IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧 ▶ IHI運搬機械株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社エスシー・マシーナリの特許一覧

<>
  • 特開-タワークレーンのマストの支持構造 図1
  • 特開-タワークレーンのマストの支持構造 図2
  • 特開-タワークレーンのマストの支持構造 図3
  • 特開-タワークレーンのマストの支持構造 図4
  • 特開-タワークレーンのマストの支持構造 図5
  • 特開-タワークレーンのマストの支持構造 図6
  • 特開-タワークレーンのマストの支持構造 図7
  • 特開-タワークレーンのマストの支持構造 図8
  • 特開-タワークレーンのマストの支持構造 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187789
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】タワークレーンのマストの支持構造
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/32 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
B66C23/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095968
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599016110
【氏名又は名称】株式会社エスシー・マシーナリ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】藤内 隆
(72)【発明者】
【氏名】坂本 法典
(72)【発明者】
【氏名】栃山 広幸
(72)【発明者】
【氏名】冨永 祐明
(72)【発明者】
【氏名】田畑 宏明
(72)【発明者】
【氏名】高松 馨
(72)【発明者】
【氏名】山浦 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】山 尚史
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA03
3F205AB07
3F205BA10
(57)【要約】
【課題】施工性が良く、マストを安定して支持可能なタワークレーンのマストの支持構造を提供する。
【解決手段】タワークレーンのマストの支持構造2は、マスト21の側方から下方に向かうにしたがって次第にマスト21から離間する方向に傾斜して配置され、マスト21を支持する斜材26を備え、斜材26の上部26uは、マスト21に着脱可能に連結され、マスト21の外側面211には、マスト21の内外方向に貫通する取付孔212が形成され、斜材26の上部26uには、取付孔212に挿入される取付部262が設けられ、取付部262の端部には、上下方向に貫通するピン孔263が形成され、ピン孔263には、抜け止めピン264が係止されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マストの側方から下方に向かうにしたがって次第に前記マストから離間する方向に傾斜して配置され、前記マストを支持する斜材を備え、
該斜材の上部は、前記マストに着脱可能に連結されているタワークレーンのマストの支持構造。
【請求項2】
前記マストの外側面には、前記マストの内外方向に貫通する取付孔が形成され、
前記斜材の上部には、前記取付孔に挿入される取付部が設けられ、
前記取付部の端部には、上下方向に貫通するピン孔が形成され、
該ピン孔には、抜け止めピンが係止されている請求項1に記載のタワークレーンのマストの支持構造。
【請求項3】
前記抜け止めピンの頭部が、前記ピン孔に係止されている請求項2に記載のタワークレーンのマストの支持構造。
【請求項4】
前記抜け止めピンの長さは、前記取付孔の長さよりも長い請求項2または3に記載のタワークレーンのマストの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワークレーンのマストの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、風力発電で使用される風車等の構造物を建設する際には、オールテレーンクレーン等の移動式のクレーンが使用されている。また、多段伸縮式のタワークレーンでの建設も提案されている(下記の特許文献1参照)。