手段に対して、超音波距離検出器が回動自在に取り付けられている構成において、昇降手段が回動駆動手段の駆動と異なるタイミングで駆動すること、及び、回動駆動手段に対して、回動駆動手段の回動反力を泥水に取る回動反力取得翼が直接的もしくは間接的に設けられていることにより、超音波距離検出器による螺旋状の測定を抑止でき、かつ、超音波測定器等の回動の際の回動駆動手段の供回りを抑制できることにより、孔壁の三次元形状の高精度で効率的な特定を実現することができる。
本態様によれば、例えば上記するような地上における超音波測定器の多数回の据替えが不要になり、掘削孔の延長に沿った連続的な孔壁形状の特定が可能になることから、この孔壁形状の特定に要する時間を格段に短縮することができる。
ここで、「昇降手段が、回動駆動手段の駆動と異なるタイミングで駆動する」とは、昇降手段の駆動によって回動駆動手段が所定の深度レベルに昇降されて位置決めされ、昇降手段の駆動が停止した後、回動駆動手段が駆動して超音波距離検出器を回動させることを意味している。ここで、昇降手段には、電動ドラムやウインチ、重機等が含まれる。また、回動駆動手段には、サーボモータやステッピングモータ等のアクチュエータが含まれる。例えば、電動ドラムとモータを異なるタイミングで駆動する制御は、制御装置が実行してもよいし、管理者や作業員がマニュアル操作してもよい。
【0010】
このように、昇降手段の駆動によって回動駆動手段を昇降させ、所定の深度レベルに超音波距離検出器を位置決めした後に回動駆動手段を駆動させ、該所定の深度レベルにおける超音波距離検出器から掘削孔の全周の孔壁までの距離を測定し、回動駆動手段の駆動を停止させた状態で昇降手段を駆動して超音波距離検出器の深度レベルを変更させて同様に掘削孔の全周の孔壁までの距離を測定し、それぞれの深度レベルにおける測定結果に基づいて孔壁形状の特定を実行し、例えばこれを掘削孔の下端から上端に亘って順次実行することにより、掘削孔の全域における孔壁の三次元形状を特定することが可能になる。
【0011】
また、「回動反力取得翼が、回動駆動手段の側面に対して直接的もしくは間接的に設けられている」とは、回動反力取得翼が、回動駆動手段を構成する回動軸等の側面に直接取り付けられている形態や、回動駆動手段を収容する筐体の側面に回動反力取得翼が取り付けられることにより、回動駆動手段に対して回動反力取得翼が間接的に取り付けられている形態等を含んでいる。
【0012】
また、本明細書における「回動」は、主として一回転(360度)未満の時計回りもしくは反時計回りの動きを意味しているが、一回転以上の回転も含んでいる。ただし、より詳細には、回動駆動手段では、回動軸を45度や90度、180度回動させたり、90度の回動後に90度反転させる等の制御が主として実行されることから、一回転未満の文字通りの回動を主として意味している。
【0013】
また、本発明による孔壁形状特定システムの他の態様は、
前記ワイヤに垂下されている筐体の内部に前記回動駆動手段が収容され、
前記筐体の底板から前記回動軸が下方へ回動自在に突出し、
前記筐体の側面に単数もしくは複数の前記回動反力取得翼が取り付けられ、前記底板から下方へ突出している前記回動軸に対して前記超音波距離検出器が取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、回動駆動手段が筐体の内部に収容され、筐体の側面に回動反力取得翼が取り付けられていること(すなわち、回動駆動手段に対して回動反力取得翼が間接的に取り付けられている形態)から、回動軸の回動の際に筐体に作用する回動させようとする力に対して、筐体の側面に取り付けられている回動反力取得翼が泥水にて反力を取って抗することにより、筐体とこれに収容される回動駆動手段の供回りを効果的に抑制することができる。例えば、筐体の内壁に架台等を介して回動駆動手段が固定される場合に、回動駆動手段の回動力は、架台等を介して筐体に伝達され、回動駆動手段と筐体がともに回動力によって供回りし得るが、これが効果的に抑制される。
さらに、筐体の内部に回動駆動手段を収容したことにより、回動駆動手段を周囲の泥水から液密にシールすることができ、泥水による回動駆動手段の耐久低下を抑制できる。
