(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187790
(43)【公開日】2022-12-20
(54)【発明の名称】運行管理補助システムおよび運行管理補助方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20221213BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221213BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20221213BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20221213BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20221213BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/16 F
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095970
(22)【出願日】2021-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000153546
【氏名又は名称】株式会社日立物流
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 奈桜
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅
(72)【発明者】
【氏名】三幣 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】栗山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公則
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB12
5H181BB13
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF27
5H181MB02
5H181MB08
(57)【要約】
【課題】複数の異なる場面に対応した事故リスク推定を実現すること。
【解決手段】運行管理補助システムは、運転者の生体に関する生体計測データと前記運転者の業務状態に関する業務状態データとを関連付けた関連付けデータの第1集合と、前記運転者の運転の危険性を示す危険判定結果の第2集合と、にアクセス可能であり、前記第1集合から前記運転者の特定の業務状態に関する関連付けデータ群を業務状態別に取得し、前記第2集合から前記運転者の前記特定の業務状態における特定の危険判定結果群を取得する第1取得処理と、前記第1取得処理によって取得された、前記特定の業務状態に関する関連付けデータ群と、前記特定の業務状態における特定の危険判定結果群と、を用いて、前記特定の業務状態における前記運転者の事故リスクを推定する推定モデルを前記特定の業務状態別に生成して、第3集合に保存する生成処理と、を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する運行管理補助システムであって、
前記プロセッサは、運転者の生体に関する生体計測データと前記運転者の業務状態に関する業務状態データとを関連付けた関連付けデータの第1集合と、前記運転者の運転の危険性を示す危険判定結果の第2集合と、にアクセス可能であり、
前記プロセッサは、
前記第1集合から前記運転者の特定の業務状態に関する関連付けデータ群を業務状態別に取得し、前記第2集合から前記運転者の前記特定の業務状態における特定の危険判定結果群を取得する第1取得処理と、
前記第1取得処理によって取得された、前記特定の業務状態に関する関連付けデータ群と、前記特定の業務状態における特定の危険判定結果群と、を用いて、前記特定の業務状態における前記運転者の事故リスクを推定する推定モデルを前記特定の業務状態別に生成して、第3集合に保存する生成処理と、
を実行することを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項2】
請求項1に記載の運行管理補助システムであって、
前記生体計測データは、前記運転者の心拍に基づくデータである、
ことを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項3】
請求項2に記載の運行管理補助システムであって、
前記運転者の心拍に基づくデータは、前記運転者の自律神経機能に関するデータである、
ことを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項4】
請求項1に記載の運行管理補助システムであって、
前記関連付けデータは、同一運転者の同一時間帯における前記生体計測データおよび前記業務状態データを関連付けたデータである、
ことを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項5】
請求項1に記載の運行管理補助システムであって、
前記プロセッサは、
前記生体計測データと、同一運転者の同一時間帯における前記業務状態データの前記業務状態と、を関連付けて、前記第1集合に保存する関連付け処理を実行し、
前記第1取得処理では、前記プロセッサは、前記関連付け処理によって関連付けされた関連付けデータが保存されている前記第1集合から、前記運転者の特定の業務状態に関する関連付けデータ群を取得する、
ことを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項6】
請求項5に記載の運行管理補助システムであって、
前記関連付け処理では、前記プロセッサは、前記生体計測データを時分割し、時分割された生体計測データ群の各々について、同一運転者の同一時間帯における前記業務状態データの前記業務状態を関連付けて、前記第1集合に保存する、
ことを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項7】