また、タワークレーンのマストの両側方を斜材で支持して、マストの転倒を抑制したものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4402923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、風力発電で使用される風車は、発電効率を上げるために高層化及び大型化し、現状のオールテレーンクレーン等の移動式のクレーンでは揚重できない場合がある。このため、揚重可能な規模の高自立式のタワークレーンを使用することが考えられる。発電所には複数台の風車が設置されるため、一基の風車を建設する際にタワークレーンを組み立てて、風車の建設完了後にタワークレーンを解体して、次の風車の建設現場まで解体したタワークレーンを運搬して、タワークレーンを再度組み立てる必要が生じるが、タワークレーンの解体作業及び組み立て作業に時間がかかり、工期が長期化してしまう。また、高自立式のため、たわみ及びマスト強度に配慮が必要となるが、マスト中間部に斜材を取付けることが、有効な解決手段となる。これらの条件を満足するため、マストに対して斜材の取り付け及び取り外しを短時間で行うことが望まれている。
【0005】
従来,斜材取付け用にマストにピンブラケットを取り付けた構造が採用された実績があるが、取付け・取り外しに際して、外部からの寄り付きならびに高所での作業となるため、安全上の問題が発生する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、施工性が良く、マストを安定して支持可能なタワークレーンのマストの支持構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係るタワークレーンのマストの支持構造は、マストの側方から下方に向かうにしたがって次第に前記マストから離間する方向に傾斜して配置され、前記マストを支持する斜材を備え、該斜材の上部は、前記マストに着脱可能に連結されている。
【0008】
このように構成されたタワークレーンのマストの支持構造では、マストは側方から斜材によって支持されているため、マストは安定して支持される。また、斜材の上部はマストに着脱可能に連結されているため、斜材の取り付け及び取り外しが容易にでき、施工性が良い。
【0009】
また、本発明に係るタワークレーンのマストの支持構造は、前記マストの外側面には、前記マストの内外方向に貫通する取付孔が形成され、前記斜材の上部には、前記取付孔に挿入される取付部が設けられ、前記取付部の端部には、上下方向に貫通するピン孔が形成され、該ピン孔には、抜け止めピンが係止されていてもよい。
【0010】
このように構成されたタワークレーンのマストの支持構造では、斜材をマストに取り付ける際には、マストに設けた取付孔に、斜材の取付部を挿入させる。取付部の端部に形成されたピン孔に抜け止めピンを係止すれば、斜材の上部がマストに取り付いた状態を維持できる。また、斜材をマストから取り外す際には、抜け止めピンをピン孔から抜いて、斜材の取付部をマストに設けた取付孔から抜けばよい。よって、斜材の上部の取付及び取外しを容易に行うことができ、この作業はマスト内部での作業であり、安全上も優位である。
【0011】
また、本発明に係るタワークレーンのマストの支持構造は、前記抜け止めピンの頭部が、前記ピン孔に係止されていてもよい。
【0012】
また、本発明に係るタワークレーンのマストの支持構造は、前記抜け止めピンの長さは、前記取付孔の長さよりも長くてもよい。
【0013】
このように構成されたタワークレーンのマストの支持構造では、抜け止めピンの長さは、取付孔の長さよりも長い。よって、抜け止めピンが取付孔内に入り込むことがなく、斜材をマストに取り付けた状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るタワークレーンのマストの支持構造によれば、施工性が良く、マストを安定して支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るタワークレーンにおいて、建設作業時の状態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るタワークレーンにおいて、斜材取付け前の状態を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るタワークレーンにおいて、組立途中及び解体途中の状態を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るタワークレーンの下部の構成を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るタワークレーンの支持構造を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るタワークレーンの運搬方法を説明する図である。