【0015】
また、本発明による孔壁形状特定システムの他の態様において、
前記回動軸の下方には、側方に延設するブラケットと前記超音波距離検出器が取り付けられており、
前記ブラケットには、前記泥水の表面上に突出しながら前記回動軸の回動に同期して該回動軸の周囲を公転し、該回動軸の回動状態を地上から確認自在とする回動状態確認用ポールが取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、回動軸の下方において側方に延設するブラケットが取り付けられ、ブラケットに対して地上から確認自在に回動状態確認用ポールが取り付けられていることにより、地上の管理者等は、回動状態確認用ポールの回動状態から実際の回動軸の回動状態を特定(確認)することができ、この特定結果と回動角度検出器による検出結果を照合し、必要に応じて回動角度検出器の検出結果を泥水中の実際の回動軸の回動に基づいて補正し、回動角度検出器の検出結果の校正を図ることが可能になる。
例えば、目視による回動状態確認用ポールの経時的な確認結果を管理者等が記録しておき、この記録された確認結果と回動角度検出器による経時的な検出結果とを照合し、双方の結果が不整合な場合(不整合な時刻等)において回動角度検出器による検出結果の校正を図ることができる。
ここで、回動状態確認用ポールは、上方へ伸長自在な多重管構造を有していてもよい。この形態によれば、掘削孔の深度に応じて回動状態確認用ポールの長さを適宜伸長させ、孔壁の測定深度に関わらず、回動状態確認用ポールの上方を泥水の水面上に常時突出させておくことができ、地上からの回動状態確認用ポールの目視確認を保証することが可能になる。
【0017】
また、本発明による孔壁形状特定システムの他の態様は、
前記超音波距離検出器が、前記回動軸に直交する方向において、180度間隔の二方向に超音波を照射するように二つ設けられている、もしくは、120度間隔の三方向に超音波を照射するように三つ設けられている、もしくは、90度間隔の四方向に超音波を照射するように四つ設けられていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、超音波距離検出器が、180度間隔で二つ設けられている形態、120度間隔で三つ設けられている形態、90度間隔で四つ設けられている形態のいずれかの形態であることにより、回動軸の回動角度を所望に小さくでき、回動軸の回動時間の短縮によって、より一層効率的な孔壁形状特定を実現することができる。例えば超音波距離検出器が90度間隔で四つ設けられている形態では、掘削孔における所定の深度レベルにおいて、四つの超音波距離検出器を作動させた状態で回動駆動手段の回動軸を90度回動させることにより、当該深度レベルにおける回動軸から掘削孔の孔壁の全周までの距離を測定することができ、当該全周の孔壁形状を特定することが可能になる。
【0019】
また、本発明による孔壁形状特定システムの他の態様は、
前記回動駆動手段がステッピングモータにより形成され、
前記昇降手段により、前記掘削孔の所定の深度レベルに前記超音波距離検出器が位置決めされ、前記ステッピングモータにより単数もしくは複数の該超音波距離検出器が回動することにより、該所定の深度レベルにおける該掘削孔の内壁全周の孔壁形状が特定され、
前記昇降手段により、前記超音波距離検出器が昇降されて別の深度レベルに位置決めされ、同様に該別の深度レベルにおける該掘削孔の内壁全周の孔壁形状が特定されるようになっていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、電動ドラムやウインチ等の昇降手段の駆動によって回動駆動手段を昇降させ、所定の深度レベルに位置決めした後に回動駆動手段であるステッピングモータを駆動させ、該所定の深度レベルにおいて回動軸から孔壁の全周までの距離を測定することにより孔壁形状を特定し、昇降手段を駆動してステッピングモータの深度レベルを変更させて同様に孔壁の全周の孔壁形状を特定し、例えばこれを掘削孔の下端から上端に亘って順次実行することにより、掘削孔の全域における孔壁形状を特定することが可能になる。各深度レベルでは、ステッピングモータにより、設定された回動角度で超音波距離検出器を精緻に回動させることができる。