請求項6に記載の運行管理補助システムであって、
前記プロセッサは、
時分割された生体計測データ群の中から、前記関連付け処理の対象外となる挙動を示す不正データを検出する検出処理を実行し、
前記関連付け処理では、前記プロセッサは、前記検出処理によって検出された不正データについては関連付けしない、
ことを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項8】
請求項7に記載の運行管理補助システムであって、
前記検出処理では、前記プロセッサは、前記生体計測データが心拍に基づくデータである場合、心拍間隔で時分割された生体計測データ群の中から、前記不正データを検出する、
ことを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項9】
請求項7に記載の運行管理補助システムであって、
前記検出処理では、前記プロセッサは、前記時分割された生体計測データ群の中から、体動ノイズに基づく挙動を示す不正データを検出する、
ことを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項10】
請求項5に記載の運行管理補助システムであって、
前記プロセッサは、
前記運転者の行動、前記運転者の行動を記録した記録データ、および、前記運転者が運転した車両の挙動のうち少なくとも1つに基づいて、前記業務状態データを設定する設定処理を実行し、
前記関連付け処理では、前記プロセッサは、前記生体計測データと、前記設定処理によって設定された同一運転者の同一時間帯における前記業務状態データの前記業務状態と、を関連付けて、前記第1集合に保存する、
ことを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項11】
請求項1に記載の運行管理補助システムであって、
前記プロセッサは、
予測対象の関連付けデータを取得する第2取得処理と、
前記第2取得処理によって取得された前記予測対象の関連付けデータに含まれる業務状態と同一業務状態についての推定モデルを、前記第3集合から選択する選択処理と、
前記選択処理によって選択された推定モデルに、前記予測対象の関連付けデータを入力することにより、前記予測対象についての事故リスクを推定する推定処理と、
前記推定処理による推定結果を出力する出力処理と、
を実行することを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項12】
請求項11に記載の運行管理補助システムであって、
前記出力処理では、前記プロセッサは、前記推定結果を前記運転者に注意喚起する情報を出力する、
ことを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項13】
請求項11に記載の運行管理補助システムであって、
前記出力処理では、前記プロセッサは、前記推定結果として、前記予測対象についての事故リスクと、前記予測対象の関連付けデータに含まれている前記業務状態と、の推移を表示可能に出力する、
ことを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項14】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する運行管理補助システムであって、
前記プロセッサは、運転者の生体に関する生体計測データと前記運転者の業務状態に関する業務状態データとを関連付けた関連付けデータと、前記運転者の運転の危険性を示す危険判定結果と、によって業務状態別に学習された、前記運転者の事故リスクを推定する業務状態別の推定モデル群にアクセス可能であり、
前記プロセッサは、
予測対象についての関連付けデータを取得する取得処理と、
前記取得処理によって取得された前記予測対象についての関連付けデータに含まれる業務状態と同一業務状態についての推定モデルを、前記推定モデル群から選択する選択処理と、
前記選択処理によって選択された推定モデルに、前記予測対象についての関連付けデータを入力することにより、前記予測対象についての事故リスクを推定する推定処理と、
前記推定処理による推定結果を出力する出力処理と、
を実行することを特徴とする運行管理補助システム。
【請求項15】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する運行管理補助システムによる運行管理補助方法であって、
前記プロセッサは、運転者の生体に関する生体計測データと前記運転者の業務状態に関する業務状態データとを関連付けた関連付けデータの第1集合と、前記運転者の運転の危険性を示す危険判定結果の第2集合と、にアクセス可能であり、
前記プロセッサは、
前記第1集合から前記運転者の特定の業務状態に関する関連付けデータ群を業務状態別に取得し、前記第2集合から前記運転者の前記特定の業務状態における特定の危険判定結果群を取得する取得処理と、
前記取得処理によって取得された、前記特定の業務状態に関する関連付けデータ群と、前記特定の業務状態における特定の危険判定結果群と、を用いて、前記特定の業務状態における前記運転者の事故リスクを推定する推定モデルを生成して、第3集合に保存する生成処理と、
を実行することを特徴とする運行管理補助方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行管理を補助する運行管理補助システムおよび運行管理補助方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流トラックや夜行バス等の長距離を走行する業務用車両において運転士の疲労が引き起こす交通事故が社会的に問題視されている。このような交通事故を未然に防ぐため、生体センサから得られる生体データを用いて運転中の運転士の健康状態をモニタリングする技術の適用が進んでいる。
【0003】
特に、心拍間隔から一定の短い時間幅で時間周波数領域解析を適用して自律神経機能(Autonomic neural function:ANF)を推定し、推定されたANFを解析して運転士の健康状態や疲労度、さらに、それらが要因となって生じる事故のリスクを推定し、運転者またはその管理者に推定結果をフィードバックする技術開発が進んでいる。現在は、安静時や運転時のように、ある一定の条件が持続している場面を前提として生体データを計測したり解析したりする技術が多く開発されている。