図7】本発明の一実施形態に係るタワークレーンの運搬方法を説明する図であり、建設作業後の図6の後工程を示す。
図8】本発明の一実施形態に係るタワークレーンの運搬方法を説明する図であり、建設作業後の図7の後工程を示す。
図9】本発明の一実施形態に係るタワークレーンの運搬方法を説明する図であり、建設作業後の図の後工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るタワークレーンのマストの支持構造について、図面を用いて説明する。
まず、建設作業時のタワークレーンについて説明する。
【0017】
図1に示すように、タワークレーン100は、例えば風車Wを建設する際に使用される。図1では、風車Wのブレードの図示を省略している。尚、タワークレーン100を使用して建設するものは風車Wに限られず、高層の構造物等でもよい。
【0018】
タワークレーン100は、図1に示す建設作業時の形態(タワークレーン100Aとする)と、図2に示す斜材取付け前の形態(斜材取付け前のタワークレーン100Cとする)と、図3に示す組立途中及び解体途中の形態(タワークレーン100Bとする)とに、形態が変更可能である。
【0019】
建設作業時のタワークレーン100Aは、ベース1と、マスト21と、旋回体22と、斜材26と、を備えている。
【0020】
ベース1は、敷台11と、架台12と、脚13と、を有している。図6に示すように、敷台11は、各脚13の先端部13aの下方に配置されている。本実施形態では、脚13が4本あり、敷台11は4箇所に配置されている。敷台11は、地面等の作業面G上に設置されている。
【0021】
架台12は、マスト21の直下に配置されている。本実施形態では、架台12は、平面視で十文字状に形成されている。架台12は、中央部12aと、中央部12aから四方向に延びる4本の延出部12bと、を有している。直交する延出部12bの角部を、直角部12cとする。架台12の下面12dは、作業面Gから上方に離間している。
【0022】
脚13は、架台12の各延出部12bの先端部に連結されている。脚13の延在方向は、延出部12bの延在方向と略同一である。換言すると、平面視で、延出部12b及び脚13は、中央部12aから一直線上に延びている。脚13は、例えばH鋼等の鋼材で構成されている。脚13の下面13dは、作業面Gから上方に離間しているとともに、架台12の下面12dよりも高い位置に配置されている。
【0023】
架台12と脚13との連結構造、及び脚13と敷台11との連結構造について、図4を用いて説明する。なお、図4に示す連結構造は一例であり、他の構造であってもよい。
【0024】
図4に示すように、脚13の下部は、架台12側に延出する脚支持部13bを有している。架台12の上部は、脚13側に延出する架台連結部12eを有している。架台連結部12eは、脚支持部13bの上方に介装材14を介して設置されている。なお、架台連結部12eは、脚支持部13b上に直接設置されていてもよい。介装材14に替えて、脚13と架台12とを水平方向を向くピン(不図示)によって接合する構成であってもよい。
【0025】
延出部12bの先端部は、第一連結板121を有している。第一連結板121は、板状に形成されている。第一連結板121の板面は、水平方向を向いている。脚13は、第一連結板121と対向するように第二連結板131を有している。第二連結板131は、板状に形成されている。第二連結板131の板面は、第一連結板121と同じ方向を向いている。第一連結板121及び第二連結板131に形成された取付孔にボルト132が挿入され、ナット133に締結されている。これによって、架台12と脚13とは連結されている。架台12及び脚13の上面には、ボルト132及びナット133の取付作業用の開口が形成されていてもよい。
【0026】
脚13の先端部13aは、上面に位置する上面板136と、下面に位置する下面板137と、を有している。上面板136と下面板137とは、上下方向に離間して配置されている。上面板136及び下面板137は、板状に形成されている。上面板136及び下面板137の板面は、上下方向を向いている。上面板136及び下面板137に形成された取付孔にボルト138が挿入され、敷台11に締結されている。これによって、脚13は、敷台11に連結されている。
【0027】
図1に示すように、マスト21は、複数のマスト部材21aが上下方向に分離可能に連結されている。例えば、マスト部材21aは鉄骨造であり、上下に隣接するマスト部材21aはボルト及びナット等の連結手段によって連結及び分離可能な構成である。
【0028】
マスト部材21aのうち、最下部に位置するものを底部マスト部材(マストの下部)21bと称する。底部マスト部材21bの下端部は、架台12に連結されている。