また、例えば、所定の深度レベルにおいてステッピングモータの回動軸を90度や180度回動させることにより孔壁の全周の測定を行った後、ステッピングモータを上方の別の深度レベルに上昇させて停止させ、この別の深度レベルにおいては、ステッピングモータの回動軸を先ほどとは逆方向に90度や180度(先ほどと同じ角度)反転させることにより、超音波距離検出器から地上へ延設するセンサケーブルやモータ制御ケーブル、電源ケーブル等の各種ケーブルがステッピングモータ廻りに捻れる(何重にも亘って巻装される)ことを抑制できる。
【0021】
また、本発明による孔壁形状特定システムの他の態様は、
表示装置をさらに備え、
前記表示装置では、特定された各深度レベルにおける孔壁全周の孔壁形状を、前記掘削孔の深度方向に合成することにより、該掘削孔の全域の孔壁形状図面を作成し、表示することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、表示装置により、特定された各深度レベルにおける孔壁全周の孔壁形状を掘削孔の深度方向に合成することにより、掘削孔の全域の孔壁形状図面を作成できる。また、孔壁の局所的な崩壊等によって出来形が許容誤差を超える領域がある場合でも、迅速に当該領域を特定することが可能になる。
ここで、作成される孔壁形状図面は、例えば掘削孔の延長の任意の深度レベルにおける水平断面図や、掘削孔の三次元図面(例えば三次元斜視図)等が含まれる。
【0023】
また、本発明による孔壁形状特定方法の一態様は、
地盤に造成された掘削孔の孔壁形状を特定する、孔壁形状特定方法であって、
回動軸に対して回動自在に超音波距離検出器を備えた回動駆動手段を、地上から伸びるワイヤによって前記掘削孔の内部にある泥水内に垂下させ、
前記泥水中の所定の深度レベルにおいて、前記回動駆動手段を回動させて、前記超音波距離検出器にて孔壁までの距離を測定して孔壁全周の孔壁形状を特定し、該回動駆動手段を昇降させて別の深度レベルに位置決めし、該回動駆動手段を回動させて同様に該別の深度レベルにおける孔壁全周の孔壁形状を特定する方法において、
前記回動駆動手段の回動の際に、該回動駆動手段の側面に直接的もしくは間接的に設けられている回動反力取得翼にて、該回動駆動手段の回動反力を前記泥水に取ることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、掘削孔の泥水内において、所定の深度レベルにおいて超音波距離検出器を回動させて孔壁までの距離を測定して孔壁全周の孔壁形状を特定し、回動駆動手段を昇降させて別の深度レベルに位置決めし、回動駆動手段を回動させて同様に別の深度レベルにおける孔壁全周の孔壁形状を特定すること、及び、回動駆動手段の側面に直接的もしくは間接的に設けられている回動反力取得翼にて回動駆動手段の回動反力を泥水に取ることにより、超音波距離検出器による螺旋状の測定を抑止でき、かつ、超音波測定器等の回動の際の回動駆動手段の供回りを抑制できることによって、孔壁の三次元形状の高精度で効率的な特定を実現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の孔壁形状特定システムと孔壁形状特定方法によれば、掘削孔の泥水内において、超音波測定器が回動もしくは回転しながら昇降して孔壁形状を特定するに当たり、超音波測定器等を回動等させるアクチュエータの供回りを抑制しながら、孔壁の三次元形状を精度よく、効率的に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係る孔壁形状特定システムの一例を示す構成図である。
【
図3】実施形態に係る孔壁形状特定システムを構成する制御装置のハードウェア構成の一例を周辺機器とともに示す図である。
【
図4A】表示装置に表示される、掘削孔の任意の深度レベルにおける特定出来形と設計出来形を含む二次元図面の一例を示す図である。
【
図4B】表示装置に表示される、掘削孔の任意の深度レベルにおける特定出来形と設計出来形を含む二次元図面の他の例を示す図である。
【