【0004】
たとえば、下記特許文献1は、ユーザの状態を検出し、その検出結果から、ユーザが最も望む形態で車載装置の動作を自律的に制御する自動車用ユーザもてなしシステムを開示する。この自動車用ユーザもてなしシステムは、もてなし動作部の動作内容がユーザ生体特性情報の内容に応じて変化し、ひいては、自動車利用に際してのユーザへサービス(もてなし)効果を、ユーザの精神状態あるいは体調に応じさらなる適正化を図ることができる。具体的には、機能抽出マトリックスから特定される機能に対する動作制御時の基準参照情報が抽出され、この基準参照情報に別途取得されたユーザ生体特性情報に反映される体調ないし精神状態を加味して、選択された機能の動作内容の適正化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術を、事故リスクを推定しフィードバックする場面に適用したとする。たとえば、シーンが「運転中」、ユーザの体調・精神状態が「眠気」と推定され、かつ運転中におけるもてなし目的に「居眠り防止(安全性向上)」が含まれているような状況を想定する。この場合、考えられる事故のうち「居眠り運転」の発生リスクについては低減可能である。
【0007】
しかし、業務用車両の運転者が遭遇する事故の要因は、運転者の生体状態に限っても「眠気」の他に「集中力の低下」や「興奮」、「過緊張」など様々な生体状態が存在する。また、事故の種類も「わき見運転」「急ぎ運転」など多岐にわたる。さらに、複数の生体要因が影響して事故や危険な場面を引き起すことも多い。したがって、各生体要因と事故の因果関係を明確化することは困難である。そのため、特許文献1の技術において、ただ目的や推定する体調・精神状態の項目を詳細に設定しても、事故リスクの推定とフィードバックを実現することは困難である。
【0008】
本発明は、複数の異なる場面に対応した事故リスク推定を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明の一側面となる運行管理補助システムは、プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する運行管理補助システムであって、前記プロセッサは、運転者の生体に関する生体計測データと前記運転者の業務状態に関する業務状態データとを関連付けた関連付けデータの第1集合と、前記運転者の運転の危険性を示す危険判定結果の第2集合と、にアクセス可能であり、前記プロセッサは、前記第1集合から前記運転者の特定の業務状態に関する関連付けデータ群を業務状態別に取得し、前記第2集合から前記運転者の前記特定の業務状態における特定の危険判定結果群を取得する第1取得処理と、前記第1取得処理によって取得された、前記特定の業務状態に関する関連付けデータ群と、前記特定の業務状態における特定の危険判定結果群と、を用いて、前記特定の業務状態における前記運転者の事故リスクを推定する推定モデルを前記特定の業務状態別に生成して、第3集合に保存する生成処理と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の代表的な実施の形態によれば、複数の異なる場面に対応した事故リスク推定を実現することができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、運行管理補助システムのシステム構成例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、運行管理補助システムのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、運行管理補助システムにおける生体計測データの取得から事故リスクを推定し結果を提示するまでの一連の処理のフローチャートである。
【
図4】
図4は、生体計測データの構成例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、業務状態データの構成例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、危険判定DBの構成例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、生体計測-業務状態DBまたは生体計測-業務状態データの取得処理手順例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、RRの時間変化を示すグラフである。
【
図10】
図10は、RRの時間変化の周波数スペクトル例を示すグラフである。
【
図11】
図11は、生体計測データと業務状態データから生体計測―業務状態データを取得する処理例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、取得された生体計測-業務状態データの構成例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、
図3に示した事故リスクを推定するモデルを生成または更新する処理(ステップS103)の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、業務状態ラベルごとに区分されたデータを用いた推定モデルの訓練例を示す説明図である。
【
図15】
図15は、
図3に示した事故リスク推定プログラムによる事故リスク推定処理(ステップS104)の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、
図3に示した推定結果表示処理(ステップS105)の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、事故リスク推定処理(ステップS104)の一例を示す説明図である。
【
図18】
図18は、推定結果が「危険である」またはそれに準ずる状況であった場合に、推定結果を提示する処理(ステップS105)により提示されるフィードバックの例を示す説明図である。
【
図19】