【0029】
旋回体22は、旋回台23と、ジブ24と、揚重装置25と、を有している。旋回台23は、マスト部材21aのうち最上部に位置する最上部マスト部材21cに支持されている。旋回台23は、最上部マスト部材21cに上下方向を軸線方向として軸線回りに回動可能に支持されている。旋回台23に着席したオペレーターがタワークレーン100を操縦するようになっている。なお、旋回台23にオペレーターがいなくて、遠隔操作でタワークレーン100を操縦可能であってもよい。ジブ24は、旋回台23に取り付けられている。ジブ24の基端部は、旋回台23に揺動可能に軸支されている。揚重装置25は、ウインチ25aと、ワイヤー25bと、フック25cと、を有している。ウインチ25aは、旋回台23に設けられている。ワイヤー25bは、ウインチ25aによって巻上げ及び巻下げ可能とされ、ジブ24の先端部に係合されている。フック25cは、ワイヤー25bの先端部に設けられ、風車Wの構成部材を吊り下げ可能とされている。
【0030】
タワークレーンのマストの支持構造2について説明する。斜材26は、マスト21の4方向に設けられている。平面視で、斜材26は、マスト21から4方向に延びるように配置されている。斜材26は、上下方向に対して傾斜して配置されている。斜材26は、下方に向かうにしたがって次第にマスト21から離間する方向に傾斜している。斜材26は、マスト21を4方向から支持するものである。斜材26の下端部26bは、例えばボルト及びナット等の連結手段によって、脚13の先端部13aに着脱可能に連結されている。なお、斜材26は、マスト21の側方に一箇所以上に設けられていればよく、マスト21の両側方に設けられていてもよい。
【0031】
マスト部材21aのうち底部マスト部材21bの一つ上側に配置されたものを、二段目マスト部材21dと称する。斜材26の上端部26uは、二段目マスト部材21dに着脱可能に連結されている。なお、斜材26の上端部26uは、二段目マスト部材21dよりも上側のマスト部材21aに連結されていてもよい。
【0032】
図5(一部を断面図で示している)に示すように、二段目マスト部材21dの外側面を形成する外板部211には、マスト21の内外方向(平面視でマスト21の中心と外側とを結ぶ方向)に向かって貫通する貫通孔(取付孔)212が形成されている。貫通孔212の上下縁に沿って、マスト21の内側に延びるリブ213a,213bが設けられている。なお、リブ213a,213bは円筒のボスであってもよい。
【0033】
斜材26の上端部26uには、支持板261が設けられている。支持板261は、二段目マスト部材21dの外板部211の外面に沿って配置されている。
【0034】
支持板261には、挿入部(取付部)262が設けられている。挿入部262は、二段目マスト部材21dの貫通孔212に挿入されている。
【0035】
挿入部262の端部には、上下方向に貫通するピン孔263が形成されている。ピン孔263には、上下方向に延びる抜け止めピン264が挿入されている。
【0036】
抜け止めピン264の頭部265は、ピン孔263の径よりも大きい。これによって、ピン264の頭部265は、ピン孔263に係止されている。
【0037】
抜け止めピン264の上下方向の長さは、貫通孔212の上下方向の長さよりも長い。抜け止めピン264の頭部265は、貫通孔212の上側のリブ213aと干渉する位置に配置されている。抜け止めピン264の下端部266は、貫通孔212の下側のリブ213bと干渉する位置に配置されている。これによって、挿入部262は貫通孔212から外側に抜けることがない。
【0038】
斜材26の挿入部262が二段目マスト部材21dの下側のリブ213bに支持され、ピン孔263に挿入された抜け止めピン264によって斜材26の挿入部262の移動が規制されることによって、斜材26の上端部26uは二段目マスト部材21dに着脱可能に連結されている。
【0039】
上記のタワークレーン100Aは、組立途中及び解体途中においては図3に示すようにタワークレーン100Bに形態を変更する必要があり、図2に示すように斜材26を取り外す必要がある。図3に示すように、組立途中及び解体途中は、タワークレーン100Bは、運搬車3に設置される。タワークレーン100Bが運搬車3に設置されたものをタワークレーンの運搬ユニット10と称する。タワークレーンの運搬ユニット10は、運搬車3と、位置決め部(図6参照)4と、タワークレーン100Bと、を備えている。タワークレーン100Bは、架台12と、底部マスト部材21bと、旋回体22と、を備えている。
【0040】
運搬車3は、重量物を設置可能で、走行可能なものであれば適宜採用可能である。本実施形態では、運搬車3として、リフトアップが可能な多軸ドーリー車が採用されている。