図5】表示装置に表示される、掘削孔の三次元図面を示す図であって、深度ごとの測定結果と判定結果をともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態に係る孔壁形状特定システムと孔壁形状特定方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[実施形態に係る孔壁形状特定システムと孔壁形状特定方法]
図1乃至
図5を参照して、実施形態に係る孔壁形状特定システムと孔壁形状特定方法の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る孔壁形状特定システムの一例を示す構成図であり、
図2は、
図1のII部の拡大図である。
【0029】
孔壁形状特定システム100は、地盤Gに造成された掘削孔Hの孔壁Sの形状を特定するシステムであり、この掘削孔Hには、地中連続壁の掘削溝や場所打ち杭等が含まれ、場所打ち杭には、杭の軸部の底部や途中位置に拡径部を有する拡径杭が含まれる。
【0030】
孔壁形状特定システム100は、地上から伸びるワイヤ25によって掘削孔Hの内部にある安定液を含む泥水D内に垂下される回動駆動手段60と、ワイヤ25を介して回動駆動手段60をX4方向に昇降させ、回動駆動手段60の駆動と異なるタイミングで駆動する昇降手段20と、回動駆動手段60の備える回動軸62に対して回動自在に取り付けられている超音波距離検出器80とを有する。
【0031】
掘削孔Hの地表面近傍には、鋼管等の口元パイプKが設置されて地表面における孔壁防護が図られており、地表面における口元パイプKの周囲には、H形鋼や山形鋼等の形鋼材や角形鋼管がフレーム状に組み付けられた地上架台10が設けられている。
【0032】
地上架台10には、電動ドラムにより形成される昇降手段20がX1方向に回転自在に取り付けられており、電動ドラム20の回転駆動により、回動駆動手段60と超音波距離検出器80を掘削孔Hの内部においてX4方向に昇降させるようになっている。図示例では、昇降手段20の回転中心にエンコーダ等の昇降量検出器21が装備されており、昇降量検出器21にて昇降手段20の回転数を読み取り、主ワイヤ25の下端の深度を特定できるようになっている。
【0033】
主ワイヤ25の下端には分岐ワイヤ28を介してハンガーバー41が垂下され、ハンガーバー41の両端から二本の吊りワイヤ29が垂下され、二本の吊りワイヤ29にハンガープレート42が垂下され、ハンガープレート42に対して回動駆動手段60と超音波距離検出器80が垂下されている。昇降量検出器21により、主ワイヤ25の下端の深度が特定され、主ワイヤ25の下端から超音波距離検出器80までの鉛直距離をさらに加算することにより、超音波距離検出器80の深度が特定されることになる。尚、昇降手段20は、電動ドラムの他にも、ウインチやクレーン等の重機であってもよい。
【0034】
地上架台10には、その他、別途の電動ドラム22,23がそれぞれX2方向とX3方向に回転自在に取り付けられている。一方の電動ドラム22は、超音波距離検出器80から延びるセンサケーブル26をX5方向に昇降自在とし、他方の電動ドラム23は、回動駆動手段60から延びるモータ制御ケーブル27をX6方向に昇降自在とする。
【0035】
地上架台10にはさらに、コンピュータにより形成される制御装置30が搭載されている。制御装置30の構成は以下で詳説するが、制御装置30は、昇降手段20と回動駆動手段60をシーケンシャルに駆動させる制御を実行し、回動駆動手段60の駆動の際には超音波距離検出器80を同時に作動させる制御を実行する。また、制御装置30は表示装置を備えており、測定された掘削孔Hの孔壁形状に関する測定データに基づいて孔壁形状を特定し、掘削孔Hの任意の深度における出来形の二次元図面や、掘削孔Hの全体の三次元図面等を作成し、画面表示する。
【0036】
地上架台10に取り付けられている昇降手段20から垂下される主ワイヤ25が地表面と交差する位置には、掘削孔基準座標位置P0が設定されており、掘削孔基準座標位置P0の三次元座標データが制御装置30に格納されている。ここで、掘削孔基準座標位置P0の設定方法は、地上における測量に基づく方法や、地上における任意の基準位置から検尺棒等を利用して設定する方法等、様々な方法によって基準座標を設定することができる。