図19は、生体計測データを取得した日の業務終了後、またはその翌日以降に、運転者や管理者が過去の事故リスクの推移を参照できるようなフィードバックの例を示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【実施例0013】
<システム構成例>
図1は、運行管理補助システムのシステム構成例を示す説明図である。運行管理補助システム1は、車両V、運行管理補助装置2、運転データ収集装置15、予測結果表示端末31、生体計測データ収集装置32、および業務状態データ収集装置33のうち、少なくとも運行管理補助装置2を含む。車両V、運行管理補助装置2、運転データ収集装置15、予測結果表示端末31、生体計測データ収集装置32、および業務状態データ収集装置33は、それぞれネットワーク100を介して通信可能である。
【0014】
車両Vは、位置センサ11、車間距離センサ12、速度計13、加速度センサ14、および運転データ収集装置15を含む。位置センサ11、車間距離センサ12、速度計13、および加速度センサ14は、車両Vに搭載されたセンサデバイス(車載センサ)の一例である。位置センサ11は、全球測位衛星システム(GNSS:(Global Navigation Satellite System))により車両の現在位置を測位する。車間距離センサ12は、前を走行する車両との車間距離を検出する。速度計13は、車両Vの走行速度を検出する。加速度センサ14は、車両Vの加速度を検出する。
【0015】
運転データ収集装置15は、車両Vに搭載されており、車両Vの車載センサの計測データを取得し、運行管理補助装置2に送信する。なお、運転データ収集装置15は、車両V外に設置され、ネットワーク100を介して、上述した車載センサからのデータを受信してもよい。
【0016】
予測結果表示端末31は、運行管理補助装置2による、運転中に事故に遭遇するリスク(以下、事故リスク)の推定結果を表示する。事故リスクの推定方法および予測結果の表示画像等についての詳細は後述する。
【0017】
生体計測データ収集装置32は、生体計測器から運転者の計測データを取得し、運行管理補助装置2に送信する。
図1の例において使用される生体計測器は、たとえば、心拍計34、体温計35および血圧計36を含む。運転者または管理者は、たとえば、1日の業務開始前、運転業務中、運転以外の業務中、業務終了後に、生体計測器を使用して当該運転者の生体データを計測する。
【0018】
業務状態データ収集装置33は、業務状態データとして、運転者が実際に行った業務内容を、日付時刻と対応づけて取得し運行管理補助装置2に送信する。運転者は、たとえば、1日の業務が終了した後で、その日の業務内容を業務状態データ収集装置33に入力してもよい。
【0019】
または、業務状態データ収集装置33が、運転データ収集装置15が取得した運転データから運転者の業務状態の流れを推定して業務状態データとしてもよい。または、業務状態データ収集装置33が、生体計測データ収集装置32から、運転者の加速度や位置情報、業務中の様子を捉えた映像などの運転者の行動データを収集して、収集した行動データから各業務状態とその流れを推定して業務状態データとしてもよい。
【0020】
荷積み331、荷卸し332、および休憩333は、たとえば、車両Vの運転席に設置された入力手段であり、運転者が操作するボタンである。車両Vの停止中に荷積み331、荷卸し332、および休憩333のいずれかが押下されると、業務状態データ収集装置33は、押下した状態を示すデータを収集する。なお、ここでボタン押下時刻を含む時間情報を取得しても良い。また、車両Vの走行中では、業務状態データ収集装置33は、車両Vが走行中であることを示すデータを収集する。
【0021】
運行管理補助装置2は、処理を行う複数のプログラムおよび複数のプログラムが処理するデータを保持する。運行管理補助装置2が実行するプログラムは、危険判定プログラム211、推定モデル訓練プログラム212、生体計測-業務状態ラベル関連付けプログラム213、事故リスク推定プログラム214、推定結果提示プログラム215を含む。
【0022】
運行管理補助装置2が保持するデータは、生体計測データ221、業務状態データ222、車載センサデータ223、生体計測-業務状態データ224、事故リスク推定モデル225、および訓練データ23を含む。訓練データ23は、具体的には、たとえば、生体計測-業務状態DB231、危険判定DB232を含む。
【0023】
生体計測データ221は、運転者の計測された生体データである。生体計測データ221は、たとえば、運転業務を含む作業中に計測された生体データ、待機や休憩など作業を行わない状況で計測された生体データ、または、これらの一部または全部の組合せを含む。
【0024】
業務状態データ222は、運転者が労働中に経験した具体的な業務の状態を示すデータである。業務には、具体的には、たとえば、運転、荷積、荷卸、待機、休憩などが挙げられる。また、業務は、運転、荷積、荷卸などの業務は、走行した道路の種類、走行した地域、または運搬した物品の種類などによってさらに細かく区別されてもよい。
【0025】
生体計測-業務状態データ224は、生体計測-業務状態ラベル関連付けプログラム213によって、生体計測データ221と業務状態データ222とから生成されるデータである。生体計測-業務状態データ224は、同一運転者の同一日において、生体データの各値が計測された時刻に運転者が何の業務を行っていたかが把握可能なデータである。具体的には、たとえば、生体計測-業務状態データ224は、各時点における生体計測データ221と業務状態データ222とが関連付けられたデータである。
【0026】
車載センサデータ223は、危険判定プログラム211に用いられるデータである。車載センサデータ223は、運転データ収集装置15から受信した運転操作や車両挙動、または位置情報などに関するデータである。
【0027】
事故リスク推定モデル225は、事故リスク推定プログラム214によって、生体計測-業務状態データ224を用いて、運転者が事故に遭遇する事故リスクを推定するためのモデルである。事故リスク推定モデル225は、生体計測-業務状態データ224内の業務状態ラベル502の種類別に存在する。さらに、事故リスク推定モデル225は、業務状態ラベル502の種類別に時間帯ごとに存在してもよい。