【0041】
図6(旋回体22の図示を省略している)に示すように、運搬車3は、複数の走行可能な車輪30と、荷台部31と、リフト部32と、を有している。荷台部31は、平板状に形成され、上面に重量物を設置可能である。荷台部31は、リフト部32を介して車輪30と接続されている。リフト部32は、荷台部31を上下に昇降可能である。
【0042】
荷台部31には、設置板34が固定されている。設置板34は、荷台部31の上面に配置される上面板部34aと、荷台部31の側面に配置される側面板部34bと、を有している。側面板部34bは、荷台部31にボルト及びナットの連結手段34cによって連結されている。
【0043】
位置決め部4は、設置板34の上面34uに固定されている。本実施形態では、4個の位置決め部4は、運搬するタワークレーン100Bの架台12の直角部12cに対応した位置に配置されている。位置決め部4は、設置板34の上面34uに溶接やボルト及ナット等の連結手段によって固定されている。
【0044】
位置決め部4は、平面視L字状に形成されている。位置決め部4は、第一直線部41と、第二直線部42と、を有している。第一直線部41及び第二直線部42は、平面視で直線状をなすように形成されている。第一直線部41と第二直線部42とは、平面視で直交配置されている。図9に示すように、第一直線部41と第二直線部42との交差部43は、架台12の直角部12cに配置されている。タワークレーン100自体は自重で自立可能であり、位置決め部4によって架台12が設置板34の上に位置決めされている。
【0045】
図3に示すように、タワークレーンの運搬ユニット10では、ベース1のうち敷台11及び脚13は撤去され架台12のみが設置されている。複数のマスト部材21aのうち底部マスト部材21b以外のマスト部材21aは撤去されている。旋回体22は、底部マスト部材21bに支持されている。
【0046】
次に、タワークレーンの運搬方法について説明する。
一の風車Wの建設完了後に、次の風車Wの建設現場に、タワークレーン100を移動させるに際し、まず、マスト解体工程を行う。
建設作業完了時の形態のタワークレーン100Aにおいて、マスト21のうち底部マスト部材21bを残して他のマスト部材21aを解体する。旋回体22を下方のマスト部材21aに下降させて、上側のマスト部材21aを撤去する作業を順次行い、旋回体22を底部マスト部材21bまで下降させる。
【0047】
その際、斜材26は旋回体22の下降の支障になる前に撤去する。抜け止めピン264を上方に移動させて、斜材26の挿入部262のピン孔263から抜け止めピン264を抜く。マスト21の貫通孔212から、斜材26の挿入部262を抜く。これによって、斜材26をマスト21から取り外すことができる。
【0048】
次に、運搬車挿入工程を行う。
図6に示すように、運搬車3に設置板34を固定した状態で、ベース1の下方に運搬車3を挿入する。この状態では、設置板34の上面34uと架台12の下面12dとの間には隙間が生じている。
【0049】
次に、位置決め工程を行う。
脚13と敷台11とを連結しているボルト138(図4参照。)を取り外す。図7に示すように、運搬車3のリフト部32を駆動して、荷台部31を上昇させる。荷台部31に固定された設置板34の上面34uが架台12の下面12dに当接するとともに、脚13が敷台11から浮く高さまで荷台部31を上昇させる。
【0050】
脚13と敷台11との間には、フィラー15bを配置する。脚13の下面13dは架台12の下面12dよりも高い位置に配置されているため、脚13の下面13dと荷台部31に固定された設置板34の上面34uとの間にもフィラー15aを配置して、高さを調整する。このようにして、荷台部31でベース1を支持する。
【0051】
このとき、設置板34に設けられた位置決め部4の交差部43を架台12の直角部12cに配置して、架台12を設置板34の上に位置決めする。
【0052】
次に、脚取り外し工程を行う。
架台12と脚13とを連結しているボルト132及びナット133を取り外す。図8に示すように、脚13を他のクレーン等の揚重機械で吊り上げて撤去する。4本全ての脚13を撤去する。その後、敷台11も必要に応じて撤去する。
【0053】
次に、移動工程を行う。
図9に示すように、運搬車3のリフト部32を駆動して、荷台部31を下降させる。タワークレーンの運搬ユニット10を次の建設現場に移動させる。
【0054】
次の建設現場では、タワークレーンの運搬ユニット10を建設時のタワークレーン100Aに組み立て直す。
脚取り付け工程を行う。