【0037】
掘削孔基準座標位置P0により、主ワイヤ25の地表面の水平面(X-Y平面)内における二次元座標位置(例えば、座標:X1,Y1)が特定され、掘削孔基準座標位置P0を通過して鉛直下方に延びる主ワイヤ25の下端の深度が昇降量検出器21にて特定され、主ワイヤ25の下端から超音波距離検出器80までの鉛直距離加算されることにより、掘削孔Hの内部において昇降する超音波距離検出器80の三次元位置座標(例えば、座標:X1,Y1,Z1)が特定されることになる。
【0038】
図2に詳細に示すように、ハンガープレート42には第一筐体50(筐体の一例)が取り付けられ、第一筐体50の内部に回動駆動手段60が収容されている。
【0039】
第一筐体50は、筒状の本体51と、本体51に対して不図示の止水機構(環状溝とOリングのユニット機構等)を介して固定されている、天板52及び底板53とを有する。底板53の中央位置には回動軸孔54が開設されており、回動駆動手段60の回動軸62が回動軸孔54を介して回動自在に下方へ突出している。
図2では詳細な図示を省略しているが、第一筐体50の内部には、その内壁面に対して水平架台が固定されており、水平架台に対して回動駆動手段60が載置固定されている。
【0040】
ここで、回動駆動手段60はステッピングモータであり、回動軸62を所定の回動角度にて回動させたり、回動軸62を所定の回動角度だけ回動させた後、次に同じ回動角度だけ反転させる動きを実現できるアクチュエータである。
【0041】
ステッピングモータ60には、その回動角度を測定するエンコーダ等の回動角度検出器64が装着されている。
【0042】
第一筐体50の天板52にはケーブル孔52aが開設されており、ケーブル孔52aを介してステッピングモータ60に通じるモータ制御ケーブル27が上方へ延設している。
【0043】
回動軸62の下端には、下方へ延設した後、屈曲して側方の二方向(図示例は180度方向)へ延設するブラケット65が取り付けられている。ブラケット65は例えば平鋼により形成され、その広幅面が上下に配向しており、二方向に延設するブラケット65の端部近傍にはポール孔66が開設され、鉛直方向に延設する回動状態確認用ポール68がポール孔66に着脱自在に取り付けられている。
【0044】
この回動状態確認用ポール68は、第一筐体50等を泥水Dの内部へ落とし込んでいく当初段階で、回動状態確認用ポール68の上端を泥水Dの水面から上方に突出させ、地上から管理者等が視認できる位置にて第一筐体50等の落とし込みを一旦停止させ、ステッピングモータ60を試し駆動させる。この試し駆動の際に、地上の管理者等は、回動状態確認用ポール68の回動状態から、泥水D内にある実際の回動軸62の回動状態を特定(確認)することができる。そして、この試し駆動の際に回動角度検出器64による検出結果を取得しておき、目視による特定結果と回動角度検出器64による検出結果を照合し、必要に応じて回動角度検出器64の検出結果を泥水D中の実際の回動軸62の回動に基づいて補正し、回動角度検出器64の検出結果の校正を図るようにする。
【0045】
例えば、目視による回動状態確認用ポール68の経時的な確認結果を管理者等が記録しておき、この記録された確認結果と回動角度検出器64による経時的な検出結果とを照合し、双方の結果が不整合な場合や不整合な時刻等において、回動角度検出器64による検出結果の校正を図ることができる。
【0046】
尚、
図1では、第一筐体50が掘削孔Hの下方に落とし込まれている状態においても回動状態確認用ポール68がブラケット65に取り付けられているままであるが、上記するように、地上近辺にて回動状態確認用ポール68の回動状態を確認した後、第一筐体50等を地上に一旦引き上げ、ブラケット65から回動状態確認用ポール68を取り外した後に第一筐体50等を掘削孔Hの下方へ落とし込んでいってもよい。
【0047】
また、回動状態確認用ポールが多重管構造を有していて、掘削孔Hの深度に応じて伸長し、絶えずその上端が泥水Dの水面から上方に突出し、地上の管理者等が常時その上端の回動状態を確認できる形態であってもよい。