【0028】
訓練データ23は、推定モデル訓練プログラム212に用いられるデータである。訓練データ23内の生体計測-業務状態DB231は、過去に取得された生体計測-業務状態データ224を含む。危険判定DB232は、危険判定プログラム211と車載センサデータ223とにより取得されるデータを含む。このデータは、過去の生体計測-業務状態データ224が計測された場面の運転が危険と判定されたか否かを示す。
【0029】
危険判定プログラム211は、運転者の運転が危険であるか否かを判定するためのプログラムである。危険判定プログラム211による危険か否かの判定は、任意の技術を利用でき、その基準は設計に依存する。危険と判定される運転の例は、急ブレーキ、急発進、法定速度に対して速すぎる車速、狭すぎる車間距離等を含む。
【0030】
危険判定プログラム211は、車載センサデータ223(車載センサの計測データ)から、様々な危険運転操作を判定する。たとえば、急ブレーキや急発進であるか否かは、加速度センサ14の検出データから判定され、狭すぎる車間距離であるか否かは、車間距離センサ12の検出データから判定される。車両Vが法定速度を遵守したか否かは、位置センサ11の検出データ、地図情報(不図示)および速度計13の検出データから判定される。
【0031】
危険判定DB232内の危険判定データは、生体計測-業務状態データ224の各計測時点と同一時点における危険度を示したデータでもよいし、生体計測-業務状態データ224の計測時点から数分~数十分後の一時点または複数時点における危険度を示したデータでもよい。
【0032】
危険判定プログラム211は、運転データ収集装置15から送信された車載センサデータ223を分析して、各場面が危険か否かを判定する。生体計測-業務状態ラベル関連付けプログラム213は、生体計測データ収集装置32から送信された生体計測データ221と業務状態データ収集装置33から送信された業務状態データ222とを対応付けて、生体計測-業務状態データ224を生成する。生体計測-業務状態データ224の詳細は後述する。
【0033】
事故リスク推定プログラム214は、生体計測-業務状態データ224から、その場面の事故リスクを推定する。推定結果提示プログラム215は、予測された運転者の事故リスクとそれに付随する情報を提示する。推定モデル訓練プログラム212は、生体計測-業務状態データ224と危険判定プログラム211による危険判定データとを用いて、生体計測-業務状態データ224の業務状態ごとに推定モデルを訓練する。
【0034】
<運行管理補助装置2のハードウェア構成例>
図2は、運行管理補助装置2のハードウェア構成例を示すブロック図である。運行管理補助装置2は、プロセッサ41、メモリ42、補助記憶装置43、出力装置44、入力装置45、および通信インタフェース(I/F)46を含む。上記構成要素は、バス47によって互いに接続されている。メモリ42、補助記憶装置43またはこれらの組合せは記憶デバイスであり、
図1に示すプログラムおよびデータを格納する。
【0035】
メモリ42は、たとえば、半導体メモリから構成され、主に実行中のプログラムやデータを保持するために利用される。プロセッサ41は、メモリ42に格納されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。プロセッサ41がプログラムに従って動作することで、様々な機能部が実現される。補助記憶装置43は、たとえば、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどの大容量の記憶装置から構成され、プログラムやデータを長期間保持するために利用される。
【0036】
プロセッサ41は、単一の処理ユニットまたは複数の処理ユニットで構成することができ、単一または複数の演算ユニット、または複数の処理コアを含むことができる。プロセッサ41は、1または複数の中央処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロ計算機、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、ステートマシン、ロジック回路、グラフィック処理装置、チップオンシステム、および/または制御指示に基づき信号を操作する任意の装置として実装可能である。
【0037】
補助記憶装置43に格納されたプログラムおよびデータが、起動時または必要時にメモリ42にロードされ、プログラムをプロセッサ41が実行することにより、運行管理補助装置2の各種処理が実行される。したがって、以下において運行管理補助装置2により実行される処理は、プロセッサ41またはプログラムによる処理である。
【0038】
入力装置45は、ユーザが運行管理補助装置2に指示や情報などを入力するためのハードウェアデバイスである。出力装置44は、入出力用の各種画像を提示するハードウェアデバイスであり、たとえば、表示デバイスまたは印刷デバイスである。通信I/F46は、ネットワーク100との接続のためのインタフェースである。入力装置45および出力装置44は省略されてもよく、運行管理補助装置2は、ネットワーク100を介して、端末からアクセスされてもよい。
【0039】
運行管理補助装置2の機能は、1以上のプロセッサと、非一時的な記憶媒体を含む1以上の記憶装置と、を有する1以上の計算機からなる計算機システムで実装可能である。複数の計算機は、ネットワーク100を介して通信可能である。たとえば、運行管理補助装置2の複数の機能の一部が一つの計算機に実装され、他の一部が他の計算機に実装されてもよい。
【0040】
運転データ収集装置15、予測結果表示端末31、生体計測データ収集装置32および業務状態データ収集装置33は、それぞれ、運行管理補助装置2と同様の計算機構成を有することができる。上記装置における複数の装置の機能が一つの装置に実装されていてもよく、たとえば、運行管理補助装置2、予測結果表示端末31、生体計測データ収集装置32は、一つの装置に統合されていてもよい。
【0041】
<運行管理補助装置2が実行する処理例>