運搬車3のリフト部32を駆動して、荷台部31を所定の高さまで上昇させる。図8に示すように、設置される脚13の先端部13aの下方に敷台11及びフィラー15bを配置するととともに、設置板34上にもフィラー15aを配置しておく。架台12と脚13とをボルト132及びナット133で締結して、4本の脚13を架台12に取り付ける。
【0055】
次に、運搬車移動工程を行う。
運搬車3のリフト部32を駆動して、荷台部31を下降させる。脚13と敷台11とをボルト138で締結する。運搬車3を架台12の下方から移動させる。その後、底部マスト部材21bの上側に他のマスト部材21aを順次連結して、旋回体22を所定の位置まで上昇させ、斜材26を取り付ければ、建設作業時のタワークレーン100Aが完成する。
【0056】
斜材26をマスト21に取り付ける際には、マスト21の貫通孔212に、斜材26の挿入部262を挿入する。挿入部262のピン孔263に抜け止めピン264挿入して、抜け止めピン264の頭部265をピン孔263に係止される。これによって、斜材26をマスト21に取り付けることができる。
【0057】
本実施形態によれば、マスト21は両側方から斜材26によって支持されているため、マスト21は安定して支持される。また、斜材26の上端部26uはマスト21に着脱可能に連結されているため、斜材26の取り付け及び取り外しが容易にでき、施工性が良い。
【0058】
また、斜材26をマスト21に取り付ける際には、マスト21の貫通孔212に、斜材26の挿入部262を挿入させる。挿入部262の端部に形成されたピン孔263に抜け止めピン264を係止すれば、斜材26の上部がマスト21に取り付いた状態を維持できる。また、斜材26をマスト21から取り外す際には、抜け止めピン264をピン孔263から抜いて、斜材26の挿入部262をマスト21の貫通孔212から抜けばよい。よって、斜材26の上端部26uの取付及び取外しを容易に行うことができる。
【0059】
また、抜け止めピン264の頭部265をピン孔263に係止させれば、斜材26の上端部26uがマスト21に取り付いた状態を維持できるため、斜材26をマスト21に容易に取り付けることができる。
【0060】
また、抜け止めピン264の長さは、貫通孔212の長さよりも長い。よって、抜け止めピン264が貫通孔212内に入り込むことがなく、斜材26をマスト21に取り付けた状態を維持することができる。
【0061】
また、建設作業時のタワークレーン100Aからマスト21における底部マスト部材21b以外のマスト部材21aを解体(撤去)して、旋回体22を底部マスト部材21bまで下降させる。架台12を運搬車3の荷台部31に固定された設置板34に設置して、設置板34に設けられた位置決め部4で架台12を設置板34に位置決めする。これによって、移動時の形態のタワークレーン100Bを有するタワークレーンの運搬ユニット10となる。タワークレーンの運搬ユニット10を次の建設現場まで移動させて、運搬車3から架台12を降ろして、底部マスト部材21bに解体したマスト部材21aを連結して、旋回体22を上昇させれば、建設作業時のタワークレーン100Aが完成する。よって、タワークレーン100の解体はマスト21における底部マスト部材21b以外のマスト部材21aのみであるため、タワークレーン100の解体及び組み立てに要する時間が短縮され、工期の短縮を図ることができる。
【0062】
また、位置決め部4は平面視十字状をなす架台12の直角部12cに配置され、架台12の直角部12cを形成する二面が位置決め部4と当接して、架台12の二方向の移動が規制される。
【0063】
また、平面視で直線状をなす第一直線部41及び第二直線部42が架台12の直角部12cを形成する二面に当接するため、位置決め部4と架台12との当接面積が大きくなり、架台12の位置ずれがより一層抑制される。
【0064】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0065】
例えば、斜材26の上部をマスト21に着脱可能に連結する構成として、上記に示す実施形態の他に、斜材26をマスト21にボルト及びナット等の連結手段であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 ベース
2 タワークレーンのマストの支持構造
3 運搬車
4 位置決め部
10 タワークレーンの運搬ユニット
12 架台
12c 直角部
13 脚
21 マスト
21b 底部マスト部材(マストの下部)
22 旋回体
25 揚重装置
26 斜材
31 荷台部
41 第一直線部
42 第二直線部
100 タワークレーン
100A 建設作業時のタワークレーン
100B 移動時のタワークレーン
100C 斜材取付け前のタワークレーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9