【0048】
ブラケット65には、直方体状の第二筐体70が取り付けられている。第二筐体70は、底板と四つの側面を備えた本体71と、本体71の天端において不図示の止水機構を介して取り付けられている平面視正方形の天板72とを有する。四つの側面にはいずれも観察窓74が設けられており、第二筐体70の内部には、各観察窓74に対応する位置に計四基の超音波距離検出器80が収容されている。
【0049】
それぞれの超音波距離検出器80より、対応する観察窓74を介して壁面SにZ1方向に超音波が照射され、壁面Sにて反射してZ1方向に戻ってきた反射波が観察窓74を介して超音波距離検出器80にて取得されることにより、超音波距離検出器80から壁面Sまでの距離(水平距離)が測定される。
【0050】
四基の超音波距離検出器80から照射される超音波は、相互に90度の角度間隔を有している。
図1及び
図2に示すように、昇降手段20の駆動を停止することにより、掘削孔Hの任意の深度レベルに四基の超音波距離検出器80を位置決めし、次に、ステッピングモータ60の回動軸62をY1方向へ90度回動させることにより、各超音波距離検出器80も同期するようにY2方向へ90度回動する。
【0051】
四基の超音波距離検出器80は回動に際して(もしくは回動と同時に)超音波を照射しており、四基の超音波距離検出器80がY2方向に90度回動することにより、この深度レベルにおける全周の孔壁Sまでの距離(水平距離)が測定される。
【0052】
このように、複数基(図示例は四基)の超音波距離検出器80を基数に応じた回動角度だけ回動させることにより、例えば一基の超音波距離検出器を一回転させる場合に比べて、ある深度レベルにおける全周(360度)の孔壁Sまでの距離の測定をより短時間に行うことができる。
【0053】
例えば、図示例以外の形態として、超音波距離検出器80が180度間隔で二つ設けられている形態や、120度間隔で三つ設けられている形態等であってもよい。また、一基の超音波距離検出器80を一回転させる形態であってもよく、この場合は超音波距離検出器80の基数が少なくてよいことからシステムの製作コストの削減に繋がる。
【0054】
図2に示すように、第二筐体70の天板72にはケーブル孔72aが開設されており、ケーブル孔72aを介して各超音波距離検出器80に通じるセンサケーブル26が上方へ延設している。
図2に示すように、ハンガープレート24の二つの広幅面のそれぞれに対して、モータ制御ケーブル27とセンサケーブル26の延設位置が区別され、双方の絡まりが防止されている。
【0055】
第一筐体50の本体51の側面には、二枚の板状の回動反力取得翼55が相互に180度の間隔を置いて取り付けられている。
【0056】
第一筐体50の内壁面に不図示の架台等を介してステッピングモータ60が固定されていることから、ステッピングモータ60の回動力は、架台等を介して第一筐体50に伝達され、ステッピングモータ60と第一筐体50がともに回動力によって供回りすることになる。この供回りにより、ステッピングモータ60の回動によって回動される各超音波距離検出器80の測定位置(測定範囲)は供回り分だけずれることになり、各超音波距離検出器80による測定範囲(任意の深度レベルにおける水平面内の測定範囲を規定するX-Y座標範囲)に誤差が生じることになる。
【0057】
このような超音波距離検出器80の測定範囲の誤差の原因となる、ステッピングモータ60の駆動時におけるステッピングモータ60と第一筐体50及び超音波距離検出器80の供回りを防止するべく、第一筐体50の本体51の側面において板状の回動反力取得翼55が設けられている。ステッピングモータ60のY1方向の回動の際に、第一筐体50が同方向へY3方向に供回りしようとした際に、二枚の回動反力取得翼55が周囲の泥水Dから反力Qを取ることにより、第一筐体50の供回りを効果的に抑止もしくは抑制することができる。
【0058】
ステッピングモータ60の駆動時における第一筐体50等の供回りが回動反力取得翼55にて抑止もしくは抑制されることにより、各超音波距離検出器80による水平面内の正しい測定範囲を規定することができ、その深度情報を含めて、孔壁Sの各測定点における正しい三次元座標情報を取得することが可能になる。