図3は、運行管理補助装置2における生体計測データ221の取得から事故リスクを推定し結果を提示するまでの一連の処理のフローチャートである。はじめに、運行管理補助装置2は、生体計測-業務状態ラベル関連付けプログラム213により、各種生体データを取得して、生体計測データ221を生成する(ステップS101)。
【0042】
つぎに、運行管理補助装置2は、生体計測-業務状態ラベル関連付けプログラム213により、生体計測データ221について、推定モデルに入力するためのデータ変換、抽出、および整形を行い、業務状態データ222と関連付けて、生体計測-業務状態DB231を生成または更新する(ステップS102)。
【0043】
つぎに、運行管理補助装置2は、推定精度向上のため、推定モデル訓練プログラム212により、生体計測データ221に関連付けられた業務状態データ222ごとに推定モデルを生成する(ステップS103)。
【0044】
その後、運行管理補助装置2は、事故リスク推定プログラム214により、生体計測データ221に関連付けられた業務状態データ222ごとの推定モデル群から、運転者の状態を示す生体計測-業務状態データ224に対応する推定モデルを選択し、選択した推定モデルで事故リスク241を推定する(ステップS104)。
【0045】
最後に、運行管理補助装置2は、推定結果提示プログラム215により、推定結果(事故リスク241)と業務状態の推移を運転者またはその管理者に向けて表示したり発報したりする(ステップS105)。以下、これらの処理の詳細と、処理に用いられるデータについて詳細に説明する。
【0046】
<データ構成例>
図4は、生体計測データ221の構成例を示す説明図である。本実施例では、生体データとして心拍間隔(RR)、生体計測データ221の指標として自律神経機能(ANF)指標を用いることとする。生体計測データ221は、フィールドとして、ユーザID401、日時402、ANF指標403、および体温404を含む。ANF指標403は、たとえば、自律神経Total Power431と自律神経LF/HF432とを含む。
【0047】
ユーザID401は、ユーザである運転者それぞれを一意に特定する識別情報である。 日時402は、一定の時間幅で取得された生体計測データ221の計測開始時点である。ここで、日時402は計測終了時点、または複数の計測時点の中央値といった、計測開始時点以外に計測時間帯を表す基準となる他の1時点、または複数時点の組合せで表現されてもよい。
【0048】
自律神経Total Power431は、心電変動パラメータの一つであるTotal Power(TP)を示す。Total Powerは、心電変動の特定周波数帯のパワースペクトルのトータルパワーであり、疲労に関係する。自律神経LF/HF432は、心電変動パラメータの一つである特定周波数帯における低周波数帯(LF)と高周波数帯(HF)のパワーの比率である。LF/HFは、交感神経と副交感神経の全体のバランスを示す値である。
【0049】
この他のANF指標403として、心拍数または心拍のRR間隔を用いた時間領域パラメータ、周波数領域パラメータ、非線形パラメータが考えられる。心拍数またはRRを用いた時間領域パラメータには、たとえば、2分などの一定時間に計測されたRR間隔の平均(Mean)と標準偏差(SDNN)、変動係数(CVRR)、連続して隣接するRR間隔の差の2乗の平均値の平方根(RMSSD)、連続して隣接するRR間隔の差が50msを超える総数(NN50)などが考えられる。
【0050】
心拍数またはRRを用いた周波数領域パラメータには、Total PowerとLF/HFのほかに、超低周波数帯のパワースペクトルであるVLF、LF、HF、またはそれぞれの偏差値、または各変動成分のCVRR値であるCCVVLF、CCVLF、CCVHF等が考えられる。心拍数またはRRを用いた非線形パラメータには、たとえば、ある時点のRRを横軸、次時点のRRを縦軸にとるポアンカレプロットにおける縦軸の標準偏差SD1、横軸の標準偏差SD2、仮想楕円の面積などが考えられる。体温404は、運転者の体温の測定値である。
【0051】
図5は、業務状態データ222の構成例を示す説明図である。業務状態データ222は、フィールドとして、ユーザID401、業務状態ラベル502、開始日時503、終了日時504を含む。業務状態ラベル502は、運転者が労働中に何の業務に従事していたかを示す業務状態を特定するラベルである。業務状態ラベル502で特定される業務状態の具体的な例として、「運転」、「荷積」、「荷卸」、「待機」、「休憩」等が挙げられる。また、「運転(一般道)」、「運転(高速道路)」、「運転(関東)」のように、走行した道路の種類や走行した地域の地名などを付随してより細かい内容を格納してもよい。また、「道路混雑情報」、「天候情報」、「日照情報」などのように、走行した状況を付随してより細かい内容を格納してもよい。開始日時503、終了日時504は、それぞれ同一行の業務状態ラベル502を開始した日付時刻、終了した日付時刻を示す。
【0052】
図6は、危険判定DB232の構成例を示す説明図である。危険判定DB232は、フィールドとして、ユーザID401、開始日時602、終了日時603、危険判定結果604を含む。開始日時602および終了日時603は、それぞれ対象データについて危険判定を開始する日付時刻と終了する日付時刻を示す。危険判定結果604は、危険判定プログラム211により開始日時602と終了日時603との間の期間が危険な場面であったかを推定した結果を示す。具体的には、たとえば、危険な度合いを表現した数値、または「危険」「危険でない」等の文字列が格納される。危険判定結果604の形式については、危険判定プログラム211の出力結果の形式に対応して決定される。
【0053】
<生体計測-業務状態DB231または生体計測-業務状態データ224の取得処理>
図7は、生体計測-業務状態ラベル関連付けプログラム213による生体計測-業務状態DB231または生体計測-業務状態データ224の取得処理手順例を示すフローチャートである。
図7は、
図3に示したステップS102の詳細な処理手順例を示す。生体計測-業務状態ラベル関連付けプログラム213は、推定モデルを生成したり更新したりするための訓練に用いられる生体計測-業務状態DB231を生成する場合と、推定モデルを適用して事故リスクを推定する際に用いられる生体計測-業務状態データ224を生成する場合の両方で実行される。
【0054】
訓練に用いられる訓練データ23は、過去の運転者から取得したデータであり、生体計測-業務状態DB231は、運行管理補助装置2の運用開始前に得られた生体計測データ221、業務状態データ222から生成される。また、訓練データ23は、安全運行システムの運用開始後に得られる生体計測データ221、業務状態データ222から、数か月~数年単位で定期的に抽出されたデータを追加するなどの更新がなされてもよい。その場合、追加分の生体計測データ221、業務状態データ222に対応した危険判定DB232も併せて格納されることが必要である。
【0055】
さらに、追加分の生体計測データ221、業務状態データ222、および危険判定DB232(以下、追加データ)は、ネットワーク100を通じて運行管理補助装置2の外部で利用されてもよい。この場合、システム開発者により訓練データ23に追加データを追加してよいか否か、または追加データから除外する条件の検討が行われ、検討結果にしたがって、追加データが訓練データ23に追加される。
【0056】
本実施例では、生体データをRRとする。まず、生体データ取得処理(ステップS171)では、生体計測データ収集装置32が、運転者のRRを測定し、運行管理補助装置2に送信する。具体的には、たとえば、生体計測データ収集装置32は、心拍計34により運転者の心電(心拍)を測定する。生体計測データ収集装置32は、心拍計34の測定結果において、RRを検出する。RRは、特定種類のピークの間の間隔を示す。
【0057】
図8は、心拍変動の例を示すグラフである。
図8のグラフの横軸は時間、縦軸は電位を示す。
【0058】
図9は、RRの時間変化を示すグラフである。
図7に戻って、つぎに、生体計測データ取得処理(ステップS172)では、生体計測データ収集装置32が、RRからANF指標403を生体計測データ221として算出する。ここでは一例として、自律神経Total Power431と自律神経LF/HF432とを算出する処理について説明する。
【0059】
図10は、RRの時間変化の周波数スペクトル例を示すグラフである。
図10のグラフの横軸は周波数であり、縦軸はRRのスペクトルパワー密度である。生体計測データ収集装置32は、周波数領域からLFおよびHFを算出し、それらの和をTP、LFをHFで除算した結果をLF/HFとして算出する。生体計測データ収集装置32は、このように算出したANF指標403を生体計測データ221として、体温、血圧等の他の計測機から取得したデータとともに運行管理補助装置2に送信する。
【0060】
つぎに、生体計測データ221を条件によって抽出する処理(ステップS173)と、生体計測-業務状態データ224または生体計測-業務状態DB231を取得する処理(ステップS174)によってデータが加工される例について説明する。
【0061】
図11は、生体計測データ221と業務状態データ222から生体計測-業務状態データ224を取得する処理例を示す説明図である。生体計測データ221を条件によって抽出する処理(ステップS173)では、運行管理補助装置2は、受信した生体計測データ221を2分間などの一定の時間幅に分割する。生体計測データ221を一定の時間幅に揃えるのは、本実施例が扱う生体計測データ221内のANF指標403が、RRの経時的な変化を表す指標から算出されるためである。一定の時間幅は、一般に30秒から5分前後であることが多い。
【0062】
つぎに、運行管理補助装置2は、分割された生体計測データ221それぞれに対して、不整脈や計測ミス、体動ノイズ等の解析に不正なデータが含まれる割合を、生体計測データ221の分散、パーセンタイル等の基本統計量を用いて算出し、一定の閾値を下回る分割された生体計測データ221のみを抽出して、抽出済み生体計測データ701とする。
【0063】
つぎに、生体計測-業務状態データ224を取得する処理(ステップS174)では、運行管理補助装置2は、抽出済み生体計測データ701に対応する時間帯の業務状態を、業務状態データ収集装置33から受信した業務状態データ222から参照し、抽出済み生体計測データ701に計測時点の業務状態をラベル付けし、生体計測-業務状態データ224または生体計測-業務状態DB231として取得する。
【0064】
図12は、取得された生体計測-業務状態データ224の構成例を示す説明図である。また、生体計測データ221の日時402とそれに対応する業務状態データ222の開始日時503および終了日時504は、一定の範囲内で時刻のずれが存在していてもよい。生体計測データ221のラベル付けが目的であるため、運行管理補助装置2は、抽出済み生体計測データ701に含まれる日時402が示す計測時刻内に、複数の業務状態ラベル502が存在する場合、あるルールに従って抽出済み生体計測データ701に対応する業務状態ラベル502をいずれか1つに決定する。
【0065】
このルールには、たとえば、「ある時間帯の1つの生体計測データ221と対応する業務状態データ222において、より長時間記録されている方の業務状態ラベル502を採用する」などが考えられる。また、業務状態ラベル502に欠損が存在する場合、不適なデータとして生体計測-業務状態データ224から除外する処理などが考えられる。
【0066】
図13は、推定モデル訓練プログラム212による
図3に示した事故リスクを推定するモデルを生成または更新する処理(ステップS103)の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。
図14は、業務状態ラベル502ごとに区分されたデータを用いた推定モデルの訓練例を示す説明図である。運行管理補助装置2は、生体計測-業務状態DB231から生体計測-業務状態データ224を取得し(ステップS131)、生体計測-業務状態データ224から業務状態ラベル502を選択する(ステップS132)。
【0067】
運行管理補助装置2は、選択した業務状態ラベル502に対応する事故リスク推定モデル225を選択し(ステップS225)、選択した事故リスク推定モデル225を、訓練データ23を用いて、生体計測-業務状態DB231の業務状態ラベル502ごとに訓練し(ステップS134)、訓練した事故リスク推定モデル225を保存する(ステップS135)。