【0059】
孔壁形状特定方法では、制御装置30による各機器の制御により、電動ドラム20の駆動によってステッピングモータ60と複数の超音波距離検出器80を昇降させ、超音波距離検出器80を所定の深度レベルに位置決めした後にステッピングモータ60を駆動させ、この所定の深度レベルにおける超音波距離検出器80から掘削孔Hの全周の孔壁Sまでの距離を測定する。
【0060】
次に、ステッピングモータ60の駆動が停止された状態で電動ドラム20を駆動して超音波距離検出器80の深度レベルを変更させて同様に掘削孔Hの全周の孔壁Sまでの距離を測定し、それぞれの深度レベルにおける測定結果に基づいて孔壁形状の特定を実行する。
【0061】
そして、この一連の各種機器の交互の駆動制御と計測を掘削孔Hの下端から上端に亘って順次実行することにより、掘削孔Hの全域における孔壁Sの形状(例えば三次元形状)を特定することが可能になる。
【0062】
この特定方法においては、所定の深度レベルにおいてステッピングモータ60の回動軸62を90度回動させることにより孔壁Sの全周の測定を行った後、ステッピングモータ60を上方の別の深度レベルに上昇させて停止させ、この別の深度レベルにおいては、ステッピングモータ60の回動軸62を先ほどとは逆方向に90度反転させることにより、超音波距離検出器80から地上へ延設するセンサケーブル26やモータ制御ケーブル27、不図示の電源ケーブル等の各種ケーブルが第一筐体50やハンガープレート42の廻りに捻れることを抑制できる。
【0063】
この特定方法によれば、昇降手段20が回動駆動手段60の駆動と異なるタイミングで駆動することにより、上記するように超音波距離検出器80による螺旋状の測定を抑止することができる。さらに、回動駆動手段60を収容する第一筐体50の本体51に対して、回動駆動手段60の回動反力を泥水Dに取る回動反力取得翼55が設けられていることにより、回動駆動手段60の回動の際の第一筐体50等の供回りを抑止もしくは抑制できることにより、上記する螺旋状の測定を抑止できることと相俟って、掘削孔Hの孔壁Sの三次元形状の高精度で、かつ効率的な特定を実現することができる。
【0064】
次に、
図3を参照して、孔壁形状特定システム100を構成する制御装置30について説明する。ここで、
図3は、実施形態に係る孔壁形状特定システムを構成する制御装置のハードウェア構成の一例を周辺機器とともに示す図である。
【0065】
図3に示すように、制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)31、RAM(Random Access Memory)32、ROM(Read Only Memory)33、通信装置34、表示装置35、及び入力装置36を有し、それらがシステムバスにてデータ通信可能に接続されている。
【0066】
ROM33には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶されている。RAM32は、ROM33に記憶されているプログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域として用いられる。CPU31は、RAM32にロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。例えば、掘削孔基準座標位置P0の三次元座標データ、昇降量検出器22から送信される昇降手段20の昇降量データ、回転角度検出器64から送信される回動駆動手段60の回動角度データ、超音波距離検出器80から送信される孔壁Sまでの距離データ等を通信装置34が受信し、これらの各種データに基づいて、掘削孔H内を昇降する超音波距離検出器80の三次元位置座標や、超音波距離検出器80の回動により測定される各孔壁Sの三次元位置座標が特定され、掘削孔Hの孔壁Sの形状が特定される。
【0067】
また、例えば、掘削孔Hの下端から上端に向かって、昇降手段20によって超音波距離検出器80を一定量ずつ上昇させる上昇制御と、次に、回動駆動手段60の回動軸62を所定の回動角度だけ回動させる回動制御と、その際に超音波距離検出器80から超音波を照射させる超音波照射制御を一セットとして、掘削孔Hの上方に向かって複数セットの制御をシーケンシャルに実行する。あるいは、掘削孔Hの上端から下端に向かって、超音波距離検出器80を順次降下させながら同様の制御をシーケンシャルに実行してもよい。
【0068】
表示装置35は、液晶ディスプレイ等からなり、たとえばタッチパネルの表示機能を担う。ここで、
図4及び
図5は、表示装置35による表示内容の一例を示している。具体的には、
図4Aと
図4Bは、表示装置に表示される、掘削孔の任意の深度レベルにおける特定出来形と設計出来形を含む二次元図面の一例を示す図である。さらに、
図5は、表示装置に表示される、掘削孔の三次元図面を示す図であって、深度ごとの測定結果と判定結果をともに示す図である。
【0069】
表示装置35では、特定された各深度レベルにおける孔壁Sの全周の孔壁形状を、
図4Aと
図4Bに示すように二次元図面として表示する。ここで、
図4Aは、設計出来形ラインを設計半径r0の真円として点線で示し、壁面Sの全周の特定出来形に関するラインを実線で示している。この特定出来形において最大半径r1が特定され、最大半径r1と設計半径r0の差分値Δr1とこの差分値に関する許容誤差値Δrsとを比較する。
図4Aに示す例では、差分値Δr1が許容誤差値Δrs未満となっており、この断面(深度レベル)における出来形が問題ないことを表示している。
【0070】
一方、
図4Bに示す例は、特定出来形において最大半径r2が特定され、最大半径r2と設計半径r0の差分値Δr2とこの差分値に関する許容誤差値Δrsとを比較した結果、差分値Δr2が許容誤差値Δrsを超えており、この断面(深度レベル)において施工不良箇所が存在していること、さらに、この施工不良箇所の三次元位置範囲を明確に表示している。
【0071】
また、
図5は、表示装置35において、
図4A等に示す二次元図面を掘削孔Hの延長に亘って合成することにより形成される、三次元図面を示している。三次元の掘削孔Hのうち、高さ方向のΔaは、昇降手段20による一回の昇降量を示しており、任意の深度レベルにおいて位置決めされた四基の超音波距離検出器80が回動することにより、高さΔaの範囲の全周の孔壁Sの形状が測定され、特定される。
【0072】
この画面では、三次元図面の側方に、各深度レベル(a1,a2,・・・)における最大半径(b1,b2,・・・)と許容誤差Δrsとの差分値(誤差で、c1,c2,・・・)がテーブル表示され、判定結果が表示される例として示している。
【0073】
入力装置36は、表示装置35に対する接触体の接触を検出するセンサを有する電子部品である。接触体の接触の検出方式としては、静電方式や抵抗膜方式、光学方式などがある。この接触体として、管理者等の指や専用ペン等が挙げられる。通信装置34は、有線LANや無線LAN、もしくは移動体通信網等において通信を行う際に必要となる、アンテナ等の電子部品である。
【0074】
表示装置35により、特定された掘削孔Hの孔壁Sの形状を二次元的及び三次元的に視認することが可能になり、許容誤差を超える施工不良箇所の位置情報や施工不良の程度を高精度に特定することが可能になる。
【0075】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0076】
10:地上架台
20:電動ドラム(昇降手段)
21:昇降量検出器
22,23:電動ドラム
25:主ワイヤ(ワイヤ)
26:センサケーブル
27:モータ制御ケーブル
28:分岐ワイヤ
29:吊りワイヤ
30:制御装置
41:ハンガーバー
42:ハンガープレート
50:第一筐体(筐体)
51:本体
52:天板
52a:ケーブル孔
53:底板
54:回動軸孔
55:回動反力取得翼
60:回動駆動手段(ステッピングモータ)
62:回動軸
64:回動角度検出器
65:ブラケット
66:ポール孔
68:回動状態確認用ポール
70:第二筐体
71:本体
72:天板
72a:ケーブル孔
74:観察窓
80:超音波距離検出器
100:孔壁形状特定システム
G:地盤
P0:掘削孔基準座標位置
K:口元パイプ
H:掘削孔
S:孔壁
D:泥水(安定液)