【0068】
推定モデル訓練プログラム212では基本的に、事前収集された訓練データ23を用いて、運行管理補助装置2の運用開始前に実行されることを想定しているが、運行管理補助装置2の運用開始後も、訓練データ23が更新された場合、推定モデル訓練プログラム212を再度実行することで、事故リスク推定モデルを更新することができる。さらに、更新前の事故リスク推定モデル225に格納されている係数やパラメータは、更新によって上書きされる前にバックアップとしてシステム内部または外部に記録されてもよい。
【0069】
図15は、
図3に示した事故リスク推定プログラム214による事故リスク推定処理(ステップS104)の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。
図16は、
図3に示した推定結果表示処理(ステップS105)の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。推定結果表示処理(ステップS105)では、運行管理補助装置2は、推定された事故リスク241と、それに対応した生体計測-業務状態データ224と、業務状態ラベル502と、発報や表示する内容が紐づけられた提示内容辞書243と、を用いて、推定結果やそれに付随する情報を生成し、運転者またはその管理者へ提示する。以下、ステップS104およびS105について詳細に説明する。
【0070】
事故リスク推定処理(ステップS104)は、運転者が業務状態ラベル502を含むいずれかの業務に従事または出勤している場合に実行される。
【0071】
図17は、事故リスク推定処理(ステップS104)の一例を示す説明図である。運行管理補助装置2は、生体計測データ収集装置32および業務状態データ収集装置33からリアルタイムに、または数秒から数十分の遅延を伴って継続的に受信する生体計測データ221と、業務状態データ222と、を取得する。
【0072】
また、運行管理補助装置2は、生体計測-業務状態ラベル関連付けプログラム213により生成される生体計測-業務状態データ224を取得し(ステップS151)、生体計測-業務状態データ224の業務状態ラベル502を選択し(ステップS152)、選択した業務状態ラベル502それぞれに適した事故リスク推定モデル225を選択して(ステップS152)、事故リスク推定を行う(ステップS134)。
【0073】
推定結果として、生体計測-業務状態データ224に含まれる日時402の時間帯が危険な場面であるか否かが出力される。推定結果は、「危険である」「危険でない」などの2値ラベルでもよいし、「危険度」等のように表現される、事故が発生する確率やその深刻度等に相当する連続値でもよい。
【0074】
図18は、推定結果が「危険である」またはそれに準ずる状況であった場合に、推定結果を提示する処理(ステップS105)により提示されるフィードバックの例を示す説明図である。車両Vに搭載されたスピーカやその他の注意喚起装置1601が、事故リスクが高い生体計測データ221を検知したことを発報する。
【0075】
また、発報の際に、推定モデルに入力された生体計測-業務状態データ224を参照し、生体計測データ221や業務状態ラベル502から眠気や蓄積疲労、興奮などの状態を推定可能である場合は、車両Vに搭載されたスピーカやその他の注意喚起装置1601は、運転者1602がその状態に陥っていないかを確認する呼びかけ1603を発してもよい。また、車両Vに搭載されたスピーカやその他の注意喚起装置1601は、業務状態ラベル502ごとに対応した、その業務を行っている状況で実施可能な行動を促す呼びかけ1604を発してもよい。
【0076】
図19は、生体計測データ221を取得した日の業務終了後、またはその翌日以降に、運転者や管理者が過去の事故リスクの推移を参照できるようなフィードバックの例を示す説明図である。出力装置44のフィードバック画面1701から、経時的な事故リスクと業務状態の推移1702を同時に確認することが可能である。さらに、事故リスクが高く危険であると記録された過去の場面に対して、当時の生体計測データ221と業務状態ラベル502から、どのような状況であったか、または危険であると判定された要因の候補を示す文字列1703が表示されてもよい。
【0077】
このように、上述した実施例の運行管理補助装置2によれば、たとえば、運転中を含む複数の業務状態が不規則に混在する計測条件下であっても、業務中の運転者から計測した生体データを用いて、多様な業務場面に対応した事故リスク推定を行うことができる。なお、本発明は物流トラックや夜行バス等の長距離を走行する業務用車両の運転者に限定されず、近距離のバスやタクシー、鉄道や航空機にも適用可能である。
【0078】
なお、上述した実施例では、運行管理補助システム1が
図3に示したステップS101~S105の処理を実行したが、運行管理補助システム1は、ステップS101~S103までの学習(推定モデルの生成)のみを実行し、外部システムがステップS104,S105の事故リスク推定のみを実行してもよい。また、外部システムがステップS101~S103までの学習(推定モデルの生成)のみを実行し、運行管理補助システム1がステップS104,S105の事故リスク推定のみを実行してもよい。
【0079】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例および同等の構成が含まれる。たとえば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、または置換をしてもよい。
【0080】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、たとえば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0081】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)の記録媒体に格納することができる。
【0082】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。